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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147863
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】積層装置、及び、押圧方法
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/14 20060101AFI20241009BHJP
   G01R 27/26 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B30B15/14 H
G01R27/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060548
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】平松 靖也
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】菊川 雅之
【テーマコード(参考)】
2G028
4E089
【Fターム(参考)】
2G028BB06
2G028BC01
2G028CG07
4E089EA01
4E089EB01
4E089EC03
4E089ED02
4E089ED03
4E089FA02
4E089FC03
(57)【要約】
【課題】従来の積層装置は、積層材の厚みを精度良く制御することが難しい問題があった。
【解決手段】本発明の積層装置1は、対向する加圧体により基板材料A2にフィルム材A3を積層した成形品を成形する積層装置1であって、加圧体の一方となる第1の導電体31に接続する第1の電極E1と、第1の導電体31とフィルム材A2を介して対向する第2の導電体A2に接続する第2の電極E2と、第1の電極E1及び第2の電極E2を介して、第1の導電体31とフィルム材A3と第2の導電体A2により形成される容量素子の電気容量の指標となる計測データMDを取得する計測部13と、計測データMDに基づき加圧体の位置を制御する制御部と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する加圧体により基板材料にフィルム材を積層した成形品を成形する積層装置であって、
前記加圧体の一方となる第1の導電体に接続する第1の電極と、
前記第1の導電体と前記フィルム材を介して対向する第2の導電体に接続する第2の電極と、
前記第1の電極及び前記第2の電極を介して、前記第1の導電体と前記フィルム材と前記第2の導電体により形成される容量素子の電気容量の指標となる計測データを取得する計測部と、
前記計測データに基づき前記加圧体の位置を制御する制御部と、
を有する積層装置。
【請求項2】
前記計測部は、前記容量素子に電流を供給する電源と、前記容量素子に蓄積される電気量を計測する電気量計と、を有する請求項1に記載の積層装置。
【請求項3】
前記計測部は、前記容量素子に電流を供給する電源と、前記容量素子に流れる電流を計測する電流計と、を有する請求項1に記載の積層装置。
【請求項4】
前記計測部は、前記容量素子に電流を供給する電源と、前記容量素子の2つの電極の間に生じる電圧を計測する電圧計と、を有する請求項1に記載の積層装置。
【請求項5】
前記計測部は、前記容量素子に並列接続される基準コンデンサと、前記基準コンデンサに所定の電流を供給する電源と、前記容量素子の2つの電極の間に生じる電圧を計測する電圧計と、前記基準コンデンサを前記電源側に接続するか前記容量素子側に接続するかを切り替えるスイッチ回路と、を有する請求項1に記載の積層装置。
【請求項6】
前記計測部は、前記容量素子に交流電圧を与える交流電源と、前記容量素子に与えられる交流電流を計測する電流計と、前記容量素子の2つの電極の間に生じる交流電圧を計測する電圧計と、を有する請求項1に記載の積層装置。
【請求項7】
前記第2の導電体に対向する第3の導電体に接続する第3の電極と、をさらに備え、
前記計測部は、複数の位置に形成される前記容量素子の電気容量を別個に計測する、
請求項1に記載の積層装置。
【請求項8】
前記第1の電極及び第2の電極の少なくとも1つは、各電極が対応する前記導電体に着脱自在に接続される請求項1に記載の積層装置。
【請求項9】
前記第1の電極及び第2の電極の少なくとも1つは、屈曲もしくは湾曲した針状の先端部を有する接続端子を備える請求項8に記載の積層装置。
【請求項10】
前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも1つは、前記先端部をてこ式に動作させるための支点機構を有する請求項9に記載の積層装置。
【請求項11】
前記第1の電極及び前記第2の電極は、両者をはさみ式に動作させるための共通の支点機構を有する請求項1に記載の積層装置。
【請求項12】
前記第1の電極及び第2の電極の少なくとも1つは、伸縮可能な支持体により支持される請求項1に記載の積層装置。
【請求項13】
前記第1の電極及び第2の電極の少なくとも1つは、樹脂シートの表面に形成される請求項1に記載の積層装置。
【請求項14】
前記樹脂シートは、前記基板材料を搬送するキャリアフィルムである請求項13に記載の積層装置。
【請求項15】
前記成形品の搬送位置を少なくとも覆う位置に離間して配置され、互いに逆の極性で帯電させられた第1の集塵電極と第2の集塵電極とを用いて、異物を吸着する除去装置をさらに有する請求項1に記載の積層装置。
【請求項16】
対向する位置に設けられる第1の加圧体と第2の加圧体とによって被加圧体に与える加圧力により前記被加圧体を所定の厚みにした成形品を成形する押圧装置における押圧方法であって、
前記第1の加圧体側に設けられる第1の導電体と、前記第1の導電体と対向する位置に設けられる第2の導電体と、前記第1の導電体と前記第2の導電体との間に配置され、所定の誘電率を有する誘電体層とにより構成される容量素子の電気容量の指標となる計測データを計測部により計測し、
前記計測データに基づき前記第1の加圧体と前記第2の加圧体との相対位置を制御する押圧方法。
【請求項17】
前記被加圧体は、導電体のベース層を有し、
前記誘電体層は、前記ベース層と前記第1の加圧体との間に配置される積層材であり、
前記第1の導電体は、前記第1の加圧体であり、
前記第2の導電体は、前記ベース層であり、
前記計測データに基づき前記第1の加圧体と前記第2の加圧体との相対位置を制御することで前記積層材の厚みを制御する請求項16に記載の押圧方法。
【請求項18】
前記被加圧体は、
絶縁基板層と、
前記絶縁基板層の前記第1の加圧体側に設けられる導電体の第1のベース層と、
前記絶縁基板層の前記第2の加圧体側に設けられる導電体の第2のベース層と、を有し、
前記誘電体層は、
前記第1のベース層の前記第1の加圧体側に設けられる絶縁体の第1の積層材と、
前記第2のベース層の前記第2の加圧体側に設けられる絶縁体の第2の積層材と、を有し、
前記第1の加圧体と前記第2の加圧体は、それぞれ導電体により形成されて前記第1の導電体として機能し、
前記第1のベース層及び前記第2のベース層は、前記第2の導電体として機能し、
前記容量素子は、前記第1のベース層、前記第1の積層材及び前記第1の加圧体で構成される第1の容量素子と、前記第2のベース層、前記第2の積層材及び前記第2の加圧体で構成される第2の容量素子と、を含み、
前記計測部は、前記第1の容量素子と前記第2の容量素子とからそれぞれ第1の電気容量と第2の電気容量の指標となる前記計測データを前記計測部により計測し、
前記第1の電気容量及び前記第2の電気容量に基づき前記第1の積層材及び前記第2の積層材の厚みを制御する請求項16に記載の押圧方法。
【請求項19】
前記被加圧体は、金属体であり、
前記誘電体層は、前記第1の加圧体において前記金属体に面する第1の加圧面に第1の絶縁層と、前記第2の加圧体において前記金属体に面する第2の加圧面に第2の絶縁層と、前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層との間の空気層と、を含み、
前記第1の加圧体、前記第1の絶縁層及び前記金属体により構成される第1の容量素子と、前記第2の加圧体、前記第2の絶縁層及び前記金属体とにより構成される第2の容量素子と、前記第1の加圧体、前記第2の加圧体及び前記空気層とにより構成される第3の容量素子と、の合成容量の指標となる前記計測データを前記計測部により計測し、
前記電気容量に基づき前記第1の加圧体と前記第2の加圧体との相対位置を制御することで前記金属体の厚みを制御する請求項16に記載の押圧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、対向する加圧体により基板材料にフィルム材を積層した成形品を成形する積層装置、及び、押圧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数層からなるビルドアップ基板を製造する場合には、絶縁材からなる基板に回路パターンを形成する工程と、この基板回路パターン上に絶縁材をさらに積層する工程と、を繰り返し行う。この絶縁材を積層する方法の1つに押圧成形法がある。押圧成形法では、絶縁材となるフィルム材を回路パターン上にプレスにより積層成形することで基板層の多層化を実現する。この押圧成形に関する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の積層成形装置は、積層材と被積層材とを加熱および加圧することにより中間積層品を積層するラミネータと、該ラミネータで積層された中間積層品を所定の温度で加圧してその表面を平坦に成形する平坦化プレスと、前記中間積層品をラミネータから平坦化プレスに搬送する搬送手段とを備えた積層成形装置であって、前記平坦化プレスが、相対向して配置され互いの対向面に平滑な加圧面を有する固定盤および可動盤と、固定盤に対して可動盤を近接・遠退可能に移動させて前記ラミネータで積層された中間積層品を加圧させる圧締手段と、固定盤に対して可動盤をその対向面と直交する方向に直線移動させるよう案内する直動手段とを備えており、該直動手段が、可動盤を直線移動させる方向に沿って延在するよう配設された複数のボールスプライン軸と、可動盤の角隅部に設けられ前記各ボールスプライン軸にそれぞれ挿通されるボールスプライン筒と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-6499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した積層成形装置では、例えば、平坦化プレス装置において積層材の厚みを所定の厚みとする。しかしながら、特許文献1に記載の技術では平坦化プレス時の成形品の厚みの詳細な計測が困難という問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、平坦化プレス時の成形品の厚みを詳細に計測することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態にかかる積層装置は、対向する加圧体により基板材料にフィルム材を積層した成形品を成形する積層装置であって、前記加圧体の一方となる第1の導電体に接続する第1の電極と、前記第1の導電体と前記フィルム材を介して対向する第2の導電体に接続する第2の電極と、前記第1の電極及び前記第2の電極を介して、前記第1の導電体と前記フィルム材と前記第2の導電体により形成される容量素子の電気容量の指標となる計測データを取得する計測部と、前記計測データに基づき前記加圧体の位置を制御する制御部と、を有する。
【0008】
一実施の形態にかかる押圧方法は、対向する位置に設けられる第1の加圧体と第2の加圧体とによって被加圧体に与える加圧力により前記被加圧体を所定の厚みにした成形品を成形する押圧装置における押圧方法であって、前記第1の加圧体側に設けられる第1の導電体と、前記第1の導電体と対向する位置に設けられる第2の導電体と、前記第1の導電体と前記第2の導電体との間に配置され、所定の誘電率を有する誘電体層とにより構成される容量素子の電気容量の指標となる計測データを計測部により計測し、前記計測データに基づき前記第1の加圧体と前記第2の加圧体との相対位置を制御する。
【0009】
一実施の形態にかかる積層装置及び押圧方法では、誘電層を挟み込むように位置する2つの導電体を電極とするコンデンサの容量を計測することで、被加圧体の厚みを計測し、計測された厚みに応じて積層材への加圧力を制御する。
【発明の効果】
【0010】
一実施の形態にかかる積層装置及び押圧方法によれば、平坦化プレス時の成形品の厚みを詳細に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかる積層装置の構成図である。
図2】実施の形態1にかかる積層装置における厚み測定の原理及び計測部の構成を説明する図である。
図3】実施の形態1にかかる積層装置における積層材の厚み変化と測定される容量値との関係を説明するグラフである。
図4】実施の形態1にかかる積層装置における第2の電極の取り付け位置の第1の例を説明する図である。
図5】実施の形態1にかかる積層装置における第2の電極の取り付け位置の第2の例を説明する図である。
図6】実施の形態2にかかる積層装置における厚み測定の原理及び計測部の構成の第1の構成例を説明する図である。
図7】実施の形態2にかかる積層装置の第1の構成例における積層材の厚み変化と測定される電流値との関係を説明するグラフである。
図8】実施の形態2にかかる積層装置における厚み測定の原理及び計測部の構成の第2の構成例を説明する図である。
図9】実施の形態2にかかる積層装置の第2の構成例における積層材の厚み変化と測定される電圧値との関係を説明するグラフである。
図10】実施の形態2にかかる積層装置における厚み測定の原理及び計測部の構成の第3の構成例を説明する図である。
図11】実施の形態2にかかる積層装置の第3の構成例における積層材の厚み変化と測定される電圧値との関係を説明するグラフである。
図12】実施の形態2にかかる積層装置における厚み測定の原理及び計測部の構成の第4の構成例を説明する図である。
図13】実施の形態3にかかる積層装置における電極の第1の配置例を説明する図である。
図14】実施の形態3にかかる積層装置における電極の第2の配置例を説明する図である。
図15】実施の形態3にかかる積層装置における電極の第3の配置例を説明する図である。
図16】実施の形態4にかかる積層装置における厚み測定の原理を説明する図である。
図17】実施の形態5にかかる積層装置における電極の第1の例を説明する図である。
図18】実施の形態5にかかる積層装置における電極の第2の例を説明する図である。
図19】実施の形態5にかかる積層装置における電極の第3の例を説明する図である。
図20】実施の形態5にかかる積層装置における電極の第3の例を説明する別の図である。
図21】実施の形態6にかかる積層装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
実施の形態1
実施の形態1にかかる積層装置は、対向する加圧体により基板材料にフィルム材を積層した成形品を成形するものである。つまり、積層装置は、加圧体により被加圧体に与える加圧力により被加圧体を所定の厚みにした成形品を成形する押圧装置の1つであって、基板材料を被積層体、フィルム材を積層材とし、被積層体に積層材を重ね合わせたものを被加圧体とするものである。
【0014】
図1に実施の形態1にかかる積層装置1の構成図を示す。図1に示すように、実施の形態1にかかる積層装置1は、加圧部2と、加圧制御部3とを有する。加圧部2は、駆動部10と加圧機構を有する。また、加圧制御部3は、駆動制御部11、計測部13を有する。実施の形態1にかかる積層装置1では、加圧機構の加圧位置に搬入された積層成形品A1に加圧力を加えることで、被積層体A2と積層フィルムA3とを積層成形する。このとき、積層装置1では、計測部13が加圧機構との間で積層フィルムA3の膜厚の指標となる電流や電圧等の情報を計測データMDとして取得し、駆動制御部11が計測データMDから積層フィルムA3の膜厚を算出して、積層フィルムA3の膜厚が予め設定された厚みになるように駆動部10に駆動指示を与える。
【0015】
以下では、加圧部2、加圧制御部3のそれぞれについて詳細に説明していく。まず、加圧部2について説明する。図1に示すように、加圧部2は、駆動部10と加圧機構を有する。加圧機構は、ベース盤20、可動盤21、固定盤22、タイバー23、ボールスプライン筒24、型締シリンダ25、ラム26を有する。また、加圧機構では、積層成形品A1に接する加圧位置に加圧体31、絶縁板32を有する。この加圧体31、絶縁板32は可動盤21及び固定盤22に対して取り替え可能に固定されていても良い。また、加圧体31は、絶縁板32を介して可動盤21及び固定盤22に対して固定される。
【0016】
加圧機構は、ベース盤20と固定盤22とがタイバー23で連結される。そして、タイバー23には、ボールスプライン筒24が設けられる。可動盤21は、四隅にハウジング部21aが設けられる。そして、ボールスプライン筒24がハウジング部21aを挿通するように配置される。また、可動盤21は、下側に配置されるラム26により支えられる。そして、型締シリンダ25は、駆動部10からの指示に基づきラム26を押し上げる、または、押し下げることで可動盤21を昇降させる。これにより、加圧機構では、固定盤22に対して可動盤21が近接及び離間可能な構成となり、固定盤22に対して可動盤21に近づくほど積層成形品A1に与える加圧力を増す動作を行う。なお、駆動部10は、駆動制御部11からの指示に基づき型締シリンダ25に対して可動盤21をどの程度の力や速度で昇降するのかを制御する。駆動部10の聞こうは特に限定されず、油圧や空圧を発生させるものであってもよく、モータであっても良いが、好ましくはサーボモータである。なお、駆動部10としてモータを用いる場合、型締シリンダ25はボールベアリング、ラム26はボールネジに置き換わる。
【0017】
続いて、加圧制御部3について説明する。加圧制御部3は、駆動制御部11及び計測部13を有する。まず、実施の形態1にかかる積層装置1では、被積層体A2が電子回路基板の配線層が露出した導電体であり、被積層体A2に積層する積層フィルムA3が配線層間を絶縁する絶縁材料(例えば、絶縁性を有する樹脂フィルム)であり所定の誘電率を有する。また、積層装置1では、加圧体31として導電体を用いる。このような構成とした場合、導電体である被積層体A2と加圧体31とで絶縁体である積層フィルムA3を挟み込む形態となるため、被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3は容量素子と同じ構成となる。また、実施の形態1にかかる積層装置1では、積層成形品A1に与える加圧力を加えていくことで積層フィルムA3の厚み及び面積が変化する。つまり、実施の形態1にかかる積層装置1では、被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3により構成される容量素子が可変容量素子のような容量変化を示す。
【0018】
そこで、実施の形態1にかかる積層装置1では、計測部13により電流と電圧との少なくとも一方を被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3により構成される容量素子に与え、被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3により容量素子の電気容量の指標となる計測データMDを取得する。そして、実施の形態1にかかる積層装置1では、駆動制御部11に含まれる膜厚算出部12において計測データMDから積層フィルムA3の膜厚を算出する。駆動制御部11は、膜厚算出部12により算出された積層フィルムA3の膜厚が予め設定した厚みになるように可動盤21を上昇させるように駆動部10に駆動指示を与える。
【0019】
なお、膜厚算出部12は、例えば、予め測定されたデータに基づき計測データMDの値と積層フィルムA3の膜厚との関係を示したデータテーブル、或いは、計算式を用いて、計測データMDから積層フィルムA3の膜厚を算出するものが考えられる。
【0020】
ここで、実施の形態1にかかる積層装置1における、厚み測定の原理及び計測部13の構成について説明する。図2に実施の形態1にかかる積層装置における厚み測定の原理及び計測部の構成を説明する図を示す。
【0021】
図2に示すように、実施の形態1では、被積層体A2となる導電基板に絶縁膜となる積層フィルムA3を積層する。そして、被積層体A2及び積層フィルムA3は、重ね合わされた状態で、導体である金属で形成された固定盤22に備えられた加圧体31と可動盤21に固定された加圧体31とにより加圧成形される。このとき、被積層体A2と加圧体31との間には、積層フィルムA3と空気層とにより所定の誘電率を有する誘電層が形成されるため、被積層体A2、加圧体31及び誘電層により容量素子と同じ構成が形成される。そして、被積層体A2が上昇し、固定盤22側の加圧体31との間の距離dが変化すると被積層体A2と加圧体31とその間の誘電層とにより構成される容量素子の容量値が変化する。積層体A2と加圧体31とその間の誘電層とにより構成される容量素子Cは、積層フィルムA3の誘電率が空気層の誘電率よりも十分大きく、被積層体A2と積層フィルムA3の面積の差が積層フィルムA3の面積に対して十分に小さいとすると(1)式で算出することができる。
C=εS/d ・・・ (1)
ここで、εは、積層フィルムA3の誘電率であり、Sは積層フィルムA3の面積であり、dは、被積層体A2と加圧体31の距離である。
【0022】
図2に示す例では、計測部13が直流電源131及び電気量計132を有する例を示した。また、図2に示すように、計測部13と加圧体31は、第1の電極E1で接続され、計測部13と被積層体A2は、第2の電極E2で接続される。直流電源131の一端は第1の電極E1により加圧体31に接続され、直流電源131の他端は第2の電極E2を介して被積層体A2に接続される。電気量計132は、直流電源131と被積層体A2を接続する第2の電極E2に直列に挿入される。
【0023】
そして、図2に示す例では、直流電源131が被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子に一定の電圧Vを与える。また、電気量計132は、直流電源131が被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子に蓄える電気量を計測する。そして、電気量計132は、計測した電気量の情報を計測データMDとして膜厚算出部12に与える。ここで、電気量計132が計測する電気量Qは(2)式で算出される。
Q=CV ・・・ (2)
ここで、Cは被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子の容量値であり、Vは直流電源131が出力する電圧である。この(2)式から、直流電源131が出力する電圧が一定の値であれば、被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子の容量値が変化した場合に電気量Qが変化することがわかる。そこで、図3に実施の形態1にかかる積層装置における積層材の厚み変化と測定される容量値との関係を説明するグラフを示す。
【0024】
図3に示すグラフは、横軸が被積層体A2と加圧体31との距離となる電極間距離dを示す線形軸であり、縦軸が被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子に蓄積される電気量Qを示す対数軸である。図3に示すように、加圧体31が積層フィルムA3に接触するまでは、積層フィルムA3と加圧体31との間の空気層部分の距離dが小さくなることにより徐々に電気量Qが増加する。そして、積層フィルムA3に加圧体31が接触すると距離dに対する電気量Qの変化の傾きが変化する。そして、電気量Qは、積層フィルムA3に加圧体31が接触した後は、距離dが小さくなるほど電気量Qの増加率が大きくなるような変化を示す。
【0025】
膜厚算出部12では、図3に示したような電気量Qの距離dに対する変化を予め測定して、この変化の関係をテーブル或いは計算式として保持する。そして、膜厚算出部12は、計測データMDにより通知された電気量Qに対応した距離dを膜厚として出力する。
【0026】
なお、上述したように、実施の形態1にかかる積層装置1では、被積層体A2に第2の電極E2を接続する必要がある。そこで、図4図6を用いて被積層体A2への第2の電極E2の接続形態の例について説明する。図4図6に示すように積層成形品A1は、複数の成形品を行列状に配置して1度の加圧工程で複数の成形品に対して積層成形を行う。積層成形品A1は積層成形後に切断されることで個別の製品として分離される。
【0027】
図4は、実施の形態1にかかる積層装置における第2の電極の取り付け位置の第1の例を説明する図である。この第1の例では、ベースとなる被積層体A2の面積が積層成形の対象となる複数の回路パターンPTNが並べられる領域よりも広い面積を有している。図4では、積層成形の対象となる複数の回路パターンPTNが並べられる領域以外の被積層体A2の領域をマージン領域43とした。そしてマージン領域43に電極接続部41を設け、電極接続部41に第2の電極E2となる電極42を接続する。このような構成とした場合、回路パターンPTNを含む被積層体A2と、電極接続部41とは電気的には導通しているため、回路パターンPTNを含む容量素子と第2の電極E2との電気的な導通が可能になる。また、電極E2を接続する箇所の数は特に限定されず、1以上であればよいが、図4に示すように、回路パターンPTNが形成される領域の四隅に第2の電極E2を接続してもよい。このようにすることで、異なる4点から異なる電気量を取得可能になるため、この4点の電気量の差を小さくすることで積層フィルムA3の膜厚のムラを低減することができる。
【0028】
図5は、実施の形態1にかかる積層装置における第2の電極の取り付け位置の第2の例を説明する図である。この第2の例においても、複数の回路パターンPTNを行列状に配置して、複数の回路パターンPTNを1度の成形処理で積層成形する。そして、第2の例では、複数の回路パターンPTNと被積層体A2のマージン領域43とは、それぞれ電気的に独立している。このような構成とした場合であっても、マージン領域43に電極接続部41を設け、電極接続部41に第2の電極E2となる電極42を接続する。すなわち、回路パターンPTNと被積層体A2のマージン領域43とが電気的に導通していない場合であっても、マージン領域43の位置を基準とすることで積層フィルムA3の膜厚を制御することができる。さらに、第2の電極E2をマージン領域43の四隅に配置することで、四隅から得られる電気量に基づき積層フィルムA3の膜厚の制御が可能となり、積層フィルムA3の厚みを精度良く制御することが可能になる。
【0029】
上記説明より、実施の形態1にかかる積層装置1では、成形対象の積層フィルムA3の厚みの変化を被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3により構成される容量素子の容量値の変化として計測することで、積層フィルムA3の厚みを計測する。つまり、実施の形態1にかかる積層装置1では、積層フィルムA3の積層成形時の厚みを詳細に計測でき、精度よく成形することができる。また、実施の形態1にかかる積層装置1では、可動盤21の位置を示すエンコーダ等の位置測定装置の測定誤差に起因する誤差を無くすことができる。特に、積層装置1の可動盤21は、被積層体A2と可動盤21との間に温度制御可能な加圧体を備えるため、例えば、加圧体の熱膨張に起因する要因によりエンコーダによる計測では、被積層体A2の厚みを詳細に計測することが難しい問題があった。しかし、実施の形態1にかかる積層装置1における容量素子の容量値の測定は、加圧体の熱膨張によらずに積層フィルムA3の厚みを計測できるため、測定精度を高めることができる。
【0030】
また、例えば、可動盤21と固定盤22との相対距離をエンコーダ等の位置センサを用いて計測した場合、センサの校正等に起因した加圧部2の定期的な分解メンテナンス作業が生じる。しかしながら、実施の形態1にかかる積層装置1では、加圧制御部3に計測部13を備えるため、このような定期的な分解メンテナンス作業に要する工程を削減することができる。
【0031】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1にかかる計測部13の別の例を複数説明する。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1と同じ構成要素については、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0032】
まず、図6に、実施の形態2にかかる積層装置における厚み測定の原理及び計測部の構成の第1の構成例を説明する図を示す。図6では、計測部13の第1の構成例として計測部13aを示した。図6に示すように、計測部13aは、直流電源131及び電流計133を有する。また、図6に示すように、計測部13aと加圧体31は、第1の電極E1で接続され、計測部13aと被積層体A2は、第2の電極E2で接続される。直流電源131の一端は第1の電極E1により加圧体31に接続され、直流電源131の他端は第2の電極E2を介して被積層体A2に接続される。電流計133は、直流電源131と被積層体A2を接続する第2の電極E2に直列に挿入される。
【0033】
そして、図6に示す例では、直流電源131が被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子に一定の電圧Vを与える。また、電流計133は、被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子の容量値の変化に起因して流れる電流値を計測する。そして、直流電源131は、計測した電流値の情報を計測データMDとして膜厚算出部12に与える。ここで、電流計133が計測する電流値Iは(3)式で算出される。
I=CV/t ・・・ (3)
ここで、Cは被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子の容量値であり、Vは直流電源131が出力する電圧であり、時間tはサンプリング時間である。この(3)式から、直流電源131が出力する電圧Vとサンプリング時間tが一定の値であれば、被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子の容量値Cが変化した場合に流れる電流Iが変化することがわかる。そこで、図7に実施の形態2にかかる積層装置の第1の構成例における積層材の厚み変化と測定される電流値との関係を説明するグラフを示す。
【0034】
図7に示すグラフは、横軸が被積層体A2と加圧体31との距離となる電極間距離dを示す線形軸であり、縦軸が被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子の容量値変化に伴い流れる電流Iを示す対数軸である。図7に示すように、加圧体31が積層フィルムA3に接触するまでは、積層フィルムA3と加圧体31との間の空気層部分の距離dが小さくなることにより徐々に電流Iが増加する。そして、積層フィルムA3に加圧体31が接触すると観測される電流が一旦小さくなる。そして、電流Iは、積層フィルムA3に加圧体31が接触した後は、距離dが小さくなるほど電気量Qの増加率が大きくなるような変化を示す。ここで、可動盤21の上昇速度により容量値の変化率が異なるため、可動盤21上昇速度によって電流変化の曲線が異なる。具体的には、可動盤21の上昇速度が速くなるほど電流計133で計測される電流Iが大きくなる。このため、可動盤の上昇速度が速いほど、積層フィルムの厚みは読み取りやすくなり、計測の精度は高くなる。
【0035】
膜厚算出部12では、図7に示したような電流Iの距離dに対する変化を予め測定して、この変化の関係をテーブル或いは計算式として保持する。そして、膜厚算出部12は、計測データMDにより通知された電流Iに対応した距離dを膜厚として出力する。
【0036】
続いて、図8に、実施の形態2にかかる積層装置における厚み測定の原理及び計測部の構成の第2の構成例を説明する図を示す。図8では、計測部13の第2の構成例として計測部13bを示した。図8に示すように、計測部13bは、直流電源131及び電圧計134を有する。第2の構成例では。直流電源131の一旦がスイッチSW1を介して加圧体31に接続される。図8では、スイッチSW1の加圧体31側の端子と加圧体31とを接続する配線を第1の電極E1とした。また、直流電源131の他端は、第2の電極E2により接続される。そして、電圧計134は、加圧体31と被積層体A2との間の電位差を計測できるように第1の電極E1及び第2の電極E2に接続される。
【0037】
そして、図8に示す例では、加圧体31が積層フィルムA3に接触したことが検出されたことに応じて可動盤21の上昇を一旦停止するとともに、スイッチSW1を導通状態に切り替え、被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子に被積層体A2と加圧体31との電位差が直流電源131の出力電圧となるまで充電を行う。その後、計測部13bでは、スイッチSW1を遮断状態に切り替えて可動盤21を上昇させる。これにより、電圧計134では、被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子の容量変化に起因する電圧の変化が観測される。ここで、電圧計134が計測する電圧値Vは(4)式で算出される。
V=Q/C ・・・ (4)
ここで、Cは被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子の容量値であり、Qは被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子が蓄積可能な電気量である。この(4)式から、電気量Qが一定であれば、被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子の容量値Cが変化した場合に電圧値Vが変化することがわかる。そこで、図9に実施の形態2にかかる積層装置の第2の構成例における積層材の厚み変化と測定される電圧値との関係を説明するグラフを示す。
【0038】
図9に示すグラフは、横軸が被積層体A2と加圧体31との距離となる電極間距離dを示す線形軸であり、縦軸が電圧計134で検出される電圧値Vを示す対数軸である。図9に示すように、図8に示した計測部13bでは、可動盤21が上昇し、加圧体31が積層フィルムA3に触れたことに応じて被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子を充電する。その後、充電した電気量Qを維持しながら、可動盤21を上昇させることで距離dが小さくなる。そして、距離dが小さくなると被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子が大きくなり電圧計134で検出される電圧値が小さくなる。
【0039】
膜厚算出部12では、図9に示したような電圧値Vの距離dに対する変化を予め測定して、この変化の関係をテーブル或いは計算式として保持する。そして、膜厚算出部12は、計測データMDにより通知された電圧値Vに対応した距離dを膜厚として出力する。
【0040】
続いて、図10に、実施の形態2にかかる積層装置における厚み測定の原理及び計測部の構成の第3の構成例を説明する図を示す。図10では、計測部13の第3の構成例として計測部13cを示した。図10に示すように、計測部13cは、直流電源131、電圧計134、基準コンデンサCr、スイッチSW2、SW3を有する。第3の構成例では。直流電源131の一旦がスイッチSW2、SW3を介して加圧体31に接続される。図10では、スイッチSW2の加圧体31側の端子と加圧体31とを接続する配線を第1の電極E1とした。また、直流電源131の他端は、第2の電極E2により被積層体A2に接続される。基準コンデンサCrは、スイッチSW2とスイッチSW3との間のノードと、第2の電極E2との間に接続される。電圧計134は、加圧体31と被積層体A2との間の電位差を計測できるように第1の電極E1及び第2の電極E2に接続される。
【0041】
そして、図8に示す例では、加圧体31が積層フィルムA3に接触する前にスイッチSW2を遮断状態とし、かつ、スイッチSW3を導通状態とした状態で基準コンデンサCrに所定の電気Qとなるように充電を進める。また、充電完了後は、スイッチSW3を遮断状態に切り替える。その後、加圧体31が積層フィルムA3に接触したことが検出されたことに応じて可動盤21の上昇を一旦停止するとともに、スイッチSW2を導通状態に切り替える。これにより、計測部13cでは、基準コンデンサCrと、被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子と、が並列接続されたコンデンサとなる。これにより、一定の電気量Qに対して基準コンデンサCrと、被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子と、の合成容量となる容量値Cが変化するため(4)式に基づき電圧計134で検出される電圧値Vが変化する。そこで、図11に実施の形態2にかかる積層装置の第3の構成例における積層材の厚み変化と測定される電圧値との関係を説明するグラフを示す。
【0042】
図11に示すグラフは、横軸が被積層体A2と加圧体31との距離となる電極間距離dを示す線形軸であり、縦軸が電圧計134で検出される電圧値Vを示す対数軸である。図11に示すように、図10に示した計測部13cでは、可動盤21が上昇し、加圧体31が積層フィルムA3に触れたことに応じて電圧値Vの傾きが変化する。その後、充電した電気量Qを維持しながら、可動盤21を上昇させることで距離dが小さくなる。そして、距離dが小さくなると基準コンデンサCrと被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3で構成される容量素子との合成容量が大きくなり電圧計134で検出される電圧値が小さくなる。
【0043】
膜厚算出部12では、図12に示したような電圧値Vの距離dに対する変化を予め測定して、この変化の関係をテーブル或いは計算式として保持する。そして、膜厚算出部12は、計測データMDにより通知された電圧値Vに対応した距離dを膜厚として出力する。
【0044】
続いて、図12に、実施の形態2にかかる積層装置における厚み測定の原理及び計測部の構成の第4の構成例を説明する図を示す。図12では、計測部13の第4の構成例として計測部13dを示した。図12に示すように、計測部13dは、交流電源135、交流電圧計136、交流電流計137を有する。交流電源135は、一端が第1の電極E1を介して加圧体31に接続され、他端が第2の電極E2を介して被積層体A2に接続される。交流電圧計136は、加圧体31と被積層体A2との交流電圧の差を検出できるように第1の電極E1と第2の電極E2との間に接続される。交流電流計137は、第1の電極E1の経路上に直列に挿入される。
【0045】
容量素子では、積層成形品A1と加圧体31との距離dが(5)式により表わされる。
d=2πfεSv/i ・・・(5)
ここで、fは、交流電源135が出力する交流電圧の周波数であり、εが積層フィルムA3の誘電率であり、Sが被積層体A2の面積であり、vが交流電源135が検出する交流電圧の振幅であり、iが交流電流計137が検出する交流電流の振幅である。実施の形態2にかかる積層装置では、f、ε、Sは既知であり、vを交流電圧計136から電圧振幅計測データMD_Vとして取得し、iを交流電流計137から電流振幅計測データMD_Iとして取得することで膜厚算出部12は、(5)式を用いて積層フィルムA3の膜厚として距離dを算出する。
【0046】
実施の形態2では、被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3により構成される容量素子の容量変化を検出するための計測部13の複数の構成例について説明した。上述したように、被積層体A2、加圧体31及び積層フィルムA3により構成される容量素子の容量変化を検出するための構成は複数有るため、計測部13の構成は、積層装置1の仕様や、積層フィルムA3、被積層体A2の特性に応じて、最適な回路を選択しうる。
【0047】
実施の形態3
実施の形態3では、被積層体A2の構成と積層フィルムA3の配置方法による電極の設け方について説明する。なお、実施の形態3の説明において、実施の形態1と同じ構成要素については、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
実施の形態1では、被積層体A2を被加圧体、積層フィルムA3を積層材とし、容量素子の一方の電極となる第1の導電体として固定盤22に固定された加圧体31(例えば、第1の加圧体)を用い、他方の電極となる第2の導電体として被積層体A2(例えば、ベース層)を用い、誘電層として積層フィルムA3を用いた。このように、2つの導電体の間に絶縁体で形成された誘電層が挟まれていれば容量素子が構成される。また、積層成形品A1は多層配線基板である場合、被積層体A2と積層フィルムA3の積層方法は様々な組み合わせで行われる。そこで、以下では、被積層体A2の構成と積層フィルムA3の配置方法による電極の設け方について説明する。
【0049】
まず、図13に実施の形態3にかかる積層装置における電極の第1の配置例を説明する図を示す。図13に示す第1の配置例では、積層成形品A1が被加圧体となるベース層(例えば、被積層体A2)の両面に積層フィルムを有する。図13では、被積層体A2の固定盤22側の面に積層フィルムA3aが配置され、被積層体A2の可動盤21側に積層フィルムA3bが配置される例を示した。このような配置とする場合、積層フィルムA3aは、第1の導電体となる加圧体31aと第2の導電体となる被積層体A2とに挟まれるため、加圧体31aと被積層体A2との間に容量素子C1が形成される。また、積層フィルムA3bは、第3の導電体となる加圧体31bと第2の導電体となる被積層体A2とに挟まれるため、加圧体31bと被積層体A2との間に容量素子C2が形成される。そこで、加圧体31aに第1の電極E1を接続し、被積層体A2に第2の電極E2を接続し、加圧体31bに第3の電極E3を接続する。このような接続することで、計測部13は、計測部13が第1の電極E1と第2の電極E2とを用いて容量素子C1と、第2の電極E2と第3の電極E3とを用いて容量素子C2と、の容量値の個別に計測することが可能になる。このように部位ごとに異なる容量素子が形成される場合、これらを個別に測定することで、積層フィルムの厚み精度をさらに高めることが可能になる。
【0050】
続いて、図14に実施の形態3にかかる積層装置における電極の第2の配置例を説明する図を示す。第2の配置例では、積層成形品A1の構成は第1の配置例と同じである。しかし、第1の配置例では、容量素子C1と容量素子C2とが被積層体A2により電気的に接続される。そこで、第2の配置例では、容量素子C1と容量素子C2とが直列接続された合成容量を計測対象とする。このような第2の配置例では、第1の導電体となる加圧体31aに第1の電極E1を接続し、第2の導電体となる加圧体31bに第2の電極E2を接続する。
【0051】
続いて、図15に実施の形態3にかかる積層装置における電極の第3の配置例を説明する図に示す。図15に示す第3の配置例では、被加圧体が、絶縁層A3cの固定盤22側の面にベース層であって導電体で形成される被積層体A2aが配置され、絶縁層A3cの可動盤21側の面にベース層であって導電体で形成される被積層体A2bが配置される構成を有する。そして、被積層体A2aの固定盤22側の面に積層フィルムA3aが配置され、被積層体A2bの可動盤21側の面に積層フィルムA3bが配置される。
【0052】
積層成形品A1が第3の配置例のような構成となっている場合、被積層体A2aと固定盤22側の加圧体31aとの間に形成される容量素子C1と、被積層体A2bと可動盤21側の加圧体31bとの間に形成される容量素子C2は、電気的に互いに独立した容量素子となる。そのため、第3の配置例では、加圧体31aに第1の電極E1aを接続し、被積層体A2aに第2の電極E2aを接続することで容量素子C1の容量値に起因する計測データMDを取得する。また、加圧体31bに第1の電極E1bを接続し、被積層体A2bに第2の電極E2bを接続することで容量素子C2の容量値に起因する計測データMDを取得する。
【0053】
実施の形態3の説明より、実施の形態1にかかる積層装置1では、積層成形品における被積層体と積層フィルムの配置方法に応じて電極を接続することで、様々な積層成形品に対しても積層フィルムと積層フィルムを挟む導電体により構成される容量素子に基づき積層フィルムの膜厚を精度良く制御することが可能である。
【0054】
実施の形態4
実施の形態4では、積層を伴わない成形品を被加圧体とする例について説明する。なお、実施の形態4の説明において、実施の形態1と同じ構成要素については、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0055】
そこで、図16に実施の形態4にかかる積層装置における厚み測定の原理を説明する図を示す。図16に示すように、実施の形態4では、被加圧体として金属体A4を用い、金属体A4を所定の厚さに成型する例について説明する。このように、被加圧体として金属体A4を対象とする場合、固定盤22側の加圧体31aと可動盤21側の加圧体31bとの絶縁を確保するために、加圧体31a、31bの加圧面に絶縁層33a、33bを設ける。この絶縁層33a、33bは、例えばセラミックス板を用いることができる。
【0056】
このような構成とした場合、金属体A4と絶縁層33a、33bが接する部分には、金属体A4の上端面と加圧体31aとの間、及び、金属体A4の下端面と加圧体31bとの間にそれぞれ容量素子が形成される。金属体A4と絶縁層33a、33bが接する部分に形成される容量素子を図16では、容量素子Cmとした。また、図16に示す例では、金属体A4が絶縁層33a(または、絶縁層33b)に接する面積が加圧体31a(または、加圧体31b)の面積よりもかなり小さい。このような場合、金属体A4が絶縁層33a及び絶縁層33bと接する領域以外の領域において空気層を誘電層として構成される容量素子の影響が無視できない。そこで、図16に示す例では、金属体A4が絶縁層33a及び絶縁層33bと接する領域以外の領域において空気層を誘電層として構成される容量素子を、容量素子Ccとして示した。また、図16に示すように、金属体A4を被加圧体とする場合、第1の電極E1を加圧体31a、第2の電極E2を加圧体31bに接続する。
【0057】
そして、図16に示す例では、加圧体31a、31bの間に形成される容量素子の容量値Cは(6)式~(8)式で表わされる
C=Cm+Cc ・・・ (6)
Cm=εc×Sm/2dc・・・ (7)
Cc={εa×εc×(S―Sm)}/(dm×εc+2dc*εa) ・・・ (8)
εcは絶縁層33a、33bの誘電率であり、εaは空気層の誘電率であり、dcは絶縁層33a、33bの厚みであり、dmは金属体A4の高さであり、Sは加圧体31a、31bの面積であり、Smは金属体A4が加圧体31a、31bに接する面積である。
【0058】
このように、被加圧体が、被積層構造であって、かつ、導電体である場合であっても、加圧体の表面に絶縁層を設けることで、被加圧体を含む容量素子を形成できるため、実施の形態1にかかる加圧制御部3を用いた厚み測定及び被加圧体の厚み制御を行うことが可能である。
【0059】
実施の形態5
実施の形態5では、電極の構成、特に被積層体A2と電気的に接続される電極の構成について説明する。なお、実施の形態5の説明において、実施の形態1と同じ構成要素については、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0060】
まず、図17に実施の形態5にかかる積層装置における電極の第1の例を説明する図を示す。図17に示す第1の例は、探針子操作部51を有する。探針子操作部51は、被積層体A2に着脱可能なようにプローブを支持する。また、プローブは、屈曲もしくは湾曲した針状の先端部を有する。さらに、探針子操作部51は、プローブの先端部をてこ式に動作させるための支点機構を有する。より具体的には、探針子操作部51は、支点機構によりプローブを上下方向(例えば、積層成形品A1に対する加圧力が加わる方向)に動かすとともに、伸縮機構によりプローブを挿抜方向(例えば、積層成形品A1に対する加圧力が加わる方向と直交する方向)に動かす。
【0061】
このようなプローブを介して被積層体A2を計測部13に電気的に接続することで、被積層体A2に第2の電極E2を固定する必要がなくなる。これにより、実施の形態5にかかる第1の例では、被積層体A2に第2の電極E2を接続する工程を削減することができる。さらに、実施の形態5にかかる第1の例では、第2の電極E2を積層成形品A1ごとに新しく準備する必要が無くなる。
【0062】
続いて、図18に実施の形態5にかかる積層装置における電極の第2の例を説明する図を示す。図18に示す第2の例は、探針子操作部51aを有する。また、探針子操作部51aが支持するプローブは、第1の電極E1となるプローブと第2の電極E2となるプロ部とをはさみ式に動作させるための共通の支点機構を有する。そして、第1の電極E1及び第2の電極E2となる2つのプローブは、被積層体A2に着脱可能なように構成される。また、プローブは、屈曲もしくは湾曲した針状の先端部を有する。そして、探針子操作部51aは、支点機構によりプローブを上下方向(例えば、積層成形品A1に対する加圧力が加わる方向)に動かすとともに、伸縮機構によりプローブを挿抜方向(例えば、積層成形品A1に対する加圧力が加わる方向と直交する方向)に動かす。
【0063】
このようなはさみ式のプローブを用いることで、対向して露出する2つの導電体に対して少ない動作で電極を接触させることが可能になる。
【0064】
続いて、図19に実施の形態5にかかる積層装置における電極の第3の例を説明する図を示す。図19に示す第3の例では、被積層体A2を搬送する搬送フィルムA5の面のうち被積層体A2を載置する側の面に薄膜電極A6を設け、導体である被積層体A2と第2の電極E2となる薄膜電極A6を電気的に導通させる。そして、第3の例では、薄膜電極A6にプローブ等を接触させることで被積層体A2と計測部13との導通を得る。そこで、図20に実施の形態5にかかる積層装置における電極の第3の例を説明する別の図を示す。
【0065】
図20は、薄膜電極A6を有する搬送フィルムA5により被積層体A2を積層装置1内に搬送した状態を側面図で示したものである。図20に示すように、薄膜電極A6を有する搬送フィルムA5を第2の電極E2として利用する場合、探針子操作部51bのようなプローブ移動装置を用いて薄膜電極A6と計測部13とを電気的に接続することで、薄膜電極A6と計測部13との電気的接続を行うことが容易になる。
【0066】
上記説明より、第1の電極E1及び第2の電極E2の少なくとも一方として容量素子の電極となる導電体に対して着脱可能なプローブを用いることで、導電体と計測部13を電気的に接続するための工程を簡略化して生産性を高めることができる。
【0067】
実施の形態6
実施の形態6では、実施の形態1で説明した積層装置1の別の形態となる積層装置1aについて説明する。なお、実施の形態6の説明では、実施の形態1において説明した構成要素と同じ構成要素については、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0068】
積層装置は、クリーンな環境下で積層成形品を製造できるように設置されることが望ましい。しかしながら、上述した実施の形態にかかる積層装置では、積層成形品の厚みを計測する過程において帯電現象が発生する場合がある。このように装置が帯電すると積層装置の付近に浮遊する異物を積層成形品或いは積層装置が引きつけて、積層成形品に異物が付着することが考えられる。
【0069】
図21に実施の形態6にかかる積層装置1aの構成図を示す。図21に示すように、実施の形態6にかかる積層装置1aは、加圧部2に除去装置4を付加したものである。除去装置4は、電源61と、第1の集塵電極(例えば、集塵電極62)、第2の集塵電極(例えば、集塵電極63)を有する。電源61は、集塵電極62及び集塵電極63を帯電させる。集塵電極62と集塵電極63は、所定の距離を置いて離間して設けられる。また、集塵電極62と集塵電極63は、一方がプラス、他方がマイナスとなるように帯電させられる。
【0070】
また、実施の形態6にかかる積層装置1aでは、積層成形品の積層成形を行う部分を含む領域を覆うように除去装置4を設ける。この除去装置4は、異物が積層成形品或いは加圧部2の加圧面に達する前に異物を引き寄せて吸着する。つまり、除去装置4は、被加圧体の搬送位置を少なくとも覆う位置に離間して配置され、互いに逆の極性で帯電させられた集塵電極62と集塵電極63とを用いて、異物を吸着する。集塵電極62、集塵電極63の形状は、特に限定されないが、串状又は板状であり、互いに対向する部分を有するように設けられる。
【0071】
上記説明より、実施の形態6にかかる積層装置1aでは、除去装置4を有することで、加圧部2に異物が付着する前に異物を補足して、クリーンな環境を保った積層装置の積層工程を実施することが可能になる。
【0072】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 積層装置
2 加圧部
3 加圧制御部
4 除去装置
10 駆動部
11 駆動制御部
12 膜厚算出部
13 計測部
131 直流電源
132 電気量計
133 電流計
134 電圧計
135 交流電源
136 交流電圧計
137 交流電流計
20 ベース盤
21 可動盤
21a ハウジング部
22 固定盤
23 タイバー
24 ボールスプライン筒
25 型締シリンダ
26 ラム
31 加圧体
32 絶縁板
33 絶縁層
41 電極接続部
42 電極
43 マージン領域
51 探針子操作部
61 電源
62、63 集塵電極
A1 積層成形品
A2 被積層体
A3 積層フィルム
A4 金属体
A5 搬送フィルム
A6 薄膜電極
PTN 回路パターン
SW1~SW3 スイッチ
Cr 基準コンデンサ
E1 第1の電極
E2 第2の電極
E3 第3の電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
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図20
図21