(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147920
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】織機の糸検出装置
(51)【国際特許分類】
D03D 47/30 20060101AFI20241009BHJP
D03D 51/34 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
D03D47/30
D03D51/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060663
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭宏
【テーマコード(参考)】
4L050
【Fターム(参考)】
4L050AA15
4L050AB07
4L050AB09
4L050CA16
4L050CB34
4L050CC17
4L050CC18
4L050CC21
4L050EA03
4L050EB08
4L050EC12
4L050ED05
4L050ED13
4L050EE10
(57)【要約】
【課題】経糸の開口状態及び緯糸の飛走状態の両方を撮影できる織機の糸検出装置を提供する。
【解決手段】織機の糸検出装置は、経糸Tの開口に対して機台11の左右方向に緯糸Yを緯入れするメインノズル14、及び機台11の左右方向に配列されるとともに緯入れされた緯糸Yに対してエアを噴出する複数のサブノズル15を有する緯入れ装置13と、機台11の前後方向に揺動することによって緯入れされた緯糸Yを筬打ちする筬16とを備える織機10に用いられる。織機の糸検出装置は、機台11の左右方向に対する傾斜角度θcが0°<θc<90°となるような撮影方向Cで開口の入口Tb又は出口Tcを撮影するカメラ32と、カメラ32が撮影した画像から経糸T及び緯糸Yを検出する糸検出部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸の開口に対して機台の左右方向に緯糸を緯入れするメインノズル、及び前記機台の左右方向に配列されるとともに緯入れされた前記緯糸に対してエアを噴出する複数のサブノズルを有する緯入れ装置と、前記機台の前後方向に揺動することによって緯入れされた前記緯糸を筬打ちする筬と、を備える織機に用いられ、
前記機台の左右方向に対する傾斜角度θcが0°<θc<90°となるような撮影方向で前記開口の入口又は出口を撮影するカメラと、
前記カメラが撮影した画像から前記経糸及び前記緯糸を検出する糸検出部と、
を備えることを特徴とする織機の糸検出装置。
【請求項2】
前記カメラは、前記緯糸が緯入れされる緯入れ方向において前記筬よりも上流側に配置され、
前記カメラが配置される位置を原点とし、
前記原点を通るとともに前記機台の左右方向に沿う軸をx軸とし、
前記原点を通るとともに前記機台の前後方向に沿う軸をy軸とし、
緯入れされた前記緯糸が前記緯入れ方向の上流から2本目の前記サブノズルまで到達したときの前記メインノズルの先端及び前記原点を通る第1直線と前記x軸とがなす角度をαとし、
緯入れされた前記緯糸が前記2本目のサブノズルまで到達したときの前記2本目のサブノズルの先端及び前記原点を通る第2直線と前記x軸とがなす角度をβとし、
前記織機によって製織される織物の織口と前記織物の前記緯入れ方向の上流側に位置する上流側縁部とが交差する前記織物の角部及び前記原点を通る第3直線と前記x軸とがなす角度をγとし、
前記カメラの画角の半分の角度をΦとしたとき、
前記カメラは、α-Φ≦θc≦β+Φ及びγ≦βを満たすように配置される請求項1に記載の織機の糸検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機の糸検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の織機の緯糸検知装置は、機台の前方から後方に向かって撮影を行うイメージセンサを備えている。特許文献2に記載の織機用の監視装置は、機台の上方から下方に向かって撮影を行うカメラ装置を備えている。特許文献3に記載の織機の開口不良検知装置は、機台の左右方向の一方側から他方側に向かって撮影を行うカメラを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3094457号公報
【特許文献2】特許第6449879号公報
【特許文献3】特開2020-196972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように機台の前方から撮影を行う場合や特許文献2のように機台の上方から撮影を行う場合、撮影した画像から緯糸の飛走状態を把握することができる。しかし、経糸列を前方又は上方から撮影したのでは、撮影した画像から経糸の開口状態を把握することができない。一方、特許文献3のように機台の左右方向に撮影を行う場合、撮影した画像から経糸の開口状態を把握することができる。しかし、緯入れ方向が画像の奥行方向となってしまうため、緯糸の飛走状態を把握することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するための織機の糸検出装置は、経糸の開口に対して機台の左右方向に緯糸を緯入れするメインノズル、及び前記機台の左右方向に配列されるとともに緯入れされた前記緯糸に対してエアを噴出する複数のサブノズルを有する緯入れ装置と、前記機台の前後方向に揺動することによって緯入れされた前記緯糸を筬打ちする筬と、を備える織機に用いられ、前記機台の左右方向に対する傾斜角度θcが0°<θc<90°となるような撮影方向で前記開口の入口又は出口を撮影するカメラと、前記カメラが撮影した画像から前記経糸及び前記緯糸を検出する糸検出部と、を備えることを要旨とする。
【0006】
上記構成によれば、カメラは、機台の左右方向に対する傾斜角度θcが0°<θc<90°となるような撮影方向で開口の入口又は出口を撮影する。したがって、カメラは、経糸の開口状態及び緯糸の飛走状態の両方を撮影することができる。糸検出部は、カメラが撮影した画像から経糸及び緯糸を検出することによって、経糸の開口状態及び緯糸の飛走状態を把握することができる。
【0007】
上記織機の糸検出装置において、前記カメラは、前記緯糸が緯入れされる緯入れ方向において前記筬よりも上流側に配置され、前記カメラが配置される位置を原点とし、前記原点を通るとともに前記機台の左右方向に沿う軸をx軸とし、前記原点を通るとともに前記機台の前後方向に沿う軸をy軸とし、緯入れされた前記緯糸が前記緯入れ方向の上流から2本目の前記サブノズルまで到達したときの前記メインノズルの先端及び前記原点を通る第1直線と前記x軸とがなす角度をαとし、緯入れされた前記緯糸が前記2本目のサブノズルまで到達したときの前記2本目のサブノズルの先端及び前記原点を通る第2直線と前記x軸とがなす角度をβとし、前記織機によって製織される織物の織口と前記織物の前記緯入れ方向の上流側に位置する上流側縁部とが交差する前記織物の角部及び前記原点を通る第3直線と前記x軸とがなす角度をγとし、前記カメラの画角の半分の角度をΦとしたとき、前記カメラは、α-Φ≦θc≦β+Φ及びγ≦βを満たすように配置されてもよい。
【0008】
上記構成によれば、カメラは、緯入れ方向において筬よりも上流側に配置される。また、カメラは、α-Φ≦θc≦β+Φ及びγ≦βを満たすように配置される。これにより、緯糸が緯入れ方向の上流から2本目のサブノズルまで到達したとき、メインノズルの先端及び2本目のサブノズルの先端の両方がカメラの撮影範囲内に位置する。したがって、カメラは、緯糸が2本目のサブノズルまで到達したときの緯糸の飛走状態をメインノズルの先端から2本目のサブノズルの先端までの範囲で撮影することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、経糸の開口状態及び緯糸の飛走状態の両方を撮影できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】
図3は、織機及び糸検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4、外部入力信号とトリガ信号との関係を説明するための図である。
【
図5】
図5は、緯糸の飛走状態の撮影時のメインノズル及びサブノズルを示す模式図である。
【
図6】
図6は、筬打ち時のメインノズル及びサブノズルを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、織機の糸検出装置を具体化した一実施形態を
図1~
図6にしたがって説明する。織機の糸検出装置は、織機に用いられる。以下の説明では、織機の糸検出装置を単に「糸検出装置」という。本実施形態の織機は、エアジェット織機である。
【0012】
<織機>
図1に示すように、織機10は、機台11を備えている。機台11の左右方向には、複数本の経糸Tが配列されている。各経糸Tは、機台11の前後方向に延びている。経糸Tは、機台11の後部に設けられた図示しない供給ロールから引き出される。経糸Tは、製織されることによって織物Wになった後、機台11の前部に設けられた図示しない巻取ロールによって巻き取られる。経糸Tは、機台11の前後方向において後方から前方に向かって移動する。
【0013】
機台11は、経糸Tを開口させる経糸開口装置12を備えている。経糸開口装置12は、例えば、2つの綜絖枠12a,12bを有している。2つの綜絖枠12a,12bは、機台11の前後方向に並んでいる。各綜絖枠12a,12bには、複数の綜絖が設けられている。複数の綜絖は、機台11の左右方向に配列されている。機台11の左右方向に配列された複数本の経糸Tのうち、一部の経糸Tは、一方の綜絖枠12aの綜絖に挿通されているとともに、他の経糸Tは、他方の綜絖枠12bの綜絖に挿通されている。各綜絖枠12a,12bは、機台11の上下方向に往復移動する。一方の綜絖枠12aが上方に移動するとき、他方の綜絖枠12bは下方に移動する。一方の綜絖枠12aが下方に移動するとき、他方の綜絖枠12bは上方に移動する。これにより、一方の綜絖枠12aの綜絖に挿通された経糸Tと他方の綜絖枠12bの綜絖に挿通された経糸Tとによって、経糸Tの開口Ta(
図2参照)が形成される。経糸Tの開口Taは、入口Tb及び出口Tcを有している。入口Tbは、機台11の左右方向において開口Taの左端に位置している。出口Tcは、機台11の左右方向において開口Taの右端に位置している。
【0014】
機台11は、緯入れ装置13を備えている。緯入れ装置13は、メインノズル14と複数本のサブノズル15とを有している。メインノズル14は、機台11の左端に配置されている。メインノズル14は、エアを噴出することによって、経糸Tの開口Taに対して機台11の左右方向に緯糸Yを緯入れする。緯糸Yは、入口Tbから開口Ta内に入る。緯糸Yは、開口Ta内を機台11の左右方向に飛走した後、出口Tcから開口Ta外に出る。メインノズル14によって緯糸Yが緯入れされる方向を緯入れ方向という。緯入れ方向は、機台11の左右方向の左側から右側に向かう方向である。複数本のサブノズル15は、機台11の前後方向において経糸開口装置12よりも前方に配置されている。複数本のサブノズル15は、緯入れ方向においてメインノズル14よりも下流側に配置されている。複数本のサブノズル15は、機台11の左右方向に配列されている。各サブノズル15は、経糸Tの開口Taに緯入れされた緯糸Yに対してエアを噴出する。
【0015】
機台11は、経糸Tの開口Taに緯入れされた緯糸Yを筬打ちする筬16を備えている。筬16は、機台11の前後方向において経糸開口装置12と複数本のサブノズル15との間に配置されている。筬16は、緯入れ方向においてメインノズル14よりも下流側に配置されている。
【0016】
図2に示すように、筬16は、筬羽17を有している。筬羽17は、機台11の左右方向に複数配列されている。経糸Tは、機台11の左右方向に隣り合う筬羽17の間を通過する。各筬羽17の前面には、凹部17aが設けられている。複数の筬羽17の凹部17aが機台11の左右方向に連なることによって、筬16には緯糸飛走通路16aが形成されている。緯糸Yが緯入れされるとき、緯糸飛走通路16aは、開口Taを形成する一方の経糸Tと他方の経糸Tとの間に位置している。すなわち、緯糸飛走通路16aは、経糸Tの開口Ta内に位置している。経糸Tの開口Taに緯入れされた緯糸Yは、緯糸飛走通路16a内を飛走する。
【0017】
筬16は、機台11の前後方向に往復揺動するスレイ18に固定されている。したがって、筬16は、スレイ18とともに機台11の前後方向に往復揺動する。筬16は、機台11の前方に移動することによって、経糸Tの開口Taに緯入れされた緯糸Yを筬打ちする。また、スレイ18には、メインノズル14及び複数本のサブノズル15も固定されている。したがって、スレイ18及び筬16が機台11の前後方向に揺動するとき、メインノズル14及び複数本のサブノズル15も機台11の前後方向に揺動する。
【0018】
織機10は、経糸Tを機台11の前後方向の後方から前方に向かって移動させつつ、経糸開口装置12による経糸Tの開口動作、緯入れ装置13による緯糸Yの緯入れ動作、及び筬16による筬打ち動作を繰り返すことにより、製織を行う。
【0019】
図3に示すように、織機10は、主軸19を備えている。主軸19は、機台11に設けられている。主軸19は、図示しないメインモータによって回転駆動される。
メインノズル14が緯糸Yを緯入れするタイミングは、主軸19の回転角度θに対応している。具体的には、主軸19が特定の角度から所定の角度だけ回転したタイミングで、メインノズル14は緯糸Yを噴出する。以下の説明では、主軸19の特定の角度を基準角度θ0という。また、基準角度θ0に対する遅れ角を遅延角度という。
【0020】
織機10は、角度検出部21と信号出力部22とを備えている。角度検出部21は、主軸19の回転角度θを検出する。角度検出部21は、例えば、ロータリエンコーダである。角度検出部21は、信号出力部22に接続されている。角度検出部21は、検出した主軸19の回転角度θを信号出力部22に出力する。信号出力部22は、角度検出部21が検出した主軸19の回転角度θが予め設定された基準角度θ0になる度に糸検出装置30に対して信号を出力する。
【0021】
<糸検出装置>
糸検出装置30は、撮影部31を備えている。撮影部31は、カメラ32と、発光器33と、入力部34と、制御部35とを有している。
【0022】
カメラ32は、撮像素子を有している。発光器33は、カメラ32の撮影範囲を照らすように設けられている。発光器33は、例えば、LEDライトである。入力部34は、糸検出装置30のユーザが撮影部31への入力操作を行うための部分である。ユーザは、入力部34によって撮影用遅延角度を設定する。撮影用遅延角度とは、カメラ32が撮影を行うタイミングを規定するものである。
【0023】
制御部35は、プロセッサ35aと、記憶部35bとを有している。プロセッサ35aとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。記憶部35bは、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部35bは、処理をプロセッサ35aに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部35b、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御部35は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御部35は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0024】
制御部35は、カメラ32と接続されている。制御部35は、カメラ32が撮影するタイミングを制御する。詳しくは、制御部35は、カメラ32に対してトリガ信号を出力する。カメラ32は、制御部35からトリガ信号が入力されることにより撮影を行う。したがって、トリガ信号は、カメラ32に撮影を行わせるための信号である。
【0025】
制御部35は、発光器33と接続されている。制御部35は、発光器33が発光するタイミングを制御する。詳しくは、制御部35は、発光器33に対してトリガ信号を出力する。発光器33は、制御部35からトリガ信号が入力されることにより発光する。したがって、トリガ信号は、発光器33を発光させるための信号でもある。制御部35は、カメラ32に対してトリガ信号を出力するのと同時に発光器33に対してトリガ信号を出力する。このため、発光器33は、カメラ32が撮影を行うのと同時に発光する。
【0026】
制御部35は、入力部34と接続されている。制御部35は、入力部34からユーザが設定した撮影用遅延角度を取得する。
制御部35は、織機10の信号出力部22と接続されている。制御部35には、信号出力部22が出力した信号が外部入力信号として入力される。これにより、制御部35は、主軸19の回転角度θが基準角度θ0になるタイミングを把握する。
【0027】
制御部35は、織機10の信号出力部22から入力される外部入力信号と、入力部34から取得した撮影用遅延角度とに基づいて、カメラ32及び発光器33に対してトリガ信号を出力する。具体的には、制御部35は、主軸19が基準角度θ0から撮影用遅延角度だけ回転したタイミングで、カメラ32及び発光器33に対してトリガ信号を出力する。したがって、カメラ32は、主軸19が基準角度θ0から撮影用遅延角度だけ回転したタイミングで撮影を行う。また、発光器33は、主軸19が基準角度θ0から撮影用遅延角度だけ回転したタイミングで発光する。
【0028】
図1に示すように、カメラ32は、機台11の左右方向の一端に配置されている。カメラ32は、機台11の前後方向においてメインノズル14よりも前方に配置されている。カメラ32は、機台11の上下方向において緯糸飛走通路16aと同じ高さに配置されている。カメラ32は、撮影方向Cが機台11の左右方向に対して傾斜するように配置されている。カメラ32の撮影方向Cとは、カメラ32の光軸が延びる方向である。カメラ32は、機台11の左右方向に対する傾斜角度θcが0°<θc<90°となるような撮影方向Cで開口Taの入口Tbを撮影する。カメラ32は、機台11の左右方向の一端側から他端側に向かって、かつ機台11の前後方向の前方から後方に向かって開口Taの入口Tbを撮影する。カメラ32は、経糸Tの開口状態及び緯糸Yの飛走状態の両方を撮影する。
【0029】
図3に示すように、糸検出装置30は、糸検出部36を備えている。糸検出部36は、プロセッサ36aと、記憶部36bとを有している。プロセッサ36aとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。記憶部36bは、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部36bは、処理をプロセッサ36aに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部36b、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。糸検出部36は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である糸検出部36は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0030】
糸検出部36は、撮影部31のカメラ32と接続されている。糸検出部36は、カメラ32が撮影した画像を取得する。糸検出部36は、取得した画像から経糸T及び緯糸Yを検出する。上述したように、カメラ32は、経糸Tの開口状態及び緯糸Yの飛走状態を撮影する。したがって、糸検出部36は、カメラ32が撮影した画像から経糸T及び緯糸Yを検出することによって、経糸Tの開口状態及び緯糸Yの飛走状態を把握する。
【0031】
<糸検出装置の具体例>
本実施形態では、糸検出装置30は、緯糸Yが緯入れされる前の経糸Tの開口状態を把握する。そして、糸検出装置30が把握した経糸Tの開口状態に基づいて、経糸Tの開口不良の検知が行われる。経糸Tの開口不良とは、経糸Tの一部が緯糸飛走通路16a内に位置していることである。経糸Tの開口不良が発生すると、緯入れされた緯糸Yが緯糸飛走通路16a内に位置する経糸Tに干渉することによって緯入れの失敗が発生しやすい。
【0032】
また、本実施形態では、糸検出装置30は、緯入れされた緯糸Yが、緯入れ方向に並ぶ複数本のサブノズル15のうち、上流から2本目のサブノズル152まで到達したときの緯糸Yの飛走状態を把握する。そして、糸検出装置30が把握した緯糸Yの飛走状態に基づいて、緯糸Yの先端部の形状、及び緯糸飛走通路16aに対する緯糸Yの位置が検査される。緯糸Yの先端部が極端に曲がっている場合や緯糸Yが緯糸飛走通路16aから外れている場合、緯入れの失敗が発生しやすい。このため、緯糸Yの先端部が極端に曲がっていないか、及び緯糸Yが緯糸飛走通路16aから外れていないかが検査される。
【0033】
特に、緯入れ方向の上流から2本目のサブノズル152の前後では、1本目のサブノズル15の前後よりも緯糸飛走通路16aの前方へのエアの漏れ出し量が多いことが知られている。このため、緯入れ方向の上流から2本目のサブノズル152の前後では、緯糸Yの飛走状態が不安定になりやすい。したがって、本実施形態では、緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達したときの緯糸Yの飛走状態に基づいて、緯糸Yの先端部の形状、及び緯糸飛走通路16aに対する緯糸Yの位置を検査する。
【0034】
糸検出装置30が、緯糸Yが緯入れされる前の経糸Tの開口状態を把握するためには、カメラ32は、緯糸Yが緯入れされる前の経糸Tの開口状態を撮影する必要がある。また、糸検出装置30が、緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達したときの緯糸Yの飛走状態を把握するためには、カメラ32は、緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達したときの緯糸Yの飛走状態を撮影する必要がある。
【0035】
ユーザは、緯糸Yが緯入れされる前の経糸Tの開口状態、及び緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達したときの緯糸Yの飛走状態がカメラ32によって撮影されるように撮影用遅延角度を設定する。緯糸Yが緯入れされるタイミングと、緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達するタイミングとは異なっている。このため、ユーザは、撮影用遅延角度として、緯糸Yが緯入れされる前の経糸Tの開口状態を撮影するための経糸撮影用遅延角度θtと、緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達したときの緯糸Yの飛走状態を撮影するための緯糸撮影用遅延角度θyとを設定する。
【0036】
メインノズル14は、主軸19が基準角度θ0から第1遅延角度θ1だけ回転したタイミングで緯糸Yを緯入れする。緯入れされた緯糸Yは、主軸19が基準角度θ0から第2遅延角度θ2だけ回転したタイミングで、緯入れ方向に並ぶ複数本の経糸Tのうち、最上流に位置する経糸Tまで到達する。筬16は、主軸19が基準角度θ0から第3遅延角度θ3だけ回転したタイミングで筬打ちを行う。
【0037】
経糸撮影用遅延角度θtは、第1遅延角度θ1よりも小さい角度に設定される。経糸撮影用遅延角度θtは、例えば、第2遅延角度θ2から所定の角度θaを減算した角度に設定される。
【0038】
図4に示すように、制御部35は、主軸19が基準角度θ0から経糸撮影用遅延角度θtだけ回転したタイミングでカメラ32に対してトリガ信号を出力する。これにより、カメラ32は、緯糸Yが緯入れされる前に撮影を行う。
【0039】
緯糸撮影用遅延角度θyは、第2遅延角度θ2よりも大きい角度に設定される。緯糸撮影用遅延角度θyは、例えば、第2遅延角度θ2に所定の角度θbを加算した角度に設定される。緯糸撮影用遅延角度θyは、第3遅延角度θ3よりも小さい。
【0040】
制御部35は、主軸19が基準角度θ0から緯糸撮影用遅延角度θyだけ回転したタイミングでカメラ32に対してトリガ信号を出力する。これにより、カメラ32は、緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達したタイミングで撮影を行う。
【0041】
カメラ32は、緯糸Yが緯入れされる前の経糸Tの開口状態、及び緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達したときの緯糸Yの飛走状態を撮影するように機台11に対して配置されている。具体的には、カメラ32は、機台11の左右方向においてメインノズル14が位置する側の端、すなわち機台11の左端に配置されている。カメラ32は、緯入れ方向において筬16よりも上流側に位置している。カメラ32は、機台11の左右方向に対する傾斜角度θcが0°<θc<90°となるような撮影方向Cで開口Taの入口Tbを撮影する。カメラ32は、緯入れ方向の上流側から下流側に向かって、かつ機台11の前後方向の前方から後方に向かって開口Taの入口Tbを撮影する。
【0042】
カメラ32が緯入れ前の経糸Tの開口状態を撮影するときには、メインノズル14の先端14aがカメラ32の撮影範囲内に位置していることが要求される。また、カメラ32が、緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達したときの緯糸Yの飛走状態を撮影するときには、メインノズル14の先端14a及び2本目のサブノズル152の先端152aがカメラ32の撮影範囲内に位置していることが要求される。
【0043】
図5は、緯糸Yの飛走状態の撮影時、すなわち緯入れされた緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達したときのメインノズル14及び2本目のサブノズル152の位置を示す平面図である。
図6は、筬打ち時のメインノズル14及び2本目のサブノズル152の位置を示す平面図である。
図5及び
図6において、カメラ32が配置される位置を原点Oとする。原点Oを通り、かつ機台11の左右方向に沿う軸をx軸とする。機台11の左から右に向かう方向をx軸の正の方向とする。原点Oを通り、かつ機台11の前後方向に沿う軸をy軸とする。機台11の前から後に向かう方向をy軸の正の方向とする。
【0044】
図5に示すように、緯糸Yの飛走状態の撮影時のメインノズル14の先端14aの座標を(x1,y1)とする。緯糸Yの飛走状態の撮影時の2本目のサブノズル152の先端152aの座標を(x2,y2)とする。織物Wの織口W1と、織物Wの緯入れ方向の上流側に位置する上流側縁部W2とが交差する織物Wの角部Waの座標を(x3,y3)とする。
【0045】
織機10の構造上、織物Wの上流側縁部W2は、緯入れ方向においてメインノズル14の先端14aよりも下流側に位置している。また、2本目のサブノズル152の先端152aは、緯入れ方向において織物Wの上流側縁部W2よりも下流側に位置している。したがって、x軸方向におけるメインノズル14の先端14a、2本目のサブノズル152の先端152a、及び織物Wの角部Waの位置関係は、x1<x3<x2となっている。
【0046】
織機10の構造上、2本目のサブノズル152の先端152aは、機台11の前後方向においてメインノズル14よりも前方に設けられている。また、緯糸Yの飛走状態の撮影時、織物Wの織口W1は、機台11の前後方向において2本目のサブノズル152よりも前方に位置している。したがって、y軸方向におけるメインノズル14の先端14a、2本目のサブノズル152の先端152a、及び織物Wの角部Waの位置関係は、y3<y2<y1となっている。
【0047】
緯糸Yの飛走状態の撮影時のメインノズル14の先端14a及び原点Oを通る第1直線L1とx軸とがなす角度をαとする。α=tan-1(y1/x1)で表される。緯糸Yの飛走状態の撮影時の2本目のサブノズル152の先端152a及び原点Oを通る第2直線L2とx軸とがなす角度をβとする。β=tan-1(y2/x2)で表される。織物Wの角部Wa及び原点Oを通る第3直線L3とx軸とがなす角度をγとする。γ=tan-1(y3/x3)で表される。
【0048】
カメラ32の画角の半分の角度をΦとする。言い換えると、カメラ32の画角は2Φである。上述したように、カメラ32の撮影方向Cは、機台11の左右方向、すなわちx軸に対して傾斜している。x軸に対するカメラ32の撮影方向Cの傾斜角度はθcである。
【0049】
α≦θc+Φのとき、メインノズル14の先端14aは、カメラ32の撮影範囲内に位置する。また、θc-Φ≦βのとき、2本目のサブノズル152の先端152aは、カメラ32の撮影範囲内に位置する。したがって、α-Φ≦θc≦β+Φのとき、メインノズル14の先端14a及び2本目のサブノズル152の先端152aの両方がカメラ32の撮影範囲内に位置する。また、γ≦βとすることにより、2本目のサブノズル152の先端152aが織物Wによって隠れることが回避される。
【0050】
以上のことを踏まえ、本実施形態のカメラ32は、α-Φ≦θc≦β+Φ及びγ≦βを満たすように配置される。これにより、カメラ32は、緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達したときの緯糸Yの飛走状態をメインノズル14の先端14aから2本目のサブノズル152の先端152aまでの範囲で撮影することができる。
【0051】
なお、緯糸Yを緯入れする前のメインノズル14は、緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達したときのメインノズル14よりも機台11の前後方向において前方に位置している。したがって、カメラ32は、緯入れ前の経糸Tの開口状態を撮影する際、メインノズル14の先端14aを撮影することができる。
【0052】
図6に示すように、筬打ち時のメインノズル14の先端14aの座標を(x10,y10)とする。筬打ち時の2本目のサブノズル152の先端152aの座標を(x20,y20)とする。織物Wの位置は変化しないため、筬打ち時の織物Wの角部Waの座標は、緯糸Yの飛走状態の撮影時と同様、(x3,y3)である。
【0053】
筬打ち時、メインノズル14及び2本目のサブノズル152は、機台11の前後方向には移動するが、機台11の左右方向には移動しない。このため、筬打ち時のx軸方向におけるメインノズル14の先端14a及び2本目のサブノズル152の先端152aの位置はそれぞれ、緯糸Yの飛走状態の撮影時のx軸方向におけるメインノズル14の先端14a及び2本目のサブノズル152の先端152aの位置と同じである。したがって、x1=x10、x2=x20である。また、筬打ち時のx軸方向におけるメインノズル14の先端14a、2本目のサブノズル152の先端152a、及び織物Wの角部Waの位置関係は、x10<x3<x20である。
【0054】
筬打ち時、メインノズル14及び2本目のサブノズル152は、機台11の前後方向の前方に移動する。メインノズル14の先端14aは、機台11の前後方向において織物Wの織口W1よりも前方に位置している。また、上述したように、織機10の構造上、2本目のサブノズル152の先端152aは、機台11の前後方向においてメインノズル14の先端14aよりも前方に設けられている。したがって、筬打ち時、y軸方向におけるメインノズル14の先端14a、2本目のサブノズル152の先端152a、及び織物Wの角部Waの位置関係は、y20<y10<y3となっている。
【0055】
メインノズル14の周辺部品20は、メインノズル14とともに機台11の前後方向に揺動する。y軸方向における周辺部品20の前端部20aの位置をDとする。筬打ち時に周辺部品20がカメラ32と干渉しないためには、D>0である必要がある。
【0056】
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)糸検出装置30は、カメラ32と糸検出部36とを備えている。カメラ32は、機台11の左右方向に対する傾斜角度θcが0°<θc<90°となるような撮影方向Cで開口Taの入口Tbを撮影する。このため、カメラ32は、経糸Tの開口状態及び緯糸Yの飛走状態の両方を撮影することができる。糸検出部36は、カメラ32が撮影した画像から経糸T及び緯糸Yを検出することによって、経糸Tの開口状態及び緯糸Yの飛走状態を把握することができる。
【0057】
(2)本実施形態のカメラ32は、緯入れ方向において筬16よりも上流側に配置されている。カメラ32は、α-Φ≦θc≦β+Φ及びγ≦βを満たすように配置されている。この構成によれば、緯糸Yが緯入れ方向の上流から2本目のサブノズル152まで到達したとき、メインノズル14の先端14a及び2本目のサブノズル152の先端152aの両方がカメラ32の撮影範囲内に位置している。したがって、カメラ32は、緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達したときの緯糸Yの飛走状態をメインノズル14の先端14aから2本目のサブノズル152の先端152aまでの範囲で撮影することができる。
【0058】
また、緯糸Yを緯入れする前のメインノズル14は、緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達したときのメインノズル14よりも機台11の前後方向において前方に位置している。したがって、カメラ32は、緯入れ前の経糸Tの開口状態を撮影する際、メインノズル14の先端14aを撮影することができる。
【0059】
(3)例えば、カメラ32が機台11の左右方向に撮影を行う場合、撮影した画像から経糸Tの開口状態を把握することができる。しかしながら、経糸Tの配列方向が画像の奥行方向となってしまうため、経糸Tの開口不良が発生している場合、機台11の左右方向における開口不良の位置を把握することは困難である。これに対し、本実施形態では、カメラ32は、撮影方向Cが機台11の左右方向に対して傾斜するように配置されている。このため、撮影した画像から経糸Tの開口状態を把握できるだけでなく、経糸Tの開口不良が発生している場合には、機台11の左右方向における開口不良の位置を把握することができる。
【0060】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0061】
○ 撮影部31は、発光器33を有していなくてもよい。
○ 撮影部31は、入力部34を有していなくてもよい。例えば、ユーザは、撮影部31と通信可能に構成された通信装置によって、撮影部31に対して撮影用遅延角度を設定してもよい。
【0062】
○ 上記実施形態では、糸検出装置30は、緯糸Yが緯入れされる前の経糸Tの開口状態、及び緯糸Yが2本目のサブノズル152まで到達したときの緯糸Yの飛走状態を把握していたが、これに限定されない。糸検出装置30は、例えば、緯入れされた緯糸Yの先端が経糸Tの開口Taを通過し終えたときの経糸Tの開口状態及び緯糸Yの飛走状態を把握してもよい。
【0063】
この場合、カメラ32は、機台11の左右方向において筬16を挟んでメインノズル14とは反対側の端、すなわち機台11の右端に配置される。カメラ32は、緯入れ方向において筬16よりも下流側に配置される。カメラ32は、機台11の左右方向に対する傾斜角度θcが0°<θc<90°となるような撮影方向Cで開口Taの出口Tcを撮影する。カメラ32は、緯入れ方向の下流側から上流側に向かって、かつ機台11の前後方向の前方から後方に向かって開口Taの出口Tcを撮影する。
【0064】
緯糸Yの先端は、主軸19が基準角度θ0から第4遅延角度θ4だけ回転したタイミングで経糸Tの開口Taを通過し終える。このため、ユーザは、第4遅延角度θ4を撮影用遅延角度として設定する。これにより、カメラ32は、緯糸Yの先端が経糸Tの開口Taを通過し終えたタイミングで撮影を行う。
【0065】
上述したようにカメラ32が配置されるとともに撮影用遅延角度が設定されることにより、カメラ32は、緯糸Yの先端が経糸Tの開口Taを通過し終えたときの経糸Tの開口状態及び緯糸Yの飛走状態の両方を撮影する。そして、糸検出部36は、カメラ32が撮影した画像から経糸T及び緯糸Yを検出することにより、緯糸Yの先端が経糸Tの開口Taを通過し終えたときの経糸Tの開口状態及び緯糸Yの飛走状態を把握する。
【0066】
緯糸Yの先端が経糸Tの開口Taを通過し終えたときの経糸Tの開口状態に基づいて、緯糸Yの先端が経糸Tの開口Taを通過し終える前に経糸Tの開口Taが閉じていないかが検査される。また、緯糸Yの先端が経糸Tの開口Taを通過し終えたときの緯糸Yの飛走状態に基づいて、緯糸Yの先端部の形状及び緯糸飛走通路16aに対する緯糸Yの位置が検査される。
【符号の説明】
【0067】
10…織機、11…機台、13…緯入れ装置、14…メインノズル、14a…先端、15…サブノズル、152…2本目のサブノズル、152a…先端、16…筬、30…織機の糸検出装置、32…カメラ、36…糸検出部、C…撮影方向、L1…第1直線、L2…第2直線、L3…第3直線、O…原点、T…経糸、Ta…開口、Tb…入口、Tc…出口、W…織物、W1…織口、W2…上流側縁部、Wa…角部、Y…緯糸、θc…傾斜角度。