(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147953
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】ショーケース
(51)【国際特許分類】
A47F 3/06 20060101AFI20241009BHJP
A47F 3/04 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
A47F3/06
A47F3/04 D
A47F3/04 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060729
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 卓
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 良之
【テーマコード(参考)】
3B110
【Fターム(参考)】
3B110AA07
3B110BA05
3B110CA12
3B110FA02
3B110GA28
3B110JA09
3B110JA13
(57)【要約】
【課題】棚板を前方にスライドさせる場合にも隣接する他のショーケースの扉体を揺動させることができ、利便性の向上を図ること。
【解決手段】前面に形成された前面開口10aを開閉する態様で、扉体20が揺動可能に設けられたケース本体10と、前面開口10aを臨む態様でケース本体10の内部に設けられた収納室11に上下方向に沿って複数段設けられ、かつ商品を載置する棚板13aが前後方向に沿ってスライド可能な商品載置棚13と、収納室11の空気の温度を調整する蒸発器17とを備え、商品載置棚13に載置された商品を所望の温度に調整するショーケース1であって、扉体20を揺動可能に軸支する軸支部材22,23と、ケース本体10の左右両側部よりも内側に配設され、かつ軸支部材22,23を前面開口10aに対して近接離反する態様で前後方向に沿ってスライド可能に支持する支持部材24,25を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に形成された前面開口を開閉する態様で、扉体が揺動可能に設けられたケース本体と、
前記前面開口を臨む態様でケース本体の内部に設けられた収納室に上下方向に沿って複数段設けられ、かつ商品を載置する棚板が前後方向に沿ってスライド可能な商品載置棚と、
前記収納室の空気の温度を調整する温度調整手段と
を備え、
前記商品載置棚に載置された商品を所望の温度に調整するショーケースであって、
前記扉体を揺動可能に軸支する軸支部材と、
前記ケース本体の左右両側部よりも内側に配設され、かつ前記軸支部材を前記前面開口に対して近接離反する態様で前後方向に沿ってスライド可能に支持する支持部材と
を備えたことを特徴とするショーケース。
【請求項2】
前記軸支部材は、上下一対となる態様で設けられ、前記支持部材は、上下一対となる態様で前記ケース本体に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のショーケース。
【請求項3】
前記支持部材は、前記軸支部材を前記前面開口に対して最も近接した状態に保持する保持機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載のショーケース。
【請求項4】
前記支持部材は、常態においては前記軸支部材を前記前面開口に対して最も近接した位置に保持する一方、解除操作がなされた場合には、前記軸支部材が前記前面開口から離隔する態様で前方に向けてスライドすることを許容するストッパを備えたことを特徴とする請求項1に記載のショーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショーケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ショーケースとして、ケース本体の前面開口を臨む収納室に商品載置棚が上下方向に沿って複数段設けられ、前面開口が透明扉により開閉されるものが知られている。商品載置棚は、商品を載置する棚板が前後方向に沿ってスライド可能なものである。透明扉は、ヒンジ装置に回動自在に軸支されており、ヒンジ装置が棚板のスライド可能な領域から外方となる側方領域に配置されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した特許文献1に提案されているショーケースでは、ヒンジ装置が棚板のスライド可能な領域から外方となる側方領域に配置されていたので、次のような問題があった。
【0005】
ショーケースは、店舗等に設置されるもので、複数が幅方向(左右方向)に並設されるのが一般的である。そのため、上記特許文献1のようにヒンジ装置が側方領域に配置されていると、1つのショーケースの透明扉を開く方向に回動させた場合、該ショーケースに隣接する他のショーケースの透明扉の回動域にヒンジ装置が存在して干渉するおそれがあり、結果的に、他のショーケースの透明扉を回動させることが困難であった。
【0006】
つまり、商品の補充作業等で棚板を前方にスライドさせる際には、隣接する他のショーケースの透明扉を回動させることができず、利便性に優れたものと言えなかった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、棚板を前方にスライドさせる場合にも隣接する他のショーケースの扉体を揺動させることができ、利便性の向上を図ることができるショーケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るショーケースは、前面に形成された前面開口を開閉する態様で、扉体が揺動可能に設けられたケース本体と、前記前面開口を臨む態様でケース本体の内部に設けられた収納室に上下方向に沿って複数段設けられ、かつ商品を載置する棚板が前後方向に沿ってスライド可能な商品載置棚と、前記収納室の空気の温度を調整する温度調整手段とを備え、前記商品載置棚に載置された商品を所望の温度に調整するショーケースであって、前記扉体を揺動可能に軸支する軸支部材と、前記ケース本体の左右両側部よりも内側に配設され、かつ前記軸支部材を前記前面開口に対して近接離反する態様で前後方向に沿ってスライド可能に支持する支持部材とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記ショーケースにおいて、前記軸支部材は、上下一対となる態様で設けられ、前記支持部材は、上下一対となる態様で前記ケース本体に設けられたことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記ショーケースにおいて、前記支持部材は、前記軸支部材を前記前面開口に対して最も近接した状態に保持する保持機構を備えたことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記ショーケースにおいて、前記支持部材は、常態においては前記軸支部材を前記前面開口に対して最も近接した位置に保持する一方、解除操作がなされた場合には、前記軸支部材が前記前面開口から離隔する態様で前方に向けてスライドすることを許容するストッパを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軸支部材が扉体を揺動可能に軸支し、ケース本体の左右両側部よりも内側に配設された支持部材が、軸支部材を前面開口に対して近接離反する態様で前後方向に沿ってスライド可能に支持するので、棚板を前方にスライドさせる場合にも隣接する他のショーケースの扉体を揺動させることができ、利便性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態であるショーケースの内部構造を模式的に示す断面側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態であるショーケースの内部構造を模式的に示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るショーケースの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1及び
図2は、それぞれ本発明の実施の形態であるショーケースの内部構造を模式的に示す断面側面図である。ここで例示するショーケース1は、ケース本体10を備えている。
【0016】
ケース本体10は、前面に開口(以下、前面開口10aともいう)が形成された略直方状の断熱筐体である。このケース本体10には、収納室11及び通風路12が設けられている。
【0017】
収納室11は、前面開口10aを臨む態様で形成された室である。この収納室11には、複数(図示の例では8つ)の商品載置棚13が上下方向に沿って複数段設けられている。
【0018】
商品載置棚13は、従来公知のものであり、それぞれ棚板13aを備えて構成されている。棚板13aは、略平板状の部材であり、上面が商品を載置する載置面を構成している。この棚板13aは、図示せぬレール部材を介して左右一対のブラケット部材13bに架設されている。
【0019】
かかる棚板13aは、ブラケット部材13bに対して前後方向に沿ってスライド可能である。つまり、棚板13aは、
図1に示したように収納室11の内部に配置される収納位置と、
図2に示すように前面開口10aより収納室11の外部に配置される引出位置との間で前後方向に沿ってスライド可能である。
【0020】
通風路12は、ケース本体10の内部であって収納室11の外部に形成されており、吸込口14から吹出口15に至る空気の通路である。
【0021】
吸込口14は、収納室11の内部の空気を吸い込むための開口であり、左右方向に沿って延在するよう設けられた長尺状のものである。この吸込口14は、収納室11の下側前方縁部、すなわち収納室11の前方下部に開口している。
【0022】
吹出口15は、収納室11の内部に空気を吹き出すための開口である。この吹出口15は、左右方向に沿って延在するよう設けられており、収納室11の上側前方縁部、すなわち収納室11の前方上部に設けられている。尚、この吹出口15には、ハニカム構造の整流部材15aが該吹出口15を閉塞する態様で設けられている。
【0023】
このような通風路12は、収納室11の外部であってその下方にある下側通風ダクト12aと、収納室11の外部であってその背面側にある背面側通風ダクト12bと、収納室11の外部であってその上方にある上側通風ダクト12cとを備え、これら下側通風ダクト12a、背面側通風ダクト12b及び上側通風ダクト12cが互いに連通して構成されている。
【0024】
そのような通風路12の内部には、送風ファン16及び蒸発器17が設置されている。送風ファン16は、空気を循環させるものである。上記ショーケース1においては、送風ファン16が駆動することにより、吸込口14を通じて通風路12に吸い込んだ空気を吹出口15まで送出し、該吹出口15より収納室11に吹き出すことにより、収納室11と通風路12との間で空気を循環させるものである。
【0025】
蒸発器17は、図示せぬ圧縮機、凝縮器及び電子膨張弁と冷媒管路で環状に接続されることで、冷媒を循環させる冷媒回路を構成している。この蒸発器17は、自身に供給された冷媒と、送風ファン16が駆動することにより通風路12を通過する空気とを熱交換させるもの、より詳細には、冷媒を蒸発させることにより通風路12を通過する空気を冷却するものである。
【0026】
上記ケース本体10には、扉体20が設けられている。扉体20は、左側前面扉20Lと右側前面扉(図示せぬ)とを有している。
【0027】
左側前面扉20Lは、ケース本体10の前面開口10aの左半分を閉塞するのに十分な大きさを有した断熱扉である。この左側断面扉の左端部分には、下方に向けて突出する下部軸状部21aが形成されるとともに、上方に向けて突出する上部軸状部21bが形成されている。これら下部軸状部21a及び上部軸状部21bは、互いに中心軸が一致しており、外径も同じである。
【0028】
かかる左側前面扉20Lは、下部軸状部21aが下側軸支部材22に形成された図示せぬ軸支孔に挿入されており、上部軸状部21bが上側軸支部材23に形成された図示せぬ軸支孔に挿入されており、これら下側軸支部材22及び上側軸支部材23に、下部軸状部21a及び上部軸状部21bの中心軸回りに揺動可能に軸支されている。
【0029】
下側軸支部材22には、前後方向が長手方向となる態様で延在する下側ガイド221が設けられている。この下側ガイド221は、ケース本体10の脚部18に取り付けられた下側支持部材24に、下側レール機構24aを介して連結されている。下側レール機構24aは、複数の構成要素により構成されており、下側軸支部材22(下側ガイド221)を前後方向にスライドさせるものである。
【0030】
下側支持部材24は、脚部18の前面、すなわちケース本体10の左側部よりも内側となる部位に配設されており、下側軸支部材22を前面開口10aに近接離反する態様でスライド可能に支持している。かかる下側支持部材24には、図には明示しないが、ストッパが設けられている。ストッパは、常態においては下側軸支部材22を前面開口10aに対して最も近接した位置に保持する一方、解除操作がなされた場合には、下側軸支部材22が前面開口10aから離隔する態様で前方に向けてスライドすることを許容するものである。
【0031】
上側軸支部材23には、前後方向が長手方向となる態様で延在する上側ガイド231が設けられている。この上側ガイド231は、ケース本体10の天面10bの左端部に取り付けられた上側支持部材25に、上側レール機構25aを介して連結されている。上側レール機構25aは、複数の構成要素により構成されており、上側軸支部材23(上側ガイド231)を前後方向にスライドさせるものである。
【0032】
つまり、上側支持部材25は、天面10bの左端、すなわちケース本体10の左側部よりも内側となる部位に配設されており、上側軸支部材23を前面開口10aに近接離反する態様でスライド可能に支持している。
【0033】
右側前面扉は、ケース本体10の前面開口10aの右半分を閉塞するのに十分な大きさを有した断熱扉である。この右側前面扉は、上述した左側前面扉20Lと左右の構成が異なるだけであり、またその支持構造も左右の構成が異なるだけであるので、その説明を割愛する。
【0034】
以上のような構成を有するショーケース1においては、下側軸支部材22及び上側軸支部材23が前面開口10aに最も近接した位置に配置され、かつ扉体20が閉じる方向に揺動することにより、
図1に示したように前面開口10aを閉塞する。そのような状態で圧縮機が駆動するとともに送風ファン16が駆動することにより、吸込口14を通じて通風路12の下側通風ダクト12aに吸い込まれた空気が、該下側通風ダクト12aを通過した後に、背面側通風ダクト12bを通過する。背面側通風ダクト12bを通過した空気が、蒸発器17で冷却し、上側通風ダクト12cを経由して吹出口15から吹き出される。この吹出口15から吹き出させた空気が、商品載置棚13の前端域を通過してから吸込口14より通風路12に吸い込まれることにより、該空気を収納室11と通風路12とで循環させることができる。これにより、収納室11における前面には、蒸発器17で冷却された空気によるエアカーテンを形成することができ、収納室11の内部雰囲気を冷却することができ、これにより、商品載置棚13に載置された商品を所望の温度状態に冷却することができる。
【0035】
そのようなショーケース1においては、利用者により扉体20が開く方向に揺動させられることにより、前面開口10aが開放され、商品載置棚13に載置された商品を取り出されることを許容する。
【0036】
そして、ショーケース1においては、店舗の従業員等の作業者により扉体20が開く方向に揺動させられた後にストッパが解除操作され、下側軸支部材22及び上側軸支部材23が前面開口10aから離隔する態様で前方にスライドする。これにより、下側軸支部材22及び上側軸支部材23が、
図2に示すように前面開口10aから最も離隔した個所に配置された後、任意の棚板13aが前方にスライドさせられることにより、当該棚板13aに対して商品の補充作業が行われることを許容する。
【0037】
以上説明したように、本発明の実施の形態であるショーケース1によれば、下側軸支部材22及び上側軸支部材23が扉体20を揺動可能に軸支し、ケース本体10の左右両側部よりも内側に配設された下側支持部材24及び上側支持部材25が、それぞれ下側軸支部材22及び上側軸支部材23を前面開口10aに対して近接離反する態様で前後方向に沿ってスライド可能に支持するので、棚板13aを前方にスライドさせる場合にも隣接する他のショーケース1の扉体20を揺動させることができ、利便性の向上を図ることができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0039】
上述した実施の形態では、扉体20は、左側前面扉20Lと右側前面扉とを備えて構成されていたが、本発明においては、扉体は1つであってもよい。
【0040】
上述した実施の形態では、下側レール機構24a及び上側レール機構25aを介して、下側軸支部材22及び上側軸支部材23が、それぞれ下側支持部材24及び上側支持部材25に対して前後方向にスライド可能であったが、本発明においては、必ずしもレール機構だけに限られず、例えばローラ等の種々の方式を採用することができる。
【0041】
上述した実施の形態では言及していないが、本発明においては、上記ストッパ以外に、例えば上側支持部材等の支持部材には、上側軸支部材を前面開口に対して最も近接した状態に保持する保持機構を備えてもよい。この場合、保持機構の保持力を超える操作力を付与することにより、上側支持部材等の支持部材を前面開口から離隔する方向にスライドさせることができる。
【0042】
また保持機構の代わりに、例えば支持部材を前面開口に近接離反する態様で前後方向にスライドさせるレール部材を、後方に向かうに連れて漸次下方に傾斜させるようにしてもよい。これによれば、常態においては支持部材を後方(前面開口に近接する方向)に保持することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…ショーケース、10…ケース本体、10a…前面開口、11…収納室、12…通風路、13…商品載置棚、13a…棚板、13b…ブラケット部材、14…吸込口、15…吹出口、16…送風ファン、17…蒸発器、18…脚部、20…扉体、20L…左側前面扉、21a…下部軸状部、21b…上部軸状部、22…下側軸支部材、221…下側ガイド、23…上側軸支部材、231…上側ガイド、24…下側支持部材、24a…下側レール機構、25…上側支持部材、25a…上側レール機構。