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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147963
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】マイクロLEDパネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20241009BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20241009BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241009BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20241009BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20241009BHJP
【FI】
G09F9/00 338
G09F9/33
G09F9/30 337
G09F9/30 349A
H01L33/58
H01L33/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060752
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健哉
(72)【発明者】
【氏名】春本 祥征
【テーマコード(参考)】
5C094
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
5C094AA42
5C094AA43
5C094BA03
5C094BA25
5C094BA32
5C094CA23
5C094DB01
5C094ED02
5C094ED15
5C094FA01
5C094FA02
5C094FA03
5C094FB01
5C094FB15
5F142AA54
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA11
5F142CA13
5F142CB14
5F142CB23
5F142CD02
5F142CD16
5F142CD32
5F142CG03
5F142CG32
5F142DA13
5F142DA72
5F142DA73
5F142DB17
5F142DB24
5F142FA03
5F142FA30
5F142FA32
5F142GA02
5G435AA17
5G435BB04
5G435CC12
5G435FF13
5G435GG12
5G435HH14
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】マイクロLEDチップの配置ずれを低減することで表示品位の優れたマイクロLEDパネルが得られ、歩留まりを改善できるマイクロLEDパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】マイクロLEDと、第一のコンタクト電極と、遮光部材とを有するマイクロLEDチップを作製する工程と、スイッチング素子と、コンタクト電極と、絶縁膜とを有するアレイ基板を作製する工程と、上記アレイ基板上に上記マイクロLEDチップを配置する工程とを備え、上記遮光部材は、傾斜面を有する凸部を有し、上記絶縁膜には、傾斜面を有する凹部が形成されており、上記マイクロLEDチップを配置する工程は、上記遮光部材の凸部と、上記絶縁膜の凹部とが対向するように配置し、上記第一のコンタクト電極と上記コンタクト電極とを電気的に接続する工程を含むマイクロLEDパネルの製造方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロLEDと、前記マイクロLEDと電気的に接続された第一のコンタクト電極と、前記マイクロLEDの周囲に配置された遮光部材とを有するマイクロLEDチップを作製する工程と、
スイッチング素子と、前記スイッチング素子と電気的に接続された第二のコンタクト電極と、前記第二のコンタクト電極の一部が露出するように前記第二のコンタクト電極上に形成された絶縁膜とを有するアレイ基板を作製する工程と、
前記アレイ基板上に前記マイクロLEDチップを配置する工程とを備え、
前記遮光部材は、傾斜面を有する凸部を有し、
前記絶縁膜には、傾斜面を有する凹部が形成されており、
前記マイクロLEDチップを配置する工程は、前記遮光部材の凸部と、前記絶縁膜の凹部とが対向するように配置し、前記第一のコンタクト電極と前記第二のコンタクト電極とを電気的に接続する工程を含むことを特徴とするマイクロLEDパネルの製造方法。
【請求項2】
前記マイクロLEDチップを作製する工程は、感光性樹脂組成物に、透過率が段階的に変化するハーフトーンマスクを重ねて露光し、前記傾斜面を有する遮光部材を作製する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のマイクロLEDパネルの製造方法。
【請求項3】
前記ハーフトーンマスクは、複数の遮光部と、前記複数の遮光部間に配置された複数のスリットとを有し、
前記複数の遮光部は、幅が異なる複数の遮光部を含むことを特徴とする請求項2に記載のマイクロLEDパネルの製造方法。
【請求項4】
前記ハーフトーンマスクは、蒸着金属の密度が異なる複数の領域を含むことを特徴とする請求項2に記載のマイクロLEDパネルの製造方法。
【請求項5】
前記ハーフトーンマスクは、複数の半透過性のフィルムを重ねたものであることを特徴とする請求項2に記載のマイクロLEDパネルの製造方法。
【請求項6】
前記マイクロLEDチップは、波長変換層と前記マイクロLEDと前記第一のコンタクト電極とをこの順で有することを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロLEDパネルの製造方法。
【請求項7】
前記マイクロLEDチップは、前記マイクロLEDと波長変換層と前記第一のコンタクト電極とをこの順で有することを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロLEDパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、マイクロLEDパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子として発光ダイオード(LED:Light Emission Diode)を用いたLEDパネルが知られており、近年、より微細なマイクロLEDを用いた高精細な表示パネルとして、マイクロLEDパネルが検討されている。
【0003】
特許文献1には、基板;前記基板の上に設けられた駆動トランジスタ;前記基板の上に前記駆動トランジスタを覆って設けられた第1絶縁層;前記第1絶縁層の上に配置され、前記駆動トランジスタから電流値を制御した信号が与えられる第1実装電極;及び前記第1実装電極の上に実装され、第1電極及び第2電極を有し、前記第1電極は前記第1実装電極に電気的に接続される発光素子;を備え、前記第1実装電極及び前記第1電極は、金属材料から形成され、互いに接合され、前記第1実装電極は、平面視において前記第1電極と重なる位置に少なくとも1つの第1貫通孔を有する、表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-15177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイクロLEDをアレイ基板に実装する方法としては、複数のマイクロLEDチップを支持基板上に作製した後、ピックアップして、スイッチング素子や配線等が形成されたアレイ基板に配置し、金属接合材等で接続する方法が挙げられる。しかしながら、マイクロLEDチップは微細であることから、マイクロLEDチップを配置する際に所定の位置からずれてしまうことがあり、マイクロLEDチップとスイッチング素子等との接続が不十分となり、正常に作動しないことがあった。また、配置がずれたマイクロLEDチップの数が多くなると、パネルの表示時に輝度ムラが発生し、表示品位が低下する。そのため、製品の歩留まりが低下し、コストアップに繋がることがあった。
【0006】
特許文献1では、貫通孔を設けることで、第1実装電極と発光素子の第1電極とを金属接合させるために必要なレーザーを、第1貫通孔を通して第1電極に直接照射することができ、第1実装電極と第1電極との接合を強固なものにすることができる。一方で、貫通孔をパターニングする必要があり、追加の工程が必要となるため、製造のリードタイムが長くなり、製造コストが高くなる。また、マイクロLEDチップの配置がずれるという問題については検討されておらず、更なる検討の余地があった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、マイクロLEDチップの配置ずれを低減することで表示品位の優れたマイクロLEDパネルが得られ、歩留まりを改善できるマイクロLEDパネルの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一実施形態は、マイクロLEDと、上記マイクロLEDと電気的に接続された第一のコンタクト電極と、上記マイクロLEDの周囲に配置された遮光部材とを有するマイクロLEDチップを作製する工程と、スイッチング素子と、上記スイッチング素子と電気的に接続された第二のコンタクト電極と、上記第二のコンタクト電極の一部が露出するように上記第二のコンタクト電極上に形成された絶縁膜とを有するアレイ基板を作製する工程と、上記アレイ基板上に上記マイクロLEDチップを配置する工程とを備え、上記遮光部材は、傾斜面を有する凸部を有し、上記絶縁膜には、傾斜面を有する凹部が形成されており、上記マイクロLEDチップを配置する工程は、上記遮光部材の凸部と、上記絶縁膜の凹部とが対向するように配置し、上記第一のコンタクト電極と上記第二のコンタクト電極とを電気的に接続する工程を含むマイクロLEDパネルの製造方法。
【0009】
(2)また、本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記マイクロLEDチップを作製する工程は、感光性樹脂組成物に、透過率が段階的に変化するハーフトーンマスクを重ねて露光し、上記傾斜面を有する遮光部材を作製する工程を含むマイクロLEDパネルの製造方法。
【0010】
(3)また、本発明のある実施形態は、上記(2)の構成に加え、上記ハーフトーンマスクは、複数の遮光部と、上記複数の遮光部間に配置された複数のスリットとを有し、上記複数の遮光部は幅が異なる複数の遮光部を含むマイクロLEDパネルの製造方法。
【0011】
(4)また、本発明のある実施形態は、上記(2)の構成に加え、上記ハーフトーンマスクは、蒸着金属の密度が異なる複数の領域を含むマイクロLEDパネルの製造方法。
【0012】
(5)また、本発明のある実施形態は、上記(2)の構成に加え、上記ハーフトーンマスクは、複数の半透過性のフィルムを重ねたものであるマイクロLEDパネルの製造方法。
【0013】
(6)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(5)のいずれかの構成に加え、上記マイクロLEDチップは、波長変換層と上記マイクロLEDと上記第一のコンタクト電極とをこの順で有するマイクロLEDパネルの製造方法。
【0014】
(7)また、本発明のある実施形態は、上記(1)~(5)のいずれかの構成に加え、上記マイクロLEDチップは、上記マイクロLEDと波長変換層と上記第一のコンタクト電極とをこの順で有することを特徴とするマイクロLEDパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マイクロLEDチップの配置ずれを低減することで表示品位の優れたマイクロLEDパネルが得られ、歩留まりを改善できるマイクロLEDパネルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るマイクロLEDパネルの一部を示した平面模式図である。
図2図1に示したマイクロLEDパネルのX1-X2線における断面模式図である。
図3図1に示したマイクロLEDパネルのX3-X4線における断面模式図である。
図4】マイクロLEDチップの第1例を示した断面模式図である。
図5図4に示したマイクロLEDチップの平面模式図である。
図6】マイクロLEDチップの第2例を示した断面模式図である。
図7図6に示したマイクロLEDチップの平面模式図である。
図8】マイクロLEDチップを作製する工程において、基板上に波長変換層を形成する工程を示す断面模式図である。
図9】マイクロLEDチップを作製する工程において、マイクロLEDを形成する工程を示す断面模式図である。
図10】マイクロLEDチップを作製する工程において、第一のコンタクト電極を形成する工程を示す断面模式図である。
図11】マイクロLEDチップを作製する工程において、遮光性樹脂組成物を塗工する工程を示す断面模式図である。
図12】マイクロLEDチップを作製する工程において、遮光性樹脂組成物にハーフトーンマスクを重ね、露光する工程を示す断面模式図である。
図13】ハーフトーンマスクの第1例を示した平面模式図である。
図14図13に示したハーフトーンマスクのX9-X10線における断面模式図である。
図15図13及び図14に示したハーフトーンマスクの透過率を例示した断面模式図である。
図16】ハーフトーンマスクの第2例の一部を示した断面模式図である。
図17】ハーフトーンマスクの第3例の一部を示した断面模式図である。
図18】遮光部材が形成されたマイクロLEDチップの断面模式図である。
図19】マイクロLEDチップの第3例を示した断面模式図である。
図20】マイクロLEDチップの第4例を示した断面模式図である。
図21】アレイ基板の第1例を示した断面模式図である。
図22】回路基板に含まれる画素回路の構成の一例を示す回路図である。
図23】アレイ基板を作製する工程において、第二のコンタクト電極を形成する工程を示す断面模式図である。
図24】アレイ基板を作製する工程において、第二のコンタクト電極上に絶縁膜を形成する工程を示す断面模式図である。
図25】アレイ基板を作製する工程において、絶縁膜上にレジストを塗布する工程を示す断面模式図である。
図26】アレイ基板を作製する工程において、レジストを露光する工程を示す断面模式図である。
図27】アレイ基板を作製する工程において、露光後のレジストを現像する工程を示す断面模式図である。
図28】アレイ基板を作製する工程において、絶縁膜をエッチングする工程を示す断面模式図である。
図29】アレイ基板を作製する工程において、レジストを剥離したアレイ基板の断面模式図である。
図30】アレイ基板の第2例を示した断面模式図である。
図31】アレイ基板の第3例を示した断面模式図である。
図32】マイクロLEDチップ実装工程において、マイクロLEDチップを粘着層へ転写する工程を示す断面模式図である。
図33】マイクロLEDチップ実装工程において、基板を剥離する工程を示す断面模式図である。
図34】マイクロLEDチップ実装工程において、マイクロLEDチップをピックアップする工程を示す断面模式図である。
図35】マイクロLEDチップ実装工程において、マイクロLEDチップをアレイ基板に配置する工程を示す断面模式図である。
図36】マイクロLEDチップをアレイ基板に配置する際に、位置がずれた場合を示す断面模式図である。
図37図36に示したずれが修正された状態を示す断面模式図である。
図38】マイクロLEDチップ実装工程において、マイクロLEDチップの第一のコンタクト電極とアレイ基板の第二のコンタクト電極とを電気的に接続する工程を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に記載された内容に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。なお、以下の説明において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して適宜用い、その繰り返しの説明は適宜省略する。本発明の各態様は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよい。
【0018】
本明細書中、観察者側とは、対象となる部材を観察者に対向して配置した状態において、対象となる部材に対して観察者により近い側を意味し、背面側とは、対象となる部材に対して観察者からより遠い側を意味する。
【0019】
以下に図面を用いて、実施形態に係るマイクロLEDパネルの製造方法について説明する。実施形態に係るマイクロLEDパネルの製造方法は、マイクロLEDチップを作製する工程と、アレイ基板を作製する工程と、上記アレイ基板上に上記マイクロLEDチップを配置する工程とを備える。
【0020】
図1は、実施形態に係るマイクロLEDパネルの一部を示した平面模式図である。図2は、図1に示したマイクロLEDパネルのX1-X2線における断面模式図である。図3は、図1に示したマイクロLEDパネルのX3-X4線における断面模式図である。
【0021】
図1に示したように、マイクロLEDパネル1000は、アレイ基板100に複数のマイクロLEDチップ10が実装されている。マイクロLEDパネル1000は、平面視において、複数のマイクロLEDチップ10が画素毎にマトリクス状に配置されてもよい。アレイ基板100は、マイクロLEDチップ10が配置された表示領域と、上記表示領域周辺の額縁領域を有してもよい。図1は、表示領域の一部を拡大した平面模式図でもある。
【0022】
本明細書中、マイクロLEDチップ10は、アレイ基板に実装する際にピックアップされる素子である。マイクロLEDチップ10は、長さ及び幅の少なくとも一方が100μm以下であることが好ましく、より好ましくは、長さ及び幅の両方が100μm以下である。
【0023】
図2に示したように、マイクロLEDチップ10の第一のコンタクト電極40と、アレイ基板100の第二のコンタクト電極110とは、はんだ等の接合材204により電気的に接続されている。マイクロLEDチップ10の遮光部材50の凸部と、アレイ基板100の絶縁膜120の凹部とは対向して配置されており、遮光部材50の凸部の傾斜面の少なくとも一部と絶縁膜120の凹部の傾斜面の少なくとも一部は、接していることが好ましい。
【0024】
マイクロLEDチップ10は自発光素子であり、例えば、観察者側に赤色の光を出射する赤色のマイクロLEDチップ10R、緑色の光を出射する緑色のマイクロLEDチップ10G、青色の光を出射する青色のマイクロLEDチップ10Bを含んでもよい。このような構成とすることで、フルカラー表示を行うことができる。以下、赤色のマイクロLEDチップ10R、緑色のマイクロLEDチップ10G、青色のマイクロLEDチップ10Bを特に区別しない場合は、単にマイクロLEDチップ10という。
【0025】
図1図3では、マイクロLEDパネル1000の行方向及び列方向のいずれか一方の方向に沿って、異なる色のマイクロLEDチップが配置され、行方向及び列方向の他方の方向に沿って、同じ色のマイクロLEDチップが配置されるストライプ配置を例示したが、マイクロLEDチップの色の並びは特に限定されない。
【0026】
図4は、マイクロLEDチップの第1例を示した断面模式図である。図5は、図4に示したマイクロLEDチップの平面模式図である。図4は、図5のX1-X2線における断面模式図に対応する。図4及び図5に示したように、マイクロLEDチップ10は、マイクロLED30と、マイクロLED30と電気的に接続された第一のコンタクト電極40と、マイクロLED30の周囲に配置された遮光部材50とを有する。
【0027】
マイクロLEDチップ10は、更に、波長変換層20を有してもよく、図4及び図5に示したように、波長変換層20とマイクロLED30と第一のコンタクト電極40とをこの順で有してもよい。図4及び図5に示したマイクロLEDチップ10は、波長変換層20がマイクロLED30よりも観察者側となるようにアレイ基板に実装される。マイクロLED30から出射された光は、波長変換層20を透過し、観察者側に出射されることで所望の表示を行うことができる。
【0028】
遮光部材50は、マイクロLED30の周囲に配置される。遮光部材50をマイクロLEDの周囲に配置することで、隣接する画素間の混色を防止することができる。遮光部材50は、平面視において、少なくとも発光色が異なる波長変換層20間に配置されていればよいが、図4図7に示したように、平面視において、波長変換層20を囲むように配置されてもよい。
【0029】
図6は、マイクロLEDチップの第2例を示した断面模式図である。図7は、図6に示したマイクロLEDチップの平面模式図である。マイクロLEDチップ10は、マイクロLED30と波長変換層20と第一のコンタクト電極40とをこの順で有してもよい。図6及び図7に示したマイクロLEDチップ10では、マイクロLED30から出射された光は、波長変換層20を透過した後、第一のコンタクト電極40で反射され、観察者側に出射されることで所望の表示を行うことができる。図6及び図7に示したマイクロLEDチップ10の場合、混色を抑制する観点からは、マイクロLED30の第一のコンタクト電極40と反対側の面に遮光部材52を有することが好ましい。遮光部材52としては、遮光部材50と同様のものを用いることができる。
【0030】
(マイクロLEDチップを作製する工程)
以下に、図4及び図5に示したマイクロLEDチップの製造方法について説明する。図8は、マイクロLEDチップを作製する工程において、基板上に波長変換層を形成する工程を示す断面模式図である。
【0031】
図8に示したように、まず、サファイア基板等の基板1上に波長変換層20を形成する。波長変換層20は画素毎に形成されてもよい。波長変換層20の形成方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、ポジ型又はネガ型レジスト材料を用いてフォトリソグラフィーによりパターン形成してもよいし、インクジェット印刷、スクリーン印刷等の印刷手法によってパターン形成してもよい。波長変換層20の材料としては、マイクロLEDの分野で通常用いられるものを用いることができる。
【0032】
波長変換層20は、赤色の波長変換層20R、緑色の波長変換層20G及び青色の波長変換層20Bを含んでもよい。赤色の波長変換層20Rは、マイクロLED30の出射光を励起光として、赤色の波長領域(約600nm~約780nm)の光(赤色光)を蛍光光として発する赤色蛍光体を含んでもよい。緑色の波長変換層20Gは、マイクロLED30の出射光を励起光として、緑色の波長領域(約500nm~約570nm)の光(緑色光)を蛍光光として発する緑色蛍光体を含んでもよい。青色の波長変換層20Bは、マイクロLED30の出射光を励起光として、青色の波長領域(約380nm~約500nm)の光(青色光)を蛍光光として発する青色蛍光体を含んでもよい。
【0033】
マイクロLED30は、電圧の印加に伴って、白色光、青色光(例えば約380nm~約500nm)、紫外線等を出射するマイクロLEDであってもよい。マイクロLED30として、白色光を出射するマイクロLEDを用いる場合、赤色のマイクロLEDチップ10Rは、波長変換層20として赤色の波長変換層20Rを有し、緑色のマイクロLEDチップ10Gは、波長変換層20として緑色の波長変換層20Gを有し、青色のマイクロLEDチップ10Bは、波長変換層20として青色の波長変換層20Bを有してもよい。
【0034】
マイクロLED30として、青色光を出射するマイクロLEDを用いる場合、マイクロLED30として、青色光を出射するマイクロLED用いる場合、赤色のマイクロLEDチップ10Rは、波長変換層20として赤色の波長変換層20Rを有し、緑色のマイクロLEDチップ10Gは、波長変換層20として緑色の波長変換層20Gを有してもよい。青色のマイクロLEDチップ10Bは、波長変換層20の代わりに蛍光体を含まない透明層(無蛍光体層)を有してもよく、マイクロLED30から出射された青色光は、波長変換されずに上記無蛍光体層を透過し出射されてもよい。
【0035】
図9は、マイクロLEDチップを作製する工程において、マイクロLEDを形成する工程を示す断面模式図である。図9に示したように、上記で形成した各色の波長変換層20上に画素毎にマイクロLED30を形成する。マイクロLED30の形成方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0036】
マイクロLED30の構成としては、特に限定されず、例えば、陽極(アノード)、p型半導体層、発光層(活性層)、n型半導体層、陰極(カソード)を有する構成が挙げられる。マイクロLED30は、無機発光ダイオードであることが好ましく、GaN等の窒化物半導体層を含むことが好ましい。窒化物半導体層によって、紫外光から赤色までの波長帯で発光可能なマイクロ発光素子を実現することができる。
【0037】
図10は、マイクロLEDチップを作製する工程において、第一のコンタクト電極を形成する工程を示す断面模式図である。第一のコンタクト電極40は、1つのマイクロLEDチップに対して、複数個配置されてもよい。マイクロLEDチップ10は、例えば、マイクロLED30のアノードとカソードにそれぞれ電気的に接続された2つの第一のコンタクト電極40を含んでもよい。
【0038】
第一のコンタクト電極40に用いられる材料としては、アルミ、チタン、モリブデン、タンタル、タングステン等の金属材料が挙げられる。
【0039】
第一のコンタクト電極40の形成方法は特に限定されないが、例えば、マイクロLED30上に金属膜を形成し、レジストを配置した後、上記金属膜を所望の形状にエッチングし、その後、上記レジストを剥離する方法等が挙げられる。
【0040】
第一のコンタクト電極40を形成した後、図4に示したように、マイクロLED30の周囲に遮光部材50を配置する。遮光部材50の形成方法としては、例えば、遮光部材50用の感光性樹脂組成物を塗工し、露光及び現像する方法(フォトリソグラフィー)等が挙げられる。
【0041】
図11は、マイクロLEDチップを作製する工程において、感光性樹脂組成物を塗工する工程を示す断面模式図である。図11に示したように、第一のコンタクト電極40上に感光性樹脂組成物を塗工する。上記感光性樹脂組成物は、第一のコンタクト電極40、マイクロLED30、波長変換層20、基板1の上面及び第一のコンタクト電極40、マイクロLED30及び波長変換層20の側面を覆うように塗工されてもよい。
【0042】
上記感光性樹脂組成物としては、例えば、感光性樹脂に、カーボンブラック等の黒色の着色材を添加したものが挙げられる。感光性樹脂組成物の塗工方法としては、スリットコーター、スピンコーター等を用いて公知の方法で塗工することができる。上記感光性樹脂組成物を塗工した後、乾燥等を行ってもよい。
【0043】
上記感光性樹脂は、ポジ型の感光性樹脂であってもよいし、ネガ型の感光性樹脂であってもよく、公知のものを用いることができる。上記ポジ型の感光性樹脂は、紫外線等により露光された箇所が現像液に対して溶化し、現像によって除去されるような樹脂材料をいう。上記ネガ型の感光性樹脂は、紫外線等により露光された箇所が現像液に対して不溶化し、パターンとして残るような樹脂材料をいう。波長変換層とマイクロLEDの紫外線照射による劣化を抑制できる観点からは、表示部に紫外線が当たらないネガ型の感光性樹脂を用いることが好ましい。
【0044】
遮光部材50は、傾斜面を有する凸部を有する。上記凸部の傾斜面は、後述するアレイ基板の水平方向に対して角度を成していればよい。遮光部材50の凸部の形状は特に限定されないが、例えば、図4に示したように、マイクロLEDチップの外縁から内側(遮光部材50とマイクロLEDの境界)に向かって、遮光部材50の厚さが薄くなる形状であってもよい。また、遮光部材50は、平面視において、マイクロLED30と重なる領域に配置されないことが好ましい。
【0045】
図12は、マイクロLEDチップを作製する工程において、感光性樹脂組成物にハーフトーンマスクを重ね、露光する工程を示す断面模式図である。マイクロLEDチップを作製する工程は、感光性樹脂組成物に、ハーフトーンマスクを重ねて露光し、上記傾斜面を有する遮光部材を作製する工程を含むことが好ましい。上記ハーフトーンマスクは、透過率が段階的に変化するマスクである。透過率が段階的に変化するマスクを用いることで、遮光部材に傾斜面を有する凸部を形成することができる。
【0046】
ポジ型の感光性樹脂を用いる場合、遮光部材を厚く形成したい領域の透過率が低く、遮光部材を薄く形成したい領域の透過率が高いハーフトーンマスクを用いることができる。ネガ型の感光性樹脂を用いる場合、図12に示したように、遮光部材を厚く形成したい領域の透過率が高く、遮光部材を薄く形成したい領域の透過率が低いハーフトーンマスクを用いることができる。
【0047】
以下に、図4図7に示したように、遮光部材50が波長変換層20を囲むように配置され、凸部の形状がマイクロLEDチップの外縁から内側に向かって、遮光部材50の厚さが薄くなる遮光部材50を形成する方法について説明する。また、以下の説明は、ポジ型の感光性樹脂を用いる場合を例示する。
【0048】
図13は、ハーフトーンマスクの第1例を示した平面模式図である。図14は、図13に示したハーフトーンマスクのX9-X10線における断面模式図である。なお、図13は、図4に示した1つのマイクロLEDチップに対応するハーフトーンマスクの平面図である。図13及び図14に示したように、ハーフトーンマスク60Aは、複数の遮光部62と、複数の遮光部62間に配置された複数のスリット63とを有する。複数の遮光部62は、幅が異なる複数の遮光部62を含むことが好ましい。複数の遮光部62は、透明基板61の表面に形成されてもよい。
【0049】
透明基板61としては、特に現例されず、例えば、ガラス、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0050】
遮光部62は、例えば、クロム、アルミニウム、銀等の遮光性の金属の蒸着膜等が挙げられる。
【0051】
上記露光は、遮光部材50に用いられる感光性樹脂に適した波長を含む光を照射すればよいが、例えば、紫外線(波長100n~400nm)を含む光を照射してもよい。
【0052】
図13及び図14では、遮光部62は、ハーフトーンマスク60Aの中央部(図5において、マイクロLED30と重なる部分)には配置されず、マイクロLEDチップの内側(遮光部材50とマイクロLEDの境界)からマイクロLEDチップの外縁に向かって、遮光部62の幅が広くなるように配置される。この場合、スリット63の幅は、ハーフトーンマスク60Aの内側から外側に向かって狭くなる。
【0053】
図15は、図13及び図14に示したハーフトーンマスクの透過率を例示した断面模式図である。
マイクロLEDチップの外縁から内側に向かって、ハーフトーンマスクの透過率を領域(i)~(v)に分けた場合を例示する。ハーフトーンマスク60Aに照射された光(照射光)をUV1、ハーフトーンマスク60Aを透過した光(透過光)をUV2とすると、照射光100%に対して、スリットを有さず遮光部62のみが配置された領域(i)の透過光UV2の透過率は0%であり、遮光部62が配置されていない領域(v)のUV2の透過率は100%である。領域(i)から領域(v)に向かって、段階的にUV2の透過率が高くなるように、例えば、領域(ii)のUV2の透過率が30%、領域(iii)のUV2の透過率が50%、領域(iv)のUV2の透過率が70%となるように、領域毎に遮光部62の幅を調整してもよい。
【0054】
上記ハーフトーンマスクは、透過率が段階的に変化するものであればよく、図13及び図14に示したものに限定されない。図16は、ハーフトーンマスクの第2例の一部を示した断面模式図である。図17は、ハーフトーンマスクの第3例の一部を示した断面模式図である。
【0055】
図16に示したように、上記ハーフトーンマスクとして、蒸着金属の密度が異なる複数の領域を含むハーフトーンマスク60Bを用いてもよい。上記蒸着金属の密度が異なる複数の領域を形成する方法としては、例えば、領域(v)には金属蒸着膜を形成せず、領域(iv)から領域(i)に向かって、透明基板61上に金属蒸着膜を形成する時間を長くしたり、金属蒸着膜の厚さを厚くする方法等が挙げられる。
【0056】
上記蒸着金属としては、例えば、クロム、アルミニウム、銀等の遮光性の金属が挙げられる。
【0057】
図17に示したように、上記ハーフトーンマスクとして、複数の半透過性フィルムを重ねたハーフトーンマスク60Cを用いてもよい。例えば、任意の透過率のフィルムを準備し、領域(v)には半透過性フィルムを配置せず、領域(iv)から領域(i)に向かって、半透過性フィルムを重ねる枚数を増やす方法等が挙げられる。上記半透過性フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のフィルムにアクリル樹脂等でできたプラスチックビーズを散布したフィルムや、ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素化合物分子を吸着配向させた偏光フィルム等が挙げられる。なお、上記半透過性フィルムとして偏光フィルムを用いる場合は、複数の変更フィルムを積層する必要はなく、偏光フィルム同士の偏光角度を調整することで透過率を変化させることができる。
【0058】
図15図17では、透過光の透過率が0%、30%、50%、70%、100%に区切って変化する場合を例示したが、透過率が変化する領域を更に細かく区切ってもよいし、透過率がなだらかに変化するように、遮光部材の幅、蒸着金属の密度又は厚さ、半透過性フィルムを積層する幅や枚数等を調整してもよい。
【0059】
ネガ型の感光性樹脂を用いて、図4に示したような凸部を形成する場合、遮光部材50を配置しない領域(v)の透過光UV2の透過率を0%、遮光部材50を最も厚くしたい領域(i)の透過光UV2の透過率を100%とする。領域(v)から領域(i)に向かって、段階的にUV2の透過率が高くなるように、遮光部材の幅、蒸着金属の密度又は厚さ、半透過性フィルムを積層する幅や枚数等を調整してもよい。
【0060】
図12に示した露光を行った後、現像により露光された部分が除去され、傾斜面を有する凸部を有する遮光部材50が形成される。図18は、遮光部材が形成されたマイクロLEDチップの断面模式図である。上記現像方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。感光性樹脂が除去されたマイクロLEDチップ10は、第一のコンタクト電極40が露出している。
【0061】
上記傾斜面を有する凸部は、図4に示したものに限定されず、露光に用いるハーフトーンマスクの透過率を調整することで、任意の形状に形成することができる。図19は、マイクロLEDチップの第3例を示した断面模式図である。図20は、マイクロLEDチップの第4例を示した断面模式図である。上記遮光部材50の傾斜面を有する凸部の形状は、例えば、図19に示したように、遮光部材50とマイクロLEDの境界から、マイクロLEDチップの外縁に向かって、遮光部材50の厚さが薄くなる形状であってもよい。また、上記傾斜面を有する凸部は、図20に示したように、マイクロLEDチップの外縁、及び、遮光部材50とマイクロLEDの境界の両方向から、遮光部材50の幅方向の中心に向かって、遮光部材50の厚さが薄くなるようにV字状の切れ込みが形成されてもよい。図示していないが、上記傾斜面を有する凸部は、図20とは逆に、マイクロLEDチップの外縁、及び、遮光部材50とマイクロLEDの境界の両方向から、遮光部材50の幅方向の中心に向かって、遮光部材50の厚さが厚くなるように形成されてもよい。
【0062】
なお、図6及び図7に示した、マイクロLED30と波長変換層20と第一のコンタクト電極40とをこの順で有する第2例のマイクロLEDチップを作製する場合は、例えば、サファイア基板等の基板上にマイクロLED30を形成した後、波長変換層20を形成する。波長変換層20にコンタクトホールCHを形成し、上記コンタクトホールCHを介して、マイクロLED30の配線等と、波長変換層20上に配置した第一のコンタクト電極40とを電気的に接続してもよい。その後、平面視において、マイクロLEDの周囲に遮光部材を形成してもよい。
【0063】
(アレイ基板を作製する工程)
図21は、アレイ基板の第1例を示した断面模式図である。なお、図21は、1つのマイクロLEDチップに対応する1画素分のアレイ基板の断面模式図である。アレイ基板100は、スイッチング素子(図示せず)と、上記スイッチング素子と電気的に接続された第二のコンタクト電極110と、第二のコンタクト電極110の一部が露出するように第二のコンタクト電極110上に形成された絶縁膜120とを有する。
【0064】
図21に示した第1例のアレイ基板100は、図4に示した第1例のマイクロLEDチップが実装されるアレイ基板である。図21に示した第1例のアレイ基板100では、絶縁膜120は、第1例のマイクロLEDチップ10の遮光部材50が有する凸部と対応する凹部を有する。図21中、絶縁膜120の凹部を点線で囲んだ。なお、2つの第二のコンタクト電極110間の絶縁膜120の形状は特に限定されない。
【0065】
アレイ基板を作製する工程の一例を説明すると、まず、支持基板上に複数の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等のスイッチング素子、上記スイッチング素子に接続される各種配線等を有する回路基板101を準備する。
【0066】
ここで、マイクロLEDパネルの駆動方式は、パッシブマトリクス方式でも、アクティブマトリクス方式でもよいが、以下ではアクティブマトリクス方式について説明する。アクティブマトリクス方式の場合、回路基板101は、例えば、複数のゲート配線と、上記複数のゲート配線と交差するソース配線を有し、それぞれの交差部に対応して画素回路が配置され、1つの画素回路が1つの画素を構成してもよい。後述するマイクロLEDチップを配置する工程において、1つの画素回路に1つのマイクロLED30が配置されてもよい。なお、上記額縁領域には、ゲート配線を走査駆動するゲートドライバと、輝度情報に応じた映像信号をソース配線に供給するソースドライバ等が配置されてもよい。
【0067】
図22は、回路基板に含まれる画素回路の構成の一例を示す回路図である。なお、画素回路の構成は図22に示した構成に限定されるものではない。回路基板101の画素回路は、例えば、スイッチング用トランジスタ1005、駆動トランジスタ1006及び保持容量1007を含んでもよい。図22に点線で囲んだマイクロLED30は、図1のマイクロLED30に対応し、後述するマイクロLEDチップを配置する工程で実装される。説明のため、画素回路にマイクロLED30も図示しているが、アレイ基板を作製する工程では、マイクロLED30を除いた部分が作製される。
【0068】
図22に示したように、例えば、スイッチング用トランジスタ1005のゲート電極1005G、ソース電極1005S及びドレイン電極1005Dは、それぞれゲート配線1001、ソース配線1002及び駆動トランジスタ1006のゲート電極1006Gに接続されてもよい。駆動トランジスタ1006のゲート電極1006G及びソース電極1006Sは、それぞれスイッチング用トランジスタ1005のドレイン電極1005D及びアノード電源線1003に接続されてもよい。駆動トランジスタ1006のゲート電極1006Gとドレイン電極1006Dとの間には保持容量1007が接続されてもよい。すなわち、保持容量1007は、スイッチング用トランジスタ1005のドレイン電極1005Dに接続されてもよい。
【0069】
図23は、アレイ基板を作製する工程において、第二のコンタクト電極を形成する工程を示す断面模式図である。図23に示したように、回路基板101上に第二のコンタクト電極110を形成する。第二のコンタクト電極110は、1つのマイクロLEDチップ10が配置される1つの画素に対して、複数の第二のコンタクト電極が配置されてもよい。例えば、第二のコンタクト電極110は、図22に示した駆動トランジスタ1006のドレイン電極1006Dと電気的に接続された第二のコンタクト電極110a、及び、カソード電源線1004と電気的に接続された第二のコンタクト電極110bを含んでもよい。
【0070】
第二のコンタクト電極110に用いられる材料としては、アルミニウム、チタン、モリブデン、タンタル、タングステン等の金属が挙げられる。
【0071】
第二のコンタクト電極110の形成方法は特に限定されないが、例えば、回路基板101上に金属膜を形成し、レジストを配置した後、上記金属膜を所望の形状にエッチングし、その後、上記レジストを剥離する方法等が挙げられる。
【0072】
図24は、アレイ基板を作製する工程において、第二のコンタクト電極上に絶縁膜を形成する工程を示す断面模式図である。まず、図24に示したように、第二のコンタクト電極110上に、第二のコンタクト電極と回路基板101の上面、及び、第二のコンタクト電極の側面を覆うように絶縁膜120を形成してもよい。
【0073】
絶縁膜120に用いられる材料としては、SiO、SiN、SiON、SiCO等が挙げられる。絶縁膜120の形成方法としては、CVD法(化学蒸着:Chemical Vapor Deposition)法、PVD(物理蒸着:Physical Vapor Deposition)法等が挙げられる。絶縁膜120を形成する他の方法としては、感光性樹脂を用いてUV照射により形成する方法を用いてもよい。
【0074】
図25は、アレイ基板を作製する工程において、絶縁膜上にレジストを塗布する工程を示す断面模式図である。図25に示したように、絶縁膜120上にレジスト130を形成する。レジスト130は特に限定されず、マイクロLEDパネルの分野において公知のものを用いることができる。レジスト130は、ポジ型でもネガ型でもよいが、以下では、例えば、ポジ型のレジストを用いる場合を例示する。レジスト130を形成する方法としては、スリットコーター又はスピンコーター等で塗布する方法が挙げられる。
【0075】
図26は、アレイ基板を作製する工程において、レジストを露光する工程を示す断面模式図である。図26に示したように、ハーフトーンマスクを介してレジスト130に光照射(露光)してもよい。この際、実装後にマイクロLEDチップの遮光部材の凸部と対向する絶縁膜120上のレジスト130の露光には、透過率が調整されたハーフトーンマスクを用いることが好ましい。第二のコンタクト電極110周辺の絶縁膜120は、第二のコンタクト電極110が露出する限り、特に形状は限定されないため、ハーフトーンマスクを用いなくてもよい。
【0076】
図27は、アレイ基板を作製する工程において、露光後のレジストを現像する工程を示す断面模式図である。図27に示したように、現像により露光された部分のレジスト130を除去して、レジスト130をパターニングする。上記現像方法としては、公知の現像方法を用いることができる。
【0077】
図28は、アレイ基板を作製する工程において、絶縁膜120をエッチングする工程を示す断面模式図である。図28に示したように、第二のコンタクト電極110が露出するように、第二のコンタクト電極110上の絶縁膜120を除去する。また、マイクロLEDチップの遮光部材の凸部と対向する位置の絶縁膜120を除去する。上記絶縁膜120を除去する方法としては、公知のエッチング法を用いることができる。
【0078】
図29は、アレイ基板を作製する工程において、レジストを剥離したアレイ基板の断面模式図である。図29では、2つのマイクロLEDチップに対応する2画素分のアレイ基板を示した。残ったレジスト130を剥離することで、図29に示したように所望の形状にパターニングされた絶縁膜120が得られる。
【0079】
絶縁膜120は、第二のコンタクト電極110の一部が露出するように第二のコンタクト電極110上に形成されている。また、絶縁膜120には、傾斜面を有する凹部が形成されている。図29中、絶縁膜120の凹部を点線で囲んだ。絶縁膜120は、アレイ基板に実装されるマイクロLEDチップの遮光部材50が有する凸部と対応する凹部を有する。絶縁膜120の傾斜面を有する凹部は、遮光部材50が有する凸部と対をなす形状をしており、遮光部材50の凸部と絶縁膜120の凹部とが対向するように配置したときに、それぞれの傾斜面が対向し、平行となることが好ましい。
【0080】
上記絶縁膜120の凹部の形状は、露光に用いるハーフトーンマスクの透過率を調整することで、任意の形状に形成することができる。図30は、アレイ基板の第2例を示した断面模式図である。図31は、アレイ基板の第3例を示した断面模式図である。図30及び図31中、絶縁膜120の凹部を点線で囲んだ。図30は、図19に示した第3例のマイクロLEDチップが実装されるアレイ基板である。図31は、図20に示した第4例のマイクロLEDチップが実装されるアレイ基板である。図30及び図31は、1つのマイクロLEDチップに対応する1画素分のアレイ基板の断面模式図である。
【0081】
(アレイ基板上に上記マイクロLEDチップを配置する工程)
図32は、マイクロLEDチップ実装工程において、マイクロLEDチップを粘着層へ転写する工程を示す断面模式図である。アレイ基板上に上記マイクロLEDチップを配置する工程(以下、マイクロLEDチップ実装工程ともいう)では、まず、図32に示したように、マイクロLEDチップを作製する工程で作製した複数のマイクロLEDチップ10を、ガラス等の基板201上に形成された粘着層202へ転写してもよい。マイクロLEDチップ10は、第一のコンタクト電極40側が粘着層202と対向するように転写される。
【0082】
図33は、マイクロLEDチップ実装工程において、基板を剥離する工程を示す断面模式図である。図34は、マイクロLEDチップ実装工程において、マイクロLEDチップをピックアップする工程を示す断面模式図である。図33に示したように、マイクロLEDチップを作製する工程で用いた基板1を、マイクロLEDチップから剥離する。上記方法としては、例えば、レーザーリフトオフ等が挙げられる。その後、図34に示したように、転写ヘッドにより、マイクロLEDチップを粘着層からピックアップする。上記ピックアップ方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0083】
図35は、マイクロLEDチップ実装工程において、マイクロLEDチップをアレイ基板に配置する工程を示す断面模式図である。1つのマイクロLEDチップ10は、アレイ基板100に形成された1つの画素回路(1画素)に配置されてもよい。マイクロLEDチップ実装工程では、図35に示したように、遮光部材50の凸部と、絶縁膜120の凹部とが対向するように配置される。
【0084】
上述のように、マイクロLEDチップ10の遮光部材50には傾斜面を有する凸部が形成され、アレイ基板100の絶縁膜120には傾斜面を有する凹部が形成されている。遮光部材50の凸部の傾斜面と、絶縁膜120の凹部の傾斜面とが対向するように配置されることが好ましく、遮光部材50の凸部の傾斜面と絶縁膜120の凹部の傾斜面とが平行となることがより好ましい。遮光部材50の厚さ、絶縁膜120の厚さは、傾斜面を形成できればよく、特に限定されない。
【0085】
図36は、マイクロLEDチップをアレイ基板に配置する際に、位置がずれた場合を示す断面模式図である。図37は、図36に示したずれが修正された状態を示す断面模式図である。マイクロLEDチップ10は微細であり、実装されるマイクロLEDチップ10の数も膨大であることから、マイクロLEDチップをピックアップし、アレイ基板に配置する際に、マイクロLEDチップ10の位置がずれることがある。図36に示したように、マイクロLEDチップ10の位置がずれた場合でも、遮光部材50の凸部と、絶縁膜120の凹部とが対向するように配置されることで、遮光部材50の凸部の傾斜面が絶縁膜120の凹部の傾斜面に接触し、絶縁膜120の凹部の傾斜面に沿ってマイクロLEDチップ10が滑り、図37に示したように、マイクロLEDチップ10の配置位置が適切な場所に修正される。そのため、後の第一のコンタクト電極と第二のコンタクト電極とを電気的に接続する工程において、マイクロLEDチップの配置ずれを低減させ、マイクロLEDチップの接合不良個所を減らすことができる。
【0086】
本実施形態に係るマイクロLEDパネルの製造方法では、混色を防止する遮光部材50に凸部を形成し、マイクロLEDチップを実装する際の位置ずれ防止機能をもたせることで、位置ずれ防止用に他の部材を配置する必要がなく、従来の製造プロセスと同等の製造リードタイムで、歩留まり及び表示品位の改善をすることができる。
【0087】
図38は、マイクロLEDチップ実装工程において、マイクロLEDチップの第一のコンタクト電極とアレイ基板の第二のコンタクト電極とを電気的に接続する工程を示す断面模式図である。マイクロLEDチップ実装工程は、マイクロLEDチップ10の第一のコンタクト電極40とアレイ基板100の第二のコンタクト電極110とを電気的に接続する工程を含む。例えば、上述の図22に示したように、第二のコンタクト電極110aは、マイクロLED30のアノードと電気的に接続され、第二のコンタクト電極110bは、マイクロLED30のカソードと電気的に接続されてもよい。
【0088】
図38に示したように、第一のコンタクト電極40と第二のコンタクト電極110とは、接合材204により電気的に接続されることが好ましい。接合材204としては、金属接合材が挙げられ、例えば、はんだ、銀等の金属ペースト等が挙げられる。接合材204の厚さは、第一のコンタクト電極40と第二のコンタクト電極110とを電気的に接続できれば特に限定されない。
【0089】
マイクロLEDチップ10の第一のコンタクト電極40とアレイ基板100の第二のコンタクト電極110とを電気的に接続することで、マイクロLEDパネルの画素回路(図22参照)が完成し、所望の画像表示を行うことができる。実施形態に係るマイクロLEDパネルの駆動方を図22を用いて説明すると、ソース配線1002には、マイクロLED30の発光強度を決める階調信号が供給される。ゲート配線1001には、階調信号を書き込むスイッチング用トランジスタ1005のON/OFFを制御するためのゲート信号が供給される。スイッチング用トランジスタ1005がON状態になると、階調信号が保持容量1007に蓄積される。その後、駆動トランジスタ1006がON状態になると、階調信号に応じた駆動電流が駆動トランジスタ1006を流れる。駆動トランジスタ1006から出力された駆動電流がマイクロLED30に入力されると、マイクロLED30が階調信号に応じた発光強度で発光する。
【符号の説明】
【0090】
1:基板
10:LEDチップ
10R:赤色のマイクロLEDチップ
10G:緑色のマイクロLEDチップ
10B:青色のマイクロLEDチップ
20:波長変換層
20R:赤色の波長変換層
20G:緑色の波長変換層
20B:青色の波長変換層
30:マイクロLED
40:第一のコンタクト電極
50、52:遮光部材
51:感光性樹脂組成物
60A、60B、60C:ハーフトーンマスク
61:透明基板
62:遮光部
63:スリット
64a、64b、64c、64d:蒸着金属
65a、65b、65c、65d:半透過性のフィルム
100:アレイ基板
101:回路基板
110:第二のコンタクト電極
120:絶縁膜
130:レジスト
140:マスク
201:基板
202:粘着層
203:ヘッド
204:接合材
1000:マイクロLEDパネル
1001:ゲート配線
1002:ソース配線
1003:アノード電源線
1004:カソード電源線
1005:スイッチング用トランジスタ
1005D、1006D:ドレイン電極
1005G、1006G:ゲート電極
1005S、1006S:ソース電極
1006:駆動トランジスタ
1007:保持容量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38