(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147932
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】オープンシールド機およびそれを用いたコンクリート函体の敷設工法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
E21D9/06 331
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060691
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000189903
【氏名又は名称】植村 誠
(71)【出願人】
【識別番号】501200491
【氏名又は名称】植村 賢治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【弁理士】
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】植村 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 賢治郎
(72)【発明者】
【氏名】日浦 正一
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼沼 真一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】村澤 進太郎
(72)【発明者】
【氏名】近田 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元晶
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC16
2D054AD01
(57)【要約】
【課題】地下水のある地盤でも対応可能で、かつ敷設する函体高さに対して土被りが大きく掘削深さが深い場合でも、函体を反力として充分施工が可能なオープンシールド機およびそれを用いたコンクリート函体の敷設工法を提供する。
【解決手段】推進機構が異なる上部推進構造シールド機36と下部推進構造シールド機35を上下に接続したオープンシールド機1を使用して、コンクリート函体4を敷設する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の側壁板とこれら側壁板と同程度の長さでその間を連結する底板とから成り、上面を開口とした機体で、掘削を行うフロント部とコンクリート函体の設置を行うテール部を有し、フロント部後端から後方に向けて推進ジャッキを左右縦列に配設し、敷設函体に推進反力をとり前進させる下部推進構造シールド機と、
前面、後面及び上下面を開口とし、前記下部推進構造シールド機とは異なる上下位置で分割をして分割ブロックを構成し、各分割ブロックを推進・牽引用ジャッキで連結し、分割ブロックで分割された側板とそれに接する地山との摩擦抵抗を推進反力として各ブロックが順に前進する機体を上部推進構造シールド機と、
これら下部推進構造シールド機と上部推進構造シールド機との推進機構が異なるシールド機を上下に配置したことを特徴とするオープンシールド機。
【請求項2】
上部推進構造シールド機の分割ブロックは、フロント部、ジャッキ部、テール部とからなる請求項1記載のオープンシールド機。
【請求項3】
下部推進構造シールド機にスライド用レールを設置し、そのスライド用レール上に上部推進構造シールド機を前方へ移動可能となるように設置した請求項1または請求項2記載のオープンシールド機。
【請求項4】
上部推進構造シールド機は下部推進構造シールド機より横幅を大きくした請求項1または請求項2記載のオープンシールド機。
【請求項5】
上部推進構造シールド機はフロント部の前端にスライド土留板を設けて可動分割刃口とした請求項1または請求項2記載のオープンシールド機。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のオープンシールド機を使用する函体の敷設方法であって、
上部推進構造シールド機の刃口の切羽地山を掘削する工程と、
上部推進構造シールド機の第1ブロックを第2ブロック、第3ブロック側板と地山との摩擦抵抗を反力にとり第1の推進・牽引ジャッキを伸長し前記第1ブロックを前進する工程と、
前記第1ブロックと前記第3ブロックと地山との摩擦抵抗を反力にとり、前記第1の推進・牽引ジャッキを縮め、前記第2の推進・牽引ジャッキを伸長し、前記第2ブロックを前進する工程と、
前記第1ブロックと前記第2ブロックと地山との摩擦抵抗を反力にとり、前記第2の推進・牽引ジャッキを縮め、前記第3ブロックを前進する工程と、
前記第3ブロックの後端を埋め戻す工程との後、
下部推進構造シールド機刃口の切羽地山を掘削しながら前記下部推進構造シールド機のシールドジャッキを伸長し、前記下部推進構造シールド機を前進する工程と、
を繰り返しながらオープンシールド機を掘進させ、
前記オープンシールド機が1函体長分前進後、前記シールドジャッキを縮め、前記下部推進構造シールド機のテール部内に函体を据え付けながら函体を地中に埋設することを特徴としたオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法。
【請求項7】
第1ブロックを前進する工程は、上部推進構造シールド機の刃口の切羽地山を掘削する工程と、フロント部の前端にスライド土留板を設けて可動分割刃口としたスライド土留板を順次、前方へ伸長する工程と、前記スライド土留板とそれに接する地山との摩擦抵抗を反力にとり、スライドジャッキを縮め、推進ジャッキを伸長して前進する工程からなる請求項6記載のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンシールド機およびそれを用いたコンクリート函体の敷設工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オープンシールド工法は、開削工法(オープンカット工法)とシールド工法の長所を生かした合理性に富む工法で、
図24にその概略を示す。
【0003】
図中1はオープンシールド機で、左右の側壁板とこれら側壁板に連結する底板とからなる前面、後面及び上面を開口したシールド機である。
【0004】
該オープンシールド機1は先端を刃口として形成し、また側壁板の中央又は後端近くに推進ジャッキ3を後方に向け上下に並べて配設する。
【0005】
また、オープンシールド機1は機体を前後方向でフロント部18とテール部19に分割し、フロント部18の後端にテール部19の前端が嵌入して相互の嵌合部で中折れ部34を形成して屈曲可能とした。この中折れ部には中折ジャッキ21を配設する。
【0006】
フロント部18フロント部として主に掘削部となるものであり、テール部19は推進ジャッキ3を配置し、コンクリート函体の吊り降し設置部としてのテール部20となる。
【0007】
図中16はフロント部18の前端に設けた可動分割刃口、24はオープンシールド機1の掘進に伴いテール部19から函体4が抜け出たときの後方土留板であり、この内側で函体4の上部の埋戻しを行う。
【0008】
オープンシールド工法の概略の工程は、まず、発進立坑8内でオープンシールド機1を所定の位置で組立て、組み立てた後、オープンシールド機1の推進ジャッキ3を伸長して発進立坑内の反力壁9に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、地中構造物を形成する第1番目のコンクリート函体4を上方から吊り降し、オープンシールド機1のテール部20内で縮めた推進ジャッキ3の後方にセットする。
【0009】
発進立坑8内で順次布設するコンクリート函体4はオープンシールド機1が前方へ推進し、発進立坑8から出た後、所定の距離まで推進しオープンシールド機の推進力が発進立坑8内の反力壁9まで伝達しなくなるまで反力伝達材として仮に布設しておく函体で、反力壁9に推進反力が伝達されなくなった時点で撤去する。
【0010】
また、発進立坑8は土留壁(鋼矢板30等)で構成され、オープンシールド機1を発進させるにはこの前面の土留壁の一部鏡切りするが、必要に応じて薬液注入等で発進立坑8の前方部分に地盤改良を施しておくこともある。
【0011】
次いで、発進立坑8の前面の土留壁の一部を鏡切り後、ショベル等の掘削機6でオープンシールド機1の前面の地山を上面から土砂を掘削し排土する。
【0012】
この排土工程と同時に、またはその後に推進ジャッキ3を伸長してオープンシールド機1を前進させる。
【0013】
そしてオープンシールド機1が1函体の長さ分、前方に前進後、前記第1番目のコンクリート函体4の前に第2番目のコンクリート函体4を揚重機27にてオープンシールド機1のテール内部20に吊り降しセットする。
【0014】
以下、同様の掘削・排土工程、前進工程、コンクリート函体4のセット工程を適宜繰返して、順次コンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、このコンクリート函体4の上面に埋戻し5を施し、その表面に舗装を施す。
【0015】
以上により、オープンシールド機1が到達坑まで達したならばこれを撤去して工事を完了する。
【0016】
前記先行技術は当業者で一般的に行なわれているものであり、文献公知発明にかかるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前述のオープンシールド工法は、通常、前方に配置した掘削機6でオープンシールド機1のフロント部18の刃口2の地山を前方に向けて法面を形成しつつ、掘削・排土しながらオープンシールド機に装着したシールドジャッキ3を伸長し、後方の敷設コンクリート函体4に推進反力をとり前方に推進する。そのため掘削機6で掘削可能な深さならば施工可能である。
【0018】
またオープンシールド機1の推進にしたがって生じる敷設コンクリート函体4の底版及び両側版の外周と地山との空隙に裏込注入材を充填するので、推進に伴う周辺地山の緩みが少なく、さらに、オープンシールド機1に底板があることなどから、地下水のある地盤でも施工可能であるという特長がある。
【0019】
しかし、敷設コンクリート函体4の高さに対して掘削深さが深い場合は、シールド機1推進時にシールド機前方の地山の抵抗力の合力が、シールドジャッキ3の推進力の合力に対して高いため、シールド機1推時のピッチングやローリング、ヨーイングの制御が難しくなってくる。またプレスバーに当接している敷設コンクリート函体4に作用する推進力も大きくなり、函体への影響も懸念されてくる。特に掘削深さが深く、敷設コンクリート函体高さに対して掘削深さが2倍程度より大きくなる程、オープンシールド機の推進制御はより困難になってくる。
【0020】
また、地下水のある緩い砂質系地盤で掘削深さが深い場合は、特に地下水位以深の切羽地山を掘削機6で掘削すると、フロント部18の刃口の地山を前方に向けて形成された地山法面は崩れやすくなる。そのため、地山法面が崩れないように法面勾配を小さくして法面長を長くすると、フロント機の両側に装着した可動分割刃口を伸長しても地山法面先端部が可動分割刃口先端部を超え、切羽の両側部の地山を抑えきれず、切羽地山が崩れる恐れがある。
【0021】
本発明の目的は前記不都合を解消し、地下水のある地盤でも対応可能で、かつ敷設する函体高さに対して土被りが大きく掘削深さが深い場合でも、函体を反力として充分施工が可能なオープンシールド機およびそれを用いたコンクリート函体の敷設工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するため本発明は、オープンシールド機としては、第1に、左右の側壁板とこれら側壁板と同程度の長さでその間を連結する底板とから成り、上面を開口とした機体で、掘削を行うフロント部とコンクリート函体の設置を行うテール部を有し、フロント部後端から後方に向けて推進ジャッキを左右縦列に配設し、敷設函体に推進反力をとり前進させる下部推進構造シールド機と、前面、後面及び上下面を開口とし、前記下部推進構造シールド機と上下異なる位置で分割をして分割ブロックを構成し、各分割ブロックを推進・牽引用ジャッキで連結し、分割ブロックで分割された側板とそれに接する地山との摩擦抵抗を推進反力として各ブロックが順に前進する機体を上部推進構造シールド機と、
これら下部推進構造シールド機と上部推進構造シールド機との推進機構が異なるシールド機を上下に配置したことを要旨とするものである。
【0023】
第2に、上部推進構造シールド機の分割ブロックは、フロント部、ジャッキ部、テール部とからなること、第3に、下部推進構造シールド機にスライド用レールを設置し、そのスライド用レール上に上部推進構造シールド機を前方へ移動可能となるように設置したこと、第4に、上部推進構造シールド機は下部推進構造シールド機より横幅を大きくしたこと、第5に、上部推進構造シールド機はフロント部の前端にスライド土留板を設けて可動分割刃口としたことを要旨とするものである。
【0024】
オープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法としては、第1に、請求項1または請求項2に記載のオープンシールド機を使用する函体の敷設方法であって、上部推進構造シールド機の刃口の切羽地山を掘削する工程と、上部推進構造シールド機の第1ブロックを第2ブロック、第3ブロック側板と地山との摩擦抵抗を反力にとり第1の推進・牽引ジャッキを伸長し前記第1ブロックを前進する工程と、前記第1ブロックと前記第3ブロックと地山との摩擦抵抗を反力にとり、前記第1の推進・牽引ジャッキを縮め、前記第2の推進・牽引ジャッキを伸長し、前記第2ブロックを前進する工程と、前記第1ブロックと前記第2ブロックと地山との摩擦抵抗を反力にとり、前記第2の推進・牽引ジャッキを縮め、前記第3ブロックを前進する工程と、前記第3ブロックの後端を埋め戻す工程との後、下部推進構造シールド機刃口の切羽地山を掘削しながら前記下部推進構造シールド機のシールドジャッキを伸長し、前記下部推進構造シールド機を前進する工程と、を繰り返しながらオープンシールド機を掘進させ、前記オープンシールド機が1函体長分前進後、前記シールドジャッキを縮め、前記下部推進構造シールド機のテール部内に函体を据え付けながら函体を地中に埋設することを要旨とするものである。
【0025】
第2に、第1ブロックを前進する工程は、上部推進構造シールド機の刃口の切羽地山を掘削する工程と、フロント部の前端にスライド土留板を設けて可動分割刃口としたスライド土留板を順次、前方へ伸長する工程と、前記スライド土留板とそれに接する地山との摩擦抵抗を反力にとり、スライドジャッキを縮め、推進ジャッキを伸長して前進する工程からなることを要旨とするものである。
【0026】
請求項1および請求項5記載の本発明によれば、オープンシールド機は上部と下部の推進構造部に分かれており、下部推進構造シールド機上を上部推進構造シールド機が前記上部推進構造シールド機両側板とそれに接する地山との摩擦抵抗を推進反力として前方へ推進しつつ、刃口前方に配置した掘削機で切羽地山を前方に向けて法面を形成しながら掘削する。そしてこの後に、下部推進構造シールド機の刃口部の切羽地山を同様に掘削しながら、前記下部推進構造シールド機が推進する。
【0027】
したがって、前記下部推進構造シールド機の切羽地山法面より前記上部推進構造の切羽地山法面が前方に位置するように掘削後、上部推進構造部は停止して下部推進構造シールド機が掘進する。
【0028】
このため、掘削深さが深い場合でのオープンシールド工法の掘進時の推進推力に比べ、下部推進構造シールド機の推進時は、下部推進楮部の切羽地山による推進抵抗力と前記下部構造部の両側板と地山との摩擦による抵抗力となり推進力は低減できる。その結果、敷設函体へ作用する推力も小さくなり函体への負荷が低減できる。
【0029】
また、下部推進構造シールド機が推進時、前記下部推進構造シールド機の刃口部の切羽地山の抵抗力の合力が、前記下部推進構造シールド機のシールドジャッキの推進力の合力と同程度の高さとなるため、掘削深さが深くなっても従来のオープンシールド工法の場合に比べて、前記下部推進構造シールド機の推進時のピッチングやローリング、ヨーイングの制御がしやすくなる。
【0030】
請求項2記載の本発明によれば、上部推進構造シールド機の分割ブロックを、フロント部、ジャッキ部、テール部との3つからなるものとして、最小限の分割ブロック数で必要な作用を得ることができる。
【0031】
請求項3記載の本発明によれば、下部推進構造シールド機にスライド用レールを設置し、そのスライド用レール上に上部推進構造シールド機を前方へ移動可能となるように設置したので、上部推進構造シールド機の前方へ移動が容易に行えるものである。
【0032】
請求項4記載の本発明によれば、従来のオープンシールド工法の場合や上部推進構造シールド機と下部推進構造シールド機の横幅が同一の場合では、掘削深さが深く緩い砂質系地盤の施工などにおいて、下部推進構造シールド機刃口部の底板付近を掘削すると、切羽地山法面45や刃口後方側板部の地山が崩れオープンシールド機近傍の地表までその影響が及ぶ恐れがある。
【0033】
オープンシールド機の上部推進構造シールド機の横幅を下部推進楮部の横幅より大きくした構造にすることにより、前記の恐れが無いか、あるいは低減可能である。
【0034】
また、掘削深さが深く緩い砂質系地盤などでは、上部推進構造シールド機の刃口が下部推進構造シールド機の可動分割刃口先端より前に位置し、そして前記上部推進構造シールド機の刃口部の切羽地山法面を凹状に大きくとり、その地山法面の法尻付近の両端部は前記下部推進構造シールド機の可動分割刃口とその側部の地山とで抑えることができる。
【0035】
また、切羽地山の状況に応じて前記上部推進構造シールド機の刃口部の切羽地山法面の勾配を小さくとることができ、法面の安定性が充分確保できる。
【0036】
したがって、前記下部推進構造シールド機の可動分割刃口部の切羽地山法面が崩れそうになっても前記上部推進構造シールド機刃口部の切羽地山法面の形状を保持できるため、オープンシールド機は掘進時の切羽地山の安定性を確保しながら安全に掘進と函体敷設をすることができる。
【0037】
さらに、下部推進構造シールド機は底板があることなどから地下水に対応できるので、地下水のある地盤でも上部推進構造シールド機下端より地下水位が低ければ、地下水のある地盤でも施工可能である。
【0038】
請求項5および請求項7記載の本発明によれば、比較的硬い地盤では推進時の第1の分割体は単一の刃口であると、刃口抵抗が大きくなり、各ブロックの側板と地山との摩擦抵抗による推進反力で推進できなくなる恐れがあり、緩い地盤で掘削時に切羽地山法面が保持できない場合は周辺の地山が緩みやすくなる。
【0039】
これに対して第1ブロックの本体フレーム両側部に複数段のスライド土留板を上部より順次前方へ伸長することにより、切羽地山法面や側部地山の土留めが順次でき、刃口部の地山の安定性を保持することができる。
【発明の効果】
【0040】
以上述べたように本発明のオープンシールド機およびそれを用いたコンクリート函体の敷設工法は、地下水のある地盤でも対応可能で、かつ敷設する函体高さに対して土被りが大きく掘削深さが深い場合でも、函体を反力として充分施工が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明のオープンシールド機の1実施形態を示す縦断側面図である。
【
図2】本発明のオープンシールド機の1実施形態を示す上部推進構造シールド機の平面図である。
【
図3】本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す下部推進構造シールド機の平面図である。
【
図6】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第1実施形態の第1工程から第3工程を示す説明図である。
【
図7】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第1実施形態の第4工程から第6工程を示す説明図である。
【
図8】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第1実施形態の第7工程から第9工程を示す説明図である。
【
図9】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第1実施形態の第10工程から第12工程を示す説明図である。
【
図10】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第1実施形態の第13工程から第14工程を示す縦断側面図である。
【
図11】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第2実施形態を示す縦断側面図である。
【
図12】本発明のオープンシールド機の第2実施形態を示す上部推進構造シールド機の平面図である。
【
図13】本発明のオープンシールド機の第2実施形態を示す下部推進構造シールド機の平面図である。
【
図15】本発明のオープンシールド機の第2実施形態を示す掘進時の平面図である。
【
図16】本発明のオープンシールド機の第3実施形態を示す縦断側面図である。
【
図17】本発明のオープンシールド機の第3実施形態を示す上部推進構造シールド機の平面図である。
【
図18】本発明のオープンシールド機の第3実施形態を示す下部推進構造シールド機の平面図である。
【
図21】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第2実施形態の第1工程から第3工程を示す説明図である。
【
図22】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第2実施形態の第4工程から第6工程を示す説明図である。
【
図23】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第2実施形態の第7工程を示す縦断側面図である。
【
図24】オープンシールド工法の施工状況を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明のオープンシールド機の1実施形態を示す縦断側面図、
図2は同上上部推進構造シールド機の平面図、
図3は同上下部推進構造シールド機の平面図で、図中1はオープンシールド機で、推進機構が異なる上部推進構造シールド機36と下部推進構造シールド機35を上下に接続した。
【0043】
前記上部推進構造シールド機36は、前面、後面及び上下面を開口とし、前記下部推進構造シールド機と延長方向の異なる位置で分割をして分割ブロックを構成したものであるが、この分割ブロックは一例として、前方よりフロント部、ジャッキ部、テール部から成る第1ブロック、第2ブロック、第3ブロックから成り、第1ブロック後端に第2ブロックの前端が、第2ブロックの後端に第3ブロックの前端が嵌合して配置する。
【0044】
第1ブロックと第2ブロックは両端がピン構造の推進・牽引ジャッキ37、第2ブロックと第3ブロックも同様に推進・牽引ジャッキ37が上下方向に複数段配置・接続されている。
【0045】
下部推進構造シールド機35は、
図4に示すように、左右の側壁板1aとこれら側壁板1aと同程度の長さでその間を連結する底板1bとから成り、上面を開口とした機体を前後方向で複数に分割し、フロント部18部としての前方の機体の後端にテール部19としての後方の機体の前端を嵌入し、相互の中折れ部34で屈曲可能とし、フロント部の前端に前方にスライドジャッキ17で伸長する可動分割刃口16を設け、前記フロント部後端から後方に向けて推進ジャッキ3を左右縦列に配設し、敷設函体4にプレスバー26を介して前記推進ジャッキを伸長して推進反力をとり前進させる構造である。フロント部18とテール部19は牽引ジャッキ31で連結されている。
【0046】
図4,
図5に示すように、下部推進構造シールド機35と上部推進構造シールド機36を接続するスライド・支持構造は、下部推進構造シールド機35のフロント部18とテール部19の両側部上端内側に、それぞれ、上部推進構造シールド機36が前方へスライドできるように上部推進構造スライド用レール48を固定設置した。三角形状の部材は前記レールの固定材である。
【0047】
上部推進構造スライド用レール48の構造は下部推進構造シールド機35に対して上部推進構造シールド機36が前進移動できるものであれば特に限定はないが、上部推進構造シールド機36に転送用の車輪を設け、鉄道のようなレール上を滑走させるものでもよい。
【0048】
上部推進構造シールド機36のフロント部18とテール部19の両側部下端から張り出した部材は、下部推進構造シールド機材上端に接して前記上部推進構造シールド機36を支える上部推進構造支持部材49である。
【0049】
前記上部推進構造スライド用レール48の上部から外側に向けて先端が尖頭状の張り出し部を設けている。同様に、上部推進構造支持部材49の下部から内側に向けても同様に先端が尖頭状の張り出し部が設けており、それらの間に遊間50を設けている。この遊間50があることにより、上部推進構造シールド機36が前進時に左右の振れが生じても追従できる。
【0050】
また、前記のとおり、前記上部推進構造スライド用レール49と上部推進構造支持部材49にはそれぞれ、先端が尖頭状の張り出し部を設けているので、前記上部推進構造シールド機36が遊間50以上に左右に振れても、その張り出し部が互いに当接するので上部推進構造シールド機が下部推進構造シールド機からのずれ落ちを防止できる。
【0051】
図中47は上部推進構造シールド機36と下部推進構造シールド機35の連結部への土砂侵入防止鉄板である。
【0052】
オープンシールド機の推進からコンクリート函体据え付けまでの手順を説明する。第1工程は、オープンシールド機1の推進前であり、第2工程は、上部推進構造シールド機36の第1ブロック36aの推進である。
【0053】
図示はしてないが、オープンシールド機1の前方に掘削機6を配置し、上部推進構造シールド機の下端部付近まで切羽地山に法面を形成しながら掘削する。掘削に伴って、前記第1ブロックの第1の推進・牽引ジャッキ後端を伸長しながら、第1ブロックと第2ブロックの両側の側部とそれに接する地山との摩擦抵抗を推進反力にし、前記第1ブロックを前進させる。
【0054】
第3工程は第2ブロック36bの推進で、第1の推進・牽引ジャッキ37後端を縮めながら第2の推進・牽引ジャッキ37後端を伸長して、第1ブロックと第2ブロックの両側部とそれに接する地山との摩擦抵抗を反力にとり、第2ブロック36bを前進させる。
【0055】
第4工程は第3ブロック36cの推進で、 第2の推進・牽引ジャッキの後端を縮めながら、第1ブロック36aと第2ブロック36bの両側部とそれに接する地山との摩擦抵抗を反力にとり、第3ブロック36cを前進させる。また、第3ブロック36cを前進しながら、前記第3ブロック後部の埋め戻し5を行う。
【0056】
第5工程は、前記の上部推進構造シールド機36の1サイクル分の推進が終了後、下部推進構造シールド機を上部推進構造シールド機36の1サイクル分の推進長分を推進させる工程である。
【0057】
上部推進構造シールド機36は停止した状態とし、前方に配置した掘削機6で、前記下部推進構造シールド機35の切羽地山に法面を形成しながら掘削し、同時に、可動分割刃口16を可動分割刃口16内に装着したスライドジャッキ17を伸長して、前記可動分割刃口16を前方へ伸長して側部地山の土留めを行う。前記の作業と同時に、前記下部推進構造シールド機35は推進ジャッキ3を伸長してプレスバー26に押し当て、後方の函体4に推進反力をとり、前進させる。また、前進と同時に地中に発生する空隙へ裏込注入材29を充填していく。
【0058】
第6工程から第8工程は、前記の第2工程から第4工程と同様の作業を繰り返しであり、第9工程は第5工程を同様の作業となる。また、第10から第13工程は前記の第6工程から第9工程までと同一の作業となる。
【0059】
以上のように、上部推進構造シールド機36は各ブロックとそれらに接する地山との摩擦抵抗を反力に所謂“尺取虫”のように推進させ、下部推進構造シールド機35は前記上部推進構造36の1サイクル長分に応じて前記の作業を繰り返しながら前進させる。
【0060】
前記の推進作業を行いながら、下部推進構造シールド機35が1函体分推進後、第14工程に示すとおり、推進ジャッキ3を縮めてテール内部20に新たな函体4を据え付ける。以上の作業を繰り返しながら、地中に函体を敷設していく。
【0061】
次に、本発明のオープンシールド機の第2実施形態を説明する。
図11~
図15に示すように、上部と下部の推進構造部の平面形状は前記本発明の第1実施形態と同じであり、下部推進構造シールド機の断面方向の横幅より上部推進構造シールド機36の横幅を大きくしたオープンシールド機である。
【0062】
前記上部推進構造シールド機36の横幅を前記下部推進構造シールド機35の横幅より大きくすることにより、たとえば、掘削深さが深く緩い砂質系地盤の施工などにおいて、下部推進構造シールド機35の刃口部の底板付近を掘削により刃口後方側板部近傍の地山が崩れても、上部推進構造シールド機36の横幅を大きくしているので、上部推進構造シールド機36上端の地表まで緩みが生じ、崩壊が生じる恐れは無い。
【0063】
図15に示すように、掘削深さが深く緩い砂質系地盤などでは、上部推進構造シールド機36の刃口が下部推進構造シールド機35の可動分割刃口16先端より前に位置し、そして前記上部推進構造シールド機36の刃口2部の切羽地山法面44を凹状に大きくとること、及びその地山法面の法尻付近の両端部は前記下部推進構造シールド機の可動分割刃口16とその側部の地山平坦部46で抑えることができることから、法面の安定性が保持できる。
【0064】
さらに、切羽地山の状況に応じて前記上部推進構造シールド機の刃口2部の切羽地山法面44の勾配を小さくとることにより、切羽地山の掘削法面の安定性がより安全に保持可能となる。尚、作業手順は第1実施形態の発明の作業手順と同じであることから、説明は省略する。
【0065】
本実施形態では
図16~
図20に示すように、上部推進構造シールド機36はフロント部の前端にスライド土留板39を設けて可動分割刃口とした。
【0066】
上部推進構造シールド機36は、前方よりフロント部本体フレーム41と前記フロント部本体フレーム41の両側部に複数段上下方向に配設したスライド土留板39から成る第1ブロック、ジャッキ・テール部から成る第2ブロックで、それぞれ各ブロックは、前記下部構造部より横幅を大きくしている。
【0067】
第1ブロックの前記スライド土留板39と本体フレーム41は両端ピン構造のスライド推進ジャッキで連結し、前記第1ブロックの本体フレーム41と前記第2ブロックは両端ピン構造の推進・牽引ジャッキ43で連結している。
【0068】
上部推進構造シールド機36と下部推進構造シールド機35は、前記発明の実施形態1と同様の
図4及び
図5に示す上部推進構造シールド機36のスライド・支持機構で接続されている。
【0069】
下部推進構造シールド機35は、第1実施形態と同様に、左右の側壁板1aとこれら側壁板1aと同程度の長さでその間を連結する底板1bとから成り、上面を開口とした機体を前後方向で複数に分割し、フロント部18部としての前方の機体の後端にテール部19としての後方の機体の前端を嵌入し、相互の中折れ部34で屈曲可能とし、フロント部の前端に前方にスライドジャッキ17で伸長する可動分割刃口16を設け、前記フロント部後端から後方に向けて推進ジャッキ3を左右縦列に配設し、敷設函体4にプレスバー26を介して前記推進ジャッキを伸長して推進反力をとり前進させる構造である。フロント部18とテール部19はけん引ジャッキ31で連結されている。
【0070】
次に、
図21から
図23により、本第3実施形態でのオープンシールド機1の推進から函体据え付けまでの手順を説明する。第1工程は、本実施形態のオープンシールド機1の推進前の縦断側面の状況である。第2工程は、最上段の中折れ部スライド土留板39の伸長及び切羽地山への貫入と切羽地山掘削である。
【0071】
図示はしていないがオープンシールド機前方に掘削機6を配置して、切羽地山に掘削法面を形成しながら掘削機6で掘削しつつ、第1ブロックのフロント部本体フレーム41両側部に複数段縦方向に配設した中折れ部スライド土留板39の内、最上段の中折れ部スライド土留板をスライド推進ジャッキ42を前方へ伸長して前方へ伸長し、切羽地山へ前記中折れ部スライド土留板39の先端部を貫入させる。
【0072】
同様に、第3工程、第4工程でそれぞれ2段目のスライド土留板39と3段目の中折れ部スライド土留板39をスライド推進ジャッキ42を伸長し、切羽地山へその先端部を貫入させる。
【0073】
第5工程で、中折れ部スライド土留板39とそれに接する地山との摩擦抵抗を反力にとり、すべてのスライド推進ジャッキ42を縮めながら、かつ、ジャッキ・テール部40である第2ブロックの推進・牽引ジャッキ43を伸長して、第1ブロックの本体フレーム41を前進させる。
【0074】
第6工程で、ジャッキ・テール部40の推進・牽引ジャッキ43を縮め、前記ジャッキ・テール部40を前進させる。同時に、自前記ジャッキ・テール部40の後端の埋め戻しを行う。
【0075】
次に、下部推進構造シールド機35の切羽地山に法面を形成しつつ掘削機6で掘削しながら、シールドジャッキ3を伸長してプレスバー26を介して後方の敷設函体に推進反力をとって、下部推進構造シールド機35を推進させる。
【0076】
また、下部推進構造シールド機35の推進に伴って地中に生じる空隙に裏込注入材29を充填する。
【0077】
尚、図示はしてないが第1実施形態と同様に、前記下部推進構造シールド機35が1函体長分前進終了後、シールドジャッキ3を縮め、テール内部20に新たな函体4を据え付ける。
【0078】
以上の手順を繰り返しながら、地中に函体を敷設していく。
【符号の説明】
【0079】
1…オープンシールド機
1a…側壁板 1b…底板
3…推進ジャッキ(シールドジャッキ)
4…コンクリート函体 5…埋戻し土
9…支圧壁 16…可動分割刃口
17…スライドジャッキ 18…フロント部
19…テール部 20…テール内部
21…中折ジャッキ 24…後方土留板
25…隔壁 26…プレスバー(押角)
27…揚重機 28…グラウトホール
29…裏込注入材 30…鋼矢板
31…けん引ジャッキ
34…中折れ部 35…下部推進構造シールド機
36…上部推進構造シールド機 36a…第1ブロック
36b…第2ブロック 36c…第3ブロック
37…推進・牽引ジャッキ(ピンジャッキ)
38…勘合部(上部推進構造シールド機)
39…スライド土留板 40…ジャッキ・テール部
41…フロント部本体フレーム
42…スライド推進ジャッキ(スライド土留板とフロント部本体フレーム連結用ピンジャッキ)
43…推進・牽引ジャッキ(フロント部本体フレームとジャッキ・テール部連結用ピンジャッキ)
44…上部推進構造シールド機切羽地山法面
45…下部推進構造シールド機切羽地山法面
46…地山平坦部(下部推進構造シールド機天端と同じ高さ)
47…連結部土砂侵入防止鉄板 48…上部推進構造スライド用レール
49…上部推進構造支持部材 50…遊間
【手続補正書】
【提出日】2024-09-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンシールド機およびそれを用いたコンクリート函体の敷設工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オープンシールド工法は、開削工法(オープンカット工法)とシールド工法の長所を生かした合理性に富む工法で、
図24にその概略を示す。
【0003】
図中1はオープンシールド機で、左右の側壁板とこれら側壁板に連結する底板とからなる前面、後面及び上面を開口したシールド機である。
【0004】
該オープンシールド機1は先端を刃口として形成し、また側壁板の中央又は後端近くに推進ジャッキ3を後方に向け上下に並べて配設する。
【0005】
また、オープンシールド機1は機体を前後方向でフロント部18とテール部19に分割し、フロント部18の後端にテール部19の前端が嵌入して相互の嵌合部で中折れ部34を形成して屈曲可能とした。この中折れ部には中折ジャッキ21を配設する。
【0006】
フロント部18フロント部として主に掘削部となるものであり、テール部19は推進ジャッキ3を配置し、コンクリート函体の吊り降し設置部としてのテール部20となる。
【0007】
図中16はフロント部18の前端に設けた可動分割刃口、24はオープンシールド機1の掘進に伴いテール部19から函体4が抜け出たときの後方土留板であり、この内側で函体4の上部の埋戻しを行う。
【0008】
オープンシールド工法の概略の工程は、まず、発進立坑8内でオープンシールド機1を所定の位置で組立て、組み立てた後、オープンシールド機1の推進ジャッキ3を伸長して発進立坑内の反力壁9に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、地中構造物を形成する第1番目のコンクリート函体4を上方から吊り降し、オープンシールド機1のテール部20内で縮めた推進ジャッキ3の後方にセットする。
【0009】
発進立坑8内で順次布設するコンクリート函体4はオープンシールド機1が前方へ推進し、発進立坑8から出た後、所定の距離まで推進しオープンシールド機の推進力が発進立坑8内の反力壁9まで伝達しなくなるまで反力伝達材として仮に布設しておく函体で、反力壁9に推進反力が伝達されなくなった時点で撤去する。
【0010】
また、発進立坑8は土留壁(鋼矢板30等)で構成され、オープンシールド機1を発進させるにはこの前面の土留壁の一部鏡切りするが、必要に応じて薬液注入等で発進立坑8の前方部分に地盤改良を施しておくこともある。
【0011】
次いで、発進立坑8の前面の土留壁の一部を鏡切り後、ショベル等の掘削機6でオープンシールド機1の前面の地山を上面から土砂を掘削し排土する。
【0012】
この排土工程と同時に、またはその後に推進ジャッキ3を伸長してオープンシールド機1を前進させる。
【0013】
そしてオープンシールド機1が1函体の長さ分、前方に前進後、前記第1番目のコンクリート函体4の前に第2番目のコンクリート函体4を揚重機27にてオープンシールド機1のテール内部20に吊り降しセットする。
【0014】
以下、同様の掘削・排土工程、前進工程、コンクリート函体4のセット工程を適宜繰返して、順次コンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、このコンクリート函体4の上面に埋戻し5を施し、その表面に舗装を施す。
【0015】
以上により、オープンシールド機1が到達坑まで達したならばこれを撤去して工事を完了する。
【0016】
前記先行技術は当業者で一般的に行なわれているものであり、文献公知発明にかかるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前述のオープンシールド工法は、通常、前方に配置した掘削機6でオープンシールド機1のフロント部18の刃口2の地山を前方に向けて法面を形成しつつ、掘削・排土しながらオープンシールド機に装着したシールドジャッキ3を伸長し、後方の敷設コンクリート函体4に推進反力をとり前方に推進する。そのため掘削機6で掘削可能な深さならば施工可能である。
【0018】
またオープンシールド機1の推進にしたがって生じる敷設コンクリート函体4の底版及び両側版の外周と地山との空隙に裏込注入材を充填するので、推進に伴う周辺地山の緩みが少なく、さらに、オープンシールド機1に底板があることなどから、地下水のある地盤でも施工可能であるという特長がある。
【0019】
しかし、敷設コンクリート函体4の高さに対して掘削深さが深い場合は、シールド機1推進時にシールド機前方の地山の抵抗力の合力が、シールドジャッキ3の推進力の合力に対して高いため、シールド機1推時のピッチングやローリング、ヨーイングの制御が難しくなってくる。またプレスバーに当接している敷設コンクリート函体4に作用する推進力も大きくなり、函体への影響も懸念されてくる。特に掘削深さが深く、敷設コンクリート函体高さに対して掘削深さが2倍程度より大きくなる程、オープンシールド機の推進制御はより困難になってくる。
【0020】
また、地下水のある緩い砂質系地盤で掘削深さが深い場合は、特に地下水位以深の切羽地山を掘削機6で掘削すると、フロント部18の刃口の地山を前方に向けて形成された地山法面は崩れやすくなる。そのため、地山法面が崩れないように法面勾配を小さくして法面長を長くすると、フロント機の両側に装着した可動分割刃口を伸長しても地山法面先端部が可動分割刃口先端部を超え、切羽の両側部の地山を抑えきれず、切羽地山が崩れる恐れがある。
【0021】
本発明の目的は前記不都合を解消し、地下水のある地盤でも対応可能で、かつ敷設する函体高さに対して土被りが大きく掘削深さが深い場合でも、函体を反力として充分施工が可能なオープンシールド機およびそれを用いたコンクリート函体の敷設工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するため本発明は、オープンシールド機としては、第1に、
左右の側壁板とこれら側壁板と同程度の長さでその間を連結する底板とから成り、上面を開口とした機体で、掘削を行うフロント部とコンクリート函体の設置を行うテール部を有し、テール部前端から後方に向けて推進ジャッキを左右縦列に配設し、敷設函体に推進反力をとり前進させる下部推進構造シールド機と、前面、後面及び上下面を開口とし、前記下部推進構造シールド機と延長方向の異なる上下位置で分割をして分割ブロックを構成し、各分割ブロックを推進・牽引用ジャッキで連結し、分割ブロックで分割された側板とそれに接する地山との摩擦抵抗を推進反力として各ブロックが順に前進する機体を上部推進構造シールド機と、下部推進構造シールド機と上部推進構造シールド機を接続するスライド・支持構造として、下部推進構造シールド機のフロント部とテール部の両側部上端内側に、それぞれ、上部推進構造シールド機が前方へスライドできるように上部推進構造スライド用レールを固定設置し、一方、上部推進構造シールド機のフロント部とテール部の両側部下端から下部推進構造シールド機材上端に接して前記上部推進構造シールド機を支える上部推進構造支持部材を設け、前記上部推進構造スライド用レールから外側に向けて尖頭状の張り出し部を設け、前記上部推進構造支持部材の内側に向けて尖頭状の張り出し部が設け、それらの間に遊間部を確保したことを要旨とするものである。
【0023】
第2に、上部推進構造シールド機の分割ブロックは、フロント部、ジャッキ部、テール部とからなること、第3に、下部推進構造シールド機にスライド用レールを設置し、そのスライド用レール上に上部推進構造シールド機を前方へ移動可能となるように設置したこと、第4に、上部推進構造シールド機は下部推進構造シールド機より横幅を大きくしたこと、第5に、下部推進構造シールド機および上部推進構造シールド機はフロント部の前端にスライド土留板を設けて可動分割刃口としたことを要旨とするものである。
【0024】
オープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法としては、第1に、請求項1または請求項2に記載のオープンシールド機を使用する函体の敷設方法であって、上部推進構造シールド機の刃口の切羽地山を掘削する工程と、上部推進構造シールド機のフロント部をジャッキ部、テール部側板と地山との摩擦抵抗を反力にとり第1の推進・牽引ジャッキを伸長し前記フロント部を前進する工程と、前記フロント部と前記テール部と地山との摩擦抵抗を反力にとり、前記第1の推進・牽引ジャッキを縮め、前記第2の推進・牽引ジャッキを伸長し、前記ジャッキ部を前進する工程と、前記フロント部と前記ジャッキ部と地山との摩擦抵抗を反力にとり、前記第2の推進・牽引ジャッキを縮め、前記テール部を前進する工程と、前記テール部の後端を埋め戻す工程との後、下部推進構造シールド機刃口の切羽地山を掘削しながら前記下部推進構造シールド機のシールドジャッキを伸長し、前記下部推進構造シールド機を前進する工程と、を繰り返しながらオープンシールド機を掘進させ、前記オープンシールド機が1函体長分前進後、前記シールドジャッキを縮め、前記下部推進構造シールド機のテール部内に函体を据え付けながら函体を地中に埋設することを要旨とするものである。
【0025】
第2に、フロント部を前進する工程は、上部推進構造シールド機の刃口の切羽地山を掘削する工程と、フロント部の前端にスライド土留板を設けて可動分割刃口としたスライド土留板を順次、前方へ伸長する工程と、前記スライド土留板とそれに接する地山との摩擦抵抗を反力にとり、スライドジャッキを縮め、推進ジャッキを伸長して前進する工程からなることを要旨とするものである。
【0026】
請求項1および請求項5記載の本発明によれば、オープンシールド機は上部と下部の推進構造部に分かれており、下部推進構造シールド機上を上部推進構造シールド機が前記上部推進構造シールド機両側板とそれに接する地山との摩擦抵抗を推進反力として前方へ推進しつつ、刃口前方に配置した掘削機で切羽地山を前方に向けて法面を形成しながら掘削する。そしてこの後に、下部推進構造シールド機の刃口部の切羽地山を同様に掘削しながら、前記下部推進構造シールド機が推進する。
【0027】
したがって、前記下部推進構造シールド機の切羽地山法面より前記上部推進構造の切羽地山法面が前方に位置するように掘削後、上部推進構造部は停止して下部推進構造シールド機が掘進する。
【0028】
このため、掘削深さが深い場合でのオープンシールド工法の掘進時の推進推力に比べ、下部推進構造シールド機の推進時は、下部推進楮部の切羽地山による推進抵抗力と前記下部構造部の両側板と地山との摩擦による抵抗力となり推進力は低減できる。その結果、敷設函体へ作用する推力も小さくなり函体への負荷が低減できる。
【0029】
また、下部推進構造シールド機が推進時、前記下部推進構造シールド機の刃口部の切羽地山の抵抗力の合力が、前記下部推進構造シールド機のシールドジャッキの推進力の合力と同程度の高さとなるため、掘削深さが深くなっても従来のオープンシールド工法の場合に比べて、前記下部推進構造シールド機の推進時のピッチングやローリング、ヨーイングの制御がしやすくなる。
【0030】
請求項2記載の本発明によれば、上部推進構造シールド機の分割ブロックを、フロント部、ジャッキ部、テール部との3つからなるものとして、最小限の分割ブロック数で必要な作用を得ることができる。
【0031】
請求項3記載の本発明によれば、下部推進構造シールド機にスライド用レールを設置し、そのスライド用レール上に上部推進構造シールド機を前方へ移動可能となるように設置したので、上部推進構造シールド機の前方へ移動が容易に行えるものである。
【0032】
請求項4記載の本発明によれば、従来のオープンシールド工法の場合や上部推進構造シールド機と下部推進構造シールド機の横幅が同一の場合では、掘削深さが深く緩い砂質系地盤の施工などにおいて、下部推進構造シールド機刃口部の底板付近を掘削すると、切羽地山法面45や刃口後方側板部の地山が崩れオープンシールド機近傍の地表までその影響が及ぶ恐れがある。
【0033】
オープンシールド機の上部推進構造シールド機の横幅を下部推進楮部の横幅より大きくした構造にすることにより、前記の恐れが無いか、あるいは低減可能である。
【0034】
また、掘削深さが深く緩い砂質系地盤などでは、上部推進構造シールド機の刃口が下部推進構造シールド機の可動分割刃口先端より前に位置し、そして前記上部推進構造シールド機の刃口部の切羽地山法面を凹状に大きくとり、その地山法面の法尻付近の両端部は前記下部推進構造シールド機の可動分割刃口とその側部の地山とで抑えることができる。
【0035】
また、切羽地山の状況に応じて前記上部推進構造シールド機の刃口部の切羽地山法面の勾配を小さくとることができ、法面の安定性が充分確保できる。
【0036】
したがって、前記下部推進構造シールド機の可動分割刃口部の切羽地山法面が崩れそうになっても前記上部推進構造シールド機刃口部の切羽地山法面の形状を保持できるため、オープンシールド機は掘進時の切羽地山の安定性を確保しながら安全に掘進と函体敷設をすることができる。
【0037】
さらに、下部推進構造シールド機は底板があることなどから地下水に対応できるので、地下水のある地盤でも上部推進構造シールド機下端より地下水位が低ければ、地下水のある地盤でも施工可能である。
【0038】
請求項5および請求項7記載の本発明によれば、比較的硬い地盤では推進時の第1の分割体は単一の刃口であると、刃口抵抗が大きくなり、各ブロックの側板と地山との摩擦抵抗による推進反力で推進できなくなる恐れがあり、緩い地盤で掘削時に切羽地山法面が保持できない場合は周辺の地山が緩みやすくなる。
【0039】
これに対してフロント部の本体フレーム両側部に複数段のスライド土留板を上部より順次前方へ伸長することにより、切羽地山法面や側部地山の土留めが順次でき、刃口部の地山の安定性を保持することができる。
【発明の効果】
【0040】
以上述べたように本発明のオープンシールド機およびそれを用いたコンクリート函体の敷設工法は、地下水のある地盤でも対応可能で、かつ敷設する函体高さに対して土被りが大きく掘削深さが深い場合でも、函体を反力として充分施工が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明のオープンシールド機の1実施形態を示す縦断側面図である。
【
図2】本発明のオープンシールド機の1実施形態を示す上部推進構造シールド機の平面図である。
【
図3】本発明のオープンシールド機の第1実施形態を示す下部推進構造シールド機の平面図である。
【
図6】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第1実施形態の第1工程から第3工程を示す説明図である。
【
図7】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第1実施形態の第4工程から第6工程を示す説明図である。
【
図8】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第1実施形態の第7工程から第9工程を示す説明図である。
【
図9】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第1実施形態の第10工程から第12工程を示す説明図である。
【
図10】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第1実施形態の第13工程から第14工程を示す縦断側面図である。
【
図11】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第2実施形態を示す縦断側面図である。
【
図12】本発明のオープンシールド機の第2実施形態を示す上部推進構造シールド機の平面図である。
【
図13】本発明のオープンシールド機の第2実施形態を示す下部推進構造シールド機の平面図である。
【
図15】本発明のオープンシールド機の第2実施形態を示す掘進時の平面図である。
【
図16】本発明のオープンシールド機の第3実施形態を示す縦断側面図である。
【
図17】本発明のオープンシールド機の第3実施形態を示す上部推進構造シールド機の平面図である。
【
図18】本発明のオープンシールド機の第3実施形態を示す下部推進構造シールド機の平面図である。
【
図21】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第2実施形態の第1工程から第3工程を示す説明図である。
【
図22】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第2実施形態の第4工程から第6工程を示す説明図である。
【
図23】本発明のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法の第2実施形態の第7工程を示す縦断側面図である。
【
図24】オープンシールド工法の施工状況を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明のオープンシールド機の1実施形態を示す縦断側面図、
図2は同上上部推進構造シールド機の平面図、
図3は同上下部推進構造シールド機の平面図で、図中1はオープンシールド機で、推進機構が異なる上部推進構造シールド機36と下部推進構造シールド機35を上下に接続した。
【0043】
前記上部推進構造シールド機36は、前面、後面及び上下面を開口とし、前記下部推進構造シールド機と延長方向の異なる位置で分割をして分割ブロックを構成したものであるが、この分割ブロックは一例として、前方よりフロント部、ジャッキ部、テール部から成る第1ブロック、第2ブロック、第3ブロックから成り、第1ブロック後端に第2ブロックの前端が、第2ブロックの後端に第3ブロックの前端が嵌合して配置する。
【0044】
第1ブロックと第2ブロックは両端がピン構造の推進・牽引ジャッキ37、第2ブロックと第3ブロックも同様に推進・牽引ジャッキ37が上下方向に複数段配置・接続されている。
【0045】
下部推進構造シールド機35は、
図4に示すように、左右の側壁板1aとこれら側壁板1aと同程度の長さでその間を連結する底板1bとから成り、上面を開口とした機体を前後方向で複数に分割し、フロント部18部としての前方の機体の後端にテール部19としての後方の機体の前端を嵌入し、相互の中折れ部34で屈曲可能とし、フロント部の前端に前方にスライドジャッキ17で伸長する可動分割刃口16を設け、前記
テール部19の前端から後方に向けて推進ジャッキ3を左右縦列に配設し、敷設函体4にプレスバー26を介して前記推進ジャッキを伸長して推進反力をとり前進させる構造である。フロント部18とテール部19は牽引ジャッキ31で連結されている。
【0046】
下部推進構造シールド機は35フロント部18の前端にスライド土留板を設けて可動分割刃口16とした。
【0047】
図4,
図5に示すように、下部推進構造シールド機35と上部推進構造シールド機36を接続するスライド・支持構造は、下部推進構造シールド機35のフロント部18とテール部19の両側部上端内側に、それぞれ、上部推進構造シールド機36が前方へスライドできるように上部推進構造スライド用レール48を固定設置した。三角形状の部材は前記レールの固定材である。
【0048】
上部推進構造スライド用レール48の構造は下部推進構造シールド機35に対して上部推進構造シールド機36が前進移動できるものであれば特に限定はないが、上部推進構造シールド機36に転送用の車輪を設け、鉄道のようなレール上を滑走させるものでもよい。
【0049】
上部推進構造シールド機36のフロント部18とテール部19の両側部下端から張り出した部材は、下部推進構造シールド機材上端に接して前記上部推進構造シールド機36を支える上部推進構造支持部材49である。
【0050】
前記上部推進構造スライド用レール48の上部から外側に向けて先端が尖頭状の張り出し部を設けている。同様に、上部推進構造支持部材49の下部から内側に向けても同様に先端が尖頭状の張り出し部が設けており、それらの間に遊間50を設けている。この遊間50があることにより、上部推進構造シールド機36が前進時に左右の振れが生じても追従できる。
【0051】
また、前記のとおり、前記上部推進構造スライド用レール49と上部推進構造支持部材49にはそれぞれ、先端が尖頭状の張り出し部を設けているので、前記上部推進構造シールド機36が遊間50以上に左右に振れても、その張り出し部が互いに当接するので上部推進構造シールド機が下部推進構造シールド機からのずれ落ちを防止できる。
【0052】
図中47は上部推進構造シールド機36と下部推進構造シールド機35の連結部への土砂侵入防止鉄板である。
【0053】
オープンシールド機の推進からコンクリート函体据え付けまでの手順を説明する。第1工程は、オープンシールド機1の推進前であり、第2工程は、上部推進構造シールド機36の第1ブロック36aの推進である。
【0054】
図示はしてないが、オープンシールド機1の前方に掘削機6を配置し、上部推進構造シールド機の下端部付近まで切羽地山に法面を形成しながら掘削する。掘削に伴って、前記第1ブロックの第1の推進・牽引ジャッキ後端を伸長しながら、第1ブロックと第2ブロックの両側の側部とそれに接する地山との摩擦抵抗を推進反力にし、前記第1ブロックを前進させる。
【0055】
第3工程は第2ブロック36bの推進で、第1の推進・牽引ジャッキ37後端を縮めながら第2の推進・牽引ジャッキ37後端を伸長して、第1ブロックと第2ブロックの両側部とそれに接する地山との摩擦抵抗を反力にとり、第2ブロック36bを前進させる。
【0056】
第4工程は第3ブロック36cの推進で、第2の推進・牽引ジャッキの後端を縮めながら、第1ブロック36aと第2ブロック36bの両側部とそれに接する地山との摩擦抵抗を反力にとり、第3ブロック36cを前進させる。また、第3ブロック36cを前進しながら、前記第3ブロック後部の埋め戻し5を行う。
【0057】
第5工程は、前記の上部推進構造シールド機36の1サイクル分の推進が終了後、下部推進構造シールド機を上部推進構造シールド機36の1サイクル分の推進長分を推進させる工程である。
【0058】
上部推進構造シールド機36は停止した状態とし、前方に配置した掘削機6で、前記下部推進構造シールド機35の切羽地山に法面を形成しながら掘削し、同時に、可動分割刃口16を可動分割刃口16内に装着したスライドジャッキ17を伸長して、前記可動分割刃口16を前方へ伸長して側部地山の土留めを行う。前記の作業と同時に、前記下部推進構造シールド機35は推進ジャッキ3を伸長してプレスバー26に押し当て、後方の函体4に推進反力をとり、前進させる。また、前進と同時に地中に発生する空隙へ裏込注入材29を充填していく。
【0059】
第6工程から第8工程は、前記の第2工程から第4工程と同様の作業を繰り返しであり、第9工程は第5工程を同様の作業となる。また、第10から第13工程は前記の第6工程から第9工程までと同一の作業となる。
【0060】
以上のように、上部推進構造シールド機36は各ブロックとそれらに接する地山との摩擦抵抗を反力に所謂“尺取虫”のように推進させ、下部推進構造シールド機35は前記上部推進構造36の1サイクル長分に応じて前記の作業を繰り返しながら前進させる。
【0061】
前記の推進作業を行いながら、下部推進構造シールド機35が1函体分推進後、第14工程に示すとおり、推進ジャッキ3を縮めてテール内部20に新たな函体4を据え付ける。以上の作業を繰り返しながら、地中に函体を敷設していく。
【0062】
次に、本発明のオープンシールド機の第2実施形態を説明する。
図11~
図15に示すように、上部と下部の推進構造部の平面形状は前記本発明の第1実施形態と同じであり、下部推進構造シールド機の断面方向の横幅より上部推進構造シールド機36の横幅を大きくしたオープンシールド機である。
【0063】
前記上部推進構造シールド機36の横幅を前記下部推進構造シールド機35の横幅より大きくすることにより、たとえば、掘削深さが深く緩い砂質系地盤の施工などにおいて、下部推進構造シールド機35の刃口部の底板付近を掘削により刃口後方側板部近傍の地山が崩れても、上部推進構造シールド機36の横幅を大きくしているので、上部推進構造シールド機36上端の地表まで緩みが生じ、崩壊が生じる恐れは無い。
【0064】
図15に示すように、掘削深さが深く緩い砂質系地盤などでは、上部推進構造シールド機36の刃口が下部推進構造シールド機35の可動分割刃口16先端より前に位置し、そして前記上部推進構造シールド機36の刃口2部の切羽地山法面44を凹状に大きくとること、及びその地山法面の法尻付近の両端部は前記下部推進構造シールド機の可動分割刃口16とその側部の地山平坦部46で抑えることができることから、法面の安定性が保持できる。
【0065】
さらに、切羽地山の状況に応じて前記上部推進構造シールド機の刃口2部の切羽地山法面44の勾配を小さくとることにより、切羽地山の掘削法面の安定性がより安全に保持可能となる。尚、作業手順は第1実施形態の発明の作業手順と同じであることから、説明は省略する。
【0066】
本実施形態では
図16~
図20に示すように、上部推進構造シールド機36
もフロント部の前端にスライド土留板39を設けて可動分割刃口とした。
【0067】
上部推進構造シールド機36は、前方よりフロント部本体フレーム41と前記フロント部本体フレーム41の両側部に複数段上下方向に配設したスライド土留板39から成る第1ブロック、ジャッキ・テール部から成る第2ブロックで、それぞれ各ブロックは、前記下部構造部より横幅を大きくしている。
【0068】
第1ブロックの前記スライド土留板39と本体フレーム41は両端ピン構造のスライド推進ジャッキで連結し、前記第1ブロックの本体フレーム41と前記第2ブロックは両端ピン構造の推進・牽引ジャッキ43で連結している。
【0069】
上部推進構造シールド機36と下部推進構造シールド機35は、前記発明の実施形態1と同様の
図4及び
図5に示す上部推進構造シールド機36のスライド・支持機構で接続されている。
【0070】
下部推進構造シールド機35は、第1実施形態と同様に、左右の側壁板1aとこれら側壁板1aと同程度の長さでその間を連結する底板1bとから成り、上面を開口とした機体を前後方向で複数に分割し、フロント部18部としての前方の機体の後端にテール部19としての後方の機体の前端を嵌入し、相互の中折れ部34で屈曲可能とし、フロント部の前端に前方にスライドジャッキ17で伸長する可動分割刃口16を設け、前記フロント部後端から後方に向けて推進ジャッキ3を左右縦列に配設し、敷設函体4にプレスバー26を介して前記推進ジャッキを伸長して推進反力をとり前進させる構造である。フロント部18とテール部19はけん引ジャッキ31で連結されている。
【0071】
次に、
図21から
図23により、本第3実施形態でのオープンシールド機1の推進から函体据え付けまでの手順を説明する。第1工程は、本実施形態のオープンシールド機1の推進前の縦断側面の状況である。第2工程は、最上段の中折れ部スライド土留板39の伸長及び切羽地山への貫入と切羽地山掘削である。
【0072】
図示はしていないがオープンシールド機前方に掘削機6を配置して、切羽地山に掘削法面を形成しながら掘削機6で掘削しつつ、第1ブロックのフロント部本体フレーム41両側部に複数段縦方向に配設した中折れ部スライド土留板39の内、最上段の中折れ部スライド土留板をスライド推進ジャッキ42を前方へ伸長して前方へ伸長し、切羽地山へ前記中折れ部スライド土留板39の先端部を貫入させる。
【0073】
同様に、第3工程、第4工程でそれぞれ2段目のスライド土留板39と3段目の中折れ部スライド土留板39をスライド推進ジャッキ42を伸長し、切羽地山へその先端部を貫入させる。
【0074】
第5工程で、中折れ部スライド土留板39とそれに接する地山との摩擦抵抗を反力にとり、すべてのスライド推進ジャッキ42を縮めながら、かつ、ジャッキ・テール部40である第2ブロックの推進・牽引ジャッキ43を伸長して、第1ブロックの本体フレーム41を前進させる。
【0075】
第6工程で、ジャッキ・テール部40の推進・牽引ジャッキ43を縮め、前記ジャッキ・テール部40を前進させる。同時に、自前記ジャッキ・テール部40の後端の埋め戻しを行う。
【0076】
次に、下部推進構造シールド機35の切羽地山に法面を形成しつつ掘削機6で掘削しながら、シールドジャッキ3を伸長してプレスバー26を介して後方の敷設函体に推進反力をとって、下部推進構造シールド機35を推進させる。
【0077】
また、下部推進構造シールド機35の推進に伴って地中に生じる空隙に裏込注入材29を充填する。
【0078】
尚、図示はしてないが第1実施形態と同様に、前記下部推進構造シールド機35が1函体長分前進終了後、シールドジャッキ3を縮め、テール内部20に新たな函体4を据え付ける。
【0079】
以上の手順を繰り返しながら、地中に函体を敷設していく。
【符号の説明】
【0080】
1…オープンシールド機
1a…側壁板 1b…底板
3…推進ジャッキ(シールドジャッキ)
4…コンクリート函体 5…埋戻し土
9…支圧壁 16…可動分割刃口
17…スライドジャッキ 18…フロント部
19…テール部 20…テール内部
21…中折ジャッキ 24…後方土留板
25…隔壁 26…プレスバー(押角)
27…揚重機 28…グラウトホール
29…裏込注入材 30…鋼矢板
31…けん引ジャッキ
34…中折れ部 35…下部推進構造シールド機
36…上部推進構造シールド機 36a…第1ブロック
36b…第2ブロック 36c…第3ブロック
37…推進・牽引ジャッキ(ピンジャッキ)
38…勘合部(上部推進構造シールド機)
39…スライド土留板 40…ジャッキ・テール部
41…フロント部本体フレーム
42…スライド推進ジャッキ(スライド土留板とフロント部本体フレーム連結用ピンジャッキ)
43…推進・牽引ジャッキ(フロント部本体フレームとジャッキ・テール部連結用ピンジャッキ)
44…上部推進構造シールド機切羽地山法面
45…下部推進構造シールド機切羽地山法面
46…地山平坦部(下部推進構造シールド機天端と同じ高さ)
47…連結部土砂侵入防止鉄板 48…上部推進構造スライド用レール
49…上部推進構造支持部材 50…遊間
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の側壁板とこれら側壁板と同程度の長さでその間を連結する底板とから成り、上面を開口とした機体で、掘削を行うフロント部とコンクリート函体の設置を行うテール部を有し、テール部前端から後方に向けて推進ジャッキを左右縦列に配設し、敷設函体に推進反力をとり前進させる下部推進構造シールド機と、
前面、後面及び上下面を開口とし、前記下部推進構造シールド機と延長方向の異なる位置で分割して分割ブロックを構成し、各分割ブロックを推進・牽引用ジャッキで連結し、分割ブロックで分割された側板とそれに接する地山との摩擦抵抗を推進反力として各ブロックが順に前進する機体を上部推進構造シールド機と、
下部推進構造シールド機と上部推進構造シールド機を接続するスライド・支持構造として、下部推進構造シールド機のフロント部とテール部の両側部上端内側に、それぞれ、上部推進構造シールド機が前方へスライドできるように上部推進構造スライド用レールを固定設置し、一方、上部推進構造シールド機のフロント部とテール部の両側部下端から下部推進構造シールド機材上端に接して前記上部推進構造シールド機を支える上部推進構造支持部材を設け、前記上部推進構造スライド用レールから外側に向けて尖頭状の張り出し部を設け、前記上部推進構造支持部材の内側に向けて尖頭状の張り出し部が設け、それらの間に遊間部を確保したことを特徴とするオープンシールド機。
【請求項2】
上部推進構造シールド機の分割ブロックは、フロント部、ジャッキ部、テール部とからなる請求項1記載のオープンシールド機。
【請求項3】
下部推進構造シールド機にスライド用レールを設置し、そのスライド用レール上に上部推進構造シールド機を前方へ移動可能となるように設置した請求項1または請求項2記載のオープンシールド機。
【請求項4】
上部推進構造シールド機は下部推進構造シールド機より横幅を大きくした請求項1または請求項2記載のオープンシールド機。
【請求項5】
下部推進構造シールド機および上部推進構造シールド機はフロント部の前端にスライド土留板を設けて可動分割刃口とした請求項1または請求項2記載のオープンシールド機。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のオープンシールド機を使用する函体の敷設方法であって、
上部推進構造シールド機の刃口の切羽地山を掘削する工程と、
上部推進構造シールド機のフロント部をジャッキ部、テール部側板と地山との摩擦抵抗を反力にとり第1の推進・牽引ジャッキを伸長し前記フロント部を前進する工程と、
前記フロント部と前記テール部と地山との摩擦抵抗を反力にとり、前記第1の推進・牽引ジャッキを縮め、前記第2の推進・牽引ジャッキを伸長し、前記ジャッキ部を前進する工程と、
前記フロント部と前記ジャッキ部と地山との摩擦抵抗を反力にとり、前記第2の推進・牽引ジャッキを縮め、前記テール部を前進する工程と、
前記テール部の後端を埋め戻す工程との後、
下部推進構造シールド機刃口の切羽地山を掘削しながら前記下部推進構造シールド機のシールドジャッキを伸長し、前記下部推進構造シールド機を前進する工程と、
を繰り返しながらオープンシールド機を掘進させ、
前記オープンシールド機が1函体長分前進後、前記シールドジャッキを縮め、前記下部推進構造シールド機のテール部内に函体を据え付けながら函体を地中に埋設することを特徴としたオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法。
【請求項7】
フロント部を前進する工程は、上部推進構造シールド機の刃口の切羽地山を掘削する工程と、フロント部の前端にスライド土留板を設けて可動分割刃口としたスライド土留板を順次、前方へ伸長する工程と、前記スライド土留板とそれに接する地山との摩擦抵抗を反力にとり、スライドジャッキを縮め、推進ジャッキを伸長して前進する工程からなる請求項6記載のオープンシールド機を用いたコンクリート函体の敷設工法。