(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147921
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20241009BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20241009BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C11/00 B
B60C11/00 D
B60C11/03 300A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060664
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 脩平
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA03
3D131BB03
3D131BC19
3D131BC34
3D131BC35
3D131EA02U
3D131EA10V
3D131EA10W
3D131EB11V
3D131EB11W
3D131EB11X
3D131EB12V
3D131EB12W
3D131EB22V
3D131EB22W
3D131EB22X
3D131EB28V
3D131EB28W
3D131EB28X
3D131EB31V
3D131EB31W
3D131EB31X
3D131EB40V
3D131EB40W
3D131EB81V
3D131EB81W
3D131EB91V
3D131EB91W
3D131EB94V
3D131EB94W
3D131EB98V
3D131EB98W
3D131EB99V
3D131EB99W
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】摩耗によるWET性能の低下を抑制しながら、耐偏摩耗性のさらなる向上を図ることができる、重荷重用タイヤ2の提供。
【解決手段】タイヤ2はトレッド4を備える。トレッド4は周方向溝28を有する。周方向溝28はトレッド4を陸部30に区分する。陸部30はメイン陸部32を含む。メイン陸部32はメイン横溝38を有する。メイン横溝38はメイン陸部32をメインブロック40に区分する。メインブロック40はそれぞれ横断サイプ42を有する。横断サイプ42はサイプ本体44と管状部46とを有する。サイプ本体44はジグザグにのびる。サイプ本体44の平均面はメインブロック40の陸面の法線を含む。メインブロック40の周方向長さは軸方向幅よりも長い。メインブロック40において、先導側の壁面38Wsの傾斜角度θfは、後続側の壁面38Wfの傾斜角度θsよりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接地するトレッド面を有するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備える、タイヤであって、
前記トレッドが周方向に連続してのびる複数の周方向溝を有し、
複数の前記周方向溝が、前記トレッドを、軸方向に並ぶ複数の陸部に区分し、
複数の前記周方向溝がそれぞれ、溝口を含む一対の壁面と、溝底を含む底面とを有し、
複数の前記陸部が、隣り合う前記周方向溝間に位置する複数のメイン陸部と、前記トレッド面の端を含む一対のショルダー陸部とを含み、
各前記メイン陸部が、隣り合う前記周方向溝間を繋ぐ複数のメイン横溝を有し、
複数の前記メイン横溝が、前記メイン陸部を、周方向に並ぶ複数のメインブロックに区分し、
少なくとも一のメイン陸部において、複数の前記メインブロックがそれぞれ、前記メインブロックを横断する横断サイプを有し、
前記横断サイプが、サイプ本体と、前記サイプ本体の径方向内側に位置する管状部とを有し、
前記管状部の溝幅が前記サイプ本体の溝幅よりも広く、
前記サイプ本体が、その長さ方向及び深さ方向のそれぞれにジグザグにのび、
前記サイプ本体の平均面が前記メインブロックの陸面の法線を含み、
前記メインブロックの周方向長さが軸方向幅よりも長く、
前記メインブロックにおいて、先導側の壁面の傾斜角度が、後続側の壁面の傾斜角度よりも大きい、
重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記トレッドが、前記トレッド面を含む第一トレッドゴム層と、前記第一トレッドゴム層の径方向内側に位置する第二トレッドゴム層とを含み、
前記第一トレッドゴム層と前記第二トレッドゴム層との境界が、前記横断サイプの溝底の径方向内側に位置する、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記第一トレッドゴム層の複素弾性率は前記第二トレッドゴム層の複素弾性率よりも高い、
請求項2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記管状部が、前記横断サイプの溝底を含む底面を備え、
前記底面の輪郭線が、前記溝底を通る円弧で表され、
前記底面の輪郭線を表す円弧の半径が1.5mm以上3.5mm以下である、
請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
複数の前記周方向溝が一対のショルダー周方向溝を含み、
一対の前記ショルダー周方向溝がそれぞれ、前記ショルダー陸部と、前記ショルダー陸部の隣に位置するメイン陸部との間に位置する、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項6】
前記メイン横溝が前記ショルダー周方向溝よりも浅い、
請求項5に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項7】
複数の前記周方向溝が、隣り合う前記メイン陸部の間に位置する周方向細溝を含み、
前記周方向細溝が、前記ショルダー周方向溝の溝口での溝幅よりも狭い溝幅を有する胴部を備え、
前記タイヤが路面と接地すると、前記胴部において、一対の前記壁面が互いに接触する、
請求項5又は6に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤに関する。詳細には、本発明は、トレッドパターンとしてブロックパターンを採用した重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックパターンを採用した重荷重用タイヤでは、ブロックに生じる特異な歪を軽減し耐偏摩耗性の向上を図るために、ブロックを横断するサイプ(以下、横断サイプ)がブロックに刻まれることがある。
トレッドが摩耗することで溝は消失していく。溝の消失は、濡れた路面での走行性能(以下、WET性能)を低下させる。WET性能を維持するために、サイプの径方向内側に、サイプの溝幅よりも広い溝幅を有する管状部を設けることが知られている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、摩耗によるWET性能の低下を抑制しながら、耐偏摩耗性のさらなる向上を図ることができる、重荷重用タイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る重荷重用タイヤは、路面と接地するトレッド面を有するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備える。前記トレッドは周方向に連続してのびる複数の周方向溝を有する。複数の前記周方向溝は、前記トレッドを、軸方向に並ぶ複数の陸部に区分する。複数の前記周方向溝はそれぞれ、溝口を含む一対の壁面と、溝底を含む底面とを有する。複数の前記陸部は、隣り合う前記周方向溝間に位置する複数のメイン陸部と、前記トレッド面の端を含む一対のショルダー陸部とを含む。各前記メイン陸部は、隣り合う前記周方向溝間を繋ぐ複数のメイン横溝を有する。複数の前記メイン横溝は、前記メイン陸部を、周方向に並ぶ複数のメインブロックに区分する。少なくとも一のメイン陸部において、複数の前記メインブロックはそれぞれ、前記メインブロックを横断する横断サイプを有する。前記横断サイプは、サイプ本体と、前記サイプ本体の径方向内側に位置する管状部とを有する。前記管状部の溝幅は前記サイプ本体の溝幅よりも広い。前記サイプ本体は、その長さ方向及び深さ方向のそれぞれにジグザグにのびる。前記サイプ本体の平均面は前記メインブロックの陸面の法線を含む。前記メインブロックの周方向長さは軸方向幅よりも長い。前記メインブロックにおいて、先導側の壁面の傾斜角度は、後続側の壁面の傾斜角度よりも大きい。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、摩耗によるWET性能の低下を抑制しながら、耐偏摩耗性のさらなる向上を図ることができる、重荷重用タイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る重荷重用タイヤの一部を示す断面図である。
【
図2】トレッドに刻まれる溝の一例を示す断面図である。
【
図4】
図1のタイヤのトレッドの一部を示す展開図である。
【
図8】
図5のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図10】
図9に示された周方向細溝の変形例を示す断面図である。
【
図11】
図9に示された周方向細溝の他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のタイヤはリムに組まれる。タイヤの内側には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。リムに組まれたタイヤはタイヤ-リム組立体とも呼ばれる。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0009】
本発明において、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
【0010】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの切断面において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離が、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するように、タイヤはセットされる。なお、正規リムにタイヤを組んだ状態で確認できないタイヤの構成は、前述の切断面において確認される。
【0011】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0012】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0013】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0014】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。
トレッド部の中央部分はクラウン部分とも呼ばれる。トレッド部の端の部分はショルダー部分とも呼ばれる。
【0015】
本発明において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の複素弾性率E*は、JIS K6394の規定に準拠して、小形試験装置を用いて測定される。測定条件は以下の通りである。
初期歪み=10%
動歪み=±1%
周波数=10Hz
モード=伸長モード
温度=70℃
この測定では、試験片(長さ40mm×幅4mm×厚さ1mm)はタイヤからサンプリングされる。試験片の長さ方向は、タイヤの周方向と一致させる。タイヤから試験片をサンプリングできない場合には、測定対象の要素の形成に用いられるゴム組成物を170℃の温度で12分間加圧及び加熱して得られる、シート状の架橋ゴム(以下、ゴムシートとも称される。)から試験片がサンプリングされる。
本発明において架橋ゴムからなる要素の複素弾性率E*は、70℃での複素弾性率で表される。
【0016】
[本発明の基礎となった知見]
本発明者の鋭意検討によれば、トレッドパターンとしてブロックパターンを採用した重荷重用タイヤに関して、以下の事情が明らかになっている。
ブロックパターンを採用したタイヤは、車両のドライブ軸に装着されるケースが多い。タイヤが駆動する際、タイヤのブロックには、タイヤが駆動する方向に大きな力が作用する。ブロックの先導側の縁や後続側の縁において摩耗の進行が促される。耐偏摩耗性の向上のために、ブロックを横断する横断サイプがブロックに設けられる。
トレッドが摩耗することで溝は消失する。WET性能の維持のために横断サイプに管状部を設けることが検討される。管状部は、横断サイプの溝底に歪が集中することを抑制する。しかし、管状部はブロックに剛性低下を招く。剛性低下は偏摩耗の発生を促す。このような場合、耐偏摩耗性を向上させるために設けた横断サイプが、その機能を十分に発揮できない。
そこで、摩耗によるWET性能の低下を抑制しながら、耐偏摩耗性のさらなる向上を図ることができる技術を確立するために、本発明者はタイヤのブロックパターンについて鋭意検討し、以下に説明する発明を完成するに至っている。
【0017】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係る重荷重用タイヤは、路面と接地するトレッド面を有するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備える、タイヤであって、前記トレッドが周方向に連続してのびる複数の周方向溝を有し、複数の前記周方向溝が、前記トレッドを、軸方向に並ぶ複数の陸部に区分し、複数の前記周方向溝がそれぞれ、溝口を含む一対の壁面と、溝底を含む底面とを有し、複数の前記陸部が、隣り合う前記周方向溝間に位置する複数のメイン陸部と、前記トレッド面の端を含む一対のショルダー陸部とを含み、各前記メイン陸部が、隣り合う前記周方向溝間を繋ぐ複数のメイン横溝を有し、複数の前記メイン横溝が、前記メイン陸部を、周方向に並ぶ複数のメインブロックに区分し、少なくとも一のメイン陸部において、複数の前記メインブロックがそれぞれ、前記メインブロックを横断する横断サイプを有し、前記横断サイプが、サイプ本体と、前記サイプ本体の径方向内側に位置する管状部とを有し、前記管状部の溝幅が前記サイプ本体の溝幅よりも広く、前記サイプ本体が、その長さ方向及び深さ方向のそれぞれにジグザグにのび、前記サイプ本体の平均面が前記メインブロックの陸面の法線を含み、前記メインブロックの周方向長さが軸方向幅よりも長く、前記メインブロックにおいて、先導側の壁面の傾斜角度が、後続側の壁面の傾斜角度よりも大きい。
【0018】
このようにタイヤを整えることにより、このタイヤは、摩耗によるWET性能の低下を抑制しながら、耐偏摩耗性のさらなる向上を図ることができる。
【0019】
[構成2]
摩耗によるWET性能の低下を抑制しながら、耐偏摩耗性のさらなる向上を図ることができる観点から、好ましくは、前述の[構成1]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記トレッドが、前記トレッド面を含む第一トレッドゴム層と、前記第一トレッドゴム層の径方向内側に位置する第二トレッドゴム層とを含み、前記第一トレッドゴム層と前記第二トレッドゴム層との境界が、前記横断サイプの溝底の径方向内側に位置する。
【0020】
[構成3]
同様の観点から、好ましくは、前述の[構成2]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記第一トレッドゴム層の複素弾性率は前記第二トレッドゴム層の複素弾性率よりも高い。
【0021】
[構成4]
同様の観点から、好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記管状部が、前記横断サイプの溝底を含む底面を備え、前記底面の輪郭線が、前記溝底を通る円弧で表され、前記底面の輪郭線を表す円弧の半径が1.5mm以上3.5mm以下である。
【0022】
[構成5]
同様の観点から、好ましくは、前述の[構成1]から[構成4]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、複数の前記周方向溝が一対のショルダー周方向溝を含み、一対の前記ショルダー周方向溝がそれぞれ、前記ショルダー陸部と、前記ショルダー陸部の隣に位置するメイン陸部との間に位置する。
【0023】
[構成6]
同様の観点から、好ましくは、前述の[構成5]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記メイン横溝が前記ショルダー周方向溝よりも浅い。
【0024】
[構成7]
同様の観点から、好ましくは、前述の[構成5]又は[構成6]に記載の重荷重用タイヤにおいて、複数の前記周方向溝が、隣り合う前記メイン陸部の間に位置する周方向細溝を含み、前記周方向細溝が、前記ショルダー周方向溝の溝口での溝幅よりも狭い溝幅を有する胴部を備え、前記タイヤが路面と接地すると、前記胴部において、一対の前記壁面が互いに接触する。
【0025】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2はトラック、バス等の車両に装着される。このタイヤ2は重荷重用タイヤである。
【0027】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
図1において径方向に延びる一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。
【0028】
図1はタイヤ2のトレッド部の一部を示す。トレッド部は、トレッド4、ベルト6、カーカス8、インナーライナー10、クッション層12及びサイドウォール14を備える。図示されないが、このタイヤ2は一対のクッション層12を備え、これらは赤道面を挟んで軸方向に離して配置される。このタイヤ2は一対のサイドウォール14を備え、これらは赤道面を挟んで軸方向に離して配置される。詳述しないが、このタイヤ2はさらに、ビードやチェーファー等の要素も備える。
【0029】
ベルト6はトレッド4の径方向内側に位置する。ベルト6はカーカス8に積層される。
ベルト6は径方向に積層された複数のベルトプライ16を備える。このタイヤ2のベルト6は4枚のベルトプライ16を備える。4枚のベルトプライ16は、第一ベルトプライ16A、第二ベルトプライ16B、第三ベルトプライ16C及び第四ベルトプライ16Dであり、径方向にこの順で並ぶ。第一ベルトプライ16Aが径方向において最も内側に位置する。第二ベルトプライ16Bが最も広い幅を有し、第四ベルトプライ16Dが最も狭い幅を有する。
【0030】
図示されないが、各ベルトプライ16は並列した多数のベルトコードを含む。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。このタイヤ2のベルトコードには、スチールコードが用いられる。
【0031】
カーカス8は、トレッド4及びサイドウォール14の内側に位置する。図示されないが、カーカス8は一対のビードの間を架け渡す。
カーカス8は少なくとも1枚のカーカスプライ18を備える。このタイヤ2のカーカス8は1枚のカーカスプライ18で構成される。
【0032】
図示されないが、カーカスプライ18はそれぞれのビードで折り返される。カーカスプライ18は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは赤道面と交差する。このタイヤ2のカーカス8はラジアル構造を有する。このタイヤ2のカーカスコードはスチールコードである。有機繊維からなるコードがカーカスコードとして用いられてもよい。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0033】
インナーライナー10は、カーカス8の内側に位置する。インナーライナー10はタイヤ2の内面を構成する。インナーライナー10は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー10はタイヤ2の内圧を保持する。
【0034】
クッション層12はベルト6の端において、ベルト6とカーカス8との間に位置する。クッション層12は軟質な架橋ゴムからなる。
【0035】
サイドウォール14はトレッド4の端に連なる。サイドウォール14はトレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール14はカーカス8の軸方向外側に位置する。サイドウォール14は架橋ゴムからなる。サイドウォール14はタイヤ2の側面をなす。
【0036】
トレッド4は、タイヤ2の径方向外側に位置し、周方向にのびる。トレッド4はベルト6に積層される。
トレッド4の外周面がトレッド面20である。タイヤ2は、トレッド面20において路面と接地する。トレッド4は、路面と接地するトレッド面20を有する。
トレッド4には溝22が刻まれる。これにより、トレッドパターンが構成される。
【0037】
図2は、トレッド4に刻まれる溝22の一例を示す。
図2はこの溝22の断面を示す。
図2に基づいて溝22の主たる構成が説明される。
【0038】
溝22は、溝口22Mを含む一対の壁面22Wと、溝底22Tを含む底面22Bとを有する。溝22の溝幅は、一対の壁面22Wである第一壁面22Wと第二壁面22Wとの間の距離、すなわち壁面間距離で表される。
図2において両矢印WGで示される長さは、溝口22Mにおける溝22の溝幅である。溝幅WGは、溝口22Mを構成する一対のエッジ間の最短距離で表される。なお、溝22の溝口22Mの部分がテーパー様に加工されている場合は、テーパー様に加工されていないと仮定して得られる仮想エッジに基づいて、溝22の溝口22Mにおける溝幅が表される。
両矢印DGで示される長さは、溝22の溝深さである。溝22の溝深さDGは、左右のエッジを結ぶ線分から溝22の溝底22Tまでの最短距離で表される。
例えば、溝22の位置、溝幅WG及び溝深さDGは、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0039】
溝口22Mにおいて1.0mm未満の溝幅WGを有する溝22はサイプとも呼ばれる。サイプ以外の溝22は普通溝とも呼ばれ、その溝口22Mにおいて1.0mm以上の溝幅WGを有する。
サイプが、溝口22Mと溝底22Tとの間に、1.0mm以上の溝幅を有する部分(以下、普通溝相当部分)を含んでいてもよい。この場合、トレッド4が摩耗して普通溝相当部分が露出することで、サイプが普通溝に切り替わる。
普通溝が、溝口22Mと溝底22Tとの間に、1.0mm未満の溝幅を有する部分(サイプ相当部分)を含んでいてもよい。この場合、トレッド4が摩耗してサイプ相当部分が露出することで、普通溝がサイプに切り替わる。
普通溝であっても、狭い溝幅を有し、タイヤが路面と接地すると一対の壁面が互いに接触できる普通溝は、細溝とも呼ばれる。広い溝幅を有し、タイヤが路面と接地しても一対の壁面が互いに接触することがない普通溝は太溝とも呼ばれる。
【0040】
図1において符号PCで示される位置は赤道である。赤道PCはトレッド面20と赤道面との交点である。赤道面上に溝22が位置する場合は、この溝22がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて、赤道PCが特定される。
符号TEで示される位置は、トレッド面20の端である。
タイヤにおいて、外観上、トレッド面の端が識別不能な場合は、正規状態のタイヤに正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜としタイヤを平面に接触させて得られる接地面の軸方向外側端に対応するタイヤの外面上の位置がトレッド面の端として用いられる。
【0041】
図3は赤道面に沿ったトレッド部の断面を示す。
図3において左右方向はタイヤ2の周方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図3の紙面に対して垂直な方向はタイヤ2の軸方向である。
図3において矢印Rで示される方向はタイヤ2の回転方向である。路面を走行するタイヤ2は、紙面左側から右側に向かって路面に接地していく。
図3の紙面左側がタイヤ2の先導側であり、紙面右側がタイヤ2の後続側である。
【0042】
トレッド4は架橋ゴムからなる。トレッドは、径方向に並ぶ、第一トレッドゴム層24と、第二トレッドゴム層26とを備える。
第一トレッドゴム層24はトレッド面20を含む。第一トレッドゴム層24は、例えば、グリップ性能及び耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。第一トレッドゴム層24はキャップ層とも呼ばれる。
第二トレッドゴム層26は第一トレッドゴム層24の径方向内側に位置する。第二トレッドゴム層26は、例えば、低発熱性を考慮した架橋ゴムからなる。第二トレッドゴム層26はベース層とも呼ばれる。
このタイヤ2の第二トレッドゴム層26は、重荷重用タイヤのトレッドにおいてベース層のための架橋ゴムとして一般的に用いられる架橋ゴムで構成される。
【0043】
図3に示されるように、第二トレッドゴム層26はベルト6に積層される。第一トレッドゴム層24は第二トレッドゴム層26に積層される。符号FSで示される直線は、第一トレッドゴム層24と第二トレッドゴム層26との境界である。このタイヤ2のトレッド4は、第一トレッドゴム層24と第二トレッドゴム層26とで構成される。
【0044】
図4はトレッド面20の展開図である。
図4はタイヤ2のトレッドパターンを示す。
図4において左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の周方向である。
図4の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。
図4において矢印Rで示される方向はタイヤ2の回転方向である。路面を走行するタイヤ2は、紙面上側から下側に向かって路面に接地していく。
図4の紙面上側がタイヤ2の先導側であり、紙面下側がタイヤ2の後続側である。
【0045】
図4に示されたトレッド面20において、赤道面の左側に位置するトレッド面20の端TEを第一端TE1とし、赤道面の右側に位置する端TEを第二端TE2として、このタイヤ2のトレッドパターンが説明される。
このタイヤ2のトレッドパターンはタイヤ2の回転方向を指定する。
【0046】
図4において符号TWで示される長さは、トレッド面20の幅である。トレッド面20の幅TWは、第一端TE1から第二端TE2までの軸方向距離である。トレッド面20の幅TWは、トレッド面20に沿って計測される長さで表される。
【0047】
このタイヤ2のトレッド4には、周方向に連続してのびる周方向連続溝として、周方向溝28が刻まれる。周方向溝28は、その溝口において1.0mm以上の溝幅を有する。
図4に示されるように周方向溝28は、周方向にジグザグにのびる。周方向溝28が周方向にストレートにのびるように構成されてもよい。
【0048】
トレッド4には、複数の周方向溝28が刻まれ、軸方向に並ぶ複数の陸部30が構成される。言い換えれば、トレッド4は複数の周方向溝28を有する。複数の周方向溝28はトレッド4を複数の陸部30に区分する。
【0049】
本発明においては、トレッドに刻まれた複数の周方向溝のうち軸方向において最も外側に位置する周方向溝はショルダー周方向溝とも呼ばれる。赤道面上に位置する周方向溝はセンター周方向溝とも呼ばれる。赤道面上に周方向溝が設けられない場合は、赤道面に最も近い周方向溝がセンター周方向溝とも呼ばれる。センター周方向溝とショルダー周方向溝との間に周方向溝が位置する場合は、この周方向溝がミドル周方向溝とも呼ばれる。
【0050】
このタイヤ2のトレッド4は、軸方向に並ぶ4本の周方向溝28を有する。4本の周方向溝28のうち、軸方向において最も外側に位置する周方向溝28がショルダー周方向溝28sである。赤道面に近い周方向溝28がセンター周方向溝28cである。
トレッド4に刻まれた4本の周方向溝28は、一対のセンター周方向溝28cと、一対のショルダー周方向溝28sとを含む。
【0051】
図1において両矢印DGaで示される長さはショルダー周方向溝28sの溝深さである。
図4において両矢印WGaで示される長さはショルダー周方向溝28sの溝口での溝幅である。
このタイヤ2のショルダー周方向溝28sの溝深さDGaは、例えば、10mm以上21mm以下である。タイヤ2が良好なウェット性能を発揮できる観点から、溝深さDGaは13mm以上18mm以下であるのが好ましい。
ショルダー周方向溝28sの溝幅WGaの、トレッド面20の幅TWに対する比率(WGa/TW)は好ましくは4.0%以上10%以下である。タイヤ2が路面と接地してもショルダー周方向溝28sの一対の壁面28Wsは互いに接触することはない。ショルダー周方向溝28sはWET性能の発揮に貢献できる。
【0052】
本発明においては、トレッドに構成された複数の陸部のうち、軸方向において最も外側に位置する陸部はショルダー陸部とも呼ばれる。赤道面上に位置する陸部はセンター陸部とも呼ばれる。赤道面上に陸部が設けられない場合は、赤道面に最も近い陸部がセンター陸部とも呼ばれる。センター陸部とショルダー陸部との間に位置する陸部はミドル陸部とも呼ばれる。
【0053】
図4に示されたトレッド4は、軸方向に並ぶ5本の陸部30を有する。5本の陸部30のうち、軸方向において最も外側に位置する陸部30がショルダー陸部30sである。ショルダー陸部30sはトレッド面20の端TEを含む。赤道面上に位置する陸部30がセンター陸部30cである。センター陸部30cとショルダー陸部30sとの間に位置する陸部30がミドル陸部30mである。
トレッド4に構成された5本の陸部30は、センター陸部30cと、一対のミドル陸部30mと、一対のショルダー陸部30sとを含む。
詳述しないが、各陸部30の幅は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0054】
図示されないが、ショルダー陸部30sのトレッド面20の端TEの部分に、周方向連続溝として、周方向副溝がさらに刻まれてもよい。周方向連続溝は、前述の周方向溝28以外に、周方向副溝をさらに含むことができる。これにより、ショルダー陸部30sに陸部本体と犠牲陸部とが構成される。タイヤが路面と接地することで犠牲陸部が陸部本体を外側から支持する。陸部本体の端部の変形が抑制される。端部における摩耗の進展が抑制される。タイヤ2は耐偏摩耗性の向上を図ることができる。なお、周方向副溝をショルダー陸部30sに刻む場合、周方向副溝の溝幅は、好ましくは、タイヤ2が路面と接地すると、周方向副溝の一対の壁面が互いに接触できる溝幅に設定される。周方向副溝の溝幅は、トレッド面20の幅TWの2.0%以下である。周方向副溝がサイプであってもよい。
【0055】
このトレッド4では、センター陸部30cは2本のセンター周方向溝28cの間に位置する。ミドル陸部30mは、センター周方向溝28cとショルダー周方向溝28sとの間に位置する。センター陸部30c及びミドル陸部30mはそれぞれ、隣り合う周方向溝28間の陸部30である。
【0056】
本発明においては、トレッドに構成される複数の陸部のうち、隣り合う周方向溝間に位置する陸部はメイン陸部とも呼ばれる。
このトレッド4では、センター陸部30c及びミドル陸部30mはメイン陸部32である。トレッド4に構成された5本の陸部30は、隣り合う周方向溝28間に位置する、3本のメイン陸部32を含む。このタイヤ2のトレッド4には、軸方向に並ぶ複数の陸部30が構成され、複数の陸部30は、隣り合う周方向溝28間に位置する複数のメイン陸部32を含む。
【0057】
本発明においては、複数のメイン陸部のうち、軸方向において最も外側に位置するメイン陸部は外側メイン陸部とも呼ばれる。
このタイヤ2では、メイン陸部32である、センター陸部30s及び一対のミドル陸部30mのうち、軸方向において最も外側に位置するメイン陸部32はミドル陸部30mである。ミドル陸部30mは外側メイン陸部32sでもある。
外側メイン陸部32sは、ショルダー陸部30sの隣に位置する。ショルダー周方向溝28sは外側メイン陸部32sとショルダー陸部30sとの間に位置する。
【0058】
ショルダー陸部30sは、ショルダー周方向溝28sの軸方向外側に位置し、トレッド面20の端TEを含む。ショルダー陸部30sはメイン陸部32ではない。
【0059】
このタイヤ2では、ショルダー陸部30sとミドル陸部30mとの間に陸部30がさらに設けられてもよい。この場合、ショルダー陸部30sとミドル陸部30mとの間に位置する陸部30は、その両側に周方向溝28が位置するので、メイン陸部32である。ショルダー陸部30sとミドル陸部30mとの間に、複数の陸部30がさらに設けられてもよい。
【0060】
このタイヤ2では、トレッド4に構成される全ての陸部30に、陸部30を横断する複数の横溝34が刻まれる。これにより、各陸部30には周方向に並ぶ複数のブロック36が構成される。このタイヤ2のトレッドパターンはブロックパターンである。各ブロック36の陸面はトレッド面20に含まれる。
一対のショルダー陸部30sの間に位置するメイン陸部32のみに、横溝34が刻まれてもよい。この場合のトレッドパターンもブロックパターンである。
横溝34は普通溝である。横溝34はサイプではない。横溝34は、その溝口34Mにおいて、1.0mm以上の溝幅を有する。
【0061】
センター陸部30cに刻まれる横溝34はセンター横溝34cとも呼ばれる。センター横溝34cは、トレッド面20の第一端TE1側のセンター周方向溝28c(以下、第一センター周方向溝28c1)と、第二端TE2側のセンター周方向溝28c(以下、第二センター周方向溝28c2)との間を繋ぐ。
センター陸部30cに構成されるブロック36はセンターブロック36cとも呼ばれる。複数のセンター横溝34cはセンター陸部30cを複数のセンターブロック36cに区分する。
【0062】
図4に示されるように、このタイヤ2のセンター横溝34cは軸方向に対して傾斜する。センター横溝34cの第一センター周方向溝28c1側の端部は、その第二センター周方向溝28c2側の端部よりも後続側に位置する。
【0063】
ミドル陸部30mに刻まれる横溝34はミドル横溝34mとも呼ばれる。ミドル横溝34mはショルダー周方向溝28sとセンター周方向溝28cとの間を繋ぐ。
ミドル陸部30mに構成されるブロック36はミドルブロック36mとも呼ばれる。複数のミドル横溝34mはミドル陸部30mを複数のミドルブロック36mに区分する。
ミドル横溝34mは、周方向において隣り合うセンター横溝34cの間に位置する。
【0064】
図4に示されるように、ミドル横溝34mは軸方向に対して傾斜する。ミドル横溝34mの軸方向外側の端部は、その軸方向内側の端部よりも後続側に位置する。
トレッド面20の第一端TE1側のミドル横溝34m(以下、第一ミドル横溝34m1)の軸方向内側の端部は、トレッド面20の第二端TE2側のミドル横溝34m(以下、第二ミドル横溝34m2)の軸方向内側の端部よりも後続側に位置する。
【0065】
ショルダー陸部30sに刻まれる横溝34はショルダー横溝34sとも呼ばれる。ショルダー横溝34sはトレッド面20の端TEとショルダー周方向溝28sとの間を繋ぐ。
タイヤ2が路面と接地しても、ショルダー横溝34sの一対の壁面は、互いに接触することはない。
ショルダー陸部30sに構成されるブロック36はショルダーブロック36sとも呼ばれる。複数のショルダー横溝34sはショルダー陸部30sを複数のショルダーブロック36sに区分する。
このタイヤ2のショルダーブロック36sには、先導側のショルダー横溝34sと後続側のショルダー陸部30sとの間を繋ぐ細縦溝36gが刻まれる、細縦溝36gの先導側の端部は、後続側の端部の軸方向内側に位置する。細縦溝36gは周方向に対して傾斜する。
【0066】
図4に示されるように、このタイヤ2のショルダー横溝34sは軸方向に対して傾斜する。ショルダー横溝34sの軸方向外側の端部は、その軸方向内側の端部よりも後続側に位置する。
ショルダー横溝34sは、周方向において隣り合うミドル横溝34mの間に位置する。
トレッド面20の第一端TE1側のショルダー横溝34s(以下、第一ショルダー横溝34s1)は、周方向において隣り合う、第二端TE1側のショルダー横溝34s(以下、第二ショルダー横溝34s2)の間に位置する。
【0067】
本発明においてメイン陸部32を横断する横溝34はメイン横溝38とも呼ばれる。
前述したように、センター陸部30c及びミドル陸部30mはメイン陸部32である。センター陸部30cに刻まれるセンター横溝34c、そしてミドル陸部30mに刻まれるミドル横溝34mはメイン横溝38である。
このトレッド4には複数のメイン陸部32が構成され、各メイン陸部32は、隣り合う周方向溝28間を繋ぐ、複数のメイン横溝38を有する。
【0068】
図4において両矢印WGbで示される長さはメイン横溝38の溝口での溝幅である。メイン横溝38の溝幅WGbは、ショルダー周方向溝28sの溝幅WGaの0.55以上0.75以下である。タイヤ2が路面と接地しても、メイン横溝38の一対の壁面は、互いに接触することはない。
【0069】
本発明においてメイン陸部32に複数のメイン横溝38を刻むことで構成されるブロック36はメインブロック40とも呼ばれる。
センター陸部30cにセンター横溝34cを刻むことで構成されるセンターブロック36c、そしてミドル陸部30mにミドル横溝34mを刻むことで構成されるミドルブロック36mは、メインブロック40である。
メイン陸部32に刻まれる複数のメイン横溝38は、メイン陸部32を、周方向に並ぶ複数のメインブロック40に区分する。
【0070】
前述したように、ショルダー陸部30sはメイン陸部32でない。ショルダー陸部30sに刻まれるショルダー横溝34sはメイン横溝38ではない。ショルダー陸部30sにショルダー横溝34sを刻むことで構成されるショルダーブロック36sは、メインブロック40ではない。
【0071】
図5は
図4の一部を示す拡大展開図である。
図5は、メインブロック40としてのセンターブロック36cを示す。センターブロック36cは、先導側のセンター横溝34c、第二センター周方向溝28c2、後続側のセンター横溝34c及び第一センター周方向溝28c1に囲まれる。
符号CC1で示される位置は、センターブロック36cの第一コーナーである。第一コーナーCC1は、先導側のセンター横溝34cが第一センター周方向溝28c1に合流する部分に構成されるセンターブロック36cのコーナーである。
符号CC2で示される位置は、センターブロック36cの第二コーナーである。第二コーナーCC2は、先導側のセンター横溝34cが第二センター周方向溝28c2に合流する部分に構成されるセンターブロック36cのコーナーである。
符号CC3で示される位置は、センターブロック36cの第三コーナーである。第三コーナーCC3は、後続側のセンター横溝34cが第二センター周方向溝28c2に合流する部分に構成されるセンターブロック36cのコーナーである。
符号CC4で示される位置は、センターブロック36cの第四コーナーである。第四コーナーCC4は、後続側のセンター横溝34cが第一センター周方向溝28c1に合流する部分に構成されるセンターブロック36cのコーナーである。
符号PBcで示される位置は、第一コーナーCC1と第三コーナーCC3とを結ぶ線分と、第二コーナーCC2と第四コーナーCC4とを結ぶ線分との交点である。交点PBcはセンターブロック36cの陸面の基準点である。この基準点PBcは赤道面(より詳細には、赤道PC)に含まれる。
【0072】
図5において両矢印WCで示される長さはセンターブロック36cの軸方向幅である。軸方向幅WCは、基準点PBcを通り軸方向にのびる直線に沿って計測される、センターブロック36cの陸面の軸方向幅で表される。
両矢印LCで示される長さはセンターブロック36cの周方向長さである。周方向長さLCは、基準点PBcを通り周方向にのびる直線に沿って計測される、センターブロック36cの陸面の周方向長さで表される。
前述したように、センターブロック36cはメインブロック40である。メインブロック40の軸方向幅Wmbは、センターブロック36cの軸方向幅WCで表される。メインブロック40の周方向長さLmbは、センターブロック36cの周方向長さLCで表される。センターブロック36cの陸面の基準点PBcは、メインブロック40の陸面の基準点PBである。
【0073】
図6は
図4の一部を示す拡大展開図である。
図6は、メインブロック40としてのミドルブロック36mを示す。ミドルブロック36mは、先導側のミドル横溝34m、センター周方向溝28c、後続側のミドル横溝34m及びショルダー周方向溝28sに囲まれる。
符号MC1で示される位置は、ミドルブロック36mの第一コーナーである。第一コーナーMC1は、先導側のミドル横溝34mがショルダー周方向溝28sに合流する部分に構成されるミドルブロック36mのコーナーである。
符号MC2で示される位置は、ミドルブロック36mの第二コーナーである。第二コーナーMC2は、先導側のミドル横溝34mがセンター周方向溝28cに合流する部分に構成されるミドルブロック36mのコーナーである。
符号MC3で示される位置は、ミドルブロック36mの第三コーナーである。第三コーナーMC3は、後続側のミドル横溝34mがセンター周方向溝28cに合流する部分に構成されるミドルブロック36mのコーナーである。
符号MC4で示される位置は、ミドルブロック36mの第四コーナーである。第四コーナーMC4は、後続側のミドル横溝34mがショルダー周方向溝28sに合流する部分に構成されるミドルブロック36mのコーナーである。
符号PBmで示される位置は、第一コーナーMC1と第三コーナーMC3とを結ぶ線分と、第二コーナーMC2と第四コーナーMC4とを結ぶ線分との交点である。交点PBmは、ミドルブロック36mの陸面の基準点である。
【0074】
図6において両矢印WMで示される長さはミドルブロック36mの軸方向幅である。軸方向幅WMは、基準点PBmを通り軸方向にのびる直線に沿って計測される、ミドルブロック36mの陸面の軸方向幅で表される。
両矢印LMで示される長さはミドルブロック36mの周方向長さである。周方向長さLMは、基準点PBmを通り周方向にのびる直線に沿って計測される、ミドルブロック36mの陸面の周方向長さで表される。
前述したように、ミドルブロック36mもメインブロック40である。メインブロック40の軸方向幅Wmbはミドルブロック36mの軸方向幅WMでも表される。メインブロック40の周方向長さLmbは、ミドルブロック36mの周方向長さLCでも表される。ミドルブロック36mの陸面の基準点PBmも、メインブロック40の陸面の基準点PBである。
【0075】
図7は
図4の一部を示す拡大展開図である。
図7は、ショルダーブロック36sを示す。ショルダーブロック36sは、先導側のショルダー横溝34s、ショルダー周方向溝28s、後続側のショルダー横溝34s及びトレッド面20の端TEに囲まれる。
符号SC1で示される位置は、ショルダーブロック36sの第一コーナーである。第一コーナーSC1は、先導側のショルダー横溝34sがトレッド面20の端TEに合流する部分に構成されるショルダーブロック36sのコーナーである。
符号SC2で示される位置は、ショルダーブロック36sの第二コーナーである。第二コーナーSC2は、先導側のショルダー横溝34sがショルダー周方向溝28sに合流する部分に構成されるショルダーブロック36sのコーナーである。
符号SC3で示される位置は、ショルダーブロック36sの第三コーナーである。第三コーナーSC3は、後続側のショルダー横溝34sがショルダー周方向溝28sに合流する部分に構成されるショルダーブロック36sのコーナーである。
符号SC4で示される位置は、ショルダーブロック36sの第四コーナーである。第四コーナーSC4は、後続側のショルダー横溝34sがトレッド面20の端TEに合流する部分に構成されるショルダーブロック36sのコーナーである。
符号SBで示される位置は、第一コーナーSC1と第三コーナーSC3とを結ぶ線分と、第二コーナーSC2と第四コーナーSC4とを結ぶ線分との交点である。交点SBは、ショルダーブロック36sの陸面の基準点である。
【0076】
図7において両矢印WSで示される長さは、ショルダーブロック36sの陸面の軸方向幅である。ショルダーブロック36sの軸方向幅WSは、基準点SBを通り軸方向にのびる直線に沿って計測される。
両矢印LSで示される長さは、ショルダーブロック36sの陸面の周方向長さである。ショルダーブロック36sの周方向長さLSは、基準点SBを通り周方向にのびる直線に沿って計測される。
ショルダーブロック36sの周方向長さLSの、軸方向長さWSの比(LS/WS)は、0.80以上1.20以下である。
【0077】
前述したように、センターブロック36c及びミドルブロック36mは、メインブロック40である。
このタイヤ2のメインブロック40には、メインブロック40を横断する横断サイプ42が設けられる。メインブロック40は横断サイプ42を有する。
このタイヤ2の横断サイプ42は、センターブロック36cと、ミドルブロック36mとに設けられる。センターブロック36cのみに、横断サイプ42が設けられてもよい。ミドルブロック36mのみに、横断サイプ42が設けられてもよい。つまり、このタイヤ2では、複数のメイン陸部32のうち、少なくとも一のメイン陸部32において、複数のメインブロック40がそれぞれ横断サイプ42を有する。
【0078】
図8は
図5のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図8は、横断サイプ42の長さ方向に対して垂直な平面に沿った、横断サイプ42の断面を示す。
図8に示された横断サイプ42の断面は、センターブロック36cに設けられる横断サイプ42の断面である。
前述したように、ミドルブロック36mにも横断サイプ42は設けられる。ミドルブロック36mの横断サイプ42の断面形状は、センターブロック36cの横断サイプ42のそれと同じである。ミドルブロック36mの横断サイプ42の断面形状に関する説明は省略される。
【0079】
横断サイプ42は、サイプ本体44と管状部46とを有する。サイプ本体44は、横断サイプ42の溝口42Mを含む。管状部46は、サイプ本体44の径方向内側に位置する。管状部46の底面46Bは、横断サイプ42の溝底42Tを含む。管状部46は、横断サイプ42の長さ方向にのびる。管状部46の底面46Bは、横断サイプ42の底面42Bでもある。
【0080】
図5に示されるように、サイプ本体44は横断サイプ42の長さ方向にジグザグにのびる。
図8に示されるように、サイプ本体44は横断サイプ42の深さ方向にジグザグにのびる。サイプ本体44は、その長さ方向及び深さ方向のそれぞれにジグザグにのびる。
図5において符号ALで示される直線は、長さ方向にジグザグにのびるサイプ本体44の振れ幅の中心線である。
図8において符号ADで示される直線は、深さ方向にジグザグにのびるサイプ本体44の振れ幅の中心線である。
本発明においては、長さ方向にジグザグにのびるサイプ本体44の振れ幅の中心線ALと、深さ方向にジグザグにのびるサイプ本体44の振れ幅の中心線ADとを含む平面が、サイプ本体44の平均面ASである。前述の、
図5のVIII-VIII線はこの平均面ASに対して直交する。
【0081】
図8において実線LTはサイプ本体44と管状部46との境界線である。両矢印WTで示される長さは、この境界線LTに沿って計測される横断サイプ42の溝幅である。境界線LTは、溝幅WTが1.0mmとなる位置に設定される。
図8から明らかなように、境界線LTの外側部分、すなわちサイプ本体44の溝幅は、1.0mm未満である。境界線LTの内側部分、すなわち管状部46の溝幅は1.0mm以上である。
溝口42Mにおいて横断サイプ42の溝幅WGcは1.0mm未満である。横断サイプ42の溝幅は、サイプ本体44において1.0mm未満であり、管状部46において1.0mm以上である。管状部46の溝幅はサイプ本体44の溝幅よりも広い。
サイプ本体44のジグザグにのびる部分の溝幅は、溝口42Mにおける溝幅WGcに等しい。
【0082】
管状部46は、境界線LTの位置から内向きにのびる。
図8において両矢印WAで示される長さは、管状部46の最大溝幅である。
図8において符号PAで示される位置は、管状部46が最大溝幅WAを示す位置である。管状部46は、最大溝幅WAを示す部分から外向きに先細りである。管状部46は、最大溝幅WAを示す部分から内向きに先細りである。
【0083】
管状部46の断面形状は、円形であってもよく、楕円形であってもよい。この断面形状が、最大溝幅WAを示す部分が直線で表され、直線部分のサイプ本体44側と溝底側42T側とが円弧で表された形状(以下、この形状はトラック形状とも呼ばれる。)であってもよい。
【0084】
図8において両矢印DGbで示される長さは、横断サイプ42の溝深さである。両矢印DCで示される長さは、サイプ本体44の溝深さである。
このタイヤ2の横断サイプ42は、ショルダー周方向溝28sの溝深さDGaと同程度の溝深さDGbを有する。具体的には、横断サイプ42の溝深さDGbはショルダー周方向溝28sの溝深さDGaの0.95倍以上1.05倍以下である。
サイプ本体44の溝深さDCは、横断サイプ42の溝深さDGbの0.60倍以上0.80倍以下である。
【0085】
タイヤが駆動するとき、タイヤのブロックには、タイヤが駆動する方向、すなわち、周方向に大きな力が作用する。
前述したように、センターブロック36c及びミドルブロック36mは、メインブロック40である。
メインブロック40の陸面の周方向長さLmbは、その軸方向幅Wmbよりも長い。メインブロック40は、周方向に長い、縦長のブロックである。タイヤ2が駆動する方向に力が作用しても、メインブロック40は変形しにくい。メインブロック40は、耐摩耗性の向上や転がり抵抗の低減に貢献できる。
【0086】
ブロックパターンを採用したタイヤでは、クラウン部分の接地圧が高まる傾向にある。しかもブロックパターンを採用したタイヤは、車両のドライブ軸に装着されるケースが多い。ドライブ軸に装着されたタイヤにおいて、そのクラウン部分に設けられるブロックには、ショルダー部分に設けられるブロックに比べて、タイヤが駆動する方向に大きな力が作用する。
【0087】
メイン陸部32である、ミドル陸部30m及びセンター陸部30cは、トレッド面20の端TEを含むショルダー陸部30sよりも軸方向内側に位置する。そのため、メイン陸部32に含まれるメインブロック40には、タイヤ2が駆動することで大きな力が作用することが想定される。
前述したように、メインブロック40は縦長のブロックである。メインブロック40の先導側に作用する力と、後続側に作用する力との間に、差が生じやすい。そのため、メインブロック40には特異な歪みが生じることが懸念される。この場合、メインブロック40の先導側の縁や後続側の縁において摩耗の進行が促される恐れがある。特異な歪みは偏摩耗の発生を促す。
【0088】
しかしこのタイヤ2のメインブロック40には、横断サイプ42が設けられる。横断サイプ42のサイプ本体44が、メインブロック40に生じる特異な歪みを軽減する。このタイヤ2はメインブロック40として縦長のブロックを採用しているにもかかわらず、メインブロック40に偏摩耗は生じにくい。
【0089】
トレッド4は摩耗する。これにより溝は消失していく。溝の消失は、濡れた路面での走行性能(以下、WET性能)を低下させる。
【0090】
しかしこのタイヤ2の横断サイプ42は、サイプ本体44の径方向内側に管状部46を有する。前述したように、管状部46の溝幅はサイプ本体44の溝幅よりも広い。そのため、サイプ本体44が消失すると、管状部46が露出する。この管状部46が横溝として機能する。このタイヤ2は、トレッド4が摩耗しても、良好なWET性能が維持される。
この管状部46は、横断サイプ42の溝底42Tに作用する歪みを効果的に分散させる。管状部46が設けられていない従来サイプに比べて、この横断サイプ42の溝底42Tに歪は集中しにくい。横断サイプ42の溝底42Tにはクラックは発生しにくい。
【0091】
管状部46はメインブロック40の剛性に影響する。横断サイプ42が管状部46を有することで、メインブロック40が想定以上に変形する恐れがある。剛性低下は偏摩耗の発生を促す。このような場合、耐偏摩耗性を向上させるために設けた横断サイプ42が、その機能を十分に発揮できない。
【0092】
しかしこのタイヤ2の横断サイプ42は、前述したように、そのサイプ本体44がその長さ方向及び深さ方向のそれぞれにジグザグにのびるように構成される。サイプ本体44の壁面44Wは、凹凸のある三次元形状を有する。サイプ本体44は、ミウラ折り(三次元)サイプである。言い換えれば、サイプ本体44は、ミウラ折り構造のブレードによって形づけられる。
走行中のタイヤ2において、サイプ本体44の壁面44T同士が接触し、互いに支え合う。壁面44Tが三次元形状を有するので、平面からなる壁面を有するサイプに比べて、壁面44T同士が効果的に支え合う。このサイプ本体44は、見かけ上、メインブロック40の剛性を高める。メインブロック40の変形が抑制される。このタイヤ2は、耐偏摩耗性の更なる向上を図ることができる。
【0093】
前述したように、
図3に示されたトレッド部の断面は、赤道面に沿ったトレッド部の断面である。赤道面は、赤道PCにおいてトレッド面20と直交する。この断面は、赤道PCにおいてトレッド面20と直交する。
センター陸部30cでは、複数のセンターブロック36cが周方向に並ぶ。これらセンターブロック36cの陸面の基準点PBcは周方向に並ぶ。これら基準点PBcを通る、陸面の輪郭線は、周方向にのびる。
前述したように、基準点PBcは赤道面に含まれる。言い換えれば、周方向にのびる赤道PCは基準点PBcを含む。
図3に示されたセンターブロック36cの陸面の輪郭線は、赤道PCに一致する。この
図3に示されたセンターブロック36cの断面は、基準点PBcを通り、周方向にのびる、陸面の輪郭線において、センターブロック36cの陸面と直交する。
【0094】
図3において符号PNで示される位置は、センターブロック36cの陸面の輪郭線と、サイプ本体44の平均面ASとの交点である。
図3に示されたセンターブロック36cの断面において、このタイヤ2のサイプ本体44の平均面ASを表す直線は、交点PNにおいて陸面の輪郭線に対して直交する。この
図3に示された平均面ASを表す直線は、交点PNにおける陸面の法線である。サイプ本体44の平均面ASは、センターブロック36cの陸面の法線を含む。このサイプ本体44の平均面ASは、交点PNにおいて陸面に対して直交する。
【0095】
なお、サイプ本体44の平均面ASを表す直線が、交点PNにおいて陸面の輪郭線に対して直交するとは、平均面ASを表す直線と、交点PNにおける陸面の輪郭線の接線とがなす角度が、89度以上91度以下であることを意味する。
【0096】
図示されないが、ミドルブロック36mに設けられる横断サイプ42のサイプ本体44の平均面ASも、ミドルブロック36mの陸面の法線を含む。
基準点PBmを通り、周方向にのびる、陸面の輪郭線において、ミドルブロック36mの陸面と直交する、ミドルブロック36mの断面における、陸面の輪郭線と、サイプ本体44の平均面ASとの交点において、サイプ本体44の平均面ASを表す直線は、交点PNにおいて陸面の輪郭線に対して直交する。
【0097】
前述したように、センターブロック36c及びミドルブロック36mはメインブロック40である。メインブロック40に設けられる横断サイプ42のサイプ本体44の平均面ASは、メインブロックの陸面の法線を含む。
このタイヤ2では、サイプ本体44の平均面ASは、メインブロック40の陸面に対して略直交する。メインブロックの陸面の法線を含まない場合(言い換えれば、平均面ASが陸面に対して傾斜する場合)に比べて、タイヤ2が路面に接地した際に横断サイプ42の溝底42Tに生じる歪みが小さく抑えられる。このタイヤ2は、横断サイプ42の溝底42Tにクラックが発生することを効果的に抑制できる。このタイヤ2の横断サイプ42の溝底42Tにはクラックは生じにくい。
【0098】
図3に示されるように、センターブロック36cは、周方向に並ぶ2本センター横溝34cの間に挟まれる。メインブロック40は、周方向に並ぶ2本のメイン横溝38の間に挟まれる。メインブロック40の壁面は、メイン横溝38の壁面38Wである。メインブロック40の先導側の壁面38Wは、先導側のメイン横溝38fの後続側の壁面38Wsである。メインブロック40の後続側の壁面38Wは、後続側のメイン横溝38sの先導側の壁面38Wfである。
【0099】
メインブロック40の壁面38Wは径方向に対して傾斜する。先導側の壁面38Wsの傾斜の向きは、後続側の壁面38Wfの傾斜の向きと逆である。先導側の壁面38Wsと後続側の壁面38Wfの間の距離は、メイン横溝38の溝口38Mから溝底38Tに向かって漸増する。
【0100】
壁面38Wの傾斜角度θは、
図3に示された断面において、メイン横溝38のエッジにおける、陸面の接線に対する法線を角度基準線BLとし、この壁面38Wと角度基準線BLとがなす角度で表される。メイン横溝38のエッジに対して丸めや面取り等の処理が施されている場合は、この処理が施されていないと仮定して得られる仮想エッジに基づいて、傾斜角度θが得られる。傾斜角度θは通常、0度以上30度以下の範囲で設定される。
【0101】
タイヤが駆動する際、タイヤのブロックには、タイヤが駆動する方向に大きな力が作用する。ブロックの先導側には後続側に比べて大きな力が作用する。ブロックの先導側において摩耗が進行する恐れがある。
【0102】
しかしこのタイヤ2のメインブロック40においては、
図3に示されるように、先導側の壁面38Wsの傾斜角度θfは、後続側の壁面38Wfの傾斜角度θsよりも大きい。
これにより、メインブロック40の先導側部分の剛性が高められる。メインブロック40の先導側部分は変形しにくい。メインブロック40の先導側において摩耗が進行することが抑制される。このタイヤ2は、耐偏摩耗性の更なる向上を図ることができる。
【0103】
このタイヤ2は、摩耗によるWET性能の低下を抑制しながら、耐偏摩耗性のさらなる向上を図ることができる。
【0104】
前述したように、メインブロック40の陸面の周方向長さLmbは、その軸方向幅Wmbよりも長い。具体的には、周方向長さLmbの、軸方向幅Wmbに対する比(Lmb/Wmb)は1.2以上1.8以下であるのが好ましい。
比(Lmb/Wmb)が1.2以上に設定されることにより、横断サイプ42が刻まれたメインブロック40の剛性が適切に維持される。メインブロック40に力が作用した際の変形が効果的に抑制される。このタイヤ2は耐偏摩耗性を高めることができる。この観点から、比(Lmb/Wmb)は1.3以上であるのがより好ましい。
比(Lmb/Wmb)が1.8以下に設定されることにより、メインブロック40が路面から離れる際の、メインブロック40の後着側部分の滑りが効果的に抑制される。この場合においても、このタイヤ2は耐偏摩耗性を高めることができる。この観点から、比(Lmb/Wmb)は1.7以下であるのがより好ましい。
【0105】
前述したように、メインブロック40において、先導側の壁面38Wsの傾斜角度θfは、後続側の壁面38Wfの傾斜角度θsよりも大きい。具体的には、先導側の壁面38Wsの傾斜角度θfと、後続側の壁面38Wfの傾斜角度θsとの差(θf-θs)は5度以上であるのが好ましい。
これにより、メインブロック40の先導側部分の剛性が効果的に高められる。メインブロック40の先導側において摩耗が進行することが抑制される。横断サイプ42の溝底42Tでのクラックの発生が抑制され、横断サイプ42がその機能を安定に発揮できる。このタイヤ2は、耐偏摩耗性の更なる向上を図ることができる。この観点から、差(θf-θs)は7度以上であるのがより好ましい。
メインブロック40の先導側部分の剛性が適正に維持される観点から、差(θf-θs)は20度以下であるのが好ましい。
【0106】
前述したように、管状部46の溝幅はサイプ本体44の溝幅よりも広い。具体的には、管状部46の最大溝幅WAは、溝口42Mにおけるサイプ本体44の溝幅、言い換えれば、横断サイプ42の溝幅WGcの4倍以上であるのが好ましく、5倍以上であるのがより好ましい。これにより、管状部46がWET性能の維持に貢献できる。この管状部46の最大溝幅WAは、溝口42Mにおける横断サイプ42の溝幅WGcの13倍以下であるのが好ましく、12倍以下であるのがより好ましい。これにより、管状部46の大きさが適切に維持される。メインブロック40の剛性低下が抑制される。
【0107】
前述したように、このタイヤ2のトレッド4は第一トレッドゴム層24と第二トレッドゴム層26とを備える。
図3に示されるように、第一トレッドゴム層24と第二トレッドゴム層26との境界FSは横断サイプ42の溝底42Tの径方向内側に位置する。
横断サイプ42の溝底42Tには歪が集中する傾向にあり、溝底42Tが境界FSに近いと、溝底42Tにおいてクラックが生じることが懸念される。
しかし溝底42Tと第二トレッドゴム層26との間には、第一トレッドゴム層24が位置する。これにより、溝底42Tが境界FSから距離をあけて配置される。このタイヤ2では、溝底42Tにおけるクラックの発生が効果的に抑制される。この観点から、第一トレッドゴム層24と第二トレッドゴム層26との境界FSは、横断サイプ42の溝底42Tの径方向内側に位置するのが好ましい。
【0108】
図3において両矢印T1で示される長さは、横断サイプ42の溝底42Tにおける第一トレッドゴム層24の厚さである。
溝底42Tと第二トレッドゴム層26との間に位置する第一トレッドゴム層24が溝底42Tにおけるクラックの発生を抑制することに貢献できる観点から、溝底42Tにおける第一トレッドゴム層24の厚さT1は1.5mm以上であるのが好ましく、2.5mm以上であるのがより好ましい。トレッド4が摩耗した時に管状部46がWET性能の維持に貢献できる観点から、この厚さT1は10.0mm以下であるのが好ましく、7.5mm以下であるのがより好ましい。
【0109】
このタイヤ2の第一トレッドゴム層24の複素弾性率E*1は、第二トレッドゴム層26の複素弾性率E*2よりも高い。このタイヤ2の第一トレッドゴム層24は第二トレッドゴム層26の剛性よりも高い剛性を有する。
第一トレッドゴム層24はトレッド面20を含む。高い剛性を有する第一トレッドゴム層24は、タイヤ2の耐摩耗性の向上に貢献できる。この第一トレッドゴム層24は、溝底42Tにおけるクラックの発生を抑制することに効果的に貢献できる。この観点から、第一トレッドゴム層24の複素弾性率E*1は第二トレッドゴム層26の複素弾性率E*2よりも高いのが好ましい。具体的には、第一トレッドゴム層24の複素弾性率E*1の、第二トレッドゴム層26の複素弾性率E*2に対する比(E*1/E*2)は1.2以上であるのが好ましく、1.4以上であるのがより好ましい。
第一トレッドゴム層24と第二トレッドゴム層26との剛性差が適切に維持され、境界FSでのクラックの発生が抑制される観点から、この比(E*1/E*2)は2.0以下であるのが好ましく、1.8以下であるのがより好ましい。
【0110】
図3において両矢印Tで示される長さは、横断サイプ42の溝底42Tとベルト6の第四ベルトプライ16Dに含まれるベルトコードとの間に位置するゴム成分の厚さである。このゴム成分は、トレッド4と、ベルト6のトッピングゴムとを含む。この厚さTは、横断サイプ42の溝底42Tにおけるゴム成分の厚さと称される。
【0111】
横断サイプ42の溝底42Tにおける第一トレッドゴム層24の厚さT1の、溝底42Tにおけるゴム成分の厚さTに対する比(T1/T)は、0.3以上0.7以下であるのが好ましい。
比(T1/T)が0.3以上に設定されることにより、溝底42Tと第二トレッドゴム層26との間に位置する第一トレッドゴム層24が溝底42Tにおけるクラックの発生を抑制することに貢献できる。この観点から、比比(T1/T)は0.4以上であるのがより好ましい。
比(T1/T)が0.7以下に設定されることにより、第一トレッドゴム層24と第二トレッドゴム層26との剛性差が適切に維持され、境界FSでのクラックの発生が抑制される。この観点から、比(T1/T)は0.6以下であるのがより好ましい。
【0112】
前述したように、管状部46は、横断サイプ42の溝底42Tを含む、底面46Bを備える。
図8に示された断面において、このタイヤ2の底面46Bの輪郭線は、溝底42Tを通る円弧で表される。
図8の矢印RBは、この円弧の半径である。
【0113】
管状部46の底面46Bの輪郭線を表す円弧の半径RBは、1.5mm以上3.5mm以下であるのが好ましい。
半径RBが1.5mm以上に設定されることにより、溝底42Tにおけるクラックの発生が効果的に抑制される。この観点から、半径RBは2.0mm以上であるのがより好ましい。
半径RBが3.5mm以下に設定されることにより、管状部46をメインブロック40に設けたことによるによるメインブロック40の剛性低下が抑制される。メインブロック40の剛性が適切に維持される。このタイヤ2は耐偏摩耗性の向上を図ることができる。この観点から、半径RBは3.0mm以下であるのがより好ましい。
【0114】
図4に示されるように、メイン陸部32であるセンター陸部30cは赤道面上に位置し、同じくメイン陸部32であるミドル陸部30mは、センター陸部30cの隣に位置する。トレッドに設けられる、メイン陸部32はトレッド部のクラウン部分に構成される。メイン横溝38はメイン陸部32に刻まれる。
このタイヤ2のメイン横溝38は、ショルダー周方向溝28sよりも浅い。浅いメイン横溝38は、クラウン部分の剛性を高める。メインブロック40の変形が抑制される。このタイヤ2は、耐偏摩耗性の向上を図ることができる。メインブロック40に設けた横断サイプ42の溝底42Tでのクラックの発生も抑制される。
【0115】
図3において両矢印DGcで示される長さはメイン横溝38の溝深さである。耐偏摩耗性を向上させ、横断サイプ42の溝底42Tでのクラックの発生を抑制できる観点から、メイン横溝38の溝深さDGcの、ショルダー周方向溝28sの溝深さDGaに対する比(DGc/DGa)は0.60以下であるのが好ましく、0.45以下であるのがより好ましい。メイン横溝38がWET性能の維持に貢献できる観点から、比(DGc/DGa)は0.30以上であるのが好ましい。
【0116】
タイヤ2が新品状態であるとき、トレッド4のメイン陸部32の陸面には、メイン横溝38と、横断サイプ42のサイプ本体44が存在する。
タイヤ2が路面を走行することで、トレッド4は摩耗する。メイン横溝38とサイプ本体44とはやがて消失する。
図3に示されるように、横断サイプ42の管状部46はサイプ本体44の径方向内側に位置する。この管状部46は、メイン横溝38の溝底38Tの径方向内側に位置する。そのため、メイン横溝38とサイプ本体44とが消失しても、管状部46が露出する。管状部46の溝幅はサイプ本体44の溝幅よりも広いので、管状部46が横溝として機能する。前述したように、横断サイプ42は、ショルダー周方向溝28sの溝深さDGaと同程度の溝深さDGbを有する。新品状態から、周方向溝28が消失し、交換が必要な摩耗の末期状態になるまで、略軸方向にのびる横溝に対応する溝成分の露出状態が維持される。このタイヤ2は、摩耗によるWET性能の低下を抑制できる。この観点から、横断サイプ42の管状部46はメイン横溝38の溝底38Tの径方向内側に位置するのが好ましい。
【0117】
図4において両矢印WGdで示される長さは、センター周方向溝28cの溝口での溝幅である。このタイヤ2では、センター周方向溝28cの溝幅WGdの、トレッド面20の幅TWに対する比率(WGd/TW)は2.0%以下である。センター周方向溝28cの溝幅WGdは、ショルダー周方向溝28sの溝幅WGaよりも狭い。
図4に示されるように、センター周方向溝28cは隣り合うメイン陸部32の間に位置する。
【0118】
本発明において隣り合うメイン陸部32の間に位置する周方向溝28は、周方向細溝48とも呼ばれる。センター周方向溝28cは周方向細溝48である。
このタイヤ2のトレッド4に設けられる複数の周方向溝28は、隣り合うメイン陸部32の間に位置する周方向細溝48を含む。
【0119】
図9は、
図4のIX-IX線に沿った、周方向細溝48の断面図である。
図9は、周方向細溝48の長さ方向に対して垂直な平面に沿った、周方向細溝48の断面を示す。
【0120】
このタイヤ2の周方向細溝48は、テーパー部50と胴部52と拡大幅部54とを備える。テーパー部50は、周方向細溝48の溝口48Mを含む。テーパー部50は溝口48Mから内側に向かって先細りである。
図9に示されたテーパー部50において壁面48Wの輪郭は直線で表される。この輪郭が曲線で表されてもよい。
胴部52は、テーパー部50の径方向内側に位置する。胴部52はテーパー部50に連なる。胴部52はストレートにのびる。胴部52において壁面48Wの輪郭は直線で表される。
拡大幅部54は、胴部52の径方向内側に位置する。拡大幅部54は胴部52に連なる。拡大幅部54は胴部52の溝幅よりも広い溝幅を有する。拡大幅部54は、周方向細溝48の溝底48Tを含む。
【0121】
図9において符号PUで示される位置は、テーパー部50と胴部52との境界である。境界PUは、テーパー部50の壁面輪郭線と胴部52の壁面輪郭線との交点で表される。
図9に示されるように、テーパー部50と胴部52との境界部分が丸められている場合は、境界PUは、テーパー部50の壁面輪郭線の延長線と胴部52の壁面輪郭線の延長線との交点で表される。
図9において符号PSで示される位置は、胴部52と拡大幅部54との境界である。
図9において両矢印WDで示される長さは、胴部52の溝幅である。胴部52から拡大幅部54にかけての溝幅において、胴部52の溝幅WDの1.1倍の溝幅を示す位置が、胴部52と拡大幅部54との境界PSとして表される。
【0122】
図9において両矢印WHで示される長さは、拡大幅部54の最大幅である。符号PHで示される位置は、拡大幅部54が最大幅WHを示す位置である。
拡大幅部54は、最大幅WHを示す部分から外向きに先細りである。最大幅位置PHから境界PSまでの部分において拡大幅部54は、その外側から内向きに窪むように湾曲する。
拡大幅部54は、最大幅WHを示す部分から内向きに先細りである。最大幅位置PHから溝底48Tまでの部分において拡大幅部54は、丸みを帯びた輪郭を有する。この部分において拡大幅部54は、その内側から外向きに膨らむように湾曲する。
拡大幅部54において、その外側から内向きに窪むように湾曲する部分と、その内側から外向きに膨らむように湾曲する部分との境界は、最大幅位置PMの径方向外側に位置する。
【0123】
このタイヤ2の周方向細溝48の胴部52は、ショルダー周方向溝28sの溝口での溝幅WGaよりも狭い溝幅WDを有する。この周方向細溝48においては、タイヤ2が路面と接地すると、この胴部52において、一対の壁面48Wが互いに接触する。周方向細溝48を挟んで隣り合うメインブロック40同士が互いに支え合う。前述したように、メインブロック40を含むメイン陸部32は、トレッド部のクラウン部分に構成される。隣り合うメインブロック40同士が互いに支え合うことで、見かけ上、クラウン部分の剛性が高まり、クラウン部分の変形が抑制される。このタイヤ2は、クラウン部分における摩耗の発生を効果的に抑制できる。このタイヤ2は耐偏摩耗性の向上を図ることができる。
この観点から、周方向細溝48の胴部52の溝幅WDの、ショルダー周方向溝28sの溝口での溝幅WGaに対する比(WD/WGa)は、0.35以下であるのが好ましく、0.20以下であるのがより好ましい。
周方向細溝48が排水に貢献でき、タイヤ2が良好なWET性能を維持できる観点から、比(WD/WGa)は0.01以上であるのが好ましく、0.05以上であるのがより好ましい。
【0124】
図10及び11は、周方向細溝48の変形例を示す。WET性能の低下を抑制しながら、耐偏摩耗性のさらなる向上を図ることができるのであれば、
図10に示されるように、周方向細溝48が胴部52のみで構成されてもよい。
図11に示されるように、この周方向細溝48にテーパー部50を設けることなく、この周方向細溝48が胴部52及び拡大幅部54で構成されてもよい。
【0125】
前述したように、拡大幅部54は胴部52の径方向内側に位置し、胴部52の溝幅よりも広い溝幅を有する。そのため、トレッド4が摩耗することで胴部52が消失すると、拡大幅部54が露出する。広い溝幅を有する拡大幅部54がWET性能の維持に貢献する。このタイヤ2は、トレッド4が摩耗しても、良好なWET性能が維持される。この観点から、周方向細溝48は、
図9及び11に示されるように、胴部52の溝幅よりも広い溝幅を有する拡大幅部54を有するのが好ましい。
WET性能の維持の観点から、周方向細溝48において、拡大幅部54の最大幅WHは、胴部52の溝幅WDの2倍以上であるのが好ましく、3倍以上であるのがより好ましい。周方向細溝48はクラウン部分に設けられる。クラウン部分の剛性への影響が抑えられ、タイヤ2が良好な耐偏摩耗性を維持できる観点から、拡大幅部54の最大幅WHは、胴部52の溝幅WDの8倍以下であるのが好ましく、7倍以下であるのがより好ましい。
【0126】
前述したように、テーパー部50は周方向細溝48の溝口48Mを含み、溝口48Mから内側に向かって先細りである。このテーパー部50に胴部52が連なる。テーパー部50は、周方向細溝48の溝容積を増加させる。テーパー部50は排水性を向上させる。テーパー部50は、メインブロック40のエッジへの歪みの集中を抑制する。テーパー部50は、WET性能及び耐偏摩耗性の向上に貢献できる。この観点から、
図9に示されるように、周方向細溝48は、溝口48Tを含み、径方向内側に向かって先細りである、テーパー部50を有するのが好ましい。
【0127】
図9において両矢印DGdで示される長さは周方向細溝48の溝深さである。この溝深さDGdは、前述のショルダー周方向溝28sの溝深さDGaと同じである。両矢印DSで示される長さは、テーパー部50及び胴部52からなる部分(以下、細溝本体48mとも呼ばれる。)の溝深さである。細溝本体48mの溝深さDSは、溝口48Mから胴部52と拡大幅部54との境界PSまでの径方向距離で表される。両矢印DUで示される長さは、テーパー部50の溝深さである。テーパー部50の溝深さDUは、溝口48Mから、テーパー部50と胴部52との境界PUまでの径方向距離で表される。テーパー部50及び胴部52からなる部分は、細溝本体48mとも呼ばれる。
【0128】
タイヤ2が、周方向細溝48の溝容積を確保しながら、メインブロック40のエッジへの歪の集中を効果的に抑制できる観点から、テーパー部50の溝深さDUの、周方向細溝48の溝深さDGdに対する比(DU/DGd)は、0.10以上0.20以下であるのが好ましい。
【0129】
このタイヤ2の周方向細溝48の細溝本体48mの溝深さDSは、メイン横溝38の溝深さDGcよりも浅い。周方向細溝48の拡大幅部54の溝幅は、細溝本体48mと拡大幅部54との境界PSから径方向内向きに漸増する。メイン横溝38が消失してから横断サイプ42の管状部46が露出するまでの間に、周方向細溝48が胴部52から拡大幅部54に移行することで、この間におけるメインブロック40の剛性に急な変化が生じることが抑制される。このタイヤ2は良好な耐偏摩耗性を維持できる。拡大幅部54が、WET性能の維持に効果的に貢献できる。この観点から、周方向細溝48の細溝本体48mの溝深さDSは、メイン横溝38の溝深さDGcよりも浅い、言い換えれば、胴部52と拡大幅部54との境界PSは、メイン横溝38の溝底38Tよりも径方向外側に位置するのが好ましい。
【0130】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、摩耗によるWET性能の低下を抑制しながら、耐偏摩耗性のさらなる向上を図ることができる、重荷重用タイヤが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
以上説明された、摩耗によるWET性能の低下を抑制しながら、耐偏摩耗性のさらなる向上を図ることができる技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0132】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
20・・・トレッド面
28・・・周方向溝
30・・・陸部
32・・・メイン陸部
38・・・メイン横溝
40・・・メインブロック
42・・・横断サイプ
44・・・サイプ本体
46・・・管状部
48・・・周方向細溝
50・・・テーパー部
52・・・胴部
54・・・拡大幅部