(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147923
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/37 20180101AFI20241009BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20241009BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20241009BHJP
F24F 120/10 20180101ALN20241009BHJP
【FI】
F24F11/37
F24F11/64
F24F11/70
F24F120:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060670
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】范 芸青
(72)【発明者】
【氏名】堀江 勇人
(72)【発明者】
【氏名】赤木 智
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB03
3L260BA02
3L260BA74
3L260CA03
3L260CA12
3L260EA07
3L260FA16
(57)【要約】
【課題】全ての室内ユニットが同時にサーモオフになることを回避し、空調運転中に圧縮機が停止することが無いようにするとともに、過剰な空調能力が発揮されることで室温が設定温度から大きく外れることがない空気調和システムを得る。
【解決手段】複数の室内ユニット2の各々を、室内温度が設定温度になるように、空調能力を発揮するサーモオンと空調能力を発揮しないサーモオフとを切り替えて空調運転を行うように制御し、複数の室内ユニット2の全てがサーモオフとなる条件を満たした場合に、予め定められた終了条件を満たすまで、所定の条件で順位付けされた室内ユニット順位表に基づいて選択された室内ユニット2を強制的にサーモオンさせる制御装置4を備えた。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機を備えた室外ユニットと、
前記室外ユニットに接続される複数の室内ユニットと、
前記複数の室内ユニットの各々を、制御対象である室内温度と制御目標値である設定温度との温度差に基づいて、空調能力を発揮するサーモオンと空調能力を発揮しないサーモオフとを切り替えて空調運転を行うように制御し、
前記複数の室内ユニットの全てがサーモオフとなる条件を満たした場合に、予め定められた終了条件を満たすまで、所定の条件で順位付けされた室内ユニットの順位に基づいて選択された室内ユニットを強制的にサーモオンさせる制御装置と、
を備えた空気調和システム。
【請求項2】
前記予め定められた終了条件は、前記強制的にサーモオンさせた室内ユニットではない室内ユニットのいずれかがサーモオンとなることである、
請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記予め定められた終了条件は、前記強制的にサーモオンさせた室内ユニットがサーモオンを継続している時間が所定時間を超えることである、
請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記予め定められた終了条件は、前記強制的にサーモオンさせた室内ユニットが設けられた空調エリアの室内温度が、予め決められた温度制御範囲を外れることである、
請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記室内ユニットの順位は、前記複数の室内ユニット各々について、当該室内ユニット以外の室内ユニットが全てサーモオフであり、当該室内ユニットだけがサーモオンとなっている運転時間の積算値が小さい順に順位付けされている、
請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項6】
前記室内ユニットの順位は、前記複数の室内ユニット各々について、サーモオフからサーモオンに切り替える室内温度条件と、現在の室内温度との差が小さい順に順位付けされている、
請求項1に記載の空気調和システム。
【請求項7】
前記複数の室内ユニットは、各々が設けられた空調エリアに在室者がいるかどうかを検知する人感センサを備え、
前記室内ユニットの順位は、前記人感センサによって検知される在室者がいない場合に、当該空調エリアに設けられた室内ユニットを最上位に順位付けする、
請求項5~6のいずれか1項に記載の空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、室外ユニットに複数台の室内ユニットが接続される空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、室外ユニットに複数の室内ユニットが並列に接続され、室内ユニットの各々が、担当する空調エリアの空気温度調整を行う空気調和システムが知られている。このような空気調和システムは、室内ユニット各々の空調能力を独立に調整することが難しいため、担当する空調エリアの空調負荷に合わせて、室内ユニット各々が運転と停止とを周期的に繰り返す運転を行う。
【0003】
具体的には、例えば複数の室内ユニットが冷房要求を受けて冷房運転を行っている際に、特定の室内ユニットの室内空気温度が制御目標値である設定温度より所定温度(例えば1℃)だけ下回ると、その室内ユニットは冷房運転を停止する。この動作は、サーモオフと称される。すると、その室内ユニットが担当する空調エリアは、発生している空調負荷によって徐々に空気温度を上昇させ、やがて設定温度を上回る。そして、その室内ユニットの吸込み空気温度が設定温度よりも所定温度(例えば1℃)だけ高くなると、その室内ユニットは再び冷房運転を開始する。この動作は、サーモオンと称される。このような空調動作により、室内空気温度(以降、室温)は、設定温度+1℃から設定温度-1℃の間に調整される。全ての室内ユニットは、それぞれ独立にこのような空調動作を実施している。
【0004】
このような空気調和システムにおいて、全ての室内ユニットが同時にサーモオフになると、室外ユニットが圧縮機を停止させる。また、全ての室内ユニットがサーモオフであって圧縮機が停止した状態において、複数の室内ユニットのうちの1台がサーモオンになると、室外ユニットは再び圧縮機を起動させる。
【0005】
上記のような圧縮機の停止および起動(以降、圧縮機発停)が頻繁に発生すると、冷媒回路内の冷媒量分布および冷媒圧力分布を安定させることができないため、空調能力が十分に発揮されず、運転効率が低下するという問題が発生する。
【0006】
このような問題を回避するため、複数の室内ユニットのうち、1台のみがサーモオンである場合、その1台がサーモオフ条件を満たしてもサーモオフとしないようにすることで圧縮機の運転を継続させる方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、先行技術文献に記載の技術では、強制的にサーモオンを継続する時間に制限時間が設定されているので、圧縮機を停止せざるを得ない状況が発生する。また、過剰な空調能力によって室温が設定温度を大きく外れてしまうことを防止するために圧縮機が停止してしまう状況が発生する。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、全ての室内ユニットが同時にサーモオフになることを回避し、空調運転中に圧縮機が停止することが無いようにするとともに、過剰な空調能力が発揮されることで室温が設定温度から大きく外れることがない空気調和システムを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、この発明に係る空気調和システムは、圧縮機を備えた室外ユニットと、前記室外ユニットに接続される複数の室内ユニットと、前記複数の室内ユニットの各々を、制御対象である室内温度と制御目標値である設定温度との温度差に基づいて、空調能力を発揮するサーモオンと空調能力を発揮しないサーモオフとを切り替えて空調運転を行うように制御し、前記複数の室内ユニットの全てがサーモオフとなる条件を満たした場合に、予め定められた終了条件を満たすまで、所定の条件で順位付けされた室内ユニットの順位に基づいて選択された室内ユニットを強制的にサーモオンさせる制御装置と、を備えた。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る空気調和システムは、複数の室内ユニットの全てがサーモオフとなる条件を満たした場合に、所定の条件で順位付けされた室内ユニットを強制的にサーモオンとすることで、圧縮機を停止させることなく空調運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る空気調和システムの全体構成図である。
【
図2】実施の形態1に係る空気調和システムの制御信号の流れを示すブロック図である。
【
図3】室内ユニットのサーモ制御状態および圧縮機の運転停止状態を示すタイムチャートの一例である。
【
図4】室内ユニットのサーモ制御状態および圧縮機の運転停止状態を示すタイムチャートの別の一例である。
【
図5】実施の形態1におけるサーモ制御動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態1のサーモ制御における強制運転モードのフローチャートの一例である。
【
図7】実施の形態1の強制運転モードにおける強制サーモオンに設定する室内ユニット順位表である。
【
図8】実施の形態1におけるサーモ制御動作の一例を示すタイムチャートである。
【
図9】実施の形態1における強制運転モードの第1の変形例のフローチャートである。
【
図10】実施の形態1における強制運転モードの第2の変形例のフローチャートである。
【
図11】実施の形態1における室内ユニット順位表の第1の変形例を示す表である。
【
図12】実施の形態1における室内ユニット順位表の第2の変形例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の実施の形態に係る空気調和システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、ここで説明する実施の形態により、この発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る空気調和システム100の全体構成図である。
図1に示すように、空気調和システム100は、室外ユニット1と、4台の室内ユニット2a~2dが接続配管である液管5、ガス管6によって接続されて1つの冷媒回路を形成している。この冷媒回路には、HFC冷媒であるR32冷媒が封入されている。
【0015】
室外ユニット1は、圧縮機11、四方切替弁12、室外熱交換器13、室外ファン14を備えている。室外ファン14は、例えば軸流型の送風機であり、室外熱交換器13を流通する冷媒と室外空気との熱交換量を調整する働きを有している。圧縮機11は、吸入側に低圧センサ15、吐出側に高圧センサ16を備えており、冷媒回路内に形成される凝縮圧力および蒸発圧力を検知できるようになっている。
【0016】
室内ユニット2a~2dは、それぞれ一端が液管5に接続され、他端がガス管6に接続されている。室内ユニット2(2a~2d)は、内部に膨張弁21(21a~21d)、室内熱交換器22(22a~22d)、室内ファン23(23a~23d)を備えている。また、室内ユニット2(2a~2d)は、温度検知手段として、室温センサ24(24a~24d)、ガス側冷媒温度センサ25(25a~25d)、液側冷媒温度センサ26(26a~26d)を備えている。
【0017】
また、室内ユニット2(2a~2d)は、それぞれリモコン3(3a~3d)を備えている。リモコン3a~3dは、それぞれ対応する室内ユニット2a~2dの運転、停止、設定温度などのユーザ要求を受け付けられるようになっている。さらに、リモコン3は、対応する室内ユニット2の膨張弁21の開度情報、室内ファン23の風量情報、および室温センサ24,ガス側冷媒温度センサ25,液側冷媒温度センサ26で検知された温度情報を逐次取得している。
【0018】
制御装置4は、通信線7によって室外ユニット1およびリモコン3a~3dから空気調和システム100の現在の運転情報を取得し、室外ユニット1および室内ユニット2a~2dに制御指示を行う。
図2は、空気調和システム100の制御信号の流れを示すブロック図である。
【0019】
図2に示すように、制御装置4は、高圧センサ16から凝縮圧力、低圧センサ15から蒸発圧力を取得する。また、制御装置4は、室内ユニット2に備えられた室温センサ24、ガス側冷媒温度センサ25、および液側冷媒温度センサ26で検知される温度情報を取得する。また、制御装置4は、リモコン3から対応する室内ユニット2の設定温度、運転しているか停止しているか、などの運転情報を取得する。
【0020】
制御装置4は、室内ユニット2から取得した現在の運転状態に基づいて、制御信号を生成する。制御装置4は、圧縮機11および室外ファン14に対しては回転数の指示を行う。また、制御装置4は、四方切替弁12に対して、冷房運転あるいは暖房運転のいずれかに冷媒回路を設定するよう指示を行う。また、制御装置4は、室内ユニット2に対して、室内ファン22の回転数、膨張弁21に開度を指示する。
【0021】
<冷房運転動作>
続いて、空気調和システム100の冷房運転動作について説明する。リモコン3a~3dから空気調和システム10に冷房運転要求がなされると、制御装置4は、四方切替弁12を冷房運転状態にセットし、圧縮機11および室外ファン14の運転を開始する。また、室内ユニット2a~2dは、リモコン3a~3dから得られる設定温度と室温センサ24a~24dから取得する室温とを比較し、室温が設定温度より高い室内ユニット2の運転を開始する。運転を開始する室内ユニット2は、膨張弁21を起動開度にするとともに、室内ファン23を起動する。
【0022】
圧縮機11から吐出された高温高圧のガス冷媒は、四方切替弁12を経由して室外熱交換器13に流入する。このガス冷媒は、室外熱交換器13で外気に放熱して凝縮し、高圧液冷媒となる。この高圧液冷媒は、室外ユニット1を流出し、液管5を通って運転中の室内ユニット2に流入する。
【0023】
室内ユニット2では、流入した高圧液冷媒が膨張弁21によって減圧され、低圧二相冷媒となる。この低圧二相冷媒は、室内熱交換器22で室内ファン23から送られた室内空気と熱交換を行い、蒸発して低圧ガス冷媒となる。一方、この低圧二相冷媒と熱交換を行い、冷却された室内空気は室内ファン23によって再び室内に送風される。また、膨張弁21は、ガス側冷媒温度センサ25で検知される冷媒の温度が、低圧センサ15で検知された冷媒圧力の飽和温度より2~5K程度高くなるように開度が調整されている。すなわち、膨張弁21は冷房運転時に過熱度一定制御を行う。
【0024】
室内ユニット2から流出する低圧ガス冷媒は、ガス管6を通って室外ユニット1に流入し、四方切替弁12を経由して再び圧縮機11に吸入される。この一連の冷凍サイクル動作によって、室内が冷却され、室内温度を設定温度に近づけることができる。
【0025】
<暖房運転動作>
リモコン3a~3dに暖房運転要求がなされると、制御装置4は、四方切替弁12を暖房運転状態にセットし、圧縮機11および室外ファン14の運転を開始する。また、室内ユニット2a~2dは、リモコン3a~3dから得られる設定温度と室温センサ24a~24dから取得する室温とを比較し、室温が設定温度より低い室内ユニット2の運転を開始する。運転を開始する室内ユニット2は、膨張弁21を起動開度にするとともに、室内ファン23を起動する。
【0026】
圧縮機11から吐出された高温高圧のガス冷媒は、四方切替弁12を経由して室外ユニット1を流出し、ガス管6を通って室内ユニット2に流入する。この高温のガス冷媒は、室内熱交換器22で室内空気に放熱して凝縮し、高圧液冷媒となる。この高圧液冷媒は、膨張弁21によって減圧された後、低圧二相冷媒となって室内ユニット2を流出する。このとき、膨張弁21は、液側冷媒温度センサ26で検知される高圧液冷媒の温度を、高圧センサ16で検知される圧力の飽和温度より10K程度低くなるように開度が制御される。すなわち、過冷却度一定制御を行う。また、室内熱交換器22で冷媒と熱交換した室内空気は、高温空気となって室内に吹き出される。
【0027】
室内ユニット2を流出した低圧二相冷媒は、液管5を通って室外ユニット1に流入し、室外熱交換器13に送られる。室外熱交換器13に流入した低圧二相冷媒は、室外ファン14から送風される外気から吸熱して蒸発し、低圧ガス冷媒となって再び圧縮機11に吸入される。この一連の冷凍サイクル動作によって、室内が加熱され、室内温度を設定温度に近づけることができる。
【0028】
<空調能力制御>
上述した空気調和システム100の冷房運転および暖房運転において、圧縮機11の運転容量、すなわち圧縮機11を駆動するモータの回転数は、室内熱交換器22を流通する冷媒の圧力が所定値になるように制御されている。
【0029】
具体的には、制御装置4は、冷房運転においては低圧センサ15で検知される冷媒圧力の飽和温度が5℃となるように、暖房運転においては高圧センサ16で検知される冷媒圧力の飽和温度が45℃となるように圧縮機11を駆動するモータの回転数を制御する。
【0030】
この圧縮機11の運転容量制御と、上述した膨張弁21の冷房運転時の過熱度一定制御あるいは暖房運転時の過冷却度一定制御により、室内ユニット2は、所定の空調能力を発揮するようになっている。
【0031】
室内ユニット2が運転中に発揮する所定の空調能力は、当該室内ユニット2が設置される空調エリアに発生するであろう最大の空調負荷よりも大きいものとなっている。よって、室内ユニット2が冷房運転中は室内温度が低下し、室内ユニット2が運転を停止すると冷房負荷によって室内温度が上昇する。また、室内ユニット2が暖房運転中は室内温度が上昇し、室内ユニット2が運転を停止すると暖房負荷によって室内温度が低下する。
【0032】
上述のような室内温度挙動から、例えば室内ユニット2が設定温度26℃で冷房運転中に、室温センサ24で検知される室内温度が25℃以下となったらサーモオフとなり、サーモオフ中に室内温度が27℃以上となったらサーモオンとする。このサーモオンオフ動作によって、室内温度は25℃~27℃の間に制御することができる。
【0033】
また、設定温度20℃での暖房運転の場合には、室内温度が21℃以上でサーモオフ、室内温度が19℃以下となったらサーモオンとする制御動作により、室温温度は19℃~21℃の間に制御することができる。冷房運転中の室内温度≦設定温度-1℃、および暖房運転中の室内温度≧設定温度+1℃をサーモオフ条件、冷房サーモオフ中の室内温度≧設定温度+1℃、および暖房サーモオフ中の室内温度≦設定温度-1℃をサーモオン条件と称する。本実施の形態1における設定温度プラスマイナス1℃の室温制御幅は、これに限定されるものではなく、プラスマイナス0.5℃としてもよいし、プラスマイナス0.2℃としてもよい。
【0034】
図3は、室内ユニット2のサーモ制御状態および圧縮機11の運転停止状態を示すタイムチャートの一例である。時刻T0で室内ユニット2a~2dが一斉に空調運転を開始した後、時刻T1で4台の室内ユニット2が同時にサーモオフとなり、圧縮機11が停止している。また、時刻T2で室内ユニット2aがサーモオンとなって圧縮機11がオンとなるが、時刻T3で再びオフとなる状況を示している。室内ユニット運転時間に占めるサーモオン時間の比率である室内ユニット稼働率は、室内ユニット2a~2d全てで50%程度であるが、圧縮機11が頻繁にオフとなる一例である。これは、室内ユニット同士でサーモオンオフの位相がほぼ一致しているために発生する現象であり、望ましくない動作状態である。
【0035】
図4は、室内ユニット2のサーモ制御状態および圧縮機11の運転停止状態を示すタイムチャートの別の一例である。
図4においては、時刻T0で室内ユニット2dがサーモオンとなって圧縮機11が運転を開始した後、室内ユニット2a~2dの室内ユニット稼働率はいずれも30%程度であるが、圧縮機11は停止することなく運転を継続している。このように、
図4においては、室内ユニット同士のサーモオンオフの位相が食い違っているために、圧縮機11を停止させることなく室内ユニット2a~2dそれぞれの室内温度を室温制御幅内に制御されている。この動作状態は、圧縮機11が停止することなく空調運転が継続されるという好ましいものである。
【0036】
本実施の形態の空気調和システム100は、上述の
図4に示した好ましい動作状態を作り出すためのサーモ制御を行う。具体的には、少なくとも1台の室内ユニット2を常にサーモオンとすることで、圧縮機11を停止させずに空調運転を行う。本実施の形態のサーモ制御について以下に説明する。
【0037】
図5は、実施の形態1におけるサーモ制御動作を示すフローチャートである。空気調和システム100が空調運転を開始すると、制御装置4は、室内ユニット2a~2dから運転状態を取得して、サーモ制御を開始する。
【0038】
まず、制御装置4は、ステップS11において、室内ユニット2a~2dそれぞれがサーモオン状態であるかを判定する。サーモオンでない状態、すなわちサーモオフとなっている室内ユニットは、ステップS12に移行し、現在の運転情報に基づいて、サーモオン条件を満たしているかを判定する。ステップS12でサーモオン条件を満たしていると判定されると、ステップS13移行し、窓外室内ユニットをサーモオンに切り替える。ステップS12でサーモオン条件を満たしていないと判定されると、次のサーモ制御まで現在の運転状態であるサーモオフを維持する。
【0039】
ステップS11でサーモオンと判定された室内ユニットは、ステップS14に移行し、現在の運転情報に基づいてサーモオフ条件を満たしているかを判定する。サーモオフ条件を満たしていない室内ユニットは、サーモオン状態を維持して次のサーモ制御を待つ。一方、サーモオフ条件を満たした室内ユニットは、ステップS15に移行し、当該室内ユニット以外の全ての室内ユニットがサーモオフであるかどうかを確認する。
【0040】
ステップS15において、当該室内ユニットの他にサーモオンの室内ユニットが存在する場合には、ステップ16に移行し、当該室内ユニットをサーモオフする。また、当該室内ユニットだけがサーモオンであり、他の全ての室内ユニットがサーモオフの場合にはステップS17の強制運転モードに移行する。
【0041】
図6は、実施の形態1のサーモ制御における強制運転モードのフローチャートの一例である。
図7は、実施の形態1の強制運転モードにおける強制サーモオンに設定する室内ユニット順位表である。以下に、
図6、
図7を参照して強制運転モードの制御動作について説明する。
【0042】
図6に示すように、強制運転モードが開始されると、制御装置4は、ステップS21において、
図7に示す室内ユニット順位表の最上位の室内ユニットをサーモオンにする。室内ユニット順位表は、当該室内ユニットのみがサーモオンであった状態の積算時間t1が小さい順に並べられている。室外ユニット1が運転を開始し、室内ユニット2a~2dが一斉に運転を開始するタイミングでは全ての室内ユニット2の時間t1はゼロであるが、室内ユニット2の各々がサーモオンとサーモオフを繰り返す状況で時間t1は変化する。この時間t1の値に応じて時々刻々室内ユニット2の順位が入れ替わるようになっている。
【0043】
制御装置4は、ステップS21で室内ユニット順位表の最上位をサーモオンした後、ステップS22に移行し、1台だけサーモオンであり、サーモオフ条件を満たしていた室内ユニット2をサーモオフする。このとき、サーモオンとなっているのは、ステップS21で強制的にサーモオンとした室内ユニット2である。
【0044】
続いて制御装置4は、ステップS23において、現在サーモオフしている室内ユニット2のいずれかがサーモオン条件を満たすまでこのサーモ制御状態を維持する。その後、ステップS23でサーモオン条件を満たした室内ユニット2が現れたとき、ステップ24に移行し、当該室内ユニット2をサーモオンする。続いて制御装置4は、ステップS25において、ステップS21で強制的にサーモオンとした室内ユニット2をサーモオフして強制運転モードを終了する。すなわち、強制運転モードの終了条件は、ステップS23でいずれかの室内ユニット2がサーモオン条件を満たすことである。
【0045】
図5に示すサーモ制御および
図6に示す強制運転モードにより、複数の室内ユニット2の全てが同時にサーモオフとなることがなく、空調運転中に圧縮機11が停止することがない。この一連の制御動作の一例を
図8に示す。
【0046】
図8は、本実施の形態におけるサーモ制御動作の一例を示すタイムチャートである。
図8に示すように、本実施の形態における空気調和システム100は、室内ユニット2a~2dまで4台の室内ユニットが1台の室外ユニット1に接続されている。
【0047】
図8において、時刻T0で室内ユニット2a~2dが空調運転要求を受けて運転を開始する。例えば冷房運転の場合、運転を開始した後、それぞれの室内ユニット2が設置された空調エリアの室内温度は徐々に低下し、サーモオフ条件を満たした室内ユニット2から順次サーモオフとなる。
図8においては、まず室内ユニット2c、その後に室内ユニット2a、その後に時刻T11で室内ユニット2bがサーモオフとなっている。時刻T11の後は、室内ユニット2dのみがサーモオンとなっているため、室内ユニット2dがサーモオフ条件を満たす時刻T12まで室内ユニット2dの時間t1が積算される。
【0048】
時刻T12では、室内ユニット2dのサーモ制御により強制運転モードへと移行する。強制運転モードでは、室内ユニット順位表の最上位である室内ユニット2aが強制的にサーモオンとなり、その後室内ユニット2dがサーモオフとなる。
【0049】
室内ユニット2aが強制的にサーモオンされた後、室内ユニット2cがサーモオン条件を満たすT13まで室内ユニット2aの時間t1が積算される。時刻T13では、室内ユニット2cがサーモオンとなり、室内ユニット2aをサーモオフとして強制運転モードが終了する。
【0050】
時刻T14から時刻T16までの制御動作は、時刻T11から時刻T13における制御動作と同じである。時刻T14において、室内ユニット2dがサーモオフとなった後、時刻T15まで室内ユニット2aのみがサーモオンとなっており、室内ユニット2aの時間t1が積算される。
【0051】
時刻T15で室内ユニット2aがサーモオフ条件を満たすと、強制運転モードに移行し、室内ユニット順位表の最上位である室内ユニット2bが強制的にサーモオンとなる。室内ユニット2aはサーモオフされ、室内ユニット2bの時間t1が時刻T16まで積算される。時刻T16で室内ユニット2cがサーモオン条件を満たすと、室内ユニット2bがサーモオフされて強制運転モードを終了する。
【0052】
強制運転モードになると、室内温度がサーモオフ条件を超えてしまう可能性があるため、強制運転モードは、室内環境を快適に維持するためには避けるべき状況である。すなわち、強制運転モードに移行する状況が発生しにくくすることが重要である。
【0053】
この一連のサーモ制御では、まず時刻T12での強制運転モード開始によって、室内ユニット2dと室内ユニット2aのサーモオンオフの位相が反転する。続いて、時刻T13での強制運転モード終了によって、室内ユニット2aと室内ユニット2cのサーモオンオフの位相が反転する。
【0054】
また、時刻T15での強制運転モード開始によって、室内ユニット2aと室内ユニット2bのサーモオンオフの位相が反転する。続いて、時刻T16での強制運転モード終了によって、室内ユニットこの強制運転モードによって、室内ユニット2bと室内ユニット2cのサーモオンオフの位相が反転する。
【0055】
このように、実施の形態1のサーモ制御によれば、強制運転モードの開始および終了によって、異なる室内ユニット2の間で位相が反転する組み合わせが増えるので、全ての室内ユニット2が同時にサーモオフとなる可能性を小さくすることができる。
【0056】
室内ユニット2が全てサーモオフとなる条件を満たすことなく、強制運転モードに極力入らないようにするには、複数の室内ユニット2が同時にサーモオンとならず、1台ずつ順次サーモオンとなる制御状態とすることが最も好ましい。
図7に示したように、室内ユニット順位表は、当該室内ユニット2だけがサーモオンであり、その他の室内ユニット2は全てサーモオフとなっている時間t1が短い順に順位付けされている。
【0057】
強制運転モードによってサーモオンされた室内ユニット2は、強制運転モード継続中は時間t1が積算されるので、室内ユニット順位表においてはどんどん下位に順位付けされ、次の強制運転モードでサーモオンされる可能性が小さくなる。言い換えると、次の強制運転モードでサーモオンされる室内ユニット2は、その前の強制運転モードとは異なる室内ユニット2が選択されることとなる。よって、このサーモ制御を継続することで、時間t1が複数の室内ユニット2各々に均等に配分され、室内ユニット2が1台だけサーモオンとなっている時間を長くすることができる。
【0058】
ただし、強制運転モードでサーモオンとなった室内ユニット2の空調エリアでは、例えば冷房の場合、室温がサーモオフ条件を超えて低下し、室内環境を悪化させる可能性がある。そのため、強制運転モードにおいて、強制的にサーモオンした室内ユニット2が長い時間サーモオンとならないようにする制御を行ってもよい。
【0059】
図9は、強制運転モードの第1の変形例のフローチャートである。強制運転モードの第1の変形例においては、制御装置4はタイマーを備えている。
図6に示した強制運転モードのフローチャートとの相違点は、ステップS31およびステップS32であり、それ以外の制御処理は
図6に示したフローチャートと同じである。
【0060】
図9において、強制運転モードが開始されて室内ユニット順位表の最上位の室内ユニット2が強制的にサーモオンされると(ステップS21)、制御装置4は、ステップS31でタイマーのカウントを開始する。その後、ステップS23でサーモオフ中の室内ユニット2がサーモオン条件を満たすまで強制サーモオンを継続するが、ステップS32においてタイマーが所定時間、例えば15分をオーバーするかどうかを判定する。
【0061】
ステップS32でタイマーが所定時間をオーバーしたと判定すると、ステップS21に戻り、新たに室内ユニット順位表の最上位の室内ユニット2をサーモオンにする。さらに、S22でタイマーが所定時間を超えた室内ユニット2をサーモオフする。ここでサーモオフした室内ユニット2は強制運転モードでサーモオンされた室内ユニットであるので、この室内ユニットについては強制サーモオンを終了している。
【0062】
すなわち、強制運転モードにおいて、強制的にサーモオンとした室内ユニット2のサーモオン継続時間が所定時間を超えた場合は、強制的にサーモオンとしていた室内ユニット2を他の室内ユニット2に置き換えている。
【0063】
その後、再びステップS23において、サーモオフ中の室内ユニットがサーモオン条件を満たすまで強制サーモオンを継続する。この制御動作により、強制サーモオンとなった室内ユニット2は、所定時間を超えて運転されることがないため、過剰な空調運転によって室内環境が極度に悪化することが無い。
【0064】
図10は、強制運転モードの第2の変形例のフローチャートである。この強制運転モードの第2の変形例と、
図6に示した強制運転モードのフローチャートとの相違点は、ステップS41の処理であり、それ以外の制御処理は
図6に示したフローチャートと同じである。
【0065】
図10において、強制運転モードが開始されて室内ユニット順位表の最上位の室内ユニット2が強制的にサーモオンされると(ステップS21)、ステップS23でサーモオフ中の室内ユニット2がサーモオン条件を満たすまでサーモ判定を続ける。その際、ステップS41において強制サーモオンとした室内ユニット2の室内温度が強制運転制御範囲を外れるかどうかを判定する。
【0066】
この強制運転制御範囲は、予め決められた温度制御範囲であり、例えば冷房の場合は、設定温度-2℃以上とする。すなわち、強制的にサーモオンとした室内ユニット2がサーモオンを継続している間は、室内温度が設定温度-1℃を超えて低下し続けるが、設定温度-2℃を超えて低下した場合には、ステップS21に戻る。
【0067】
ステップS21で、改めて室内ユニット順位表の最上位から強制サーモオンにする室内ユニット2を選択し、現時点で強制サーモオンとしている室内ユニット2はステップS22でサーモオフとする。この制御動作により、強制的にサーモオンとなった室内ユニット2の室内温度が強制運転制御範囲を外れることが無いので、室内環境が極度に悪化することが無い。
【0068】
本実施の形態における室内ユニット順位表は、
図7に示したように、時間t1が短い順に順位付けされたものを示した。これは、室内ユニット2各々の稼働率が小さい、すなわち空調負荷が小さい場合においても、室内ユニット1台だけがサーモオンである状態を均等に配分することで、室内ユニット2全台が同時にサーモオフ条件を満たす状況を減らすことを目的としたものである。
【0069】
一方、室内環境を極力悪化させないことを最優先にする室内ユニット2の順位付けも可能である。
図11は、実施の形態1における室内ユニット順位表の第1の変形例を示す表である。
図11に示す室内ユニット順位表は、室内ユニット2それぞれの室内温度とサーモオン条件との差であるΔT1が小さい順に順位付けされている。
【0070】
例えば冷房運転の場合、設定温度が26℃、サーモオン条件が27℃であるとき、室内ユニット2aの室内温度が26.8℃であればΔT1は0.2Kである。すなわち、この室内ユニット順位表は、まもなくサーモオンとなる程度に室内温度が高い順に順位付けされている。
【0071】
この室内ユニット順位表によれば、強制運転モードにおいて強制的にサーモオンにする室内ユニット2は、室内温度が十分高いために、強制運転モードが長く続いても室内温度がサーモオフ条件を超える可能性が低く、室内温度を快適な状態に維持することができる。
【0072】
また、室内ユニット順位表の順位付けの方法として、室内に在室者がいるかどうかを判定材料にしてもよい。
図12は、実施の形態1における室内ユニット順位表の第2の変形例を示す表である。
【0073】
この室内ユニット順位表を適用する場合、室内ユニット2は各々の空調エリアに在室者が何人いるかを検知できる人感センサを備えている。室内ユニット順位表は、時間t1の変化に応じて室内ユニット2の順位を随時更新しているが、在室者が不在となった室内ユニット2は、時間t1によらず最上位とするようになっている。
【0074】
この室内ユニット順位表によれば、強制運転モードで強制的にサーモオンとなる室内ユニット2が担当する空調エリアには在室者が不在であるので、室内温度がサーモオフ条件を超えてしまっても室内環境に対して不快を感じる人が存在しない。よって、在室者に不快を感じさせることなく、全ての室内ユニット2をサーモオフさせずに圧縮機11を連続的に運転させることができる。
【0075】
以上のように、実施の形態1に係る空気調和システム100は、複数の室内ユニット2が全てサーモオフとなる条件を満たした場合に、所定の条件で順位付けされた室内ユニット2を強制的にサーモオンとすることで、圧縮機を停止させることなく空調運転を行うことができる。
【0076】
また、異なる室内ユニット2の間で位相が反転する組み合わせが増えるように強制的にサーモオンにする室内ユニットを選択するので、全ての室内ユニット2が同時にサーモオフとなる可能性を小さくすることができる。これにより、室内ユニットを強制的にサーモオンとする機会が減り、室温が設定温度を大きく外れることがないように空調運転を行うことができる。
【0077】
また、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 室外ユニット
2、2a~2d 室内ユニット
3、3a~3d リモコン
4 制御装置
5 液管
6 ガス管
7 通信線
11 圧縮機
12 四方切替弁
13 室外熱交換器
14 室外ファン
15 低圧センサ
16 高圧センサ
21、21a~21d 膨張弁
22、22a~22d 室内熱交換器
23、23a~23d 室内ファン
24、24a~24d 室温センサ
25、25a~25d ガス側冷媒温度センサ
26、26a~26d 液側冷媒温度センサ
100 空気調和システム