(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147877
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】プラテン溶接用テスター
(51)【国際特許分類】
B23K 11/30 20060101AFI20241009BHJP
B23K 11/24 20060101ALI20241009BHJP
B23K 11/14 20060101ALI20241009BHJP
B23P 19/04 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B23K11/30 311
B23K11/24 338
B23K11/14 310
B23P19/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060579
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】392014760
【氏名又は名称】新光機器株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508107593
【氏名又は名称】P&C株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蕗澤 武夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 良男
【テーマコード(参考)】
3C030
【Fターム(参考)】
3C030BD06
(57)【要約】
【課題】プラテン溶接を行う際のセット不良を的確に検出することができるプラテン溶接用テスターを提供する。
【解決手段】本発明のプラテン溶接用テスターは、電気抵抗溶接機の下部プラテン10の上に固定される下部電極21と、下部電極の内部に昇降可能に配置され、上端下部電極の上方に突出させたガイドピン22と、ガイドピンを上向きに弾発するコイルスプリング31と、下部電極21の側面に固定されたセンサーケース40と、センサーケースの内部に収納されたポテンションメータ41と、ガイドピン22の動きをポテンションメータ41に伝える連結アーム44とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗溶接機の下部プラテンの上面に固定される下部電極と、
前記下部電極の内部に昇降可能に配置され、上端を前記下部電極の上方に突出させたガイドピンと、
前記ガイドピンと同軸に配置され、前記ガイドピンを上向きに弾発するコイルスプリングと、
前記下部電極の側面に固定されたセンサーケースと、
前記センサーケースの内部に収納されたポテンションメータと、
前記ガイドピンの動きを前記ポテンションメータに伝える連結アームと、からなることを特徴とするプラテン溶接用テスター。
【請求項2】
前記ガイドピンの下方に昇降軸が設けられ、その下端に前記連結アームが接続されていることを特徴とする請求項1に記載のプラテン溶接用テスター。
【請求項3】
前記昇降軸の下端には、前記連結アームを上向きに弾発する第2のコイルスプリングが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラテン溶接用テスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトやナットなどの溶接対象物を相手材に抵抗溶接する際に用いられるプラテン溶接用テスターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボルトやナットなどの溶接対象物を相手材に抵抗溶接するために、従来から
図1に示すような抵抗溶接機が用いられている。この抵抗溶接機は固定された下部プラテン1と、昇降可能な上部プラテン2とを備えており、下部プラテン1の側方にはBSホーン3を介して下部電極4が取り付けられ、上部プラテン2の側方にはBSホーン5を介して上部電極6が取り付けられている。ボルトやナットなどの溶接対象物と相手材は下部電極4の上端にセットされ、その上方から上部プラテン2とともに上部電極6が下降し、下部電極4との間で溶接対象物と相手材とを加圧し、溶接電流が通電されて抵抗溶接が行われる。
【0003】
下部電極4の中心には図示を略したガイドピンが設けられており、下部電極4の下方にはガイドピンの高さを検出するセンサボックス7が設けられている。ボルトやナットなどの溶接対象物はこのガイドピンの上にセットされ、上部電極6により加圧される。このとき溶接対象物が正しくセットされずに表裏が反転していたような場合などにはガイドピンの降下量が変化するため、センサボックス7内のセンサがセット不良を検出し、制御手段が警告を発するようになっている。ガイドピンの動きについては、後に詳述する。このようなセンサボックスを備えた抵抗溶接機の一例は、特許文献1に記載されている。
【0004】
上記したように、従来の抵抗溶接機は下部プラテン1や上部プラテン2から側方に張り出した位置で溶接が行われる構造が一般的である。しかしこの構造では加圧溶接する際に不可避的に大きい曲げモーメントが発生するため、BSホーン3、5を十分に太くして大きい曲げモーメントに耐える剛性を付与する必要がある。そこで側方への張り出しを行わず、下部プラテン1と上部プラテン2に下部電極4と上部電極6を直接取り付け、下部プラテン1と上部プラテン2との間で加圧溶接を行うプラテン溶接機も開発されている。ところがこの場合には下部電極4の下方にセンサボックス7を設けることができず、プラテン溶接を行う際には溶接対象物のセット不良を検出することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、プラテン溶接を行う際のセット不良を的確に検出することができるプラテン溶接用テスターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明のプラテン溶接用テスターは、抵抗溶接機の下部プラテンの上面に固定される下部電極と、前記下部電極の内部に昇降可能に配置され、上端を前記下部電極の上方に突出させたガイドピンと、前記ガイドピンと同軸に配置され、前記ガイドピンを上向きに弾発するコイルスプリングと、前記下部電極の側面に固定されたセンサーケースと、前記センサーケースの内部に収納されたポテンションメータと、前記ガイドピンの動きを前記ポテンションメータに伝える連結アームと、からなることを特徴とするものである。
【0008】
なお、前記ガイドピンの下方に昇降軸が設けられ、その下端に前記連結アームが接続された構造とすることが好ましい。また、前記昇降軸の下端には、前記連結アームを上向きに弾発する第2のコイルスプリングが設けられている構造とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプラテン溶接用テスターを用いれば、プラテン溶接を行う際のセット不良を的確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施形態のプラテン溶接用テスターを備えた抵抗溶接機を示す側面図である。
【
図3】実施形態のプラテン溶接用テスターの側面図である。
【
図4】実施形態のプラテン溶接用テスターの正面図である。
【
図5】実施形態のプラテン溶接用テスターの上面図である。
【
図6】プラテン溶接用テスターの作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
図2は実施形態の抵抗溶接機を示す側面図であり、10は下部プラテン、11は上部プラテン、12は上部プラテン11の昇降手段である。上部プラテン11には上部電極13が直接固定されており、下部プラテン10の上面には、本発明のプラテン溶接用テスター20が固定されている。なお、上部プラテン11は銅バー14を介して溶接機本体15に接続され、下部プラテン10も銅バー16を介して溶接機本体15に接続されている。
【0012】
図3に示すように、本発明のプラテン溶接用テスター20は、下部電極21の内部にガイドピン22と昇降軸23を備えたものである。下部電極21はベースユニット24とその上方のホルダー25とからなり、何れも導電性に優れた銅合金製である。下部電極21のベースユニット24は下部プラテン10の上面に直接固定され、プラテン溶接用テスター20専用の制御部(コントローラー)に接続されている。
【0013】
図3に示すガイドピン22は昇降軸23の上端にセットされている。図示のガイドピン22は溶接対象物がナットである場合に用いられるものであり、円柱状本体26の上部にテーパ部27を介してナットの内部に挿入できる細径部28と、先端部29とが形成されている。ガイドピン22は溶接対象物に応じて交換されるものであるが、この実施形態のガイドピン22はナット用のものである。
【0014】
昇降軸33と高さ調整ピン23はブッシュ30にガイドされて昇降するものである。昇降軸33の外周にはコイルスプリング31が設けられており、昇降軸33及びガイドピン22を常に上向きに弾発している。しかしガイドピン22の下端付近に形成された太径部32が下部電極21内のパッキン34に当るため、ガイドピン22の最高突出位置は
図3に示す通りであり、これ以上に突出することはない。
【0015】
このベースユニット24とホルダー25とからなる下部電極21の側面には、センサーケース40が固定されている。センサーケース40は縦長の箱状体であり、その内部にはポテンショメータ41が取り付けられている。ポテンショメータ41は可変抵抗器と呼ばれるもので、抵抗体の上でワイパーを移動させることによって抵抗値を可変としたものである。ここでは直線型のポテンショメータ41が用いられており、検出軸42の位置を抵抗値として出力することができる。この検出軸42はガイドピン22及び昇降軸23と平行に配置されている。
【0016】
ベースユニット24の側面には窓穴43が形成されており、一端を検出軸42に固定された連結アーム44がこの窓穴43を通り、昇降軸33の下方に延びている。連結アーム44は剛性を備え、端部を屈曲させた形状である。
図3に示すように、昇降軸33の下方位置には連結アーム44を上向きに弾発する第2のコイルスプリング45が設けられている。このコイルスプリング45によって連結アーム44は常に昇降軸33の下面に接している。このため、昇降軸33が
図3の位置から下降すると連結アーム44も押し下げられるので、昇降軸33の高さをポテンショメータ41の出力として取り出すことができる。
【0017】
下部電極21には溶接電流が通電されるため強い磁界が形成されることが避けられない。このため磁気や電流・電圧を利用した位置センサを用いた場合には、強い磁界の影響を受けて正しい計測が行えない。しかしポテンショメータ41は抵抗値の変化を利用するものであるから、溶接電流による強い磁界の影響を受けることなく、精度よく昇降軸23の昇降位置を検出することができる。
【0018】
図3に示すように、下部電極21の外周には水冷ボックス50が設けられている。水冷ボックス50は抵抗溶接時に最も高温となる下部電極21を包むように形成されており、
図5に示すように冷却水流入口51と冷却水排出口52とを備えている。冷却水の漏洩を防止するため、水冷ボックス50の内部にはOリングなどのシール材53が設けられている。
【0019】
以下に
図6を参照しつつ、本発明のプラテン溶接用テスターの作動を説明する。
図6の(A)は下部電極21のガイドピン22上に相手材Pと溶接対象物であるナット60が正しくセットされ、上部電極13が下降した状態を示している。ナット60は座面に溶接用突起61を備えたウエルドナットである。ナット60のねじ孔の下部はテーパ状に面取りされており、この面取りされた部分62にガイドピン22のテーパ部27が嵌まっている。このため上部電極13がナット60の溶接用突起61を相手材Pに押し付けたときのガイドピン22の位置は
図6の(A)の通りとなり、下部電極21の上面からガイドピン22の上端までの高さは、H1となる。
【0020】
図6の(A)の状態で上部電極13と下部電極21との間に溶接電流が流されると、ナット60の溶接用突起61の部分に溶接電流が集中して高温となり、溶接が行われる。このときのガイドピン22の位置をポテンショメータ41により検出し、H1に相当する高さであれば溶接が正常に行われたと判定する。
【0021】
図6の(B)は、下部電極21の上に相手材Pは正しくセットされているが、溶接対象物であるナット60が誤って裏向きにセットされ、上部電極13が下降した状態を示している。ナット60が反転していても、相手材Pから上部電極15の下面までの高さhは変わらない。しかしナット60のねじ孔のテーパ状に面取りされた部分62が上側に来るため、ガイドピン22は
図6の(B)の位置よりも上昇することができない。このときには下部電極21の上面からガイドピン22の上端までの高さはH2となり、正常な場合のH1よりも低くなる。このときのガイドピン22の位置をポテンショメータ41により検出し、H2に相当する高さであればナット60が反転した状態でセットされたと判断して、制御手段がブザーやライトにより警告を発する。
【0022】
図6の(C)は、下部電極21の上に相手材Pは正しくセットされたが、溶接対象物であるナット60がセットされていない状態を示している。上部電極13の中心孔の内径はガイドピン22の外径よりも大きい。上部電極13が下降してきてもナット60が存在しないので、ガイドピン22はナット60による規制を受けることなく上部電極13の中心孔の内部に突出する。この場合には下部電極21の上面からガイドピン22の上端までの高さは最も高いH3となる。このときのガイドピン22の位置をポテンショメータ41により検出し、H3に相当する高さであればナット60がセットされていないと判断して、制御手段がブザーやライトにより警告を発する。
【0023】
図6の(D)は、下部電極21の上に相手材Pがセットされず、溶接対象物であるナット60のみがセットされた状態を示している。この場合には(A)の正常な状態よりも相手材Pの板厚分だけガイドピン22の位置は低くなり、H4となる。このときにも制御手段がブザーやライトにより警告を発する。
【0024】
上記したほか、ナット60のサイズ違いや、相手材Pが二重にセットされた場合などにも、上部電極13が下降したときのガイドピン22の位置が異なることとなるため、警告を発することができる。
【0025】
また、溶接対象物がボルトである場合にも、ガイドピン22をボルト用に交換すれば、上記と同様の原理でセット不良を検出することができる。
【0026】
以上に説明した通り本発明のプラテン溶接用テスターは、下部プラテン10の上に固定される下部電極21の側面に固定されたセンサーケース40にポテンションメータ41を収納し、ガイドピン22の昇降位置を連結アーム44によりポテンションメータ41に伝えて検出する構造としたので、プラテン溶接を行う際のセット不良を的確に検出することができる利点がある。またコイルスプリング31を、ガイドピン22、昇降軸33及び高さ調整ピン23と同軸に配置したので、全体の高さを低くすることができ、下部プラテン10と上部プラテン11との間に設置してプラテン溶接のセット不良を検出するに適したものである。
【符号の説明】
【0027】
1 下部プラテン
2 上部プラテン
3 BSホーン
4 下部電極
5 BSホーン
6 上部電極
7 センサボックス
10 下部プラテン
11 上部プラテン
12 昇降手段
13 上部電極
14 銅バー
15 溶接機本体
16 銅バー
20 プラテン溶接用テスター
21 下部電極
22 ガイドピン
23 高さ調整ピン
24 ベースユニット
25 ホルダー
26 円柱状本体
27 テーパ部
28 細径部
29 先端部
30 ブッシュ
31 コイルスプリング
32 太径部
33 昇降軸
34 パッキン
40 センサーケース
41 ポテンショメータ
42 検出軸
43 窓穴
44 連結アーム
45 第2のコイルスプリング
50 水冷ボックス
51 冷却水流入口
52 冷却水排出口
53 シール材
60 ナット
61 溶接用突起
62 面取りされた部分
H1 ナットが正しくセットされたときのガイドピンの上端高さ
H2 ナットが反転してセットされたときのガイドピンの上端高さ
H3 ナットがセットされなかったときのガイドピンの上端高さ
H4 相手材がセットされなかったときのガイドピンの上端高さ