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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147962
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】ガス拡散電極及び電解装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/032 20210101AFI20241009BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20241009BHJP
   C25B 11/055 20210101ALI20241009BHJP
   C25B 11/069 20210101ALI20241009BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241009BHJP
   C25B 3/03 20210101ALI20241009BHJP
   C25B 3/26 20210101ALI20241009BHJP
   C25B 3/07 20210101ALI20241009BHJP
【FI】
C25B11/032
C25B11/052
C25B11/055
C25B11/069
C25B9/00 G
C25B3/03
C25B3/26
C25B3/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060751
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100201455
【弁理士】
【氏名又は名称】横尾 宏治
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 友和
(72)【発明者】
【氏名】杉山 幹人
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA12
4K011AA20
4K011AA29
4K011DA11
4K021AC02
4K021AC05
4K021BA02
4K021BA17
4K021DB11
4K021DB16
(57)【要約】
【課題】本発明は、大面積のガス透過性基材を使用しても、従来に比べて多孔質粒子と触媒粒子が剥がれにくいガス拡散電極及び従来に比べて安定的に二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成できる電解装置を提供する。
【解決手段】厚み方向にガスを透過可能なガス透過性基材と、複数の触媒粒子と、疎水性をもち、複数の触媒粒子の数平均粒子径よりも小さい粒子側貫通孔を有する複数の多孔質粒子と、ガス透過性基材を平面視したときに、触媒粒子と多孔質粒子を含む複数の触媒領域に区画する区画形成部と、複数の触媒領域において触媒粒子と多孔質粒子をガス透過性基材に対して接着する接着部を備える構成とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向にガスを透過可能なガス透過性基材と、
複数の触媒粒子と、
疎水性をもち、前記複数の触媒粒子の数平均粒子径よりも小さい粒子側貫通孔を有する複数の多孔質粒子と、
前記ガス透過性基材を平面視したときに、触媒粒子と多孔質粒子を含む複数の触媒領域に区画する区画形成部と、
前記複数の触媒領域において前記触媒粒子と前記多孔質粒子を前記ガス透過性基材に対して接着する接着部を備える、ガス拡散電極。
【請求項2】
前記接着部は、プロトン導電性を有する、請求項1に記載のガス拡散電極。
【請求項3】
前記区画形成部は、絶縁性樹脂で構成された壁部である、請求項1に記載のガス拡散電極。
【請求項4】
前記区画形成部は、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂で構成された壁部である、請求項1に記載のガス拡散電極。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のガス拡散電極と、対電極と、電解液と、ガス流通流路を有し、
前記ガス拡散電極は、前記ガス透過性基材側が前記ガス流通流路に露出し、前記触媒粒子側が前記電解液に接しており、
前記ガス流通流路内に二酸化炭素を供給した状態で前記ガス拡散電極と前記対電極との間に電圧を印加することで、前記ガス透過性基材を通過した二酸化炭素を還元し、炭素化合物を生成する、電解装置。
【請求項6】
前記ガス拡散電極は、上下方向成分をもって延びており、
前記多孔質粒子は、疎水性を有しており、
前記複数の触媒領域には、第1触媒領域と、第2触媒領域があり、
前記第1触媒領域は、前記第2触媒領域に比べて上方側に位置しており、
前記ガス透過性基材を平面視したときに、前記第1触媒領域における1cm当たりの多孔質粒子の数は、前記第2触媒領域における1cm当たりの多孔質粒子の数よりも少ない、請求項5に記載の電解装置。
【請求項7】
前記ガス拡散電極は、上下方向成分をもって延びており、
前記多孔質粒子は、疎水性を有しており、
前記複数の触媒領域には、第1触媒領域と、第2触媒領域があり、
前記第1触媒領域は、前記第2触媒領域に比べて上方側に位置しており、
前記第1触媒領域に属する多孔質粒子の粒子側貫通孔の開口面積は、前記第2触媒領域に属する多孔質粒子の粒子側貫通孔の開口面積に比べて大きい、請求項5に記載の電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス拡散電極及び電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カソード側にガス拡散電極が設けられ、ガス拡散電極上で二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成する電解装置が知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1)。
例えば、非特許文献1のガス拡散電極は、多孔質有機かご構造(porous organic cages)のCC3粒子と酸化銅触媒とナフィオン(登録商標)をメタノールに分散させて、ポリテトラフルオロエチレンガス拡散層上に塗布して作製する。こうすることで、CC3粒子の細孔を通過した二酸化炭素とCC3粒子の表面の酸化銅触媒と、ナフィオンによって三相界面が形成され、CC3粒子の表面上で二酸化炭素をC2化合物に還元できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7207672号公報
【非特許文献1】Angew. Chem. Int. Ed. 2022, e202202607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工業的に二酸化炭素を炭素化合物に還元する場合、大面積のガス拡散電極を作製する必要がある。
そこで、本発明者は、非特許文献1に倣って大面積のガス拡散電極を検討した。
しかしながら、検討したガス拡散電極は、ナフィオンの剛性によってCC3粒子と酸化銅触媒をガス拡散層に接着しているが、大面積化に伴ってCC3粒子と酸化銅触媒とナフィオンがガス拡散層上から剥がれ落ちてしまう可能性があった。
【0005】
そこで、本発明は、大面積のガス透過性基材を使用しても、従来に比べて多孔質粒子と触媒粒子が剥がれにくいガス拡散電極及び従来に比べて安定的に二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成できる電解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、厚み方向にガスを透過可能なガス透過性基材と、複数の触媒粒子と、疎水性をもち、前記複数の触媒粒子の数平均粒子径よりも小さい粒子側貫通孔を有する複数の多孔質粒子と、前記ガス透過性基材を平面視したときに、触媒粒子と多孔質粒子を含む複数の触媒領域に区画する区画形成部と、前記複数の触媒領域において前記触媒粒子と前記多孔質粒子を前記ガス透過性基材に対して接着する接着部を備える、ガス拡散電極である。
【0007】
本様相によれば、区画形成部によって区画された各触媒領域において、接着部によって触媒粒子と多孔質粒子がガス透過性基材に対して接着されるので、大面積のガス透過性基材を使用しても、従来に比べて多孔質粒子と触媒粒子が剥がれにくい。
【0008】
好ましい様相は、前記接着部は、プロトン導電性を有する。
【0009】
好ましい様相は、前記区画形成部は、絶縁性樹脂で構成された壁部である。
【0010】
好ましい様相は、前記区画形成部は、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂で構成された壁部である。
【0011】
本発明の一つの様相は、上記のガス拡散電極と、対電極と、電解液と、ガス流通流路を有し、前記ガス拡散電極は、前記ガス透過性基材側が前記ガス流通流路に露出し、前記触媒粒子側が前記電解液に接しており、前記ガス流通流路内に二酸化炭素を供給した状態で前記ガス拡散電極と前記対電極との間に電圧を印加することで、前記ガス透過性基材を通過した二酸化炭素を還元し、炭素化合物を生成する、電解装置である。
【0012】
ここでいう「炭素化合物」とは、炭素を含む化合物をいい、有機化合物だけではなく、一酸化炭素などの酸化物や炭酸塩、炭化物を含む。以下、同様とする。
【0013】
本様相によれば、複数の触媒領域に分かれているため、いずれかの触媒領域に異常があっても、異常のない触媒領域において二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成できるので、炭素化合物を安定的に生成できる。
【0014】
好ましい様相は、前記ガス拡散電極は、上下方向成分をもって延びており、前記多孔質粒子は、疎水性を有しており、前記複数の触媒領域には、第1触媒領域と、第2触媒領域があり、前記第1触媒領域は、前記第2触媒領域に比べて上方側に位置しており、前記ガス透過性基材を平面視したときに、前記第1触媒領域における1cm当たりの多孔質粒子の数は、前記第2触媒領域における1cm当たりの多孔質粒子の数よりも少ない。
【0015】
好ましい様相は、前記ガス拡散電極は、上下方向成分をもって延びており、前記多孔質粒子は、疎水性を有しており、前記複数の触媒領域には、第1触媒領域と、第2触媒領域があり、前記第1触媒領域は、前記第2触媒領域に比べて上方側に位置しており、前記第1触媒領域に属する多孔質粒子の粒子側貫通孔の開口面積は、前記第2触媒領域に属する多孔質粒子の粒子側貫通孔の開口面積に比べて大きい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガス拡散電極によれば、大面積のガス透過性基材を使用しても、従来に比べて多孔質粒子と触媒粒子が剥がれにくい。
本発明の電解装置によれば、従来に比べて安定的に二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態の電解装置を模式的に示した断面図である。
図2図1のガス拡散電極の分解斜視図である。
図3図1の電解装置を用いて炭素化合物を生成する際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明の第1実施形態の電解装置1は、主に、電気分解によって二酸化炭素から炭素化合物を製造するものである。
電解装置1は、図1のように、電解槽2と、ガス供給部3と、第1ガス回収部4と、第1電解液供給部6と、第1電解液回収部7と、第2電解液供給部8と、第2電解液回収部9と、第2ガス回収部10と、第3ガス回収部11と、電源装置12を備えている。
【0020】
(電解槽2)
電解槽2は、図1のように、槽本体部20と、ガス拡散電極部21と、対電極部22と、イオン交換部23と、ガス導入部25と、第1ガス排出部26と、ガス流通流路27と、第1電解液導入部28と、第1電解液排出部29と、第2電解液導入部30と、第2電解液排出部31と、第2ガス排出部32と、第3ガス排出部33を備えている。
【0021】
(槽本体部20)
槽本体部20は、イオン交換部23によって区画されており、カソード槽部40と、アノード槽部41を備えている。
カソード槽部40は、ガス拡散電極部21と、イオン交換部23の間の部位であり、第1電解液45が充填される部位である。
アノード槽部41は、対電極部22と、イオン交換部23の間の部位であり、第2電解液46が充填される部位である。
【0022】
(ガス拡散電極部21)
ガス拡散電極部21は、ガス流通流路27を通過する酸化物ガス内の二酸化炭素を還元し、C2化合物を生成するカソード電極部である。
ガス拡散電極部21は、カソード槽部40とガス流通流路27を区画するものであり、疎水性を有し、厚み方向に二酸化炭素の流通を許容し、第1電解液45の流通を抑制することが可能となっている。
ガス拡散電極部21は、図1のように、ガス透過性基材50(ガス拡散層)と、触媒層51と、区画形成部52で構成され、ガス透過性基材50のイオン交換部23側の主面53(以下、第1主面53ともいう)上に触媒層51が積層され、触媒層51が区画形成部52によって複数の触媒領域55に区画されたものである。
【0023】
(ガス透過性基材50)
ガス透過性基材50は、面状に広がりをもち厚み方向に複数の空隙を有した基材であり、疎水性を有し、厚み方向に二酸化炭素の流通を許容し、第1電解液45の流通を抑制することが可能となっている。
ガス透過性基材50は、導電性を有した導電基材でもある。
ガス透過性基材50は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維などの多孔質繊維が使用でき、ポリテトラフルオロエチレン等によって補強されていてもよい。
【0024】
(触媒層51)
触媒層51は、図1の拡大図のように、複数の触媒粒子60と、複数の多孔質粒子61と、複数の接着部62で構成され、接着部62によってガス透過性基材50の第1主面53上に触媒粒子60と多孔質粒子61が担持されている。
【0025】
(触媒粒子60)
触媒粒子60は、二酸化炭素を還元し、炭素化合物を形成するカソード触媒である。
本実施形態の触媒粒子60は、銅酸化物(CuO)であり、二酸化炭素を還元し、C2化合物を形成することが可能となっている。
ここでいう「C2化合物」とは、炭素数が2個の化合物をいい、例えば、エタンやエチレン、エタノールなどがある。
【0026】
(多孔質粒子61)
多孔質粒子61は、多孔質有機かご構造を有する粒子であり、複数の粒子側貫通孔70を有するものである。
粒子側貫通孔70は、多孔質粒子61の表面の一部から内部を経由して表面の別の一部に向かって延びて貫通する貫通孔である。
粒子側貫通孔70は、疎水性をもち、二酸化炭素が通過可能なガス通過孔であり、第1電解液45よりも二酸化炭素を優先的に通過させることが可能である。
粒子側貫通孔70は、開口の内接円の直径が触媒粒子60の数平均粒子径よりも小さく、大部分の触媒粒子60が進入不能となっている。
多孔質粒子61は、嵩比重が1.2cm-1以下であることが好ましい。
多孔質粒子61は、嵩比重が0.5cm-1以上であることが好ましく、0.8cm-1以上であることがより好ましい。
【0027】
(接着部62)
接着部62は、接着性を有し、触媒粒子60と多孔質粒子61を結着するバインダーであって、触媒粒子60と多孔質粒子61をガス透過性基材50に接着する部位である。
接着部62は、プロトン導電性を有するものであり、本実施形態の接着部62は、陽イオン交換膜であり、陰イオンや電子の移動を制限又は不能にし、陽イオンだけを移動可能としている。
接着部62は、例えば、ナフィオン(登録商標)などのパーフルオロアルキルスルホン酸系ポリマーの膜などの高分子膜が使用できる。
【0028】
(区画形成部52)
区画形成部52は、図2から読み取れるように、ガス透過性基材50を平面視したときに触媒層51を複数の触媒領域55に区画する壁部である。
本実施形態の区画形成部52は、格子状に区画しており、横方向X(前後方向)及び縦方向Y(上下方向)において複数の触媒領域55に区画している。
区画形成部52は、第1区画部76と、第2区画部77を備えており、これらが平面交差している。
第1区画部76は、縦方向成分をもって延び、触媒層51を横方向Xに区画する壁部である。
第2区画部77は、横方向成分をもって延び、触媒層51を縦方向Yに区画する壁部である。
【0029】
区画形成部52は、絶縁性樹脂で構成されていることが好ましく、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂で構成されていることが好ましい。
【0030】
(触媒領域55)
触媒領域55は、触媒層51が区画形成部52によって区画された領域であり、それぞれ触媒粒子60と、多孔質粒子61と、接着部62を含む領域である。
各触媒領域55の面積は、反応面積を確保する観点から、1cm以上であることが好ましい。
各触媒領域55a~55fの面積は、触媒層51の剥がれ落ちを防止する観点から、100cm以下であることが好ましい。
【0031】
第2区画部77で縦方向Y(上下方向)に区切られる各触媒領域55a~55fは、1cm当たりの多孔質粒子61の含有量が異なっていることが好ましい。
具体的には、各触媒領域55a~55fは、下方側から上方側に向けて1cm当たりの多孔質粒子61の数が少なくなっていることが好ましい。
例えば、第2触媒領域55bに比べて上方側に位置する第1触媒領域55aは、1cm当たりの多孔質粒子61の数が第2触媒領域55bの1cm当たりの多孔質粒子61の数よりも少ないことが好ましい。
また、各触媒領域55a~55fは、それぞれに属する多孔質粒子61の粒子側貫通孔70の開口面積が異なっていることが好ましい。
具体的には、各触媒領域55a~55fは、下方側から上方側に向けて、それぞれに属する多孔質粒子61の粒子側貫通孔70の開口面積が大きくなっていることが好ましい。
例えば、第2触媒領域55bに比べて上方側に位置する第1触媒領域55aは、多孔質粒子61の粒子側貫通孔70の開口面積が、第2触媒領域55bの多孔質粒子61の粒子側貫通孔70の開口面積よりも大きいことが好ましい。
【0032】
(対電極部22)
対電極部22は、ガス拡散電極部21と対をなし、第2電解液46を酸化し、酸化物体を生成するアノード電極部である。
対電極部22は、導電性を有しているものであれば特に限定されるものではなく、例えば、白金等の金属電極が使用できる。
酸化物体は、第2電解液46に含まれる成分が対電極部22によって酸化されたものであり、例えば、酸素ガスや、過酸化水素、次亜塩素酸などの酸化物がある。
【0033】
(イオン交換部23)
イオン交換部23は、カソード槽部40とアノード槽部41に仕切るセパレータである。
イオン交換部23は、厚み方向において、特定のイオンのみを移動可能とし、残りのイオンや電子の移動を規制する膜である。
本実施形態のイオン交換部23は、陽イオン交換膜であり、陰イオンや電子の移動を制限又は不能にし、陽イオンだけを移動可能としている。
また、イオン交換部23は、厚み方向のガスの流通を抑制するガス流通抑制膜でもある。
イオン交換部23としては、例えば、ナフィオン(登録商標)等のパーフルオロアルキルスルホン酸系ポリマーの膜などの高分子膜が使用できる。
【0034】
ガス導入部25は、ガス供給部3から供給される二酸化炭素を含む酸化物ガスをガス流通流路27の内部に導入する部位である。
【0035】
第1ガス排出部26は、ガス流通流路27内の二酸化炭素を含む酸化物ガスをガス流通流路27の外部に排出する部位である。
【0036】
ガス流通流路27は、ガス導入部25と第1ガス排出部26間をつなぐ流路であり、二酸化炭素を含む酸化物ガスを通過させることが可能となっている。
ガス流通流路27は、流れ方向の中間部において、ガス拡散電極部21が内壁の一部を構成している。
【0037】
第1電解液導入部28は、第1電解液供給部6から供給される第1電解液45をカソード槽部40の内部に導入する部位である。
【0038】
第1電解液排出部29は、カソード槽部40の内部から第1電解液回収部7に第1電解液45を排出する部位である。
【0039】
第1電解液45は、プロトンを含む液体であって、カソライトとして機能するものである。
第1電解液45は、プロトンを含むものであれば、特に限定されないが、例えば、水、酸性溶液、アルカリ性水溶液であることが好ましい。
【0040】
第2電解液導入部30は、第2電解液供給部8から供給される第2電解液46をアノード槽部41の内部に導入する部位である。
【0041】
第2電解液排出部31は、アノード槽部41の内部から第2電解液回収部9に第2電解液46を排出する部位である。
【0042】
第2電解液46は、水酸化物イオンを含む液体であって、アノライトとして機能するものである。
第2電解液46は、水酸化物イオンを含むものであれば、特に限定されないが、例えば、水、アルカリ性溶液、酸性水溶液などが使用できる。
【0043】
(ガス供給部3)
ガス供給部3は、二酸化炭素を含む酸化物ガスをガス導入部25に供給する部位である。
ガス供給部3は、ガス導入部25への酸化物ガスの供給量を調整可能となっている。
【0044】
(第1ガス回収部4)
第1ガス回収部4は、酸化物ガスを第1ガス排出部26から回収する部位である。
【0045】
(第1電解液供給部6)
第1電解液供給部6は、第1電解液45を第1電解液導入部28からカソード槽部40内に供給する部位である。
第1電解液供給部6は、カソード槽部40への第1電解液45の供給量を調整可能となっている。
【0046】
(第1電解液回収部7)
第1電解液回収部7は、カソード槽部40内の第1電解液45を第1電解液排出部29から回収し、貯留する貯留タンクである。
【0047】
(第2電解液供給部8)
第2電解液供給部8は、第2電解液46を第2電解液導入部30からアノード槽部41内に供給する部位である。
第2電解液供給部8は、アノード槽部41への第2電解液46の供給量を調整可能となっている。
【0048】
(第2電解液回収部9)
第2電解液回収部9は、アノード槽部41内の第2電解液46を第2電解液排出部31から回収し、貯留する貯留タンクである。
【0049】
(第2ガス回収部10)
第2ガス回収部10は、カソード槽部40内で発生した炭素化合物を含むカソード生成ガスを第2ガス排出部32から回収する部位である。
【0050】
(第3ガス回収部11)
第3ガス回収部11は、アノード槽部41内で発生した酸化物体を含むアノード生成ガスを第3ガス排出部33から回収する部位である。
【0051】
(電源装置12)
電源装置12は、電解槽2に電力を供給する電力供給装置であり、ガス拡散電極部21と対電極部22の間に電圧を印加する電圧印加装置である。
電源装置12は、ガス拡散電極部21と対電極部22の間に電圧を印加できるものであれば特に限定されるものではない。電源装置12は、商用電源装置であってもよいし、太陽電池等の再生可能エネルギーを用いた発電装置であってもよいし、二次電池等の蓄電装置であってもよい。
【0052】
続いて、電解装置1の各部位の位置関係について説明する。
【0053】
電解装置1は、図1のように、カソード槽部40内にガス拡散電極部21が縦方向成分(上下方向成分)をもって配されており、アノード槽部41内に対電極部22が縦方向成分(上下方向成分)をもって配されている。
本実施形態の電解装置1は、カソード槽部40内のガス拡散電極部21とアノード槽部41内の対電極部22がともに上下方向に延びており、平行となっている。
ガス拡散電極部21の触媒層51側の面は、対電極部22とイオン交換部23を挟んで対向している。
ガス拡散電極部21は、触媒層51側の面がカソード槽部40側に露出しており、ガス流通流路27側の面がガス流通流路27に露出している。
すなわち、ガス拡散電極部21は、触媒層51の触媒粒子60と多孔質粒子61と接着部62のそれぞれが第1電解液45に晒されて接している。
【0054】
続いて、本実施形態の電解装置1を用いて二酸化炭素から炭素化合物を生成する際の動作について説明する。
【0055】
まず、電解液供給部6,8から槽部40,41に電解液45,46を供給し、槽部40,41内の大部分に電解液45,46を充填する。
【0056】
このとき、第1電解液45がカソード槽部40に充填され、ガス拡散電極部21がカソード槽部40内で第1電解液45に浸され、触媒層51が第1電解液45に晒されている。
同様に、第2電解液46がアノード槽部41に充填され、対電極部22がアノード槽部41内で第2電解液46に浸されている。
第1電解液45の液位は、ガス拡散電極部21の触媒層51の80%以上が浸る液位であることが好ましく、90%以上が浸る液位であることがより好ましい。
第2電解液46の液位は、対電極部22の80%以上が浸る液位であることが好ましく、90%以上が浸る液位であることがより好ましい。
【0057】
また、別途工程にて、ガス供給部3からガス流通流路27に二酸化炭素を含む酸化物ガスを供給する。本実施形態では、ガス供給部3からガス流通流路27に二酸化炭素を供給する。
【0058】
このとき、ガス拡散電極部21のガス透過性基材50は、第1主面53とは反対側の第2主面54がガス流通流路27を流通する二酸化炭素を含む酸化物ガスに晒されている。
【0059】
そして、ガス流通流路27に二酸化炭素を含む酸化物ガスを流通させた状態で、電源装置12によってガス拡散電極部21と対電極部22の間に電圧を印加する。
【0060】
このとき、ガス拡散電極部21の触媒層51上では、二酸化炭素が触媒粒子60の表面で炭素化合物に還元される。
具体的には、図3のように、ガス流通流路27を通過する酸化物ガスに含まれる二酸化炭素の一部は、ガス拡散電極部21のガス透過性基材50の空隙を通過して各触媒領域55の多孔質粒子61に至り、多孔質粒子61の粒子側貫通孔70を通過する。そして、各多孔質粒子61の粒子側貫通孔70間を移動して多孔質粒子61の表面に至り、粒子側貫通孔70の開口付近の触媒粒子60に至る。そして、触媒粒子60と二酸化炭素と第1電解液45の三相界面で二酸化炭素が還元されて炭素化合物が生成される。
一方、対電極部22上で第2電解液46が酸化物体に酸化される。本実施形態では、第2電解液46の水成分が酸化され、酸化物体である酸素ガスが生成される。
【0061】
ガス拡散電極部21で生成された炭素化合物は、第1電解液45よりも比重が軽いので、第2ガス排出部32から第2ガス回収部10で回収され、未反応の二酸化炭素は、他の酸化物ガスとともに第1ガス排出部26から第1ガス回収部4で回収される。
一方、対電極部22で生成された酸素ガスは、第2電解液46よりも比重が軽いので、第3ガス排出部33から第3ガス回収部11で回収される。
【0062】
第1実施形態の電解装置1によれば、対電極部22とともに電解液45,46に含侵し、ガス透過性基材50に酸化物ガスを流通させた状態で対電極部22との間で電圧を印加したときに、ガス透過性基材50を通過し、さらに粒子側貫通孔70を通過した二酸化炭素と、多孔質粒子61の粒子側貫通孔70の開口付近に位置する触媒粒子60と、第1電解液45又は接着部62との間で、反応場である三相界面が形成され、ガス透過性基材50から離れた位置においても二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成できる。
【0063】
第1実施形態の電解装置1によれば、区画形成部52によって区画された各触媒領域55において、接着部62によって触媒粒子60と多孔質粒子61がガス透過性基材50に対して接着されるので、大面積のガス透過性基材50を使用しても、従来に比べて多孔質粒子61と触媒粒子60が剥がれにくい。
【0064】
第1実施形態の電解装置1によれば、接着部62がプロトン導電性を有するため、触媒粒子60が直接第1電解液に触れずとも、接着部62と、触媒粒子60と、多孔質粒子61の粒子側貫通孔70を通過する二酸化炭素とによって、多孔質粒子61の粒子側貫通孔70の開口付近で反応場である三相界面を形成できる。その結果、ガス透過性基材50から離れた位置で二酸化炭素を還元できるため、二酸化炭素の逆流を抑制でき、炭素化合物を第2ガス回収部10で回収しやすい。
【0065】
第1実施形態の電解装置1によれば、ガス拡散電極部21は、区画形成部52が絶縁性樹脂で構成されているため、各触媒領域55において独立して反応させることができる。
【0066】
第1実施形態の電解装置1によれば、ガス拡散電極部21は、区画形成部52が光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂で構成されているため、硬化して形成しやすく、各触媒領域55を区画しやすい。
【0067】
第1実施形態の電解装置1によれば、複数の触媒領域55に分かれているため、いずれかの触媒領域55に異常があっても、異常のない触媒領域55において二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成できるので、炭素化合物を安定的に生成できる。
【0068】
第1実施形態の電解装置1によれば、第1電解液45から加わる圧力が小さい上方側に位置する第1触媒領域55aの多孔質粒子61の密度が、第1触媒領域55aに比べて第1電解液45から加わる圧力が大きい下方側に位置する第2触媒領域55bの多孔質粒子61の密度に比べて小さい。そのため、効率的に二酸化炭素をガス透過性基材50の厚み方向に通過させることができるとともに、ガス透過性基材50から第1電解液45が多孔質粒子61の疎水性によってガス流通流路27側に漏れることを防止できる。
【0069】
第1実施形態の電解装置1によれば、第1電解液45から加わる圧力が小さい上方側に位置する第1触媒領域55aの多孔質粒子61の粒子側貫通孔70の開口面積が、第1触媒領域55aに比べて第1電解液45から加わる圧力が大きい下方側に位置する第2触媒領域55bの多孔質粒子61の粒子側貫通孔70の開口面積に比べて大きい。そのため、効率的に二酸化炭素をガス透過性基材50の厚み方向に通過させることができるとともに、ガス透過性基材50から第1電解液45がガス流通流路27側に漏れることを防止できる。
【0070】
上記した実施形態では、区画形成部52は、第1区画部76によって横方向Xにおいてそれぞれ3つの触媒領域55に区画し、第2区画部77によって縦方向Yにおいてそれぞれ6つの触媒領域55に区画していたが、本発明はこれに限定されるものではない。区画形成部52による区画する触媒領域55の数は、2以上となればよい。
すなわち、上記した実施形態では、第1区画部76は、横方向Xにおいて3つの触媒領域55に区画していたが、第2区画部77によって複数の触媒領域55に区画されるのであれば、区画されなくてもよいし、2つ又は4つ以上の触媒領域55に区画してもよい。
同様に、第2区画部77は、縦方向Yにおいて6つの触媒領域55に区画していたが、第1区画部76によって複数の触媒領域55に区画されるのであれば、区画されなくてもよいし、2つ以上5つ以下又は7つ以上の触媒領域55に区画してもよい。
【0071】
上記した実施形態では、区画形成部52によって触媒層51を縦横格子状に区画し、四角形状の触媒領域55を形成していたが、本発明はこれに限定されるものではない。触媒領域55は、四角形状でなくてもよい。例えば、触媒領域55は、円形状であってもよいし、三角形状や五角形状、六角形状などの多角形状であってもよい。触媒領域55は、他の触媒領域55とともに平面充填となる形状であることが好ましい。
【0072】
上記した実施形態では、対電極部22は、金属電極であったが、本発明はこれに限定されるものではない。対電極部22は、ガス拡散電極であってもよい。
【0073】
上記した実施形態では、触媒層51は、触媒領域55のみに形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。触媒層51は、区画形成部52上にも形成されていてもよい。
【0074】
上記した実施形態では、ガス拡散電極部21によって二酸化炭素をC2化合物に還元したが、本発明はこれに限定されるものではない。ガス拡散電極部21によって二酸化炭素をメタンやメチレンなどのC1化合物などの炭素化合物に還元してもよい。
【0075】
上記した実施形態では、ガス拡散電極部21によって二酸化炭素を還元していたが、本発明はこれに限定されるものではない。ガス拡散電極部21によって、一酸化炭素や、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化硫黄、二酸化硫黄等の他の酸化物ガスを還元してもよい。
【0076】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0077】
1 電解装置
21 ガス拡散電極部(ガス拡散電極)
22 対電極部(対電極)
27 ガス流通流路
45 第1電解液
46 第2電解液
50 ガス透過性基材
52 区画形成部
55,55a~55f 触媒領域
60 触媒粒子
61 多孔質粒子
62 接着部
70 粒子側貫通孔
図1
図2
図3