(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147936
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20241009BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K3/46 N
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060695
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】山内 勉
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC02
5E316CC04
5E316CC32
5E316CC33
5E316CC37
5E316CC38
5E316CC52
5E316DD02
5E316DD32
5E316DD33
5E316DD47
5E316EE33
5E316FF03
5E316FF07
5E316FF13
5E316FF14
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG18
5E316GG22
5E316HH31
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB19
5E338BB25
5E338CD05
5E338EE31
(57)【要約】
【課題】金属ポストが所望外の領域にはみ出して形成されることを防ぐことのできる配線基板を提供する。
【解決手段】本開示の配線基板は、絶縁層上に形成される導電層と、前記導電層を覆う最外の絶縁層と、前記導電層のうち前記最外の絶縁層の開口部から一部分が露出するパッドと、前記パッドの露出部分に接続され、前記最外の絶縁層から突出する金属ポストと、を備える配線基板であって、前記絶縁層には、前記パッドに対応する位置に凹部が形成され、前記凹部は、前記導電層と一体の導体により充填されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層上に形成される導電層と、
前記導電層を覆う最外の絶縁層と、
前記導電層のうち前記最外の絶縁層の開口部から一部分が露出するパッドと、
前記パッドの露出部分に接続され、前記最外の絶縁層から突出する金属ポストと、を備える配線基板であって、
前記絶縁層には、前記パッドに対応する位置に凹部が形成され、
前記凹部は、前記導電層と一体の導体により充填されている。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板において、
前記絶縁層を貫通して形成されるビア導体を備え、
前記パッドには、前記絶縁層上に位置する第1パッドと、前記ビア導体上に位置する第2パッドと、が含まれていて、
前記凹部は、前記第1パッドに対応する位置に位置している。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板において、
前記導電層は、配線部と、前記配線部と繋がっており、かつ前記配線部よりも幅広で前記パッドを有する接続部と、を備え、
前記凹部は、前記接続部の下方に配されている。
【請求項4】
請求項1に記載の配線基板において、
前記凹部の深さは、前記導電層の厚さの0.2倍以上1.2倍以下になっている。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1の請求項に記載の配線基板において、
前記絶縁層の表面及び前記凹部の内面は粗化されている。
【請求項6】
絶縁層上にパッドを含む導電層が形成されることと、
前記導電層を覆う最外の絶縁層に開口部が形成されて、前記パッドの一部分が露出されることと、
前記パッドの露出部分の上に、前記最外の絶縁層より突出した金属ポストが形成されることと、を含む配線基板の製造方法であって、
前記絶縁層における、前記導電層のうち前記パッドの下方領域となる位置に凹部が形成されることと、
前記導電層の形成時に、前記導電層と同一の導体により前記凹部が充填されることと、を含む。
【請求項7】
請求項6に記載の配線基板の製造方法において、
前記凹部が形成されたのち、前記絶縁層の表面及び前記凹部の内面が粗化される。
【請求項8】
請求項6に記載の配線基板の製造方法において、
前記開口部の形成は、レーザ加工によって行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の配線基板として、導電層のうちソルダーレジスト層から露出するパッド上に、金属ポストを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-129996号公報(段落[0005])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の配線基板においては、導体パッド上に金属ポストを形成する際、導体パッドと下地絶縁層との間の微小な剥離を起点として、ソルダーレジスト層の一部が損傷し、金属ポストが所望する領域からはみ出して形成されてしまうことがあり、その対策が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の配線基板は、絶縁層上に形成される導電層と、前記導電層を覆う最外の絶縁層と、前記導電層のうち前記最外の絶縁層の開口部から一部分が露出するパッドと、前記パッドの露出部分に接続され、前記最外の絶縁層から突出する金属ポストと、を備える配線基板であって、前記絶縁層には、前記パッドに対応する位置に凹部が形成され、前記凹部は、前記導電層と一体の導体により充填されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1に示されるように、本開示の一実施形態の配線基板10は、コア基板11の表裏に第1ビルドアップ部12A,12Bを有する構造になっている。具体的には、配線基板10の積層構造では、コア基板11の表側の面である第1面11F上に第1第1ビルドアップ部12Aが積層され、コア基板11の裏側の面である第2面11S上に第2第2ビルドアップ部12Bが積層されている。
【0008】
コア基板11は、絶縁層としての絶縁性基材11Kに表裏の両側(第1面11F側と第2面11S側)から導電層13A,13Bが積層されてなる。第1面11F側の導電層13Aと、第2面11S側の導電層13Bとは、所定パターンに形成され、絶縁性基材11Kを貫通するスルーホール導体14Dによって接続されている。
【0009】
第1ビルドアップ部12Aと第2ビルドアップ部12Bは、それぞれコア基板11上に積層される絶縁層15と、その上に形成される導電層16とを有する。絶縁層15は、例えば、ビルドアップ基板用の絶縁フィルム(心材を有さず、例えば、無機フィラーを含む熱硬化性樹脂からなるフィルム)またはプリプレグ(ガラスクロス等の繊維からなる心材を樹脂含侵してなるBステージの樹脂シート)で構成され、厚さは25~45μmになっている。
【0010】
導電層13Aと導電層16、及び導電層13Bと導電層16とは、絶縁層15を貫通するビア導体15Dによって接続されている。ビア導体15Dは、コア基板11に近づくにつれて縮径されるテーパー状になっている。
【0011】
図5に示すように、各導電層16は導体パターンとして配線部36と接続部37とを有している。配線部36は任意の電気信号の伝送や電力の供給に用いられる導電路として機能し、次述するソルダーレジスト層17によって全面を覆われている。接続部37は、導電層16のうちビア導体15Dに接続される部分や、配線基板10上に部品を接続するためのパッド18が形成される部分に配置され、配線部36よりも幅広であって、本実施形態では平面視円形になっている。なお、導電層13A,13Bの導体パターンにも同様に配線部と接続部とが含まれている。
【0012】
各導電層16上には、ソルダーレジスト層17が積層されている。各ソルダーレジスト層17のうち、一部の接続部37に対応する位置には開口部17Sが形成されている。そして接続部37のうち開口部17Sによってソルダーレジスト層17から露出する部分が、複数のパッド18になっている。
【0013】
なお、接続部37は円形でなくてもよく、ティアドロップ形や四角形や楕円など、どんな形状になっていてもよい。また、開口部17Sは接続部37の中央に対応する位置に配置されていなくても良く、端部寄りの位置に配置されていてもよい。
【0014】
また、
図1に示すように、複数のパッド18には、ビア導体15Dと接続される接続部37に配される第2パッド38と、全体が絶縁層15上に位置する接続部37に配される第1パッド39とが含まれる。
【0015】
第1面11F側に形成されるパッド18上には、金属ポスト30が形成されている。金属ポスト30はソルダーレジスト層17の表面から突出した突出部31と、開口部17Sの開口内部に充填される充填部32とを有している。突出部31は、上下に扁平な円筒状で、開口部17Sよりも大径になっており、充填部32はコア基板11に近づくにつれて縮径されるテーパー状になっている。また、金属ポスト30は、銅、ニッケル、錫、金などの材料で形成されることが好ましい。
【0016】
ここで、第1ビルドアップ部12Aの絶縁層15には、金属ポスト30と接続されている第1パッド39の下方に、複数の凹部35が形成されている。凹部35は、絶縁層15の上面に開口し、コア基板11に近づくにつれて縮径する円錐状になっている。また、凹部35の深さは、5~10μmで、絶縁層15の厚みの0.1倍以上0.5倍以下、導電層16の厚みの0.2倍以上1.2倍以下になっている。
【0017】
また、凹部35の内部は、直上に形成される導電層16と一体の導体によって充填される。そして、凹部35の内部に充填された導体は第1パッド39を有する接続部37の下方から突出する楔状導体35Dになっている。
【0018】
本実施形態の配線基板10は、例えば、以下のようにして製造される。
(1)絶縁性基材11Kの両面側に銅箔を積層した銅張積層板に、例えば、ドリル加工等によってスルーホール14が形成される。次いで、銅張積層板の全面及びスルーホール14の内部に無電解めっき処理が施され、図示しない無電解めっき膜が形成される。そして、サブトラクティブ法によって導電層13が形成されると共に、スルーホール14の内面にスルーホール導体14Dが形成される。これにより、
図2(A)に示されるコア基板11が形成される。なお、
図2(A)には、コア基板11のF面11Fを上側、S面11Sを下側にしている状態の例が示されている。
【0019】
(2)コア基板11の両面にビルドアップ基板用の絶縁フィルムが積層されて加熱硬化され、コア基板11の両面上に絶縁層15が形成される(
図2(B))。なお、絶縁層15として、ビルドアップ基板用の絶縁フィルムの代わりにプリプレグを用いてもよい。
【0020】
(3)コア基板11の両面の絶縁層15に、レーザが照射されて、絶縁層15を貫通する複数のビアホール15H及び凹部35が形成される(
図2(C))。ビアホール15Hは絶縁層15を貫通し、導電層13が露出するように形成される。凹部35は深さが5~10μmになるように形成され、これは絶縁層15の厚みの0.1倍以上0.5倍以下、後の工程で形成される導電層16の厚みの0.2倍以上1.2倍以下になっている。ビアホール15Hと凹部35の深さは、レーザの照射時間や照射量を変更することによって調整される。
【0021】
次いで、過マンガン酸塩などを含む薬液を用いたデスミア処理によって、ビアホール15Hと凹部35内部に残存する樹脂残渣が除去される。この時、絶縁層15の上面とビアホール15H,凹部35の内面が粗化され、それら表面に0.1~0.8μmの凹凸が形成される。次いで、無電解めっき処理が行われ、各絶縁層15上と、ビアホール15H及び凹部35の内面とに無電解めっき膜(図示せず)が形成される。
【0022】
(4)各絶縁層15に積層されている無電解めっき膜上にめっきレジスト53が形成される。この時めっきレジスト53は、少なくともビアホール15Hと凹部35の上部を露出させた形状に形成される。次いで、電解めっき処理が行われ、めっきレジスト53によって被覆される部分以外の場所に電解めっき膜が形成されるとともに、電解めっきがビアホール15Hと凹部35内に充填されて、ビア導体15D及び楔状導体35Dが形成される(
図3(A))。
【0023】
(5)次いで、めっきレジスト53と、めっきレジスト53の下側の無電解めっき膜が除去され、絶縁層15上に残された電解めっき膜と無電解めっき膜により導電層16が形成される(
図3(B))。なお、
図3(B)には導電層16のうち接続部37のみが示されている。
【0024】
(6)導電層16上にそれぞれソルダーレジスト層17が積層され、ソルダーレジスト層17のうち、一部の接続部37を覆う位置に、レーザ加工やフォトリソグラフィ処理等により、開口部17Sが形成される。そして、接続部37のうち開口部17Sによって露出する部分によりパッド18が形成される(
図3(C))。このとき、ビア導体15Dと接続する接続部37に形成されたパッド18が第2パッド38となり、楔状導体35Dが一体形成された接続部37に形成されたパッド18が第1パッド39となる。
【0025】
(7)ソフトエッチング処理によって各パッド18の表面の酸化膜などが除去される。
【0026】
(8)第1ビルドアップ部12Aの最外に積層されたソルダーレジスト層17、開口部17S、パッド18の表面に、無電解めっき処理が施され、図示されない無電解めっき膜が形成される。次いで、第1ビルドアップ部12Aの最外の無電解めっき膜上と、第2ビルドアップ部12Bの最外に積層されたソルダーレジスト層17上に、めっきレジスト40が形成される(
図4(A))。
【0027】
(9)第1ビルドアップ部12A側のめっきレジスト40のうち、開口部17Sと対応する位置に、レーザ加工やフォトリソグラフィ処理等によりレジスト開口41が形成される。レジスト開口41は、開口部17Sよりも大径になっていて、第1パッド39,第2パッド38、及びソルダーレジスト層17の一部が露出する。一方で、第2ビルドアップ部12B側のめっきレジスト40にはレジスト開口41は形成されていない。
【0028】
(10)電解めっき処理が行われ、電解めっきがレジスト開口41内に充填される(
図4(B))。
【0029】
(11)次いで、めっきレジスト40が剥離されると共に、めっきレジスト40の下側の無電解めっき膜が除去される。すると、開口部17S及びソルダーレジスト層17上に残された電解めっき膜と無電解めっき膜により、金属ポスト30が形成される(
図4(C))。
【0030】
本実施形態の配線基板10の構造及び製造工程の説明は以上である。ここで、従来の配線基板においては、金属ポストの形成時にソルダーレジスト層に発生したクラック内に導体がめっきされ、金属ポストが、所望する領域からはみ出して形成されてしまうという問題が生じていた。この問題は、レーザ加工等(上記工程(6)に相当)でパッドに熱衝撃が加わったり、パッドをソフトエッチング処理したり(上記工程(7)に相当)すると、パッドを有する接続部が絶縁層から剥離して浮き上がり、内側からソルダーレジスト層に当接することでソルダーレジスト層にクラックが発生し、その後の無電解めっき処理及び電解めっき処理によってクラック内に導体が入り込むことによって生じると考えられる。
【0031】
これに対して、本実施形態の配線基板10では、絶縁層15のうち金属ポスト30と接続されている第1パッド39の下方に凹部35が形成されていて、この凹部35に充填されている楔状導体35Dが、第1パッド39を有する接続部37と一体になっている。これにより、楔状導体35Dが楔として機能して接続部37が絶縁層15から剥離しにくくなり、ソルダーレジスト層17のクラック発生が防がれ、金属ポストが所望する領域からはみ出して形成されてしまうという問題の発生も防がれる。
【0032】
さらに、凹部35は、第1パッド39の下方、即ち、全体が絶縁層15上に位置し、絶縁層15からの剥離が起こりやすい接続部37の下方に形成されているので、より効率的に剥離を抑制することが可能になる。
【0033】
また、凹部35の深さ、つまり楔状導体35Dの長さは、導電層13の厚さの0.75倍以上1.5倍以下になっている。これによれば楔状導体35Dが接続部37の楔として十分機能し、接続部37の剥離が防がれる。また、絶縁層15の表面及び凹部35の内面が粗化されることで、アンカー効果によって導電層16及び楔状導体35Dとの良好な接着を得ることができ、接続部37との剥離がより防がれる。
【0034】
[他の実施例]
(1)金属ポスト30の突出部31は、開口部17Sよりも大径になっていなくてもよく、例えば、開口部17Sの開口上面と同径の円筒状や、半球状などどのような形になっていてもよい。また、充填部32は、開口部17S内全部に充填されていなくてもよい。
【0035】
(2)上記実施形態では、凹部35は第1パッド39を含む接続部37の下方の絶縁層15にのみ形成されていたが、第2パッド38を含む接続部37の下方の絶縁層15に形成されていてもよい。また、第2ビルドアップ部12B側に積層される接続部37の下方の絶縁層15に形成されていてもよい。
【0036】
(3)上記実施形態では、1つの第1パッド39につき1つの凹部35が設けられているが、複数の凹部35が設けられていてもよい。また、凹部35の位置は、第1パッド39の直下でなくてもよく、第1パッド39からずれて配置されていてもよい。さらに、凹部35の形状は円柱状や角柱など、どのような形状になっていてもよい。
【0037】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0038】
10 配線基板
15 絶縁層
15D ビア導体
36 配線部
37 接続部
17 ソルダーレジスト層
18 パッド
38 第2パッド
39 第1パッド
20 導電層
30 金属ポスト
35 凹部