IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特開2024-147989液滴吐出装置、液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法及びプログラム
<>
  • 特開-液滴吐出装置、液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法及びプログラム 図1
  • 特開-液滴吐出装置、液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法及びプログラム 図2
  • 特開-液滴吐出装置、液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法及びプログラム 図3A
  • 特開-液滴吐出装置、液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法及びプログラム 図3B
  • 特開-液滴吐出装置、液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法及びプログラム 図4
  • 特開-液滴吐出装置、液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法及びプログラム 図5
  • 特開-液滴吐出装置、液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法及びプログラム 図6
  • 特開-液滴吐出装置、液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法及びプログラム 図7A
  • 特開-液滴吐出装置、液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法及びプログラム 図7B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147989
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】液滴吐出装置、液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20241009BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060809
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕文
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB17
2C056EB18
2C056EB20
2C056EB34
2C056EB48
2C056EC26
2C056KB09
(57)【要約】
【課題】逆止弁を備えた送液ポンプの劣化をより的確に検知可能な液滴吐出装置、液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】液滴吐出装置1は、液体を貯留する液体貯留部41と、液体を吐出する液滴吐出部24aと、の間に設けられ、逆止弁451a、451bを備えた構成で液体貯留部41の液体を液滴吐出部24aに送出する送液ポンプ451を備え、逆止弁451a、451bの逆止能力を試験する試験部50と、試験部50の試験結果に基づいて送液ポンプ451の劣化度を算出する算出部50と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する液体貯留部と、液体を吐出する液滴吐出部と、の間に設けられ、逆止弁を備えた構成で前記液体貯留部の液体を前記液滴吐出部に送出する送液ポンプを備える液滴吐出装置であって、
前記逆止弁の逆止能力を試験する試験部と、
前記試験部の試験結果に基づいて前記送液ポンプの劣化度を算出する算出部と、を備える液滴吐出装置。
【請求項2】
前記送液ポンプの送液方向上流側の圧力を前記送液方向下流側の圧力よりも相対的に低くする圧力差発生部を備え、
前記試験部は、前記圧力差発生部の動作後に前記送液方向下流側から前記液体貯留部への液体の逆流量に基づく値を取得する請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記逆流量に基づく値は、前記液体貯留部の液面高さである請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記逆流量に基づく値は、封止された前記液体貯留部内の圧力値である請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記劣化度が所定の閾値以上である場合に前記送液ポンプの交換の催促を報知する報知部を備える請求項3又は4に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記試験部は、決められたタイミングで前記逆止弁の逆止能力を試験する請求項3又は4に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記圧力差発生部は、空圧ポンプである請求項3又は4に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記液滴吐出部が、ノズルから液体を吐出する液滴吐出ヘッドである請求項3又は4に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記液体は、インクである請求項3又は4に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
液体を貯留する液体貯留部と、液体を吐出する液滴吐出部と、の間に設けられ、逆止弁を備えた構成で前記液体貯留部の液体を前記液滴吐出部に送出する送液ポンプを備える液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法であって、
前記逆止弁の逆止能力を試験する試験ステップと、
前記試験ステップの試験結果に基づいて前記送液ポンプの劣化度を算出する算出ステップと、を備える液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法。
【請求項11】
前記液体貯留部は、前記送液ポンプによって連通する上流側液体貯留部と下流側液体貯留部を備え、
前記試験ステップは、
前記上流側液体貯留部の液面高さを所定値に調整する液面高さ調整ステップと、
前記上流側液体貯留部を密閉する密閉ステップと、
密閉された前記上流側液体貯留部内の圧力値を前記下流側液体貯留部内の圧力値よりも所定値低くなるように調整する圧力調整ステップと、
前記上流側液体貯留部と前記下流側液体貯留部のうちいずれか一の液体貯留部の液面高さを取得する第一取得ステップと、
前記上流側液体貯留部と前記下流側液体貯留部の間に設けられた送液弁を開放する開放ステップと、
前記開放ステップから所定時間後に前記送液弁を閉鎖する閉鎖ステップと、
前記閉鎖ステップ後の前記一の液体貯留部の液面高さを取得する第二取得ステップと、を備える請求項10に記載の液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法。
【請求項12】
前記液体貯留部は、前記送液ポンプによって連通する上流側液体貯留部と下流側液体貯留部を備え、
前記試験ステップは、
前記上流側液体貯留部の液面高さを所定値に調整する液面高さ調整ステップと、
前記上流側液体貯留部を密閉する密閉ステップと、
密閉された前記上流側液体貯留部内の圧力値を前記下流側液体貯留部内の圧力値よりも所定値低くなるように調整する圧力調整ステップと、
減圧した前記上流側液体貯留部内の圧力値を取得する第一取得ステップと、
前記上流側液体貯留部と前記下流側液体貯留部の間に設けられた送液弁を開放する開放ステップと、
前記開放ステップから所定時間後に前記送液弁を閉鎖する閉鎖ステップと、
前記閉鎖ステップ後の前記上流側液体貯留部の圧力値を取得する第二取得ステップと、を備える請求項10に記載の液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法。
【請求項13】
液体を貯留する液体貯留部と、液体を吐出する液滴吐出部と、の間に設けられ、逆止弁を備えた構成で前記液体貯留部の液体を前記液滴吐出部に送出する送液ポンプを備える液滴吐出装置のコンピューターを、
前記逆止弁の逆止能力を試験する試験部、
前記試験部の試験結果に基づいて前記送液ポンプの劣化度を算出する算出部、として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置、液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体の記録面に、液滴吐出部から液滴を吐出して画像を記録する液滴吐出装置が知られている。液滴吐出装置は、液体の入ったタンクを備える。液滴吐出装置は、送液ポンプによりタンク中の液体を液滴吐出部に送出する。そのため、液滴吐出装置は、送液ポンプが故障すると、液滴吐出部から液滴を吐出できなくなり、機能停止する。したがって、液滴吐出装置は、故障前の劣化段階で送液ポンプを計画的に交換して、突発的な機能停止を防ぐのが好ましい。
【0003】
これに関連して、例えば特許文献1には、送液ポンプの送液量を測定することで、送液ポンプの劣化を診断する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-201234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、送液ポンプ並びにその劣化の仕方には様々な種類がある。例えば、逆止弁を備えるダイアフラムポンプの場合、図7A及び図7Bに示すように、逆止弁に固着物が付着すると、逆止能力が低下する。ダイアフラムポンプは、逆止能力が低下しても送液量は大きく低下しないが、逆止能力が低下した状態でチャンバー内に空気が混入すると、送液量が大きく低下して機能停止する。送液ポンプの送液量を測定する特許文献1の方法では、逆止能力の低下に起因した送液ポンプの劣化検知は難しい。よって、液滴吐出装置の突発的な機能停止の防止ができない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものである。その目的は、逆止弁を備えた送液ポンプの劣化をより的確に検知可能な液滴吐出装置、液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
液体を貯留する液体貯留部と、液体を吐出する液滴吐出部と、の間に設けられ、逆止弁を備えた構成で前記液体貯留部の液体を前記液滴吐出部に送出する送液ポンプを備える液滴吐出装置であって、
前記逆止弁の逆止能力を試験する試験部と、
前記試験部の試験結果に基づいて前記送液ポンプの劣化度を算出する算出部と、を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液滴吐出装置であって、
前記送液ポンプの送液方向上流側の圧力を前記送液方向下流側の圧力よりも相対的に低くする圧力差発生部を備え、
前記試験部は、前記圧力差発生部の動作後に前記送液方向下流側から前記液体貯留部への液体の逆流量に基づく値を取得する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の液滴吐出装置であって、
前記逆流量に基づく値は、前記液体貯留部の液面高さである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の液滴吐出装置であって、
前記逆流量に基づく値は、封止された前記液体貯留部内の圧力値である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の液滴吐出装置であって、
前記劣化度が所定の閾値以上である場合に前記送液ポンプの交換の催促を報知する報知部を備える。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項3又は4に記載の液滴吐出装置であって、
前記試験部は、決められたタイミングで前記逆止弁の逆止能力を試験する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項3又は4に記載の液滴吐出装置であって、
前記圧力差発生部は、空圧ポンプである。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項3又は4に記載の液滴吐出装置であって、
前記液滴吐出部が、ノズルから液体を吐出する液滴吐出ヘッドである。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項3又は4に記載の液滴吐出装置であって、
前記液体は、インクである。
【0016】
請求項10に記載の発明は、
液体を貯留する液体貯留部と、液体を吐出する液滴吐出部と、の間に設けられ、逆止弁を備えた構成で前記液体貯留部の液体を前記液滴吐出部に送出する送液ポンプを備える液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法であって、
前記逆止弁の逆止能力を試験する試験ステップと、
前記試験ステップの試験結果に基づいて前記送液ポンプの劣化度を算出する算出ステップと、を備える。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法であって、
前記液体貯留部は、前記送液ポンプによって連通する上流側液体貯留部と下流側液体貯留部を備え、
前記試験ステップは、
前記上流側液体貯留部の液面高さを所定値に調整する液面高さ調整ステップと、
前記上流側液体貯留部を密閉する密閉ステップと、
密閉された前記上流側液体貯留部内の圧力値を前記下流側液体貯留部内の圧力値よりも所定値低くなるように調整する圧力調整ステップと、
前記上流側液体貯留部と前記下流側液体貯留部のうちいずれか一の液体貯留部の液面高さを取得する第一取得ステップと、
前記上流側液体貯留部と前記下流側液体貯留部の間に設けられた送液弁を開放する開放ステップと、
前記開放ステップから所定時間後に前記送液弁を閉鎖する閉鎖ステップと、
前記閉鎖ステップ後の前記一の液体貯留部の液面高さを取得する第二取得ステップと、を備える。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項10に記載の液滴吐出装置のポンプ劣化度検知方法であって、
前記液体貯留部は、前記送液ポンプによって連通する上流側液体貯留部と下流側液体貯留部を備え、
前記試験ステップは、
前記上流側液体貯留部の液面高さを所定値に調整する液面高さ調整ステップと、
前記上流側液体貯留部を密閉する密閉ステップと、
密閉された前記上流側液体貯留部内の圧力値を前記下流側液体貯留部内の圧力値よりも所定値低くなるように調整する圧力調整ステップと、
減圧した前記上流側液体貯留部内の圧力値を取得する第一取得ステップと、
前記上流側液体貯留部と前記下流側液体貯留部の間に設けられた送液弁を開放する開放ステップと、
前記開放ステップから所定時間後に前記送液弁を閉鎖する閉鎖ステップと、
前記閉鎖ステップ後の前記上流側液体貯留部の圧力値を取得する第二取得ステップと、を備える。
【0019】
請求項13に記載の発明は、プログラムであって、
液体を貯留する液体貯留部と、液体を吐出する液滴吐出部と、の間に設けられ、逆止弁を備えた構成で前記液体貯留部の液体を前記液滴吐出部に送出する送液ポンプを備える液滴吐出装置のコンピューターを、
前記逆止弁の逆止能力を試験する試験部、
前記試験部の試験結果に基づいて前記送液ポンプの劣化度を算出する算出部、として機能させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、逆止弁を備えた送液ポンプの劣化をより的確に検知可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】インクジェット記録装置の側断面図である。
図2】送液部の概略構成図である。
図3A】ダイアフラムポンプの吸引動作時の概略断面図である。
図3B】ダイアフラムポンプの吐出動作時の概略断面図である。
図4】インクジェット記録装置のブロック図である。
図5】第2サブタンクの液面高さの変化幅に基づくポンプ検査処理のフローチャートである。
図6】第1サブタンクの圧力値の変化幅に基づくポンプ検査処理のフローチャートである。
図7A】逆止弁に固着物が付着したダイアフラムポンプの吸引動作時の概略断面図である。
図7B】逆止弁に固着物が付着したダイアフラムポンプの吐出動作時の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る液滴吐出装置について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0023】
[インクジェット記録装置の全体構成]
図1は、本発明の液滴吐出装置の一実施形態である、インクジェット記録装置1の主要構成を示す側断面図である。インクジェット記録装置1は、給紙部10、画像形成部20、排紙部30、送液部40(図2参照)、制御部50及び報知部60(いずれも図4参照)等を備える。
【0024】
(給紙部)
給紙部10は、画像形成前の記録媒体Pを格納する。給紙部10は、制御部50の制御下で、記録媒体Pを画像形成部20に搬送する。給紙部10は、給紙トレー11及び搬送部12等を備える。
【0025】
{給紙トレー}
給紙トレー11は、記録媒体Pを格納する板状部材である。給紙トレー11は、一又は複数の記録媒体Pを載置可能に設けられる。給紙トレー11は、載置された記録媒体Pの量に応じて上下動する。給紙トレー11は、当該上下動により、最上の記録媒体Pが搬送部12によって搬送される位置で保持される。
【0026】
{搬送部}
搬送部12は、給紙トレー11から画像形成部20へ記録媒体Pを搬送する。搬送部12は、搬送機構を備える。搬送機構は、ベルト123を駆動して、ベルト123上の記録媒体Pを搬送する。ベルト123は、輪状であり、当該輪の内側が複数のローラー121、122により担持される。
【0027】
搬送部12は、供給部を備える。供給部は、給紙トレー11に載置された最上の記録媒体Pをベルト123上に受け渡す。搬送部12は、当該供給部により、記録媒体Pをベルト123に沿わせるように搬送する。
【0028】
(画像形成部)
画像形成部20は、送液部40と協働して、制御部50の制御下で記録媒体Pに記録動作を実行する。画像形成部20は、画像形成ドラム21、受け渡しユニット22、用紙加熱部23、ヘッドユニット24、照射部25及びデリバリー部26等を備える。
【0029】
{画像形成ドラム}
画像形成ドラム21は、円筒状の外周面に沿って記録媒体Pを担持し、回転に伴って当該記録媒体Pを搬送する。画像形成ドラム21の搬送面は、用紙加熱部23、ヘッドユニット24及び照射部25と対向し、搬送される記録媒体Pに対して画像形成処理を実行する。
【0030】
{受け渡しユニット}
受け渡しユニット22は、搬送部12と画像形成ドラム21の間に介在する位置に設けられる。受け渡しユニット22は、爪部221及び受け渡しドラム222等を備える。
【0031】
爪部221は、搬送部12により搬送された記録媒体Pの一端を担持する円筒状部材である。受け渡しドラム222は、爪部221に担持された記録媒体Pを誘導する部材である。
【0032】
受け渡しユニット22は、搬送部12上の記録媒体Pを爪部221で取り上げて受け渡しドラム222の外周面に沿わせる。受け渡しユニット22は、当該動作により、記録媒体Pを画像形成ドラム21に受け渡す。
【0033】
{用紙加熱部}
用紙加熱部23は、例えば、電熱線等を備え、通電に応じて発熱する。用紙加熱部23は、制御部50により制御され、その近傍を通過する記録媒体Pが所定の温度となるように発熱する。用紙加熱部23は、画像形成ドラム21の外周面の近傍であり、かつ、記録媒体Pの搬送方向について、ヘッドユニット24の上流側に位置するよう設けられる。
【0034】
用紙加熱部23の近傍には、不図示の温度センサーが設けられる。制御部50は、当該温度センサーにより用紙加熱部23付近の温度を検知する。制御部50は、当該検知した温度に基づいて、用紙加熱部23の発熱を制御する。
【0035】
{ヘッドユニット}
ヘッドユニット24は、記録媒体Pに対してインク滴を吐出して画像を形成する。ヘッドユニット24は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びK(ブラック)の各色に対応するものがそれぞれ設けられている。図1では、記録媒体Pの搬送方向に対して、上流からY、M、C、Kの各色に対応したヘッドユニット24が順番に設けられている。
【0036】
ここで、平面視において記録媒体Pの搬送方向に垂直な方向を幅方向とする。本実施形態のヘッドユニット24は、幅方向につき、記録媒体Pの全体をカバーする長さ(幅)で複数配列されるように設けられている。また、本実施形態のヘッドユニット24は、液滴吐出部であるインクジェットヘッド24a(図2参照)が複数配列されて構成されたヘッドユニットである。すなわち、インクジェット記録装置1は、例えばワンパス方式のラインヘッド型インクジェット記録装置である。
【0037】
なお、画像形成部20に設けられるヘッドユニット24の数は3つ以下であっても5つ以上であってもよい。また、単一のインクジェットヘッド24aがヘッドユニット24を構成してもよい。
【0038】
ヘッドユニット24が吐出するインクは、例えば紫外線硬化型インクである。紫外線硬化型インクは、照射部25から紫外線が照射されない状態では、温度に応じてゲル状態と液体(ゾル)状態との間で相変化するゲル状インクである。紫外線硬化型インクは、例えば40~100℃程度の相変化温度を有し、相変化温度以上に加熱上昇されることで一様に液化(ゾル化)する。紫外線硬化型インクは、一方で、通常の室温程度、すなわち0~30℃程度である場合はゲル化する。
【0039】
{照射部}
照射部25は、例えば、低圧水銀ランプ等の蛍光管を備える。照射部25は、当該蛍光管の発光により、紫外線等のエネルギー線を照射する。照射部25は、画像形成ドラム21の外周面の近傍に設けられる。また、照射部25は、記録媒体Pの搬送方向について、ヘッドユニット24の下流側に位置するよう設けられる。照射部25は、インクが吐出された記録媒体Pに対してエネルギー線を照射する。記録媒体P上のインクは、当該エネルギー線の作用により硬化する。
【0040】
なお、紫外線を発する蛍光管は低圧水銀ランプに限られない。蛍光管は、例えば数百Pa~1MPa程度の動作圧力を備える水銀ランプであってよい。また、蛍光管は、殺菌灯として利用可能な光源、例えば、冷陰極管、紫外線レーザー光源、メタルハライドランプあるいは発光ダイオード等であってよい。この中でも、蛍光管は、紫外線をより高照度で照射可能であって省電力な光源であることが望ましい。蛍光管は、例えば、発光ダイオード等である。なお、エネルギー線は紫外線に限られず、インクの性質に応じてインクを硬化させる性質を有するエネルギー線であれば良い。そして、光源もエネルギー線に応じて置換される。
【0041】
上記においてはヘッドユニット24が紫外線硬化型のインクを吐出する場合を例示したが、これに限定されない。ヘッドユニット24が吐出するインクは、水性インクやその他の物性を有するインクであっても良い。
【0042】
{デリバリー部}
デリバリー部26は、搬送機構を備える。搬送機構は、内側が複数のローラー261、262に担持された輪状のベルト263を駆動して、記録媒体Pを搬送する。デリバリー部26は、円筒状の受け渡しローラー264を備える。受け渡しローラー264は、記録媒体Pを画像形成ドラム21から当該搬送機構に受け渡す。デリバリー部26は、受け渡しローラー264によりベルト263上に受け渡された記録媒体Pを搬送して排紙部30に送り出す。
【0043】
(排紙部)
排紙部30は、画像形成部20で画像形成された記録媒体Pが排紙される。排紙部30は、板状の排紙トレー31等を備える。デリバリー部26により画像形成部20から送り出された記録媒体Pは、排紙トレー31に載置される。排紙部30は、当該記録媒体Pを、ユーザーが取り出すまで格納する。
【0044】
(送液部)
送液部40は、各色のインクを各ヘッドユニット24へ供給し、当該各色のインクを吐出可能とする。図2に示すように、送液部40は、液体貯留部であるメインタンク41、第1サブタンク42及び第2サブタンク43等を備える。なお、本実施形態において、第1サブタンク42及び第2サブタンク43は、それぞれ送液方向上流側、下流側に設けられた上流側液体貯留部、下流側液体貯留部である。
【0045】
<メインタンク>
メインタンク41は、送液部40の各部に供給されるインクが収容されるタンクである。メインタンク41は、例えば金属製の剛体密閉タンクである。メインタンク41は、供給管44を介して第1サブタンク42と連通している。供給管44には、供給ポンプ441及び供給弁442が設けられている。
【0046】
〈供給ポンプ、供給弁〉
供給ポンプ441及び供給弁442は、制御部50の制御下で動作する。メインタンク41のインクは、供給弁442の開放時に、供給ポンプ441の駆動により、供給管44を介して、第1サブタンク42に供給される。メインタンク41は、その全体を交換可能となっており、供給ポンプ441の稼働状況に拘わらず、供給管44と着脱可能に形成されている。
【0047】
<第1サブタンク>
第1サブタンク42は、メインタンク41よりも容積が小さい1又は複数のインク室である。第1サブタンク42は、供給ポンプ441によりメインタンク41から汲み出されたインクを貯留する。第1サブタンク42は、第1フロートセンサー421、第1圧力計422、第1大気開放弁423等を備える。
【0048】
〈第1フロートセンサー〉
第1フロートセンサー421は、第1サブタンク42内の液面位置を検知して当該データを制御部50に送信する。制御部50には、第1サブタンク42中のインクの下限量と上限量に係る液面位置が記憶されており、これらを第1フロートセンサー421の送信データと比較する。第1サブタンク42の液面位置が、インクの下限量に係る液面位置よりも低い場合、制御部50は、下流側の液体貯留部であるメインタンク41からインクを送出する。他方、第1サブタンク42の液面位置が、インクの上限量に係る液面位置よりも高い場合、制御部50は、報知部60にエラーの表示をする。制御部50の当該制御により、第1サブタンク42内には、常に所定範囲の量のインクが貯留される。
【0049】
〈第1圧力計〉
第1圧力計422は、第1サブタンク42内の圧力値を検知して当該データを制御部50に送信する。
【0050】
〈第1大気開放弁〉
第1大気開放弁423は、制御部50に制御される電磁弁である。第1大気開放弁423は、制御部50の制御下で、第1サブタンク42を大気に対して選択的に開放又は閉鎖する。
【0051】
〈インク加熱部〉
また、第1サブタンク42には、第1サブタンク42内のインクを適温に保持する不図示のインク加熱部が設けられる。インク加熱部は、ヒーターやヒーターからの熱を伝える伝熱部材等により構成される。インク加熱部を構成するヒーターとしては、例えば、通電されることによりジュール熱を生じる電熱線が用いられる。インク加熱部を構成する伝熱部材としては、熱伝導率の高い部材、例えば、各種金属(合金)で形成された熱伝導板が用いられる。
【0052】
また、第1サブタンク42は、回収路47を介してインクジェットヘッド24aのアウトレットと連通している。インクジェットヘッド24aから吐出されなかったインクは、回収路47を通過して第1サブタンク42に回収される。当該構成により、例えば、インクジェットヘッド24aのメンテナンスでインクを抜く必要がある場合でも、インクを無駄なく回収できる。
【0053】
第1サブタンク42は、インク流路である送液管45を介して第2サブタンク43と連通する。送液管45には、送液ポンプ451及び送液弁452等が設けられる。
【0054】
〈送液ポンプ〉
送液ポンプ451は、第1サブタンク42内のインクを第2サブタンク43に送出する。図3A及び図3Bに示すように、本発明において、送液ポンプ451は、逆止弁451a、451bと、ダイアフラム451cを備えるダイアフラムポンプである。
【0055】
制御部50は、図3Aに示すように、インクの吸引時には、チャンバーの容積を大きくするようにダイアフラム451cを引く。制御部50は、当該制御により、チャンバー内を減圧し、インクをチャンバー内に吸引する。また、制御部50は、図3Bに示すように、インクの吐出時には、チャンバーの容積を小さくするようにダイアフラム451cを押す。制御部50は、当該制御により、チャンバー内を加圧し、インクをポンプ外に押し出すように吐出する。
【0056】
図3Aに示すように、インクの吸引時は、吐出側の逆止弁451bが、吐出側からのインクの吸引を抑制する。また、図3Bに示すように、インクの吐出時は、吸引側の逆止弁451aが、吸引側からのインクの吐出を抑制する。しかしながら、図7A及び図7Bに示すように、逆止弁に固着物が付着すると、逆止能力と送液量が低下する。この時送液ポンプ451の流路内に空気が混入すると送液できなくなり、制御部50に故障と判断されて、インクジェット記録装置1が突発的に停止するおそれがある。
【0057】
〈送液弁〉
送液弁452は、制御部50に制御される電磁弁である。送液弁452は、制御部50の制御下で、送液ポンプ451の稼働時に送液管45を選択的に開閉する。
【0058】
なお、送液管45のうち、第1サブタンク42と送液ポンプ451の間には、インクに溶存する空気を除去する公知の脱気モジュールを設けるのが好ましい。
【0059】
<第2サブタンク>
第2サブタンク43は、第1サブタンク42から送液されたインクが一時的に貯留される小型のタンク室である。第2サブタンク43の容量は、特には限定されないが、第1サブタンク42と略同一程度の容量である。第2サブタンク43は、供給路46を介して各インクジェットヘッド24aのインレットと連通している。各インクジェットヘッド24aは、その吐出するインクの量に応じて、第2サブタンク43からインクが供給される。
第2サブタンク43には、第2フロートセンサー431、第2圧力計432、背圧弁433及び背圧ポンプ434等が設けられる。
【0060】
〈第2フロートセンサー〉
第2フロートセンサー431は、第2サブタンク43内の液面位置を検知して当該データを制御部50に送信する。制御部50は、第1サブタンク42と同様に、当該データに基づいて、第2サブタンク43内のインク量を所定量とする。
【0061】
〈第2圧力計〉
第2圧力計432は、第2サブタンク43内の圧力値を検知して制御部50に当該データを送信する。
【0062】
〈背圧弁、背圧ポンプ〉
背圧弁433及び背圧ポンプ434は、制御部50の制御下で第2サブタンク43内の圧力値を調整することで、インクジェットヘッド24aに適切な負圧をかける。当該負圧により、インクジェットヘッド24aのインクは、画像形成時や各種のメンテナンスを除くタイミングで漏れ出すのを抑制される。
【0063】
<送気管>
また、第1サブタンク42と第2サブタンク43は送気管48によって連通している。送気管48には、第2大気開放弁481と、圧力調整弁482と、空圧ポンプ483が設けられる。空圧ポンプ483は、第1サブタンク42内の空気を吸気することで、第1サブタンク42内を減圧する。当該空気は、第2大気開放弁481のみが開放状態の場合は、第2サブタンク43内に送気されて第2サブタンク43内を加圧する。また、当該空気は、圧力調整弁482の開放時は、大気中に放出される。
【0064】
(制御部)
図4は、インクジェット記録装置1の機能構成を示すブロック図である。
制御部50は、インクジェット記録装置1を構成する各部を制御する。制御部50は、図4に示すように、上記インクジェット記録装置1を構成する各部と接続される。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)51、RAM(Random Access Memory)52、ROM(Read Only Memory)53等を備える。
【0065】
CPU51は、ROM53等の記憶装置から処理内容に応じた各種のプログラムやデータ等を読み出して実行する。また、CPU51は、実行された処理内容に応じてインクジェット記録装置1の各部の動作を制御する。RAM52は、CPU51により処理される各種のプログラムやデータ等を一時的に記憶する。ROM53は、CPU51等により読み出される各種のプログラムやデータ等を記憶する。
【0066】
(報知部)
報知部60は、制御部50の制御下で、種々の情報を報知する。報知部60は、例えば画面を有する表示部や、ネットワークを介して他の装置と通信可能な通信部である。
【0067】
[ポンプ検査処理]
上記のように構成されたインクジェット記録装置1における、ポンプ検査処理について、図5に基づいて説明する。図5は、ポンプ検査処理の一実施例を示すフローチャートである。本処理において、制御部50は、送液ポンプ451の逆止弁451a、451bの逆止能力を試験する試験部として機能する。また、制御部50は、逆止弁451a、451bの逆止能力の試験結果から、送液ポンプ451の劣化度を算出する算出部として機能する。
【0068】
まず、制御部50は、第1サブタンク42中の液面高さを所定値に調整する(ステップS101)。例えば、制御部50は、送液弁452を開放した上で送液ポンプ451を稼働させる。そして、制御部50は、第1サブタンク42内の液面高さが所定値となるまで、第1サブタンク42内のインクを第2サブタンク43に送出する。あるいは、制御部50は、供給弁442を開放した上で供給ポンプ441を稼働させる。そして、制御部50は、第1サブタンク42内の液面高さが所定値となるまで、メインタンク41内のインクを第1サブタンク42に送出する。
【0069】
制御部50は、第1大気開放弁423を閉鎖して、第1サブタンク42を密閉する(ステップS102)。
【0070】
制御部50は、空圧ポンプ483を稼働させ、第1サブタンク42内を所定値まで減圧する(ステップS103)。当該所定値は、少なくとも第2サブタンク43内の圧力値よりも低い値である。空圧ポンプ483は、送液ポンプ451の上流側の第1サブタンク42内の圧力を、下流側の第2サブタンク43内の圧力よりも相対的に低くする圧力差発生部として機能する。
【0071】
なお、当該所定値は、ステップS103以前の第1サブタンク42内の圧力値からの減圧幅が大きい方が好ましい。第1サブタンク42内の減圧幅が大きいと、後述するステップS105における逆流速度が高まり、送液ポンプ451の劣化度をより正確に算出できる。ただし、第1サブタンク42内の減圧幅を大きくしすぎると、送液管45が破損するおそれを有する。そのため、当該所定値は、送液管45の耐圧性能に応じた値とするのが好ましい。
【0072】
制御部50は、空圧ポンプ483の稼働を停止して、第2フロートセンサー431から第2サブタンク43内の液面高さの検知データを取得する(ステップS104)。
【0073】
制御部50は、送液弁452を所定時間開放状態とする(ステップS105)。上記したように、第1サブタンク42内の圧力値は、第2サブタンク43内の圧力値よりも相対的に低くなっている。そのため、送液弁452を開放状態とすると、第2サブタンク43内のインクは、第1サブタンク42内に向けて流れようとする。このとき、逆止弁451a、451bの逆止能力が低下していると、逆止しきれずに第2サブタンク43内のインクが第1サブタンク42内に流れ込む。結果、第2サブタンク43の液面高さが減少し、第1サブタンク42の液面高さが上昇する。
【0074】
制御部50は、送液弁452の開放から所定時間が経過したかを判定する(ステップS106)。所定時間が経過していない場合(ステップS106;No)、制御部50は、所定時間が経過するまで待機する。
【0075】
所定時間の経過後(ステップS106;Yes)、制御部50は、送液弁452を閉鎖状態とする(ステップS107)。また、制御部50は、第2フロートセンサー431から第2サブタンク43の液面高さの検知データを取得する(ステップS108)。第2サブタンク43の液面高さの検知データの取得後、制御部50は、第1大気開放弁423を開放状態として、第1サブタンク42を大気開放する(ステップS109)。また、制御部50は、ステップS104で取得した値からステップS108で取得した値への変化幅である劣化度を算出する(ステップS110)。
【0076】
制御部50は、当該劣化度が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS111)。当該劣化度が所定の閾値未満である場合(ステップS111;No)、逆止弁451a、451bの逆止能力の低下度合いが低いことがわかる。すなわち、インクジェット記録装置1が突発的な機能停止を起こすほど、送液ポンプ451が劣化していないことがわかる。そのため、制御部50は、ポンプ検査処理を終了する。
【0077】
当該劣化度が所定の閾値以上である場合(ステップS111;Yes)、逆止弁451a、451bの逆止能力の低下度合いが大きいことがわかる。すなわち、インクジェット記録装置1が突発的な機能停止を起こし得るほど、送液ポンプ451が劣化していることがわかる。そのため、制御部50は、報知部60によりユーザーに送液ポンプ451の交換を催促する(ステップS112)。報知部60による報知後、制御部50は、ポンプ検査処理を終了する。
【0078】
なお、ステップS105における、送液弁452を開放状態とする所定時間は、長くするほど第2サブタンク43から第1サブタンク42への送液量が多くなる。すなわち、当該所定時間を長くするほど、送液ポンプ451の劣化度に応じた、第2サブタンク43の液面高さの変化幅が大きくなる。そのため、制御部50は、送液ポンプ451の劣化度をより正確に算出できるようになる。一方で、当該所定時間は、長くするほどポンプ検査処理、すなわち、インクジェット記録装置1のダウンタイムが長くなる。したがって、当該所定時間は、両者のバランスを考慮した適切な長さとするのが好ましい。
【0079】
また、ステップS111における所定の閾値は、インクジェット記録装置1の出荷前に試験を実施することで設定できる。具体的には、故障したインクジェット記録装置1で上記したポンプ検査処理を実行して、第2サブタンク43の液面高さの変化幅(故障値)を算出する。そして、当該故障値の所定割合を当該所定の閾値と設定する。
【0080】
当該所定の閾値は、高く設定する方がより長期間送液ポンプ451を使用可能となる。一方で、当該所定の閾値を高く設定しすぎると、突発的な故障が起こり得るリスクが高まる。したがって、当該所定の閾値は、両者のバランスを考慮した適切な値とするのが好ましい。
【0081】
[実施形態の効果]
以上に示すように、本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、液体を貯留する液体貯留部であるメインタンク41、第1サブタンク42及び第2サブタンク43を備える。また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、液体を吐出する液滴吐出部であるインクジェットヘッド24aを備える。また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、逆止弁451a、451bを備えた構成で液体貯留部の液体をヘッドユニット24に送出する送液ポンプ451を備える。そして、インクジェット記録装置1の制御部50は、逆止弁451a、451bの逆止能力を試験する試験部、送液ポンプ451の劣化度を算出する算出部として機能する。
当該構成によれば、逆止弁451a、451bを備える送液ポンプ451の劣化をより的確に検知できる。そして、インクジェット記録装置1が突発的に機能停止するのを抑制できる。
【0082】
[その他の構成]
以上、本発明に係る実施の形態に基づいて具体的に説明を行ったが、本発明が上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明が、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む様々な変更が可能であるのはもちろんである。
【0083】
例えば上記においては、制御部50は、第2サブタンク43の液面高さの変化幅から送液ポンプ451の劣化度を算出するとしたが、これに限られない。制御部50は、第1サブタンク42の液面高さの変化幅から、送液ポンプ451の劣化度を算出しても構わない。ただし、制御部50は、第1サブタンク42と第2サブタンク43のうち、断面積が小さい方の液面高さの変化幅を取得するのが好ましい。断面積が小さいと、その液面高さの変化幅がより大きくなり、制御部50が、送液ポンプ451の劣化度をより正確に算出可能となるからである。
【0084】
なお、制御部50が、第1サブタンク42の液面高さの変化幅から送液ポンプ451の劣化度を算出する場合、ステップS104は省略してよい。制御部50は、ステップS101で第1サブタンク42の液面高さを所定値としているからである。
【0085】
また、制御部50は、第1圧力計422の検知データに基づく、第1サブタンク42内の圧力値の変化幅を劣化度として、送液ポンプ451の劣化を検知してもよい。
【0086】
他の実施例である、第1サブタンク42内の圧力値の変化幅に基づくポンプ検査処理について、図6に基づいて説明する。図6におけるステップS201~S203は、図5のステップS101~S103と同様であるため、その詳細な説明を割愛する。また、その他のステップについても、図5と同様の内容については、その詳細な説明を割愛する。
【0087】
第1サブタンク42内の減圧後、制御部50は、空圧ポンプ483の稼働を停止する。また、制御部50は、第1圧力計422から第1サブタンク42内の圧力値の検知データを取得する(ステップS204)。
【0088】
第1サブタンク42内の圧力値の取得後、制御部50は、所定時間だけ送液弁452を開放状態とする(ステップS205)。逆止弁451a、451bの逆止能力が低下している場合、上記したように、第2サブタンク43内のインクは、第1サブタンク42内に流れ込む。すると、第1サブタンク42内の空気体積が減少するため、負圧が緩和されて、圧力値が0kPaに近付く。
【0089】
所定時間後(ステップS206;Yes)、制御部50は、送液弁452を閉鎖状態とする(ステップS207)。また、制御部50は、第1圧力計422から第1サブタンク42内の圧力値の検知データを取得する(ステップS208)。第1サブタンク42内の圧力値の検知データの取得後、制御部50は、第1サブタンク42を大気開放する(ステップS209)。また、制御部50は、ステップS204で取得した値からステップS208で取得した値への変化幅である劣化度を算出する(ステップS210)。そして、制御部50は、当該劣化度が、所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS211)。
【0090】
当該構成の場合、インクジェット記録装置1がフロートセンサーを備える構成でなくても、制御部50が送液ポンプ451の劣化を検知できる。
【0091】
また、ステップS103、S203において、制御部50が第1サブタンク42内の圧力値を所定値まで減圧すると上記したが、正確に所定値に減圧できない場合もある。そこで、制御部50に、当該所定値前後の圧力値に応じた、液面高さないし圧力値の変化幅の換算テーブルを設けてもよい。あるいは、制御部50は、第1サブタンク42内の圧力値と液面高さないし圧力値の変化幅との割合が、所定の閾値以上であるか否かを判定する構成としてもよい。
【0092】
また、送液ポンプ451の劣化の検知方法は、液面高さないし圧力値の変化幅が所定の閾値以上であるか否かを判定する方法に限られない。
具体的には、故障したインクジェット記録装置1における、各検知日の変化幅と稼働日数のデータから、最小二乗法により予め劣化傾向を算出する。制御部50は、当該劣化傾向に基づいて、算出した液面高さないし圧力値の変化幅から更に、送液ポンプ451の使用可能日数を算出する。そして、当該使用可能日数が所定日数となった場合、制御部50が送液ポンプ451の交換を催促する構成としてもよい。
【0093】
また、ポンプ検査処理は、例えば、印刷終了時のシャットダウン前等の決められたタイミングに実行できる。あるいは、ポンプ検査処理は、インクジェット記録装置1の稼働日であれば、必ず実行するようにしてもよい。また、インクジェット記録装置1が、逆止弁451a、451bに固着物が付着しにくいインクを吐出する場合は、ポンプ検査処理の実行頻度を低下させてもよい。
【0094】
また、制御部50は、複数の送液ポンプ451で並行してポンプ検査処理を実行してよい。これは、インクジェット記録装置1が、複数の送液ポンプ451を備え、当該複数の送液ポンプ451が、独立にポンプ検査処理を実行可能な流路を備える場合に限られる。他方、複数の送液ポンプ451を使用しており、かつ、独立にポンプ検査処理を実行可能な流路を有さない場合、制御部50は、順にポンプ検査処理を実行してもよい。あるいは、制御部50は、稼働日を分けてポンプ検査処理を実行してもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
24a インクジェットヘッド(液滴吐出部)
41 メインタンク(液体貯留部)
42 第1サブタンク(液体貯留部(上流側液体貯留部))
43 第2サブタンク(液体貯留部(下流側液体貯留部))
451 送液ポンプ
451a、451b 逆止弁
483 空圧ポンプ(圧力差発生部)
50 制御部(試験部、算出部)
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B