(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147988
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】半導体装置及び温度制御方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/30 20060101AFI20241009BHJP
G01R 31/3173 20060101ALI20241009BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20241009BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20241009BHJP
【FI】
G01R31/30
G01R31/3173
G01R31/28 G
G01R31/26 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060808
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】598057291
【氏名又は名称】エフサステクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 啓吾
【テーマコード(参考)】
2G003
2G132
【Fターム(参考)】
2G003AA07
2G003AC01
2G003AD06
2G003AH04
2G003AH08
2G132AA01
2G132AB03
2G132AB14
2G132AC14
2G132AD18
2G132AH07
2G132AK23
2G132AL09
2G132AL21
(57)【要約】
【課題】バーンイン試験を効率的に行う。
【解決手段】並列に接続され、それぞれが領域1~nの何れかに配置されたスキャンチェーン回路13a1~13anを有する半導体装置10のバーンイン試験時に、温度測定回路13b1~13bnは、領域1~nの何れかの温度をそれぞれが測定する。温度比較回路14は、温度測定回路13b1~13bnの測定結果に基づいて、領域1~nのうちの第1領域と第2領域の温度を比較し、第1比較結果を出力し、動作率調整回路15は、テストデータを取得し、第1比較結果に基づいて、第1領域の温度が第2領域の温度よりも高い場合、第1領域に配置された第1スキャンチェーン回路または第2領域に配置された第2スキャンチェーン回路に対する、テストデータの供給時間を調整することで、第1領域の回路動作率を下げる、または第2領域の回路動作率を上げる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に接続され、それぞれが複数の領域の何れかに配置された複数のスキャンチェーン回路と、
バーンイン試験時に、前記複数の領域の何れかの温度をそれぞれが測定する複数の温度測定回路と、
前記複数の温度測定回路の測定結果に基づいて、前記複数の領域のうちの第1領域と第2領域の温度を比較し、第1比較結果を出力する温度比較回路と、
テストデータまたはテストクロック信号を取得し、前記第1比較結果に基づいて、前記第1領域の温度が前記第2領域の温度よりも高い場合、前記第1領域に配置された第1スキャンチェーン回路または前記第2領域に配置された第2スキャンチェーン回路に対する、前記テストデータまたは前記テストクロック信号の供給時間を調整することで、前記第1領域の回路動作率を下げる、または前記第2領域の回路動作率を上げる動作率調整回路と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記動作率調整回路は、前記複数の領域に対応して設けられた複数の調整回路を有し、
前記複数の調整回路のそれぞれは、前記複数のスキャンチェーン回路のうち、対応する領域に配置されたスキャンチェーン回路に対する前記テストデータまたは前記テストクロック信号の前記供給時間を調整する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の調整回路のそれぞれは、
前記テストクロック信号のクロック数を計数するカウンタと、
設定値を保持する設定値保持回路と、
前記カウンタの計数値と、前記設定値とを比較した第2比較結果を出力する比較器と、
前記第2比較結果に応じて、前記テストデータまたは前記テストクロック信号を、前記スキャンチェーン回路へ供給し、または前記テストデータまたは前記テストクロック信号の前記スキャンチェーン回路への供給を停止するゲート回路と、
を有し、
前記設定値は、前記第1比較結果に基づいて値が増減される、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1領域と前記第2領域は、前記複数の領域のうちの隣接する2つの領域から順に選ばれる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1領域と前記第2領域は、前記複数の領域のうち、温度が試験装置によって制御される第3領域と前記第3領域に隣接する第4領域と、から順に選ばれる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記温度比較回路は、前記複数の温度測定回路の測定結果のうちの2つを所定の順序で選択し、選択した2つの測定結果を比較した前記第1比較結果を出力する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
並列に接続され、それぞれが複数の領域の何れかに配置された複数のスキャンチェーン回路を有する半導体装置のバーンイン試験時に、
複数の温度測定回路のそれぞれが、前記複数の領域の何れかの温度を測定し、
温度比較回路が、前記複数の温度測定回路の測定結果に基づいて、前記複数の領域のうちの第1領域と第2領域の温度を比較し、第1比較結果を出力し、
動作率調整回路が、
テストデータまたはテストクロック信号を取得し、
前記第1比較結果に基づいて、前記第1領域の温度が前記第2領域の温度よりも高い場合、前記第1領域に配置された第1スキャンチェーン回路または前記第2領域に配置された第2スキャンチェーン回路に対する、前記テストデータまたは前記テストクロック信号の供給時間を調整することで、前記第1領域の回路動作率を下げる、または前記第2領域の回路動作率を上げる、
温度制御方法。
【請求項8】
並列に接続され、それぞれが複数の領域の何れかに配置された複数のスキャンチェーン回路と、
バーンイン試験時に、テストデータまたはテストクロック信号を取得し、前記複数の領域のそれぞれに対して予め設定された設定値に基づいて、前記複数のスキャンチェーン回路に対する、前記テストデータまたは前記テストクロック信号の供給時間を調整することで、前記複数の領域のそれぞれの回路動作率を調整する動作率調整回路と、
を有する半導体装置。
【請求項9】
並列に接続され、それぞれが複数の領域の何れかに配置された複数のスキャンチェーン回路を有する半導体装置のバーンイン試験時に、
動作率調整回路が、
テストデータまたはテストクロック信号を取得し、
前記複数の領域のそれぞれに対して予め設定された設定値に基づいて、前記複数のスキャンチェーン回路に対する、前記テストデータまたは前記テストクロック信号の供給時間を調整することで、前記複数の領域のそれぞれの回路動作率を調整する、
温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造試験や評価を容易にするために、スキャンチェーンと呼ばれるスキャン機構を含む半導体装置がある。また、半導体装置の試験の1つとして、バーンイン試験がある。バーンイン試験では、試験装置(バーンイン装置などとも呼ばれる)が、半導体装置に高電圧を印加して発熱させる。また、温度が上がりすぎないように、試験装置は冷却機能により半導体装置の温度を制御する。このように半導体装置にストレスをかけた状態で、スキャンチェーンを用いて試験が行われる。バーンイン試験では、通常の試験(常温かつ通常の電圧)に比べて、短い時間で初期不良品を判定することができる。
【0003】
なお、従来、LBIST(Logic Built-In Self-Test)回路を組み込んだデバイスであって、テスト中の温度測定値に応答してLBIST回路の動作を制御して、温度が目標温度範囲になるように制御するものがあった(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来、テスト時の半導体集積回路の温度を空間的に均一化するようなテストパターンを生成する手法があった(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-84472号公報
【特許文献2】国際公開第2011/086884号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体装置の回路密度は、場所によってばらつきがある。回路密度が高い場所では、回路密度が低い場所よりも発熱量が大きくなるため、回路密度が低い場所よりも温度が高くなる傾向がある。このため、バーンイン試験において、半導体装置内部の温度を一定に保つことは難しい。半導体装置の劣化は温度が高いほど早く進む性質がある。バーンイン試験において半導体装置全体をある一定以上の度合いで劣化させるためには、一番劣化の進行が遅い場所(つまり温度が低い場所)を温度制御の基準とすることになる。そのため、バーンイン試験の時間が長くなり、試験効率が悪くなる可能性がある。
【0007】
1つの側面では、本発明は、バーンイン試験を効率的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施態様では、並列に接続され、それぞれが複数の領域の何れかに配置された複数のスキャンチェーン回路と、バーンイン試験時に、前記複数の領域の何れかの温度をそれぞれが測定する複数の温度測定回路と、前記複数の温度測定回路の測定結果に基づいて、前記複数の領域のうちの第1領域と第2領域の温度を比較し、第1比較結果を出力する温度比較回路と、テストデータまたはテストクロック信号を取得し、前記第1比較結果に基づいて、前記第1領域の温度が前記第2領域の温度よりも高い場合、前記第1領域に配置された第1スキャンチェーン回路または前記第2領域に配置された第2スキャンチェーン回路に対する、前記テストデータまたは前記テストクロック信号の供給時間を調整することで、前記第1領域の回路動作率を下げる、または前記第2領域の回路動作率を上げる動作率調整回路と、を有する半導体装置が提供される。
【0009】
また、1つの実施態様では、並列に接続され、それぞれが複数の領域の何れかに配置された複数のスキャンチェーン回路と、バーンイン試験時に、テストデータまたはテストクロック信号を取得し、前記複数の領域のそれぞれに対して予め設定された設定値に基づいて、前記複数のスキャンチェーン回路に対する、前記テストデータまたは前記テストクロック信号の供給時間を調整することで、前記複数の領域のそれぞれの回路動作率を調整する動作率調整回路と、を有する半導体装置が提供される。
【0010】
また、1つの実施態様では、温度制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
1つの側面では、本発明は、バーンイン試験を効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施の形態の半導体装置の一例を示す図である。
【
図2】半導体装置における領域分割の一例を示す図である。
【
図4】領域1と領域2の温度の比較結果に基づく設定値Bの調整例を示す図である。
【
図6】温度を比較する2領域の選択順序の第1の例を示す図である。
【
図7】第1の例の選択順序における設定値更新処理の流れを示す図である。
【
図8】温度を比較する2領域の選択順序の第2の例を示す図である。
【
図9】第2の例の選択順序における設定値更新処理の流れを示す図である。
【
図10】半導体装置内の領域間の温度ばらつきの例を示す図である。
【
図11】半導体装置の温度分布の一例を示す図である。
【
図13】第2の実施の形態の半導体装置の一例を示す図である。
【
図14】第2の実施の形態の半導体装置の動作率調整回路の一例を示す図である。
【
図15】第3の実施の形態の半導体装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の半導体装置の一例を示す図である。
【0014】
第1の実施の形態の半導体装置10は、たとえば、LSI(Large Scale Integrated circuit)チップやSoC(System-on-a-Chip)などである。半導体装置10は、テストクロック発生器11、乱数発生器12、スキャンチェーン回路13a1,13a2,…,13an、温度測定回路13b1,13b2,…,13bn、温度比較回路14、動作率調整回路15を有する。
【0015】
なお、
図1では、試験対象の回路(組合せ回路などの被試験回路)は、図示が省略されている。試験対象の回路は、スキャンチェーン回路13a1~13anに接続され、スキャンチェーン回路13a1~13anからテストデータを取得して、動作結果をスキャンチェーン回路13a1~13anに出力する。
【0016】
テストクロック発生器11は、バーンイン試験を制御する試験装置20から、バーンイン試験を開始する旨の信号(以下バーンイン開始信号という)を受けると、所定の周期のテストクロック信号を発生する。
【0017】
乱数発生器12は、試験装置20から、バーンイン開始信号を受けると、テストクロック信号の周期で、乱数値(0または1)を発生する。乱数値は、スキャンチェーン回路13a1~13anを介して試験対象の回路に供給されるテストデータとして用いられる。
【0018】
なお、試験装置20がテストクロック信号やテストデータを発生して、半導体装置10に供給してもよい。その場合、テストクロック発生器11や乱数発生器12は、半導体装置10になくてもよい。
【0019】
スキャンチェーン回路13a1~13anは、並列に接続され、それぞれが複数の領域1~nの何れかに配置されている。
図2は、半導体装置における領域分割の一例を示す図である。
図2には、半導体装置10の一例であるLSIチップ上の領域分割の例が示されている。
【0020】
図2の例では、半導体装置10のX-Y平面が、3×3のマトリクス状に9つの領域1~9(つまり、n=9)に分割されている。
この場合、スキャンチェーン回路13a1~13a9は、領域1~9に分割して配置される。たとえば、スキャンチェーン回路13a1は領域1に配置され、スキャンチェーン回路13a2は領域2に配置され、スキャンチェーン回路13a9は領域9に配置される。
【0021】
なお、領域数(分割数)nは上記の例(n=9)に限定されず、また、分割の仕方も
図2のような例に限定されるわけではない。たとえば、各領域の大きさや形状が互いに異なっていてもよい。
【0022】
温度測定回路13b1~13bnは、バーンイン試験時において、複数の領域1~nの何れかの温度をそれぞれが測定する。温度測定回路13b1~13bnのそれぞれは、領域1~nのうち、温度測定を担当する領域に配置される。
【0023】
図2に示したような領域分割が行われる場合、温度測定回路13b1~13b9により、領域1~9の温度が測定される。たとえば、温度測定回路13b1が領域1に配置され領域1の温度を測定し、温度測定回路13b2が領域2に配置され領域2の温度を測定し、温度測定回路13b9が領域9に配置され領域9の温度を測定する。
【0024】
温度比較回路14は、温度測定回路13b1~13bnの測定結果に基づいて、複数の領域1~nのうちの第1領域と第2領域の温度を比較し、比較結果を出力する。温度比較回路14は、温度を比較する2つの領域ごとに設けられていてもよい。温度比較回路14は、1つ設けられ、温度測定回路13b1~13bnの測定結果のうち2つを所定の順序で選択し、選択した2つの測定結果を比較した比較結果(上記第1領域と第2領域の温度の比較結果に相当する)を出力してもよい。
【0025】
第1の実施の形態の半導体装置10において、動作率調整回路15は、温度比較回路14の比較結果に基づいて、領域1~nのうちの第1領域の温度が第2領域の温度よりも高い場合、以下のように回路動作率を調整する。
【0026】
動作率調整回路15は、テストデータ(
図1の例では乱数発生器12が発生する乱数値)を取得する。そして、動作率調整回路15は、第1領域に配置された第1スキャンチェーン回路または第2領域に配置された第2スキャンチェーン回路に対する、テストデータの供給時間を調整する。第1領域の温度が第2領域の温度よりも高い場合、動作率調整回路15は、供給時間を調整することで、第1領域の回路動作率の回路動作率を下げる、または第2領域の回路動作率を上げる。
【0027】
たとえば、動作率調整回路15は、第1スキャンチェーン回路へのテストデータの供給を一定期間停止する、または停止する期間を長くすることで、第1領域の回路動作率を下げる。動作率調整回路15は、第2スキャンチェーン回路へのテストデータの供給を所定期間停止する設定がなされていた場合、その期間を短縮または0にすることで、第2領域の回路動作率を上げてもよい。
【0028】
また、動作率調整回路15は、テストデータの供給時間を調整することで、第1領域の回路動作率を下げることと、第2領域の回路動作率を上げることの両方を行ってもよい。
テストクロック発生器11、乱数発生器12、温度比較回路14及び動作率調整回路15の配置場所は特に限定されず、たとえば、領域1~nの何れかに配置される。
【0029】
試験装置20は、半導体装置10のバーンイン試験を制御する。試験装置20は、バーンイン試験開始時に、バーンイン開始信号を、半導体装置10に供給するとともに、半導体装置10に所定の高電圧を印加し、半導体装置10を発熱させる。さらに、試験装置20は、半導体装置10に設けられた温度測定回路(サーミスタなど)の温度を検出する。そして、試験装置20は、検出した温度が一定の温度(劣化を促進させるような高い温度)に保たれるように半導体装置10を冷却する機能を有する。なお、試験装置20は、温度測定回路13b1~13bnの何れかにおける温度の測定結果に基づいて、冷却を行ってもよい。
【0030】
(動作率調整回路15の例)
図3は、動作率調整回路の一例を示す図である。
動作率調整回路15は、領域1~nに対応して設けられたn個の調整回路15a1,15a2,…,15anを有する。
【0031】
調整回路15a1~15anのそれぞれは、対応する領域に配置されたスキャンチェーン回路に対するテストデータの供給時間を調整する。たとえば、調整回路15a1は、領域1に配置されたスキャンチェーン回路13a1に対するテストデータの供給時間を調整する。
【0032】
図3には、調整回路15a1の例が示されている。調整回路15a1は、カウンタ15b1、設定値保持回路15c1、比較器15d1、ゲート回路15e1を有する。
カウンタ15b1は、テストクロック信号のクロック数を計数し、計数値Aを出力する。カウンタ15b1は、所定数(以下N個とする)のフリップフロップ(以下FFという)をもつNビットカウンタである。
【0033】
設定値保持回路15c1は、テストデータの供給時間を調整するための設定値Bを保持する。設定値は、温度比較回路14が出力する比較結果に基づいて値が増減される。設定値保持回路15c1は、たとえば、アップダウンカウンタなどを用いて実現される。設定値Bの更新は、たとえば、カウンタ15b1が上限値まで計数して計数値が0に戻るたびに行われる。
【0034】
比較器15d1は、計数値Aと設定値Bとを比較した比較結果を出力する。比較器15d1は、A>Bであれば1を出力し、A≦Bであれば0を出力する。
ゲート回路15e1は、比較器15d1が出力する比較結果に応じて、テストデータを、スキャンチェーン回路13a1へ供給し、またはテストデータのスキャンチェーン回路13a1への供給を停止する。なお、テストデータは、乱数発生器12にバーンイン開始信号が入力されると、乱数発生器12の端子CLKに入力されるテストクロック信号に同期して、乱数発生器12の端子OUTから出力される。
【0035】
ゲート回路15e1は、たとえば、比較器15d1が出力する比較結果と、テストデータとの論理積(AND)を出力するAND回路である。比較器15d1の出力が1である場合には、1または0の乱数値であるテストデータが出力され、比較器15d1の出力が0である場合には、テストデータの値によらず0が出力される。つまり、比較器15d1の出力が0である場合、テストデータのスキャンチェーン回路13a1への供給が停止される。
【0036】
図示を省略しているが、調整回路15a2~15anについても、調整回路15a1と同様の回路構成により実現できる。
なお、
図3には、スキャンチェーン回路13a1の例が示されている。スキャンチェーン回路13a1は、直列に接続された複数(
図3の例ではm個)のスキャンFF13c1~13cmを有する。
【0037】
スキャンFF13c1~13cmのそれぞれは、テストクロック信号が入力される端子CLKと、テストデータが入力される端子SI、テストデータが出力される端子SOを有する。バーンイン試験が開始すると、テストクロック信号に同期して、スキャンFF13c1~13cmのそれぞれに、テストデータが設定される。その後、キャプチャ動作によって、スキャンFF13c1~13cmに接続される試験対象の回路にテストデータが供給され、試験対象の回路の出力である試験結果がスキャンFF13c1~13cmに取り込まれる。その後、試験結果が、最終段のスキャンFF13cmからシリアルに読み出され、たとえば、試験装置20において、期待値と比較され、故障の有無が判定される。
【0038】
スキャンチェーン回路13a2~13anも、スキャンチェーン回路13a1と同様の回路及び機能をもつ。
(温度測定回路13b1~13bnの例と設定値Bの調整例)
図4は、領域1と領域2の温度の比較結果に基づく設定値の調整例を示す図である。
【0039】
領域1に配置される温度測定回路13b1は、定電流源13c1、サーマルダイオード13d1、ADC(Analog to Digital Converter)13e1を有する。
定電流源13c1は、電源VDDと、サーマルダイオード13d1のアノードとの間に接続されている。サーマルダイオード13d1のカソードはGND(接地電位)となっている。ADC13e1は、サーマルダイオード13d1のアノードとカソード間の電位をデジタル値に変換し、領域1の温度の測定結果として出力する。
【0040】
温度測定回路13b2~13bnについても、温度測定回路13b1と同様の回路により実現できる。
領域1と領域2の温度の比較結果に基づいて設定値の調整が行われる場合、温度比較回路14は、温度測定回路13b1が出力する測定結果(領域1の温度)と、温度測定回路13b2が出力する測定結果(領域2の温度)とを比較する。
【0041】
領域1の温度>領域2の温度である場合、温度比較回路14は、比較結果として、領域1の調整回路15a1の設定値保持回路15c1の設定値を増やす(たとえば、+1する)ことを指示する信号を出力する。また、この場合、温度比較回路14は、比較結果として、領域2の調整回路15a2の設定値保持回路15c2の設定値を減らす(たとえば、-1する)ことを指示する信号を出力する。
【0042】
領域1の温度<領域2の温度である場合、温度比較回路14は、比較結果として、領域1の調整回路15a1の設定値保持回路15c1の設定値を減らす(たとえば、-1する)ことを指示する信号を出力する。また、この場合、温度比較回路14は、比較結果として、領域2の調整回路15a2の設定値保持回路15c2の設定値を増やす(たとえば、+1する)ことを指示する信号を出力する。設定値の値が大きくなるほど、テストデータのスキャンチェーン回路への供給が停止される期間が長くなる(つまり、テストデータの供給時間が短くなる)。
【0043】
なお、温度比較回路14は、設定値保持回路15c1,15c2の両方ではなく、何れか一方に上記のような信号を出力してもよい。
温度比較回路14は、温度の比較を行う2つの領域ごとに設けられていてもよいが、以下のように、温度を比較する2つの領域を選択可能な構成を有していてもよい。
【0044】
図5は、温度比較回路の一例を示す図である。
温度比較回路14は、選択回路14aと、比較回路14bを有する。
選択回路14aは、温度測定回路13b1~13bnが出力する測定結果のうちの2つを所定の順序で選択して、出力する。このような選択は、たとえば、
図3に示したようなカウンタ15b1が上限値まで計数して計数値が0に戻るたびに行われる。選択順序は、予めレジスタなどに設定されていてもよいし、試験装置20から指示されるようにしてもよい。また、半導体装置10内の図示しない制御回路から、選択順序が指示されるようにしてもよい。
【0045】
比較回路14bの出力端子には、設定値保持回路15c1~15cnが接続されている。比較回路14bは、選択回路14aにて選択された2つの測定結果を比較する。比較回路14bは、選択された2つの測定結果が得られる2領域の回路動作率を調整する2つの調整回路の設定値保持回路に対して、
図4を用いて説明したような比較結果を出力する。
【0046】
このような温度比較回路14を用いることで、温度比較回路14を温度の比較を行う2つの領域ごとに設けなくてよくなる。
(半導体装置10の動作例)
図6は、温度を比較する2領域の選択順序の第1の例を示す図である。
【0047】
図6には、領域1~9のうち隣接する2つの領域から順に、温度を比較する2領域が選択される例が示されている。
図6の例では、領域1,2、領域2,3、…、領域8,9の順で2領域が選択され、温度の比較が行われている。なお、“M”は、試験装置20が検出する温度を測定する温度測定回路を表している。試験装置20の冷却機能による温度制御が比較的容易になるという理由から、“M”は、半導体装置10のX-Y面の中心付近に配置されている。
図6の例では、“M”は、領域5に配置されている。つまり、領域5が試験装置20によって温度制御される領域である。なお、“M”は、領域5に配置されている温度測定回路13b5であってもよい。
【0048】
図7は、第1の例の選択順序における設定値更新処理の流れを示す図である。
バーンイン試験の開始時には、設定値保持回路15c1~15c9の設定値は、全て0にリセットされる(ステップS10)。このため、テストデータのスキャンチェーン回路13a1~13a9への供給は停止されない。
【0049】
その後、領域1,2の温度比較及び設定値の更新が行われ(ステップS11)、領域2,3の温度比較及び設定値の更新が行われ(ステップS12)、領域3,4の温度比較及び設定値の更新が行われる(ステップS13)。さらに、領域4,5の温度比較及び設定値の更新が行われ(ステップS14)、領域5,6の温度比較及び設定値の更新が行われ(ステップS15)、領域6,7の温度比較及び設定値の更新が行われる(ステップS16)。そして、領域7,8の温度比較及び設定値の更新が行われ(ステップS17)、領域8,9の温度比較及び設定値の更新が行われ(ステップS18)、再び、ステップS11からの処理が、バーンイン試験が終了するまで、繰り返される。
【0050】
なお、設定値の更新は、カウンタ15b1が上限値まで計数して計数値が0に戻るタイミングで行われるため、必ずしも上記のような順序で更新されていくわけではない。
図8は、温度を比較する2領域の選択順序の第2の例を示す図である。
【0051】
図8の例では、温度を比較する2領域は、領域1~9のうち、“M”が配置されている領域5と、領域5に隣接する領域1~4,6~9と、から順に選ばれる。たとえば、
図8のように、領域1,5、領域2,5、…、領域9,5の順で2領域が選択され、温度の比較が行われる。
【0052】
図9は、第2の例の選択順序における設定値更新処理の流れを示す図である。
バーンイン試験の開始時には、設定値保持回路15c1~15c9の設定値は、全て0にリセットされる(ステップS20)。このため、テストデータのスキャンチェーン回路13a1~13a9への供給は停止されない。
【0053】
その後、領域1,5の温度比較及び設定値の更新が行われ(ステップS21)、領域2,5の温度比較及び設定値の更新が行われ(ステップS22)、領域3,5の温度比較及び設定値の更新が行われる(ステップS23)。さらに、領域4,5の温度比較及び設定値の更新が行われ(ステップS24)、領域6,5の温度比較及び設定値の更新が行われ(ステップS25)、領域7,5の温度比較及び設定値の更新が行われる(ステップS26)。そして、領域8,5の温度比較及び設定値の更新が行われ(ステップS27)、領域9,5の温度比較及び設定値の更新が行われ(ステップS28)、再び、ステップS21からの処理が、バーンイン試験が終了するまで、繰り返される。
【0054】
なお、設定値の更新は、カウンタ15b1が上限値まで計数して計数値が0に戻るタイミングで行われるため、必ずしも上記のような順序で更新されていくわけではない。
領域5の温度は、試験装置20の冷却機能により、比較的正確に制御される。このため、上記の第2の例のように温度比較及び設定値更新を行うことで、他の領域を領域5の温度に近づけることができる。
【0055】
以上のように、第1の実施の形態の半導体装置10では、スキャンチェーン回路13a1~13anは、並列に接続され、それぞれが複数の領域1~nの何れかに配置されている。また、半導体装置10は、バーンイン試験時において、領域1~nの何れかの温度をそれぞれが測定する温度測定回路13b1~13bnを有する。また、半導体装置10は、温度測定回路13b1~13bnの測定結果に基づいて、領域1~nのうちの第1領域と第2領域の温度を比較し、比較結果を出力する温度比較回路14を有する。さらに、半導体装置10は、動作率調整回路15を有する。動作率調整回路15は、テストデータ(上記の例では0か1の乱数値)を取得する。動作率調整回路15は、温度比較回路14が出力する比較結果に基づいて、第1領域の温度が第2領域の温度よりも高い場合、第1領域の回路動作率を下げる、または第2領域の回路動作率を上げる。動作率調整回路15は、このような回路動作率の変更を、第1領域に配置された第1スキャンチェーン回路または第2領域に配置された第2スキャンチェーン回路に対する、テストデータの供給時間を調整することで行う。
【0056】
これにより、第1領域の発熱量が下がる、または第2領域の発熱量が上がることで、第1領域と第2領域の温度差が小さくなるように、温度が制御される。したがって、半導体装置10内における温度のばらつきが抑制される。
【0057】
また、領域1~nのうち、第1領域と第2領域として選択する2領域を、たとえば、
図6~
図9のように所定の順序で選択して、回路動作率の調整処理を繰り返すことで、全領域間における温度のばらつきを抑制できる。
【0058】
半導体装置10内における温度のばらつきが大きい場合、バーンイン試験の試験時間(ストレス印加時間)は、半導体装置10の一番温度が低い領域を基準にして、決められる。
【0059】
図10は、半導体装置内の領域間の温度ばらつきの例を示す図である。(A)は、回路動作率の調整を行わない半導体装置の温度ばらつきを示し、(B)は、回路動作率の調整を行う半導体装置10の温度ばらつきを示す。横軸は領域を表し、縦軸は温度を表す。
図10において、領域間で一番低い温度は、基準温度と表記されている。
【0060】
図11は、半導体装置の温度分布の一例を示す図である。(A)は、回路動作率の調整を行わない半導体装置10aの温度分布を示し、(B)は、回路動作率の調整を行う半導体装置10の温度の分布を示す。
【0061】
図11(A)のように、回路動作率の調整を行わない半導体装置10aにおいて、線30の位置では120℃、線31の位置では115℃、線32の位置では110℃となっている。これに対して、
図11(B)のように、回路動作率の調整を行う半導体装置10において、線30の位置では120℃、線31の位置では、119℃、線32の位置では、118℃となっている。
【0062】
図12は、劣化量と温度との関係を示す図である。横軸は温度を表し、縦軸は劣化量を表す。
図10(A)、
図11(A)のように、回路動作率の調整を行わない半導体装置10a、領域による温度のばらつきが大きい。このため、他の領域の温度よりもかなり低い温度の領域が存在する。バーンイン試験においてその領域を十分に劣化させるために、試験時間を長くしなければならない。
図12に示すように、半導体装置の劣化は温度が低いほど遅く進む性質があるためである。
【0063】
これに対して、第1の実施の形態の半導体装置10は前述のように回路動作率の調整を行うことで、
図10(B)、
図11(B)のように領域による温度のばらつきを抑えることができる。これにより、他の領域よりも大幅に低い温度の領域に試験時間を合わせなくてもよくなり、試験時間を短縮でき、バーンイン試験を効率的に行える。
【0064】
また、回路動作率の調整を行わない半導体装置10aを用いた場合、製造ばらつきのため
図10(A)のように、半導体装置10aの許容温度を超えてしまう領域が存在し、故障につながる可能性がある。しかし、第1の実施の形態の半導体装置10では、そのような領域は回路動作率が下げられ、温度も下がるため、故障が発生することを防止できる。
【0065】
(第2の実施の形態)
図13は、第2の実施の形態の半導体装置の一例を示す図である。
図13において、
図1に示した要素と同じ要素については同一符号が付されている。
【0066】
第2の実施の形態の半導体装置40は、動作率調整回路41が、第1の実施の形態の半導体装置10の動作率調整回路15と異なっている。
半導体装置40において、動作率調整回路41は、以下のように回路動作率を調整する。動作率調整回路41は、テストクロック信号を取得する。そして、動作率調整回路41は、温度比較回路14の比較結果に基づいて、第1領域に配置された第1スキャンチェーン回路または第2領域に配置された第2スキャンチェーン回路に対する、テストクロック信号の供給時間を調整する。第1領域の温度が第2領域の温度よりも高い場合、動作率調整回路41は、供給時間を調整することで、第1領域の回路動作率の回路動作率を下げる、または第2領域の回路動作率を上げる。
【0067】
たとえば、動作率調整回路41は、第1スキャンチェーン回路へのテストクロック信号の供給を一定期間停止する、または停止する期間を長くすることで、第1領域の回路動作率を下げる。動作率調整回路41は、第2スキャンチェーン回路へのテストクロック信号の供給を所定期間停止する設定がなされていた場合、その期間を短縮または0にすることで、第2領域の回路動作率を上げてもよい。また、動作率調整回路41は、テストクロック信号の供給時間を調整することで、第1領域の回路動作率を下げることと、第2領域の回路動作率を上げることの両方を行ってもよい。
【0068】
(動作率調整回路41の例)
図14は、第2の実施の形態の半導体装置の動作率調整回路の一例を示す図である。
図14において、
図3に示した要素と同じ要素については同一符号が付されている。
【0069】
動作率調整回路41は、領域1~nに対応して設けられたn個の調整回路41a1,41a2,…,41anを有する。
調整回路41a1~41anのそれぞれは、対応する領域に配置されたスキャンチェーン回路に対するテストクロック信号の供給時間を調整する。たとえば、調整回路41a1は、領域1に配置されたスキャンチェーン回路13a1に対するテストクロック信号の供給時間を調整する。
【0070】
図14には、調整回路41a1の例が示されている。調整回路41a1は、
図3に示した調整回路15a1と同様に、カウンタ15b1、設定値保持回路15c1、比較器15d1を有するが、ゲート回路41b1が、
図3のゲート回路15e1と異なっている。
【0071】
ゲート回路41b1は、比較器15d1が出力する比較結果に応じて、テストクロック信号を、スキャンチェーン回路13a1へ供給し、またはテストクロック信号のスキャンチェーン回路13a1への供給を停止する。
【0072】
ゲート回路41b1は、たとえば、比較器15d1が出力する比較結果と、テストクロック信号との論理積を出力するAND回路である。比較器15d1の出力が1である場合には、テストクロック信号が出力され、比較器15d1の出力が0である場合には、テストクロック信号の値によらず0が出力される。つまり、比較器15d1の出力が0である場合、テストクロック信号のスキャンチェーン回路13a1への供給が停止される。
【0073】
図示を省略しているが、調整回路41a2~41anについても、調整回路41a1と同様の回路構成により実現できる。
上記のような第2の実施の形態の半導体装置40においても、第1の実施の形態の半導体装置10と同様の効果が得られる。つまり、半導体装置40内における温度のばらつきが抑制され、試験時間を短縮でき、バーンイン試験を効率的に行える。
【0074】
(第3の実施の形態)
図15は、第3の実施の形態の半導体装置の一例を示す図である。
図15において、
図1に示した要素と同じ要素については同一符号が付されている。
【0075】
第3の実施の形態の半導体装置50の動作率調整回路51は、バーンイン試験時に、テストデータを取得する。そして、動作率調整回路51は、領域1~nのそれぞれに対して予め設定された設定値に基づいて、スキャンチェーン回路13a1~13anに対する、テストデータの供給時間を調整することで、領域1~nのそれぞれの回路動作率を調整する。
【0076】
動作率調整回路51は、
図3に示したような動作率調整回路15とほぼ同様の構成であるが、設定値保持回路15c1に保持される設定値は、固定値となる。領域1~nの各領域に対する設定値として、領域間の温度ばらつきが少なくなるような回路動作率になるように、予め最適化された値が用いられる。
【0077】
たとえば、製造ばらつきの少ない種類のLSIで、どの製品でも温度分布が同じである場合に、このような半導体装置50を適用できる。たとえば、温度が高くなる傾向にある第1領域(たとえば、回路密度が高い領域)に対する設定値を、温度が低くなる傾向にある第2領域に対する設定値よりも大きな値とすることで、第1領域の回路動作率を、第2領域の回路動作率よりも下げられる。
【0078】
このように、半導体装置50は、領域間の温度ばらつきが抑制されるような温度制御を行うことから、バーンイン試験を効率的に行える。
また、このような半導体装置50では、
図1に示したような、温度測定回路13b1~13bnや温度比較回路14を設けなくてもよい。
【0079】
なお、
図15の例では、動作率調整回路51は、第1の実施の形態の半導体装置10の動作率調整回路15と同様に、テストデータ(乱数値)をスキャンチェーン回路13a1~13anに供給する時間を調整することで、回路動作率を調整するものである。
【0080】
ただし、第3の実施の形態の半導体装置50は、第2の実施の形態の半導体装置40と同様に、テストクロック信号をスキャンチェーン回路13a1~13anに供給する時間を調整することで、回路動作率を調整する形態であってもよい。
【0081】
以上、実施の形態に基づき、本発明の半導体装置及び温度制御方法の一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0082】
10 半導体装置
11 テストクロック発生器
12 乱数発生器
13a1~13an スキャンチェーン回路
13b1~13bn 温度測定回路
14 温度比較回路
15 動作率調整回路
20 試験装置