(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147934
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】二重管ドリルロッドの接続用治具
(51)【国際特許分類】
E21B 19/18 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
E21B19/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060693
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000168506
【氏名又は名称】鉱研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104363
【弁理士】
【氏名又は名称】端山 博孝
(72)【発明者】
【氏名】宇都 巨貴
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129EA16
2D129EA21
2D129EC11
2D129EC36
(57)【要約】
【課題】二重管ドリルロッドの接続時にインナロッドがアウタロッドから脱落するのを防止することができる、簡単な構造の治具を提供する。
【解決手段】
インナロッドの後端部外周に装着され、前端部11aにインナロッドの外周に係合する係合部13、13を有するインナロッド装着部11と、インナロッド装着部11の後端部11bに前端部方向に延びるように設けられた延伸部15を有し、延伸部15とインナロッド装着部11の外周との間に、アウタロッドの後端部の周方向の一部が挿入されてアウタロッドに係合するアウタロッド装着部12とを備えてなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタロッドと、このアウタロッド内に挿入されるインナロッドとの二重管からなり、掘削の進行に伴って先行するドリルロッドの後端部に後行するドリルロッドの前端部が順次接続される二重管ドリルロッドにおいて、接続時に後行するドリルロッドの前記インナロッドが前記アウタロッドから脱落するのを防止するための治具であって、
前記インナロッドの後端部外周に装着され、前端部に前記インナロッドの外周に係合する係合部を有するインナロッド装着部と、
このインナロッド装着部の後端部に前端部方向に延びるように設けられた延伸部を有し、この延伸部と前記インナロッド装着部の外周との間に、前記アウタロッドの後端部の周方向の一部が挿入されて前記アウタロッドに係合するアウタロッド装着部と
を備えてなることを特徴とする二重管ドリルロッドの接続用治具。
【請求項2】
前記インナロッド装着部は、前記インナロッドの外周を周方向に部分的に被う部分円筒形に形成されていることを特徴とする請求項1記載の二重管ドリルロッドの接続用治具。
【請求項3】
前記インナロッド装着部の前記係合部は、前記インナロッドの外周のスパナ掛け部に係合するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の二重管ドリルロッドの接続用治具。
【請求項4】
前記インナロッド装着部の前記係合部は、前記インナロッドの外周のネジ切り上げ部に係合するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の二重管ドリルロッドの接続用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二重管ドリルロッドの接続用治具に関し、より詳細には、ドリルロッドの接続時にアウタロッドからインナロッドが脱落するのを防止するための治具に関する。
【背景技術】
【0002】
二重管式ロータリーパーカッションドリルは、インナビットとアウタビットに回転力と打撃力を与えて掘削する機構を有するため、岩盤のみならず掘削が困難な礫層、転石層でもスピーディな掘削が行えるドリルとして知られている。また、ドリルロッドはアウタロッドとインナロッドとの二重管からなるので、崩壊層、破砕帯でも孔壁の崩壊を招くことなく、能率のよい掘削が行える。
【0003】
このような二重管式の掘削装置では、ドリルロッドはアウタロッド内にインナロッドが挿入された状態で所定の長さ寸法を有するユニット化され、掘削の進行に伴って先行するドリルロッドの後端部に後行するドリルロッドの前端部を順次接続している。
【0004】
ドリルロッドの接続時には、後行するドリルロッドをクレーンで吊り下げたり、あるいは人力で抱えるなどの操作がなされるが、インナロッドがアウタロッド内からずり落ち、作業者の手や足を挟む等の災害が発生するおそれがある。
【0005】
従来、上記のようなドリルロッド接続時における危険を回避するために、クレーンによる吊り下げの場合には、
図7に示すような対策がなされている。すなわち、二重管ドリルロッド50のアウタロッド51を把持する把持具53に加えて、インナロッド52を把持する把持具54を使用し、アウタロッド51及びインナロッド52を個別に把持してクレーンの吊り具55で吊り下げるという方法である。
【0006】
しかしながら、この方法の場合、インナロッド52を把持具54で把持するために、インナロッド52を
図7に+αで示す長さ寸法だけアウタロッド51から引き出さなければならない。このため、二重管ドリルロッド50の全長が長くなり、短ストロークの掘削機の場合にはストローク内に収めることが不可能になることがある。
【0007】
特許文献1には、この出願の発明と目的を同じくする「二重管式ボーリングロッドの接続方法」が開示されている。しかしながら、同文献に記載の「ストッパー2」は構造が複雑であり、簡便なものであるとはいえない。また、ドリルロッドの全長が長くならざるをえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、ドリルロッドの全長が長くなることがなく、接続時にインナロッドがアウタロッドから脱落するのを防止することができる、簡単な構造の二重管ドリルロッドの接続用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、アウタロッドと、このアウタロッド内に挿入されるインナロッドとの二重管からなり、掘削の進行に伴って先行するドリルロッドの後端部に後行するドリルロッドの前端部が順次接続される二重管ドリルロッドにおいて、接続時に後行するドリルロッドの前記インナロッドが前記アウタロッドから脱落するのを防止するための治具であって、
前記インナロッドの後端部外周に装着され、前端部に前記インナロッドの外周に係合する係合部を有するインナロッド装着部と、
このインナロッド装着部の後端部に前端部方向に延びるように設けられた延伸部を有し、この延伸部と前記インナロッド装着部の外周との間に、前記アウタロッドの後端部の周方向の一部が挿入されて前記アウタロッドに係合するアウタロッド装着部と
を備えてなることを特徴とする二重管ドリルロッドの接続用治具にある。
【0011】
上記二重管ドリルロッドの接続用治具において、前記インナロッド装着部は、前記インナロッドの外周を周方向に部分的に被う部分円筒形に形成されている態様を採ることができる。
【0012】
また、前記インナロッド装着部の前記係合部は、前記インナロッドの外周のスパナ掛け部に係合するように形成されている態様を採ることができる。
【0013】
また、前記インナロッド装着部の前記係合部は、前記インナロッドの外周のネジ切り上げ部に係合するように形成されている態様を採ることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、簡単な構造で二重管ドリルロッドの接続時にインナロッドがアウタロッドから脱落するのを防止することができる。また、ドリルロッドの全長が長くなることがなく、短ストロークの掘削機にも適用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明による治具の実施形態を示し、斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】同実施形態のものの斜め下方から見た斜視図である。
【
図3】この発明による治具の使用態様を示す断面図である。
【
図4】この発明による治具の別の使用態様を示す断面図である。
【
図5】この発明による治具を使用して二重管ドリルロッドを吊り下げた状態を示す図である。
【
図6】この発明による治具を使用しての二重管ドリルロッドの接続手順を示す図である。
【
図7】従来方法により二重管ドリルロッドを吊り下げた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
図1、
図2は、この発明による二重管ドリルロッドの接続用治具(以下、単に治具と記載する。)の実施形態を示し、
図1は斜め上方から見た斜視図、
図2は斜め下方から見た斜視図である。
【0017】
治具10はインナロッド装着部11と、アウタロッド装着部12とを備える。治具10は、鋼材を加工して作られるが、エンジニアリングプラスチック等の高強度プラスチックを成形して作ることもできる。
【0018】
インナロッド装着部11は、円筒形の周面の一部が軸方向に沿って開放した形状、すなわち部分円筒形(実施形態は、ほぼ半円筒形)に作られている。この部分円筒形のインナロッド装着部11は、治具10が対象としている二重管ドリルロッドのインナロッドの外周を、ほぼ半周に亘って抱き込むように被うことが可能な内径を有している。インナロッド装着部11は、その軸方向両端部のうち、符号11aで示す端部からアウタロッド51内に挿入されるので(
図3参照)、以下、この端部を前端部11aと称し、反対側の端部を後端部11bと称する。
【0019】
インナロッド装着部11の前端部11aは厚肉に作られ、その開放側両端部の内周にはインナロッドの外周に係合する1対の係合部13、13が形成されている。この係合部13、13は、インナロッド52の外周に形成されているスパナ掛け部(溝部)16(
図3参照)に嵌まり込んで係合する形状を有している。インナロッド装着部11には、軽量化を図るために、開口17が設けられている。
【0020】
アウタロッド装着部12は、インナロッド装着部11の後端部11bの外周から立ち上がる板状の起立部14を有し、この起立部14から前端部方向に延びる板状の延伸部15が設けられている。この延伸部15とインナロッド装着部11の外周との間には間隙が形成され、この間隙にアウタロッド51の後端部の外周の一部が挿入されることにより、アウタロッド装着部12がアウタロッド51に係合する(
図3参照)。
図1、
図2に示す実施形態では、延伸部15は強度を持たせるために、その前端部で折り返されて二重になっているが、強度が許せば一重であってもよい。
【0021】
図3は、上記治具10の使用態様を示す断面図である。治具10を二重管ドリルロッド50の後端部に装着するには、インナロッド52の後端部をアウタロッド51から引き出し、スパナ掛け部16が露出するようにする。そして、治具10のインナロッド装着部11をインナロッド52の後端部外周に被せ、係合部13、13をスパナ掛け部14に係合させる。
【0022】
このようにして、インナロッド装着部11をインナロッド52に装着したら、インナロッド52をアウタロッド51内に引き込む。これにより、アウタロッド装着部12の延伸部15とインナロッド装着部11との間の間隙に、アウタロッド51の後端部の周方向の一部が入り込み、アウタロッド装着部12がアウタロッド51に係合する。
【0023】
インナロッド装着部11をインナロッド52に係合させるには、インナロッド52のスパナ掛け部16を利用するに限らず、
図4に示すように、インナロッド52の外周に形成されている雄ネジ18の切り上げ部18aを利用することもできる。この場合、インナロッド装着部11の係合部13、13はネジ切り上げ部18aに係合する形状に作られる。
【0024】
図5は、上記のようにして治具10を装着した二重管ドリルロッド50をクレーンにより吊り下げた状態を示している。掘削機による掘削方向に沿って、図示のように、二重管ドリルロッド50を下向きに傾けても、治具10によってインナロッド52がアウタロッド51内に保持されているので、インナロッド52のすべりが阻止され、アウタロッド51からインナロッド52が飛び出すことなく、アウタロッド51のみを吊って作業が可能となる。
【0025】
インナロッド52のアウタロッド51からの脱落は、治具10を使用することによって水平掘削から垂直下方掘削までの角度範囲で阻止できるが、上方に向けての掘削の場合であっても治具10と吊り具55との間を遊びを持たせたワイヤ19等で連結することにより、インナロッド52の脱落を阻止することができる。
【0026】
図6は、上記治具10を使用しての二重管ドリルロッドの接続手順を示す図である。同図(a)は、1ストローク分の掘削を終えた状態を示し、先行するドリルロッド50aのアウタロッド51aはアウタクランプ60により、またインナロッド52aはインナクランプ61によりそれぞれクランプされており、この状態で後行するドリルロッド50bをセットする。このとき、後行するドリルロッド50bには治具10が装着されているので、ドリルロッド50bの全長が最小となり、有効スペースが増え、無理なく二重管接続が可能となる。
【0027】
後行するドリルロッド50bを接続するには、まず同図(b)に示すように、アウタロッド51bをインナクランプ61にあずけ、クリーニングスイベル62に設けられたエクステンションロッド63とインナロッド52bとを接続する。このとき、治具10がインナロッド52bに装着されていても接続は可能である。そして、このエクステンションロド63に接続された後行するインナロッド52bを先行するインナロッド52aに接続する。
【0028】
次いで、治具10を取外した後(同図(c))、インナクランプ61を取外し(同図(d)、同図(e)に示すように、クリーニングスイベル62に設けられたマスタカップリング64を後行するアウタロッド51bに接続し、このアウタロッド51bを先行するアウタロッド51aに接続する。
【符号の説明】
【0029】
10:治具
11:インナロッド装着部
12:アウタロッド装着部
13:係合部
14:起立部
15:延伸部
16:スパナ掛け部
18a:ネジ切り上げ部
50:二重管ドリルロッド
51:アウタロッド
52:インナロッド