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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147900
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】微生物燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20241009BHJP
   H01M 8/16 20060101ALI20241009BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20241009BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20241009BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20241009BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/16
H01M8/04 J
H01M8/02
H01M8/04858
H01M8/04537
H01M4/86 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060630
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】浅井 靖史
(72)【発明者】
【氏名】窪田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智秀
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H018AA01
5H126AA02
5H127AA08
5H127AB29
5H127BA06
5H127BB02
5H127BB37
5H127DB99
5H127DC50
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の排出を抑えた発電を行うことができる微生物燃料電池を実現する。
【解決手段】微生物燃料電池100において、第1の微生物が有機物を分解して産生された電子をアノード電極11が受け取り、第1のカソード電極12においてアノード電極11からの電子により酸素を還元することによる発電に伴いキャパシタ50に電荷を蓄える(蓄電)ことと、キャパシタ50からの電荷の放出(放電)によって、アノード電極11からの電子を第2のカソード電極22において第2の微生物が受け取り、二酸化炭素を還元して炭化水素を生成することできる。つまり、第2のカソード電極22側で二酸化炭素を炭化水素に還元することで二酸化炭素の排出を抑えることができる。特にこの微生物燃料電池100であれば、キャパシタ50における蓄電状態と放電状態を適正に切り替えることで、二酸化炭素を還元して炭化水素(メタン)を好適に生成することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む水が貯留されている第1の槽と、
前記第1の槽に配置されたアノード電極と、
キャパシタを介して前記アノード電極と電気的に接続される、前記第1の槽に配置された第1のカソード電極と、
二酸化炭素を含む水が貯留され、所定の隔膜を介して前記第1の槽と隣接している第2の槽と、
前記キャパシタを介して前記アノード電極と電気的に接続される、前記第2の槽に配置された第2のカソード電極と、
を備えた微生物燃料電池であって、
前記アノード電極には、前記有機物を分解して電子を産生する第1の微生物が付着しており、
前記第2のカソード電極には、電子を受け取って前記二酸化炭素を他の化合物に変換する第2の微生物が付着しており、
前記第1の微生物が前記有機物を分解して産生された電子を前記アノード電極が受け取り、前記第1のカソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電に伴い前記キャパシタに電荷を蓄えることと、前記キャパシタからの電荷の放出によって、前記アノード電極からの電子を前記第2のカソード電極において前記第2の微生物が受け取り、前記二酸化炭素を還元する反応とが行われるように構成されていることを特徴とする微生物燃料電池。
【請求項2】
前記アノード電極と前記第1のカソード電極とを電気的に接続する蓄電状態と、前記アノード電極と前記第2のカソード電極とを電気的に接続する放電状態との切り替えを行う切替手段を備え、
前記切替手段は、前記キャパシタに蓄えられている電荷の量が、第1閾値以下であるとき前記蓄電状態に切り替え、第2閾値以上であるとき前記放電状態に切り替えるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の微生物燃料電池。
【請求項3】
前記第2閾値は、0.42[V]以上0.52[V]以下の値であることを特徴とする請求項2に記載の微生物燃料電池。
【請求項4】
前記第2の槽中に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段を備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の微生物燃料電池。
【請求項5】
前記第1のカソード電極は、一方の面側が前記有機物を含む水と接し、他方の面側が外気と接して配置されているエアカソードであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の微生物燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を炭化水素などに変換することで、二酸化炭素の排出を抑える微生物燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化炭素の排出を抑えるようにした微生物燃料電池が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この微生物燃料電池は、有機物を分解して二酸化炭素とプロトンと電子とを生成する微生物を収容する第1の槽と、第1のプロトン透過膜を介して第1の槽に隣接する第2の槽と、第1の槽に配設された第1の電極と、第2の槽に配設されるとともに第1の電極と電気的に接続され水を生成する第2の電極とを備え、さらに、受光することにより水を分解する光触媒電極を備える第3の槽と、第2のプロトン透過膜を介して第3の槽に隣接し、光触媒電極と電気的に接続された対極を備える第4の槽などを備えて構成されている。
この微生物燃料電池では、所定の光線を受光した光触媒電極が光触媒の触媒作用によって水を分解して酸素とプロトンと電子を生成する反応を利用しており、光触媒電極を備える第3の槽に所定の光線を照射するようにしている。
そして、第4の槽において、第3の槽から第2のプロトン透過膜を介して供給されたプロトンが対極にて電子を受け取るとともに第1の槽から供給される二酸化炭素と反応し、その二酸化炭素が還元されて有機酸(ギ酸)を生成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-93200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の微生物燃料電池の場合、第3の槽に照射する光線として太陽光を利用するとなるとその稼働は日中に限られ、天候によっても稼働が制限されることがあるという問題があった。
また、第3の槽に所定の光線を照射するために外部エネルギー由来の光源を用いるとなると、微生物燃料電池による発電のために外部電源が必要になるという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、二酸化炭素の排出を抑えた発電を行うことができる微生物燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
有機物を含む水が貯留されている第1の槽と、
前記第1の槽に配置されたアノード電極と、
キャパシタを介して前記アノード電極と電気的に接続される、前記第1の槽に配置された第1のカソード電極と、
二酸化炭素を含む水が貯留され、所定の隔膜を介して前記第1の槽と隣接している第2の槽と、
前記キャパシタを介して前記アノード電極と電気的に接続される、前記第2の槽に配置された第2のカソード電極と、
を備えた微生物燃料電池であって、
前記アノード電極には、前記有機物を分解して電子を産生する第1の微生物が付着しており、
前記第2のカソード電極には、電子を受け取って前記二酸化炭素を他の化合物に変換する第2の微生物が付着しており、
前記第1の微生物が前記有機物を分解して産生された電子を前記アノード電極が受け取り、前記第1のカソード電極において前記アノード電極からの電子により酸素を還元することによる発電に伴い前記キャパシタに電荷を蓄えることと、前記キャパシタからの電荷の放出によって、前記アノード電極からの電子を前記第2のカソード電極において前記第2の微生物が受け取り、前記二酸化炭素を還元する反応とが行われるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の微生物燃料電池において、
前記アノード電極と前記第1のカソード電極とを電気的に接続する蓄電状態と、前記アノード電極と前記第2のカソード電極とを電気的に接続する放電状態との切り替えを行う切替手段を備え、
前記切替手段は、前記キャパシタに蓄えられている電荷の量(電圧)が、第1閾値以下であるとき前記蓄電状態に切り替え、第2閾値以上であるとき前記放電状態に切り替えるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の微生物燃料電池において、
前記第2閾値は、0.42[V]以上0.52[V]以下の値であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の微生物燃料電池において、
前記第2の槽中に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の微生物燃料電池において、
前記第1のカソード電極は、一方の面側が前記有機物を含む水と接し、他方の面側が外気と接して配置されているエアカソードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二酸化炭素の排出を抑えた発電を行うことができる微生物燃料電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の微生物燃料電池を示す概略図である。
図2】微生物燃料電池におけるメタン生成速度の測定結果を示すグラフである。
図3】微生物燃料電池におけるメタンの生成量に関するグラフである。
図4】微生物燃料電池のキャパシタの動作状況を示す説明図である。
図5】微生物燃料電池の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る微生物燃料電池の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
本実施形態の微生物燃料電池100は、例えば、図1に示すように、有機物を含む水が貯留されている第1の槽10と、第1の槽10に配置されたアノード電極11と、キャパシタ50を介してアノード電極11と電気的に接続されて第1の槽10に配置された第1のカソード電極12と、二酸化炭素を含む水が貯留され、所定の隔膜21を介して第1の槽10と隣接している第2の槽20と、キャパシタ50を介してアノード電極11と電気的に接続されて第2の槽20に配置された第2のカソード電極22等を備えている。
【0015】
この微生物燃料電池100の第1の槽10と第2の槽20は一体的に形成されており、第1の槽10と第2の槽20を区画するように隔膜21が配設された構造を有している。
なお、第1の槽10と第2の槽20が別体として形成されている場合、隔膜21を介して第1の槽10と第2の槽20を隣接させた構造にすればよい。
いずれの構造であっても、第1の槽10の水と第2の槽20の水はそれぞれ隔膜21に接触しており、その隔膜21によって第1の槽10の水と第2の槽20の水が隔てられた状態になっている。
そして、第1の槽10の水が第2の槽20に流入したり、第2の槽20の水が第1の槽10に流出したりしない構造となっている。
【0016】
隔膜21は、例えば、イオン交換膜であり、本実施形態では水素イオン(プロトン)が透過可能なプロトン交換膜を用いている。
【0017】
また、微生物燃料電池100は、第2の槽20に二酸化炭素(CO)を供給するための二酸化炭素供給手段30を備えている。この二酸化炭素供給手段30によって、第2の槽20の水に二酸化炭素が溶存している状態を維持できる。
二酸化炭素供給手段30は、第2の槽20中の水に二酸化炭素を供給できるものであればその構成は任意である。
例えば、二酸化炭素ボンベと送気管とエアポンプなどを有している二酸化炭素供給手段30であれば、二酸化炭素を第2の槽20に供給することができる。また、二酸化炭素ボンベを用いることなく、二酸化炭素を含んでいる燃焼ガスを送気管とエアポンプを用いて第2の槽20に供給する二酸化炭素供給手段30であってもよい。
【0018】
アノード電極11は、電線1を通じて後述するスイッチング回路60に接続されており、アノード電極11はスイッチング回路60を介してキャパシタ50に接続されている。
【0019】
第1のカソード電極12は、電線2aを通じてキャパシタ50に接続されており、キャパシタ50とスイッチング回路60は電線2bで接続されている。
そして、第1のカソード電極12は、電線2aとキャパシタ50と電線2bを介してスイッチング回路60に接続されている。なお、電線2aと電線2bは、後述するように、キャパシタ50に電荷を蓄える際に通電する経路になる。
【0020】
第2のカソード電極22は、電線3aを通じてキャパシタ50に接続されており、キャパシタ50とスイッチング回路60は電線3bで接続されている。
そして、第2のカソード電極22は、電線3aとキャパシタ50と電線3bを介してスイッチング回路60に接続されている。なお、電線3aと電線3bは、後述するように、キャパシタ50から電荷を放出する際に通電する経路になる。
【0021】
スイッチング回路60は、アノード電極11と第1のカソード電極12とを電気的に接続する状態(後述する蓄電状態)と、アノード電極11と第2のカソード電極22とを電気的に接続する状態(後述する放電状態)との切り替えを行う切替手段である。
具体的には、スイッチング回路60は、キャパシタ50を介してアノード電極11と第1のカソード電極12とが電気的に接続するように、電線1と電線2bを繋ぐための切り替えを実行する。
また、スイッチング回路60は、キャパシタ50を介してアノード電極11と第2のカソード電極22とを電気的に接続するように、電線1と電線3bを繋ぐための切り替えを実行する。
【0022】
アノード電極11には、有機物を分解して電子を産生する第1の微生物が付着している。なお、アノード電極11に付着している第1の微生物は、バイオフィルムなどを用いて植種したものでも、アノード電極11に自然に付着して定着したものでもよい。
このアノード電極11は、第1の微生物による有機物の分解で生じる電子と水素イオンのうち、電子を受け取るための電極である。
つまり、アノード電極11の材質は、第1の微生物が有機物を分解して産生された電子を受け取ることができるものであれば特に限定されないが、例えば、金属材料、炭素材料等の導電材料を挙げることができる。金属材料としては、鉄、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅、白金等を挙げることができ、炭素材料としては、グラファイト、炭素繊維、カーボンクロス、カーボンマット、カーボンフェルト、カーボンペーパー等を挙げることができる。
また、アノード電極11の形状は、特に限定されないが、シート状、板状、メッシュ状、格子状、ブロック状、多孔質状等を挙げることができる。
【0023】
第1のカソード電極12は、アノード電極11側で産生されて電線1等を通じて移動してきた電子と、水中を移動してきた水素イオン(例えば、アノード電極11側から水中を移動してきた水素イオン)を、その電極周辺の酸素と反応させて、酸素を還元するための電極である。
つまり、第1のカソード電極12の材質は、アノード電極11からの電子と水素イオンとにより酸素を還元することができるものであれば特に限定されないが、例えば、金属材料、炭素材料等の導電材料を挙げることができる。金属材料としては、鉄、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅、白金等を挙げることができ、炭素材料としては、グラファイト、炭素繊維、カーボンクロス、カーボンマット、カーボンフェルト、カーボンペーパー等を挙げることができる。
また、第1のカソード電極12の形状は、特に限定されないが、シート状、板状、メッシュ状、格子状、ブロック状、多孔質状等を挙げることができる。
【0024】
第2のカソード電極22には、電子を受け取って二酸化炭素を炭化水素に変換する第2の微生物が付着している。なお、第2のカソード電極22に付着している第2の微生物は、バイオフィルムなどを用いて植種したものでも、第2のカソード電極22に自然に付着して定着したものでもよい。
この第2のカソード電極22は、アノード電極11側で産生されて電線1等を通じて移動してきた電子を第2の微生物に受け渡すための電極である。
そして、第2のカソード電極22において、アノード電極11側で産生されて電線1等を通じて移動してきた電子を第2の微生物が受け取り、その第2の微生物が受け取った電子と、隔膜21を透過して水中を移動してきた水素イオン(例えば、アノード電極11側から水中を移動してきた水素イオン)と、電極周辺の二酸化炭素とを反応させている。具体的には、第2のカソード電極22において、第2の微生物が電子と水素イオンと二酸化炭素とを反応させて、二酸化炭素を還元して炭化水素(例えばメタン)に変換している。
つまり、第2のカソード電極22の材質は、アノード電極11からの電子を第2の微生物に受け渡すことができるものであれば特に限定されないが、例えば、金属材料、炭素材料等の導電材料を挙げることができる。金属材料としては、鉄、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅、白金等を挙げることができ、炭素材料としては、グラファイト、炭素繊維、カーボンクロス、カーボンマット、カーボンフェルト、カーボンペーパー等を挙げることができる。
また、第2のカソード電極22の形状は、特に限定されないが、シート状、板状、メッシュ状、格子状、ブロック状、多孔質状等を挙げることができる。
なお、第2の槽20の第2のカソード電極22において生成された炭化水素(例えばメタン)は、図示しない回収機構によって回収されるようになっている。
【0025】
このような構成の微生物燃料電池100において、第1の微生物が有機物を分解して産生された電子をアノード電極11が受け取り、第1のカソード電極12においてアノード電極11からの電子により酸素を還元することによる発電に伴いキャパシタ50に電荷を蓄えることと、キャパシタ50からの電荷の放出によって、アノード電極11からの電子を第2のカソード電極22において第2の微生物が受け取り、二酸化炭素を還元して炭化水素を生成する反応とが行われるようになっている。
【0026】
具体的には、本実施形態の微生物燃料電池100において、スイッチング回路60が、電線1と電線2bを繋ぐように切り替わり、アノード電極11と第1のカソード電極12とをキャパシタ50を介して電気的に接続することによって、第1のカソード電極12においてアノード電極11側で産生された電子により酸素を還元することによる発電がなされるので、その発電に伴いキャパシタ50に電荷を蓄えることができる。
つまり、スイッチング回路60が電線1と電線2bを繋ぎ、アノード電極11と第1のカソード電極12とを電気的に接続した状態が、キャパシタ50に蓄電(充電)がなされる蓄電状態である。
【0027】
また、本実施形態の微生物燃料電池100において、スイッチング回路60が、電線1と電線3bを繋ぐように切り替わり、アノード電極11と第2のカソード電極22とをキャパシタ50を介して電気的に接続することによって、キャパシタ50から電荷の放出がなされるので、アノード電極11側で産生された電子を第2のカソード電極22において第2の微生物が受け取り、二酸化炭素を還元して炭化水素を生成することができる。
つまり、スイッチング回路60が電線1と電線3bを繋ぎ、アノード電極11と第2のカソード電極22とを電気的に接続した状態が、キャパシタ50から電荷の放出がなされる放電状態である。
【0028】
このように、本実施形態の微生物燃料電池100では、第1のカソード電極12側で発電が行われ、第2のカソード電極22側で二酸化炭素を炭化水素に還元することが行われるように構成されており、発電と二酸化炭素の変換がともに行われている。
それにより、第1のカソード電極12側での発電に際して二酸化炭素が発生する場合でも、第2のカソード電極22側で二酸化炭素が他の化合物に変換されるので、この反応系での二酸化炭素の排出を抑えることができる。
例えば、上記特許文献1の技術では、二酸化炭素の排出を抑えるために、外部電源(外部エネルギー由来の光源)を用いる必要があったが、本実施形態の微生物燃料電池100では外部電源は不要である。
このような微生物燃料電池100であれば、二酸化炭素の排出を抑えた発電を行うことができる。
【0029】
なお、図1に示した微生物燃料電池100の第1のカソード電極12はエアカソードであり、一方の面側が有機物を含む水と接し、他方の面側が外気と接するように第1の槽10に配置されている。
第1のカソード電極12がエアカソードであれば、空気中の酸素を効率よく取り込むようにして、その第1のカソード電極12においてアノード電極11からの電子により酸素を還元することによる発電を良好に行うことができる。
【0030】
特に、本実施形態の微生物燃料電池100は、キャパシタ50における蓄電状態と放電状態を適正に切り替えることで、二酸化炭素を還元して炭化水素(例えばメタン)を好適に生成することができる。
以下に、この微生物燃料電池100によるメタン(炭化水素)の生成に関して検証した試験結果について説明する。
【0031】
本実施形態では、キャパシタ50の電圧を条件に、スイッチング回路60によってキャパシタ50の蓄電状態と放電状態の切り替えを行い、微生物燃料電池100の第2のカソード電極22においてメタンが生成する反応についての評価を行った。
なお、微生物の保持を目的とし、アノード電極11には、酢酸を有機物源とした人工培地を付与したものを用い、第2のカソード電極22には、アノード用の人工培地から有機物(酢酸ナトリウム)を除いた無機塩培地を付与したものを用いた。
【0032】
そして、キャパシタ50の充電条件として、0.30[V]、0.40[V]、0.42[V]、0.45[V]、0.50[V]、0.52[V]の6つの値の電圧を設定し、この電圧以上になった場合にスイッチング回路60を切り替え、電線1と電線3bを繋いた放電状態にして第2のカソード電極22へ電圧の印加を行うようにした。
また、キャパシタ50の電圧が0.1[V]以下になった場合にスイッチング回路60を切り替え、電線1と電線2bを繋いた蓄電状態にしてキャパシタ50へ充電を行うようにした。
なお、微生物燃料電池100に使用するキャパシタ50の構造上、その蓄電量(電圧)の上限は0.6[V]程度であると推認できるので、キャパシタ50の充電条件の上限は0.6[V]以下の0.52[V]に設定している。
また、上記したように、キャパシタ50の蓄電量には上限があるので、キャパシタ50に代えてポテンショスタットを用いて第2のカソード電極22の電位を標準水素電極電位に対して-0.8[V]となるように制御した。
【0033】
上記したキャパシタ50の充電条件ごとに、それぞれ蓄電状態と放電状態を切り替えて、微生物燃料電池100の第2のカソード電極22におけるメタンの生成速度を測定した。その測定結果を図2に示す。
図2に示すように、キャパシタ50の充電条件が0.30[V]ではメタンの生成速度は0[mmol/L/day]であった。
充電条件が0.40[V]では0.0003[mmol/L/day]、
充電条件が0.42[V]では0.018[mmol/L/day]、
充電条件が0.45[V]では0.0097[mmol/L/day]、
充電条件が0.50[V]では0.0075[mmol/L/day]、
充電条件が0.52[V]では0.0119[mmol/L/day]であった。
また、ポテンショスタット(0.8[V])では0.0081[mmol/L/day]であった。
【0034】
この測定結果によると、キャパシタ50の充電条件が0.42[V]と0.52[V]であるときにメタンの生成速度が0.01[mmol/L/day]を超えており、メタンが好適に生成していることが確認できる。
また、キャパシタ50の充電条件が0.45[V]と0.50[V]であっても、メタンが生成していることを確認できる。
このように、キャパシタ50の充電条件が0.42[V]以上0.52[V]以下であるときに、第2のカソード電極22にてメタンが好適に生成していることを確認できた。
【0035】
また、微生物燃料電池100におけるキャパシタ50の充電条件が0.42[V]と0.52[V]であるときのメタンの生成に関し、メタン生成量の経時変化について測定した。参照試験として、ポテンショスタット(0.8[V])を用いた際のメタン生成量の経時変化についても測定した。その測定結果を図3に示す。
図3に示すように、キャパシタ50の充電条件が0.42[V]であるとき、微生物燃料電池100におけるメタンの生成が比較的早く進み、メタンの生成量が多いことがわかった。
キャパシタ50の充電条件が0.52[V]であるときでも、ポテンショスタット(0.8[V])を用いた場合よりもメタンの生成が早く進むことがわかった。
そして、キャパシタ50の充電条件が0.42[V]であるとき、メタンの生成速度が最も速く、メタンの生成量が最も多いことが確認できた。
【0036】
また、微生物燃料電池100におけるキャパシタ50の充電条件が0.42[V]であるときと0.52[V]であるときのキャパシタ50の動作状況に関し、それぞれの放電状態と蓄電状態との切り替え状況についての測定を行った、その測定結果を図4に示す。
図4に示すように、キャパシタ50の充電条件が0.42[V]であるとき、平均して4分に1回の割合で第2のカソード電極22に電圧印加するように、蓄電状態と放電状態の切り替えが行われていた。
また、キャパシタ50の充電条件が0.52[V]であるとき、平均して30分に1回の割合で第2のカソード電極22に電圧印加するように、蓄電状態と放電状態の切り替えが行われていた。
微生物燃料電池100のキャパシタ50の充電条件が0.42[V]であるときも、0.52[V]であるときも、蓄電状態から放電状態に切り替わった後、数秒で第2のカソード電極22への電圧印加が行われており、キャパシタ50に蓄電された電力は極短時間で消費されていることがわかった。
そして、図4に示すように、キャパシタ50の充電条件が0.42[V]であるときの方が、キャパシタ50の充電条件が0.52[V]であるときに比べ、単位時間あたりの電圧印加の回数が多く、トータルでの電圧印加の時間が長いことがわかる。
つまり、微生物燃料電池100におけるキャパシタ50の充電条件が0.42[V]であるときに、メタンの生成速度が速く、メタンの生成量が多いのは、キャパシタ50の放電状態における電圧印加の時間が長いことが一因であると推定できる。
【0037】
なお、微生物燃料電池100における発電によってキャパシタ50に電荷を蓄えることに代えて、充電式電池に電荷を蓄えることも可能ではあるが、充電式電池では蓄電状態から放電状態に切り替わった後の電圧印加がゆっくりと行われることになる。
上記したように、蓄電状態から放電状態に切り替わった後に第2のカソード電極22への電圧印加を速やかに行い、蓄えた電力を短時間で消費するのが好ましいという観点からは、この微生物燃料電池100における蓄電手段には充電式電池ではなく、キャパシタ50を用いる方がよいといえる。
【0038】
このように、微生物燃料電池100のスイッチング回路60が、キャパシタ50に蓄えられている電荷の量(電圧)が第1閾値以下であるときに蓄電状態に切り替え、キャパシタ50に蓄えられている電荷の量(電圧)が第2閾値以上であるとき放電状態に切り替えるように動作することで、メタンを好適に生成することができることがわかった。
具体的には上記試験結果に基づき、第1閾値を0.1[V]、第2閾値を0.42[V]~0.52[V]の範囲の値に設定して、スイッチング回路60による蓄電状態と放電状態との切り替えを行うようにすることで、メタンを好適に生成することができる。
つまり、本実施形態の微生物燃料電池100において、スイッチング回路60が、キャパシタ50に蓄えられている電荷の量(電圧)が0.1[V]以下であるときに蓄電状態に切り替え、キャパシタ50に蓄えられている電荷の量(電圧)が0.42[V]~0.52[V]の範囲の値以上であるとき放電状態に切り替えるように動作して、蓄電状態と放電状態を切り替えることで、メタンを好適に生成することができる。
【0039】
本発明は上記実施形態に限られるものではない。
以下に、微生物燃料電池の変形例について説明する。なお、上記実施形態と同一部分には同符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
【0040】
微生物燃料電池200は、例えば、図5に示すように、有機物を含む水が貯留されている第1の槽10と、第1の槽10に配置されたアノード電極11と、キャパシタ50を介してアノード電極11と電気的に接続される、第1の槽10に配置された第1のカソード電極12と、二酸化炭素を含む水が貯留され、所定の隔膜21を介して第1の槽10と隣接している第2の槽20と、キャパシタ50を介してアノード電極11と電気的に接続される、第2の槽20に配置された第2のカソード電極22等を備えている。
ここでは、微生物燃料電池200の第1の槽10として屋外の貯水槽を利用している。この貯水槽には有機物を含む水が貯留されているとともに底質Bが堆積している。
【0041】
アノード電極11は、電線1を通じてスイッチング回路60に接続されており、アノード電極11はスイッチング回路60を介してキャパシタ50に接続されている。
第1のカソード電極12は、電線2aを通じてキャパシタ50に接続されており、キャパシタ50とスイッチング回路60は電線2bで接続されている。
第2のカソード電極22は、電線3aを通じてキャパシタ50に接続されており、キャパシタ50とスイッチング回路60は電線3bで接続されている。
この微生物燃料電池200におけるアノード電極11は、第1の槽10(貯水槽や湖沼)の底に堆積している底質Bに少なくとも一部が埋め込まれて設置されている。こうすることで、底質B中の第1の微生物がアノード電極11に付着し易くなるので好ましい。
【0042】
なお、第1の槽10は貯水槽であることに限らず、有機物を含む水が貯留されている大きな水槽(例えばプール)などであってもよい。
また、溜池や人造湖のような貯水槽に限らず天然の湖沼にも有機物を含む水が貯留されているので、そのような湖沼を第1の槽10と見立てて微生物燃料電池200を設計してもよい。
【0043】
第2の槽20は、例えばタンク状の容器であり、その一部に隔膜21(例えば、イオン交換膜)が配設されている。
この第2の槽20は、例えば、図示しない支持部材に支えられた状態で第1の槽10の中に設置されており、第2の槽20の隔膜21が第1の槽10の水に浸けられている。
つまり、第2の槽20の水と第1の槽10の水はそれぞれ隔膜21に接触しており、その隔膜21によって第2の槽20の水と第1の槽10の水が隔てられた状態になっている。
なお、第2の槽20の第2のカソード電極22において生成したメタンは、図示しない回収機構によって回収されるようになっている。
【0044】
このような、図5に示した微生物燃料電池200であっても、上記実施形態と同様に、第1の微生物が有機物を分解して産生された電子をアノード電極11が受け取り、第1のカソード電極12においてアノード電極11からの電子により酸素を還元することによる発電に伴いキャパシタ50に電荷を蓄えることと、キャパシタ50からの電荷の放出によって、アノード電極11からの電子を第2のカソード電極22において第2の微生物が受け取り、二酸化炭素を還元して炭化水素を生成することができる。
そして、この微生物燃料電池200においても、二酸化炭素の排出を抑えた発電を行うことができる。
【0045】
また、図5に示した微生物燃料電池200であっても、スイッチング回路60が、キャパシタ50に蓄えられている電荷の量(電圧)が第1閾値以下(0.1[V]以下)であるときに蓄電状態に切り替え、キャパシタ50に蓄えられている電荷の量(電圧)が第2閾値以上(0.42[V]~0.52[V]の範囲の値以上)であるとき放電状態に切り替えるように動作して、蓄電状態と放電状態とを適正に切り替えることで、メタン(炭化水素)を好適に生成することができる。
【0046】
以上のように、本実施形態の微生物燃料電池100,200は、二酸化炭素の排出を抑えた発電を行うことができ、また炭化水素(例えばメタン)を好適に生成することができる。
【0047】
なお、以上の実施の形態においては、微生物燃料電池において二酸化炭素を炭化水素(例えばメタン)に変換するとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、二酸化炭素を有機酸(例えばギ酸)に変換する微生物燃料電池であってもよい。
つまり、第2のカソード電極22側で二酸化炭素を還元して他の化合物に変換できればよい。例えば、第2のカソード電極22に付着させる第2の微生物に応じて、その還元反応をコントロールすることができる。
【0048】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 電線
2a、2b 電線
3a、3b 電線
10 第1の槽
11 アノード電極
12 第1のカソード電極
20 第2の槽
21 隔膜
22 第2のカソード電極
30 二酸化炭素供給手段
50 キャパシタ
60 スイッチング回路(切替手段)
100,200 微生物燃料電池
図1
図2
図3
図4
図5