(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147911
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】多孔質成形体の製造方法、成形材料、多孔質成形体、および多孔質炭素材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/24 20060101AFI20241009BHJP
C08G 8/00 20060101ALI20241009BHJP
B29C 67/20 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
C08J9/24 CEZ
C08G8/00 B
B29C67/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060648
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】国実 貴夫
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
4J033
【Fターム(参考)】
4F074AA59M
4F074AA59N
4F074CA52
4F074CA53
4F074CC03Y
4F074CC04Y
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4F214AA37
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4F214UB01
4F214UC02
4F214UF01
4J033CA02
4J033CA11
4J033CA32
4J033CB02
4J033CB13
4J033CB18
4J033CB21
4J033CB23
4J033CB27
4J033CC07
4J033HB01
4J033HB04
(57)【要約】
【課題】曲げ強度や曲げ弾性率が高く機械的強度に優れた多孔質成形体を得ることができ、さらに低圧成形が可能であり生産性に優れる多孔質成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の多孔質成形体の製造方法は、球状フェノール樹脂硬化物(A)の表面に、液状フェノール樹脂(B)を被覆する工程と、得られた被覆球状フェノール樹脂硬化物(AB)を含む成形材料を成形する工程と、を含み、球状フェノール樹脂硬化物(A)はレゾール樹脂の硬化物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状フェノール樹脂硬化物(A)の表面に、液状フェノール樹脂(B)を被覆する工程と、
得られた被覆球状フェノール樹脂硬化物(AB)を含む成形材料を成形する工程と、
を含み、
球状フェノール樹脂硬化物(A)はレゾール樹脂の硬化物である、多孔質成形体の製造方法。
【請求項2】
前記成形する工程は、常圧ないし0.2MPa未満の圧力で成形する、請求項1に記載の多孔質成形体の製造方法。
【請求項3】
前記レゾール樹脂は含窒素構造を含む、請求項1に記載の多孔質成形体の製造方法。
【請求項4】
前記レゾール樹脂はエチレン架橋体である、請求項1に記載の多孔質成形体の製造方法。
【請求項5】
前記球状フェノール樹脂硬化物(A)は熱で不融である、請求項1に記載の多孔質成形体の製造方法。
【請求項6】
球状フェノール樹脂硬化物(A)100質量部に対する、液状フェノール樹脂(B)の量は2~50質量部である、請求項1に記載の多孔質成形体の製造方法。
【請求項7】
前記成形材料は、さらに無機充填剤を含む、請求項1~6のいずれかに記載の多孔質成形体の製造方法。
【請求項8】
球状フェノール樹脂硬化物(A)の表面に液状フェノール樹脂(B)が被覆された被覆球状フェノール樹脂硬化物(AB)を含み、
球状フェノール樹脂硬化物(A)はレゾール樹脂の硬化物である、成形材料。
【請求項9】
前記レゾール樹脂は含窒素構造を含む、請求項8に記載の成形材料。
【請求項10】
前記レゾール樹脂はエチレン架橋体である、請求項8に記載の成形材料。
【請求項11】
前記球状フェノール樹脂硬化物(A)は熱で不融である、請求項8に記載の成形材料。
【請求項12】
球状フェノール樹脂硬化物(A)100質量部に対して、液状フェノール樹脂(B)を2~50質量部の量で含む、請求項8に記載の成形材料。
【請求項13】
さらに無機充填剤を含む、請求項8に記載の成形材料。
【請求項14】
請求項8~13のいずれかに記載の成形材料の硬化物を含む多孔質成形体。
【請求項15】
成型比重が0.4g/cm3~1.2g/cm3である、請求項14に記載の多孔質成形体。
【請求項16】
請求項15に記載の多孔質成形体を焼成して得られる多孔質炭素材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質成形体の製造方法、成形材料、多孔質成形体、および多孔質炭素材に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂の硬化物は、耐熱性等の物理的特性が優れていることから、従来から、機械構造部品、自動車用部品、電気機器部品、通信機器部品等の各種製品に広く採用されている。このような製品は、一般に、フェノール樹脂に各種添加剤や充填材等を配合してなる樹脂組成物を用いて、公知の成形方法により製造されている。
【0003】
特許文献1には、球状粒子をフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆してなる被覆粒子を集合させ、前記熱硬化性樹脂を硬化させることにより成形された多孔質体が開示されている。当該文献には、具体的に、加熱された球状粒子に、フェノール樹脂を添加し、加熱しながら混練りするホットメルト法で被覆粒子を形成している。
【0004】
特許文献2には、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の硬化物からなる硬化粒子の表面に未硬化のフェノール樹脂からなる被覆層を設けて形成した球状複合樹脂を成形型に充填し、加圧しながら加熱して成形することによって、未硬化の熱硬化性樹脂からなる被覆層を溶融硬化させると共に、硬化粒子とその表面の被覆層が硬化した被覆硬化層からなる球状粒子を相互の接触部で融着させる多孔性成形体の製造方法が開示されている。当該文献においては、被覆層を溶融硬化させており、当該被覆層を構成するフェノール樹脂は固形である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-26435号公報
【特許文献2】特開2016-145264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~2に記載の方法で得られた多孔質成形体は、機械的強度に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、液状フェノール樹脂で被覆された球状フェノール樹脂硬化物を用いることで、機械的強度に優れた多孔質成形体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0008】
[1] 球状フェノール樹脂硬化物(A)の表面に、液状フェノール樹脂(B)を被覆する工程と、
得られた被覆球状フェノール樹脂硬化物(AB)を含む成形材料を成形する工程と、
を含み、
球状フェノール樹脂硬化物(A)はレゾール樹脂の硬化物である、多孔質成形体の製造方法。
[2] 前記成形する工程は、常圧ないし0.2MPa未満の圧力で成形する、[1]に記載の多孔質成形体の製造方法。
[3] 前記レゾール樹脂は含窒素構造を含む、[1]または[2]に記載の多孔質成形体の製造方法。
[4] 前記レゾール樹脂はエチレン架橋体である、[1]~[3]のいずれかに記載の多孔質成形体の製造方法。
[5] 前記球状フェノール樹脂硬化物(A)は熱で不融である、[1]~[4]のいずれかに記載の多孔質成形体の製造方法。
[6] 球状フェノール樹脂硬化物(A)100質量部に対する、液状フェノール樹脂(B)の量は2~50質量部である、[1]~[5]のいずれかに記載の多孔質成形体の製造方法。
[7] 前記成形材料は、さらに無機充填剤を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の多孔質成形体の製造方法。
[8] 球状フェノール樹脂硬化物(A)の表面に液状フェノール樹脂(B)が被覆された被覆球状フェノール樹脂硬化物(AB)を含み、
球状フェノール樹脂硬化物(A)はレゾール樹脂の硬化物である、成形材料。
[9] 前記レゾール樹脂は含窒素構造を含む、[8]に記載の成形材料。
[10] 前記レゾール樹脂はエチレン架橋体である、[8]または[9]に記載の成形材料。
[11] 前記球状フェノール樹脂硬化物(A)は熱で不融である、[8]~[10]のいずれかに記載の成形材料。
[12] 球状フェノール樹脂硬化物(A)100質量部に対して、液状フェノール樹脂(B)を2~50質量部の量で含む、[8]~[11]のいずれかに記載の成形材料。
[13] さらに無機充填剤を含む、[8]~[12]のいずれかに記載の成形材料。
[14] [8]~[13]のいずれかに記載の成形材料の硬化物を含む多孔質成形体。
[15] 成型比重が0.4g/cm3~1.2g/cm3である、[14]に記載の多孔質成形体。
[16] [15]に記載の多孔質成形体を焼成して得られる多孔質炭素材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、曲げ強度や曲げ弾性率が高く機械的強度に優れた多孔質成形体を得ることができ、さらに低圧成形が可能であり生産性に優れる多孔質成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。また、例えば「1~10」は特に断りがなければ「1以上」から「10以下」を表す。
【0011】
<多孔質成形体の製造方法>
本実施形態の多孔質成形体の製造方法は、以下の工程を含む
工程a:球状フェノール樹脂硬化物(A)の表面に液状フェノール樹脂(B)を被覆する。
工程b:工程aで得られた被覆球状フェノール樹脂硬化物(AB)を含む成形材料を成形して多孔質成形体を得る。
【0012】
[工程a]
本工程において、球状フェノール樹脂硬化物(A)の表面に、液状フェノール樹脂(B)を被覆することができればその方法は特に限定されず、公知の混合方法により球状フェノール樹脂硬化物(A)の表面に液状フェノール樹脂(B)を付着させることができる。
液状フェノール樹脂(B)を用いることにより、球状フェノール樹脂硬化物(A)との接触面積が大きくなり、後述する工程bにおいて得られる多孔質成形体は機械的強度に優れる。
【0013】
混合方法としては、ミキサー、粉砕機、ニーダー、ロール、単軸混練機、二軸混練機等を用いて混合する方法を挙げることができる。
【0014】
工程aは、大気下および常温(25℃)下で行うことができ、混合時間は10秒~10分間程度である。
液状フェノール樹脂(B)の流動性を高めるために加熱することができ、また有機溶剤を添加することもできる。
【0015】
本工程により、被覆球状フェノール樹脂硬化物(AB)が得られる。本実施形態において被覆とは、球状フェノール樹脂硬化物(A)の表面全てが液状フェノール樹脂(B)で覆われている形態だけでなく、その表面の一部が液状フェノール樹脂(B)で覆われている形態も含む。
以下、本工程で用いられる成分について説明する。
【0016】
(球状フェノール樹脂硬化物(A))
本実施形態において、球状フェノール樹脂硬化物(A)はレゾール樹脂の硬化物である。
前記レゾール樹脂は含窒素構造を含むことが好ましく、具体的には、分子中に、下記の化学式(1)で表されるアルキレンアミン由来の構造単位を、少なくとも1個以上有する。
【0017】
【0018】
上記一般式(1)中、R1は、それぞれ独立して、炭素数1~10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。R1のアルキレン基の炭素数は、例えば、1~10、好ましくは2~6、より好ましくは2~4ある。上記範囲内とすることで、硬化体の曲げ強度や曲げ弾性率等の機械的強度を向上することができる。
【0019】
レゾール樹脂は、分子中に、下記の化学式(2)で表されるエチレンアミン由来の構造単位を、少なくとも1個以上有するものを含んでもよい。
【0020】
【0021】
本実施形態において、前記レゾール樹脂は、化学式(2)で表されるエチレンアミン由来の構造単位で架橋されていることが好ましく、すなわちエチレン架橋体であることが好ましい。
【0022】
レゾール樹脂中におけるエチレンアミン由来の構造単位の含有比率の下限は、例えば、3重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。これにより、球状フェノール樹脂硬化物とレゾール樹脂との界面接着が良好となり曲げ強度や曲げ弾性率等の機械的強度を向上することができる。一方、フェノール樹脂中におけるエチレンアミン由来の構造単位の含有比率の上限は、例えば、50重量%以下、好ましくは45重量%以下、より好ましくは40重量%以下でもよい。これにより、球状フェノール樹脂硬化物の固さを適当に調整することができる。
エチレンアミン由来構造の含有率は、以下の式に基づいて算出できる。式中の含窒素量(重量%)は、元素分析法により測定できる。
エチレンアミン由来構造の含有率=含窒素量×(43/14)
【0023】
本実施形態の球状フェノール樹脂硬化物(A)の平均粒子径は、用途によってその最適な範囲が異なり、用途に応じて適宜選択することができる。
本実施形態の球状フェノール樹脂硬化物(A)の平均粒子径の下限値は、例えば、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましい。
また、本実施形態の球状フェノール樹脂硬化物(A)の平均粒子径の上限値は、例えば、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。
【0024】
球状フェノール樹脂硬化物(A)の平均粒子径が上記数値範囲内であることで、フェノール樹脂組成物中および硬化体中の球状フェノール樹脂硬化物(A)の分散性を改善することができ、硬化体の曲げ強度や曲げ弾性率等の機械的強度に優れる。
球状フェノール樹脂硬化物(A)は、本発明の効果の観点から、平均粒子径の異なる球状フェノール樹脂硬化物を少なくとも1種含むことができる。
球状フェノール樹脂硬化物(A)の平均粒子径はレーザー散乱式粒度分布計で測定することができる。
【0025】
球状フェノール樹脂硬化物(A)のかさ比重の下限値は、例えば、0.10g/ml以上が好ましく、0.15g/ml以上がより好ましく、0.20g/ml以上が更に好ましい。
球状フェノール樹脂硬化物(A)のかさ比重の上限値は、例えば、1.00g/ml以下が好ましく、0.90g/ml以下がより好ましく、0.80g/ml以下が更に好ましい。
なお、本実施形態において、球状フェノール樹脂硬化物(A)のかさ比重は、例えば、ホソカワミクロン株式会社製パウダーテスターPT-Xを用いて評価することができる。
【0026】
本実施形態において、球状フェノール樹脂硬化物(A)は熱で不融であることが好ましい。当該熱とは多孔質成形体を製造する際の熱(加熱温度)、当該多孔質成形体を焼成して多孔質炭素材を製造する際の熱(焼成温度)、を意味する。
球状フェノール樹脂硬化物(A)は熱で不融であることにより、得られる多孔質成形体は成型時の熱、圧力に耐え多孔質構造が維持されることから所望の用途に好適に用いることができる。
【0027】
[球状フェノール樹脂硬化物(A)の製造方法]
球状フェノール樹脂硬化物(A)は以下の方法で製造することができる。
本実施形態の球状フェノール樹脂硬化物(A)の製造方法は、
フェノール類と、アルデヒド類と、親水性高分子とを含む混合液を作製する準備工程と、
混合液を撹拌し、フェノール類と、アルデヒド類とを反応させ、懸濁粒子を形成する反応工程、硬化させる工程と、を含む。
以下、各工程について詳細を説明する。
【0028】
(準備工程)
準備工程では、フェノール類と、アルデヒド類と、親水性高分子と、親水性溶媒とを含む混合液を作製する。
以下、混合液の各成分について詳細を説明する。
【0029】
(フェノール類)
フェノール類としては限定されず、具体的には、フェノール;o-ジヒドロキシベンゼン(すなわち、カテコール)、m-ジヒドロキシベンゼン(すなわち、レゾルシノール、すなわち、レゾルシン)、p-ジヒドロキシベンゼン(すなわち、ヒドロキノン)などのジヒドロキシベンゼン;1,2,3-トリヒドロキシベンゼン(すなわち、ピロガロール)などのトリヒドロキシベンゼン;o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、オキソクレゾールなどのクレゾール;エチルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのアルキルフェノール;キシレノール;3-ペンタデシルフェノール、3-ペンタデシルフェノールモノエン、3-ペンタデシルフェノールジエン、3-ペンタデシルフェノールトリエンなどのカシューオイルの含有成分;1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼン、1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンモノエン、1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンジエン、1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼントリエンといったカルドールの含有成分;2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼン、2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンモノエン、2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンジエン、2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼントリエンといったメチルカルドールの含有成分;ウルシオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSといったビスフェノール類;p-フェニルフェノール;スチレン化フェノールなどが挙げられる。フェノール類としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。フェノール類としては、上記具体例のうち例えば、フェノール、クレゾール及びアルキルフェノールからなる群から選択される1種以上を用いることが好ましく、フェノールを用いることがより好ましい。これにより、硬化体の曲げ強度や曲げ弾性率等の機械的強度を向上することができる。
【0030】
(アルデヒド類)
アルデヒド類としては限定されず、具体的には、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、サリチルアルデヒド、フルフラール、グリオキザールなどが挙げられる。アルデヒド類としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ヘキサメチレンテトラミンといったアルデヒド化合物の発生源となる化合物を用いてもよい。アルデヒド類としては、上記具体例のうち例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドからなる群から選択される1種以上を用いることが好ましく、ホルムアルデヒドを用いることがより好ましい。これにより、硬化の程度を制御しやすくなる。
【0031】
混合液中のフェノール類と、アルデヒド類との仕込み量としては、例えば、フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/フェノール類)が0.8以上4.0以下となるようにすることができる。これにより、フェノール類と、アルデヒド類とが反応することで、レゾール型フェノール樹脂、さらに、一部がレゾール型フェノール樹脂の架橋体となり、混合液中で、粒子状に分散できる。
【0032】
(親水性高分子)
本実施形態の球状フェノール樹脂硬化物(A)の製造方法は湿式法である。親水性高分子は、フェノール類及びアルデヒド類の表面に付着し、フェノール類及びアルデヒド類を親水性溶媒中の中で球状に分散させ、あたかも、フェノール類及びアルデヒド類と、親水性溶媒とをO/Wエマルションのように分散させるために必要である。これにより、所望の形状の懸濁粒子を作製することができる。
【0033】
親水性高分子としては限定されず、具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースカチオン化物などの水溶性セルロース誘導体;ポリビニルアルコール;アルギン酸;グアガム:アラビアガムなどを挙げることができる。親水性高分子としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。親水性高分子としては、上記具体例のうち例えば、ヒドロキシエチルセルロース、グアガム及びアラビアガムからなる群より選択される1種以上を用いることが好ましく、ヒドロキシエチルセルロースを用いることがより好ましい。これにより、球状フェノール樹脂硬化物(A)の粒径を所望の数値範囲内とすることができる。
【0034】
(反応工程)
反応工程では、混合液を撹拌し、フェノール類と、アルデヒド類とを反応させ、懸濁粒子を形成する。
フェノール類と、アルデヒド類とを反応させ、懸濁粒子を形成する方法としては、混合液を撹拌することによって行うことができる。
【0035】
フェノール類と、アルデヒド類との反応は、例えば、塩基性触媒下で行う。反応工程では、フェノール類と、アルデヒド類とが反応してレゾール型フェノール樹脂となり、さらに、レゾール型フェノール樹脂の一部が互いに架橋し架橋体となる。反応工程では架橋は完全には進行せず、後述する硬化工程においてさらに架橋が進行し、硬化する。すなわち、懸濁粒子は、例えば、レゾール型フェノール樹脂と、レゾール型フェノール樹脂の架橋体とを含む。
【0036】
なお、懸濁粒子を形成した後、例えば、懸濁粒子を洗浄し、懸濁粒子表面の親水性高分子を除去してもよい。球状フェノール樹脂硬化物(A)の粒子同士の凝集、付着による取り扱い性をさらに向上させることができる。
【0037】
洗浄する方法としては限定されないが、例えば、懸濁粒子を大量の純水といった親水性溶媒中に分散させる方法を用いることができる。これにより、懸濁粒子表面の親水性溶媒を除去できる。洗浄する方法としては、例えば、懸濁粒子の質量に対して、1倍以上2倍以下の親水性溶媒によって、3回以上の洗浄を行うことが好ましく、5回以上の洗浄を行うことがより好ましい。これにより、不純物の含有量を所望の数値範囲まで低減することができ、高いクリーン度の要求される用途にも展開できる点で好ましい。
なお、洗浄回数は生産工程が煩雑にならない範囲で多くすることが好ましいが、洗浄回数の上限値としては、例えば、10回以下としてもよい。
【0038】
(塩基性触媒)
塩基性触媒としては、従来レゾール型フェノール樹脂を作製するために、フェノール類と、アルデヒド類との反応に用いられているものであれば限定されない。塩基性触媒としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウム、マグネシウム、バリウムなどアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物;炭酸ナトリウム、アンモニア水、N-(2-アミノエチル)プロパノールアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミン(すなわち、ヘキサミン)などのアミン類などを用いることができる。塩基性触媒としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
塩基性触媒としては、含窒素構造を導入できるアミン類が好ましく、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミンがより好ましい。これにより、反応性の高い含窒素構造により液状フェノール樹脂との接着力に優れ、より機械的強度に優れた多孔質成型体を得ることができる。
【0040】
塩基性触媒としては、硬化物中にエチレン架橋体が導入できるエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミンが特に好ましい。これにより応力を受けた時の変形歪量大きくすることができ、機械的強度に優れた多孔質成型体を得ることができる。
【0041】
(硬化工程)
硬化工程では、懸濁粒子(フェノール樹脂粒子)を、温度50℃を越え200℃未満で熱処理することで、懸濁粒子を硬化して球状フェノール樹脂硬化物(A)を得る。
【0042】
具体的には、熱処理によって、懸濁粒子中のレゾール型フェノール樹脂をさらに架橋し、架橋体とすることで硬化させる。なお、球状フェノール樹脂硬化物(A)を好適に低密度化させる観点から、例えば、一部のレゾール型フェノール樹脂は架橋しないで残存することが好ましい。すなわち、球状フェノール樹脂硬化物(A)は、例えば、レゾール型フェノール樹脂と、レゾール型フェノール樹脂の架橋体とを含むことが好ましい。
熱処理する方法としては限定されず、大気圧下、減圧下、気体中、液体中等、従来公知の方法で行うことができる。また、反応工程でそのまま加熱を継続し、硬化させても良い。
【0043】
硬化工程における熱処理の温度の上限値としては、200℃未満であり、例えば、170℃未満であることが好ましく、150℃以下であることが好ましく、135℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることが更に好ましい。これにより、球状フェノール樹脂硬化物(A)の酸化を抑制でき、フェノール樹脂との馴染みをよくすることができる。
【0044】
また、硬化工程における熱処理の温度の下限値としては、50℃を越えるものであり、例えば、80℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましい。これにより、フェノール樹脂粒子同士の融着を抑制し、取り扱い性を向上させることができる。
【0045】
硬化工程における熱処理の時間の上限値としては、例えば、24時間以下であり、12時間以下であることが好ましく、8時間以下であることが更に好ましく、6時間以下であることが一層好ましい。これにより、フェノール樹脂粒子の硬度を適切な範囲に調整することができる。
【0046】
硬化工程における熱処理時間の下限値としては、例えば、0分を超える時間であり、30分間以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましく、2時間以上であることがさらに好ましい。これにより、フェノール樹脂粒子中のレゾール型フェノール樹脂同士が架橋し、球状フェノール樹脂硬化物(A)が適切に硬化が進行する。
【0047】
また、必要に応じて乾燥工程を設けてもかまわない。懸濁粒子(フェノール樹脂粒子)を、温度60℃以上150℃以下で熱処理することで、懸濁粒子から親水性溶媒を取り除く。熱処理する方法としては限定されず、大気圧下で気体中、または、減圧下で行う方法であれば、従来公知の方法で行うことができる。
【0048】
上述したように硬化工程、乾燥工程は、連続して大気下で気体中、または、減圧下で行われる限り従来公知の方法を採用することができる。乾燥工程、硬化工程を連続して行う観点から、乾燥工程、硬化工程を行う方法としては、例えば、熱風乾燥機、減圧撹拌乾燥装置を用いることが好ましい。
【0049】
また、組成物としたときの均一性を向上させるため、必要に応じて乾燥後の球状フェノール樹脂硬化物(A)をさらに解砕してもかまわない。解砕する方法としては、例えばピンミル、ナイフミル、ハンマーミル等の衝撃式の粉砕機、ジェットミル、カウンタージェットミル等の気流式粉砕機などが挙げられる。
【0050】
(液状フェノール樹脂(B))
液状フェノール樹脂(B)は、常温(25℃)で液状のフェノール樹脂である。
液状とは常温(25℃)で流動性を有することを意味し、後述する球状フェノール樹脂硬化物(A)と混合できれば粘度は特に限定されないが、生産効率の観点から、例えば、10Pa・s以下であることが好ましい。
【0051】
本実施形態においては、常温(25℃)で液状の液状フェノール樹脂(B)を用いることで、固体のフェノール樹脂と比較して球状フェノール樹脂硬化物(A)との接着面積が大きくなることから得られる多孔質成形体の機械的強度が向上する。
液状フェノール樹脂(B)としては、本発明の効果を奏する範囲で公知の液状フェノール樹脂を用いることができる。
【0052】
液状フェノール樹脂(B)としては、樹脂骨格中にメチロール基(-CH2-OH)を含むものであり、例えば、塩基性触媒や、弱酸性触媒を用いて合成される液状レゾール樹脂が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本工程aにおいては、球状フェノール樹脂硬化物(A)100質量部に対して、液状フェノール樹脂(B)を2~50質量部、好ましくは5~30質量部、さらに好ましくは10~20質量部の量で用いることができる。なお、一般的に液状フェノール樹脂は水、有機溶剤等の溶媒を含むことが多いため、液状フェノール樹脂(B)の配合量は有効成分量換算である。液状フェノール樹脂の有効成分量はJIS K 6910に記載の不揮発分により算出することができる。
【0054】
液状フェノール樹脂(B)は流動性に優れており、当該量で用いることで球状フェノール樹脂硬化物(A)を十分に被覆することができ、さらに球状フェノール樹脂硬化物(A)との接着性にも優れることから、当該量で用いることで曲げ強度や曲げ弾性率が高く機械的強度に優れた多孔質成形体を得ることができる。
【0055】
[工程b]
本工程では、工程aで得られた被覆球状フェノール樹脂硬化物(AB)を含む成形材料を調製し、当該成形材料を成形して多孔質成形体を得る。
【0056】
成形体の成形方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、トランスファー成形、コンプレッション成形、プレス成形等を挙げることができる。
【0057】
被覆球状フェノール樹脂硬化物(AB)は液状フェノール樹脂(B)で被覆されていることから、当該被覆球状フェノール樹脂硬化物(AB)を含む成形材料の低圧成形が可能であり、常圧ないし0.2MPa未満、好ましくは常圧ないし0.15MPa以下の圧力で成形することができる。このように、成形材料の低圧成形が可能であることから、多孔質構造が安定して得られ、さらに多孔質成形体の生産性に優れる。
【0058】
当該工程bは、大気下で、成形温度100℃~250℃、成形時間10分~60分程度で行うことができる。さらに、多孔質成形体に後硬化工程を行うこともできる。後硬化工程は、加熱温度100℃~250℃、加熱時間2時間~9時間程度で行うことができる。
【0059】
本実施形態の成形材料は、さらに硬化剤を含むことができる。
硬化剤は、液状フェノール樹脂(B)の種類に応じて適宜選択することができ、へキサメチレンテトラミン、イソシアネート樹脂、エポキシ樹脂及びヘキサメトキシメチロールメラミン、レゾール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。これらの中では、ヘキサメチレンテトラミン、レゾール樹脂を用いることが好ましい。
【0060】
本実施形態の成形材料は、さらに充填剤を含むことができる。
前記充填材としては、例えば、繊維基材、有機充填材、無機充填材等を用いることができる。繊維基材は、繊維状の形態を有する充填材である。有機充填材および無機充填材は、それぞれ、粒状充填材または板状充填材のいずれでもよい。板状充填材はその形状が板状である充填材である。粒状充填材は、不定形状を含む繊維状・板状以外の形状の充填材である。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
前記粒状充填材としては、例えば、粒形の無機充填材を用いることができ、ガラスビーズ、ガラスパウダー、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、クレーおよびマイカなどを用いることができる。
【0062】
前記繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、金属繊維、ワラストナイト、アタパルジャイト、セピオライト、ロックウール、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウム繊維、炭酸カルシウムウィスカー、酸化チタンウィスカー、セラミック繊維などの繊維状無機充填材;アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維などの繊維状有機充填材;が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0063】
また、前記板状充填材、粒状充填材としては、例えば、タルク、カオリンクレー、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム水和物、マイカ、ガラスフレーク、ガラス粉、炭酸マグネシウム、シリカ、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、前記繊維状充填材の粉砕物などが挙げられる。
【0064】
本実施形態の成形材料100質量%は、前記充填材を好ましくは1~70質量%、より好ましくは5~50質量%、さらに好ましくは10~40質量%含むことができる。
【0065】
本実施形態の成形材料は、用途や必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、硬化促進剤、その他の樹脂成分、離型剤、顔料、染料、難燃剤、密着向上剤、カップリング剤、靭性付与材、発泡剤等を挙げることができる。
【0066】
上記硬化促進剤としては、特に限定されず、通常の硬化促進剤を用いることが出来、例えば、酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物、コハク酸、サリチル酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸を例示することができる。
【0067】
上記その他の樹脂成分としては、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂が挙げられる。また必要によりこれらの複数種を組み合わせて用いることもできる。
【0068】
上記離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレンなどが挙げられる。
上記顔料としては、例えば、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0069】
上述のようにして得られた本実施形態の多孔質成形体は、成形材料の硬化物を含む。
多孔質成形体は、本発明の効果の観点から、その成型比重が、好ましくは0.4g/cm3~1.2g/cm3、より好ましくは0.5g/cm3~1.0g/cm3、さらに好ましくは0.6g/cm3~0.9g/cm3とすることができる。
成型比重は直方体に切り出した成型体試験片より、成型比重(g/cm3)=試験片の重量(g)/試験片の体積(cm3)より測定することができる。
【0070】
本実施形態の多孔質成形体の弾性率は、1GPa~10GPa、好ましくは2GPa~8GPaとすることができる。このように多孔質成形体は機械的強度に優れており、種々の用途に好適に用いることができる。
【0071】
<多孔質炭素材>
本実施形態の多孔質炭素材は、上述の多孔質成形体を焼成して得られる。
焼成工程において焼成温度は400~2000℃、焼成時間は1~200時間とすることができる。
【0072】
本実施形態の多孔質成形体および多孔質炭素材は、例えば、自動車、航空機、鉄道車両、船舶、汎用機械、家庭用電化製品やこれらの周辺部品に用いられる成形品、またはこれらの筺体、構造・機構部品、電気・電子部品に用いられる成形品、砥石、摩擦材、等がに用いることができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0074】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
(製造例1)
まず、フェノール類であるフェノール1000質量部、アルデヒド類である37%ホルムアルデヒド水溶液1120質量部、親水性高分子である2%ヒドロキシエチルセルロース水溶液200質量部、親水性溶媒であるエチレングリコール41質量部及び純水235質量部を混合液の原料成分として準備した。次いで、上記原料成分を反応容器に投入し、均一に混合することで混合液を作製した。次いで、塩基性触媒である33%トリエチレンテトラミン水溶液270質量部を60分間で逐次添加し、フェノールと、ホルムアルデヒドとを反応させるために、温度95℃に昇温して混合液を6時間反応、硬化させた。なお、フェノールと、ホルムアルデヒドとの反応は、混合液を撹拌しながら行った。これにより、フェノール及びホルムアルデヒドの懸濁粒子を作製した。
次いで、得られた懸濁粒子を吸引漏斗にてろ過し、さらに純水で浸漬、洗浄、吸引ろ過を5回繰り返した後、箱型容器に入れ、温風循環式にて110℃で24時間乾燥、硬化させた。乾燥硬化した懸濁粒子の含水率は0.5%であった。
なお、含水率とは、乾燥した懸濁粒子を、温度135℃で1時間処理した際の重量変化率をX%としたとき、(100-X)%が含水率である。含水率の測定は、実施例1のフェノール樹脂粒子を作製する工程とは別に行った。
さらにハンマーミルで解砕を行い、球状フェノール樹脂硬化物Aを得た。平均粒子径は358μm、元素分析により求めた含窒素量は3%であった。
次いで、液状フェノール樹脂(常温25℃で液状、PR-55331、住友ベークライト社製)7部(樹脂有効成分量として5部)と、得られた球状フェノール樹脂硬化物 100部を混合撹拌機DM型(株式会社品川工業所)を用いて混練りし、球状フェノール樹脂硬化物が液状フェノール樹脂で被覆された、被覆球状フェノール樹脂硬化物A(成形材料A)を得た。
【0076】
(製造例2)
製造例1の2%ヒドロキシエチルセルロース水溶液の代わりに1%ポリビニルアルコール水溶液、33%トリエチレンテトラミン水溶液の代わりにトリエチルアミン20部を用いた他は、同様に操作を行い、球状フェノール樹脂硬化物Bを得た。平均粒子径は320μm、含窒素量は0%であった。次いで製造例1と同様の操作を行い、被覆球状フェノール樹脂硬化物B(成形材料B)を得た。
【0077】
(製造例3~5)
球状フェノール樹脂硬化物A100部に対する液状フェノール樹脂(常温25℃で液状、PR-55331、住友ベークライト社)の有効成分量を表1のように変更した以外は、製造例1と同様にして被覆球状フェノール樹脂硬化物C~E(成形材料C~E)を得た。
【0078】
(製造例6)
球状フェノール樹脂硬化物A100部に対し、固形フェノール樹脂(常温25℃で固体、PR-50099、住友ベークライト社)5部をメタノール20部に溶解させたワニスを混合撹拌機DM型を用いて混練りした。その後金属容器に厚み5mm以下となるように広げ通風しながら40℃で24時間乾燥、溶剤を揮発除去し球状フェノール樹脂硬化物表面の樹脂を固形化させた。乾燥後、解砕機(フェザーミルFM、ホソカワミクロン社)で独立粒子になるよう凝集塊をほぐし、フェノール樹脂硬化物が固形フェノール樹脂で被覆された、被覆球状フェノール樹脂硬化物F(成形材料F)を得た。
【0079】
[実施例1~5、比較例1]
製造例1~6で得られた被覆球状フェノール樹脂硬化物A~F(成形材料A~F)を、プレス成形機を用いて、成形温度180℃、成形荷重0.1MPa、成形時間30分間の条件でプレス成形を行った。得られた多孔質成形体A~F(順に実施例1~5、比較例1)の物性を表1に示す。
さらに、多孔質成形体A~Fを180℃で6時間加熱して後硬化して、多孔質成形体A'~F'を得た(順に実施例1~5、比較例1)。多孔質成形体A'~F'の物性を表1に示す。球状フェノール樹脂硬化物A,Bは、プレス成形時の熱、後硬化における熱に対して不融であった。
【0080】
(成型比重)
実施例1~5、比較例1で得られた多孔質成形体の成型比重を以下の式により算出した。
式: 成型比重(g/cm3)=試験片の重量(g)/試験片の体積(cm3)
【0081】
(曲げ強度(曲げ応力)、曲げ弾性率)
実施例1~5、比較例1で得られた多孔質成形体の室温(25℃)おける曲げ強度、弾性率をJIS K 6911に従い評価した。幅10mm、厚み4mm、長さ100mmにカットした多孔質成形体を万能試験機(オートグラフAG-IS、島津製作所社)を用い、5kNのロードセルを使用して、スパン64mm、ヘッドスピード2mm/分で試験を行い、曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。
【0082】
【0083】
本発明に係る実施例の多孔質成形体は、比較例の多孔質成形体に比べ、曲げ強度および曲げ弾性率が高く機械的強度に優れていた。