(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147933
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
G03G15/16 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060692
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】下司 成人
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA09
2H200FA12
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA44
2H200GA47
2H200GB22
2H200HA12
2H200JA02
2H200JC03
2H200JC07
2H200JC09
2H200LA02
2H200LA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コストを抑えつつ、着脱時に一次転写ベルトを感光体から離間させておくことができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、着脱可能な一次転写ユニット42を備える。一次転写ユニットは、一次転写ローラ60Y、60M、60C、60Kを感光体ドラムに対して離接させる離接機構62を備える。離接機構は、複数のアーム部材76Y、76M、76C,76K、リンク部材78、カム部材80および第1把持部92を備える。離接機構では、駆動源からの駆動力を受けてカム部材が回転することで、リンク部材がカラー位置とモノクロ位置とに往復移動し、ユーザが第1把持部を用いてリンク部材を解除位置に移動させることで、一次転写ローラの全てが感光体ドラムから離間する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の感光体と装置本体に対して着脱可能に設けられた一次転写ユニットとを備える画像形成装置であって、
前記一次転写ユニットは、
前記複数の感光体からトナー像が転写される一次転写ベルト、
ブラック用一次転写ローラと複数のカラー用一次転写ローラとを含み、前記一次転写ベルトを挟んで前記感光体のそれぞれと対向するように配置される複数の一次転写ローラ、および
前記一次転写ローラを前記感光体に対して離接させる離接機構を備え、
前記離接機構は、
前記一次転写ローラのそれぞれを回転可能に支持する複数のアーム部材、
前記一次転写ローラの軸方向と直交する方向に往復移動可能に設けられ、移動位置に応じて前記アーム部材を変位させることで前記一次転写ローラを前記感光体に対して離接させるリンク部材、
前記リンク部材を押圧して往復移動させるカム部材、および
前記リンク部材の一方端部に設けられた把持部を備え、
駆動源からの駆動力を受けて前記カム部材が回転することで、前記一次転写ローラの全てが前記一次転写ベルトを挟んで前記感光体に当接するカラー位置と、前記ブラック用一次転写ローラが前記一次転写ベルトを挟んで前記感光体に当接すると共に、前記カラー用一次転写ローラのそれぞれが前記感光体から第1距離だけ離間するモノクロ位置とに前記リンク部材が往復移動し、
ユーザが前記把持部を用いて前記リンク部材を前記カラー位置または前記モノクロ位置から解除位置に移動させることで、前記一次転写ローラの全てが前記感光体から離間する、画像形成装置。
【請求項2】
ユーザが前記把持部を用いて前記リンク部材を前記カラー位置または前記モノクロ位置から前記解除位置に移動させることで、前記カラー用一次転写ローラのそれぞれが前記第1距離よりも大きい第2距離だけ前記感光体から離間する、請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記一次転写ユニットは、前記リンク部材が前記解除位置から前記カラー位置または前記モノクロ位置に戻ることを規制するロック機構を備える、請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記リンク部材が前記解除位置にある状態では、当該リンク部材と前記カム部材とは当接しない、請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記装置本体から前記一次転写ユニットを取り外すとき、前記把持部を前記装置本体の取出口側に引っ張ることで前記リンク部材が前記カラー位置または前記モノクロ位置から前記解除位置に移動し、前記リンク部材が前記解除位置に移動した後さらに前記把持部を引っ張ることで前記装置本体から前記一次転写ユニットが取り出される、請求項1または2記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は画像形成装置に関し、特にたとえば、複数の感光体と装置本体に着脱可能に設けられた一次転写ユニットとを備える、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の画像形成装置では、転写ユニット(一次転写ユニット)は、色成分ごとの複数の像担持体(感光体)に形成されたトナー像が順次転写される中間転写ベルト(一次転写ベルト)と、像担持体に対して中間転写ベルトを圧接状態に保持する圧接位置とその圧接状態を解除する退避位置との間で進退可能に設けられた複数の転写ローラ(一次転写ローラ)と、転写ローラを圧接位置側に付勢する転写ローラ付勢部材と、中間転写ベルトを昇降させるために、転写ローラ付勢部材の付勢力に抗して転写ローラを退避位置側に押圧可能なベルト昇降手段(離接機構)とを有する。また、装置本体側に押圧解除部材を設けてベルト昇降手段と係合させることにより、そのベルト昇降手段の転写ローラに対する押圧を解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、カム部材の回転によってカラー用一次転写ローラおよびブラック用一次転写ローラの双方を昇降(感光体から離接)させることが可能である。そして、装置本体から一次転写ユニットを取り外すときには、一次転写ローラが下がった状態のままでは一次転写ベルトと感光体ドラムとが接触して損傷することを防止するために、一次転写ローラのそれぞれ(延いては一次転写ベルト)を感光体から離間させておくようにしている。しかしながら、カム部材の駆動制御によって全ての一次転写ローラを昇降させると、離接機構が複雑になると共にコストがかかる。
【0005】
それゆえに、この開示の主たる目的は、新規な、画像形成装置を提供することである。
【0006】
この開示の他の目的は、コストを抑えつつ、装置本体から一次転写ユニットを取り外すときに一次転写ベルトを感光体から離間させておくことができる、画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の開示は、複数の感光体と装置本体に対して着脱可能に設けられた一次転写ユニットとを備える画像形成装置であって、一次転写ユニットは、複数の感光体からトナー像が転写される一次転写ベルト、ブラック用一次転写ローラと複数のカラー用一次転写ローラとを含み、一次転写ベルトを挟んで感光体のそれぞれと対向するように配置される複数の一次転写ローラ、および一次転写ローラを感光体に対して離接させる離接機構を備え、離接機構は、一次転写ローラのそれぞれを回転可能に支持する複数のアーム部材、一次転写ローラの軸方向と直交する方向に往復移動可能に設けられ、移動位置に応じてアーム部材を変位させることで一次転写ローラを感光体に対して離接させるリンク部材、リンク部材を押圧して往復移動させるカム部材、およびリンク部材の一方端部に設けられた把持部を備え、駆動源からの駆動力を受けてカム部材が回転することで、一次転写ローラの全てが一次転写ベルトを挟んで感光体に当接するカラー位置と、ブラック用一次転写ローラが一次転写ベルトを挟んで感光体に当接すると共に、カラー用一次転写ローラのそれぞれが感光体から第1距離だけ離間するモノクロ位置とにリンク部材が往復移動し、ユーザが把持部を用いてリンク部材をカラー位置またはモノクロ位置から解除位置に移動させることで、一次転写ローラの全てが感光体から離間する、画像形成装置である。
【0008】
第1の開示によれば、ユーザが把持部を用いてリンク部材を解除位置に手動で移動させることで、一次転写ローラの全て(延いては一次転写ベルトの全体)が感光体から離間する。したがって、コストを抑えつつ、簡単な構成および操作で、装置本体から一次転写ユニットを取り外すときに一次転写ベルトを感光体から離間させておくことができる。
【0009】
第2の開示は、第1の開示に従属し、ユーザが把持部を用いてリンク部材をカラー位置またはモノクロ位置から解除位置に移動させることで、カラー用一次転写ローラのそれぞれが第1距離よりも大きい第2距離だけ感光体から離間する。
【0010】
第3の開示は、第1または第2の開示に従属し、一次転写ユニットは、リンク部材が解除位置からカラー位置またはモノクロ位置に戻ることを規制するロック機構を備える。
【0011】
第4の開示は、第1または第2の開示に従属し、リンク部材が解除位置にある状態では、当該リンク部材とカム部材とは当接しない。
【0012】
第5の開示は、第1または第2の開示に従属し、装置本体から一次転写ユニットを取り外すとき、把持部を装置本体の取出口側に引っ張ることでリンク部材がカラー位置またはモノクロ位置から解除位置に移動し、リンク部材が解除位置に移動した後さらに把持部を引っ張ることで装置本体から一次転写ユニットが取り出される。
【発明の効果】
【0013】
この開示によれば、コストを抑えつつ、簡単な構成および操作で、装置本体から一次転写ユニットを取り外すときに一次転写ベルトを感光体から離間させておくことができる。
【0014】
この開示の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この開示の一実施例である画像形成装置の内部構造を示す概略断面図である。
【
図2】一次転写ベルトを省略した状態の一次転写ユニットを示す斜視図である。
【
図3】一次転写ベルトおよび前フレームの一部を省略した状態の一次転写ユニットを示す斜視図である。
【
図4】一次転写ローラの離接機構を説明するための図であって、カラー印刷モード時の一次転写ユニットを示す正面図である。
【
図5】一次転写ローラの離接機構を説明するための図であって、モノクロ印刷モード時の一次転写ユニットを示す正面図である。
【
図6】一次転写ローラの離接機構を説明するための図であって、着脱時の一次転写ユニットを示す正面図である。
【
図7】着脱時の一次転写ユニットのカム部材周辺部を示す図である。
【
図8】着脱時の一次転写ユニットのロック機構周辺部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施例]
図1を参照して、この発明の一実施例である画像形成装置10は、複写機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能などを有する複合機(MFP:Multifunction Peripheral)であって、電子写真方式によって印刷用紙に多色または単色の画像を形成する。詳細は後述するように、画像形成装置10は、並設される複数の感光体ドラム36(感光体の一例)から一次転写ベルト54にトナー像を一次転写し、一次転写ベルト54から印刷用紙にトナー像を二次転写する中間転写方式の画像形成装置である。
【0017】
先ず、画像形成装置10の構成について概略的に説明する。なお、この明細書では、ユーザの立ち位置に対向する面、つまり図示しない操作ユニットが設けられる側の面を前面(正面)として画像形成装置10およびその構成部材の前後方向(奥行方向)を規定する。なお、操作ユニットは、
図1の紙面の手前側に設けられている。また、画像形成装置10およびその構成部材の左右方向(横方向)は、ユーザから画像形成装置10を見た状態を基準として規定する。
【0018】
図1に示すように、画像形成装置10は、装置本体12と、その上方に配置される画像読取装置14とを含む。画像読取装置14は、透明材によって形成される原稿載置台16を備える。原稿載置台16の上側には、ヒンジ等を介して原稿押さえカバー18が開閉自在に取り付けられる。この原稿押さえカバー18には、原稿載置トレイ20に載置された原稿を画像読取位置22に対して1枚ずつ自動的に給紙する自動原稿送り装置(ADF:Auto Document Feeder)24が設けられる。また、原稿載置台16の前面側には、ユーザによる印刷指示などの入力操作を受け付ける操作ユニットが設けられる。この操作ユニットには、タッチパネルディスプレイ等のディスプレイおよび各種の操作ボタン等が適宜設けられる。
【0019】
また、画像読取装置14には、光源、複数のミラー、結像レンズおよびラインセンサ等を備える画像読取部26が内蔵される。画像読取部26は、原稿表面を光源によって露光し、原稿表面から反射した反射光を複数のミラーによって結像レンズに導く。そして、結像レンズによって反射光をラインセンサの受光素子に結像させる。ラインセンサでは、受光素子に結像した反射光の輝度や色度が検出され、原稿表面の画像に基づく画像データが生成される。ラインセンサとしては、CCD(Charge Coupled Device)またはCIS(Contact Image Sensor)等が用いられる。
【0020】
装置本体12には、CPUおよびメモリ等を含む制御部28、および画像形成部30などが設けられる。制御部28は、ユーザによる操作ユニットへの入力操作などに応じて、画像形成装置10の各部位に制御信号を送信し、画像形成装置10に種々の動作を実行させる。
【0021】
画像形成部30は、露光装置32、現像装置34、感光体ドラム36、クリーナユニット38、帯電装置40、一次転写ユニット42、二次転写ユニット44および定着ユニット46等を備え、給紙カセット48または手差し給紙トレイ50から搬送される印刷用紙上に画像を形成し、画像形成済みの印刷用紙を排紙トレイ52に排出する。印刷用紙上に画像を形成するための画像データとしては、画像読取部26で読み取った画像データまたは外部コンピュータから送信された画像データ等が利用される。
【0022】
ここで、画像形成装置10において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の4色のカラー画像に応じたものである。このため、現像装置34、感光体ドラム36、クリーナユニット38および帯電装置40のそれぞれは、各色に応じた4種類の潜像を形成するように4個ずつ設けられ、これらによって4つの画像ステーション(プロセスユニットとも呼ばれる。)が構成される。4つの画像ステーションは、一次転写ベルト54の表面の走行方向(周回方向)に沿って一列に並んで配置され、一次転写ベルト54の走行方向における下流側から、つまり二次転写ユニット44に近い側から、ブラック用、シアン用、マゼンタ用およびイエロー用の順に配置される。ただし、各色の配置順は、適宜変更可能である。
【0023】
なお、符号に与える添え字K、C、MおよびYは、いずれかの色用に設けられた要素であることを示すためのものであり、添え字K、C、MおよびYのそれぞれは、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローのそれぞれを示す。たとえば、
図1における符号36Kは、ブラック用の感光体ドラムであることを示し、符号60Kは、ブラック用の一次転写ローラであることを示す。ただし、各部位の説明において、いずれの色用であるかの区別を特に要しない場合は、添え字K、C、MおよびYは省略して総括的に説明する。
【0024】
感光体ドラム36は、導電性を有する円筒状のスリーブ(基体)の表面に感光層が形成された像担持体である。感光体ドラム36のそれぞれは、その軸線回りに回転可能に設けられる。帯電装置40は、感光体ドラム36の表面を所定の電位に帯電させる部材である。また、露光装置32は、レーザ出射部および反射ミラー等を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)として構成され、帯電された感光体ドラム36の表面を露光することによって、画像データに応じた静電潜像を感光体ドラム36の表面に形成する。現像装置34は、感光体ドラム36の表面に形成された静電潜像を4色(YMCK)のトナーによって顕像化するものである。また、クリーナユニット38は、現像および画像転写後において感光体ドラム36の表面に残留したトナーを除去する。
【0025】
一次転写ユニット42は、一次転写ベルト54、駆動ローラ56、従動ローラ58、4つの一次転写ローラ60および離接機構62などを備え、感光体ドラム36の上方に配置される。なお、一次転写ユニット42、一次転写ベルト54および一次転写ローラ60のそれぞれは、中間転写ユニット、中間転写ベルトおよび中間転写ローラとも呼ばれる。
【0026】
一次転写ベルト54は、複数の張架ローラによって所定の周回方向(
図1では反時計回り)に周回移動可能に張架される無端帯状のベルトであって、並設される複数の感光体ドラム36に外周面(下面)が沿うように配置される。複数の張架ローラには、駆動ローラ56および従動ローラ58等が含まれ、これら張架ローラのそれぞれは、軸部が前後方向に延びるように設けられる。画像形成時には、一次転写ベルト54の外周面が感光体ドラム36の表面に当接した状態にされる。
【0027】
駆動ローラ56は、図示しない駆動部によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。この駆動ローラ56の回転駆動に伴って、一次転写ベルト54が所定の周回方向に周回移動される。従動ローラ58は、一次転写ベルト54の周回移動に伴って回転すると共に、一次転写ベルト54に一定の張力を与えて一次転写ベルト54の弛みを防止する。
【0028】
一次転写ローラ60は、対応する感光体ドラム36に形成されたトナー像を一次転写ベルト54に転写(一次転写)させるための部材であって、一次転写ベルト54を挟んで各色の感光体ドラム36と対向する位置のそれぞれに配置される。一次転写ローラ60に一次転写電流が供給されると、一次転写位置において感光体ドラム36と一次転写ベルト54との間に転写電界が形成される。この一次転写位置に形成される転写電界の作用により、感光体ドラム36に形成されたトナー像が一次転写ベルト54の外周面に転写される。
【0029】
また、一次転写ローラ60のそれぞれは、離接機構62によって、対応する感光体ドラム36に対して離接する方向(上下方向)に変位可能とされる。そして、一次転写ベルト54の感光体ドラム36に対する離接は、一次転写ローラ60が変位することで実行される。離接機構62の具体的構成については、後述する。
【0030】
二次転写ユニット44は、一次転写ベルト54に形成されたトナー像を印刷媒体に転写させるための二次転写ローラを備え、一次転写ベルト54を挟んで駆動ローラ56と対向するように設けられる。この二次転写ローラと一次転写ベルト54との間の二次転写ニップ部を印刷用紙が通過することによって、一次転写ベルト54に形成されたトナー像が印刷用紙に転写される。
【0031】
定着ユニット46は、ヒートローラおよび加圧ローラを備え、二次転写ユニット44の上方に配置される。ヒートローラは、所定の定着温度となるように設定されている。ヒートローラと加圧ローラとの間のニップ域(定着ニップ部)を印刷用紙が通過することによって、印刷用紙に転写されたトナー像が加熱および圧接されて、印刷用紙に対してトナー像が熱定着される。
【0032】
また、装置本体12内には、給紙カセット48または手差し給紙トレイ50からの印刷用紙をレジストローラ68、二次転写ユニット44(二次転写ニップ部)および定着ユニット46を経由させて排紙トレイ52に送るための第1用紙搬送路L1が形成される。また、印刷用紙に対して両面印刷を行う際に、表面側の印刷が終了して定着ユニット46を通過した後の印刷用紙を、二次転写ユニット44の用紙搬送方向の上流側において第1用紙搬送路L1に戻すための第2用紙搬送路L2が形成される。この第1用紙搬送路L1および第2用紙搬送路L2には、印刷用紙に対して補助的に推進力を与えるための複数の搬送ローラ66が適宜設けられる。
【0033】
次に、一次転写ユニット42が備える離接機構62の構成について具体的に説明する。ただし、
図2~
図6においては、一次転写ユニット42の構造を分かり易くするため、一次転写ベルト54を省略している。また、
図3~
図6においては、離接機構62の動作を分かり易くするため、前フレーム70の一部を省略している。
【0034】
図2および
図3に示すように、一次転写ユニット42は、一次転写ベルト54、駆動ローラ56、従動ローラ58、4つの一次転写ローラ60および離接機構62などを備える。これらは、左右方向(駆動ローラ56等の張架ローラの軸方向と直交する方向)に延びる略矩形板状の前フレーム70および後フレーム72(以下、まとめて「ユニットフレーム70,72」と言うことがある。)によって、直接または間接的に、所定の配置態様で保持される。
【0035】
また、一次転写ユニット42は、装置本体12に対して着脱可能に設けられる。図示は省略するが、この実施例では、装置本体12の右側面に設けられた右ドアを開けると、取出口が開放されて、一次転写ユニット42の右端部に設けられた第1把持部92および第2把持部98が外部に露出する。そして、第1把持部92を把持して一次転写ユニット42を取出口側(右側)に引っ張ることで、装置本体12から一次転写ユニット42を取り外すことができる。つまり、一次転写ユニット42は、装置本体12の取出口から右方向に横抜きされる。一方、装置本体12に一次転写ユニット42を取り付ける際には、一次転写ユニット42の左部を装置本体12に嵌め入れた後、第2把持部98を把持して一次転写ユニット42を装着位置まで左側に押し込むとよい。
【0036】
離接機構62は、感光体ドラム36に対して一次転写ローラ60(延いては一次転写ベルト54)を離接させるための機構である。一次転写ベルト54の感光体ドラム36に対する離接は、一次転写ローラ60が、一次転写ベルト54の内周面を押圧して感光体ドラム36と一次転写ベルト54とを当接させる押圧位置と、一次転写ベルト54に対する押圧を解除して一次転写ベルト54と感光体ドラム36とを離間させる離間位置とに変位することによって行われる。すなわち、一次転写ローラ60のそれぞれは、一次転写ベルト54を挟んで感光体ドラム36と一次転写ローラ60とが当接する押圧位置と、感光体ドラム36から一次転写ローラ60が離れる離間位置とに変位可能である。この実施例では、カラー用一次転写ローラ60Y,60M,60Cは、連動して一体的に変位され、ブラック用一次転写ローラ60Kは、カラー用一次転写ローラ60Y,60M,60Cから独立して変位可能とされる。
【0037】
たとえば、カラー画像を形成するカラー印刷モード時(
図4参照)には、一次転写ローラ60の全てが押圧位置に配置され、全ての感光体ドラム36が一次転写ベルト54に当接される。そして、各感光体ドラム36に形成された各色のトナー像が一次転写ベルト54に順次重ねて転写されることで、一次転写ベルト54の外周面に多色のトナー像が形成される。また、モノクロ画像を形成するモノクロ印刷モード時(
図5参照)には、カラー用一次転写ローラ60Y,60M,60Cが離間位置に配置される一方で、ブラック用一次転写ローラ60Kが押圧位置に配置され、ブラック用感光体ドラム36Kのみが一次転写ベルト54に当接される。そして、ブラック用感光体ドラム36Kのみにトナー像が形成され、一次転写ベルト54の外周面には、ブラックのトナー像のみが転写される。さらに、装置本体12から一次転写ユニット42を着脱する着脱時(
図6参照)には、全ての一次転写ローラ60が離間位置に配置され、全ての感光体ドラム36が一次転写ベルト54から離間される。なお、この実施例では、待機モード時(非画像形成時)には、ブラック用一次転写ローラ60Kは押圧位置に配置されたままとなる。
【0038】
具体的には、
図2および
図3と共に
図4を参照して、離接機構62は、4つのアーム部材76、リンク部材78およびカム部材80等を備える。4つのアーム部材76、リンク部材78およびカム部材80のそれぞれは、前フレーム70側および後フレーム72側のそれぞれに設けられる一対の部材である。また、4つのアーム部材76は、カラー用アーム部材76Y,76M,76Cとブラック用アーム部材76Kとを含む。
【0039】
アーム部材76は、略L字状に形成され、その一方端部に一次転写ローラ60が回転可能に支持される。つまり、アーム部材76は、一次転写ローラ60を回転可能に支持する軸受として機能する。一方、アーム部材76の他端部には、リンク部材78に形成された押圧部82からの押圧力を受ける押圧受部84が形成される。また、アーム部材76の屈曲部は、ユニットフレーム70,72に形成された支持突起86によって回動可能に支持される。すなわち、アーム部材76は、屈曲部を支点として回動可能であり、アーム部材76が回動(変位)することで、一次転写ローラ60が上下方向に移動(感光体ドラム36に対して離接)する。
【0040】
また、アーム部材76を支持する支持突起86には、アーム部材76を付勢するねじりばね等の第1付勢部材88が設けられる。この第1付勢部材88は、一次転写ローラ60が下方、つまり感光体ドラム36側に移動する方向(
図4では反時計回り)にアーム部材76を付勢する。
【0041】
リンク部材78は、左右方向に延びる略矩形板状に形成され、その長手方向(左右方向)に往復移動可能なように、ユニットフレーム70,72の内面側(前フレーム70の後面側および後フレーム72の前面側)に設けられる。つまり、リンク部材78の移動方向と一次転写ユニット42の着脱方向とは、同じ方向である。このリンク部材78には、アーム部材76の押圧受部84の右側の位置のそれぞれに、アーム部材76を押圧して変位させるための押圧部82が形成される。また、リンク部材78には、後述するカム部材80の左側の位置に、カム部材80からの押圧力を受ける壁部90が形成される。
【0042】
また、リンク部材78の右端部(一方端部)には、ユーザが装置本体12から一次転写ユニット42を取り外すときに用いられる第1把持部92が設けられる。第1把持部92の形状は、特に限定されないが、この実施例では、ユーザが指を引っ掛け易いように第1把持部92をリング状に形成している。また、リンク部材78の左端部(他端部)には、リンク部材78を付勢する引張コイルばね等の第2付勢部材94が設けられる。第2付勢部材94の一端は、ユニットフレーム70,72に固定され、第2付勢部材94の他端は、リンク部材78に固定される。リンク部材78は、この第2付勢部材94によって、左側(後述するカラー位置側)に付勢される。
【0043】
詳細は後述するように、このようなリンク部材78は、移動位置に応じてアーム部材76を変位させることで、感光体ドラム36に対して一次転写ローラ60を離接させる。この実施例のリンク部材78は、左側の移動位置から順に、カラー位置(
図4参照)、モノクロ位置(
図5参照)、および解除位置(フリー位置;
図6参照)の3つの位置に往復移動可能である。
【0044】
カム部材80は、リンク部材78を押圧して往復移動させるための部材であって、ユニットフレーム70,72によって回転可能に保持されるカム軸96の両端部に取り付けられる。カム軸96には、図示しない駆動モータが連結されており、駆動モータの駆動力でカム軸96が回転することによって、カム部材80が回転する。駆動モータは、ステッピングモータ等の汎用のモータであって、制御部28によって制御される。カム部材80は、たとえば板カムであり、その外周面とカム軸96との距離は、カム部材80の位相(回転角度)によって変化する。詳細は後述するように、この実施例のカム部材80は、制御部28からの指示に基づいて、リンク部材78をカラー位置とモノクロ位置とに往復移動させる。
【0045】
また、ユニットフレーム70,72の右端部(一方端部)には、ユーザが装置本体12に一次転写ユニット42を取り付けるときに用いられる第2把持部98が設けられる。
【0046】
このような離接機構62を備える一次転写ユニット42では、上述のように、カラー印刷モード時、モノクロ印刷モード時および着脱時の3つの状況に応じて、一次転写ローラ60の位置が移動される。この一次転写ローラ60の変位は、リンク部材78がカラー位置、モノクロ位置および解除位置のそれぞれに移動することで実行される。すなわち、リンク部材78がカラー位置にある状態では、一次転写ローラ60の全てが一次転写ベルト54を挟んで感光体ドラム36に当接する。また、リンク部材78がモノクロ位置にある状態では、ブラック用一次転写ローラ60Kが一次転写ベルト54を挟んでブラック用感光体ドラム36Kに当接すると共に、カラー用一次転写ローラ60Y,60M,60Cのそれぞれがカラー用感光体ドラム36Y,36M,36Cから離間する。さらに、リンク部材78が解除位置にある状態では、一次転写ローラ60の全てが感光体ドラム36から離間する。
【0047】
そして、この実施例では、制御部28からの指示に応じて、駆動源からの駆動力を受けたカム部材80が回転することで、リンク部材78(延いては一次転写ローラ60)がカラー位置とモノクロ位置とに往復移動される。一方で、カラー位置またはモノクロ位置から解除位置へのリンク部材78の移動は、第1把持部92を用いたユーザによる手動操作によって実行される。このように、ブラック用一次転写ローラ60Kについては、駆動制御ではなく、ユーザによる手動で変位させるようにすることで、離接機構62を簡略化できると共にコストを削減できる。以下、離接機構62の動作について具体的に説明する。
【0048】
図4に示すように、カラー印刷モード時には、カム部材80は、制御部28からの指示に従って適宜回転され、その外周面とカム軸96との距離が最も小さくなる位相で保持される。また、リンク部材78は、第2付勢部材94の付勢力によって最も左側の位置であるカラー位置に保持される。リンク部材78がカラー位置にある状態では、リンク部材78の各押圧部82は、各アーム部材76の押圧受部84から離間しており、各アーム部材76は、第1付勢部材88の付勢力によって各一次転写ローラ60が押圧位置にある状態を保持する。
【0049】
図5に示すように、モノクロ印刷モード時には、カム部材80は、制御部28からの指示に従って適宜回転され、その外周面とカム軸96との距離が最も大きくなる位相で保持される。リンク部材78は、カム部材80によって壁部90が右側に押されることで、第2付勢部材94の付勢力に抗ってモノクロ位置に移動する。リンク部材78がモノクロ位置にある状態では、リンク部材78のブラック用押圧部82Kは、ブラック用アーム部材76Kの押圧受部84Kから離間しており、ブラック用アーム部材76Kは、ブラック用一次転写ローラ60Kが押圧位置に配置された状態を保持する。一方で、リンク部材78のカラー用押圧部82Y,82M,82Cがカラー用アーム部材76Y,76M,76Cの押圧受部84Y,84M,84Cを右側に押圧することで、カラー用アーム部材76Y,76M,76Cがカラー用一次転写ローラ60Y,60M,60Cを持ち上げる方向(
図5では時計回り)に回転して、カラー用一次転写ローラ60Y,60M,60Cのそれぞれが対応するカラー用感光体ドラム36Y,36M,36Cから離間する。
【0050】
この際、カラー用一次転写ローラ60Y,60M,60Cとカラー用感光体ドラム36Y,36M,36Cとが離間する距離は、一次転写ベルト54をカラー用感光体ドラム36Y,36M,36Cから離間させるために必要な最低限の距離(第1距離)とされる。これは、カラー用一次転写ローラ60Y,60M,60Cと対応するカラー用感光体ドラム36Y,36M,36Cとの離間距離を大きくすると、カラー用一次転写ローラ60Y,60M,60Cを再度当接位置に変位させるとき(モノクロ印刷モードからカラー印刷モードに変更するとき)に、高速で変位させた場合には衝撃で大きな音が発生してしまう恐れがあり、低速で変位させた場合には時間がかってしまうからである。
【0051】
そして、
図6に示すように、装置本体12から一次転写ユニット42を取り外すときには、ユーザが第1把持部92を装置本体12の取出口側(右側)に引っ張ることで、リンク部材78がカラー位置またはモノクロ位置から解除位置に移動する。リンク部材78が解除位置にある状態では、リンク部材78のブラック用押圧部82Kがブラック用アーム部材76Kの押圧受部84Kを右側に押圧することで、ブラック用アーム部材76Kがブラック用一次転写ローラ60Kを持ち上げる方向(
図6では時計回り)に回転して、ブラック用一次転写ローラ60Kがブラック用感光体ドラム36Kから離間する。
【0052】
また、リンク部材78がカラー位置またはモノクロ位置から解除位置に移動するときには、リンク部材78のカラー用押圧部82Y,82M,82Cがカラー用アーム部材76Y,76M,76Cの押圧受部84Y,84M,84Cをさらに右側に押圧することで、カラー用一次転写ローラ60Y,60M,60Cはさらに上方に変位される。そして、カラー用一次転写ローラ60Y,60M,60Cと対応するカラー用感光体ドラム36Y,36M,36Cとの離間距離は、第1距離よりも大きい第2距離となる。これによって、一次転写ベルト54を感光体ドラム36から大きく退避させることができるので、装置本体12から一次転写ユニット42を取り外すときに、一次転写ベルト54が感光体ドラム36等と干渉して損傷してしまうことをより確実に防止できる。
【0053】
リンク部材78が解除位置に移動した後、さらに第1把持部92を引っ張ることで、装置本体12から一次転写ユニット42が取り外される。すなわち、この実施例では、第1把持部92を用いて一次転写ユニット42を取り外す手動操作と連動して、ブラック用一次転写ローラ60Kがブラック用感光体ドラム36Kから離間すると共に、カラー用一次転写ローラ60Y,60M,60Cが対応するカラー用感光体ドラム36Y,36M,36Cから第1距離よりも大きい第2距離まで離間する。
【0054】
また、この実施例では、
図6および
図7に示すように、リンク部材78が解除位置にあるときには、カム部材80の位相(回転角度)によらず、リンク部材78とカム部材80とは当接しないように構成される。これによって、リンク部材78が解除位置にあるときに誤ってカム部材80が回転されても、リンク部材78およびカム部材80に負荷がかかって破損することを防止できる。
【0055】
さらに、この実施例では、
図8からよく分かるように、一次転写ユニット42は、リンク部材78が解除位置にあるときに、リンク部材78が第2付勢部材94の付勢力によって左側に移動することを規制するロック機構100を備える。つまり、ロック機構100は、リンク部材78が解除位置からカラー位置またはモノクロ位置に戻ることを規制する。
【0056】
具体的には、ロック機構100は、ユニットフレーム70,72の右端部に設けられた第1係合部102と、リンク部材78の右端部に設けられた第2係合部104とを含む。第1係合部102は、三角形状の係止突起であって、ユニットフレーム70,72の上面から上方に突出する。第1係合部102(係止突起)は、右側へ向かって上り勾配となる傾斜面を左側面に有し、略鉛直方向に延びるストッパ面を右側面に有する。一方、リンク部材78の右端部には、上下方向に弾性変形可能な突出片106が形成される。第2係合部104は、矩形状の係止孔であって、この突出片106に形成される。
【0057】
そして、リンク部材78が解除位置にあるときに、第1係合部102のストッパ面に第2係合部104の内縁部が係止されることで、リンク部材78が左側に移動することが規制される。また、ロック機構100による規制(第1係合部102と第2係合部104との係合)は、突出片106を少し持ち上げることで、解除可能である。この実施例では、突出片106の先端部から斜め右下向きに突出する扇状の解除部108が形成される。そして、リンク部材78が解除位置にある状態の一次転写ユニット42を装置本体12に装着した後、右ドアを閉めると、右ドアの内側面の一部(たとえば右ドアに取り付けられた二次転写ユニット44のフレームの一部)が解除部108に当接して突出片106を持ち上げることで、ロック機構100の規制が解除されて、リンク部材78が解除位置からモノクロ位置またはカラー位置に自動的に移動する。ただし、解除部108は必ずしも設けられる必要はなく、ユーザが突出片106を持ち上げることで、ロック機構100による規制を手動で解除するようにしてもよい。
【0058】
また、図示は省略するが、画像形成装置10は、装置本体12からの一次転写ユニット42の取外しを規制するユニットロック機構を備える。たとえば、ユニットロック機構は、前後方向に往復移動可能に一次転写ユニット42に設けられたロックピンを含む。このロックピンは、リンク部材78と連動しており、リンク部材78がカラー位置またはモノクロ位置にある状態では、装置本体12の本体フレームに形成された係止孔に係止されることで装置本体12からの一次転写ユニット42の取外しを規制するが、この規制は、カラー位置またはモノクロ位置から解除位置へのリンク部材78の移動に伴って解除される。
【0059】
以上のように、この実施例によれば、ユーザが第1把持部92を用いてリンク部材78を解除位置に手動で移動させることで、一次転写ローラ60の全て(延いては一次転写ベルト54の全体)が感光体ドラム36から離間する。したがって、コストを抑えつつ、簡単な構成および操作で、装置本体12から一次転写ユニット42を取り外すときに一次転写ベルト54を感光体ドラム36から離間させておくことができる。
【0060】
また、装置本体12から一次転写ユニット42を取り外す手動操作と連動して、一次転写ローラ60の全てが感光体ドラム36から離間するので、一次転写ローラ60を離間させるための特別な操作が必要なく、利便性に優れる。
【0061】
なお、上述の実施例では、画像形成装置10として、複写機、ファクシミリおよびプリンタ等を組み合わせた複合機を例示したが、画像形成装置10は、複写機、ファクシミリおよびプリンタ等のいずれか、またはこれらの少なくとも2つを組み合わせた複合機であってもよい。
【0062】
また、上で挙げた具体的な部品形状および寸法などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 …画像形成装置
28 …制御部
30 …画像形成部
36 …感光体ドラム(感光体)
42 …一次転写ユニット
44 …二次転写ユニット
54 …一次転写ベルト
60 …一次転写ローラ
62 …離接機構
76 …アーム部材
78 …リンク部材
80 …カム部材
92 …第1把持部(把持部)
100 …ロック機構