(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147874
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2338 20110101AFI20241009BHJP
B60R 21/16 20060101ALI20241009BHJP
B60R 21/2346 20110101ALI20241009BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/16
B60R21/2346
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060572
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智貴
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA13
3D054AA14
3D054CC10
3D054CC11
3D054EE26
(57)【要約】
【課題】エアバッグ本体部の膨張展開動作を安定して制御可能で、乗員の体格や着座位置等に関わらず、乗員を適切に保護することが可能なエアバッグを提供する。
【解決手段】本発明のエアバッグ(10)では、テザー部材(30)がエアバッグ本体部(20)の内部に配され、エアバッグ本体部(20)は、インフレーター用の挿通開口部(23)が設けられた第1バッグ中央部(16)と、第1バッグ中央部(16)に対向して配される第2バッグ中央部(17)と、第1バッグ中央部(16)及び第2バッグ中央部(17)間に配されるバッグ側面部(18)とを有し、テザー部材(30)は、第2バッグ中央部(17)とバッグ側面部(18)とに固定され、第1バッグ中央部(16)には、テザー部材(30)を移動可能に保持するテザー保持部(40)が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレーターからガスが供給されることにより膨張展開する袋状のエアバッグ本体部を有するエアバッグにおいて、
前記エアバッグ本体部の膨張展開動作を規制するテザー部材が、前記エアバッグ本体部の内部に配され、
前記エアバッグ本体部は、前記インフレーターを挿通させる挿通開口部が設けられた第1バッグ中央部と、前記第1バッグ中央部に対向して配される第2バッグ中央部と、前記第1バッグ中央部の外縁部及び前記第2バッグ中央部の外縁部間に配されるバッグ側面部とを有し、
前記テザー部材は、前記第2バッグ中央部と前記バッグ側面部とに少なくとも1箇所ずつ固定され、
前記エアバッグ本体部の前記第1バッグ中央部には、前記テザー部材を移動可能に保持するテザー保持部が設けられている
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
前記エアバッグ本体部は、膨張展開の初期段階において、前記エアバッグ本体部が乗員に近付くバッグストローク方向に対して直交するバッグ直交方向への膨張展開が促され、膨張展開の中期段階から最終段階にかけて、前記バッグストローク方向への膨張展開が促されるように形成されている
請求項1記載のエアバッグ。
【請求項3】
前記エアバッグ本体部の内部に、前記インフレーターから供給される前記ガスを前記バッグ側面部に向けて案内する整流布が配されている
請求項1記載のエアバッグ。
【請求項4】
膨張した前記エアバッグ本体部を前記第2バッグ中央部側から見たときの前記バッグ側面部の各部分を時計の文字盤で例える場合、前記テザー部材の前記バッグ側面部に固定される側面固定部は、前記バッグ側面部の少なくとも6時の部分に固定されている
請求項1記載のエアバッグ。
【請求項5】
前記テザー部材は、前記第2バッグ中央部に固定される中央固定部と、前記バッグ側面部に固定される少なくとも1つの側面固定部とを有し、
前記テザー保持部は、前記テザー部材における前記中央固定部と前記側面固定部との間の部分を前記第1バッグ中央部に対して移動可能に保持する
請求項1記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載されるエアバッグ装置のエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、自動車の衝突時等に乗員への衝撃を緩和して乗員を保護するエアバッグ装置が搭載されている。エアバッグ装置は、一般的に、ガスを発生させるインフレーターと、ガスの供給により膨張展開する袋状のエアバッグ本体部を備えたエアバッグとを有する。また、エアバッグとしては、エアバッグ本体部の展開形状を規制するテザーベルトがエアバッグ本体部内に設けられたものが知られている。
【0003】
例えば特開2005-96495号公報(特許文献1)及び特開2008-62863号公報(特許文献2)には、エアバッグが、エアバッグ本体部内に設けられるテザーベルトと、テザーベルトの一部を摺動自在に保持する補助布又は展開形状調整部とを有するエアバッグ装置が記載されている。
【0004】
例えば特許文献1のエアバッグでは、エアバッグ本体部の乗員対向面を形成する基布に補助布が縫着されており、また、その補助布のスリット(ガイド部)にテザーベルト(吊り紐)を通すことにより、テザーベルトが補助布に摺動可能に保持されている。これにより、特許文献1には、エアバッグの展開時にテザーベルトの張力でエアバッグの展開形状を適切に制御することができ、またエアバッグの乗員対向面が乗員を拘束して内圧が高まると、テザーベルトが緩んでエアバッグの角部が径方向外側に膨らむため、内圧の増加を抑制して乗員を柔らかく拘束できることが記載されている。
【0005】
特許文献2のエアバッグでは、エアバッグ本体部内に展開形状調整部が配されており、その展開形状調整部に、テザーベルトが摺動可能に保持されている。これにより、特許文献2では、展開形状調整部が、エアバッグ袋体の展開時にテザーベルトにより規制される展開高さと展開幅との比を変更して、展開高さが大きくなるほどエアバッグ本体部の展開幅が狭くなるようにエアバッグ本体部の展開形状を調整するため、エアバッグ本体部を乗員に当たる位置にまで展開できるとともに、エアバッグ本体部の展開高さが大きくなってもエアバッグ本体部内の圧力の低下を抑えることができると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-96495号公報
【特許文献2】特開2008-62863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2に記載されているエアバッグでは、テザーベルトが補助布又は展開形状調整部により摺動自在に保持されることによって、エアバッグ本体部の展開形状が制御又は調整されているものの、その補助布又は展開形状調整部は、エアバッグ本体部内において移動可能に配されている。このため、エアバッグ本体部の膨張展開時に、補助布又は展開形状調整部が、エアバッグ本体部内に供給されるガスの流れやエアバッグ本体部の膨張展開動作等の影響を受け、補助布又は展開形状調整部によるエアバッグ本体部の展開形状の制御又は調整を安定して行い難くなる可能性がある。
【0008】
ところで、自動車の運転では、大柄な男性や小柄な女性等の様々な体格の人がステアリングホイールを握ることがある。例えば運転者が大柄な人の場合では、ステアリングホイールから離れた位置でシートに着座することが多く、一方、運転者が小柄な人の場合では、ステアリングホイールに近接した位置でシートに着座することが多いなど、運転者がステアリングホイールに対して様々な位置や姿勢で自動車の運転を行うことが想定される。このように運転者が様々な位置や姿勢で運転を行う場合でも、自動車の衝突時等にエアバッグ装置で運転者を適切に保護することが求められている。
【0009】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、エアバッグ本体部の膨張展開動作を安定して制御することが可能で、また、乗員の体格や着座位置等に関わらず、乗員を安定して適切に保護することが可能なエアバッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるエアバッグは、インフレーターからガスが供給されることにより膨張展開する袋状のエアバッグ本体部を有するエアバッグにおいて、前記エアバッグ本体部の膨張展開動作を規制するテザー部材が、前記エアバッグ本体部の内部に配され、前記エアバッグ本体部は、前記インフレーターを挿通させる挿通開口部が設けられた第1バッグ中央部と、前記第1バッグ中央部に対向して配される第2バッグ中央部と、前記第1バッグ中央部の外縁部及び前記第2バッグ中央部の外縁部間に配されるバッグ側面部とを有し、前記テザー部材は、前記第2バッグ中央部と前記バッグ側面部とに少なくとも1箇所ずつ固定され、前記エアバッグ本体部の前記第1バッグ中央部には、前記テザー部材を移動可能に保持するテザー保持部が設けられているエアバッグである。
【0011】
本発明のエアバッグにおいて、前記エアバッグ本体部は、膨張展開の初期段階において、前記エアバッグ本体部が乗員に近付くバッグストローク方向に対して直交するバッグ直交方向への膨張展開が促され、膨張展開の中期段階から最終段階にかけて、前記バッグストローク方向への膨張展開が促されるように形成されていることが好ましい。
また、前記エアバッグ本体部の内部に、前記インフレーターから供給される前記ガスを前記バッグ側面部に向けて案内する整流布が配されていることが好ましい。
【0012】
更に本発明において、膨張した前記エアバッグ本体部を前記第2バッグ中央部側から見たときの前記バッグ側面部の各部分を時計の文字盤で例える場合、前記テザー部材の前記バッグ側面部に固定される側面固定部は、前記バッグ側面部の少なくとも6時の部分に固定されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明のエアバッグにおいて、前記テザー部材は、前記第2バッグ中央部に固定される中央固定部と、前記バッグ側面部に固定される少なくとも1つの側面固定部とを有し、前記テザー保持部は、前記テザー部材における前記中央固定部と前記側面固定部との間の部分を前記第1バッグ中央部に対して移動可能に保持することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエアバッグによれば、エアバッグ本体部の膨張展開動作を安定して制御することができ、また、乗員の体格や着座位置等に関わらず、乗員を安定して適切に保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例に係るエアバッグが分解された状態を模式的に示す分解図である。
【
図2】
図1に示したエアバッグが膨張展開するときの初期段階の形状を模式的に示す模式図である。
【
図3】
図1に示したエアバッグが完全に膨張展開したときの形状を模式的に示す模式図である。
【
図4】小柄な運転者をエアバッグで保護する直前のエアバッグの形状を模式的に示す模式図である。
【
図5】大柄な運転者をエアバッグで保護する直前のエアバッグの形状を模式的に示す模式図である。
【
図6】エアバッグが大柄な運転者を保護したときのエアバッグの形状を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
【0017】
例えば、以下の実施例で説明するエアバッグは、自動車のステアリングホイールに搭載される運転者用のエアバッグ装置に使用されるが、本発明のエアバッグは、例えば助手席用のエアバッグ装置などのその他のエアバッグ装置に使用される場合にも同様に適用可能である。
【実施例0018】
図1は、本実施例に係るエアバッグが分解された状態を模式的に示す分解図である。
図2は、
図1に示したエアバッグが膨張展開するときの初期段階の形状を模式的に示す模式図であり、
図3は、
図1に示したエアバッグが完全に膨張展開したときの形状を模式的に示す模式図である。なお、
図1では、エアバッグを形成するテザー部材及びテザー保持部の構造を判り易く表すために、テザー部材の後述するテザーベルト部の一部が曲線で描かれており、また、エアバッグの内部に配される整流布の図示が省略されている。
【0019】
更に、本発明のエアバッグに関して、上下方向及び左右方向とは、ステアリングホイールに装着されたエアバッグ装置のエアバッグを運転者側から見たときの上下方向及び左右方向を言う。また、エアバッグを運転者側から見たときに、膨張展開したエアバッグの向きを時計の文字盤で例える場合、上下方向は、12時及び6時を通る方向を言い、左右方向は、9時及び3時を通る方向を言う。
【0020】
前後方向は、エアバッグが運転者に対して近付く方向に沿った方向を言い、また、上下方向と左右方向とに直交する方向である。この場合、前方とは、エアバッグを運転者側から見た場合に、エアバッグに対して手前側(運転者側)の方向(言い換えると、エアバッグが運転者に近付く向きの方向)を言い、後方とは、エアバッグ装置に対して奥側(ステアリングホイール側)の方向(言い換えると、エアバッグが運転者から離れる向きの方向)を言う。
更に、エアバッグの膨張展開動作に関する説明では、前後方向における前方の向きを、エアバッグのバッグストローク方向と言い、上下方向及び左右方向をまとめてバッグ直交方向と言うこともある(
図4及び
図5を参照)。
【0021】
本実施例のエアバッグ装置1は、自動車のステアリングホイール80に取り付けられており(例えば
図4及び
図5を参照)、自動車の衝突時等に、エアバッグ装置1のエアバッグ10が運転者(乗員)70側となる前方に向けて膨張展開する。この膨張展開したエアバッグ10に運転者70が接触して拘束されることによって、運転者70を安全に保護できる。
【0022】
本実施例のエアバッグ装置1は、
図1に示すエアバッグ10と、エアバッグ10にガスを供給するインフレーター11と、エアバッグ10及びインフレーター11等を保持するリテーナー12とを有する(
図2及び
図3を参照)。また、エアバッグ10は、所定の手順で折り畳まれ、更に、その折り畳まれた形態が、図示しないラッピング部材によって包まれて保持された状態でリテーナー12に取り付けられている。なお本発明において、エアバッグ装置1を形成する部品又は部材のうち、エアバッグ10以外の部品又は部材は特に限定されない。
【0023】
本実施例のエアバッグ10は、袋状に形成されるエアバッグ本体部20と、エアバッグ本体部20の内部に配されるテザー部材30と、テザー部材30を移動可能(摺動可能)に保持するテザー保持部40と、エアバッグ本体部20内でガスの流れを案内する整流布50(
図1では、不図示)とを有する。なお、本発明のエアバッグは、ヒートパッチ等の補強布のようなその他の部材がエアバッグ本体部内に設けられていてもよい。
【0024】
エアバッグ本体部20には、インフレーター11の一部を挿通させる挿通開口部23と、エアバッグ本体部20内のガスを排出するためのベントホール24とが設けられている。なお本発明において、ベントホールの設置箇所、ベントホールの形状、及びベントホールの設置数は特に限定されず、エアバッグの大きさや膨張形状等に応じて変更可能である。
【0025】
本実施例のエアバッグ本体部20は、2枚の基布(パネル)21,22を用いて袋状に形成されている。具体的に説明すると、エアバッグ本体部20は、
図1に示すように、インフレーター11を挿通させる挿通開口部23が設けられた第1基布(リアパネル)21と、エアバッグ10の膨張展開時に運転者70に対向するように配されるとともに運転者70を接触させる側の面を形成する第2基布(フロントパネル)22とを有する。
【0026】
第1基布21と第2基布22とは、それぞれ円形又は略円形の形状を有しており、互いの外周縁部を縫製加工によって縫い合わせて第1基布21及び第2基布22を一体化することによって、袋状のエアバッグ本体部20が形成されている。
【0027】
この場合、第1基布21及び第2基布22の外周縁部には、第1基布21と第2基布22を縫い合わせる第1縫製部61が縫製糸により形成され、この第1縫製部61によって、第1基布21と第2基布22とが空気の漏れを生じさせないように縫合されている。また、第1基布21の中央部分には、第1基布21を貫通する上述した挿通開口部23が設けられており、第1基布21の挿通開口部23から離れた位置には、2つのベントホール24が設けられている。
【0028】
本実施例のエアバッグ10(エアバッグ本体部20)は、エアバッグ本体部20の内部にガスが供給されてエアバッグ本体部20が膨張展開したときに、
図2及び
図3に示したように、挿通開口部23が設けられたリア側バッグ中央部(第1バッグ中央部)16と、リア側バッグ中央部16に対向して配されるフロント側バッグ中央部(第2バッグ中央部)17と、リア側バッグ中央部16の外縁部及びフロント側バッグ中央部17の外縁部間に配されるバッグ側面部18とを有する。
【0029】
本実施例において、リア側バッグ中央部16は、第1基布21の少なくとも一部と、第1基布21に縫い合わされるテザー保持部40の少なくとも一部とを含む部分により形成されており、また、第1基布21のバッグ側面部18を形成する外周縁部よりも内側(第1基布21の中心に近い側)に配されている。この場合、リア側バッグ中央部16は、第1基布21及びテザー保持部40において、第1基布21の挿通開口部23及びテザー保持部40の挿通開口部41と、第1基布21にテザー保持部40を縫い付ける後述の第2縫製部62とを含む部分(好ましくは、円形の部分)により形成される。例えば、リア側バッグ中央部16は、第1基布21の中心から第1基布21の半径の20%の位置までの円形の面積部分、好ましくは第1基布21の中心から第1基布21の半径の30%の位置までの円形の面積部分を含んで形成される。なお本発明において、リア側バッグ中央部はこれに限定されるものではなく、例えば第1基布の挿通開口部を少なくとも含んで形成されていればよい。
【0030】
フロント側バッグ中央部17は、円形又は略円形の第2基布22の中心を少なくとも含む部分により形成されており、また、第2基布22のバッグ側面部18を形成する外周縁部よりも内側(第2基布22の中心に近い側)に配されている。本実施例の場合、フロント側バッグ中央部17は、第2基布22にテザー部材30を縫い付ける後述の第3縫製部63を含む部分(好ましくは、円形の部分)により形成される。例えば、フロント側バッグ中央部17は、リア側バッグ中央部16と同じように、第2基布22の中心から第2基布22の半径の20%の位置までの円形の面積部分、好ましくは第2基布22の中心から第2基布22の半径の30%の位置までの円形の面積部分を含んで形成される。なお本発明において、フロント側バッグ中央部はこれに限定されるものではなく、例えば第2基布の一部を少なくとも含んで形成されていればよい。
【0031】
本実施例のバッグ側面部18は、第1基布21及び第2基布22を縫い合わせる第1縫製部61を少なくとも含む部分により形成される。また、バッグ側面部18は、第1基布21における第2縫製部62の位置よりも径方向の外側に配される外周部の少なくとも一部と、第2基布22における第3縫製部63の位置よりも径方向の外側に配される外周部の少なくとも一部とにより形成される。具体的には、バッグ側面部18は、第1基布21のリア側バッグ中央部16よりも径方向の外側に配される外周縁部と、第2基布22のフロント側バッグ中央部17よりも径方向の外側に配される外周縁部とにより形成される。本実施例の場合、第1基布21の外周縁部は、第1基布21におけるリア側バッグ中央部16以外の外周側の部分であり、第2基布22の外周縁部は、第2基布22におけるフロント側バッグ中央部17以外の外周側の部分である。バッグ側面部18は、例えば膨張展開したエアバッグ本体部20を後方側(リア側バッグ中央部16の側)又は前方側(フロント側バッグ中央部17の側)から見たときに、膨張展開したエアバッグ本体部20の外周縁及びその近傍の部分を形成している。なお本発明において、バッグ側面部はこれに限定されるものではなく、例えば第1縫製部を少なくとも含んで形成されていればよい。
【0032】
また、本実施例のバッグ側面部18は、エアバッグ本体部20が膨張展開するときに、エアバッグ10が膨張展開する段階に応じて、後述するようにテザー部材30の働きにより、バッグ側面部18の全体が外側に膨らむような形状(
図2を参照)を有することや、バッグ側面部18の少なくとも一部が内側に凹むような括れた形状(
図3を参照)を有することができる。
【0033】
本実施例の第1基布(リアパネル)21には、テザー保持部40が縫製加工によって縫い付けられている。このテザー保持部40は、円形又は略円形の形状を有する基布により形成されている。テザー保持部40の中央部分には、インフレーター11の一部を挿通させる円形の挿通開口部41が設けられている。
【0034】
本実施例において、円形のテザー保持部40の外周縁から少し内側(中心側)に入った位置には、第1基布21とテザー保持部40とを縫い合わせる第2縫製部62が円形状に形成されている。この場合、テザー保持部40は、テザー保持部40の挿通開口部41の位置と第1基布21に設けた挿通開口部23の位置とを合わせて、第2縫製部62で第1基布21に縫合されている。このテザー保持部40は、上述したように、第2縫製部62で縫い合わせられる第1基布21とともに、エアバッグ10のリア側バッグ中央部16を形成している。
【0035】
テザー保持部40の外周縁部には、テザー部材30の後述するテザーベルト部32をそれぞれ挿通させる4つのスリット部42が設けられている。本実施例の場合、4つのスリット部42は、テザー保持部40の第2縫製部62よりも外側の範囲で、且つ、膨張展開したエアバッグ10を前方側から見たときのエアバッグ10の向きを時計の文字盤で表す場合に、テザー保持部40の3時、6時、9時、及び12時のそれぞれの位置に設けられている。本実施例のテザー保持部40は、テザー保持部40の4つのスリット部42にテザー部材30の4つのテザーベルト部32をそれぞれ挿通させることにより、各テザーベルト部32を移動可能(摺動可能)に保持している。
【0036】
テザー部材30は、1枚の基布から形成されており、また、円形又は略円形に形成されるテザー基部31と、テザー基部31の外周縁から延びる4つのテザーベルト部32とを有する。なお本発明において、テザー部材は、2枚以上の基布が互いに縫い合わされることによって一体的に形成されていてもよい。
【0037】
テザー基部31は、縫製加工で形成される第3縫製部63により第2基布(フロントパネル)22に固定されている。この場合、テザー基部31は、第2基布22のフロント側バッグ中央部17を形成する部分(すなわち、第2基布22の中心から第2基布22の半径の20%の位置までの円形の面積部分を含む部分)に第3縫製部63を介して固定されている中央固定部33を有する。
【0038】
テザー部材30の4つのテザーベルト部32は、それぞれ、テザー基部31と一体的に形成されるとともに、細長い帯状に形成されている。各テザーベルト部32は、テザーベルト部32の長さ方向の全体に亘って、一定又は略一定の幅寸法を有する。この場合、テザーベルト部32の幅寸法は、テザー保持部40のスリット部42に挿通可能な大きさで、且つ、テザー保持部40に対してテザーベルト部32を移動させるときにテザーベルト部32がテザー保持部40に引っ掛からない大きさに設定されている。
【0039】
本実施例において、テザーベルト部32は、膨張展開したエアバッグ10を前方側から見たときのエアバッグ10の各部分を時計の文字盤で表す場合に、テザー基部31の3時、6時、9時、及び12時のそれぞれの位置から、テザー基部31における半径方向の外側に向けて延びている。この場合、帯状の各テザーベルト部32に関して、テザーベルト部32のテザー基部31に連結する側の端部を基端部とし、テザーベルト部32における基端部とは反対側の端部を先端部とする。
【0040】
4つのテザーベルト部32は、それぞれ、テザー保持部40に設けられたスリット部42に挿通されている。更に、テザーベルト部32の先端部は、第1基布21及び第2基布22間に挟まれた状態で第1縫製部61によって固定されている。この場合、エアバッグ10のバッグ側面部18は、第1基布21の外周縁部と第2基布22の外周縁部とを含んで形成されているため、各テザーベルト部32の先端部は、エアバッグ10のバッグ側面部18に第1縫製部61を介して固定されている側面固定部34を有する。また、テザーベルト部32の4つの側面固定部34は、膨張展開したエアバッグ10において、エアバッグ本体部20の3時、6時、9時、及び12時のそれぞれの位置に配されている。
【0041】
本実施例において、各テザーベルト部32は、テザー保持部40のスリット部42に挿通されることにより、テザー保持部40が一体的に縫合されたリア側バッグ中央部16に、テザーベルト部32における基端部と先端部(側面固定部34)との間の部分が移動可能に保持されている。
【0042】
本実施例の整流布50は、エアバッグ本体部20の内部に、インフレーター11の少なくとも一部を前方側から覆うように配されている。また、本実施例の整流布50は、整流布50の少なくとも一部が、エアバッグ10におけるテザー部材30のテザー基部31とテザー保持部40との間に配されるとともに、インフレーター11から供給されるガスを、エアバッグ10のバッグ側面部18に向けて案内するよう配されている。なお本発明において、整流布の形状、大きさ、エアバッグ本体部への取り付け位置等は特に限定されない。また、本発明のエアバッグは、整流布を設けずに形成されていてもよい。
【0043】
上述のようにエアバッグ本体部20内にテザー部材30、テザー保持部40、及び整流布50が設置されたエアバッグ10は、所定の手順で折り畳まれるとともに、その折り畳まれたエアバッグ10にラッピング部材が被せられることによって、エアバッグ10の折り畳まれた形態が保持される。更に、エアバッグ本体部20に設けた挿通開口部23とテザー保持部40に設けた挿通開口部41とにインフレーター11の一部を挿通させるとともに、エアバッグ10及びインフレーター11をリテーナー12に取り付けて保持することによって、本実施例のエアバッグ10を有するエアバッグ装置1が製造される。
また、上述のように製造されたエアバッグ装置1は、例えば自動車のステアリングホイール80のセンターパッドに装着されることにより、自動車に搭載される。
【0044】
本実施例のエアバッグ10を有するエアバッグ装置1では、例えば自動車が衝突したとき等に衝撃を検知することにより、エアバッグ装置1のインフレーター11を作動させてインフレーター11からガスを発生させ、そのガスをエアバッグ10のエアバッグ本体部20内に供給する。これにより、エアバッグ10を膨張展開させることができる。
【0045】
次に、上述した本実施例のエアバッグ10が膨張展開するときのエアバッグ10の膨張展開動作について、
図2及び
図3を参照しながら順番に説明する。
本実施例のエアバッグ10を有するエアバッグ装置1では、インフレーター11のガスがエアバッグ本体部20内に供給されることにより、折り畳まれた形態のエアバッグ10が膨張して展開し始める。
【0046】
このとき、エアバッグ本体部20内では、インフレーター11から供給されるガスの流れが、エアバッグ本体部20内に設けた整流布50によって制御(案内)されることにより、供給されたガスが、例えばインフレーター11が設置されるエアバッグ10の中心部から、バッグストローク方向に直交するバッグ直交方向(上下方向及び左右方向)に向けて流れる。
【0047】
これにより、エアバッグ10は、
図2に示すように、膨張展開の初期段階において、エアバッグ10の運転者に対向して配される対向面の面積が増大するようにバッグ直交方向への膨張展開が促されるため、エアバッグ10を運転者側から見た正面視において円形又は略円形の形状に拡げることができる。更に、エアバッグ10のフロント側バッグ中央部17とバッグ側面部18とがテザー部材30によって連結されているため、ガスの流動によってエアバッグ10の膨張展開がバッグ直交方向へ促されることにより、テザー部材30もバッグ直交方向に引っ張られ、それによって、エアバッグ10のバッグストローク方向への膨張展開を比較的抑えることができる。
【0048】
次に、膨張展開の初期段階で円形又は略円形の形状に膨らんだエアバッグ10は、初期段階に続く中期段階において、バッグストローク方向(前方)に向けて膨張展開する。
このとき、エアバッグ10内では、初期段階においてガスがエアバッグ10のバッグ側面部18側に行き渡っているため、中期段階におけるガスの流れは、エアバッグ10のフロント側バッグ中央部17に向けて案内される。これにより、エアバッグ10の膨張展開の挙動が初期段階から変わり、エアバッグ10の膨張展開がバッグストローク方向に促されるため、フロント側バッグ中央部17がリア側バッグ中央部16から離れるようにエアバッグ10を円滑に膨張展開させることができる。
【0049】
更に、本実施例のエアバッグ10では、テザー部材30のテザー基部31がエアバッグ10のフロント側バッグ中央部17に固定されているともに、各テザーベルト部32の先端部がエアバッグ10のバッグ側面部18に固定されている。また、テザー部材30の各テザーベルト部32は、エアバッグ10のリア側バッグ中央部16に設けられたテザー保持部40に移動可能に保持されている。このため、膨張展開の中期段階では、バッグ直交方向に膨らんだエアバッグ10が、バッグストローク方向に向けて膨張展開することにより、テザー部材30のテザーベルト部32が延ばされて、テザーベルト部32に張力を生じさせる。
【0050】
このように中期段階でテザーベルト部32に張力が発生することにより、エアバッグ10の膨張展開動作がテザー部材30によって規制され、それによって、エアバッグ10の膨張展開がバッグストローク方向に進むに従って、エアバッグ10のバッグ側面部18がテザー部材30によって内側に向けて引っ張られる。このため、エアバッグ本体部20を、バッグ側面部18のテザーベルト部32が固定されている3時、6時、9時、及び12時の部分を中心にして、バッグ直交方向の内側に向けて少しずつ凹ませることができる。
【0051】
また、バッグ側面部18がテザー部材30によって引っ張られて凹むことにより、バッグ側面部18に行き渡っていたガスをフロント側バッグ中央部17に向けて移動させることができるため、エアバッグ10のバッグストローク方向への膨張展開を更に促進させることも可能となる。
【0052】
そして、エアバッグ10の膨張展開の最終段階では、エアバッグ10を、
図3に示すように、エアバッグ本体部20をバッグストローク方向に大きく膨らませるとともに、エアバッグ10のバッグ側面部18を、3時、6時、9時、及び12時の部分を中心にしてテザー部材30によって凹ませた形状に膨張展開させることができる。
【0053】
上述のように初期段階から最終段階にかけて膨張展開動作を行う本実施例のエアバッグ10を備えたエアバッグ装置1によれば、運転者70を、運転者70の体格に応じて、以下のようにエアバッグ10で拘束して適切に保護することができる。
【0054】
具体的に説明すると、例えば運転者70が小柄な人70aである場合、その運転者70aは、ステアリングホイール80に近接した位置でシートに着座して、自動車の運転を行うことが想定される。このため、運転者70aとステアリングホイール80との距離は、例えば運転者70が大柄な人70bである場合(例えば
図5を参照)に比べて、短くなる。
【0055】
このような小柄な運転者70aが運転している自動車が衝突等を起こした場合、ステアリングホイール80に装着されたエアバッグ装置1が自動車の衝撃を検知して作動し、本実施例のエアバッグ10を膨張展開させる。
【0056】
このとき、本実施例のエアバッグ10は、上述したように膨張展開の初期段階において、
図2に示したように、エアバッグ10の乗員対向面の面積を増大させるようにバッグ直交方向に拡がって、ステアリングホイール80の前面側で円形又は略円形の形状に膨張展開する。
【0057】
膨張展開の初期段階において、このようにエアバッグ10がステアリングホイール80の半径方向に拡がることにより、小柄な運転者70aがステアリングホイール80に近接する位置で運転している場合、
図4に示すように、膨張展開したエアバッグ10が運転者70aとステアリングホイール80との間に迅速に入り込むことができる。
【0058】
またこの場合、運転者70aとステアリングホイール80との間の距離も短いため、エアバッグ10が最終段階まで膨張展開する前に、エアバッグ10に運転者70aを接触させることができる。これにより、運転者70aを、ステアリングホイール80に接触させる前に、膨張展開したエアバッグ10で拘束できるため、自動車の衝突時に小柄な運転者70aを安全に保護して、運転者70aが受ける衝撃を小さく抑えることができる。
【0059】
更に、エアバッグ10は、運転者70aがエアバッグ10に接触するときに最終段階まで完全に膨張展開していないため、エアバッグ本体部20の内圧が高くなっておらず、例えば膨張展開したエアバッグ10が運転者70aの胸部や腹部に直接接触したとしても、エアバッグ10が運転者70aの胸部や腹部に傷害を与えることもない。
【0060】
一方、運転者70が大柄な人70bである場合、大柄な運転者70bは、ステアリングホイール80から離れた位置でシートに着座して、自動車の運転を行うことが想定される。このように大柄な運転者70bが運転している自動車が衝突等を起こした場合、上述したように、エアバッグ装置1が自動車の衝撃を検知して作動し、本実施例のエアバッグ10を膨張展開させる。
【0061】
このとき、運転者70bとステアリングホイール80との間の距離が長いため、本実施例のエアバッグ10は、運転者70bがエアバッグ10に接触する前に、
図3に示した最終段階の形状、すなわち、バッグストローク方向に大きく膨らむとともに、エアバッグ10のバッグ側面部18を凹ませた形状に膨張展開することができる。
【0062】
このため、エアバッグ10は、最終段階まで完全に膨張展開した形状で運転者70bを接触させて拘束できるため、自動車の衝突時等に、バッグストローク方向に大きく膨らんだエアバッグ10が、運転者70bの大きな荷重を安定して受け止めて、運転者70bを安全に保護することができる。更に、最終段階まで膨張展開したエアバッグ10では、エアバッグ10のバッグ側面部18が3時、6時、9時、及び12時の部分を中心にして凹んでいる。このため、膨張展開したエアバッグ10に運転者70bが接触したときに、運転者70bの胸部及び腹部とエアバッグ10との接触範囲を小さく抑えることができ、それによって、膨張展開したエアバッグ10が運転者70bの胸部及び腹部に傷害を与える可能性を大幅に低減できる。
【0063】
更に、大柄な運転者70bをエアバッグ10で拘束した後、エアバッグ10の運転者70bを接触させた部分が凹むことによって、テザー部材30が緩められる。このため、エアバッグ10のバッグ側面部18が、3時、9時、及び12時の部分でバッグ直交方向に膨らむことができ、それによって、運転者70bをより広く広がったエアバッグ10で安定して保護できる。更に、このようにバッグ側面部18が膨らむことにより、運転者70bの接触に起因してエアバッグ本体部20の内圧が増大することを防止又は抑制できる。
【0064】
一方、運転者70bを接触させたエアバッグ10は、上述したようにエアバッグ10のバッグ側面部18を3時、9時、及び12時の部分で膨らませるものの、バッグ側面部18の6時の部分は、運転者70bとステアリングホイール80とによって挟まれるため、テザー部材30が上述のように緩められても、当該6時の部分は膨らみ難く、凹んだ形状を有することができる。これにより、運転者70bの胸部や腹部がエアバッグ10に接触する範囲を小さい大きさで維持できるため、エアバッグ10で運転者70bを保護した後も、エアバッグ10が運転者70bの胸部及び腹部に傷害を与えることを防止できる。
【0065】
以上のように、本実施例のエアバッグ10を備えたエアバッグ装置1であれば、乗員の体格や着座位置等に関わらず、自動車の衝突時等に、運転者70をエアバッグ10で適切に拘束できるため、運転者70を安全に且つ安定して保護することができる。
【0066】
また、本実施例のエアバッグ10では、エアバッグ10の膨張展開時に、テザー部材30を移動可能に保持するテザー保持部40が、エアバッグ装置1のリテーナー12に固定されて動くことがないエアバッグ10のリア側バッグ中央部16に設けられている。
【0067】
これにより、テザー保持部40が、エアバッグ本体部20の膨張展開時に、エアバッグ本体部20内に供給されるガスの流れやエアバッグ本体部20の膨張展開動作等の影響を受け難くすることができる。その結果、エアバッグ10の膨張展開動作をテザー部材30によって確実に規制して安定して制御できるため、エアバッグ10を、インフレーター11からガスが供給されてから最終段階まで、所定の挙動で安定して膨張展開させることができる。
【0068】
なお、上述した実施例において、テザー保持部40は、4つのスリット部42を有する円形又は略円形の基布を第1基布21に縫い合わせることによって設けられている。しかし、本発明のテザー保持部は、これに限定されるものではなく、テザー部材のテザーベルト部を移動可能に保持することが可能であれば、その他の構造で形成されていてもよい。
【0069】
例えば、本発明のテザー保持部は、細長い生地片の一端部と他端部とを第1基布(リアパネル)に縫い合わせるとともに、当該生地片における一端部及び他端部間の中間部分と第1基布との間にテザー部材のテザーベルト部を挿通させるような構造で形成されていてもよい。また、本発明のテザー保持部は、エアバッグ本体部内に設けられる補強布の外周縁部に、テザー部材のテザーベルト部を挿通させるスリット部を設けることによって、当該補強布と一体的に形成されていてもよい。この場合、補強布の外周縁部に形成されるスリット部は、補強布を第1基布(リアパネル)に縫い合わせる縫製部よりも外側の部分に配されることが好ましい。
【0070】
テザー保持部が、上述のように細長い生地片によって形成される場合であっても、また、補強布と一体的に形成される場合であっても、テザー保持部をエアバッグのリア側バッグ中央部に設けることが可能であり、また、上述した実施例のテザー保持部40と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0071】
また、上述した実施例において、テザー部材30は、テザー基部31から延びる4つのテザーベルト部32を有する。しかし本発明において、テザー部材は、テザー基部から延びる少なくとも1つのテザーベルト部を有していればよい。また、テザー部材は、エアバッグ本体部に対し、フロント側バッグ中央部の少なくとも1箇所で固定されており、且つ、バッグ側面部の少なくとも1箇所で固定されていればよい。例えば、テザー部材は、エアバッグ本体部のフロント側バッグ中央部に2箇所以上の固定部で固定されていてもよく、また、エアバッグ本体部のバッグ側面部に3箇所以下、又は5箇所以上で固定されていてもよい。
【0072】
更に、例えばテザー部材が1つ又は複数のテザーベルト部を有する場合、少なくとも1つのテザーベルト部の先端部が、エアバッグ本体部の6時の部分に固定されて側面固定部を形成していることが好ましい。これにより、エアバッグが最終段階の形状に膨張展開したときに、上述した実施例のエアバッグ10と同様に、膨張展開したエアバッグが運転者の胸部及び腹部に傷害を与えることを防止できる。