(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014798
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】蓄圧式吐出製品、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 83/14 20060101AFI20240125BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240125BHJP
C12G 3/00 20190101ALI20240125BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20240125BHJP
B65D 83/62 20060101ALI20240125BHJP
B65D 83/68 20060101ALI20240125BHJP
B65D 81/32 20060101ALI20240125BHJP
B65D 83/42 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B65D83/14 100
A23L5/00 G
C12G3/00
A23L9/20
B65D83/62
B65D83/68 100
B65D81/32 R
B65D81/32 V
B65D83/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117284
(22)【出願日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2022117294
(32)【優先日】2022-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000230630
【氏名又は名称】株式会社ルミカ
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】多田 晃
(72)【発明者】
【氏名】福島 博
【テーマコード(参考)】
3E013
3E014
4B025
4B035
【Fターム(参考)】
3E013AB01
3E013AB02
3E013AC01
3E013AD14
3E013AE03
3E013AE12
3E013AF04
3E013AF08
3E013AF34
3E014PA01
3E014PB03
3E014PB04
3E014PC02
3E014PC07
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3E014PF10
4B025LB21
4B025LG18
4B035LC16
4B035LE03
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4B035LG01
4B035LG32
4B035LG49
4B035LK04
4B035LP55
4B035LT16
(57)【要約】
【課題】手軽に泡状の食品を得ることができる新たな蓄圧式吐出製品等を提供する。
【解決手段】第一の流動性食品と、亜酸化窒素および/または二酸化炭素である発泡性成分とが収容された第一の内袋21と、第一の内袋21が収容された缶31と、缶31内の第一の内袋21の周囲に収容された加圧気体と、第一の内袋31に収容されているものを吐出するための吐出部5と、を有する泡状食品の蓄圧式吐出製品101。第一の流動性食品は、はちみつや、果汁、フルーツソース、ドレッシング、生乳、豆乳、オイル、醤油、ソース、酢、飲料などを用いたものを用いることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の流動性食品と、亜酸化窒素および/または二酸化炭素である発泡性成分とを含む混合物が収容された第一の内袋と、
前記第一の内袋が収容された缶と、
前記缶内の前記第一の内袋の周囲に収容された加圧気体と、
前記第一の内袋に収容されているものを吐出するための吐出部と、を有する泡状食品の蓄圧式吐出製品。
【請求項2】
前記缶の内部に、前記第一の内袋と独立し、第二の流動性食品が収容された第二の内袋を有し、
前記吐出部が、前記第一の内袋に収容されているものと、前記第二の内袋に収容されているものとを吐出するものである請求項1に記載の蓄圧式吐出製品。
【請求項3】
前記第一の内袋内における、前記発泡性成分の混合量が、気温25℃圧力0.1MPaにおける前記亜酸化窒素および/または前記二酸化炭素の前記第一の流動性食品に対する飽和溶解量の8倍以下である請求項1に記載の蓄圧式吐出製品。
【請求項4】
前記第一の内袋内における、前記発泡性成分の混合量が、気温25℃圧力0.1MPaにおける前記亜酸化窒素および/または前記二酸化炭素の前記第一の流動性食品に対する飽和溶解量の2~5倍である請求項3に記載の蓄圧式吐出製品。
【請求項5】
前記第一の流動性食品が、酒類を含有する請求項1に記載の蓄圧式吐出製品。
【請求項6】
第一の流動性食品が収容された第一の内袋と、前記第一の内袋が収容された缶と、を有する泡状食品の蓄圧式吐出製品の製造方法であり、
前記缶内の前記第一の内袋の周囲に加圧気体を収容する工程と、
前記第一の内袋に、第一の流動性食品を収容する工程と、
前記第一の内袋に前記第一の流動性食品を収容した後に、亜酸化窒素および/または二酸化炭素の発泡性成分を収容する工程と、を有する製造方法。
【請求項7】
前記発泡性成分を収容する工程が、前記発泡性成分を収容する量をシリンダで送出して、前記第一の内袋に収容するものである請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記発泡性成分を収容した後に、缶を振蕩させる工程を有する請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡状食品を供給する蓄圧式吐出製品に関する。また、本発明は、泡状食品を供給する蓄圧式吐出製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品は、嗜好性の観点から、様々な形態や、味のものが求められる場合も多い。食品の形態の一つとして、クリームやホイップなどとも呼ばれるような、泡状のものも用いられている。泡状の食品は、その泡を形成するための気体が抜けやすい場合も多く、一般的には、泡立て器などで使用時に泡立てて用いることが多い。この泡立ての作業は手間がかかり、調味料などの場合は少量でよいことも多く、手軽に泡状の食品を利用できるようにすることが求められている。
【0003】
このような食品を提供するものとして、エアゾールを利用した技術が開示されている。例えば、特許文献1は、起泡性を有する粘性食品素材を噴射剤ガスとともにエアゾール容器内に加圧充填したことを特徴とするエアゾール容器入り嗜好性食品を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、発泡させた、エアゾール組成物などが知られている。しかし、これらのエアゾール組成物は、使用に伴い、噴射剤としても機能している起泡性のガスが消費されるため、その内圧が低下する。そして、缶内の残量が少なくなった終期には、液状で垂れやすくなり泡状ではない状態となることが多い。また、内圧を維持するために、噴射剤でもあるガスを多量に含む必要があり、泡の気体含有量を示すいわゆるオーバーランが高く、柔らかすぎる泡しか提供できず、このようなオーバーランに耐えるような食品しか利用できないなど、設計の自由度も低いものであった。
【0006】
かかる状況下、本発明は、手軽に泡状の食品を得ることができる新たな蓄圧式吐出製品等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0008】
<1> 第一の流動性食品と、亜酸化窒素および/または二酸化炭素である発泡性成分とを含む混合物が収容された第一の内袋と、
前記第一の内袋が収容された缶と、
前記缶内の前記第一の内袋の周囲に収容された加圧気体と、
前記第一の内袋に収容されているものを吐出するための吐出部と、を有する泡状食品の蓄圧式吐出製品。
<2> 前記缶の内部に、前記第一の内袋と独立し、第二の流動性食品が収容された第二の内袋を有し、
前記吐出部が、前記第一の内袋に収容されているものと、前記第二の内袋に収容されているものとを吐出するものである前記の蓄圧式吐出製品。
<3> 前記第一の内袋内における、前記発泡性成分の混合量が、気温25℃圧力0.1MPaにおける前記亜酸化窒素および/または前記二酸化炭素の前記第一の流動性食品に対する飽和溶解量の8倍以下である前記の蓄圧式吐出製品。
<4> 前記第一の内袋内における、前記発泡性成分の混合量が、気温25℃圧力0.1MPaにおける前記亜酸化窒素および/または前記二酸化炭素の前記流動性食品に対する飽和溶解量の2~5倍である前記の蓄圧式吐出製品。
<5> 前記第一の流動性食品が、酒類を含有する前記の蓄圧式吐出製品。
<6> 第一の流動性食品が収容された第一の内袋と、前記第一の内袋が収容された缶と、を有する泡状食品の蓄圧式吐出製品の製造方法であり、
前記缶内の前記第一の内袋の周囲に加圧気体を収容する工程と、
前記第一の内袋に、流動性食品を収容する工程と、
前記第一の内袋に前記流動性食品を収容した後に、亜酸化窒素および/または二酸化炭素の発泡性成分を収容する工程と、を有する製造方法。
<7> 前記発泡性成分を収容する工程が、前記発泡性成分を収容する量をシリンダで送出して、前記第一の内袋に収容するものである前記の製造方法。
<8> 前記発泡性成分を収容した後に、缶を振蕩させる工程を有する前記の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の蓄圧式吐出製品によれば、泡状の食品を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の蓄圧式吐出製品の第一の実施形態に係る概要図である。
【
図2】本発明の蓄圧式吐出製品の第二の実施形態に係る概要図である。
【
図3】本発明の蓄圧式吐出製品の製造フローを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0012】
[本発明の蓄圧式吐出製品]
本発明の蓄圧式吐出製品は、第一の流動性食品と、亜酸化窒素および/または二酸化炭素の発泡性成分とを含む混合物が収容された第一の内袋と、前記第一の内袋が収容された缶と、前記缶内の前記第一の内袋の周囲に収容された加圧気体と、前記第一の内袋に収容されているものを吐出するための吐出部と、を有する。本発明の蓄圧式吐出製品を用いれば、泡状食品を手軽に得ることができる。
【0013】
[本発明の製造方法]
本発明の製造方法は、第一の流動性食品が収容された第一の内袋と、前記第一の内袋が収容された缶と、を有する泡状食品の蓄圧式吐出製品の製造方法であり、前記缶内の前記第一の内袋の周囲に加圧気体を収容する工程と、前記第一の内袋に、流動性食品を収容する工程と、前記第一の内袋に前記流動性食品を収容した後に、亜酸化窒素および/または二酸化炭素の発泡性成分を収容する工程と、を有する。本発明の製造方法によれば、効率的に、泡状食品を手軽に得ることができる本発明の蓄圧式吐出製品を製造することができる。
【0014】
なお、本願において本発明の製造方法により本発明の蓄圧式吐出製品を得ることもでき、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
【0015】
[蓄圧式吐出製品101]
図1は、本発明の蓄圧式吐出製品の第一の実施形態に係る概要図である。蓄圧式吐出製品101は、缶31の内側に配置された食品が収容された第一の内袋21を有する。使用時には上部のアクチュエータの吐出部5を操作することで第一の内袋21に収容されている食品を泡状にした泡状食品を吐出することができる。
【0016】
[缶31]
缶31は、第一の内袋21が収容された缶である。缶31は、加圧気体に対する耐圧性を有し、気密性を有する缶である。缶31は、アルミ缶などの金属製の缶などを用いることができる。缶31の内部に第一の内袋21や加圧気体などが収容される。また、缶31は、収容しているものを吐出するためのバルブやアクチュエータなどを取り付けることができる。
【0017】
[加圧気体]
缶31の内部の第一の内袋21との間の空間32には加圧気体が収容される。加圧気体は、例えば空気、窒素などである。缶内の圧力は、常温25℃における圧力として、0.2MPa~2.0MPa程度や、0.2~1.8MPa程度、0.3~1.3MPa程度、0.5MPa~1.0MPa程度、0.6~0.8MPa程度とすることができる。
【0018】
第一の内袋21は注入口を介して缶31の外部の吐出部5に接続されている。蓄圧式吐出製品101を使用するときは、アクチュエータを押すことで、発泡性成分と混合された第一の流動性食品が泡状に吐出される。
【0019】
[第一の内袋21]
第一の内袋21は、第一の流動性食品と、発泡性成分との混合物41を収容する容器である。これは収容する第一の流動性食品などに対する耐性を有する袋である。また、空間32の加圧気体と分離する気密性を有する。この袋は、熱可塑性樹脂の薄膜フィルムに気密性や耐溶剤性などを向上させるためにアルミ蒸着をしたシートを成形した可撓性を有する袋などを用いることができる。
【0020】
[第一の流動性食品]
第一の流動性食品は、泡状として提供しようとする任意の流動性を有する食品を対象とすることができる。例えば、はちみつや、果汁、フルーツソース、ドレッシング、生乳、豆乳、オイル、醤油、ソース、酢、飲料などを用いることができる。
【0021】
食品は、流動性を有する状態とした様々なものを混合物の原料等として利用できる。例えば、従来から、泡状に加工されていたものを対象としてもよい。また、新たな味や食感を提供するために、従来、泡状ではなかった、液や、ペーストなどの常温で流動性を有する状態ものを対象としてもよい。例えば、水や、酢、油、乳製品、調味料、飲料、果汁、はちみつ、ドレッシング、スープ、またこれらの混合物などを用いることができる。飲料は、各種の茶や、コーヒー、ココア、清涼飲料水、果汁飲料、炭酸飲料、酒類(アルコール飲料)、牛乳、豆乳などを用いることもできる。
【0022】
酒類は、発泡性酒類や、醸造酒類、蒸留酒類、混成酒類などを用いることができる。酒類は、エタノールを含む飲料であり、アルコール飲料とも呼ばれ、アルコール分1度以上の飲料などを用いることができる。具体的な酒類としては、清酒、合成清酒、連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、みりん、ビール、果実酒、甘味果実酒、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、発泡酒、その他の醸造酒、スピリッツ、リキュール、粉末酒、雑酒などを用いることができる。
【0023】
第一の流動性食品のベースとなるものとして、流動性がないものや、流動性が低いものを用いる場合、適宜、媒質を混合して、流動性を付与してもよい。また、固形状の食品も、粉状や、ペースト状、スムージー状、ジュース状に加工して媒質と混合等して用いることができる。媒質は、例えば、水や油、酢、アルコール、またこれらの混合物などを用いることができる。
【0024】
また、食品は、界面活性剤等として寄与する成分が少なく、発泡させたとき、泡の形状が不安定なものを用いる場合、適宜、発泡の助剤を混合してもよい。助剤は、例えば、増粘剤や、界面活性剤(レシチン、ゼラチン等)などを用いることができる。これにより、一般的には、泡状化しにくいものも泡状食品とすることができる。
【0025】
[発泡性成分]
第一の内袋21内には、第一の流動性食品と、亜酸化窒素および/または二酸化炭素の発泡性成分とを混合したものを収容している。亜酸化窒素や、二酸化炭素は、いずれも食用に利用することができる成分であり、これらを用いた泡状食品は、そのまま食用とすることができる。
【0026】
[溶解量]
第一の内袋21内の発泡性成分は、使用する成分と、使用するときの泡立ちの程度などに合わせて、適宜、その溶解量を設定することができる。溶解量は、使用時を想定した常温常圧程度での各成分の飽和溶解量を目安とすることができる。飽和溶解量未満でも、蓄圧式吐出製品から吐出されたときの圧力の開放により、微発泡状態とすることもできる。また、しっかり発泡したものを提供するときは、より多くの成分を溶解させればよい。
【0027】
第一の内袋21内における、発泡性成分の混合量は、気温25℃圧力0.1MPaにおける亜酸化窒素および/または二酸化炭素(炭酸ガス)の流動性食品に対する飽和溶解量(以下、「常温常圧の飽和溶解量」)に基づいて、設定してもよい。発泡成分の混合量の上限は、常温常圧の飽和溶解量の20倍以下や、10倍以下、8倍以下、7倍以下とすることができる。また、この上限は、6倍以下や、5倍以下、4倍以下とすることがより好ましい。発泡成分の混合量の下限は、常温常圧の飽和溶解量の0.5倍以上や、1倍以上、1.5倍以上、2倍以上、2.5倍以上とすることが好ましい。このような泡状の食品はオーバーランが小さく、密で品質がよい泡である。
【0028】
流動性食品に対する、所定の温度・圧力下での、亜酸化窒素や二酸化炭素などの発泡性成分の飽和溶解量は、飽和溶解量を測定する対象の発泡性成分をバブリングなどして十分に接触させる溶解前後の重量変化から測定することができる。この所定温度・圧力として、蓄圧式吐出製品を使用や、保管、輸送などするときの目安となる、常温相当(気温25℃)、大気圧相当(圧力0.1MPa)の飽和溶解量を目安とすることができる。
【0029】
このような常温常圧の飽和溶解量の例えば2~5倍程度の発泡性成分を、加圧下となる缶内の第一の内袋21内で、流動性食品に溶解させておく。これにより吐出したとき、特に優れた泡質の泡状食品を提供することができる。特にこのような飽和溶解量は、吐出するための加圧気体と、第一の内袋21とが、缶31内で独立しているため達成することができるものであり、かつ、一般的に加圧気体による圧力とは別に第一の内袋21内の圧力を調整することで達成するものである。
【0030】
また、発泡性成分の溶解量は、次のような範囲としてもよい。例えば、亜酸化窒素(N2O)の25℃大気圧(約0.1MPa)における、水への溶解度(飽和溶解量)は、約1.2g/L程度である。この飽和溶解量を超えるとき、泡立ちやすい状態となる。泡状食品が、コシがあり、泡だっていることを実感しやすいものとする場合、泡に含まれる気体量の目安であるオーバーランが、50~200%程度を目安とすることができる。このような泡状食品のコシや泡立ちを考慮したとき、第一の流動性食品における前述した特に好ましい亜酸化窒素の含有量は2.0g/L~6.0g/Lとなる。これは、およそ、0.2MPa~0.5MPa程度の飽和溶解量となる範囲である。
【0031】
第一の内袋21内の、発泡性成分は、亜酸化窒素とすることができる。亜酸化窒素を用いる場合、第一の内袋内の第一の流動性食品に対する亜酸化窒素の混合量(亜酸化窒素の質量/第一の流動性食品の容量)は、例えば、0.2g/L~24g/L程度とすることができる。特に、亜酸化窒素の混合量は、第一の流動性食品が水を主たる成分として含む場合、2.0g/L~6.0g/Lであることが好ましい。また、例えば、亜酸化窒素の混合量が、2.5g/L~5.0g/Lをさらに好ましい範囲としてもよい。
【0032】
従来のエアゾールを利用した技術の場合、収容している食品を吐出するために、缶内には、初期圧力で、0.7~1.0MPa程度を付与するように、発泡性成分を混合する必要がある。しかし、このような量の発泡性成分を含むまま吐出すると、オーバーランが高すぎるため、柔らかく、コシがない泡しか得ることができない。一方で、圧力を低くすると、吐出自体が困難となる。一方、本発明の蓄圧式吐出製品は、缶内の加圧気体により吐出することができるため、エアゾールを利用した技術では達成が困難な泡も供給することができる。
【0033】
二酸化炭素を用いる場合、第一の内袋内の第一の流動性食品に対する二酸化炭素の混合量(二酸化炭素の質量/第一の流動性食品の容量)は、0.25g/L~25g/L程度とすることができる。特に、二酸化炭素の混合量が、2.5g/L~7.0g/Lであることが好ましい。また、例えば、二酸化炭素の混合量が、3.0g/L~6.0g/Lをさらに好ましい範囲としてもよい。
【0034】
[吐出部5]
吐出部5は、第一の内袋に収容されているものを吐出するための部分である。この吐出部は、バッグオンバルブに用いられている構造を適宜採用することができる。吐出部5は、缶31方向に押下すると、弁が開き、第一の内袋に収容されているものが選択的に吐出部5の開口部から吐出されるような構造のアクチュエータを用いることができる。
【0035】
[本発明の蓄圧式吐出製品の特徴]
本発明の蓄圧式吐出製品は、食品を泡状で吐出する。一方で、保管時は、缶や内袋により空気や光から遮断されている。また、使用時も、吐出部から一方的に食品を吐出し、空気が内袋等に逆流して流入するようなことがない。また、細菌等も入り込みにくく、汚染等もされにくい。このため、使用や保管にあたって、空気に接触する機会が極めて少ない。よって、空気による酸化や光による劣化を防止できる。
【0036】
このため、蓄圧式吐出製品は、収容されている泡状食品の味や香り、性質が長期間変化しにくく、品質を維持することができる。さらに、保管時に漏れたりせず、持ち運びしやすい。このため、調理場や食卓など、様々な環境でも手軽に味や香り、性質を調整した泡を付加することができる。また、発泡させるための成分と、吐出するための気体とが分離されているため、使用中、ファーストショットとも呼ばれるような使用開始時から、収容量を吐出し終えるような終期まで安定した品質のものを吐出することができる。
【0037】
[蓄圧式吐出製品102]
図2は、本発明の蓄圧式吐出製品の第二の実施形態に係る概要図である。蓄圧式吐出製品102は、蓄圧式吐出製品101の応用例である。ここでは、蓄圧式吐出製品101の構成に加えて、さらに、第二の内袋22を有する。第二の内袋22には、第二の流動性食品42が収容されている。また、この第二の内袋22を利用するために、吐出部51は、各内袋内の成分を混合して吐出できるものを採用している。
【0038】
第二の内袋22は、缶31の内部に、第一の内袋21と独立して収容されている。また、第二の内袋22内には、第二の流動性食品42が収容されている。吐出部51は、第一の内袋21に収容されているものと、第二の内袋22に収容されているものとを、吐出することができる。
【0039】
蓄圧式吐出製品102は、それぞれの内袋に収容したものを吐出することができる。第二の内袋22内は、第一の内袋21内に収容するものとして例示した前述のものに準じるものとして、双方が、泡状食品を吐出するものとしてもよい。また、第二の内袋22内は、泡状食品とするものとせずに、液状などのままとして、第一の内袋21に収容されているものに、他の風味を付加するためのものとしてもよい。これらのそれぞれの内袋に収容されたものを吐出するときは、吐出部51内で混合して吐出してもよいし、分離したまま添えるように合わせて吐出してもよい。
【0040】
本発明の蓄圧式吐出製品の製造は、これを製造することができる任意のものとしてもよい。例えば、第一の内袋21内に収容する流動性食品と発泡性成分とを含む発泡性混合物を、予め加圧容器内などに調製して貯蔵しておく。そして、バッグオンバルブ式の容器内に、加圧気体を容れてから、前述の発泡性混合物を第一の内袋21内に容れることができる。または、加圧式気体と、流動性食品と、発泡性成分とを、独立してそれぞれ収容してもよい。
【0041】
[製造フロー例]
図3は、本発明の蓄圧式吐出製品の好適な製造フローを示すフロー図である。
ステップS11は、缶内に第一の内袋を配置したあと、缶と第一の内袋との間に、加圧気体を収容する工程である。
ステップS21は、ステップS11の後、第一の内袋内に、流動性食品を収容する工程である。
ステップS31は、ステップS21の後、第一の内袋内に、亜酸化窒素や二酸化炭素などの発泡性成分を収容する工程である。
ステップS41は、ステップS31の後、缶全体を振蕩させることで、第一の内袋内で食品に亜酸化窒素や二酸化炭素を溶解させる工程である。
【0042】
この製造フローは、第一の流動性食品が収容された第一の内袋と、第一の内袋が収容された缶と、を有する容器を用いる泡状食品の蓄圧式吐出製品の製造方法の一例である。
【0043】
蓄圧式吐出製品は、収容させている成分を吐出するために、缶と第一の内袋との間に、十分な加圧気体を収容して圧力を所定以上のものとしておく。このために、まず、十分な加圧気体を収容する。そして、まず、第一の内袋内に食品のみを収容する。予め、食品と発泡性成分を混合しておくと、収容前の保管中や、移送中に発泡してしまい、高度な温度管理や圧力管理が必要となり、製造管理が容易ではない場合がある。このため、まず、常温でも安定して流動性を有する食品のみを収容する。そして、その後、発泡性成分をいれることで、高圧となっている缶内で、食品と、発泡性成分とを混合して、加圧下での溶解状態とする。
【0044】
発泡性成分を収容する工程が、発泡性成分を、シリンダで送出して、第一の内袋に収容する量を収容するものであることが好ましい。発泡性成分を収容するとき、既に缶内に加圧気体や、第一の内袋内の食品が含まれているため一般的には発泡性成分をいれにくい場合がある。また、缶内の加圧気体による圧力の方が、第一の内袋内で達成したい圧力よりも高いものとなるため、なおさら、発泡性成分をいれることや、その必要量の管理も難しい場合がある。このため、発泡性成分を投入するときは、シリンダ内に発泡性成分の必要量を秤量しておき、これを投入することで、操作も行いやすく、発泡性成分を混合する量を優れた精度で管理することもできる。
【0045】
発泡性成分を収容した後に、缶を振蕩させる工程を有するものとすることができる。発泡成分をいれたあと、一定の時間経過することで、第一の内袋内で、食品と発泡性成分は混合される。しかし、加圧下であっても、常温常圧での飽和溶解量をはるかに超える液体と気体のため、混合されにくい場合がある。このため、振蕩させて、容器内で拡散させることが好ましい。振蕩させることで、ヘッドスペースに存在していた発泡性成分による気体などを、缶内の第一の内袋内で、流動性食品に効率よく混合できる。この振蕩は、缶を揺らすなど物理的な振蕩などを行うものであればよく、効率的には横に振る。横向きの力と、重力により乱流になると考えられる。8の字状に振ることが好ましい。また、超音波振動などを採用してもよい。
【実施例0046】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
[実施例1、比較例1]ゆず果汁
1.1 蓄圧式吐出製品の製造
(1)流動性食品の調製
ゆず果汁(市販品)46質量%と、水46質量%と、ゲル化剤8質量%とを混合して、流動性食品(1)を調整した。ゲル化剤は、食添ゲル化剤「プロエスプーマCOLD」である。
【0048】
(2)流動性食品(1)を用いて、以下の蓄圧式吐出製品を製造した。
【0049】
(2-1)実施例1
容器:53mm径×165mm、パウチ:150mL用のバッグオンバルブの容器を用いて、実施例1の蓄圧式吐出製品を製造した。
加圧気体として窒素をプリチャージした缶内のパウチに、流動性食品(1)を150mL充填した。次に、ステムから、亜酸化窒素を1.05g(飽和溶解量〔0.1MPa下〕の約7.7倍)を充填して、振蕩することで流動性食品(1)と亜酸化窒素を溶解させた。亜酸化窒素の充填量は、充填前後の総重量差から評価した。
【0050】
なお、流動性食品(1)の25℃大気圧下(0.1MPa)における飽和溶解量は、亜酸化窒素ガスのバブリングによる溶解前後の質量差に基づいて測定した。25℃大気圧下(0.1MPa)における飽和溶解量は、0.91g/L(150mLあたり0.137g)であった。
【0051】
(2-2)比較例1
エアゾール缶を用いて比較例1の製品を製造した。容器:53mm径×165mmの空容器に、流動性食品(1)を150mL充填後、バルブを被せ、バキュームクリンチを行った。その後、ステムから、亜酸化窒素を0.67MPa(ゲージ圧)で平衡充填した。
【0052】
1.2 評価方法
実施例1、比較例1の製品について、吐出したときの泡の状態を評価した。
段階(1):未使用の製品で、内圧測定後、内容物20gをカップに吐出し、状態を観察した。
段階(2):収容している流動性食品を30g吐出後(初期充填量から合計50g。充填量の約1/3)、内圧を測定し、さらに、流動性食品20gをカップに吐出し、状態を観察した。
段階(3):流動性食品30g吐出後(初期充填量から合計100g。充填量の約2/3)、内圧を測定し、さらに、流動性食品20gをカップに吐出し、状態を観察した。
これらの評価時のカップは、透明プラスチック製で、上部開口部64mmφ×底面51mmφ×高さ35mm、容量80mLである。
【0053】
1.3 結果
図4は、実施例1を評価したときの泡状食品の像である。
図5は、比較例1に係る泡状食品の像である。各図の上段の容器内状態は、容器内の状態を示す概要図である。各図の下段の吐出状態は、吐出した泡状食品を直ちに撮影したものである。
【0054】
実施例1に係る蓄圧式吐出製品は、吐出初期の段階(1)から終期の段階(3)まで、吐出された泡質の変化が少なく泡質は維持された。一方、一般的なエアゾール缶に相当する比較例1の製品は、流動性食品が吐出されにつれ、オーバーランが低下し、泡質も大きく変化した。
【0055】
実施例1と比較例1は、ゆず果汁の調製液を内容物として、亜酸化窒素内圧(相当圧力):0.67MPaで比較した実験である。実施例1は、初期から、充填量の1/3、2/3吐出しても、泡の性状はほぼ一定で、しっかりとした泡質の泡が得られた。一方で、通常エアゾール缶である比較例1は、初期は実施例1に似たしっかりとした泡質の泡が得られたが、充填量の1/3、2/3と吐出するにつれ、泡質は粗くなり、コシも弱くなった。これは、実施例1については、最後まで内容物中の亜酸化窒素溶解量が変わらないためである。一方、比較例1は、吐出するにつれ、ヘッドスペースが大きくなり、内圧が低下する。それに伴い、内容物中の亜酸化窒素溶解量が減少するため、吐出された際の起泡力が弱くなったためである。
【0056】
[実施例2、比較例2]ホイップクリーム
2.1 蓄圧式吐出製品の製造
1)サンプル
内容物:雪印メグミルク製“ホイップ”、ホイップ程度:中程度
【0057】
2)充填
(1)実施例2
容器:53mm径×165mm、パウチ:150mL用を用いて、実施例2の蓄圧式吐出製品を製造した。バッグオンバルブ式のプリチャージ缶内のパウチに、内容物150mLを充填した。次に、ステムより、亜酸化窒素を2.4g(飽和溶解量〔0.1MPa下〕の約4倍)を添加後、振蕩することで内容物に溶解させた。
【0058】
(2)比較例2
容器:53mm径×165mmを用いて、比較例2の製品を製造した。空容器に内容物を223mL(満注の70%(一般的なエアゾール製品の入れ目量相当))を充填後、バルブを被せ、バキュームクリンチを行った。ステムより、亜酸化窒素を0.3MPa(ゲージ圧)=0.4MPa(絶対圧力)で平衡充填した。
【0059】
2.2試験方法
段階(1):未使用サンプルについて、内容物20gをカップに吐出し、状態を観察した。
段階(2):内容物を充填量の2/3が残るまで吐出した。
段階(3):内容物20gをカップに吐出し、状態を観察した。
段階(4):内容物充填量の1/3が残るまで吐出した。
段階(5):内容物20gをカップに吐出し、状態を観察した。
これらの評価時のカップは、透明プラスチック製で、上部開口部64mmφ×底面51mmφ×高さ35mm、容量80mLである。
【0060】
2.3 結果
図6は、実施例2に係る泡状食品の像である。
図7は、比較例2に係る泡状食品の像である。実施例2は、段階(1)の初期から、段階(5)の充填量の2/3吐出まで、吐出された泡質はほとんど変わらなかった。一方、比較例2は、段階(3)の充填量の1/3吐出の段階で、泡質は顕著に悪くなり、一部液状で吐出された。さらに、圧力不足のため、段階(5)の充填量の2/3吐出の段階に至る前に、吐出不能となった。
【0061】
実施例2と比較例2は、生クリームを内容物として、亜酸化窒素内圧(相当圧力):0.3MPaとして試験を行ったものである。この実験は、亜酸化窒素内圧および溶解相当圧力を、オーバーランを抑えるため、エアゾール缶である比較例2では十分に内容物を吐出できない低圧に設定した。なお、充填量は、実施例2は150mL、比較例2は223mL(満注量の70%)と、両者共に缶容量から設計した量とした。吐出された泡質は、以下の通りであった。
【0062】
実施例2は、吐出初期から、充填量の1/3や、充填量の2/3を吐出しても、泡の性状はほぼ一定で、やや硬めの良好な泡質の泡が得られた。
【0063】
一方で、比較例2は、初期は実施例2とほぼ同じく、やや硬めの泡質の泡が得られたが、充填量の1/3まで吐出すると、泡は大きく崩れ、一部、液状となった。さらに、吐出を続けると、2/3吐出される前に、吐出自体が不可能となった。
【0064】
これは、実施例2については、最後まで内容物中の亜酸化窒素溶解量が変わらないためである。一方、比較例2は、吐出するにつれ、ヘッドスペースが大きくなり、内圧が低下し、それに伴い、内容物中の亜酸化窒素溶解量が減少するため、吐出された際の起泡力が弱くなる。また、元々の設定圧力が低かったため、起泡力不足で、一部が泡になれず、液状のまま吐出されたと考える。さらに、吐出を続けると、内圧低下が進行し、遂には、内圧不足で吐出不可能になったと考える。
【0065】
[実施例3]酒類
実施例1のゆず果汁にかえて、以下の実施例3-1~実施例3-10の酒を用いて、蓄圧式吐出製品を製造した。
実施例3-1:ウイスキー
実施例3-2:ブランデー
実施例3-3:紹興酒
実施例3-4:日本酒
実施例3-5:梅酒
実施例3-6:赤ワイン
実施例3-7:スパークリングワイン
実施例3-8:ホワイトキュラソー
実施例3-9:ピーチリキュール
実施例3-10:レモンサワー
【0066】
実施例3-1~実施例3-10の評価結果を、
図8に示す。
図8は実施例3の蓄圧式吐出製品の吐出直後、吐出15分後、吐出30分後の泡状アルコール食品の状態を示す像である。酒(アルコール飲料)を用いた泡状食品を提供することができ、混合物の原料として用いた酒類の風味を維持して優れた風味を有する泡状食品となり、これらの泡は長時間安定したものであることが確認された。