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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147954
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】蓄電装置及び電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/289 20210101AFI20241009BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241009BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241009BHJP
   H01M 10/6561 20140101ALI20241009BHJP
【FI】
H01M50/289
H02M7/48 Z
H01M10/613
H01M10/6561
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060731
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西澤 是呂久
(72)【発明者】
【氏名】荒海 竜之介
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
5H770
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK08
5H040AA28
5H040AA31
5H040AY03
5H040AY06
5H770AA21
5H770BA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770HA03Z
5H770HA06Z
5H770PA21
5H770QA28
5H770QA40
(57)【要約】
【課題】浮遊容量の低減を目的とする。
【解決手段】蓄電池と、前記蓄電池を収納する第1筐体と、前記第1筐体を収納する第2筐体と、前記第2筐体の内部に配置され、前記第1筐体と接触する絶縁部材と、を備え、前記絶縁部材は、異なる絶縁体からそれぞれ構成される、第1絶縁領域と、第2絶縁領域と、を含む、蓄電装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、
前記蓄電池を収納する第1筐体と、
前記第1筐体を収納する第2筐体と、
前記第2筐体の内部に配置され、前記第1筐体と接触する絶縁部材と、を備え、
前記絶縁部材は、異なる絶縁体からそれぞれ構成される、第1絶縁領域と、第2絶縁領域と、を含む、
蓄電装置。
【請求項2】
前記第1絶縁領域を構成する前記絶縁体は、空気である、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記第2絶縁領域は、前記第1絶縁領域を挟んで対向する2つの帯状領域を含む、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記第2絶縁領域は、前記第1絶縁領域の周りを取り囲む枠状領域を含む、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記第2絶縁領域は、前記第1筐体へ、それぞれ垂直に延びる複数の凸状領域を含む、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記第2筐体は、前記絶縁部材を介して、前記第1筐体を支持する導電部材をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記導電部材は、前記第1筐体の底面を支持する、請求項6に記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記導電部材は、板状の部材である、請求項7に記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記導電部材は、前記底面の対向する2端辺にそれぞれ向き合う、2つの帯状部位を含む、請求項7に記載の蓄電装置。
【請求項10】
前記導電部材は、内部中空の枠状部位を含む、請求項7に記載の蓄電装置。
【請求項11】
前記導電部材は、前記底面の異なる角部とそれぞれ向き合う、複数の小片状部位を含む、請求項7に記載の蓄電装置。
【請求項12】
前記蓄電池は、グランドに接地された外部装置と接続され、
前記第2筐体は、グランドに接地される、請求項1から5のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項13】
請求項1から5のいずれか一項に記載の蓄電装置と、
前記蓄電装置に接続される電力変換装置と、
を備える、電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置及び電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池ユニットと、蓄電池ユニットを収納する収納盤とを備えた蓄電装置が、特許文献1に開示されている。収納盤は、蓄電池ユニットの筐体を支持する金属製の支持台を備える。また、支持台には、筐体と支持台とを絶縁するための絶縁シートが取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-98031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電池ユニットの筐体及び支持台のそれぞれは、導体部を含む。そのため、筐体と支持台とが対向する領域に、浮遊容量が形成される。誤動作を招く漏洩電流が、浮遊容量を介して流れ得るため、浮遊容量の低減が望まれる。
【0005】
本開示は、浮遊容量の低減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様では、蓄電装置は、
蓄電池と、
前記蓄電池を収納する第1筐体と、
前記第1筐体を収納する第2筐体と、
前記第2筐体の内部に配置され、前記第1筐体と接触する絶縁部材と、を備え、
前記絶縁部材は、異なる絶縁体からそれぞれ構成される、第1絶縁領域と、第2絶縁領域と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、浮遊容量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の蓄電装置を含む電力変換システムの回路構成の一例を示す回路模式図である。
図2】電力変換システムにおける漏洩電流の経路の一例を示す模式図である。
図3】漏洩電流が流れる経路の等価回路と漏洩電流のシミュレーション結果を示すグラフである。
図4】実施形態に係る蓄電装置の構造の一例を示す斜視図である。
図5】実施形態に係る蓄電装置が備える絶縁部材の構造の一例を示す斜視図である。
図6】実施形態に係る蓄電装置が備える絶縁部材の第1変形例を示す図である。
図7】実施形態に係る蓄電装置が備える絶縁部材の第2変形例を示す図である。
図8】実施形態に係る蓄電装置が備える絶縁部材の第3変形例を示す図である。
図9】実施形態に係る蓄電装置が備える絶縁部材の第4変形例を示す図である。
図10】実施形態に係る蓄電装置が備える導電部材の第1変形例を示す図である。
図11】実施形態に係る蓄電装置が備える導電部材の第2変形例を示す図である。
図12】実施形態に係る蓄電装置が備える導電部材の第3変形例を示す図である。
図13】実施形態に係る蓄電装置が備える導電部材の第4変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態に係る蓄電装置について説明する。なお、「接続」とは、物理的な接続に限られず、同電位での接続の意味を含んでよい。例えば、物体Aが物体Bに接続されるとは、物体Aが物体Bに導電的に接続される場合に限られず、物体Aが物体Cを介して物体Bに同電位に導電的に接続される場合を含んでよい。
【0010】
<回路構成>
図1を参照して、実施形態に係る蓄電装置10を含む電力変換システム1の回路構成の一例を説明する。図1は、電力変換システム1の回路構成の一例を示す回路模式図である。
【0011】
図1に示すように、電力変換システム1は、蓄電装置10と、電力変換装置30と、を備える。また、蓄電装置10と電力変換装置30とは、外部配線20a,20bを介して接続される。蓄電装置10は、電力変換装置30に直流電力を供給する。電力変換装置30は、商用電源や太陽電池等の他の電源からの電力を蓄電装置10に供給する。ここで、電力変換装置30は、「外部装置」の一例である。
【0012】
蓄電装置10の構成を説明する。蓄電装置10は、蓄電池モジュール110と、蓄電池ラック120と、制御部130と、絶縁部材140と、を備える。蓄電池モジュール110は、蓄電池111と、モジュール筐体112と、を備える。ここで、モジュール筐体112は、「第1筐体」の一例である。また、蓄電池ラック120は、「第2筐体」の一例である。
【0013】
蓄電池111は、正極と、負極と、電解質と、ケースと、を備える。ケースは、正極、負極、及び電解質を収める。蓄電池111の種類として、例えば、リチウム二次電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池が挙げられる。この中で、エネルギー密度が高く、小型、軽量なリチウム二次電池が好ましい。ただし、蓄電池111の種類は、これに限定されない。
【0014】
モジュール筐体112は、鉄板やアルミニウム板等の導電性の壁面を含む箱形の容器である。モジュール筐体112は、少なくとも1つの蓄電池111を収納する。モジュール筐体112は、複数の蓄電池111を収納してもよい。モジュール筐体112に収納される複数の蓄電池111は、直列接続されることが好ましいが、これに限定されない。
【0015】
蓄電池モジュール110は、さらに、コネクタ及びスイッチ等の電気部品類、並びに、電圧センサ及び温度センサ等の各種センサ類等をさらに備えることが好ましい。
【0016】
蓄電池ラック120は、鉄板やアルミニウム板等の導電性の壁面を含む箱形の容器である。蓄電池ラック120は、少なくとも1つの蓄電池モジュール110を収納する。蓄電池ラック120は、複数の蓄電池モジュール110を収納してもよい。蓄電池ラック120に収納される複数の蓄電池モジュール110は、直列接続されることが好ましいが、これに限定されない。
【0017】
蓄電池ラック120は、出力端子121a,121bと、接地端子122と、をさらに備える。出力端子121aは、外部配線20aを介して、電力変換装置30の入力端子310aに接続される。また、出力端子121aは、内部配線113aを介して、蓄電池111に接続される。これに対して、出力端子121bは、外部配線20bを介して、電力変換装置30の入力端子310bに接続される。また、出力端子121bは、内部配線113bを介して、蓄電池111に接続される。
【0018】
接地端子122は、グランド70Gに延びる接地ケーブル122Lに接続される。蓄電池ラック120は、接地端子122及び接地ケーブル122Lを介して、接地される。
【0019】
制御部130は、蓄電池モジュール110の動作を制御するコンピュータである。具体的には、制御部130は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のハードウェアを備える。
【0020】
CPUは、ROM等に格納されたプログラム、および、プログラムの実行に必要なデータを適宜RAM上に読み出し、プログラムを実行する。これにより、制御部130としての種々の機能を実現する。
【0021】
制御部130は、例えば、電圧センサから出力された蓄電池111の電圧値や、温度センサから出力された蓄電池111の温度等の情報を、電力変換装置30の制御部330に出力する。また、制御部130は、制御部330からの制御信号に基づき、蓄電池111の充放電を制御する。
【0022】
絶縁部材140は、蓄電池モジュール110と蓄電池ラック120とを絶縁すると共に、蓄電池モジュール110と蓄電池ラック120との間に形成される浮遊容量を低減する。
【0023】
絶縁部材140は、例えば、平板状の形状を有する絶縁体から構成され、モジュール筐体112の壁面と蓄電池ラック120の壁面とが対向する領域に配置される。絶縁部材140は、モジュール筐体112の壁面と物理的に接触する。ただし、絶縁部材140は、蓄電装置10における他の領域に配置されてもよい。例えば、絶縁部材140は、蓄電池111とモジュール筐体112との間に配置されてもよい。なお、絶縁部材140の構造に関しては、図4図9を参照して別途詳細に説明する。
【0024】
次に、電力変換装置30の構成を説明する。電力変換装置30は、蓄電装置10から入力される直流電力を三相の交流電力に変換し、負荷50に出力する。負荷50は、例えば、電力変換装置30から供給される交流電力で駆動されるモータである。ただし、これに限られない。
【0025】
電力変換装置30は、入力端子310a,310bと、インバータ回路320と、制御部330と、線間コンデンサ340と、ヒートシンク350と、接地端子360と、出力端子370U,370V,370Wと、を備える。
【0026】
蓄電装置10からの直流電力は、蓄電池ラック120の出力端子121a,121bから出力された後、電力変換装置30の入力端子310a,310bに入力される。また、入力端子310a,310bを介して入力された直流電力は、インバータ回路320に出力される。
【0027】
インバータ回路320は、入力端子310a,310bを介して入力された直流電力を、交流電力に変換する。インバータ回路320は、例えば、6個のスイッチング素子S1,S2,S3,S4,S5,S6を有する。スイッチング素子S1~S6の動作によって、インバータ回路320に入力された直流電力は、所定の周波数を有する交流電力に変換される。スイッチング素子S1~S6のそれぞれは、例えば、IGBT等の半導体素子である。
【0028】
スイッチング素子S1とスイッチング素子S4との接続点は、出力端子370Uに接続されている。スイッチング素子S2及びスイッチング素子S5との接続点は、出力端子370Vに接続されている。スイッチング素子S3及びスイッチング素子S6との接続点は、出力端子370Wに接続されている。
【0029】
インバータ回路320で変換された交流電力は、出力端子370U,370V,370Wを介して、負荷50に出力される。
【0030】
制御部330は、スイッチング素子S1~S6の動作をそれぞれ制御するコンピュータである。また、制御部330は、蓄電装置10の制御部130とも通信可能に接続される。制御部330は、蓄電装置10の制御部130から、蓄電池111の電圧値や温度等の情報を取得する。制御部330は、取得した情報に基づき、蓄電池111の充放電を制御するための制御信号を、蓄電装置10の制御部130に出力する。
【0031】
制御部330は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアを備える。CPUは、ROM等に格納されたプログラム、および、プログラムの実行に必要なデータを適宜RAM上に読み出し、プログラムを実行する。これにより、制御部330としての種々の機能を実現する。
【0032】
線間コンデンサ340は、インバータ回路320に印加される直流電圧のリップルを低減し、直流電圧を平滑化する。また、線間コンデンサ340は、インバータ回路320に印加されるノイズを低減する。
【0033】
ヒートシンク350は、スイッチング素子S1~S6のスイッチング動作で発生する熱を放出するための部材である。ヒートシンク350は、熱伝導率の高い導電性の部材を含む。ヒートシンク350は、スイッチング素子S1~S6で生じた熱を効率的に放熱するため、スイッチング素子S1~S6のそれぞれと物理的に接触する。
【0034】
ヒートシンク350は、接地端子360に接続される。接地端子360から延びる接地ケーブル360Lは、グランド70Gに接続される。ヒートシンク350は、接地端子360及び接地ケーブル360Lを介して、接地される。ヒートシンク350の接地により、電力変換装置30は、接地される。
【0035】
<漏洩電流>
互いに対向する2つの導体部に電位が印加された場合、コンデンサ等の容量素子が配置されていないにも関わらず、容量素子と同様の挙動を示す浮遊容量が生じる。また、浮遊容量が回路中に含まれることで、回路の誤動作を招く漏洩電流が流れ得る。
【0036】
図2を参照して、電力変換システム1で生じる漏洩電流の一例を説明する。図2は、電力変換システム1における漏洩電流の経路の一例を示す模式図である。
【0037】
電力変換システム1は、2つの導体部が対向する種々の領域を含む。例えば、図2に示すように、電力変換システム1において、モジュール筐体112と蓄電池ラック120とが対向する。モジュール筐体112と蓄電池ラック120とは、それぞれ導体部を含む。そのため、モジュール筐体112と蓄電池ラック120との間に、第1浮遊容量C1が形成される。
【0038】
また、電力変換システム1において、蓄電池111とモジュール筐体112とが対向する。蓄電池111とモジュール筐体112とは、それぞれ導体部を含む。そのため、蓄電池111とモジュール筐体112との間に、第2浮遊容量C2が形成される。
【0039】
さらに、電力変換システム1において、スイッチング素子S1~S6と、ヒートシンク350とが対向する。スイッチング素子S1~S6と、ヒートシンク350とは、それぞれ導体部を含む。そのため、スイッチング素子S1~S6と、ヒートシンク350との間に、第3浮遊容量C3が形成される。
【0040】
スイッチング素子S1~S6がスイッチング動作を開始すると、インバータ回路320の電位が、周期的に変化する。これにより、スイッチング素子S1~S6と、ヒートシンク350との間に形成される第3浮遊容量C3が充放電する。その結果、ヒートシンク350から、接地端子360及び接地ケーブル360Lを介して、グランド70Gに漏洩電流ic1が流れ出る。
【0041】
他方、蓄電池ラック120は、接地端子122及び接地ケーブル122Lを介して、グランド70Gに接続されている。ヒートシンク350から流れ出る漏洩電流ic1は、グランド70Gを通じて、蓄電池ラック120に向かう。
【0042】
蓄電池ラック120に至った漏洩電流ic1は、第1浮遊容量C1を通じて、蓄電池ラック120の内部を流れる。また、漏洩電流ic1は、第2浮遊容量C2を通じて、モジュール筐体112の内部を流れる。
【0043】
さらに、蓄電池ラック120やモジュール筐体112の内部を流れた漏洩電流ic1は、蓄電池ラック120やモジュール筐体112と接続された他の機器にも流れ得る。例えば、漏洩電流ic1は、蓄電池ラック120やモジュール筐体112に接続された制御部130にも流れ得る。漏洩電流ic1は、制御部130のノイズ源となり得る。そのため、蓄電池ラック120への漏洩電流ic1の流入を抑制する必要がある。漏洩電流ic1は、コモンモード電流とも称される。
【0044】
<漏洩電流の抑制原理>
図3を参照して、回路中の浮遊容量が低減されることで、漏洩電流が抑制される原理の一例を説明する。図3(a)は、漏洩電流が流れる経路の等価回路の一例を示す回路図である。図3(b)は、漏洩電流のシミュレーション結果を示すグラフである。
【0045】
一例として、漏洩電流ic1が流れる経路を、抵抗R、インダクタンスL、及び容量Cを含む等価回路で表す。この等価回路の構成を図3(a)に示す。図3(a)に示すように、等価回路は、RLC直列回路を含む。
【0046】
ここで、等価回路中の電位ΔVは、スイッチング素子S1~S6のスイッチング動作に基づき変動するインバータ回路320の電位である。ΔVを、ステップ状に変化する電位とした。また、抵抗Rは、接地ケーブル122L、接地ケーブル360L、及び外部配線20a,20b等のそれぞれに含まれる抵抗の合成抵抗である。インダクタンスLは、接地ケーブル122L、接地ケーブル360L、外部配線20a,20b等のそれぞれに含まれるインダクタンスの合成インダクタンスである。容量Cは、第1浮遊容量C1、第2浮遊容量C2、第3浮遊容量C3等の合成容量である。
【0047】
等価回路に流れる漏洩電流ic1の時間変化ic1(t)は、式(1)で表される。なお、抵抗R、インダクタンスL、及び容量Cの大小関係に関し、式(2)で表される減衰振動条件を適用した。
【0048】
【数1】
【0049】
【数2】
【0050】
この等価回路を用い、2種の漏洩電流ic1(t)の挙動に関するシミュレーションを行った。具体的には、第1シミュレーションと第2シミュレーションにおいて、互いに異なる値の容量Cを用いた。
【0051】
第1シミュレーションにおける各パラメータは、下記の通りである。
【0052】
・電位ΔV=50V
・抵抗R=500mΩ
・インダクタンスL=20μH
・容量C=13.6nF
【0053】
第2シミュレーションにおける各パラメータは、下記の通りである。
【0054】
・電位ΔV=50V
・抵抗R=500mΩ
・インダクタンスL=20μH
・容量C=1.36nF
【0055】
第2シミュレーションにおける容量Cは、第1シミュレーションにおける容量Cの1/10の値としている。
【0056】
第1シミュレーション及び第2シミュレーションの結果を、図3(b)に示す。図3(b)の横軸は、各シミュレーションの開始時点からの経過時間を示す。図3(b)の縦軸は、漏洩電流ic1(t)の電流値を示す。
【0057】
図3(b)に示すように、第2シミュレーションの漏洩電流ic1(t)は、第1シミュレーションの漏洩電流ic1(t)に比べて、1/3程度まで抑制されている。第2シミュレーションの容量Cの値は、第1シミュレーションの容量Cの値から1桁程度小さい。このことから、漏洩電流ic1の経路中の浮遊容量を低減することで、漏洩電流ic1が効果的に抑制されることが示された。
【0058】
<蓄電装置の構造>
次に、蓄電装置10内に生じた浮遊容量を低減するための手段の一例を説明する前提として、蓄電装置10の構造を説明する。図4は、蓄電装置10の構造の一例を示す斜視図である。
【0059】
ここで、X方向は、蓄電池ラック120の幅方向に対応する。Y方向は、蓄電池ラック120の奥行方向に対応する。Z方向は、蓄電池ラック120の高さ方向に対応する。
【0060】
図4に示すように、蓄電池ラック120は、壁面として、前面125F、後面125R、上面125U、底面125B、左側面125S1、右側面125S2を備える。ただし、蓄電池モジュール110が蓄電池ラック120に搬出入される際の経路を確保するため、例えば、蓄電池ラック120の前面125Fは、常時開口し又は開閉可能であってもよい。
【0061】
蓄電池ラック120の前面125F、後面125R、上面125U、底面125B、左側面125S1、右側面125S2は、いずれも導体部を含む。例えば、蓄電池ラック120の前面125F、後面125R、上面125U、底面125B、左側面125S1、右側面125S2は、鉄板やアルミニウム板等の導体板から、それぞれ構成される。
【0062】
蓄電池ラック120は、例えば、複数の蓄電池モジュール110を収納する。図4に示される蓄電池ラック120は、3つの蓄電池モジュール110を収納するが、これに限定されない。
【0063】
蓄電池ラック120は、さらに、制御部130及び端子ボックス180を収納していてもよい。制御部130は、制御通信線131a~131cを介して、蓄電池モジュール110のそれぞれと通信可能に接続される。
【0064】
端子ボックス180は、内部配線145a~145cを介して、モジュール筐体112に収納される蓄電池111に接続される。また、端子ボックス180は、別の内部配線113a,113bを介して、電力変換装置30に接続される。
【0065】
モジュール筐体112は、壁面として、前面112F、後面112R、上面112U、底面112B、左側面112S1、右側面112S2を備える。前面112F、後面112R、上面112U、底面112B、左側面112S1、右側面112S2は、いずれも導体部を含む。例えば、モジュール筐体112の前面112F、後面112R、上面112U、底面112B、左側面112S1、右側面112S2は、鉄板やアルミニウム板等の導体板から、それぞれ構成される。
【0066】
蓄電池ラック120は、モジュール筐体112を支持する導電部材190を備える。図4では、複数の導電部材190が、蓄電池ラック120に配置される。複数の導電部材190のそれぞれは、例えば、鉄やアルミニウム等の導電性の平板である。また、複数の導電部材190のそれぞれは、蓄電池ラック120の左側面125S1及び右側面125S2に取り付けられた複数の固定部材195を介して固定される。ただし、導電部材190の形態は、これに限られない。
【0067】
導電部材190は、第1浮遊容量C1等の浮遊容量を低減するための構造を有してもよい。浮遊容量を低減するための構造については、図10図13を参照して、別途詳細に説明する。
【0068】
絶縁部材140は、例えば、モジュール筐体112の底面112Bと、導電部材190との間に配置される。モジュール筐体112の底面112Bと、導電部材190とは、それぞれ導体部を含む。そのため、導電部材190、絶縁部材140、モジュール筐体112の底面112Bが、順に積み重なることで、浮遊容量が形成される。ここに形成される浮遊容量は、図2に示される第1浮遊容量C1に対応する。
【0069】
絶縁部材140の位置は、これに限られない。例えば、絶縁部材140は、モジュール筐体112の左側面112S1と、蓄電池ラック120の左側面125S1との間や、モジュール筐体112の右側面112S2と、蓄電池ラック120の右側面125S2との間に配置されてもよい。また、絶縁部材140は、それ以外の領域に配置されてもよい。
【0070】
絶縁部材140は、第1浮遊容量C1等の浮遊容量を低減するための構造を有する。浮遊容量を低減するための構造については、図5図9を参照して、別途詳細に説明する。
【0071】
<浮遊容量を低減するための構造>
次に、図5を参照して、絶縁部材140が備える、浮遊容量を低減するための構造の一例について説明する。図5は、絶縁部材140の斜視図である。
【0072】
絶縁部材140は、互いに異なる絶縁体から構成される複数の絶縁領域を備える。図5に示される絶縁部材140は、第1絶縁領域141と、第2絶縁領域142の2種の絶縁領域を備える。各絶縁領域を構成する絶縁体の例として、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。また、複数の絶縁領域の1つは、空気の領域であってもよい。
【0073】
第1絶縁領域141は、矩形の平面形状を有する板状の領域である。第2絶縁領域142も、矩形の平面形状を有する板状の領域である。第1絶縁領域141及び第2絶縁領域142は、互いの側面同士を向き合わせて接合されている。
【0074】
絶縁部材140は、0.1cm~10cm程度の厚みを有する。これにより、絶縁シートのような薄い絶縁部材が用いられる場合に比べて、第1浮遊容量C1を低減することができる。
【0075】
ところで、対向する2つの導体部の間に、互いに異なる絶縁体から構成された複数の絶縁領域が配置された場合、2つの導体部の間の静電容量は、第1絶縁領域が配置される空間の静電容量と、第2絶縁領域が配置された空間の静電容量と、・・・、第n絶縁領域が配置された空間の静電容量と、の和となる。
【0076】
図5に示される絶縁部材140を用いた場合、モジュール筐体112の底面112Bと導電部材190との間の第1浮遊容量C1は、式(3)に示すように、第1絶縁領域141が配置された空間の静電容量と、第2絶縁領域142が配置された空間の静電容量と、の和となる。
【0077】
【数3】
【0078】
ここで、式(3)における各パラメータは、下記の通りである。
【0079】
ε:真空の誘電率
εS1:第1絶縁領域141の比誘電率
εS2:第2絶縁領域142の比誘電率
S1:第1絶縁領域141と接触する導電部材190の面積
S2:第2絶縁領域142と接触する導電部材190の面積
d:モジュール筐体112の底面112Bと、導電部材190との距離
【0080】
式(3)によれば、例えば、第2絶縁領域142の比誘電率εS2が、第1絶縁領域141の比誘電率εS1より高い場合、第2絶縁領域142のみから構成される絶縁部材140に比べて、第1浮遊容量C1を低減することができる。この場合、絶縁部材140の面積に対する、第1絶縁領域141の面積の割合が増えるに従い、第1浮遊容量C1を低減することができる。
【0081】
第1絶縁領域141の比誘電率εS1が、第2絶縁領域142の比誘電率εS2より高い場合も同様である。また、絶縁部材140が、3つ以上の絶縁領域を含む場合も、同様である。
【0082】
通常、空気以外の絶縁体の誘電率は、空気の誘電率より高い。このことから、第1絶縁領域141及び第2絶縁領域142の一方が、空気の領域である場合、他方の絶縁領域のみで構成される絶縁部材140に比べて、第1浮遊容量C1を低減することができる。
【0083】
それに加えて、第1絶縁領域141及び第2絶縁領域142の一方を空気の領域とすることで、絶縁部材140の軽量化やコスト低減を図ることができる。また、空気の領域が、蓄電池モジュール110で生じた熱の放熱経路としても機能するため、蓄電池モジュール110で生じた熱の放熱性も向上する。
【0084】
<絶縁部材の第1変形例>
次に、図6を参照して、絶縁部材140の第1変形例を説明する。図6(a)は、第1変形例に係る絶縁部材140Aを示す平面図である。図6(b)は、第1変形例に係る絶縁部材140Aを示す斜視図である。
【0085】
第1変形例に係る絶縁部材140Aは、中央側に配置される第1絶縁領域141Aと、第1絶縁領域141Aの周りを囲む第2絶縁領域142Aを備える。第1絶縁領域141Aは、空気の領域である。第2絶縁領域142Aは、空気とは異なる絶縁体から構成され、枠状の領域を有する。
【0086】
絶縁部材140Aが、2種の絶縁領域を備え、かつ、第1絶縁領域141Aが空気の領域であることで、第2絶縁領域142Aのみから構成される絶縁部材140Aに比べて、第1浮遊容量C1を低減することができる。また、第2絶縁領域142Aが枠状の形状を有することで、絶縁部材140Aにおける第1絶縁領域141Aの割合を増やすことができる。これにより、第1浮遊容量C1をさらに低減することができる。さらに、第2絶縁領域142Aは、モジュール筐体112における底面112Bの前端側、後端側、及び両側端側のそれぞれと接触する。これにより、モジュール筐体112の前後左右の移動が規制される。その結果、例えば、モジュール筐体112に地震等の強い衝撃が加わっても、モジュール筐体112が蓄電池ラック120の外に飛び出る等の事態を防止できる。
【0087】
<絶縁部材の第2変形例>
次に、図7を参照して、絶縁部材140の第2変形例を説明する。図7(a)は、第2変形例に係る絶縁部材140Bを示す平面図である。図7(b)は、第2変形例に係る絶縁部材140Bを示す斜視図である。
【0088】
第2変形例に係る絶縁部材140Bは、中央側に配置される第1絶縁領域141Bと、第1絶縁領域141Bを挟んで対向する2つの第2絶縁領域142Bを備える。第1絶縁領域141Bは、空気の領域である。第2絶縁領域142Bのそれぞれは、空気とは異なる絶縁体から構成され、Y方向に延びる帯状の領域を有する。
【0089】
蓄電池モジュール110は、例えば、フォークリフトによって、蓄電池ラック120の前方側から搬出入される。他方、第2絶縁領域142Bは、モジュール筐体112と導電部材190との間の両側端側に配置される。そのため、蓄電池モジュール110を搬出入する際、第2絶縁領域142Bと衝突させずに、フォークリフトのフォークを、モジュール筐体112の底面112Bに面する第1絶縁領域141B内に挿入することができる。これにより、蓄電池モジュール110の円滑な搬出入作業が担保される。
【0090】
その他、第2変形例に係る絶縁部材140Bは、第1変形例に係る絶縁部材140Aと同様の効果を奏する。
【0091】
なお、第2絶縁領域142Bの数は、限定されない。例えば、絶縁部材140Bの中央に、帯状の形状を呈し、Y方向に延びる別の第2絶縁領域142Bを配置してもよい。
【0092】
<絶縁部材の第3変形例>
次に、図8を参照して、絶縁部材140の第3変形例を説明する。図8(a)は、第3変形例に係る絶縁部材140Cを示す平面図である。図8(b)は、第3変形例に係る絶縁部材140Cを示す斜視図である。
【0093】
第3変形例に係る絶縁部材140Cは、中央側に配置される第1絶縁領域141Cと、第1絶縁領域141Cを挟んで対向する2つの第2絶縁領域142Cを備える。第1絶縁領域141Cは、空気の領域である。第2絶縁領域142Cのそれぞれは、空気とは異なる絶縁体から構成され、X方向に延びる帯状の領域を有する。
【0094】
第2絶縁領域142Cは、モジュール筐体112における底面112Bの前端側及び後端側とそれぞれ接触する。これにより、モジュール筐体112の前後移動が規制される。その結果、モジュール筐体112に、地震等の強い衝撃が加わっても、モジュール筐体112が蓄電池ラック120の外に飛び出す事態を防止できる。
【0095】
第2絶縁領域142Cの数は、限定されない。例えば、絶縁部材140Cの中央に、X方向に延びる別の第2絶縁領域142Cをさらに配置してもよい。また、Y方向に延びる複数の第2絶縁領域142Cをさらに配置してもよい。すなわち、X方向に延びる第2絶縁領域142Cと、Y方向に延びる帯状の第2絶縁領域142Cとを交差させ、格子状の絶縁領域を形成してもよい。これにより、1方向に延びる第2絶縁領域142Cを複数配置する場合に比べて、第1浮遊容量C1の低減を図りつつ、モジュール筐体112の前後左右への移動をより効果的に防止できる。
【0096】
その他、第3変形例に係る絶縁部材140Cは、第1変形例に係る絶縁部材140Aと同様の効果を奏する。
【0097】
<絶縁部材の第4変形例>
次に、図9を参照して、絶縁部材140の第4変形例を説明する。図9(a)は、第4変形例に係る絶縁部材140Dを示す平面図である。図9(b)は、第4変形例に係る絶縁部材140Dを示す斜視図である。
【0098】
第4変形例に係る絶縁部材140Dは、中央側に配置される第1絶縁領域141Dと、絶縁部材140Dの四隅にそれぞれ配置される4つの第2絶縁領域142Dを備える。第1絶縁領域141Dは、空気の領域である。第2絶縁領域142Dのそれぞれは、空気とは異なる絶縁体から構成され、モジュール筐体112の底面112Bへ垂直に延びる凸状の領域を有する。
【0099】
第2絶縁領域142Dのそれぞれは、モジュール筐体112における底面112Bの四隅と接触する。これにより、モジュール筐体112を安定に収納することができる。また、蓄電池モジュール110を搬出入する際、第2絶縁領域142Dと衝突させずに、フォークリフトのフォークを、モジュール筐体112の底面112Bに面する第1絶縁領域141D内に挿入することができる。これにより、蓄電池モジュール110の円滑な搬出入作業が担保される。
【0100】
その他、第4変形例に係る絶縁部材140Dは、第1変形例に係る絶縁部材140Aと同様の効果を奏する。
【0101】
第2絶縁領域142Dの数は、4つに限定されない。例えば、絶縁部材140Dの中央に、凸状を呈する別の第2絶縁領域142Dを配置してもよい。また、各第2絶縁領域142Dの平面形状は、矩形に限定されない。例えば、第2絶縁領域142Dの平面形状は、円形、楕円形、三角形、五角形以上の多角形であってもよい。また、各第2絶縁領域142Dの平面形状は、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0102】
<導電部材の第1変形例>
次に、導電部材190を平板以外の形状とすることで、第1浮遊容量C1を低減することができる。第1浮遊容量C1を低減するための、導電部材190の各変形例の構造を説明する。まず、図10を参照して、導電部材190の第1変形例を説明する。図10(a)は、第1変形例に係る導電部材190Aを示す平面図である。図10(b)は、第1変形例に係る導電部材190Aを示す斜視図である。
【0103】
第1変形例に係る導電部材190Aは、内部中空の枠状部位を含む。導電部材190Aが枠状部位を含むことで、導電部材190Aの面積を小さくすることができる。これにより、式(3)の「S1」及び「S2」を小さくできる結果、第1浮遊容量C1を低減することができる。また、導電部材190Aは、モジュール筐体112における底面112Bの4つの端辺112B1,112B2,112B3,112B4のそれぞれと向き合う。そのため、モジュール筐体112を安定に支持することができる。
【0104】
<導電部材の第2変形例>
次に、図11を参照して、導電部材190の第2変形例を説明する。図11(a)は、第2変形例に係る導電部材190Bを示す平面図である。図11(b)は、第2変形例に係る導電部材190Bを示す斜視図である。
【0105】
第2変形例に係る導電部材190Bは、それぞれY方向に延びる2つの帯状部位を含む。2つの帯状部位を含むことで、導電部材190Bの面積を小さくすることができる。これにより、式(3)の「S1」及び「S2」を小さくできる結果、第1浮遊容量C1を低減することができる。また、帯状部位のそれぞれは、モジュール筐体112における底面112Bの側端辺112B3,112B4と向き合う。そのため、モジュール筐体112を安定に支持することができる。
【0106】
導電部材190Bにおける帯状部位の数は、限定されない。例えば、導電部材190Bの中央に、Y方向に延びる別の帯状部位を配置してもよい。
【0107】
<導電部材の第3変形例>
次に、図12を参照して、導電部材190の第3変形例を説明する。図12(a)は、第3変形例に係る導電部材190Cを示す平面図である。図12(b)は、第3変形例に係る導電部材190Cを示す斜視図である。
【0108】
第3変形例に係る導電部材190Cは、それぞれX方向に延びる2つの帯状部位を含む。2つの帯状部位を含むことで、導電部材190Cの面積を小さくすることができる。これにより、式(3)の「S1」及び「S2」を小さくできる結果、第1浮遊容量C1を低減することができる。また、帯状部位のそれぞれは、モジュール筐体112における底面112Bの前端辺112B1及び後端辺112B2と向き合う。そのため、モジュール筐体112を安定に支持することができる。
【0109】
導電部材190Cにおける帯状部位の数は、限定されない。例えば、導電部材190Cの中央に、X方向に延びる別の帯状部位を配置してもよい。また、Y方向に延びる複数の帯状部位をさらに配置してもよい。すなわち、X方向に延びる帯状部位と、Y方向に延びる帯状部位とを交差させ、導電部材190Cの形状を格子状としてもよい。導電部材190Cの形状を格子状とすることで、1方向に延びる導電部材190Cを複数配置する場合に比べて、第1浮遊容量C1の低減を図りつつ、モジュール筐体112をより安定に支持することができる。
【0110】
<導電部材の第4変形例>
次に、図13を参照して、導電部材190の第4変形例を説明する。図13(a)は、第4変形例に係る導電部材190Dを示す平面図である。図9(b)は、第4変形例に係る導電部材190Dを示す斜視図である。
【0111】
第4変形例に係る導電部材190Dは、導電部材190Dの四隅にそれぞれ配置される複数の小片状部位を含む。図13に示される小片状部位の数は、4つであるが、これに限定されない。
【0112】
複数の小片状部位を含むことで、導電部材190Dの面積を小さくすることができる。これにより、式(3)の「S1」及び「S2」を小さくできる結果、第1浮遊容量C1を低減することができる。また、複数の小片状部位のそれぞれは、モジュール筐体112における底面112Bの角部と向き合う。そのため、モジュール筐体112を安定に支持することができる。
【0113】
導電部材190Dの中央に、別の小片状部位を配置してもよい。また、小片状部位の平面形状は、矩形に限定されない。例えば、小片状部位の平面形状は、円形、楕円形、三角形、五角形以上の多角形であってもよい。さらに、各小片状部位の平面形状は、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0114】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1 電力変換システム
10 蓄電装置
110 蓄電池モジュール
111 蓄電池
112 モジュール筐体
120 蓄電池ラック
122 接地端子
122L 接地ケーブル
130 制御部
140,140A,140B,140C,140D 絶縁部材
141,141A,141B,141C,141D 第1絶縁領域
142,142A,142B,142C,142D 第2絶縁領域
190,190A,190B,190C,190D 導電部材
30 電力変換装置
320 インバータ回路
330 制御部
350 ヒートシンク
50 負荷
70G グランド
C1 第1浮遊容量
C2 第2浮遊容量
C3 第3浮遊容量
ic1 漏洩電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13