(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147918
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】デマンドレスポンス管理システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/46 20180101AFI20241009BHJP
F24D 19/10 20060101ALI20241009BHJP
F24F 11/54 20180101ALI20241009BHJP
F24F 11/52 20180101ALI20241009BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241009BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
F24F11/46
F24D19/10 D
F24F11/54
F24F11/52
H02J13/00 311T
H02J13/00 301B
H02J3/14 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060661
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 福郎
【テーマコード(参考)】
3L073
3L260
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
3L073DD08
3L073DE07
3L073DF07
3L260BA03
3L260BA42
3L260CB70
3L260CB78
3L260DA12
3L260EA04
3L260EA08
3L260FB01
3L260FB51
3L260FC36
3L260GA17
3L260JA16
3L260JA19
3L260JA23
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB21
5G064DA02
5G064DA07
5G066KA01
5G066KA04
5G066KA12
5G066KB06
(57)【要約】
【課題】電力需給ひっ迫に対処するべくデマンドレスポンス情報が発令された場合、ユーザー宅の暖房状況を必要以上に悪化させない管理システムを提供する。
【解決手段】デマンドレスポンス管理システムは、エアコン暖房の駆動を制御するエアコン暖房制御部70にエアコン制御指令を与えるエアコン指令部45bと、床暖房の駆動を制御する床暖房制御部80に床暖房制御指令を与える床暖房指令部45cと、エアコン暖房を代替する床暖房の出力を算出する代替暖房出力算出部43と、電力需給ひっ迫期間を示すデマンドレスポンス情報を取得するデマンドレスポンス情報取得部41と、デマンドレスポンス情報をユーザーに報知するための報知情報を生成する報知情報生成部42と、エアコン暖房を床暖房によって代替するエアコン暖房代替床暖房制御を、エアコン暖房代替床暖房指令に基づいて実行する代替暖房制御部45aを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコン暖房の駆動を制御するエアコン暖房制御部にエアコン制御指令を与えるエアコン指令部と、
床暖房の駆動を制御する床暖房制御部に床暖房制御指令を与える床暖房指令部と、
前記エアコン暖房を代替する前記床暖房の出力を算出する代替暖房出力算出部と、
電力需給ひっ迫期間を示すデマンドレスポンス情報を取得するデマンドレスポンス情報取得部と、
前記デマンドレスポンス情報をユーザーに報知するための報知情報を生成する報知情報生成部と、
前記エアコン暖房を前記床暖房によって代替するエアコン暖房代替床暖房制御を、エアコン暖房代替床暖房指令に基づいて、実行する代替暖房制御部と、
を備えるデマンドレスポンス管理システム。
【請求項2】
前記代替暖房出力算出部は、前記エアコン暖房による経時的な暖房電力消費量を記録する暖房電力消費量記録部から読み出された前記暖房電力消費量に基づいて、前記エアコン暖房の低減または停止に伴う室温低下を補填するべく前記床暖房の補填出力を算出する請求項1に記載のデマンドレスポンス管理システム。
【請求項3】
前記デマンドレスポンス情報には、電力需給ひっ迫の期間及び時間帯が含まれており、前記報知情報には、前記期間及び前記時間帯におけるエアコン暖房代替床暖房を前記ユーザーが許可するかどうかの問い合わせが含まれている請求項1に記載のデマンドレスポンス管理システム。
【請求項4】
前記エアコン暖房代替床暖房指令は、前記ユーザーによる前記エアコン暖房代替床暖房の許可に基づいて発令される請求項3に記載のデマンドレスポンス管理システム。
【請求項5】
前記エアコン暖房代替床暖房制御の実行下において、電力ひっ迫期間の終了または終了直前の時点で、前記報知情報生成部は、電力ひっ迫期間終了後の前記エアコン暖房代替床暖房制御の続行の可否を前記ユーザーに問う問い合わせ情報を生成する請求項1に記載のデマンドレスポンス管理システム。
【請求項6】
前記ユーザーが前記エアコン暖房代替床暖房制御の続行を否定した場合、前記エアコン指令部は、前記エアコン暖房を前記エアコン暖房代替床暖房制御の開始前の状態に戻す初期化指令を前記エアコン暖房制御部に与え、前記床暖房指令部は、前記床暖房を前記エアコン暖房代替床暖房制御の開始前の状態に戻す初期化指令を前記床暖房制御部に与える請求項5に記載のデマンドレスポンス管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の需給調整を要求するデマンドレスポンス情報に基づいて、ユーザー宅の暖房制御を管理するデマンドレスポンス管理システムに関する。
【0002】
特許文献1に開示された電力需給制御サービスシステムでは、デマンドレスポンス情報に基づいて稼動状態要求情報を発電設備に送信し、当該デマンドレスポンス情報と発電設備から受信した稼動状態情報とに基づいて、センターサーバは、スケジュール変更依頼情報を管理者端末装置に送信する。発電設備を管理しているユーザーは、管理者端末装置を用いて、発電設備の運転パラメータを含む可否情報をセンターサーバに送信する。センターサーバが、可否情報に含まれている運転パラメータを含む運転制御情報を発電設備に送信すると、発電設備は、運転制御情報に含まれている運転パラメータに基づいて発電を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1による電力需給制御サービスシステムでは、デマンドレスポンス情報が発令されると、ユーザーへのデマンドレスポンス情報の周知が行われ、ユーザー側で発電調整が行われるが、ユーザー宅における暖房装置等の終端の電力消費装置の使用状況は管理されていない。このため、暖房装置等の稼働率が下げられたとしても、電力需給ひっ迫時が終了した後も、電力需給ひっ迫時と同様な稼働率で使用される問題が生じる。また、暖房装置等の稼働率の低減が自動的に行われたとしても、ユーザーの意図に反する電力調整になる可能性があり、ユーザー宅の快適性や経済性を損なう問題も生じる。特に、電力を動力源として暖房装置の稼働率がゼロまた低減された場合の、代替暖房が考慮されていないので、ユーザーに不自由をかける可能性がある。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、電力需給ひっ迫に対処するべくデマンドレスポンス情報が発令された場合、ユーザー宅の暖房状況を必要以上に悪化させない管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるデマンドレスポンス管理システムは、エアコン暖房の駆動を制御するエアコン暖房制御部にエアコン制御指令を与えるエアコン指令部と、床暖房の駆動を制御する床暖房制御部に床暖房制御指令を与える床暖房指令部と、前記エアコン暖房を代替する前記床暖房の出力を算出する代替暖房出力算出部と、電力需給ひっ迫期間を示すデマンドレスポンス情報を取得するデマンドレスポンス情報取得部と、前記デマンドレスポンス情報をユーザーに報知するための報知情報を生成する報知情報生成部と、前記エアコン暖房を前記床暖房によって代替するエアコン暖房代替床暖房制御を、エアコン暖房代替床暖房指令に基づいて、実行する代替暖房制御部とを備える。
【0007】
この構成によれば、取得したデマンドレスポンス情報をユーザーに報知するための報知情報が生成されるとともに、エアコン暖房が床暖房によって代替されるエアコン暖房代替床暖房制御がエアコン暖房代替床暖房指令に基づいて実行される。つまり、デマンドレスポンス情報が発令された場合、ユーザーは報知情報を通じて把握することができ、エアコン暖房が床暖房によって代替されることで、電力需給ひっ迫に対処するとともに、このことによりユーザー宅の暖房状況が悪化することも抑制される。ここでの、エアコン暖房代替床暖房制御では、エアコン暖房の中止、及びエアコン暖房の出力制限(稼働率調整、最大室温調整など)が含まれる。
【0008】
本発明の好適な実施形態では、前記代替暖房出力算出部は、前記エアコン暖房による経時的な暖房電力消費量を記録する暖房電力消費量記録部から読み出された前記暖房電力消費量に基づいて、前記エアコン暖房の低減または停止に伴う室温低下を補填するべく前記床暖房の補填出力を算出する。この構成では、過去のエアコン暖房で消費された電力に基づき、エアコン暖房によるユーザー宅の暖房状態が把握され、当該暖房状態が、エアコン暖房を代替(補填を含む)する床暖房によっても維持されるように、床暖房の補填出力が算出される。これにより、電力需給ひっ迫に対処しながらも、ユーザー宅の暖房状況は快適なものとなる。
【0009】
デマンドレスポンス情報が報知されたとしても、強制的にエアコン暖房代替床暖房が行われてしまうと、ユーザーの意向に反し、ユーザーの快適性や経済性が損なわれる可能性がある。このことから、本発明の好適な実施形態では、前記デマンドレスポンス情報には、電力需給ひっ迫の期間及び時間帯が含まれており、前記報知情報には、前記期間及び前記時間帯におけるエアコン暖房代替床暖房を前記ユーザーが許可するかどうかの問い合わせが含まれている。ユーザーは、報知情報からエアコン暖房代替床暖房が要望されている期間及び時間帯を知ることができるので、この要望を賛同して、ユーザーがエアコン暖房代替床暖房を許可するかどうかをチェックすることができる。
【0010】
さらに、本発明の好適な実施形態では、前記エアコン暖房代替床暖房指令は、前記ユーザーによる前記エアコン暖房代替床暖房の許可に基づいて発令される。つまり、ユーザーがエアコン暖房代替床暖房を許可すれば、エアコン暖房代替床暖房指令が出され、ユーザーがエアコン暖房代替床暖房を認めなければ、エアコン暖房代替床暖房指令が出されず、エアコン暖房代替床暖房は行われない。これにより、ユーザー宅の暖房状況は、ユーザーの意向に沿ったものとなる。
【0011】
電力需給のひっ迫が解消され、エアコン暖房代替床暖房が不要となっても、ユーザーがそのことに気づかない。また、デマンドレスポンス情報の解消が発令された場合に、自動的にエアコン暖房代替床暖房が中止される制御が組み込まれていなければ、デマンドレスポンス情報の解消後も、エアコン暖房代替床暖房が続行されてしまう。このような問題を解消するため、本発明の好適な実施形態では、前記エアコン暖房代替床暖房制御の実行下において、電力ひっ迫期間の終了または終了直前の時点で、前記報知情報生成部は、電力ひっ迫期間終了後の前記エアコン暖房代替床暖房制御の続行の可否を前記ユーザーに問う問い合わせ情報を生成する。ユーザーは、この問い合わせ情報に基づいて、電力需給のひっ迫が解消された後も、エアコン暖房代替床暖房を続行するかどうかを判断することができる。
【0012】
電力需給のひっ迫が解消された後、ユーザーがエアコン暖房代替床暖房を望まない場合、ユーザー宅の暖房状況がデマンドレスポンス情報が発令される前の状態に自動的に復帰される(初期化される)と、ユーザーの復帰操作が不要となり、好都合である。このことから、本発明の好適な実施形態では、前記ユーザーが前記エアコン暖房代替床暖房制御の続行を否定した場合、前記エアコン指令部は、前記エアコン暖房を前記エアコン暖房代替床暖房制御の開始前の状態に戻す初期化指令を前記エアコン暖房制御部に与え、前記床暖房指令部は、前記床暖房を前記エアコン暖房代替床暖房制御の開始前の状態に戻す初期化指令を前記床暖房制御部に与える。
【0013】
本発明のその他の特徴、作用及び効果は、以下の図面を用いた本発明の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】デマンドレスポンス管理システムの一例を示す機能ブロック図である。
【
図2】エアコンの消費電力の経時的変化を示すグラフである。
【
図3】通湯温度毎の、床暖房動作率と単位面積当たり放熱量との関係式の一例を示すグラフである。
【
図4】節電協力を受け入れるかどうかの問い合わせを表示したディスプレイ画面の一例である。
【
図5】エアコン暖房代替床暖房制御の続行の可否をユーザーに問う問い合わせ情報のディスプレイ画面図の一例である。
【
図6】デマンドレスポンス管理システムにおける情報の流れの一例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によるデマンドレスポンス管理システムの実施形態の1つを、
図1を用いて説明する。このデマンドレスポンス管理システムは、冬季等の電力需要のひっ迫時に、床暖房設備を備えた家庭に対して節電協力を依頼し、エアコン暖房(主として電気を消費して暖房を行う暖房)に代えて床暖房(主としてガスを消費して行う暖房)を積極的に利用してもらうことを一例としている。
【0016】
電力会社1(電力取引所等を含む)から発信される、電力使用量の需給調整要求である電力需給ひっ迫情報に基づいて、デマンドレスポンス管理サーバ2が、電力需給ひっ迫期間や時間帯を示すデマンドレスポンス情報を、このデマンドレスポンスの対象となっているユーザー宅3に送信する。電力会社1、デマンドレスポンス管理サーバ2、ユーザー宅3は、互いにインターネットや公衆回線網などの情報通信網によってデータ交換可能に接続されている。
【0017】
電力会社1には、内部で生成された電力ひっ迫情報をデマンドレスポンス管理サーバ2に送信する電力ひっ迫情報送信部10が備えられ、デマンドレスポンス管理サーバ2には、受信した電力ひっ迫情報に基づいて作成されたデマンドレスポンス情報を、ユーザー宅3に送信するデマンドレスポンス情報送信部20が備えられている。
【0018】
ユーザー宅3には、エアコン7(電気暖房機などを含む)、ガス式の床暖房機器8、エアコン7及び床暖房機器8を管理するコンピュータユニット4が、備えられている。エアコン7には、コンピュータユニット4からの制御指令に基づいて、エアコン暖房の駆動を制御するエアコン暖房制御部70が備えられている。床暖房機器8には、コンピュータユニット4からの制御指令に基づいて、床暖房の駆動を制御する床暖房制御部80が備えられている。
【0019】
コンピュータユニット4は、データの入出力を行う第1データ入出力部4aと第2データ入出力部4bとを備えている。第1データ入出力部4aは、情報通信網にアクセスして、データの入出力を行う。第2データ入出力部4bは、コンピュータユニット4に接続された操作ユニット6、エアコン7、床暖房機器8とデータ交換するために、これらの機器とデータ交換可能に、有線または無線で接続されている。
【0020】
操作ユニット6は、液晶などのディスプレイ61と、ボタンやスイッチなどの含む操作パネル62を備えている。ディスプレイ61と操作パネル62とは、タッチパネルで代用することも可能である。操作ユニット6は、エアコン7と床暖房機器8とのいずれかあるいは両方の操作のためにも用いられてよい。
【0021】
コンピュータユニット4は、ソフトウエア(コンピュータプログラム)またはハードウエアあるいはその両方によって構築される機能部を備えている。本発明に特に関係する機能部は、デマンドレスポンス情報取得部41、報知情報生成部42、代替暖房出力算出部43、暖房電力消費量記録部44、代替暖房管理部45である。
【0022】
デマンドレスポンス情報取得部41は、電力需給ひっ迫期間や時間帯を示すデマンドレスポンス情報を第1データ入出力部4aを介して取得する。報知情報生成部42は、デマンドレスポンス情報によるユーザーへの節電協力をユーザーに報知するための報知情報を生成する。報知情報には、節電協力の内容や期間や時間帯が含まれている。さらに、この報知情報には、ユーザーに節電協力を受け入れるかどうかを問い合わせる問い合わせ情報も含まれている。報知情報は、第2データ出力部4bを通じて、操作ユニット6に与えられる。操作ユニット6は、報知情報の内容を、ディスプレイ61に表示する。
図4に、節電協力を受け入れるかどうかの問い合わせを表示したディスプレイ画面の一例が示されている。このような節電協力を受け入れるかどうかの問い合わせに対するユーザーの応答が、操作パネル62を通じて入力され、その入力データがユーザー指令として、コンピュータユニット4の機能部に与えられる。なお、この実施形態では、ユーザーに対する節電協力は、エアコン暖房に代えて床暖房を使用することである。
【0023】
エアコン7のエアコン暖房時の経時的な暖房電力は、エアコン暖房制御部70からコンピュータユニット4に送られ、暖房電力消費量記録部44に記録される。暖房電力消費量記録部44は、エアコン暖房の制御履歴を記録しているので、この制御履歴から、過去の所定期間及び所定時間帯におけるエアコン暖房によって消費された電力量が把握できる。
【0024】
代替暖房出力算出部43は、暖房電力消費量記録部44から読み出した暖房電力消費量に基づいて、エアコン暖房のエネルギー量を算出し、当該エネルギー量から、エアコン暖房が停止された際に床暖房が補填しなければならない床暖房の補填出力(エアコン暖房の停止に伴う室温低下を補填する床暖房の出力値)を算出する。
【0025】
例えば、エアコン暖房の代替となる床暖房の出力を決定する際、エアコン7の消費電力から所定係数を乗じて、エアコン暖房出力を算出する。エアコン7の消費電力は、
図2に示すように、経時的に変化するので、積算ベースで、エアコン暖房出力を算出する。床暖房では、定常時に40℃から70℃の湯を、一定の周期時間に対し、一定の通湯時間を繰り返して流すことで暖房が行われる。特定通湯温度での、床暖房動作率と単位面積当たり放熱量との関係式の一例が、
図3に示されている。
図3において、40℃の通湯でのグラフが実線で示され、60℃の通湯でのグラフが点線で示され、75℃の通湯でのグラフが一点鎖線で示されている。このような関係式を用いて、エアコン暖房が停止された際に床暖房が補填しなければならない床暖房の補填出力(床暖房制御量)が算出される。その算出の一例を以下に示す。まず、エアコン7の消費電力から所定係数(COP3.6などで規定されている)を乗じて暖房出力を算出するとして、エアコン消費電力が約200Wで、エアコン暖房出力は720Wとなる。次にエアコン暖房出力を代替する、床暖房の出力を算出する。床暖房の場合、定常時に40℃/60℃を通湯し、その際、一定の周期時間に対し、一定の通湯時間を繰り返し実施する。熱動弁開率=通湯時間/周期時間と定義すると、通湯温度によって、床暖房の放熱量は、
図3に示すように異なる。床暖房の放熱面積を13m
2と設定した場合、床暖房の放熱量としては、約55W/m
2となる。
図3のグラフから、60℃の通湯で、熱動弁開率は20%と算出されるため、この床暖房の出力をエアコン稼働停止時の床暖房の出力とすることができる。
【0026】
この実施形態では、節電協力を受け入れるかどうかの問い合わせに対するユーザーの応答が肯定であれば、それをエアコン暖房代替床暖房指令(ユーザ指令の一種)として、代替暖房管理部45によるエアコン暖房代替床暖房が実行される。
【0027】
代替暖房管理部45には、エアコン暖房に代えて床暖房を行うエアコン代替暖房を制御する代替暖房制御部45aと、エアコン暖房制御部70にエアコン制御指令を与えるエアコン指令部45bと、床暖房制御部80に床暖房制御指令を与える床暖房指令部45cとが含まれている。
【0028】
代替暖房制御部45aは、代替暖房出力算出部43によって算出された代替暖房出力(床暖房の補填出力)に基づいて、エアコン暖房代替床暖房を実行するために、エアコン暖房制御部70にエアコン制御指令(例えば、エアコン暖房停止指令)を与えるとともに、床暖房制御部80に床暖房制御指令(例えば、補填出力を実現するための床暖房指令)を与える。
【0029】
エアコン暖房代替床暖房制御が実行されている間に電力需給ひっ迫が解消されたことを内容とするデマンドレスポンス情報が取得された場合、報知情報生成部42は、電力ひっ迫期間終了後のエアコン暖房代替床暖房制御の続行の可否をユーザーに問う問い合わせ情報(報知情報の一種)を生成して、操作ユニット6に与える。
図5に、エアコン暖房代替床暖房制御の続行の可否をユーザーに問う問い合わせ情報のディスプレイ画面図の一例が示されている。この報知情報を見て、ユーザーがエアコン暖房代替床暖房制御の続行を要求するユーザー指令を代替暖房管理部45に与えると、エアコン暖房代替床暖房制御が続行される。ユーザーがエアコン暖房代替床暖房制御の続行を否定するユーザー指令を代替暖房管理部45に与えると、代替暖房制御部45aは、エアコン指令部45b及び床暖房指令部45cにエアコン暖房代替床暖房停止指令を与える。
【0030】
エアコン暖房代替床暖房停止指令を受け取ったエアコン指令部45bは、エアコン暖房をエアコン暖房代替床暖房制御の開始前の状態に戻す初期化指令をエアコン暖房制御部70に与える。エアコン暖房代替床暖房停止指令を受け取った床暖房指令部45cは、床暖房を前記エアコン暖房代替床暖房制御の開始前の状態に戻す初期化指令を床暖房制御部80に与える。
【0031】
次に
図6を用いて、上述したデマンドレスポンス管理システムにおけるエアコン暖房代替床暖房の処理手順の一例を説明する。
【0032】
電力会社1が電力需給ひっ迫情報をデマンドレスポンス管理サーバ2に送信する(#01)。デマンドレスポンス管理サーバ2は、受け取った電力需給ひっ迫情報に基づいて、デマンドレスポンス情報を作成し、登録されているユーザー宅3のコンピュータユニット4に送信する(#02)。コンピュータユニット4では、受け取ったデマンドレスポンス情報が、電力需給ひっ迫による代替暖房の要請を通知するものであるか、あるいは電力需給ひっ迫が解消されて代替暖房の解除が可能であることを通知するものであるかがチェックされる(#03)。
【0033】
デマンドレスポンス情報が代替暖房を要請する通知であれば(#03要請分岐)、
図4に示すような報知画面を通じて、代替暖房が要請されていることがユーザーに報知される(#11)。ユーザーが当該要請を受け入れる場合(#12Yes分岐)、代替暖房実行指令が代替暖房出力算出部43に与えられる(#13)。ユーザーが今回の要請を受け入れない場合(#12No分岐)、次のデマンドレスポンス情報の受信まで待機する。
【0034】
代替暖房実行指令を受け取った代替暖房出力算出部43は、直近の所定期間における暖房電力消費量を算出し(#14)、当該暖房電力消費量を参照して、代替暖房のために必要な床暖房の出力(ここでは、代替暖房出力データまたは補填出力データである)を算出する(#15)。算出された代替暖房出力データは、代替暖房管理部45に与えられる(#16)。
【0035】
代替暖房出力を受け取った代替暖房管理部45は、エアコン暖房制御指令(ここでは、エアコン暖房の停止)を生成し(#21)、エアコン7に送信する(#22)。これにより、エアコン7は停止する。エアコン7の停止前のエアコン暖房制御状態(経時的な目標温度など)は記憶される。さらに、代替暖房管理部45は、床暖房制御指令(ここでは、床暖房の開始また強化)を生成し(#23)、床暖房機器8に送信する(#24)。これにより、床暖房機器8は床暖房を開始するか、または床暖房を強化(温度上昇)する。
【0036】
デマンドレスポンス情報が代替暖房の解除が可能であることを通知するものであれば(#03解除分岐)、現在、代替暖房が実行されているかどうかチェックされる(#31)。代替暖房が実行されていなければ(#31No分岐)、次のデマンドレスポンス情報の受信まで待機する。代替暖房が実行されていれば(#31Yes分岐)、
図5に示すような報知画面を通じて、代替暖房終了が報知される(#32)。当該報知画面では、代替暖房の終了が可能であるが、代替暖房を続行するかどうかが、ユーザーに問われる(#33)。ユーザーが代替暖房の続行を望む場合(#33Yes分岐)、代替暖房が続行され、次のデマンドレスポンス情報の受信まで待機する。また、操作ユニット6への操作を通じて、ユーザーは代替暖房を終了させることも可能であり、その場合は、以下に説明するステップ#33No分岐後の処理が行われる。
【0037】
ユーザーが代替暖房の続行を望まない場合(#33No分岐)、代替暖房終了指令が代替暖房管理部45に与えられる(#34)。代替暖房終了指令を受け取った代替暖房管理部45は、記憶されている代替暖房の開始前のエアコン暖房制御状態を読み出し、エアコン暖房初期化指令(例えば、代替暖房前の制御状態に復帰)を生成し(#35)、エアコン7に送信する(#36)。これにより、エアコン7は、代替暖房前の制御状態に復帰する。さらに、代替暖房管理部45は、記憶されている代替暖房の開始前の床暖房制御状態を読み出し、床暖房初期化指令を生成し(#37)、床暖房機器8に送信する(#38)。これにより、床暖房機器8は代替暖房前の制御状態、例えば、床暖房は停止されるか、または床暖房は低減される。
【0038】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、エアコン暖房代替床暖房では、エアコン暖房は停止され、床暖房はエアコン暖房停止に伴う室温低下の補填を行うべく動作強化されることが、想定されていたが、エアコン暖房と床暖房との出力比率が調節されるようなエアコン暖房代替床暖房(部分的エアコン暖房代替床暖房)が行われてもよい。
【0039】
(2)
図1に示された機能ブロック図は一例であり、各機能部は、他の機能部と統合されたり、複数の機能部に分割されてもよい。また、でデマンドレスポンス管理サーバ2は、電力会社1に設置されてもよい。さらには、コンピュータユニット4や操作ユニット6は、床暖房機器8またはエアコン7の操作パネルに組み込まれてもよい。
【0040】
(3)上述した実施形態では、エアコン暖房代替床暖房指令は、ユーザーによるエアコン暖房代替床暖房の許可に基づいて発令されたが、ユーザーの了承なしに、代替暖房管理部45が自動的にエアコン暖房代替床暖房指令を発令してもよい。但し、そのような自動でのエアコン暖房代替床暖房指令発令の許否は、ユーザー設定の項目として、予めユーザーによって設定される構成が好ましい。
【0041】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、エアコンと床暖房機器とを備えた住宅や施設に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 :電力会社
2 :デマンドレスポンス管理サーバ
3 :ユーザー宅
4 :コンピュータユニット
4a :第1データ入出力部
4b :第2データ出力部
6 :操作ユニット
7 :エアコン
8 :床暖房機器
10 :迫情報送信部
20 :デマンドレスポンス情報送信部
41 :デマンドレスポンス情報取得部
42 :報知情報生成部
43 :代替暖房出力算出部
44 :暖房電力消費量記録部
45 :代替暖房管理部
45a :代替暖房制御部
45b :エアコン指令部
45c :床暖房指令部
61 :ディスプレイ
62 :操作パネル
70 :エアコン暖房制御部
80 :床暖房制御部