(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147895
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】回転ノズル
(51)【国際特許分類】
B05B 3/06 20060101AFI20241009BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20241009BHJP
B08B 5/02 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B05B3/06
B08B3/02 Z
B08B5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060612
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000107767
【氏名又は名称】スプレーイングシステムスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】清野 太平
(72)【発明者】
【氏名】柏 智大
(72)【発明者】
【氏名】濱浦 俊一
【テーマコード(参考)】
3B116
3B201
4F033
【Fターム(参考)】
3B116BB32
3B116BB88
3B201BB32
3B201BB92
3B201BB98
4F033PA01
4F033PB02
4F033PC07
4F033PD01
4F033PD06
(57)【要約】
【課題】設計の自由度の高い回転ノズルを提供する。
【解決手段】
一態様に係る回転ノズルは、内部空間を有する筐体本体と、筐体本体内で軸線周りに回転可能な回転体であり、筐体本体と回転体の間に空隙を画成する、該回転体と、を備え、回転体は、流体の噴射孔を有する本体部と、本体部に連結され、空隙内に配置された羽根部とを有し、筐体本体は、流体を噴射孔に供給する第1供給孔と、第1供給孔に非接続であり、回転体を回転させるために空隙に流体を供給する第2供給孔と、空隙から流体を排出する排出孔とを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する筐体本体と、
前記筐体本体内で軸線周りに回転可能な回転体であり、前記筐体本体と前記回転体の間に空隙を画成する、該回転体と、
を備え、
前記回転体は、流体の噴射孔を有する本体部と、前記本体部に連結され、前記空隙内に配置された羽根部とを有し、
前記筐体本体は、前記流体を前記噴射孔に供給する第1供給孔と、前記第1供給孔に非接続であり、前記回転体を回転させるために前記空隙に前記流体を供給する第2供給孔と、前記空隙から前記流体を排出する排出孔とを有する、
回転ノズル。
【請求項2】
前記回転体は、前記本体部の外周面から径方向の外側に突出するフランジ部を更に備え、
前記空隙は、前記筐体本体の内面と前記フランジ部との間に画成される、請求項1に記載の回転ノズル。
【請求項3】
前記第2供給孔を流れる前記流体の流量を調整する流量調整部を更に備える、請求項1又は2に記載の回転ノズル。
【請求項4】
前記筐体本体は、前記排出孔を含む複数の排出孔を有し、
前記流量調整部は、前記複数の排出孔のうち1つの排出孔を閉鎖する閉鎖部材を含む、請求項3に記載の回転ノズル。
【請求項5】
前記流量調整部は、前記第2供給孔又は前記排出孔の開度を調整するバルブを含む、請求項3に記載の回転ノズル。
【請求項6】
前記第2供給孔の少なくとも一部は、前記軸線に対して傾斜した方向に延在する、請求項1又は2に記載の回転ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
中間製品又は最終製品である対象物に流体を噴射し、当該対象物の表面に付着した洗浄液、加工油又は粉塵等を吹き飛ばして当該対象物を清掃する回転ノズルが広く利用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、対象物に空気を噴射するエアノズルが記載されている。特許文献1に記載のエアノズルは、固定ベース部と、固定ベース部に対して回転自在な円筒形状の回転ベース部と、複数の噴射孔を含み、回転ベース部と共に回転する噴射管部とを備えている。このエアノズルは、複数の噴射孔から空気を噴射して、回転ベース部を回転させながら対象物の水切りを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のエアノズルでは、複数の噴射孔から噴射される空気の反力を推進力として回転ベース部が回転するので、回転ベース部の回転方向及び回転速度は、複数の噴射孔からの空気の噴射角及び噴射流量に依存する。例えば、空気の噴射角を小さくすると回転ベース部の回転速度は低下し、空気の噴射角を大きくすると回転ベース部の回転速度は増加する。また、複数の噴射孔からの空気の噴射流量が大きくすると回転ベース部の回転速度は増加し、複数の噴射孔からの空気の噴射流量が小さくすると回転ベース部の回転速度は低下する。上記のように、上記エアノズルでは、回転ベース部の回転方向、回転速度、空気の噴射角及び噴射流量等の噴射条件が相互に依存しており、これらの噴射条件を独立して設計することは困難である。したがって、この種の回転ノズルには、設計上の制約が存在する。
【0006】
そこで本開示は、設計の自由度の高い回転ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る回転ノズルは、内部空間を有する筐体本体と、筐体本体内で軸線周りに回転可能な回転体であり、筐体本体と回転体の間に空隙を画成する、該回転体と、を備え、回転体は、流体の噴射孔を有する本体部と、本体部に連結され、空隙内に配置された羽根部とを有し、筐体本体は、流体を噴射孔に供給する第1供給孔と、第1供給孔に非接続であり、回転体を回転させるために空隙に流体を供給する第2供給孔と、空隙から流体を排出する排出孔とを有する。
【0008】
本態様に係る回転ノズルでは、第1供給孔から噴射孔に供給された流体は、噴射孔を通って対象物へ向けて噴射される。一方、第2供給孔に供給された流体は、空隙に導入され、羽根部に当たって回転体を軸線周りに回転させる。回転体を回転させた空隙内の流体は、排出孔を通って外部に排出される。上記のように、本態様の回転ノズルでは、対象物へ噴射される流体と回転体を回転させる流体とが独立した流路を流れるので、流体の噴射方向及び噴射流量を回転体の回転方向及び回転速度とは独立して設計することができる。したがって、回転ノズルの設計の自由度を向上させることができる。
【0009】
一態様では、回転体は、本体部の外周面から径方向の外側に突出するフランジ部を更に備え、空隙は、筐体本体の内面とフランジ部との間に画成されてもよい。
【0010】
一態様では、第2供給孔を流れる流体の流量を調整する流量調整部を更に備えてもよい。第2供給孔を流れる流体の流量を調整することにより、回転体の回転速度を独立して調整することができる。
【0011】
一態様では、筐体本体は、排出孔を含む複数の排出孔を有し、流量調整部は、複数の排出孔のうち1つの排出孔を閉鎖する閉鎖部材を含んでいてもよい。閉鎖部材によって複数の排出孔のうち1つの排出孔が閉鎖されると、空隙の内圧が高まり、当該空隙に導入される流体の流量が減少する。その結果、回転体の回転速度が低下する。すなわち、閉鎖部材を用いて排出孔を開閉することにより、回転体の回転速度を調整することができる。
【0012】
一態様では、流量調整部は、第2供給孔又は排出孔の開度を調整するバルブを含んでいてもよい。第2供給孔又は排出孔の開度を調整することにより、回転体の回転速度を調整することができる。
【0013】
一態様では、第2供給孔の少なくとも一部は、回転軸線に対して傾斜した方向に延在していてもよい。第2供給孔の少なくとも一部を回転軸線に対して傾斜させることにより、羽根部に向けて流体を噴射することができ、回転体に効率的に回転力を付与することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、回転ノズルの設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る回転ノズルの上方からの斜視図である。
【
図3】回転ノズルの一部を破断して示す断面斜視図である。
【
図5】
図4のA-A線に沿った回転ノズルの断面図である。
【
図6】
図4のB-B線に沿った筐体本体の断面図である。
【
図8】別の実施形態に係る回転ノズルの斜視図である。
【
図9】
図8に示す回転ノズルの一部を破断して示す断面斜視図である。
【
図10】更に別の実施形態に係る回転ノズルの断面図である。
【
図11】更に別の実施形態に係る回転ノズルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0017】
図1は、一実施形態に係る回転ノズル1の上方からの斜視図である。
図2は、回転ノズル1の下方からの斜視図である。
図3は、回転ノズル1の一部を破断して示す断面斜視図である。
図4は、回転ノズル1の上面図である。
図5は、
図4のA-A線に沿った回転ノズル1の断面図である。
【0018】
回転ノズル1は、対象物を乾燥、洗浄又は冷却するために対象物に流体を噴射する。対象物は、例えば樹脂成形品又は金属加工品である。樹脂成形品としては、樹脂製の容器、ボトル、自動車部品、包装材料、その他の樹脂部品が例示される。金属加工品としては、金属製の自動車部品、航空機部品、半導体部、電子部品、その他の金属部品が例示される。なお、対象物は、ベルトコンベアのメッシュベルト、又は、凹凸構造を有する建物の壁等の設備であってもよい。
【0019】
対象物へ噴射される流体は、気体又は液体である。例えば、回転ノズル1は、水を対象物に噴射して対象物の表面の汚れを洗浄する。また、回転ノズル1は、対象物に空気を吹き付けて対象物の表面から水を除去してもよい。なお、回転ノズル1は、対象物に流体を噴射して、粉塵又は加工油等の他の付着物を対象物から除去することも可能である。回転ノズル1は、流体の噴射範囲を広げるために、後述する回転体3を回転させながら流体を噴射する。以下の説明では、回転ノズル1の軸線Zに沿った方向において、後述する噴出口50b側の方向を回転ノズル1の先端側と称し、噴出口50bとは反対側の方向を回転ノズル1の基端側と称することがある。
【0020】
図1~
図5に示すように、回転ノズル1は、筐体2、回転体3及び軸受4を備えている。筐体2は、筐体本体5及びキャップ6を含み、回転体3の少なくとも一部を収容している。筐体本体5は、ステンレス等の金属によって構成され、内部空間Sを有する筒状を呈している(
図5参照)。
図3及び
図5に示すように、筐体本体5の中心軸線は、回転ノズル1の軸線Zに一致している。
【0021】
筐体本体5は、基端部11、中間部12及び先端部13を含んでいる。基端部11、中間部12及び先端部13は、回転ノズル1の基端側からこの順に配置されている。基端部11、中間部12及び先端部13は一体的に形成されていてもよいし、基端部11、中間部12及び先端部13のうち1つ以上が別部材であってもよい。
【0022】
図5に示すように、基端部11は、軸線Zを中心とする略円筒形状を呈している。基端部11の外周面には、ネジ山が形成されている。中間部12は、軸線Zを中心とする中空の筒状体であり、基端部11に連結されている。中間部12の内周面12aの径は、基端部11の内周面11aの径よりも大きい。なお、基端部11の内周面11aの径は、後述する第1供給孔21の内径に相当する。基端部11の下面には、軸線Zに垂直な方向に延在し、基端部11の内周面11aと中間部12の内周面12aとを接続する段差面11bが形成される。
【0023】
先端部13は、ベース部14及び延出部15を含んでいる。ベース部14は、軸線Zを中心とする略円筒形状を呈している。ベース部14の内周面14aの径は、中間部12の内周面12aの径よりも大きい。中間部12の下面には、軸線Zに垂直な方向に延在し、中間部12の内周面12aとベース部14の内周面14aとを接続する段差面12bが形成される。
【0024】
延出部15は、ベース部14の外縁から軸線Zの軸線方向(先端側)に延在している。延出部15は、軸線Zを中心とする略円筒形状を呈し、ベース部14の外径と略同じ外径を有している。一方、延出部15の内周面15aの径は、ベース部14の内周面14aの径よりも大きい。ベース部14の下面には、軸線Zに垂直な方向に延在し、ベース部14の内周面14aと延出部15の内周面15aとを接続する段差面14bが形成される。延出部15の内周面15aには、ネジ溝が形成されている。
【0025】
筐体本体5は、第1供給孔21、複数の第2供給孔22、及び、複数の排出孔23を有している。第1供給孔21は、軸線Zに沿って延在し、筐体本体5の基端部11を貫通している。第1供給孔21の基端側の端部は、基端部11の基端側の端面11cに開口している。
【0026】
図4に示すように、複数の第2供給孔22の各々は、入口22a及び出口22bを有し、入口22aと出口22bとの間で延在している。複数の第2供給孔22は、第1供給孔21に非接続の貫通孔である。第2供給孔22の内径(断面積)は、第1供給孔21の内径(断面積)よりも小さい。複数の第2供給孔22の入口22aは、基端部11の径方向において第1供給孔21の外側に配置され、軸線Z周りの周方向に配列されている。同様に、複数の第2供給孔22の出口22bは、基端部11の径方向における第1供給孔21の外側に配置され、軸線Z周りの周方向に配列されている。複数の第2供給孔22の出口22bは、軸線Z周りの周方向において、第2供給孔22の入口22aに対してオフセットされた位置に配置されている。
【0027】
図6は、
図4のB-B線に沿った筐体本体5の断面図である。
図6に示すように、第2供給孔22は、軸線Zに平行に延在する第1部分33と、軸線Zに対して傾斜する方向に延在する第2部分34とを有している。第1部分33の一端は第2供給孔22の入口22aを構成し、基端部11の端面11cに開口している。第1部分33の他端は、第2部分34の一端に接続されている。第2部分34の他端は、第2供給孔22の出口22bを構成し、中間部12の段差面12bに開口している。上記のように、第2供給孔22の一部は、軸線Zに対して傾斜した方向に延在している。第2供給孔22の延在方向と軸線Zの軸線方向とのなす角度は、例えば15°以上45°以下である。複数の第2供給孔22は、回転体3と筐体本体5との間に画成された空隙30内に軸線Zに対して傾斜した方向から流体を導入する。
【0028】
図5に示すように、複数の排出孔23の各々は、入口23a及び出口23bを有し、当該入口23aと出口23bとの間で延在している。排出孔23の入口23aは、ベース部14の内周面14aに開口している。排出孔23の出口23bは、ベース部14の外周面に開口している。
図1及び
図2に示すように、出口23bは、横長のスリット形状を有していてもよい。複数の排出孔23は、後述する空隙30を介して複数の供給孔32に連通している。排出孔23は、入口23aと出口23bとの間で半円弧状に湾曲していてもよい。複数の排出孔23は、空隙30内の流体を筐体2の外部に排出する。
【0029】
キャップ6は、ステンレス等の金属によって構成されている。キャップ6は、軸線Zを中心とする略円筒形状を有する筒状部35と、軸線Zを中心とする円環形状を有する環状部36とを含んでいる。筒状部35の外周面には、ネジ山が形成されている。筒状部35のネジ山が、延出部15の内周面15aに形成されたネジ溝に螺合されることにより、キャップ6が筐体本体5に接続される。環状部36は、筒状部35の下端に連結されている。環状部36の中央には、円形の開口36aが形成されている。
【0030】
回転体3は、筐体本体5に収容され、軸線Z周りに回転する回転チップである。回転体3は、金属又は樹脂によって構成され、本体部41、フランジ部42及び羽根部43を含んでいる。本体部41は、筒状を呈し、第1端面45、第2端面46及び外周面47を有している。本体部41は、第1端面45と第2端面46との間で軸線Zに平行に延在している。本体部41の外周面47の外径は、環状部36の開口36aの直径よりも僅かに小さくなっている。回転体3の一部は、開口36aを介して筐体2の外側に突出している。したがって、回転体3の第1端面45は筐体2の内部空間Sに配置され、回転体3の第2端面46は筐体2の外部に露出している。本体部41の第1端面45は、基端部11の段差面11bに突き当てられている。
【0031】
本体部41は、流体を噴射する噴射孔50を有している。噴射孔50は、第1端面45に開口する導入口50aと、外周面47に開口する噴出口50bとを有し、導入口50aと噴出口50bとの間で延在している。噴射孔50は、導入口50aを介して第1供給孔21に連通している。なお、噴射孔50は、複数の第2供給孔22に非連通である。
【0032】
図5に示すように、噴射孔50は、軸線Zに沿って延在する第1部分51と、軸線Zに対して傾斜した方向に延在する第2部分52とを有している。第1部分51の一端は噴射孔50の導入口50aを構成し、本体部41の第1端面45に開口している。第1部分51の他端は、第2部分52の一端に接続されている。第2部分52の他端は、噴射孔50の噴出口50bを構成し、本体部41の外周面47に開口している。噴射孔50は、第1供給孔21から供給された流体を噴出口50bから噴射する。
【0033】
フランジ部42は、本体部41の外周面47から径方向の外側に突出している。フランジ部42の外径は、ベース部14の内周面14aよりも大きい。フランジ部42の上面は、ベース部14の段差面14bに突き当てられている。これにより、筐体本体5と回転体3のフランジ部42との間には、空隙30が画成される。より具体的には、空隙30は、筐体本体5の段差面12b、内周面14a、回転体3のフランジ部42及び外周面47によって画成されている。空隙30は、軸線Z周りの周方向に延在するリング状の空間であり、内部空間Sの一部分である。
【0034】
羽根部43は、フランジ部42よりも第1端面45側で本体部41の外周面47に連結され、空隙30内に配置されている。羽根部43は、空隙30内で軸線Zに対して放射状に延在する複数の羽根を有している。羽根部43は、複数の第2供給孔22から空隙30内に供給された流体を受けて、回転体3を軸線Z周りに回転させる力を本体部41に付与する。
【0035】
軸受4は、キャップ6の開口36aの直径よりも大きな外径を有し、キャップ6と回転体3の外周面47との間に配置されている。軸受4は、回転体3を軸線Z周りに回転可能に支持する。
【0036】
キャップ6と回転体3の外周面47との間には、止め輪44が設けられてもよい。止め輪44は、軸線Zの軸線方向において、キャップ6の環状部36と共に軸受4を挟み込むように保持している。止め輪44は、例えばCリングである。止め輪44は、回転体3の軸線Zの軸線方向への移動を規制する。
【0037】
次に、
図7を参照して、回転ノズル1を用いて流体を噴射する際の流体の流れについて説明する。回転ノズル1から流体を噴射する場合には、筐体本体5の基端部11には、供給管100が接続される。供給管100は、コンプレッサ又はポンプといった流体供給装置に接続され、回転ノズル1に流体Fを圧入する。
【0038】
供給管100から供給された流体Fは、第1供給孔21及び複数の第2供給孔22に分配して導入される。流体Fのうち第1供給孔21に導入された流体F1は、第1供給孔21及び噴射孔50を通って噴出口50bから対象物に向けて軸線Zに傾斜する方向に噴射される。
【0039】
一方、流体Fのうち複数の第2供給孔22に導入された流体F2は、複数の第2供給孔22を通って空隙30内に導入される。このとき、複数の第2供給孔22の第2部分34は、軸線Zに対して傾斜して延在しているので、流体F2は軸線Zに対して傾斜した方向に沿って空隙30内に供給される。空隙30内に供給された流体F2は、空隙30内に配置された羽根部43に当たる。その結果、流体F2の圧力によって羽根部43が本体部41と共に軸線Z周りに回転する。したがって、回転体3が軸線Z周りに回転しながら、噴出口50bから流体F1が噴射される。回転体3を回転させた流体F2は、複数の排出孔23を通って筐体2の外部に排出される。
【0040】
以上説明したように、回転ノズル1では、流体Fを流体F1及び流体F2に分岐し、流体F1を噴出口50bから対象物に向けて噴射し、流体F2を用いて回転体3を回転させている。対象物に噴射する流体F1と回転体3を回転させる流体F2を独立した経路に流すことにより、流体F1の噴射方向及び噴射流量が、回転体3の回転方向及び回転速度に依存しなくなる。すなわち、流体F1の噴射方向及び噴射流量を回転体3の回転方向及び回転速度とは独立して設計することができる。
【0041】
また、回転体3の回転方向及び回転速度を流体F1の噴射方向及び噴射流量とは独立して設計することができる。例えば、複数の第2供給孔22又は排出孔23の径、複数の第2供給孔22の第2部分34の傾斜角度、及び、羽根部43の羽根の向き等を調整することにより、回転体3の回転方向及び回転速度を調整することができる。例えば、第2供給孔22の径を小さくした場合には、複数の第2供給孔22の流路抵抗が増加するため、複数の第2供給孔22を流れる流体F2の流量が低下する。その結果、回転体3の回転速度は低下する。一方、第2供給孔22の径を大きくした場合には、複数の第2供給孔22の流路抵抗が低下するため、複数の第2供給孔22を流れる流体F2の流量が増加する。その結果、回転体3の回転速度は増加する。以上説明したように、上記構成によれば、回転ノズル1の設計の自由度を高めることができる。
【0042】
次に、
図8及び
図9を参照して、別の実施形態に係る回転ノズルについて説明する。
図8は、別の実施形態に係る回転ノズル1Aの斜視図である。
図9は、回転ノズル1Aの一部を破断して示す断面斜視図である。以下の説明では、上述した回転ノズル1との相違点について主に説明し、重複する説明は省略する。
【0043】
図8に示すように、回転ノズル1Aでは、噴射孔50の噴出口50bは回転体3の第2端面46に開口している。したがって、第1供給孔21に導入された流体は、噴射孔50を通って軸線Zに略平行な方向に噴射される。また、
図8に示すように、複数の排出孔23の出口23bは、略円形を呈している。排出孔23の出口23b付近の内面には、ネジ溝が形成されている。
【0044】
また、
図9に示すように、回転ノズル1Aの複数の第2供給孔22の各々は、入口22aと出口22bとの間で軸線Zに沿って螺旋状に延在している。すなわち、第2供給孔22は、軸線Zに対して傾斜する方向に延在している。複数の第2供給孔22の入口22aから導入された流体は、螺旋状の第2供給孔22に沿って流れ、空隙30内に導入される。空隙30内に導入された流体は、軸線Zに対して傾斜する方向から羽根部43に衝突する。その結果、回転体3が軸線Z周りに回転する。
【0045】
回転ノズル1Aは、複数の排出孔23のうち1つの排出孔23の出口23bに嵌合し、当該排出孔23を閉鎖する閉鎖部材60を備えている。閉鎖部材60は、例えば排出孔23のねじ溝に螺合し、出口23bを封止するキャップである。閉鎖部材60が排出孔23の出口23bに嵌合されると、複数の排出孔23のうち1つの排出孔23が閉鎖されるので、複数の排出孔23の流路抵抗が増大し、複数の排出孔23内の流体の流量が低下する。その結果、空隙30内に導入される流体の流量が低下し、回転体3の回転速度が低下する。すなわち、閉鎖部材60は、複数の第2供給孔22を流れる流体の流量を調整する流量調整部として機能する。なお、回転ノズル1Aは、複数の排出孔23のうち幾つかの排出孔23を閉鎖するために、複数の閉鎖部材60を備えていてもよい。
【0046】
上記のように、回転ノズル1Aでは、軸線Zに略平行な方向に流体が噴射されるので、対象物に深い凹部が形成されている場合であっても、対象物の凹部内に流体を吹き込むことができる。これにより、例えば凹部内に溜まった水、油、粉塵等を流体で吹き飛ばすことができる。なお、回転ノズル1Aは、対象物へ噴射される流体と回転体3を回転させる流体とを独立した流路を通じて供給しているので、軸線Zに略平行な方向に流体を噴射することができる。さらに、回転ノズル1Aでは、閉鎖部材60を用いて排出孔23を開閉することにより、回転体3の回転速度を調整することができる。
【0047】
次に、
図10を参照して、更に別の実施形態に係る回転ノズルについて説明する。
図10は、更に別の実施形態に係る回転ノズル1Bを示す断面図である。以下の説明では、上述した回転ノズル1との相違点について主に説明し、重複する説明は省略する。
【0048】
回転ノズル1Bは、流量調整部として、第2供給孔22又は排出孔23の開度を調整するバルブ62を備えている。
図9に示すように、バルブ62は、例えば排出孔23の開度を調整するニードルバルブである。バルブ62が開放されると、排出孔23の流路抵抗が低下し、排出孔23内の流体の流量が増加する。その結果、空隙30内に導入される流体の流量が増大し、回転体3の回転速度が増加する。一方、バルブ62が閉鎖されると、排出孔23の流路抵抗が増大し、排出孔23内の流体の流量が低下する。その結果、空隙30内に導入される流体の流量が低下し、回転体3の回転速度が低下する。
【0049】
上記のように、回転ノズル1Bでは、バルブ62の開度を調整することにより、回転体3の回転速度を調整することができる。なお、バルブ62は、第2供給孔22の開度を調整してもよい。この場合であっても、回転体3の回転速度を調整することが可能である。回転ノズル1Bは、流量調整部として、複数の第2供給孔22又は複数の排出孔23の開度を調整する複数のバルブ62を備えていてもよい。
【0050】
以上、種々の実施形態に係る回転ノズル1について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形態様を構成可能である。すなわち、上述した実施形態は例示説明を目的とするものであり、本発明の範囲を制限するものではないことに留意すべきである。
【0051】
例えば、回転ノズルは、より広い範囲に流体F1を噴射するために、
図11に示すように、回転体3に連結されたアーム装置70を備え、当該アーム装置70の噴出口72から対象物に向けて流体F1を噴射してもよい。
【0052】
また、
図5に示す実施形態では、回転体3は、複数の第2供給孔22を有しているが、回転体3は、少なくとも1つの第2供給孔22を有していればよい。少なくとも1つの第2供給孔22を有していれば、羽根部43へ流体を供給して回転体3を軸線Z周りに回転させることができる。同様に、回転体3は、少なくとも1つの排出孔23を有していればよい。
【0053】
また、噴射孔50は、幅広な流体を噴射するために横長のスリット形状を有する噴出口50bを有していてもよいし、複数の噴出口50bを有していてもよい。さらに、回転ノズル1,1A,1Bは、360°の全方向に流体を噴射してもよい。
【0054】
なお、上述した種々の実施形態は、矛盾の生じない範囲で組み合わせることができる。
【0055】
以下に列挙する条項を参照して、本発明を説明する。なお、本発明は、具体的な列挙がなくても、以下の条項を任意の組み合わせで含んでいてもよい。
【0056】
(条項1)
内部空間を有する筐体本体と、
前記筐体本体内で軸線周りに回転可能な回転体であり、前記筐体本体と前記回転体の間に空隙を画成する、該回転体と、
を備え、
前記回転体は、流体の噴射孔を有する本体部と、前記本体部に連結され、前記空隙内に配置された羽根部とを有し、
前記筐体本体は、前記流体を前記噴射孔に供給する第1供給孔と、前記第1供給孔に非接続であり、前記回転体を回転させるために前記空隙に前記流体を供給する第2供給孔と、前記空隙から前記流体を排出する排出孔とを有する、
回転ノズル。
【0057】
(条項2)
前記回転体は、前記本体部の外周面から径方向の外側に突出するフランジ部を更に備え、
前記空隙は、前記筐体本体の内面と前記フランジ部との間に画成される、条項1に記載の回転ノズル。
【0058】
(条項3)
前記第2供給孔を流れる前記流体の流量を調整する流量調整部を更に備える、条項1又は2に記載の回転ノズル。
【0059】
(条項4)
前記筐体本体は、前記排出孔を含む複数の排出孔を有し、
前記流量調整部は、前記複数の排出孔のうち1つの排出孔を閉鎖する閉鎖部材を含む、条項3に記載の回転ノズル。
【0060】
(条項5)
前記流量調整部は、前記第2供給孔又は前記排出孔の開度を調整するバルブを含む、条項3に記載の回転ノズル。
【0061】
(条項6)
前記第2供給孔の少なくとも一部は、前記軸線に対して傾斜した方向に延在する、条項1~5の何れか一項に記載の回転ノズル。
【符号の説明】
【0062】
1,1A,1B…回転ノズル、2…筐体、3…回転体、21…第1供給孔、22…第2供給孔、23…排出孔、30…空隙、41…本体部、42…フランジ部、43…羽根部、47…外周面、50…噴射孔、60…閉鎖部材、62…バルブ、F,F1,F2…流体、S…内部空間、Z…軸線。