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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147897
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】背負式動力作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/90 20060101AFI20241009BHJP
   A01D 34/76 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
A01D34/90 B
A01D34/76 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060614
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 怜治
(72)【発明者】
【氏名】荒畑 康児
(72)【発明者】
【氏名】菊池 悟
(72)【発明者】
【氏名】大辻 由佳
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA02
2B083DA02
2B083EA02
2B083EA08
2B083EA09
2B083EA15
2B083HA41
2B083HA54
(57)【要約】
【課題】作業者が駆動源を搭載した背負架を背負いながら作業を行う背負式動力作業機において、加減速時に発生する操作桿のねじれ振動を効果的に抑制することができる背負式動力作業機を提供する。
【解決手段】継手本体(82)とドライブシャフト(60)の間に、操作桿(6)にねじれ振動が生じるのを防止するためのワンウェイクラッチ(87)が介在され、軸継手(80)と管継手(88)の間に、管継手(88)の内側で継手本体(82)の中間部を支持するボールベアリング(98)が介在される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が背負う背負架(2)に駆動源(3)が搭載され、前記駆動源(3)の出力軸に、フレキシブルシャフト(40)を介して、ドライブシャフト(60)が内挿されるとともに前記ドライブシャフト(60)により駆動される作業部(7)が先端に設けられた操作桿(6)が接続され、前記駆動源(3)の出力軸と前記作業部(7)を、前記フレキシブルシャフト(40)および前記ドライブシャフト(60)を含む回転伝達機構により駆動上連結し、前記駆動源(3)の前記出力軸の回転を、前記回転伝達機構を介して前記作業部(7)へ伝達するようにされた背負式動力作業機(1)であって、
前記フレキシブルシャフト(40)と前記ドライブシャフト(60)の間に位置してそれらを駆動上連結する継手本体(82)を有し、前記継手本体(82)と前記ドライブシャフト(60)の間に、前記操作桿(6)にねじれ振動が生じるのを防止するためのワンウェイクラッチ(87)が介在された軸継手(80)と、
前記軸継手(80)の外側に配置され、前記フレキシブルシャフト(40)を覆うフレキシブルチューブ(48)と前記ドライブシャフト(60)を覆うメインパイプ(68)を連結する管継手(88)と、
前記軸継手(80)と前記管継手(88)の間に介在され、前記管継手(88)の内側で前記継手本体(82)の中間部を支持するボールベアリング(98)と、を有するワンウェイクラッチ組立体(8)が設けられていることを特徴とする背負式動力作業機(1)。
【請求項2】
前記管継手(88)は、単一部品として構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の背負式動力作業機(1)。
【請求項3】
前記ボールベアリング(98)は、少なくとも前記継手本体(82)の前記フレキシブルシャフト(40)が接続される一端側接続部(84)と前記ドライブシャフト(60)が接続される他端側接続部(86)の間の中実部を支持していることを特徴とする、請求項1に記載の背負式動力作業機(1)。
【請求項4】
前記ボールベアリング(98)は、少なくとも前記継手本体(82)の前記フレキシブルシャフト(40)が接続される接続部(84)の外周部を支持していることを特徴とする、請求項1に記載の背負式動力作業機(1)。
【請求項5】
前記ボールベアリング(98)は、前記継手本体(82)の中心軸(O)方向に複数個並んで設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の背負式動力作業機(1)。
【請求項6】
前記軸継手(80)の前記継手本体(82)は、前記ボールベアリング(98)の内周部に係止されることを特徴とする、請求項1に記載の背負式動力作業機(1)。
【請求項7】
前記軸継手(80)の前記継手本体(82)の一端部(82R)は、前記ボールベアリング(98)の内径よりも小径に形成され、前記軸継手(80)の前記継手本体(82)の他端部(82F)は、前記ボールベアリング(98)の内径よりも大径に形成され、
前記軸継手(80)の前記継手本体(82)の前記一端部(82R)と前記他端部(82F)の間に、前記ボールベアリング(98)の内周部に係止される段差部(85)が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の背負式動力作業機(1)。
【請求項8】
前記ボールベアリング(98)及び前記軸継手(80)は、前記管継手(88)の中心軸(O)方向の一方向のみから前記管継手(88)に挿入されて、前記管継手(88)の内側に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の背負式動力作業機(1)。
【請求項9】
前記ワンウェイクラッチ(87)を備えた前記軸継手(80)よりも先端側に、作業者が保持するグリップ(62)またはハンドル(66)が備えられていることを特徴とする、請求項1に記載の背負式動力作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈払機、ヘッジトリマ等の背負式動力作業機に関し、特に、作業者が背中に背負う背負架に駆動源が搭載され、駆動源の出力軸の回転を操作桿の先端に設けられた刈刃等の作業部へ伝達する回転伝達機構に、ワンウェイクラッチが介在されてなる背負式動力作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
背負式動力作業機の一例である背負式刈払機は、背当てや背負バンドを有する背負架(背負枠とも称する)を備え、作業者が背負う背負架に、駆動源としての、リコイルスタータや燃料タンクが付設され、遠心式クラッチを備えた内燃エンジン(小型空冷2サイクル又は4サイクルガソリンエンジン)が搭載されている。前記内燃エンジンの出力軸には、フレキシブルチューブで覆われたフレキシブルシャフトを介して、グリップ、オンオフスイッチ、スロットルレバー、刈刃作業部を左右に操作するためのハンドル等が設けられた操作桿が接続されている。操作桿の先端には、ギヤケース(ベベルギヤユニット)、回転軸を中心として回転自在に設けられた丸鋸刃状の刈刃、安全カバー(保護カバーとも称する)等からなる刈刃作業部が設けられ、刈刃は、当該操作桿に内挿されたドライブシャフト(伝動軸とも称する)及びギヤケースを介して前記内燃エンジンにより回転駆動される(特許文献1等を参照)。
【0003】
かかる構成を有する背負式刈払機においては、内燃エンジンの燃焼変動によって、当該内燃エンジンの回転の加減速時に、トルク変動や角速度の変化が生じる。そのため、内燃エンジンの回転と細長いドライブシャフトの先に取り付けられた刈刃に相対的な回転差が生じ、それによって、操作桿にねじれ振動が発生する。特に、近年では、エミッション対応による内燃エンジンの希薄燃焼化によってトルク変動が従来よりも大きくなり、操作桿のねじれ振動が顕著になっている。
【0004】
前記ねじれ振動を抑制する防振策の一つとして、下記特許文献2~4には、クラッチドラムから回転刃軸(切刃の回転軸)に至る伝動系に、駆動軸の回転方向に対して正転方向にのみ回転を伝達するようにワンウェイクラッチを介装することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3566030号公報
【特許文献2】実開昭52-131423号公報
【特許文献3】特許第3954824号公報
【特許文献4】米国特許第10772258号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2、3、4に記載の従来技術は、肩掛式刈払機のクラッチドラムにワンウェイクラッチを組み込む仕様であり、背負式刈払機へ同じ仕様を適用しようとすると、背負架に搭載された内燃エンジンのクラッチドラムとフレキシブルシャフトとの接続部分の突出量が増加する。この部分の突出量が大きくなると、駆動源部の回転範囲が制限されて作業性が低下する(特許文献1の図3を参照)。作業性を低下させないためには、駆動源部を背負架から離して配置し、回転範囲を確保することが考えられるが、このようにすると、背負ったときの重量感が増大する。また、内燃エンジンのクラッチドラム部分にワンウェイクラッチを組み込むための特別な接続構造とするためにエンジン部品を専用化する必要が生じ、コストアップの原因や、部品共通化の阻害要因となりやすい。
【0007】
また、特許文献2には、肩掛式刈払機のメインシャフトを分割し、その分割ジョイント部(継手部)にワンウェイクラッチを組み込む仕様も提示されている。しかし、この仕様は、パイプとの間に支持部材を設けることによりシャフト中間部を支持するソリッドシャフト同士の間にワンウェイクラッチを介在させた仕様であり、背負式刈払機のソリッドシャフト(ドライブシャフト)とフレキシブルシャフトとの間に同じ仕様を適用しようとすると、フレキシブルシャフトが屈曲して径方向に揺動し、ドライブシャフトとフレキシブルシャフトとの間に軸ずれが発生した場合、継手部の抵抗が増大し、回転伝達が阻害されたり、耐久性等に問題が生じる恐れがある。つまり、特許文献2に記載の継手部では、背負架上の駆動源の回転によって生じるフレキシブルシャフトの移動や屈曲、それに伴う継手部への影響が考慮されていない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業者が駆動源を搭載した背負架を背負いながら作業を行う背負式動力作業機において、加減速時に発生する操作桿のねじれ振動を効果的に抑制することができる背負式動力作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る背負式動力作業機は、基本的には、作業者が背負う背負架(2)に駆動源(3)が搭載され、前記駆動源(3)の出力軸に、フレキシブルシャフト(40)を介して、ドライブシャフト(60)が内挿されるとともに前記ドライブシャフト(60)により駆動される作業部(7)が先端に設けられた操作桿(6)が接続され、前記駆動源(3)の出力軸と前記作業部(7)を、前記フレキシブルシャフト(40)および前記ドライブシャフト(60)を含む回転伝達機構により駆動上連結し、前記駆動源(3)の前記出力軸の回転を、前記回転伝達機構を介して前記作業部(7)へ伝達するようにされた背負式動力作業機(1)であって、前記フレキシブルシャフト(40)と前記ドライブシャフト(60)の間に位置してそれらを駆動上連結する継手本体(82)を有し、前記継手本体(82)と前記ドライブシャフト(60)の間に、前記操作桿(6)にねじれ振動が生じるのを防止するためのワンウェイクラッチ(87)が介在された軸継手(80)と、前記軸継手(80)の外側に配置され、前記フレキシブルシャフト(40)を覆うフレキシブルチューブ(48)と前記ドライブシャフト(60)を覆うメインパイプ(68)を連結する管継手(88)と、前記軸継手(80)と前記管継手(88)の間に介在され、前記管継手(88)の内側で前記継手本体(82)の中間部を支持するボールベアリング(98)と、を有するワンウェイクラッチ組立体(8)が設けられていることを特徴としている。
【0010】
好ましい態様では、前記管継手(88)は、単一部品として構成されている。
【0011】
別の好ましい態様では、前記ボールベアリング(98)は、少なくとも前記継手本体(82)の前記フレキシブルシャフト(40)が接続される一端側接続部(84)と前記ドライブシャフト(60)が接続される他端側接続部(86)の間の中実部を支持している。
【0012】
別の好ましい態様では、前記ボールベアリング(98)は、少なくとも前記継手本体(82)の前記フレキシブルシャフト(40)が接続される接続部(84)の外周部を支持している。
【0013】
別の好ましい態様では、前記ボールベアリング(98)は、前記継手本体(82)の中心軸(O)方向に複数個並んで設けられている。
【0014】
別の好ましい態様では、前記軸継手(80)の前記継手本体(82)は、前記ボールベアリング(98)の内周部に係止される。
【0015】
別の好ましい態様では、前記軸継手(80)の前記継手本体(82)の一端部(82R)は、前記ボールベアリング(98)の内径よりも小径に形成され、前記軸継手(80)の前記継手本体(82)の他端部(82F)は、前記ボールベアリング(98)の内径よりも大径に形成され、前記軸継手(80)の前記継手本体(82)の前記一端部(82R)と前記他端部(82F)の間に、前記ボールベアリング(98)の内周部に係止される段差部(85)が形成されている。
【0016】
別の好ましい態様では、前記ボールベアリング(98)及び前記軸継手(80)は、前記管継手(88)の中心軸(O)方向の一方向のみから前記管継手(88)に挿入されて、前記管継手(88)の内側に配置されている。
【0017】
別の好ましい態様では、前記ワンウェイクラッチ(87)を備えた前記軸継手(80)よりも先端側に、作業者が保持するグリップ(62)またはハンドル(66)が備えられている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回転伝達機構におけるフレキシブルシャフト(40)とドライブシャフト(60)の接続部に設けられたワンウェイクラッチ組立体(8)の軸継手(80)において、継手本体(82)とドライブシャフト(60)の間に介在されたワンウェイクラッチ(87)により、操作桿(6)のねじれ振動を効果的に抑制することができる。また、前記ワンウェイクラッチ(87)が設けられた継手本体(82)を管継手(88)の内側でボールベアリング(98)によって支持しているため、フレキシブルシャフト(40)が屈曲して径方向に揺動し、ドライブシャフト(60)とフレキシブルシャフト(40)との間に軸ずれが発生した場合でも、継手部の抵抗の増加が抑えられ、回転伝達を円滑にし、耐久性等を向上させることができる。その結果、作業者が駆動源を搭載した背負架を背負いながら作業を行う背負式動力作業機(1)において、加減速時に発生する操作桿(6)のねじれ振動を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る背負式動力作業機の一例である背負式刈払機の外観斜視図。
図2図1に示される背負式刈払機の操作桿部分の外観斜視図。
図3図1に示される背負式刈払機のドライブシャフトとフレキシブルシャフトの接続部のワンウェイクラッチ組立体周りの縦断面図。
図4図1に示される背負式刈払機のワンウェイクラッチ組立体の、コネクタカバーを取り外した状態の斜視図。
図5図4に示されるワンウェイクラッチ組立体の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る背負式動力作業機の一例である背負式刈払機の外観斜視図である。図2は、図1に示される背負式刈払機の操作桿部分の外観斜視図である。図3は、図1に示される背負式刈払機のドライブシャフトとフレキシブルシャフトの接続部のワンウェイクラッチ組立体周りの縦断面図である。
【0022】
(全体構成)
図示実施形態の背負式刈払機1は、背当て2Aや背負バンド2Bを有する背負架(背負枠)2を備え、作業者が背負う背負架2に、駆動源としての、リコイルスタータや燃料タンクが付設され、遠心式クラッチを備えた内燃エンジン(小型空冷2サイクル又は4サイクルガソリンエンジン)3が搭載されている。前記内燃エンジン3の出力軸には、フレキシブルチューブ48で覆われたフレキシブルシャフト40(図3)を介して、操作桿6が接続されている。言い換えれば、内燃エンジン3と操作桿6の後端は、フレキシブルチューブ48で覆われたフレキシブルシャフト40(図3)で連結されている。
【0023】
フレキシブルシャフト40(及びフレキシブルチューブ48)は、可撓性を有しており、その一方の端部が内燃エンジン3の出力軸に接続され、その他方の端部が操作桿6(のドライブシャフト60)の後端に(後述するワンウェイクラッチ組立体8を介して)接続されている。
【0024】
操作桿6の先端には、ギヤケース(ベベルギヤユニット)70、回転軸を中心として回転自在に設けられた丸鋸刃状の刈刃72、安全カバー(保護カバー)74等からなる刈刃作業部7が設けられ、刈刃72は、当該操作桿6(のメインパイプ68)に内挿されたドライブシャフト60(図3)及びギヤケース70により回転駆動される。
【0025】
操作桿6の後端付近には、グリップ62が設けられるとともに、グリップ62に隣接してオンオフスイッチ63、スロットルレバー64が設けられ、そのグリップ62等よりもやや先端寄りの位置には、刈刃作業部7を左右に操作するための環状のハンドル66が設けられている。作業者が保持するこれらのグリップ62やハンドル66は、後述するワンウェイクラッチ87を備えた軸継手80よりも先端側に設けられている(図3)。
【0026】
また、内燃エンジン3の出力軸から、操作桿6の先端に設けられ、回転軸を中心として回転する刈刃72へ回転を伝達する回転伝達機構に、操作桿6にねじれ振動が生じるのを防止するためのワンウェイクラッチ87(図3)が内蔵されたワンウェイクラッチ組立体8が介在されている。
【0027】
内燃エンジン3と操作桿6の後端との間に位置するフレキシブルシャフト40と、操作桿6(のメインパイプ68)に内挿された鋼製のドライブシャフト60は、内燃エンジン3の出力軸と刈刃72の回転軸との間に位置し、これらを駆動上連結する。詳しくは、フレキシブルシャフト40の後端は、内燃エンジン3の出力軸に遠心式クラッチを介して駆動上連結され、ドライブシャフト60の先端は、刈刃72の回転軸にギヤケース70等を介して駆動上連結されている。すなわち、フレキシブルシャフト40、ドライブシャフト60等から、前記内燃エンジン3の出力軸から、回転軸を中心として回転する刈刃72へ回転を伝達する回転伝達機構が構成されており、前記内燃エンジン3の出力軸の回転は、前記回転伝達機構を介して前記刈刃72の回転軸へ伝達されるようになっている。
【0028】
そして、本実施形態では、ねじれ振動防止用の前記ワンウェイクラッチ87を有するワンウェイクラッチ組立体8が、前記フレキシブルシャフト40(の先端)と前記ドライブシャフト60(の後端)との間(接続部)に介在されている。
【0029】
(ワンウェイクラッチ組立体8)
本実施形態のワンウェイクラッチ組立体8は、図2及び図3とともに図4及び図5を併せて参照すればよく分かるように、基本的に、ワンウェイクラッチ87を内蔵した継手本体82を有する軸継手80、管継手88、ボールベアリング98、及びそれらを覆うコネクタカバー100で構成されている。
【0030】
(軸継手80)
軸継手80における継手本体82は、例えば、鋼等の金属材料から作製された段付き軸状の単一部品(言い換えると、一体成形品)として構成されている。継手本体82は、前記フレキシブルシャフト40(の先端)と前記ドライブシャフト60(の後端)との間に位置し、これらを駆動上連結する。
【0031】
詳しくは、継手本体82の後端部82Rには、中心軸O方向に延び、かつ、後方のフレキシブルシャフト40に向かって開口する凹穴を有する(横倒し有底円筒状の)後端側接続部(以下、単に接続部と記載)84が一体に設けられている。この接続部84は、フレキシブルシャフト40に外装されるとともに、管継手88の後端開口88Rに接続されるフレキシブルチューブ48(の接続パイプ46)の内側まで延びている。この接続部84に、フレキシブルシャフト40の先端が圧入等により内挿されて一体回転可能に(相対回転不能に)連結されている。
【0032】
前記継手本体82の後端部82R(接続部84)の外径は、ボールベアリング98の内径とほぼ同径もしくはそれよりも若干小径とされている。
【0033】
一方、継手本体82の前端部82Fには、中心軸O方向に延び、かつ、前方のドライブシャフト60に向かって開口する凹穴を有する(横倒し有底円筒状の)前端側接続部(以下、単に接続部と記載)86が一体に設けられている。この接続部86は、ドライブシャフト60に外装されるとともに、管継手88の前端開口88Fに接続されるメインパイプ68の内側まで延びている。この接続部86には、円筒状のワンウェイクラッチ87が圧入され、そのワンウェイクラッチ87の内側に、ドライブシャフト60の後端(の大径部60A)が一体的に(隙間なく)圧入等により内挿されている。言い換えれば、前記接続部86(の内周)と該接続部86に挿入された(受け入れられた)断面円筒状の前記ドライブシャフト60の後端(の大径部60A)との間に、円筒状のワンウェイクラッチ87が隙間なく嵌挿されて配備されている。
【0034】
ワンウェイクラッチ87の詳細構造説明は割愛するが、このワンウェイクラッチ87は、内挿されたドライブシャフト60の回転方向に対して正転方向にのみ回転を伝達する。言い換えれば、前記継手本体82に内蔵されたワンウェイクラッチ87によって、前記内燃エンジン3の出力軸の正転方向の回転は、(前記フレキシブルシャフト40を介して)前記ドライブシャフト60に伝達されるが、反対方向の回転は前記ドライブシャフト60に伝達されない。
【0035】
前記継手本体82の前端部82F(接続部86)の外径は、ボールベアリング98の内径よりも大径とされている。すなわち、前端部82Fに設けられた接続部86は、前述の後端部82Rに設けられた接続部84よりも大径とされている。
【0036】
前記継手本体82の後端部82Rと前端部82Fの間の中央部82Mは、(横倒し有底円筒状の)接続部84と接続部86の間の中実部となっている。この中央部82Mの外径は、ボールベアリング98の内径とほぼ同径とされており、この中央部82M(中実部)に、ボールベアリング98が外装固定される。
【0037】
(管継手88)
管継手88は、例えば鋼等の金属材料から作製された中空円筒状の単一部品(言い換えると、一体成形品)として構成されている。管継手88の中心軸O方向の長さは、軸継手80の中心軸O方向の長さよりも若干長く形成されており、管継手88は、軸継手80を同心配置するようにして、軸継手80の外側に配置される。管継手88は、前記のように軸継手80を内側に収容するとともに、フレキシブルシャフト40を覆うフレキシブルチューブ48とドライブシャフト60を覆うメインパイプ68を連結する。
【0038】
詳しくは、フレキシブルチューブ48の先端(開口)には、例えば鋼等の金属材料から作製された略円筒状の接続パイプ46が設けられている。この接続パイプ46は、フレキシブルチューブ48の先端(開口)に、その先端部を突出するようにして圧入等により内挿されて接続されている。
【0039】
管継手88の後端開口88Rには、前記フレキシブルチューブ48の接続パイプ46が(管継手88の中央付近まで)圧入等により内挿されて接続(連結)されている。言い換えれば、管継手88の後端開口88Rは、前記フレキシブルチューブ48の接続パイプ46が接続される後端接続部となっている。また、前記フレキシブルチューブ48の接続パイプ46の外周に形成された環状凹部44には、前記管継手88(の内周)と前記接続パイプ46(の外周)との間をシールするシール部材としてのOリング42が装着されている。
【0040】
一方、管継手88の前端開口88Fには、例えば鋼等の金属材料から作製された前記メインパイプ68の後端が(管継手88の中央付近の内周に装着されたCリング96に当接するまで)圧入等により内挿されて接続(連結)されている。言い換えれば、管継手88の前端開口88Fは、前記メインパイプ68の後端が接続される前端接続部となっている。
【0041】
前記管継手88の(中心軸O方向の)中央部88M(内挿された接続パイプ46とメインパイプ68の間)には、ボールベアリング98が内装固定される。
【0042】
(ボールベアリング98)
ボールベアリング98は、前記軸継手80と前記管継手88の間に介在され、前記管継手88の内側で前記軸継手80の継手本体82の中間部を支持する。
【0043】
詳しくは、ボールベアリング98は、前記軸継手80の継手本体82の中央部82M(の外周)と前記管継手88の中央部88M(の内周)の間に介装されている。このボールベアリング98は、その内周部が、中央部82Mの前端寄り(言い換えれば、中央部82Mと前端部82Fの間)に形成された円環状の段差部85と、中央部82Mの後端寄り(言い換えれば、中央部82Mと後端部82Rの間)に形成された円環状の外周溝83に嵌合された押さえ部材としてのCリング94により狭圧保持され、その外周部が、中央部88Mの後端寄りに設けられた円環状の係止突起90と、中央部88Mの前端寄りに形成された円環状の内周溝92に嵌合された押さえ部材としてのCリング96により狭圧保持された状態で、前記軸継手80の継手本体82の中央部82M(の外周)と前記管継手88の中央部88M(の内周)の間に介装されている。このボールベアリング98によって、軸継手80は、管継手88の内側で中心軸O周りに回転自在に支持されている。
【0044】
(コネクタカバー100)
コネクタカバー100(図1図3)は、例えば合成ゴムから作製された筒体で構成されている。コネクタカバー100は、軸継手80及びボールベアリング98が内装された管継手88の外周を被覆している。
【0045】
(ワンウェイクラッチ組立体8の組立方法)
上記構成を有するワンウェイクラッチ組立体8の組立方法の一例としては、管継手88の前端から後端に向かって管継手88の内側に、ボールベアリング98を、その外周部が管継手88の内周に突設された係止突起90に係止されるまで挿入する。そして、ボールベアリング98の外周部を係止突起90に係止させた状態で、(管継手88の前端から)管継手88の内周に設けられた内周溝92にCリング96を嵌装する。これにより、管継手88の内周に、ボールベアリング98を、その外周部が係止突起90とCリング96で挟持された状態で位置決めして配置する。
【0046】
その後、管継手88の前端から後端に向かって管継手88の内側に、軸継手80を、その継手本体82の後端部82R及び中央部82Mがボールベアリング98の内側に挿通されるとともに、その継手本体82の(中央部82Mと前端部82Fの間の)段差部85がボールベアリング98の内周部に係止されるまで挿入する。そして、段差部85をボールベアリング98の内周部に係止させた状態で、(管継手88の後端から)継手本体82の外周に設けられた外周溝83にCリング94を嵌装する。これにより、軸継手80の継手本体82の外周に、ボールベアリング98を、その内周部が段差部85とCリング94で挟持された状態で位置決めして配置する。すなわち、軸継手80の継手本体82(の外周)と管継手88(の内周)の間に、ボールベアリング98を介在させる。
【0047】
そして、前記のようにボールベアリング98と軸継手80を(管継手88の中心軸Oに沿って前端から後端に向かう方向で)内装した管継手88にコネクタカバー100を外装する。
【0048】
ワンウェイクラッチ組立体8の組立方法の他例としては、軸継手80の継手本体82の後端部82R及び中央部82Mをボールベアリング98の内側に挿通させるとともに、その継手本体82の(中央部82Mと前端部82Fの間の)段差部85をボールベアリング98の内周部に係止させる。そして、段差部85をボールベアリング98の内周部に係止させた状態で、継手本体82の外周に設けられた外周溝83にCリング94を嵌装する。これにより、軸継手80の継手本体82の外周に、ボールベアリング98を、その内周部が段差部85とCリング94で挟持された状態で位置決めして配置する。
【0049】
その後、管継手88の前端から後端に向かって管継手88の内側に、ボールベアリング98付きの軸継手80を、ボールベアリング98の外周部が管継手88の内周に突設された係止突起90に係止されるまで挿入する。そして、ボールベアリング98の外周部を係止突起90に係止させた状態で、(管継手88の前端から)管継手88の内周に設けられた内周溝92にCリング96を嵌装する。これにより、管継手88の内周に、ボールベアリング98を、その外周部が係止突起90とCリング96で挟持された状態で位置決めして配置する。すなわち、軸継手80の継手本体82(の外周)と管継手88(の内周)の間に、ボールベアリング98を介在させる。
【0050】
そして、前記のようにボールベアリング98付きの軸継手80を(管継手88の中心軸Oに沿って前端から後端に向かう方向で)内装した管継手88にコネクタカバー100を外装する。
【0051】
(作用効果)
かかる構成の背負式刈払機1は、以下のように作動する。
【0052】
すなわち、前記内燃エンジン3が始動されると、前記内燃エンジン3の出力軸が回転し、その回転は、前記フレキシブルシャフト40に伝達され、このフレキシブルシャフト40の回転は、前記ワンウェイクラッチ組立体8のワンウェイクラッチ87を介して前記ドライブシャフト60に伝達され、このドライブシャフト60の回転が、前記ギヤケース70及び回転軸を介して伝達されて、前記刈刃72が回転駆動される。
【0053】
一方、前記内燃エンジン3の燃焼変動によって、当該内燃エンジン3の回転に、トルク変動や角速度の変化が生じるが、前記内燃エンジン3の回転と細長い(操作桿6の)ドライブシャフト60の先に取り付けられた刈刃72の相対的な回転差は、前記ドライブシャフト60の後端に設けられた前記ワンウェイクラッチ87によって吸収され、前記回転伝達機構内で伝達されることがない。
【0054】
つまり、本実施形態の背負式刈払機1では、前記内燃エンジン3の出力軸の回転をワンウェイクラッチ組立体8のワンウェイクラッチ87を介してドライブシャフト60に伝達するとともに、該ドライブシャフト60(操作桿6)のねじれ振動は前記ワンウェイクラッチ87により吸収されることになる。また、このとき、管継手88内で回転するワンウェイクラッチ87が内蔵された軸継手80は、当該軸継手80の継手本体82の中間部に設けられたボールベアリング98によって回転支持されることになる。
【0055】
このように、本実施形態の背負式刈払機1においては、回転伝達機構におけるフレキシブルシャフト40とドライブシャフト60の接続部に設けられたワンウェイクラッチ組立体8の軸継手80において、継手本体82とドライブシャフト60の間に介在されたワンウェイクラッチ87により、操作桿6のねじれ振動を効果的に抑制することができる。また、前記ワンウェイクラッチ87が設けられた継手本体82を管継手88の内側でボールベアリング98によって支持しているため、フレキシブルシャフト40が屈曲して径方向に揺動し、ドライブシャフト60とフレキシブルシャフト40との間に軸ずれが発生した場合でも、継手部の抵抗の増加が抑えられ、回転伝達を円滑にし、耐久性等を向上させることができる。その結果、作業者が駆動源を搭載した背負架を背負いながら作業を行う背負式動力作業機1において、加減速時に発生する操作桿6のねじれ振動を効果的に抑制することができる。また、軸継手80よりも先端側にグリップ62やハンドル66が設けられているため、グリップ部に余分な振動が伝わらず、作業者の快適性が向上する。
【0056】
なお、ワンウェイクラッチ組立体8において、軸継手80とフレキシブルシャフト40又はドライブシャフト60の接続構成や、管継手88とフレキシブルチューブ48又はメインパイプ68の接続構成は、上述した例に限られないことは当然である。例えば、本例では、軸継手80(の継手本体82)が屈曲可能なフレキシブルシャフト40と屈曲不能な(ソリッドシャフトからなる)ドライブシャフト60を連結しているが、フレキシブルシャフト同士を連結するようにしてもよい。また、本例では、管継手88がフレキシブルチューブ48(の接続パイプ46)及びメインパイプ68と別部品として構成されているが、フレキシブルチューブ48(の接続パイプ46)又はメインパイプ68の少なくとも一方と一体に(単一部品として)構成してもよい。
【0057】
また、ボールベアリング98の配置構成も上述した例に限られない。例えば、本例では、ボールベアリング98が軸継手80の継手本体82の中央部82M(中実部)の外周に配置されている(言い換えれば、ボールベアリング98が軸継手80の継手本体82の中央部82M(中実部)を支持している)が、軸継手80の継手本体82の後端部82Rに設けられた接続部84(可撓性を有して径方向で揺動するフレキシブルシャフト40の前端が挿入されて接続される部分)の外周に配置してもよい(言い換えれば、接続部84の外周部を支持してもよい)。また、本例では、ボールベアリング98が継手本体82の中心軸O方向に1個のみ使用されているが、継手本体82の中心軸O方向に複数個並べて使用してもよい。
【0058】
また、背負架2に搭載され、操作桿6の先端に設けられた刈刃作業部(作業部)7を駆動するための駆動源は、内燃エンジン3に限られず、電動モータ等であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 背負式刈払機(背負式動力作業機)
2 背負架
2A 背当て
2B 背負バンド
3 内燃エンジン(駆動源)
40 フレキシブルシャフト
42 Oリング
44 環状凹部
46 接続パイプ
48 フレキシブルチューブ
6 操作桿
60 ドライブシャフト
60A 大径部
62 グリップ
63 オンオフスイッチ
64 スロットルレバー
66 ハンドル
68 メインパイプ
7 刈刃作業部(作業部)
70 ギヤケース(ベベルギヤユニット)
72 刈刃
74 安全カバー(保護カバー)
8 ワンウェイクラッチ組立体
80 軸継手
82 継手本体
82F 継手本体の前端部(他端部)
82M 継手本体の中央部
82R 継手本体の後端部(一端部)
83 外周溝
84 後端側接続部(一端側接続部)
85 段差部
86 前端側接続部(他端側接続部)
87 ワンウェイクラッチ
88 管継手
88F 管継手の前端開口
88M 管継手の中央部
88R 管継手の後端開口
90 係止突起
92 内周溝
94 Cリング(押さえ部材)
96 Cリング(押さえ部材)
98 ボールベアリング
100 コネクタカバー
O 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5