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特開2024-147972レーダ目標検出装置及びレーダ目標検出プログラム
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  • 特開-レーダ目標検出装置及びレーダ目標検出プログラム 図1
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  • 特開-レーダ目標検出装置及びレーダ目標検出プログラム 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147972
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】レーダ目標検出装置及びレーダ目標検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/524 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
G01S13/524
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060773
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】溝口 陸
(72)【発明者】
【氏名】板倉 晃
(72)【発明者】
【氏名】平木 直哉
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC13
5J070AE02
5J070AE04
5J070AH12
5J070AK17
5J070AK19
5J070BA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は、船舶又は航空機等の目標を検出するレーダ技術において、ドップラスペクトルについての速度分散値が、0となることがある原因を追究したうえで、船舶又は航空機等の目標を高精度に検出することを目的とする。
【解決手段】本開示は、レーダ受信信号について、ドップラスペクトルを算出するドップラ算出部21と、ドップラスペクトルから、固定物によるスペクトルを除去する固定物除去部22と、ドップラスペクトルから、強度閾値以下のスペクトルを除去する低強度除去部23と、固定物によるスペクトル及び強度閾値以下のスペクトルが除去されたドップラスペクトルについて、速度分散値を算出する速度分散値算出部24と、速度分散値が0であるときに、レーダ受信信号がクラッタによるものであると判定し、クラッタを除去したうえで目標を検出する目標検出部25と、を備えるレーダ目標検出装置2である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ受信信号について、ドップラスペクトルを算出するドップラ算出部と、
前記ドップラスペクトルから、固定物によるスペクトルを除去する固定物除去部と、
前記ドップラスペクトルから、強度閾値以下のスペクトルを除去する低強度除去部と、
前記固定物によるスペクトル及び前記強度閾値以下のスペクトルが除去された前記ドップラスペクトルについて、速度分散値を算出する速度分散値算出部と、
前記速度分散値が0であるときに、前記レーダ受信信号がクラッタによるものであると判定し、クラッタを除去したうえで目標を検出する目標検出部と、
を備えることを特徴とするレーダ目標検出装置。
【請求項2】
前記目標検出部は、前記固定物によるスペクトル及び前記強度閾値以下のスペクトルが除去された前記ドップラスペクトルについて、一つのドップラバンクのみの強度が0でなく、その他のドップラバンクの強度が0であるときに、前記レーダ受信信号がクラッタによるものであると判定し、クラッタを除去したうえで目標を検出する
ことを特徴とする、請求項1に記載のレーダ目標検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーダ目標検出装置が備える各処理部が行なう各処理ステップを、コンピュータに実行させるためのレーダ目標検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クラッタを除去したうえで目標を検出するレーダ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鳥の群れ等の非目標を除去したうえで、船舶又は航空機等の目標を検出するレーダ技術が、特許文献1等に開示されている。特許文献1では、レーダ受信信号について、ドップラスペクトルを算出し、ドップラスペクトルについて、速度分散値を算出し、速度分散値の大きさ、空間分布及び時間変化に基づいて、レーダ受信信号が鳥の群れ等の非目標及び船舶又は航空機等の目標のうちのいずれによるものであるかを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-173574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、ドップラスペクトルについての速度分散値が、0となることがあることを発見した。特許文献1では、レーダ受信信号について、窓関数を乗算したうえで、ドップラスペクトルを算出するため、ドップラスペクトルについてのスペクトル幅が、さらに広がりやすい。上述の発見は、特許文献1と比べて、一見したところ矛盾している。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、船舶又は航空機等の目標を検出するレーダ技術において、ドップラスペクトルについての速度分散値が、0となることがある原因を追究したうえで、船舶又は航空機等の目標を高精度に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、シークラッタ又はレインクラッタ等のクラッタが、低速度かつ低強度の物標として検出される場合に、ドップラスペクトルについての速度分散値が、0となることがあることを発見した。この場合では、ドップラスペクトルから、固定物によるスペクトル及び強度閾値以下のスペクトルを除去するため、一つのドップラバンクのみの強度が0となっておらず、その他のドップラバンクの強度が0となっている。上述の発見から、ドップラスペクトルについての速度分散値が0であるときに、レーダ受信信号がシークラッタ又はレインクラッタ等のクラッタによるものであると判定することができる。
【0007】
具体的には、本開示は、レーダ受信信号について、ドップラスペクトルを算出するドップラ算出部と、前記ドップラスペクトルから、固定物によるスペクトルを除去する固定物除去部と、前記ドップラスペクトルから、強度閾値以下のスペクトルを除去する低強度除去部と、前記固定物によるスペクトル及び前記強度閾値以下のスペクトルが除去された前記ドップラスペクトルについて、速度分散値を算出する速度分散値算出部と、前記速度分散値が0であるときに、前記レーダ受信信号がクラッタによるものであると判定し、クラッタを除去したうえで目標を検出する目標検出部と、を備えることを特徴とするレーダ目標検出装置である。
【0008】
この構成によれば、ドップラスペクトルについての速度分散値が、0となることがある原因として、シークラッタ又はレインクラッタ等のクラッタが、低速度かつ低強度の物標として検出されることを追究した。そして、レーダ受信信号がシークラッタ又はレインクラッタ等のクラッタ及び船舶又は航空機等の目標のうちのいずれによるものであるかを判定することができ、船舶又は航空機等の目標を高精度に検出することができる。
【0009】
また、本開示は、前記目標検出部は、前記固定物によるスペクトル及び前記強度閾値以下のスペクトルが除去された前記ドップラスペクトルについて、一つのドップラバンクのみの強度が0でなく、その他のドップラバンクの強度が0であるときに、前記レーダ受信信号がクラッタによるものであると判定し、クラッタを除去したうえで目標を検出することを特徴とするレーダ目標検出装置である。
【0010】
この構成によれば、ドップラスペクトルについての速度分散値が、0となることがある原因として、一つのドップラバンクのみの強度が0でなく、その他のドップラバンクの強度が0であることを追究した。そして、レーダ受信信号がシークラッタ又はレインクラッタ等のクラッタ及び船舶又は航空機等の目標のうちのいずれによるものであるかを判定することができ、船舶又は航空機等の目標を高精度に検出することができる。
【0011】
また、本開示は、以上に記載のレーダ目標検出装置が備える各処理部が行なう各処理ステップを、コンピュータに実行させるためのレーダ目標検出プログラムである。
【0012】
この構成によれば、以上に記載の効果を有するプログラムを提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
このように、本開示は、船舶又は航空機等の目標を検出するレーダ技術において、ドップラスペクトルについての速度分散値が、0となることがある原因を追究したうえで、船舶又は航空機等の目標を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示のレーダ目標検出システムの構成を示す図である。
図2】本開示のレーダ目標検出処理の手順を示す図である。
図3】本開示のクラッタ除去処理の具体例を示す図である。
図4】本開示の目標検出処理の具体例を示す図である。
図5】本開示のレーダ目標検出処理の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0016】
本開示のレーダ目標検出システムの構成を図1に示す。レーダ目標検出システムRは、レーダ送受信装置1、レーダ目標検出装置2及びレーダ表示装置3を備える。レーダ送受信装置1は、レーダ照射信号を送信し、レーダ反射信号を受信する。レーダ目標検出装置2は、シークラッタ又はレインクラッタ等のクラッタを除去したうえで、船舶又は航空機等の目標を検出する。レーダ表示装置3は、船舶又は航空機等の目標を表示する。
【0017】
レーダ目標検出装置2は、ドップラ算出部21、固定物除去部22、低強度除去部23、速度分散値算出部24及び目標検出部25を備える。レーダ目標検出装置2は、図2に示すレーダ目標検出プログラムをコンピュータにインストールし実現することができる。
【0018】
本開示のレーダ目標検出処理の手順を図2に示す。レーダ目標検出装置2は、各距離及び各方位角での各レーダ受信信号について、ステップS1~S8の処理を実行する。
【0019】
ドップラ算出部21は、各距離及び各方位角での各レーダ受信信号について、窓関数を乗算したうえで、ドップラスペクトルを算出する(ステップS1)。
【0020】
固定物除去部22は、MTI(Moving Target Indicator)技術を利用して、ドップラスペクトルから、固定物によるスペクトルを除去する(ステップS2)。ここで、固定物除去部22は、レーダ送受信装置1の進行速度・方位角及びアンテナ方位角に基づいて、レーダ送受信装置1に対する固定物の相対速度を算出する。
【0021】
低強度除去部23は、CFAR(Constant False Alarm Rate)技術を利用して、ドップラスペクトルから、強度閾値以下のスペクトルを除去する(ステップS3)。ここで、図2では、固定物除去部22がステップS2を実行した後に、低強度除去部23がステップS3を実行しているが、変形例として、低強度除去部23がステップS3を実行した後に、固定物除去部22がステップS2を実行してもよい。
【0022】
速度分散値算出部24は、固定物によるスペクトル及び強度閾値以下のスペクトルが除去されたドップラスペクトルについて、速度Vを算出する(ステップS4及び数式1)。ここで、v(n)は、ドップラバンクnの速度であり、R(n)は、ドップラバンクnの強度であり、Nは、ドップラバンクの全個数(FFTポイントの全個数)である。
【数1】
【0023】
速度分散値算出部24は、固定物によるスペクトル及び強度閾値以下のスペクトルが除去されたドップラスペクトルについて、速度分散値Wを算出する(ステップS5及び数式2)。ここで、Vは、ステップS4及び数式1で算出された速度である。
【数2】
【0024】
目標検出部25は、速度分散値Wが0であるときに(ステップS6においてYES)、レーダ受信信号がシークラッタ又はレインクラッタ等のクラッタによるものであると判定し、シークラッタ又はレインクラッタ等のクラッタを除去する(ステップS7)。
【0025】
本開示のクラッタ除去処理の具体例を図3に示す。シークラッタ又はレインクラッタ等のクラッタは、低速度かつ低強度の物標である。よって、固定物によるスペクトルが除去されたドップラスペクトルについて、スペクトル全体のうちの大部分が除去されている。そして、固定物によるスペクトル及び強度閾値以下のスペクトルが除去されたドップラスペクトルについて、残るスペクトルのうちの大部分が除去されている。
【0026】
よって、固定物によるスペクトル及び強度閾値以下のスペクトルが除去されたドップラスペクトルについて、一つのドップラバンクnのみの強度R(n)が0でなく(v(n)-V=0、R(n)≠0)、その他のドップラバンクnの強度R(n)が0であり(v(n)-V≠0、R(n)=0)、速度分散値Wが0である(数式1、2を参照)。
【0027】
目標検出部25は、速度分散値Wが0でないときに(ステップS6においてNO)、レーダ受信信号がシークラッタ又はレインクラッタ等のクラッタではなく船舶又は航空機等の目標によるものであると判定し、船舶又は航空機等の目標を検出する(ステップS8)。
【0028】
本開示の目標検出処理の具体例を図4に示す。船舶又は航空機等の目標は、高強度の物標であり、高強度で広がるドップラスペクトルを示す。よって、固定物によるスペクトルが除去されたドップラスペクトルについて、スペクトル全体のうちの一部分のみが除去されている。そして、固定物によるスペクトル及び強度閾値以下のスペクトルが除去されたドップラスペクトルについて、残るスペクトルのうちの大部分が維持されている。
【0029】
よって、固定物によるスペクトル及び強度閾値以下のスペクトルが除去されたドップラスペクトルについて、二つ以上のドップラバンクnの強度R(n)が0でなく(v(n)-V≠0、R(n)≠0)、その他のドップラバンクnの強度R(n)が0であり(v(n)-V≠0、R(n)=0)、速度分散値Wが0でない(数式1、2を参照)。
【0030】
つまり、ドップラスペクトルについての速度分散値Wが、0となることがある原因として、以下の原因を追究した:(1)シークラッタ又はレインクラッタ等のクラッタが、低速度かつ低強度の物標として検出されること、(2)一つのドップラバンクnのみの強度R(n)が0でなく、その他のドップラバンクnの強度R(n)が0であること。ここで、全てのドップラバンクnの強度R(n)が0であるときも、ドップラスペクトルについての速度分散値Wが0となるものの、クラッタ除去対象又は目標検出対象から除外される。
【0031】
そして、レーダ受信信号がシークラッタ又はレインクラッタ等のクラッタ及び船舶又は航空機等の目標のうちのいずれによるものであるかを判定することができ、船舶又は航空機等の目標を高精度に検出することができる。ここで、シークラッタは、一般的には低速度かつ低強度の物標である。しかし、レインクラッタは、少雨等の場合には低速度かつ低強度の物標であるが、豪雨等の場合には高速度かつ高強度の物標である可能性がある。そして、シークラッタ又はレインクラッタ等を除去するのみならず、低速度かつ小型の目標を除去する可能性があるが、大型の目標のみを検出するならば本開示を適用可能である。
【0032】
本開示のレーダ目標検出処理の結果を図5に示す。図5の左欄では、本開示の低強度除去処理前(ステップS2)において、固定物によるスペクトルが除去されたドップラスペクトルについて、高強度のシークラッタ(ドップラバンク番号30=速度0の近傍かつ距離500~1000mの範囲)を含めて残存している。図5の中欄では、本開示の低強度除去処理後(ステップS3)において、固定物によるスペクトル及び強度閾値以下のスペクトルが除去されたドップラスペクトルについて、高強度のシークラッタのみが残存している。図5の右欄では、本開示の速度分散値0除去処理後(ステップS7)において、固定物によるスペクトル、強度閾値以下のスペクトル及び速度分散値0のスペクトルが除去されたドップラスペクトルについて、高強度のシークラッタが除去されている。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本開示のレーダ目標検出装置及びレーダ目標検出プログラムは、ドローン等に搭載されたレーダ送受信装置を利用して、シークラッタ又はレインクラッタ等のクラッタを確実に除去したうえで、船舶又は航空機等の目標を高精度に検出することができる。
【符号の説明】
【0034】
R:レーダ目標検出システム
1:レーダ送受信装置
2:レーダ目標検出装置
3:レーダ表示装置
21:ドップラ算出部
22:固定物除去部
23:低強度除去部
24:速度分散値算出部
25:目標検出部
図1
図2
図3
図4
図5