(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147928
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】電池冷却装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20241009BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241009BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20241009BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20241009BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241009BHJP
H01M 10/635 20140101ALI20241009BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/625
H01M10/635
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060683
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】秋田 賢二
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】電池を冷却する際の冷却能力、及びエネルギ効率を、外気温度や車両状況に応じて最大化可能な電池冷却装置を実現する。
【解決手段】本開示の一形態に係る電池冷却装置(1)は、電池(2)、ラジエータ(3)、チラー(5)の順で直列的に冷媒が流通する第1の流路と、ラジエータ(3)を迂回するように、電池(2)とチラー(5)とを接続する第1の迂回流路(8)と、第1の流路と第1の迂回流路(8)との分岐部に配置される第1の三方弁(9)と、電池(2)から流出する冷媒の温度を検出する第1の検出部(13)と、外気温度を検出する第2の検出部(14)と、電池(2)から流出する冷媒の温度が外気温度以下の場合、第1の迂回流路(8)を介して電池(2)、チラー(5)の順で直列的に冷媒が流通する第2の流路で冷媒が流通するように、第1の三方弁(9)を制御する制御部(17)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池、ラジエータ、チラーの順で直列的に冷媒が流通する第1の流路と、
前記ラジエータを迂回するように、前記電池の冷媒流出側と前記チラーの冷媒流入側とを接続する第1の迂回流路と、
前記第1の流路と前記第1の迂回流路との分岐部に配置される第1の三方弁と
前記電池から流出する冷媒の温度を検出する第1の検出部と、
外気温度を検出する第2の検出部と、
前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度以下の場合、前記第1の迂回流路を介して前記電池、前記チラーの順で直列的に前記冷媒が流通する第2の流路で当該冷媒が流通するように、前記第1の三方弁を制御し、前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度に対して高い場合、前記冷媒が前記ラジエータに流入するように、前記第1の三方弁を制御する制御部と、
を備える、電池冷却装置。
【請求項2】
前記電池に流入する冷媒の温度を検出する第3の検出部と、
前記チラーを迂回するように、前記ラジエータの冷媒流出側と前記電池の冷媒流入側とを接続する第2の迂回流路と、
前記第1の流路と前記第2の迂回流路との分岐部に配置される第2の三方弁と、
を備え、
前記制御部は、前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度に対して高く、且つ前記電池に流入する冷媒の温度が予め設定された第1の閾値以上場合、前記第2の流路及び前記第2の迂回流路を介して前記電池、前記ラジエータの順で直列的に前記冷媒が流通する第3の流路で当該冷媒が流通するように、前記第1の三方弁及び前記第2の三方弁を制御し、前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度に対して高く、且つ前記電池に流入する冷媒の温度が前記第1の閾値に比べて低い場合、前記第2の流路のみで前記冷媒が流通しないように、前記第1の三方弁及び前記第2の三方弁を制御する、請求項1に記載の電池冷却装置。
【請求項3】
前記ラジエータから流出する冷媒の温度を検出する第4の検出部と、
前記チラーを迂回するように、前記ラジエータの冷媒流出側と前記電池の冷媒流入側とを接続する第2の迂回流路と、
前記第1の流路と前記第2の迂回流路との分岐部に配置される第2の三方弁と、
を備え、
前記制御部は、前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度に対して高く、且つ前記ラジエータから流出する冷媒の温度が予め設定された第2の閾値に対して高い場合、前記第1の流路で前記冷媒が流通するように、前記第1の三方弁及び前記第2の三方弁を制御し、前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度に対して高く、且つ前記ラジエータから流出する冷媒の温度が前記第2の閾値以下の場合、前記第2の流路及び前記第2の迂回流路を介して前記電池、前記ラジエータの順で直列的に前記冷媒が流通する第3の流路で当該冷媒が流通するように、前記第1の三方弁及び前記第2の三方弁を制御する、請求項1又は2に記載の電池冷却装置。
【請求項4】
前記電池に流入する冷媒の温度を検出する第3の検出部と、
前記ラジエータから流出する冷媒の温度を検出する第4の検出部と、
前記チラーを迂回するように、前記ラジエータの冷媒流出側と前記電池の冷媒流入側とを接続する第2の迂回流路と、
前記第1の流路と前記第2の迂回流路との分岐部に配置される第2の三方弁と、
前記冷媒を流通させるためのポンプと、
を備え、
前記制御部は、前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度に対して高く、且つ前記電池に流入する冷媒の温度が予め設定された第1の閾値以上の場合、前記第2の流路及び前記第2の迂回流路を介して前記電池、前記ラジエータの順で直列的に前記冷媒が流通する第3の流路で当該冷媒が流通するように、前記第1の三方弁及び前記第2の三方弁を制御し、前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度に対して高く、且つ前記電池に流入する冷媒の温度が前記第1の閾値に比べて低く、前記ラジエータから流出する冷媒の温度が予め設定された第2の閾値に対して高い場合、前記第1の流路で前記冷媒が流通するように、前記第1の三方弁及び前記第2の三方弁を制御し、前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度に対して高く、且つ前記電池に流入する冷媒の温度が前記第1の閾値に比べて低く、前記ラジエータから流出する冷媒の温度が前記第2の閾値以下の場合、前記第2の流路及び前記第3の流路で前記冷媒が流通するように、前記第1の三方弁及び前記第2の三方弁を制御し、
前記ポンプは、前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度に対して高く、且つ前記電池に流入する冷媒の温度が前記第1の閾値以上の場合での前記冷媒の流量を、前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度以下に対して高く、且つ前記電池に流入する冷媒の温度が前記第1の閾値に比べて低く、前記ラジエータから流出する冷媒の温度が前記第2の閾値以下の場合での前記冷媒の流量に比べて多くする、請求項1に記載の電池冷却装置。
【請求項5】
電池、ラジエータ、チラーの順で直列的に冷媒が流通する第1の流路と、
前記ラジエータを迂回するように、前記電池の冷媒流出側と前記チラーの冷媒流入側とを接続する迂回流路と、
前記第1の流路と前記迂回流路との分岐部に配置される三方弁と
前記電池から流出する冷媒の温度を検出する第1の検出部と、
外気温度を検出する第2の検出部と、
を備える電池冷却装置の制御方法であって、
前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度以下の場合、前記迂回流路を介して前記電池、前記チラーの順で直列的に前記冷媒が流通する第2の流路で当該冷媒が流通するように、前記三方弁を制御し、前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度に対して高い場合、前記冷媒が前記ラジエータに流入するように、前記三方弁を制御する、電池冷却装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池冷却装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1の冷却装置は、電池を冷却するために冷媒が流通する第1の流路と、インバータを冷却するために冷媒が流通する第2の流路と、外気温度が予め設定された閾値に対して低い場合、第1の流路と第2の流路とが同一回路となるように接続する切り替えバルブと、を備えている。
【0003】
このとき、特許文献1の冷却装置において、第1の流路と第2の流路とが同一流路となるように接続された場合、電池、ラジエータ、チラーの順で直列的に冷媒が流通する流路が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願人は、以下の課題を見出した。このように電池、ラジエータ、チラーの順で直列的に冷媒が流通する流路において、外気温度が上昇した際にラジエータが受熱して、電池を冷却する際のエネルギ効率が低下し、またラジエータでの冷却が有効な外気温度、冷媒温度条件下においても、一度冷却された冷媒をチラーに導入するとエネルギ効率は向上する一方で、チラー入口の冷媒温度が下がる為、最大能力を発揮できない条件があるなど課題を有する。
【0006】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、電池を冷却する際の冷却能力、及びエネルギ効率を、外気温度や車両状況に応じて最大化可能な電池冷却装置及びその制御方法を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る電池冷却装置は、
電池、ラジエータ、チラーの順で直列的に冷媒が流通する第1の流路と、
前記ラジエータを迂回するように、前記電池の冷媒流出側と前記チラーの冷媒流入側とを接続する第1の迂回流路と、
前記第1の流路と前記第1の迂回流路との分岐部に配置される第1の三方弁と
前記電池から流出する冷媒の温度を検出する第1の検出部と、
外気温度を検出する第2の検出部と、
前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度以下の場合、前記第1の迂回流路を介して前記電池、前記チラーの順で直列的に前記冷媒が流通する第2の流路で当該冷媒が流通するように、前記第1の三方弁を制御し、前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度に対して高い場合、前記冷媒が前記ラジエータに流入するように、前記第1の三方弁を制御する制御部と、
を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る電池冷却装置の制御方法は、
電池、ラジエータ、チラーの順で直列的に冷媒が流通する第1の流路と、
前記ラジエータを迂回するように、前記電池の冷媒流出側と前記チラーの冷媒流入側とを接続する迂回流路と、
前記第1の流路と前記迂回流路との分岐部に配置される三方弁と
前記電池から流出する冷媒の温度を検出する第1の検出部と、
外気温度を検出する第2の検出部と、
を備える電池冷却装置の制御方法であって、
前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度以下の場合、前記迂回流路を介して前記電池、前記チラーの順で直列的に前記冷媒が流通する第2の流路で当該冷媒が流通するように、前記三方弁を制御し、前記電池から流出する冷媒の温度が前記外気温度に対して高い場合、前記冷媒が前記ラジエータに流入するように、前記三方弁を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電池を冷却する際の冷却能力、及びエネルギ効率を、外気温度や車両状況に応じて最大化可能な電池冷却装置及びその制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1の電池冷却装置における直列モードを説明するための図である。
【
図2】実施の形態1の電池冷却装置におけるチラーモードを説明するための図である。
【
図3】実施の形態1の電池冷却装置における並列モードを説明するための図である。
【
図4】実施の形態1の電池冷却装置を用いて電池を冷却する際の制御部の処理の流れを示すフローチャート図である。
【
図5】チラーの冷却能力とラジエータから流出する冷媒の温度との関係を示す図である。
【
図6】実施の形態2の電池冷却装置におけるラジエータモードを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0012】
<実施の形態1>
先ず、本実施の形態の電池冷却装置の構成を説明する。
図1は、本実施の形態の電池冷却装置における直列モードを説明するための図である。本実施の形態の電池冷却装置1は、例えば、ハイブリッド車両や電動車両などの車両に搭載される電池2を冷却するために好適である。
【0013】
電池冷却装置1は、
図1に示すように、ラジエータ3、第1の接続管4、チラー5、第2の接続管6、第3の接続管7、第1の迂回流路8、第1の三方弁9、第2の迂回流路10、第2の三方弁11、ポンプ12、第1の検出部13、第2の検出部14、第3の検出部15、第4の検出部16及び制御部17を備えており、後述するように冷媒が流通することで電池2が冷却される構成とされている。
【0014】
電池2は、例えば、車両に搭載されるバッテリであり、液体状又は気体状の冷媒が流通可能な構成とされている。ラジエータ3は、例えば、外気との熱交換によって冷媒を冷却する。第1の接続管4は、
図1に示すように、電池2の冷媒流出側とラジエータ3の冷媒流入側とを接続する。
【0015】
チラー5は、例えば、車両に搭載される空調装置内を循環する空調冷媒と冷媒とを熱交換する。チラー5には、例えば、車両に搭載される空調装置の空調冷媒がコンプレッサなどによって供給される。第2の接続管6は、
図1に示すように、ラジエータ3の冷媒流出側とチラー5の冷媒流入側とを接続する。
【0016】
第3の接続管7は、
図1に示すように、チラー5の冷媒流出側と電池2の冷媒流入側とを接続する。これにより、電池2と、第1の接続管4と、ラジエータ3と、第2の接続管6と、チラー5と、第3の接続管7と、が直列的に接続された第1の流路が形成されている。
【0017】
第1の迂回流路8は、
図1に示すように、ラジエータ3を迂回するように、電池2の冷媒流出側とチラー5の冷媒流入側とを接続する。つまり、第1の迂回流路8は、ラジエータ3を迂回するように、第1の接続管4から分岐し、第2の接続管6に接続されている。
【0018】
第1の三方弁9は、第1の接続管4と第1の迂回流路8との分岐部に配置されている。第1の三方弁9は、第1の接続管4における第1の三方弁9からラジエータ3までの部分への接続、第1の迂回流路8への接続、又は第1の接続管4における第1の三方弁9からラジエータ3までの部分及び第1の迂回流路8の双方への接続を切り換える。
【0019】
但し、第1の三方弁9は、三方以上の多方向弁であればよく、このことより、本開示での「三方」とは、少なくとも3つの接続ポートを備えているとの意味である。これにより、電池2と、第1の接続管4と、第1の迂回流路8と、第2の接続管6と、チラー5と、第3の接続管7と、が直列的に接続された第2の流路が形成されている。
【0020】
第2の迂回流路10は、
図1に示すように、チラー5を迂回するように、ラジエータ3の冷媒流出側と電池2の冷媒流入側とを接続する。つまり、第2の迂回流路10は、チラー5を迂回するように、第2の接続管6から分岐し、第3の接続管7に接続されている。第2の三方弁11は、第2の接続管6と第2の迂回流路10との分岐部に配置されている。
【0021】
第2の三方弁11は、第2の接続管6における第2の三方弁11からチラー5までの部分への接続、又は第2の迂回流路10への接続を切り換える。これにより、電池2と、第1の接続管4と、ラジエータ3と、第2の迂回流路10と、第3の接続管7と、が直列的に接続される第3の流路が形成されている。
【0022】
ポンプ12は、上述の第1の流路、第1の迂回流路8及び第2の迂回流路10の内部に充填された冷媒を流通(循環)させる。ポンプ12は、例えば、
図1に示すように、第1の接続管4に設けられている。これにより、第1の流路では、冷媒が電池2、第1の接続管4、ラジエータ3、第2の接続管6、チラー5、第3の接続管7の順で直列的に流通する。
【0023】
第2の流路では、冷媒が電池2、第1の接続管4、第1の迂回流路8、第2の接続管6、チラー5、第3の接続管7の順で直列的に流通する。第3の流路では、冷媒が電池2、第1の接続管4、ラジエータ3、第2の迂回流路10、第3の接続管7の順で直列的に流通する。
【0024】
第1の検出部13は、電池2から流出する冷媒の温度を検出する。第1の検出部13は、例えば、
図1に示すように、第1の接続管4における第1の三方弁9に対して電池2の側に設けられているとよい。
【0025】
第2の検出部14は、外気温度を検出する。第3の検出部15は、電池2に流入する冷媒の温度を検出する。第3の検出部15は、例えば、
図1に示すように、第3の接続管7における電池2の近傍に設けられているとよい。
【0026】
第4の検出部16は、ラジエータ3から流出する冷媒の温度を検出する。第4の検出部16は、例えば、
図1に示すように、第2の接続管6における第2の三方弁11に対してラジエータ3の側に設けられているとよい。これらの第1の検出部13、第2の検出部14、第3の検出部15及び第4の検出部16は、検出結果を制御部17に出力する。
【0027】
制御部17は、詳細は後述するが、第1の検出部13、第2の検出部14、第3の検出部15及び第4の検出部16の検出結果に基づいて、チラー5に空調冷媒を供給するためのコンプレッサ、第1の三方弁9、第2の三方弁11及びポンプ12を制御する。
【0028】
ここで、
図2は、本実施の形態の電池冷却装置におけるチラーモードを説明するための図である。
図3は、本実施の形態の電池冷却装置における並列モードを説明するための図である。なお、
図1から
図3では、一点鎖線によって各モードで冷媒が流通する流路を示している。
【0029】
制御部17は、第1の三方弁9及び第2の三方弁11を制御することで、
図1に示す冷媒を第1の流路のみに流通させる直列モードと、
図2に示す冷媒を第2の流路のみに流通させるチラーモードと、
図3に示す冷媒を第2の流路と第3の流路とに流通させる並列モードと、を切り換える。
【0030】
次に、本実施の形態の電池冷却装置1を用いて電池2を冷却する際の制御部の処理の流れを説明する。
図4は、本実施の形態の電池冷却装置を用いて電池を冷却する際の制御部の処理の流れを示すフローチャート図である。
【0031】
先ず、制御部17は、例えば、車両のECU(Electronic Control Unit)から電池冷却要求を示す情報を取得したか否か判定する(S1)。例えば、車両のACC(Accessory)電源がON状態になった場合、制御部17は、ECUから電池冷却要求を示す情報を取得する。
【0032】
電池冷却要求を示す情報を取得しなかった場合(S1のNO)、制御部17は、電池2の冷却を停止した状態を維持する(S2)。一方、電池冷却要求を示す情報を取得した場合(S1のYES)、制御部17は、電池2から流出する冷媒の温度t1の検出結果を示す情報を第1の検出部13から取得すると共に、外気温度の検出結果を示す情報を第2の検出部14から取得する。そして、制御部17は、電池2から流出する冷媒の温度t1が外気温度に対して高いか否かを判定する(S3)。
【0033】
電池2から流出する冷媒の温度t1が外気温度以下の場合(S3のNO)、制御部17は、
図2に示すチラーモードで第2の流路を冷媒が流通するように、第1の三方弁9及び第2の三方弁11を制御する(S4)。これにより、ラジエータ3での受熱を抑制することができ、電池2を冷却する際のエネルギ効率の低下を抑制することができる。
【0034】
一方、電池2から流出する冷媒の温度t1が外気温度に対して高い場合(S3のYES)、制御部17は、電池2に流入する冷媒の温度t2の検出結果を示す情報を第3の検出部15から取得し、電池2に流入する冷媒の温度t2が予め設定された第1の閾値に対して低いか否かを判定する。
【0035】
ここで、電池の発熱量Qは、以下の<式1>で導き出すことができる。
<式1> Q=ΔT/R
但し、Rは、電池2の電極部分や電池2を構成するセルの冷却熱抵抗である。ΔTは、冷却熱抵抗に基づいて電池2の許容温度Tcに対して電池2に流入する冷媒の温度t2が確保しておく必要がある温度差である。
【0036】
つまり、電池2の許容温度Tcは、以下の<式2>を満たす必要がある。
<式2> t2+ΔT<Tc
そのため、電池2に流入する冷媒の温度t2は、以下の<式3>を満たす必要がある。
<式3> t2<Tc-Q×R
【0037】
そこで、本実施の形態では、電池2に流入する冷媒の温度t2が第1の閾値であるTc-Q×Rに対して低いか否かを判定する(S5)。ここで、電池2の許容温度Tcは、電池2の電流値や当該電池2の温度から推定される抵抗値などに応じて、変化する値である。
【0038】
電池2に流入する冷媒の温度t2が第1の閾値以上の場合(S5のNO)、電池2の発熱量が非常に多い可能性があり、電池冷却装置1に高い冷却能力を発揮させる必要があるため、制御部17は、
図3に示す並列モードで第2の流路及び第3の流路を冷媒が流通するように、第1の三方弁9及び第2の三方弁11を制御する(S6)。
【0039】
これにより、第2の流路で冷媒がチラー5によって冷却されると共に、第3の流路で冷媒がラジエータ3によって冷却される。そのため、電池冷却装置1は、大きな冷却能力を発揮することができる。
【0040】
このとき、詳細は後述するが、冷媒が高温状態であるため、ラジエータ3での冷却によるチラー5の冷却能力の目減りを抑制することができ、チラー5に高い冷却能力を発揮させることができる。そのため、ラジエータ3での冷却とチラー5での冷却との総合的なエネルギ効率の低下を抑制することができる。
【0041】
一方、電池2に流入する冷媒の温度t2が第1の閾値に対して低い場合(S5のYES)、制御部17は、ラジエータ3から流出する冷媒の温度t3の検出結果を示す情報を第4の検出部16から取得し、ラジエータ3から流出する冷媒の温度t3が予め設定された第2の閾値に対して高いか否かを判定する。この場合、S5のNOの場合に比べて、電池2の発熱量が少なく、電池冷却装置1に低い冷却能力を発揮させればよい。
【0042】
ここで、
図5は、チラーの冷却能力とラジエータから流出する冷媒の温度との関係を示す図である。
図5に示すように、例えば、ラジエータ3によって冷却された冷媒の温度t3がt_thより低くなるのに従って、チラー5の冷却能力が目減りする。
【0043】
これは、チラー5に流入する冷媒がラジエータ3で既に冷却されているため、チラー5に供給される空調冷媒と冷媒との温度差が少なくなり、チラー5の冷却能力が十分に発揮されなくなるためである。そこで、本実施の形態では、ラジエータ3から流出する冷媒の温度t3が第2の閾値であるt_thより高いか否かを判定する(S7)。
【0044】
ラジエータ3から流出する冷媒の温度t3が第2の閾値より高い場合(S7のYES)、ラジエータ3での冷却によるチラー5の冷却能力の目減りを抑制できるため、制御部17は、
図1に示す直列モードで第1の流路を冷媒が流通するように、第1の三方弁9及び第2の三方弁11を制御する(S8)。これにより、チラー5の冷却能力の目減りを抑制することができ、電池2を冷却する際のエネルギ効率の低下を抑制することができる。
【0045】
一方、ラジエータ3から流出する冷媒の温度t3が第2の閾値以下の場合(S7のNO)、制御部17は、
図3に示す並列モードで第2の流路及び第3の流路を冷媒が流通するように、第1の三方弁9及び第2の三方弁11を制御する(S9)。このとき、チラー5の冷却能力が目減りするが、その分、チラー5に空調冷媒を供給するコンプレッサの出力を抑制することができ、電池冷却装置1全体でのエネルギ効率の低下を抑制することができる。
【0046】
ここで、制御部17は、S9の工程での冷媒の流量に対して、S6の工程での冷媒の流量が多くなるようにポンプ12を制御するとよい。これにより、高温となった電池2を確実に冷却することができる。
【0047】
このように本実施の形態の電池冷却装置1及びその制御方法は、電池2から流出する冷媒の温度が外気温度以下の場合、
図2に示すチラーモードに制御して第2の流路で冷媒を流通させることができる。これにより、ラジエータ3での受熱を抑制することができ、電池2を冷却する際の冷却能力及びエネルギ効率を、外気温度に応じて最大化可能である。
【0048】
しかも、本実施の形態の電池冷却装置1及びその制御方法は、電池2に流入する冷媒の温度が第1の閾値以上の場合、
図3に示す並列モードに制御して第2の流路及び第3の流路で冷媒を流通させることができる。そのため、電池冷却装置1は、大きな冷却能力を車両状況に応じて発揮することができる。
【0049】
このとき、冷媒は高温状態であるため、ラジエータ3での冷却によるチラー5の冷却能力の目減りを抑制することができ、チラー5に高い冷却能力を発揮させることができる。そのため、ラジエータ3での冷却とチラー5での冷却との総合的なエネルギ効率の低下を抑制することができる。
【0050】
また、本実施の形態の電池冷却装置1及びその制御方法は、ラジエータ3から流出する冷媒の温度が第2の閾値より高い場合、
図1に示す直列モードに制御して第1の流路で冷媒を流通させることができる。これにより、チラー5の冷却能力の目減りを抑制することができ、電池2を冷却する際のエネルギ効率の低下を車両状況に応じて抑制することができる。
【0051】
<実施の形態2>
本実施の形態では、実施の形態1でのS3のYESの判定後であって、且つS5の工程前に、電池2の発熱量が予め設定された第3の閾値以下か否かを制御部17が判定する工程を備えている。このとき、第3の閾値は、例えば、車両の停車時や当該車両のモータの出力が極めて低い場合などでの電池2の発熱量を設定すればよい。
【0052】
そして、電池2の発熱量が第3の閾値より多い場合、制御部17は、S5の工程に移行する。一方、電池2の発熱量が第3の閾値以下の場合、制御部17は、
図6に示すラジエータモードで冷媒が流通するように、第1の三方弁9及び第2の三方弁11を制御する。なお、
図6では、一点鎖線によってラジエータモードで冷媒が流通する流路を示している。
【0053】
ここで、
図6に示すラジエータモードは、電池2と、第1の接続管4と、ラジエータ3と、第2の接続管6と、第2の迂回流路10と、第3の接続管7と、が直列的に接続される第3の流路で冷媒が流通するモードである。つまり、チラー5を用いることなく、ラジエータのみで冷媒を冷却する。
【0054】
これにより、電池2の発熱量が少ない場合、小さなエネルギ消費で効率的に電池2を冷却することができる。このとき、ラジエータファン18を用いてラジエータ3での熱交換効率を向上させるとよい。
【0055】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記実施の形態では、第2の迂回流路10や第2の三方弁11を備えているが、少なくとも電池2から流出する冷媒の温度が外気温度以下の場合、
図2に示すチラーモードに制御して第2の流路で冷媒を流通させることができる構成であればよい。また、S5の工程、S7の工程、又は電池2の発熱量が第3の閾値以下か否かを判定する工程の一つ又は複数を選択的に実施してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 電池冷却装置
2 電池
3 ラジエータ
4 第1の接続管
5 チラー
6 第2の接続管
7 第3の接続管
8 第1の迂回流路
9 第1の三方弁
10 第2の迂回流路
11 第2の三方弁
12 ポンプ
13 第1の検出部
14 第2の検出部
15 第3の検出部
16 第4の検出部
17 制御部
18 ラジエータファン