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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147905
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】塗装用ローラーによる塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/28 20060101AFI20241009BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241009BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241009BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B05D1/28
C09D7/61
C09D201/00
B05D7/24 301K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060640
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000159032
【氏名又は名称】菊水化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹本 ひかる
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 洋平
(72)【発明者】
【氏名】村山 美優
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴久
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AC57
4D075AC88
4D075AC92
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA07
4D075DB11
4D075DC02
4D075DC05
4D075EA31
4D075EA43
4D075EB56
4D075EC01
4D075EC11
4D075EC13
4D075EC53
4D075EC54
4J038CC021
4J038CD021
4J038CD091
4J038CF091
4J038CG001
4J038DA001
4J038DB001
4J038DD001
4J038DF001
4J038DG001
4J038DL031
4J038HA266
4J038HA526
4J038HA536
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA14
4J038MA15
4J038NA01
4J038NA23
4J038NA24
4J038PA01
4J038PA18
4J038PB05
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
(57)【要約】
【課題】塗装用ローラーを用いた場合でも、均一な塗膜を容易で、効率的に得ることができ、下地の形状を平坦な状態にすることができる塗装用ローラーによる塗装方法を提供する。
【解決手段】塗料のTi値が2~10の範囲で、塗料固形分が10.0~80.0重量%の範囲である塗料を被塗布物に塗装用ローラーを用いて塗装する場合において、前記塗装用ローラーの塗装部が繊維の集合体である綿状のパイルを裏地と一緒に編み込んだ編物で作られ、その塗装用ローラーの塗料含み量が0.5~3.0g/cmの塗装用ローラーであり、その毛丈が5~32mmの範囲の塗装用ローラーを用いて塗装を行うことにより、塗装用ローラーを用いた場合でも、均一な塗膜を容易で、効率的に得ることができ、下地の形状を平坦な状態にすることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料のTi値が2~10の範囲で、塗料固形分が10.0~80.0重量%の範囲である塗料を被塗布物に塗装用ローラーを用いて塗装する場合において、
前記塗装用ローラーの塗装部が繊維の集合体である綿状のパイルを裏地と一緒に編み込んだ編物で作られ、
その塗装用ローラーの塗料含み量が0.5~3.0g/cmの塗装用ローラーであり、
その毛丈が5~32mmの範囲の塗装用ローラーを用いて塗装を行う塗装用ローラーによる塗装方法。
【請求項2】
前記塗料の比重が0.8~2.5の範囲で、その塗料中に含まれる充填材類の含有量が10.0~70.0重量%の範囲で、その粒子径が1.0~800.0μmの範囲である請求項1に記載の塗装用ローラーによる塗装方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗装ローラーによる塗装方法であって、その塗装により形成された塗膜が30~1000μmの範囲である塗装用ローラーによる塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建築構造物などの壁面等に塗料や塗材などの塗料組成物による塗装方法であって、その中でも塗装用ローラーによる塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築構築物などの壁面に塗装する場合には、主にスプレーガンを用いたスプレー塗装が行われていることが多く、それにより塗装することで、壁面などの表面形状に合ったきれいな塗装壁面を得ることができている。例えば平滑面に対しては、均一な厚みの平坦な塗膜を形成することができる。
このスプレー塗装は、塗料を空気圧で飛ばしながら塗装することで、その塗装作業の速さや仕上がりが良好なものであるが、塗料の飛散が多いため、飛散塗料による作業環境や近隣環境に影響を及ぼすことがある。
【0003】
また、塗料の無駄になることが多い場合がある。更に、塗装作業の技量によりその仕上がりに違いがある場合もある。
そこで、近年では、スプレー塗装に代わり、塗装用ローラーによる塗装が増えている。これにより、塗装作業の際の塗料飛散がかなり少なくなり、塗料の無駄を大幅に減少している。しかし、その仕上がりは、スプレー塗装に比べ劣ることがある。
【0004】
この塗装用ローラーは、塗料の塗布量や形成された塗膜の仕上がりなどにより使い分けられることもあり、その種類も数多く存在している。
このようなことから、特許文献1の特開2019-135282号公報に記載されているような、水性塗料組成物が提案されている。
【0005】
この先行文献1には、(a)合成樹脂エマルション、(b)平均粒子径が0.3~3mmの雲母、及び(c)平均粒子径が0.1~0.5mmである炭酸カルシウムを含み、(a)成分中の固形分100質量部に対し、(b)成分の含有量が3~30質量部であり、(c)成分の含有量が20~100質量部であり、B形粘度計で回転数20rpm、塗料温度25℃の条件下で測定した粘度が1,000~100,000mPa・sであり、Ti値(塗料温度25℃で回転数2rpmにおける粘度/塗料温度25℃で回転数20rpmにおける粘度)が2~8の水性塗料組成物である。
【0006】
これにより合成樹脂エマルションと、所定の平均粒子径を有する雲母及び炭酸カルシウムとを所定の濃度で含むことで、中毛ローラー等を用いたローラー塗布時の施工性に優れ、均一な塗膜を形成することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-135282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1にある水性塗料組成物では、所定の平均粒子径を有する雲母及び炭酸カルシウムを所定の濃度で含むことで仕上がりが良好なものとなるが、厚みのある塗膜を形成させるためには、何度も塗装する必要が生じ、効率的な塗装作業ができない場合がある。
本開示は、塗装用ローラーを用いた場合でも、均一な塗膜を容易で、効率的に得ることができ、下地の形状を平坦な状態にすることができる塗装用ローラーによる塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
塗料のTi値が2~10の範囲で、塗料固形分が10.0~80.0重量%の範囲である塗料を被塗布物に塗装用ローラーを用いて塗装する場合において、前記塗装用ローラーの塗装部が繊維の集合体である綿状のパイルを裏地と一緒に編み込んだ編物で作られ、その塗装用ローラーの塗料含み量が0.5~3.0g/cmの塗装用ローラーであり、その毛丈が5~32mmの範囲の塗装用ローラーを用いて塗装を行うことである。
【0010】
これにより、塗装用ローラーを用いた場合でも、均一な塗膜を容易で、効率的に得ることができ、下地の形状を平坦な状態にすることができる。
前記塗料の比重が0.8~2.5の範囲で、その塗料中に含まれる充填材類の含有量が10.0~70.0重量%の範囲で、その粒子径が1.0~800.0μmの範囲であることにより、その仕上がりがより均一で平滑なものとなる。
【0011】
その塗装により形成された塗膜が30~1000μmの範囲であることにより、より均一で平滑な塗膜を得ることができ、良好な仕上がりになるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態を説明する。
本開示は、塗料のTi値が2~10の範囲で、塗料固形分が10.0~80.0重量%の範囲である塗料を被塗布物に塗装用ローラーを用いて塗装する場合において、前記塗装用ローラーの塗装部がタテ糸とヨコ糸を直角に交差させた裏地に、糸状のパイルを織り込んだもので作られ、その塗装用ローラーの塗料含み量が0.5~3.0g/cmの塗装用ローラーであり、その毛丈が5~32mmの範囲である塗装用ローラーにより塗装を行うことである。
【0013】
まず、本開示で用いられる塗料には、一般的に塗装作業で用いられるものであり、合成樹脂などの有機バインダーやセメントなどの無機バインダーなどのバインダー成分を主成分としたものである。
この塗料の種類としては、クリヤー塗料やエナメル塗料、マット塗料などの上塗り塗料や比較的塗料粘度の低い下塗り塗料のプライマー,シーラーなどがある。
【0014】
他に、中塗り塗料や下地調整材などのような平均厚みが0.5~2.0mm程度の膜厚の塗膜を形成させる塗料がある。
本開示では、均一な塗膜を容易で、効率的に得ることができ、下地の形状を平坦な状態にすることができることであり、特に、中塗り塗料や下地調整材などのような膜厚の塗膜を形成させる塗料を用いた場合であっても、効率的に均一な塗膜を容易に得ることができることである。
【0015】
この下地調整材は、塗装面である下地の凹凸を目立たなくさせるために、塗装するものである。中塗り塗料は、塗装面に形状を付けるために塗装することが多く、パターンを付けるための塗材も含まれ、その用途などに応じ適宜選択して用いられる。
バインダー成分の多くは、合成樹脂を用いたもので、それを主成分とする塗料は、下地などの被塗布物に対して、塗布され、硬化乾燥させることにより塗膜を形成し、被塗布物を被覆するものである。
【0016】
合成樹脂には、アクリル樹脂,シリコーン樹脂,アクリルシリコン樹脂,フッ素樹脂,ポリウレタン樹脂,スチレン樹脂,エポキシ樹脂,メラミン樹脂,アルキッド樹脂,塩化ビニル樹脂,酢酸ビニル樹脂,ポリエステル樹脂,ポリエーテル樹脂,フェノール樹脂,ケトン樹脂等の樹脂がある。
これらの合成樹脂を水に分散させた合成樹脂エマルションを用いることが多い。この合成樹脂エマルションを用いた塗料は、水を溶媒とした水性塗料になり、塗料の取扱いや作業性の点から好ましく使われる。
【0017】
これらの合成樹脂は、単独又は2種類以上を混合して用いても良い。これらを構成するモノマーは、単独又は共重合した一般的なものが使われる。
これら合成樹脂を用いた合成樹脂エマルションの中でも、耐水性の良いアクリル系合成樹脂エマルション,アクリルスチレン系合成樹脂エマルション,アクリルシリコン系合成樹脂エマルション,ウレタン系合成樹脂エマルションが好ましく用いられる。
【0018】
また、これらの合成樹脂エマルションは、耐水性の他にも塗料適性,塗膜の物性や入手の容易性などの点でも好適に用いられる。この塗料には、合成樹脂の他に、必要に応じて通常の塗料に用いられる添加剤や顔料成分、充填材、繊維などが使用されることが多い。
この添加剤には、消泡剤,分散剤,湿潤剤などとして用いられる界面活性剤、造膜助剤,防凍剤などとして用いられる高沸点溶剤があり、粘度,粘性調整のための増粘剤やレベリング剤、防腐剤、防藻剤、防黴剤、抗菌剤、pH調整剤、架橋剤、シランカップリング剤などもある。
【0019】
顔料成分には、酸化チタン,酸化亜鉛などの白色顔料、酸化鉄などの無機系の顔料や有機系顔料などの着色顔料がある。
充填材として、炭酸カルシウム,カオリン,タルク,クレー,水酸化アルミニウム,ベントナイト,ホワイトカーボン,沈降性硫酸バリウムなどの体質顔料がある。
【0020】
他に、珪砂や寒水砂などの骨材を加えることも可能であり、他にゼオライト、パーライトなどの軽量骨材などもある。又、無機系の骨材の他にも有機系の骨材も用いることができ、繊維なども加えることも可能である。
これらの顔料成分や充填材、骨材を単独又は複数種を組み合わせて用いることもある。
【0021】
これら充填材を含有させることは、好ましく行われ、その含有量が10.0~70.0重量%の範囲であることが好ましい。
この充填材類の含有量が範囲内であれば、塗料の乾燥時に収縮が少なく、仕上がりがより均一で平滑なものとなり、適切な膜厚を確保することができ、塗膜の耐候性などの物性が良好で、塗装が行い易いものとなる。
【0022】
より好ましい範囲としては、10.0~50.0重量%の範囲であり、この範囲であることで、仕上がりがより均一で平滑で、適切な膜厚を確保し、良好な塗膜を得ることができる。
また、その粒子径が1.0~800.0μmの範囲であることが好ましく、1.0μmより小さい場合では、充填材類の比表面積が大きくなり、後述される塗装用ローラーによる塗装が行い難く、平坦な塗装面を形成することが難しいことがある。
【0023】
800.0μmより大きい場合では、その充填材類の影響により、平坦な塗膜を得ることが難しいことがある。又、後述される塗装用ローラーが目詰まりを起こすことや塗装用ローラーに保持できないこともあるため塗装が難しいこともある。
好ましくは、1.0~100.0μmの範囲であり、この範囲内のものを使えば、均一な厚みの平坦で、割れの少ない塗膜を形成することができ、きれいな塗装壁面を得ることができる。
【0024】
このように上記記載のような構成材料により塗料は構成され、その塗料のTi値が2~10の範囲で、塗料固形分が10.0~80.0の範囲である必要がある。
この塗料のTi値は、塗料の粘性であるチクソトロピーを示すもので、B型粘度計を用い、2種の回転速度における見かけ粘度の比を求めるものであり、Ti値の算出式は下記に示す。
【0025】
Ti値=低い回転速度での粘度/10倍高い回転速度での粘度
この測定条件は、23℃で、60秒間回転させた後の測定値である。
【0026】
このTi値が1の場合は、塗料がニュートン流体であり、1より大きくなるにしたがって、チクソトロピーの程度が大きくなることである。このTi値がこの範囲内であることで、塗布した時の塗料のたれが少なく、又、塗膜の平坦性を損なわないもので、塗料の貯蔵安定性が良いものとなる。
そして、この塗料の固形分がこの範囲内であることにより、塗料の乾燥時に収縮が少なく、塗膜の平坦性を損なうことがないものとなる。
【0027】
このTi値が2~7の範囲であることが好ましく、2より低い場合では、垂直面に塗布した場合に、乾燥前の塗料が垂れることやそのために均一な塗膜を形成できないことがあり、部分的に塗膜が薄くなり過ぎることもある。
7より高い場合では、塗料が塗りづらく、平坦な塗膜を得ることができないことがある。
【0028】
塗料が中塗り塗料や下地調整用の塗料の場合では、Ti値が4~7の範囲であることが好ましく、この範囲内であれば、比較的多くの塗料を塗装用ローラーに保持させることができ、効率的に塗装することが可能となり、塗り易く、下地の形状を平坦な状態にすることができる塗料となる。
塗料の粘度は、0.5~10.0Pa・sの範囲が好ましい。この粘度は、前記Ti値を求めたようにB型粘度計を用いて測定するものであり、その測定条件は、23℃、3号ロータ、20rpm、60秒である。
【0029】
この粘度が0.5Pa・sより低い場合は、塗り易い塗料ではあるが、垂直面に塗装した場合などで、垂れが発生し易く、平坦な塗膜を得ることなど安定した仕上がりにならない場合がある。
10.0Pa・sより高い場合では、塗装用ローラーでの塗装作業性が悪くなり、塗膜に厚みのムラができ、安定した仕上がりにならない。
【0030】
また、中塗り塗料や下地調整用の塗料の場合では、塗料の粘度が0.8~10.0Pa・sの範囲が好ましく、この範囲内であれば、塗装用ローラーに多くの塗料を保持させることができ、塗装作業性がより効率的になり、比較的平坦で、一様な塗膜を得ることができる。
この塗料固形分は10.0~80.0重量%の範囲であり、この範囲内であることから、均一な塗膜を容易で、効率的に得ることができ、下地の形状を平坦な状態にすることができる。
【0031】
10.0重量%より低い場合では、塗装対象物の種類にもよるが、塗膜が薄くなり、塗膜の透けが発生することがある。80.0重量%より高い場合では、塗装が行い難く、比較的均一な厚みの塗膜を得ることができないことがある。
また、中塗り塗料や下地調整用の塗料の場合では、30.0~80.0重量%の範囲であることが好ましく、この範囲内であれば、より効率的な塗装作業を行うことができ、平滑面に対しては、比較的、平坦な塗膜を得ることができる。
【0032】
また、塗料の乾燥時に収縮が少なく、塗膜の平坦性を損なうことがなく、塗装が行い易いものとなる。
塗料が顔料成分を含む上塗り塗料の場合では、20.0~55.0重量%の範囲であることが好ましく、この範囲内であれば、平滑面に対しては、比較的、均一で平坦な塗膜を効率的に得ることができる。
【0033】
塗料の比重が0.8~2.5の範囲であることが好ましい。この範囲内であることから、その仕上がりがより均一で平滑なものとなり、適切な膜厚を確保することができ、塗装が行い易いものとなる。
0.8より低い場合では適切な膜厚を確保するために手間が掛かることになり、2.5より高い場合では、塗料が重く、塗装作業が行い難くなることがある。
【0034】
中塗り塗料や下地調整用の塗料の場合では、1.0~2.0の範囲が好ましく、この範囲内であれば、塗膜の平坦性を損なうことなく、仕上がりがより均一で平滑なものとなり、適切な膜厚を確保することができ、塗装が行い易いものとなる。
このような性状の塗料を塗装用ローラーの塗装部が繊維の集合体である綿状のパイルを裏地と一緒に編み込んだもので作られ、その塗装用ローラーの塗料含み量が0.5~3.0g/cmの塗装用ローラーで、その毛丈が5~32mmの範囲である塗装用ローラーにより塗装を行うことである。
【0035】
本開示で使用する塗装用ローラーは、繊維の集合体である綿状のパイルを裏地と一緒に編み込んだもので作られた塗装部により塗装するもので、塗料の含みが良好で、1度で塗れる面積が広く、また塗布量が多くなり、形成される塗膜の厚みがあるものである。
また、骨材なども良く絡むため、骨材が入っている塗料や中塗り塗料や下地調整材ように顔料成分の多い塗料の塗装に有効で、その作業性も良好なものである。
【0036】
そのため、効率的に均一な塗膜を容易に形成させることができ、下地の形状を平坦な状態することが可能なものである。
この塗装部に使われている繊維は、特に制限されるものではなく、主に合成繊維が使用され、アクリル繊維,ポリエステル繊維,ナイロン繊維などがある。
【0037】
アクリル繊維を用いた塗装用ローラーでは、軽く、しなやかな繊維であるため、塗装作業が良好で、塗料が含み易いものである。酸やアルカリにも比較的強いため、多くの種類の塗料に対応ができるものである。
ポリエステル繊維を用いたものは、比較的強度が高いため、摩耗に強く、耐久性があり、弾力が優れていることから、粘度の高い塗料に用いられることが多いものである。
【0038】
ナイロン繊維のものは、強度があり、塗料離れが良く、弾力性に富んでいるものである。
この塗装用ローラーは、その毛丈が5~32mmの範囲であり、その毛丈中に含まれる塗料の含み量が0.5~3.0g/cmの範囲のものを用いることである。
【0039】
この塗装用ローラーは、塗装部を有するローラー部分とこのローラー部分を支持するためのハンドルにより構成されるものでる。
このローラーには、その種類により内径の大きさがあり、その内径が直径で、10.0~40.0mmの範囲程度あり、その内径の外周部分から塗装部が形成されている。
【0040】
この内径は、比較的広い面積を塗装するための38mmのものや、使い勝手が良い27mmのもの、細部への塗装に適した17mmのものが代表的なものとして例示できる。
この塗料の含み量は、塗装用ローラーの長さ、外周長と、毛丈とによる体積中に含むことが可能な塗料の重量により表すものであり、この含み量が0.5~3.0g/cmの範囲であり、この範囲より少ない場合では、塗料の含み量が少なく、一度に塗装できる面積が小さくなり、作業性が劣るものとなる。
【0041】
この範囲より大きい場合では、一度に塗装できる塗料量が多くなるが、その塗料量を均一に伸ばすために、時間が掛かり、場合によっては、途中で塗料が乾燥してしまうことがあり、均一な塗膜を形成できないことがある。
この塗料の含み量は、中塗り塗料や下地調整用の塗料の場合では、1.0~2.5g/cmの範囲がより好ましく、より効率的な塗装作業を行うことができ、塗膜の平坦性を損なうことなく、仕上がりがより均一で平滑なものとなり、適切な膜厚を確保することができ、塗装が行い易いものとなる。
【0042】
この塗料の含み量は、塗装用ローラーの毛丈に影響されるため、その塗装面の種類や形状、塗料の種類などに応じ5~32mmの範囲内で選択されることになり、5~20mmの範囲の毛丈が好ましい。
この毛丈が5~6mmの範囲では、より平滑に仕上げることが可能であるが、塗料の含み量が少ないため、塗装面の塗継ぎが多くなることになる。
【0043】
また、その毛丈が7~8mmのものでは、塗料の含み量があり、その含まれた塗料の吐出も良好なため、塗装面の平坦性と作業性のバランスの取れたものである。
10~14mmの範囲のものでは、塗料の含み量が比較的あり、その含まれた塗料の吐出も良好なため、塗装面の平坦性と作業性のバランスの取れたものである。
【0044】
15~20mmの範囲のものでは、塗料を多めに含むことができ、吐出もよく、作業性が良い。多少の凹凸面にも塗装を行うことができるものである。
上記記載のような塗料と塗装用ローラーとを用いて塗装を行う。この塗装は、主に建築物を構成する柱、梁、床、壁などを塗装面とする場合が多く、これらによる建築物は、塗装面積が広く、細部が複雑な形状を有する場合があり、このような場合に、本開示の効果を十分に発揮するものである。
【0045】
この塗装面としては、セメントなどの無機成分を成分とした、モルタル,コンクリート,ALC版,押出成形板,サイディングボード,ケイ酸カルシウム板,石膏ボード,炭酸カルシウム発泡板,不燃火山性ガラス質複層板,繊維強化セメント板,軽量セメント板などがある。
また、鉄製品である鋼材,鉄板,金属サイディングなども挙げることができる。他に、タイルやガラス,石材,木材及びプラスチック製品なども挙げられる。
【0046】
これらのようなものに対して塗装が行われ、その塗装により形成された塗膜が30~1000μmの範囲であることが好ましい。この範囲内であれば、より均一で平滑な塗膜を得ることができ、良好な仕上がりを得ることができる。
中塗り塗料や下地調整用の塗料の場合では、100~1000μmの範囲が好ましく、この範囲内であれば十分な膜厚があり、塗装対象面を保護することができ、塗装作業も効率的に行うことができるものである。
【0047】
このような塗膜は比較的平滑であり、この平滑は、色ムラや艶ムラのない状態で、その塗装面を手で触った場合に、塗料構成物の凝集物や違和感のある凹凸がなく、一定の手触り感のある状態である。
この状態は、塗膜の断面において、その厚みのばらつきがその塗膜の中心値から±50.0%の誤差の範囲であることである。
【0048】
この範囲内であれば、塗装作業も効率的に行うことができ、均一な厚みの平坦な塗膜を形成することができ、壁面等などの表面形状に合ったきれいで平滑な塗装壁面を得ることができる。
この範囲外である場合の塗膜では、その塗膜の艶ムラを確認することができる状態になる。より好ましくは、この誤差が±10.0%の範囲であることであり、この範囲内であれば、厚みがより均一な平坦な塗膜を形成することができ、平滑な塗装壁面を得ることができる良好なものとなる。
【0049】
以下、前記実施形態をさらに詳細に説明する。
各種塗料を塗装用ローラーを用いて、小さな凹凸がある塗膜が形成されているスレート板に塗装し、作業性、仕上がりを確認した。その仕様と結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
各種塗料に含有している充填材類は主に炭酸カルシウムであり、粒子径は、レーザー回折法で測定した体積基準の粒度分布から算出されるD50値である。
塗料の粘度は、B型粘度計で20rpm,23℃で測定した値である。
【0052】
塗装用ローラーは、綿状のパイルを裏地と一緒に編み込んだ塗装部を持つ、一般的にハイパイルと呼ばれるローラーと、縦糸と横糸を直角に交差させた織り裏地に糸状のパイルを織り込んだ塗装部を持つ、一般的にウーブンと呼ばれるローラーを用いた。
塗料含み量は、まずローラーの重さを量り、その後塗料が入った容器にローラーを沈み込ませてから取り出した後の重さを量ってその差を出し、ローラーの体積で割った値である。
【0053】
作業性は、各種塗料を表1に記載の塗装用ローラーを用いて塗り広げやすさや塗料の飛散性を確認した。
仕上がりは、作業性を確認して形成された塗膜を目視で確認した。
塗膜厚は、各種仕様で塗装し形成された乾燥塗膜をランダムに3点測定した。
【0054】
実施例1~3の仕様は、塗料が塗り広げやすく、仕上がりも良かった。特に実施例1,2の仕様は、下地の凹凸部に塗料が埋まり滑らかな外観になった。
比較例1,2の仕様は、塗料を塗り広げにくく、仕上がりも下地の凹部に塗料が入り込みにくく、あまりきれいに仕上がらなかった。
【0055】
比較例3の仕様は、塗料中の固形分が高いためか、塗料を塗り広げにくく、塗料の跳ね返りも多かった。また、形成された塗膜も凹凸状であった。
比較例4の仕様は、塗料中の固形分が低く、塗装用ローラーの塗料含み量が多いためか、塗料の跳ね返りが多かった。
比較例5の仕様は、使用した塗装用ローラーの毛丈が短いため、塗料の含み量が少なく、塗料を塗り広げにくかった。