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特開2024-14799プロテーゼ支援組織修復システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014799
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】プロテーゼ支援組織修復システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/08 20060101AFI20240125BHJP
   A61F 2/40 20060101ALI20240125BHJP
   A61B 17/16 20060101ALI20240125BHJP
   A61B 17/06 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
A61F2/08
A61F2/40
A61B17/16
A61B17/06 510
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023117368
(22)【出願日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】63/391,116
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515246513
【氏名又は名称】バイオメット マニュファクチャリング,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227835
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン エー.ウィンズロウ
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097AA11
4C097AA20
4C097AA21
4C097BB01
4C097CC05
4C160BB18
4C160LL01
4C160LL07
4C160LL30
4C160LL59
(57)【要約】
【課題】プロテーゼ支援組織修復システム及び方法を提供する。
【解決手段】組織修復のためのシステム及び方法を図示し、説明する。このようなシステムの1つが、任意選択で、1つ又は複数の縫合糸、1つ又は複数の縫合糸と結合するように構成された縫合糸アンカー及びプロテーゼの何れか1つ又は組み合わせを備える。プロテーゼは、任意選択で、患者の骨に挿入するように構成できる。プロテーゼは、第1の面と、内部の少なくとも1つの通路と、を有することができる。少なくとも1つの通路は、第1の面にある第1の開口部と、第2の開口部とを有することができる。縫合糸アンカーは、第1の面又は少なくとも1つの通路のうちの1つ又は複数においてプロテーゼと結合するように構成できる。1つ又は複数の縫合糸は、少なくとも1つの通路を介してプロテーゼを通過するように構成できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織修復のためのシステムであって、前記システムは
1つ又は複数の縫合糸と、
前記1つ又は複数の縫合糸と結合するように構成された縫合糸アンカーと、
患者の骨に挿入するように構成されたプロテーゼであって、前記プロテーゼは、第1の面と、内部の少なくとも1つの通路と、を有し、前記少なくとも1つの通路は、前記第1の面における第1の開口部と、第2の開口部と、を有する、プロテーゼと、を備える、システムにおいて、
前記縫合糸アンカーは、前記第1の面又は前記少なくとも1つの通路の1つ又は複数において前記プロテーゼと結合するように構成され、前記1つ又は複数の縫合糸は、前記少なくとも1つの通路を介して前記プロテーゼを通過するように構成される、システム。
【請求項2】
案内要素であって、その第1の端部において前記1つ又は複数の縫合糸と結合するように構成された案内要素をさらに備え、前記第1の端部は、前記縫合糸アンカーと結合された前記1つ又は複数の縫合糸の第2の端部と対向し、前記案内要素は、前記少なくとも1つの通路を通る前記1つ又は複数の縫合糸の通過を容易にするように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記案内要素は、前記患者の前記骨を切断して貫通するように構成された骨切断針を備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記骨切断針は、前記1つ又は複数の縫合糸の前記第1の端部に圧着される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記骨切断針は、その長手方向軸線に対して一直線である、又は、湾曲している、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロテーゼが前記患者の前記骨に挿入されるとき、前記第1の面及び前記第1の開口部は、前記プロテーゼの近位側にあり、前記第2の開口部は、前記プロテーゼの外側面、内側面、前側面、後側面又は遠位側のうちの1つにある、請求項1から請求項5の何れか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記縫合糸アンカーは、変形不可能部材又は貫通路を有する変形可能部材の一方を備え、前記変形可能部材は、ロックプロファイルを有するアンカー塊を形成するために、前記プロテーゼと係合したときに折り畳み可能に構成される、請求項1から請求項6の何れか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロテーゼは、肩用プロテーゼアセンブリの上腕骨部品を備え、前記1つ又は複数の縫合糸は、前記肩用プロテーゼアセンブリの前記上腕骨部品に結合された前記縫合糸アンカーを介して、回旋腱板を前記骨に接続するように構成される、請求項1から請求項7の何れか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記肩用プロテーゼアセンブリの前記上腕骨部品は、ステム無しで前記骨に固定できるように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
組織を修復する方法であって、
患者の関節に面する骨を、前記骨の第1の部分を除去することによって、準備することと、
プロテーゼを前記骨に移植することと、
前記骨に移植された時点の前記プロテーゼを通して骨切断器具を案内し、前記骨の第2の部分を通る通路を生成することと、
1つ又は複数の縫合糸を前記プロテーゼ及び前記骨の第2の部分に通すことと、
前記1つ又は複数の縫合糸を前記プロテーゼに固定することと、
前記1つ又は複数の縫合糸を前記患者の組織に結合すること、を含む方法。
【請求項11】
前記骨切断器具は、前記プロテーゼ及び前記骨の第2の部分に前記1つ又は複数の縫合糸を通すように構成された針を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記骨の第2の部分は、前記プロテーゼの近位面の遠位側にあり、前記プロテーゼへの前記1つ又は複数の縫合糸の固定位置の遠位側にある、請求項10から請求項11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数の縫合糸を前記プロテーゼに固定することは、前記プロテーゼと係合したときにアンカーを折り畳むように変形させ、ロックプロファイルを有するアンカー塊を形成することを含む、請求項10から請求項12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記プロテーゼは、肩用プロテーゼアセンブリの上腕骨部品を備え、前記1つ又は複数の縫合糸を前記組織に結合することは、前記1つ又は複数の縫合糸を回旋腱板に通すことを含む、請求項10から請求項13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記肩用プロテーゼアセンブリの前記上腕骨部品は、ステム無しで前記骨に固定できるように構成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
組織修復のためのシステムであって、前記システムは、
1つ又は複数の縫合糸と、
患者の骨に挿入するように構成されたプロテーゼであって、前記プロテーゼは、内部に少なくとも1つの通路を有し、前記少なくとも1つの通路は、前記プロテーゼの第1の側に第1の開口部を有し、前記プロテーゼの第2の側に第2の開口部を有する、プロテーゼと、
前記1つ又は複数の縫合糸と結合するように構成され、前記プロテーゼに対して展開するように構成された縫合糸アンカーと、
前記患者の前記骨を切断して貫通するように構成された骨切断針であって、前記骨切断針は、前記少なくとも1つの通路を介して前記プロテーゼを通過するように、前記1つ又は複数の縫合糸を案内するように構成される、骨切断針と、を備える、システム。
【請求項17】
前記プロテーゼが前記患者の骨に挿入されるとき、前記第1の側は、前記プロテーゼの近位側であり、前記第2の側は、前記プロテーゼの外側面、内側面、前側面、後側面又は遠位側のうちの1つである、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記縫合糸アンカーは、変形不可能部材又は貫通路を有する変形可能部材の一方を備え、前記変形可能部材は、前記プロテーゼと係合したときに折り畳むことができ、ロックプロファイルを有するアンカー塊を形成するように構成される、請求項16から請求項17の何れか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記プロテーゼは、肩用プロテーゼアセンブリの上腕骨部品を備え、前記1つ又は複数の縫合糸は、前記肩用プロテーゼアセンブリの前記上腕骨部品に結合された前記縫合糸アンカーを介して回旋腱板を前記骨に接続するように構成される、請求項16から請求項18の何れか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記肩用プロテーゼアセンブリの前記上腕骨部品は、ステム無しで前記骨に固定できるように構成される、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、関節形成術中に実施することがある組織修復手術のための縫合糸アンカーの展開及び縫合糸の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
人体内では、組織の修復が必要になることがある。このような組織には、骨、筋肉、腱、靱帯及び軟骨が含まれる。膝、肩(又は他の関節)を強くひねるか、怪我するか、回転させると、組織が断裂するか、損傷する可能性がある。このほか、病気によって、関節の1つ又は複数の骨を1つ又は複数のプロテーゼ部品で置換することが必要になることがある。このような置換には、手術中に軟組織の修復が必要になることがある。このため、さまざまな状況で組織の外科的修復が必要になる場合がある。このような修復には縫合が含まれることがある。縫合を容易にするためにさまざまな縫合アセンブリが開発されており、それぞれの意図された目的に対して効果的である。それにもかかわらず、縫合を容易にするための組織修復アセンブリが依然として望まれている。
【0003】
ヒトの肩には、上腕(上腕骨)と肩甲骨(scapula)を接続する腱と筋肉の一群である回旋腱板が含まれている。回旋腱板の腱は肩関節と関節包を覆い、肩に安定性をもたらす。筋肉によって、肩を回転させることができる。回旋腱板の腱は、また、上腕骨頭(ボール)を取り囲み、腕を上げたときに上腕骨頭を関節窩(ソケット)内に保持するのに役立つ。このような腱は、また、腕を上げることができるように関節窩上で上腕骨を回転させるのに役立つ。回旋腱板が正常に機能しないと、上腕骨頭が関節窩から上方に移動してしまい、腕を上げることが困難になるか、不可能になる。
【0004】
従来の関節置換術又はリバース型関節置換術は、骨が罹患している場合及び/又は腱板が損傷しているか欠損している場合に使用される場合がある。これによって、ある程度の痛みが軽減され、肩関節が正常な運動学的機能に戻すことができる(例えば、患者は再び腕を頭上に上げることができる)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、縫合糸、アンカー、プロテーゼ及び他の構成要素を含むシステムを提供する。このようなシステム及び方法は、回旋腱板などの軟組織を縫合することを含め、関節を安定させるために使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、肩関節置換処置中に回旋腱板の肩甲下腱を上腕骨に再付着するなどの関節形成処置の特定の態様が、非常に複雑で時間がかかる可能性があることを認識した。特に、外科医は縫合糸で回旋腱板を上腕骨に固定する必要がある。
【0007】
外科医によっては、上腕骨に事前に穴を開けて回旋腱板を固定する者もいる。このような穴は縫合糸アンカーに使用することができる。このプロセスは、上腕骨プロテーゼを受容するために上腕骨の近位端を切除する前に実施することができる。このような穴あけは骨の質に依存するため、不正確になる可能性がある。この不正確さによって、上腕骨に複数の穴又は大きめの穴を開ける可能性がある。これは、プロセスが時間のかかるものであり、不必要に骨を除去するため、望ましくない。これとは別に、外科医によっては、上腕骨プロテーゼの受容するために上腕骨の近位端を準備するが、上腕骨プロテーゼの移植前に、上腕骨に作成された凹部内に縫合糸を配置する者もいる。このような縫合糸は、上腕骨の凹部内で上腕骨プロテーゼによって固定され、上腕骨プロテーゼに隣接する切除された上腕骨の近位端から延びることになる。この技術には潜在的な欠点がある。第一に、上腕骨プロテーゼを上腕骨に埋め込むプロセスによって、縫合糸が損傷したり切断されたりする可能性がある。縫合糸が損傷している場合は、上腕骨プロテーゼを取り外して縫合糸を交換する必要がある場合がある。これとは別に、縫合糸の固定が緩すぎる可能性があり、その結果、縫合糸が骨を通して引き抜かれたり、他の合併症が発生したりする可能性がある。
【0008】
本発明者は、内部に1つ又は複数の予め形成された通路を有するプロテーゼを認識している。このような1つ又は複数の通路は、縫合糸がプロテーゼに固定された状態で、プロテーゼ上の(骨に対して)所望の位置への縫合糸の通過を可能にするために使用することができる。この構成によって、時間を節約し、手術の複雑さを軽減することができる。これによって、他の利点のなかでも特に手術費用の削減が可能になる。
【0009】
さらなる利点は、本発明者によって認識されており、骨内の縫合糸によって使用される穴が、アンカーを骨内に取り付けた場合に使用するであろう穴よりも小さくてもよく、湾曲した骨切断針を(本明細書で考察するシステム及び方法で依然として使用する場合があるが)使用する必要がない可能性があり、システムは、プロテーゼと共にパッケージ化可能な縫合糸、アンカー、針又はこれらの何れか1つなどの部品を含むことができ、本発明のシステム及び方法には、骨内に縫合糸アンカーを配置する必要がないことが挙げられる。むしろ、本明細書で企図する縫合糸アンカーが必要とするのは、プロテーゼに対して展開されることのみである。
【0010】
上記の考察は、本特許出願の主題の概要を提供することを目的とするものである。本発明の排他的又は網羅的な説明を提供することを意図したものではない。以下の説明は、本特許出願に関する追加の情報を提供するためのものである。
【0011】
本明細書に開示するシステム及び方法をさらに充分に例示するために、実施例の非限定的なリストをここに提供する。
【0012】
例1は、組織修復のためのシステムを含む。システムは、任意選択で、1つ又は複数の縫合糸と、1つ又は複数の縫合糸と結合するように構成された縫合糸アンカーと、プロテーゼと、の何れか1つ又は組み合わせを備える。プロテーゼは、任意選択で、患者の骨に挿入するように構成できる。プロテーゼは、第1の面と、内部の少なくとも1つの通路と、を有することができる。少なくとも1つの通路は、第1の面の第1の開口部と、第2の開口部と、を有することができる。縫合糸アンカーは、第1の面又は少なくとも1つの通路の1つ又は複数においてプロテーゼと結合するように構成できる。1つ又は複数の縫合糸は、少なくとも1つの通路を介してプロテーゼを通過するように構成できる。
【0013】
例2は、案内要素であって、その第1の端部において1つ又は複数の縫合糸と結合するように構成された案内要素をさらに備え、第1の端部は、縫合糸アンカーに結合された1つ又は複数の縫合糸の第2の端部に対向し、案内要素は、少なくとも1つの通路を通る1つ又は複数の縫合糸の通過を容易にするように構成される、例1のシステムである。
【0014】
例3は、任意選択で、案内要素が、患者の骨を切断して貫通するように構成された骨切断針を備える、例2のシステムである。
【0015】
例4は、任意選択で、骨切断針が、1つ又は複数の縫合糸の第1の端部に圧着される、例3のシステムである。
【0016】
例5は、任意選択で、骨切断針が、その長手方向軸線に対して一直線である、又は、湾曲している、例3のシステムである。
【0017】
例6は、任意選択で、プロテーゼが患者の骨に挿入されるとき、第1の面及び第1の開口部は、プロテーゼの近位側にあり、第2の開口部は、プロテーゼの外側面、内側面、前側面、後側面又は遠位側のうちの1つにある、例1から例5の何れか1つのシステムである。
【0018】
例7は、任意選択で、縫合糸アンカーが、変形不可能部材又は貫通路を有する変形可能部材の一方を備え、変形可能部材は、ロックプロファイルを有するアンカー塊を形成するために、プロテーゼと係合したときに折り畳み可能に構成される、例1から例6の何れか1つのシステムである。
【0019】
例8は、任意選択で、プロテーゼが、肩用プロテーゼアセンブリの上腕骨部品を備え、1つ又は複数の縫合糸が、肩用プロテーゼアセンブリの上腕骨部品に結合された縫合糸アンカーを介して回旋腱板を骨に接続するように構成される、例1から例7の何れか1つのシステムである。
【0020】
例9は、肩用プロテーゼアセンブリの上腕骨部品が、ステム無しで骨に固定できるように構成される、例8のシステムである。
【0021】
例10は、組織を修復する方法であって、骨の第1の部分を除去することによって、患者の関節に面する骨を準備すること、プロテーゼを骨に埋め込むこと、骨に埋め込まれた時点のプロテーゼを通して骨切断器具を案内し、骨の第2の部分を通る通路を生成すること、1つ又は複数の縫合糸をプロテーゼ及び骨の第2の部分に通すこと、1つ又は複数の縫合糸をプロテーゼに固定すること、及び、1つ又は複数の縫合糸を患者の組織に結合することの何れか1つ又は組み合わせを任意選択で含む方法である。
【0022】
例11は、任意選択で、骨切断器具が、プロテーゼ及び骨の第2の部分に1つ又は複数の縫合糸を通すように構成された針を備える、例10の方法である。
【0023】
例12は、任意選択で、骨の第2の部分が、プロテーゼの近位面の遠位側にあり、プロテーゼへの1つ又は複数の縫合糸の固定位置の遠位側にある、例10から例11の何れか1つの方法である。
【0024】
例13は、任意選択で、1つ又は複数の縫合糸をプロテーゼに固定することが、ロックプロファイルを有するアンカー塊を形成するために、プロテーゼと係合したときに折り畳まれるようにアンカーを変形させることを含む、例10から例12の何れか1つの方法である。
【0025】
例14は、任意選択で、プロテーゼが、肩用プロテーゼアセンブリの上腕骨部品を備え、1つ又は複数の縫合糸を組織に結合することは、1つ又は複数の縫合糸を回旋腱板に通すことを含む、例10から例13の何れか1つの方法である。
【0026】
例15は、任意選択で、肩用プロテーゼアセンブリの上腕骨部品が、ステム無しで骨に固定できるように構成される、例14の方法である。
【0027】
例16は、組織修復のためのシステムである。システムは、任意選択で、1つ又は複数の縫合糸、プロテーゼ、縫合糸アンカー、及び、骨切断針の何れか1つ又は組み合わせを備えることができる。プロテーゼは、任意選択で、患者の骨に挿入するように構成できる。プロテーゼは、内部に少なくとも1つの通路を有することができる。少なくとも1つの通路は、プロテーゼの第1の側に第1の開口部を有し、プロテーゼの第2の側に第2の開口部を有することができる。縫合糸アンカーは、1つ又は複数の縫合糸と結合するように構成することができ、プロテーゼに対して展開するように構成される。骨切断針は、患者の骨を切断して貫通するように構成できる。骨切断針は、少なくとも1つの通路を介してプロテーゼを通過するように1つ又は複数の縫合糸を案内するように構成できる。
【0028】
例17は、任意選択で、プロテーゼが患者の骨に挿入されるとき、第1の側がプロテーゼの近位側であり、第2の側がプロテーゼの外側面、内側面、前側面、後側面又は遠位側のうちの1つである、例16のシステムである。
【0029】
例18は、任意選択で、縫合糸アンカーが、貫通路を有する変形可能部材を備え、変形可能部材は、ロックプロファイルを有するアンカー塊を形成するために、プロテーゼと係合したときに折り畳むことができるように構成される、例16から例17の何れか1つのシステムである。
【0030】
例19は、任意選択で、プロテーゼが肩用プロテーゼアセンブリの上腕骨部品を備え、1つ又は複数の縫合糸が、肩用プロテーゼアセンブリの上腕骨部品に結合された縫合糸アンカーを介して回旋腱板を骨に接続するように構成される、例16から例18の何れか1つのシステムである。
【0031】
例20は、肩用プロテーゼアセンブリの上腕骨部品が、ステム無しで骨に固定できるように構成される、例19のシステムである。
【0032】
例21は、本明細書に開示する特徴の何れか1つ又は組み合わせを含む、上記のシステム及び方法の例の何れか1つ又は組み合わせである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本開示の上記の特徴及び利点をはじめとする特徴及び利点と、この特徴及び利点を達成する方法は、添付の図面と併せて以下の例の説明を参照することによってさらに明らかとなり、本開示自体がさらによく理解されるであろう。
図1図1は、患者の肩関節の解剖図である。
図2図2は、患者の体内に取り付けられ、肩関節の少なくとも一部を形成するプロテーゼアセンブリの概略図である。
図3図3は、本出願の一例による、内部に1つ又は複数の通路を有するプロテーゼアセンブリの上腕骨インプラント部分を示す。
図3A図3Aは、本出願の一例による、内部に1つ又は複数の通路を有するプロテーゼアセンブリの上腕骨インプラント部分を示す。
図3B図3Bは、本出願の一例による、内部に1つ又は複数の通路を有するプロテーゼアセンブリの上腕骨インプラント部分を示す。
図4図4は、本出願の別の例による、内部に1つ又は複数の通路を有するプロテーゼアセンブリの上腕骨インプラント部分を示す。
図4A図4Aは、本出願の別の例による、内部に1つ又は複数の通路を有するプロテーゼアセンブリの上腕骨インプラント部分を示す。
図4B図4Bは、本出願の別の例による、内部に1つ又は複数の通路を有するプロテーゼアセンブリの上腕骨インプラント部分を示す。
図5図5は、本出願の一例による、1つ又は複数の縫合糸、案内要素、プロテーゼアセンブリの一部及び縫合糸アンカーを含む、組織修復及び/又は関節置換のためのシステムの概略図である。
図6図6は、本出願の一例による、組織修復及び/又は関節置換のための別のシステムの概略図である。
図7A図7Aは、本出願の一例による、骨切断針を備える案内要素の別の例を示す。
図7B図7Bは、本出願の一例による、骨切断針を備える案内要素の別の例を示す。
【0034】
対応する参照文字が、いくつかの図を通して対応する部分を示す。本明細書に記載する例示は、本開示の例を示すものであり、このような例示を、いかなる形であっても本開示の範囲を限定するものとして解釈するべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面を参照して図示し説明する本開示の例を説明する際、明確にするために特定の用語を使用する。しかし、本開示は、本明細書で使用する特定の用語又は図に限定されることを意図するものではなく、各特定の用語にはあらゆる技術的等価物が含まれることを理解されたい。
【0036】
本開示は、靱帯などの軟組織を固定するための関節置換処置において使用することができるシステム及び方法を対象とする。関節置換処置は、解剖学的肩関節形成術又はリバース型肩関節形成術(RSA)処置などの全体的又は部分的な処置であってもよい。本発明の方法、装置及びシステムについて、肩関節形成術に関して説明しているが、このような方法、装置及びシステムは、膝、股関節、足首などのためのステムなどの他の関節に使用することができる。
【0037】
図1は、いくつかの靱帯が取り除かれた肩関節100を示す。図示されているように、肩関節100は、上腕骨102と、上腕骨102の上腕骨頭110と相互作用するためのソケット108を備えた関節窩106を有する肩甲骨104と、を含む。上腕骨頭110は、肩関節100の正常な運動を可能にするためにソケット108内で関節接合することができる。上腕骨頭110をソケット108内に維持するための重要な靱帯が、回旋腱板114である。回旋腱板114が損傷すると(例えば、破れるか劣化すると)、正常な肩関節機能が損なわれることがある。回旋腱板114が正しく機能していないため、正常な運動中に上腕骨頭110が関節窩106から外れてしまうことがある。これとは別に、疾患によって、上腕骨頭110及び/又は肩甲骨104の骨又は軟組織が変性する可能性がある。このような状態は、痛みを引き起こしたり、及び/又は肩関節機能に悪影響を及ぼしたりする可能性がある。典型的には、このような場合には外科的介入が必要になる場合がある。外科的介入によって、回旋腱板114の機能を修復することができる。肩関節100から骨を除去しなければならない場合には、処置中に回旋腱板114を上腕骨102から取り外し、その後再び上腕骨102に取り付けなければならない。この外科的プロセスは複雑で時間がかかることがある。
【0038】
図2は、肩関節100に取り付けられたプロテーゼアセンブリ116の概略図を示す。プロテーゼアセンブリ116は、上腕骨インプラント部品118(本明細書では、上腕骨部品、上腕骨インプラント部品又は上腕骨プロテーゼ部品、部品などとも称する。)及びヘッド部品120を備えることができる。
【0039】
上腕骨インプラント部品118は、上腕骨102の近位端部分122に形成された凹部119に篏合することができる。図2の実施形態(及び実際には図3から図4Bの実施形態)では、プロテーゼアセンブリ116のステムのない設計又は無ステム設計を示す。このため、上腕骨インプラント部品118はステムと結合しないが、これは肩関節全置換処置では典型的なものであろう。ステムのない上腕骨インプラント部品118は、部分的肩関節置換処置に使用することができる。本明細書に開示するシステム及び方法は、肩関節全置換処置を含む任意の適用可能な関節置換処置と共に使用することがあり得ると考えられる。このため、本出願の概念は、本明細書に提供する例によって限定されない。同じように、本明細書で使用する「骨」という用語は上腕骨に限定されず、例えば、肩甲骨を含む身体の任意の適用可能な骨を含むことがある。
【0040】
図2に示すように、上腕骨インプラント部品118の近位側124が、ヘッド部品120と相互作用することができる。ヘッド部品120は、嵌合テーパ機構などの既知の機構を使用して上腕骨インプラント部品118と結合することができる。ヘッド部品120は、半球形、あるいは(関節置換処置中に除去される)上腕骨頭部を複製するような形状とすることができる。
【0041】
図3から図3Bは、上腕骨インプラント部品218の一例を示す。上腕骨インプラント部品218(実際には、図4から図4Bの上腕骨インプラント部品318)は、インディアナ州ワルシャワのZimmer Biomet Inc.によって市販され製造されているSidus(登録商標)のStem-Free Shoulderプロテーゼ又はComprehensive(登録商標)のNano Stemless Shoulderの方法で構成することができる。図2から図4Bに示す上腕骨インプラント部品の設計は、純粋に例示的なものであり、単に実務者の理解を容易にするために提供している。
【0042】
しかし、上腕骨インプラント部品218は、本明細書でさらに考察するように、上記で参照した市販製品から変更されている。図3に示すように、上腕骨インプラント部品218は、近位面204を有する近位側202と、結合部品208と、本体210と、フィン214を含む遠位固定機構212と、を備える。図3Aは、本体210と、フィン214を有する遠位固定機構212と、を備えた上腕骨インプラント部品218の遠位側を示す。図3Bは、近位面204を備える近位側202を示す。
【0043】
「近位」という用語は、上腕骨インプラント部品218が骨に移植されるときの側及び/又は表面の一般的な向きを指す。このため、「近位」とは、概ね患者の頭部の方向又は頭部へ向かう方向若しくは場所を指し、「遠位」とは近位とは反対の方向、即ち、患者の頭部から離れる方向を指す。本明細書で使用する場合、用語「前方」及び「後方」には、一般に理解されている解剖学的解釈が与えられるべきである。このため、「後方」とは、概ね患者の背後に向かう場所又は方向を指す。同じように、「前方」とは、概ね患者の正面に向かう場所又は方向を指す。このため、「後方」は「前方」の反対方向を指す。同じように、「内側」及び「外側」という用語には、一般に理解されている解剖学的解釈が与えられるべきである。「内側」とは、(移植された向きにある場合)プロテーゼの内方を向いた部分(内側部分)を指し、「外側」は外側部分又は外側を向いた部分を指す。「内側」とは「外側」の反対方向を指す。
【0044】
図3から図3Bに示すように、上腕骨インプラント部品218はこのほか、1つ又は複数の通路216を備えることができる。1つ又は複数の通路216は、第1の開口部220A、220B(図3Bのみ)及び第2の開口部222A、222B(図3及び図3A)を備えることができる。
【0045】
1つ又は複数の通路216の第1の開口部220A、220Bは、例えば、近位面204の近位側202に位置することができる。しかし、他の例によれば、第1の開口部は、上腕骨インプラント部品218の他の側上にあることも、あるいは、他の部品内にあることもあり得る。第2の開口部222A、222Bは、上腕骨インプラント部品218の外側側面、内側側面、前方側面、後方側面又は遠位側の何れか1つ又はその組み合わせに位置することができる。図3及び図3Aに示すように、第2の開口部222A、222Bは、フィン214の下側面など、上腕骨インプラント部品218の側面224及び遠位側226の両方にあってもよい。
【0046】
1つ又は複数の通路216は、第1の開口部220A、220B(図3Bのみ)から第2の開口部222A、222B(図3及び図3A)まで上腕骨インプラント部品218を通って延びることができる。1つ又は複数の通路216は、本明細書でさらに考察するように、案内要素を方向付けるように構成することができ、縫合糸を受容することができる。
【0047】
図3から図3Bの実施形態は、本体210から延びる結合部品208を有する上腕骨インプラント部品218のセメントレス設計を示す。近位側202は、相互接続されたフィン214によって形成することができる。フィン214は、本体210から延在することができる固定機構212の一部とすることができる。
【0048】
図4から図4Bは、上腕骨インプラント部品318のセメント結合設計を示す。上腕骨インプラント部品318は、上腕骨インプラント部品318とほぼ同じ方法で構築することができるが、近位面304を備える近位側302をフィン314の一部によって形成することができる。
【0049】
図4から図4Bに示すように、上腕骨インプラント部品318はこのほか、1つ又は複数の通路316を備えることができる。1つ又は複数の通路316は、第1の開口部320A、320B(図4Bのみ)及び第2の開口部322A、322B(図4及び図4A)を備えることができる。
【0050】
1つ又は複数の通路316の第1の開口部320A、320Bは、例えば、近位面304の近位側302(フィン314の上部)に位置することができる。しかし、他の例によれば、第1の開口部320A、320Bは、上腕骨インプラント部品318の他の側上にあることも、他の部品内にあることもあり得る。第2の開口部322A、322Bは、上腕骨インプラント部品318の外側側面、内側側面、前方側面、後方側面若しくは遠位側の何れか1つ又は組み合わせに位置することができる。図4及び図4Aに示すように、第2の開口部322A、322Bは、フィン314の下側面など、上腕骨インプラント部品318の側面324と遠位側326の両方にあってもよい。
【0051】
1つ又は複数の通路316は、第1の開口部320A、320B(図4Bのみ)から第2の開口部322A、322B(図4及び図4A)まで上腕骨インプラント部品318を通って延びることができる。1つ又は複数の通路316は、案内要素(又は器具)を方向付けるように構成することができ、本明細書でさらに考察するように、縫合糸を受容することができる。
【0052】
図5は、上腕骨インプラント部品418の一部と共に患者の骨400の断面を示す。上腕骨インプラント部品418は、これまでに考察した上腕骨インプラント部品118、218又は318の何れかとほぼ同じように構成できる。図5は、一例によれば、上腕骨102を構成することができる骨400の近位端402を示す。骨400は、海綿骨404及び皮質骨406を含むことができる。
【0053】
図5は、関節置換術に関連する組織修復のためのシステム408を示す。システム408は、上腕骨インプラント部品418、1つ又は複数の縫合糸410、案内要素412及び縫合糸アンカー414を備えることができる。上腕骨インプラント部品418は、これまでに考察し、図3から図4Bに示したものと同様の1つ又は複数の通路416を備えることができる。上腕骨インプラント部品418は、第1の開口部420と、第2の開口部422と、第1の側425(骨400に移植されるときの近位側)における第1の面424(例えば、図5に示すように骨400内に移植されるときの近位面)をさらに備えることができる。
【0054】
1つ又は複数の通路416の第1の開口部420は、先の例で考察したように、第1の面424にあってもよい。第2の開口部422は、上腕骨インプラント部品418の第2の側427上の第1の開口部420の遠位側にあってもよい。第2の開口部422は、第1の開口部420に対して(周縁部における)外側、内側、前方側又は後方側のうちの1つ又は複数にあってもよい。第1の開口部420及び第2の開口部422の位置を、1つ又は複数の縫合糸410で修復される軟組織の解剖学的位置に基づいて、所望どおりにすることができる。
【0055】
1つ又は複数の通路416は、1つ又は複数の縫合糸410及び案内要素412(又は代替器具)を案内することができる。案内要素412は、1つ又は複数の通路416を通る1つ又は複数の縫合糸410の通過が容易となるように構成できる。さらに、図5の例に示すように、案内要素412は、骨切断針426として構成することができる。骨切断針426は、骨400を切断し、その中に通路428を形成するように構成できる。この通路428は、近位端402の遠位側に開口部を有することができる。通路428は、骨400の近位端402の遠位の位置において、1つ又は複数の縫合糸410が、1つ又は複数の通路416から骨400の外側へ向かって通過することを容易にすることができる。
【0056】
通路428は、上腕骨インプラント部品418の移植後に、1つ又は複数の通路416の案内補助を用いて形成することができる。図5は、案内要素412を骨切断針426として示すが、他の実施形態によれば、骨を切断したり、及び/又は縫合糸を通過させたりすることができる別の1つ又は複数のツールが利用されてもよい。例えば、案内要素412は、1つ又は複数の通路416を通じて骨400まで案内され、通路428を形成することができるドリルであることがあり得る。次いで、縫合糸通しなどの第2の要素を利用して、1つ又は複数の通路416及び通路428を通る1つ又は複数の縫合糸410の通過を容易にしてもよい。
【0057】
設けられた1つ又は複数の通路416及び通路428の構成は単に例示的なものであり、他の例では、他の角度、サイズ、形状、数などが考えられる。
【0058】
1つ又は複数の縫合糸410は、第1の端部430において骨切断針426に結合することができ、第2の端部432において縫合糸アンカー414に結合することができる。骨切断針426は、1つ又は複数の縫合糸410の第1の端部430に圧着するか、他の方法で結合することができる。第2の端部432は、いくつかの例によれば、単一の縫合糸を利用することができるように、ループであってもよい。異なるサイズ、タイプ、色及び形状の複数の縫合糸が考えられる。当技術分野で知られている任意の種類の縫合糸(例えば、幅広帯、リボン、丸糸、メッシュ、編組、モノフィラメント、金属、ポリマーなど)を利用することができる。このため、システム408は、複数装填された縫合糸又は単一装填された縫合糸を利用することができる。
【0059】
縫合糸アンカー414は、当技術分野で知られている任意の適切な構造を備えることができる。このため、縫合糸アンカー414は、患者の組織内へ/患者の組織に対して展開する際に実質的に変形しないように、硬質の側面を備えることができる(例えば、当技術分野で知られているボタン又は別の特徴として構築することができる)。図5に示すように、縫合糸アンカー414は、「柔軟な」ものとすることができ(例えば、布地又は縫合糸などの比較的柔軟な材料から作成することができ)、このため、縫合糸の力の下で、縫合糸アンカー414は撓んだり、曲がったり、及び/又は変形したりすることができる。いくつかの例では、縫合糸アンカー414は、名目上、円筒、あるいは内部を通る通路を備えた円形の断面又は細長い断面を有する管のような形状にすることができる。しかし、縫合糸アンカー414は、(図5に示すように)曲げるか、(図6に示すように)結ぶか、又は、他の方法で形状を変更するなどによって、展開中に変形するように構成できる。言い換えれば、縫合糸アンカー414は、内部に通路を有する変形可能な部材を備えることができる。この変形可能な部材は、ロックプロファイルを有するアンカー塊を形成するために、プロテーゼと係合したときに折り畳むことができる。図5に示すように、縫合糸アンカー414のロックプロファイルは、第1の面424及び/又は1つ又は複数の通路416のうちの1つ又は複数の一部に係合して固定できるように構成できる。縫合糸アンカー414は、図5に示すように、1つ又は複数の縫合糸410を安定させ、保持するために縫合糸アンカー414を展開する前に、挿入器又は他の器具を必要とせずに、最初に第1の面424又は別の場所に自由に取り付けることができる。これによって、縫合糸アンカー414のための専用の展開器具の必要性がなくなる。図5の例によれば、1つ又は複数の縫合糸410及び縫合糸アンカー414は、米国特許出願公開第2014/0330311及び2014/0046368号明細書に記載されているような自動ロック式ループ縫合糸アセンブリ及び/又は調節可能ループ縫合糸アセンブリであってもよく、これらの米国特許出願公開の開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。自動ロック式ループ縫合糸及び/又は調節可能ループ縫合糸の追加の例が、出願人のZipLoop(登録商標)及び/又はインディアナ州ワルシャワのZimmer Biomet Inc.によって製造され、市販されているToogleLoc(商標)技術に例示されている。
【0060】
これまで考察したように、本明細書ではこのほか、システムで利用される1つ又は複数のアンカーが、ZipLoop(登録商標)のように「柔軟」でない場合があることが考えられる。むしろ、このようなアンカーは、硬質プラスチック、金属合金などの実質的に変形しない材料から作成することができる。このため、いくつかの例によれば、アンカーは、実質的に不変の断面又は他の幾何学的形状を有することができる。このような変形不可能なアンカーは、管状又は他の形状のアンカーによって形成された中空の内部を有することができる。
【0061】
図5に単一の縫合糸アンカーを示しているが、いくつかの実施形態では、追加のアンカー(例えば、2つ、3つ、4つ又はそれ以上)を上腕骨インプラント部品418と共に使用してもよいことが考えられる。いくつかの例によれば、縫合糸アンカーは、互いに異なるサイズ/形状であってもよく、かつ/又は、互いに異なる材料で形成されてもよい。
【0062】
システム408は、1つ又は複数の縫合糸と結合するように構成できる縫合糸アンカー414を備える。上腕骨インプラント部品418(プロテーゼの一例)は、骨400に挿入するように構成できる。縫合糸アンカー414は、1つ又は複数の第1の面424、1つ又は複数の通路416又は別の場所において上腕骨インプラント部品418と結合するように構成できる。1つ又は複数の縫合糸410は、1つ又は複数の通路416を介して上腕骨インプラント部品418を通過するように構成できる。1つ又は複数の縫合糸410は、縫合糸アンカー414が上腕骨インプラント部品418に対して展開されるときに、縫合糸アンカー414を介して上腕骨インプラント部品418、ひいては骨400に固定することができる。
【0063】
1つ又は複数の縫合糸410は、正常な肩機能を回復するために、回旋腱板と係合して(図1を参照)、回旋腱板を所定の位置に係止し、骨400に対して固定することができる。このため、1つ又は複数の縫合糸410は、回旋腱板の治癒中に必要な張力及び/又は拘束を提供することができる。1つ又は複数の縫合糸410の長さは、12インチ以上48インチ以下とすることができる。しかし、必要に応じて他の長さも考えられる。
【0064】
1つ又は複数の縫合糸410は、上腕骨インプラント部品418の一部又は全体、あるいは一部のみの周囲に間隔を置いて配置することができる。外科医が、特定の場所に沿って1つ又は複数の縫合糸410を取付けることを選択することができ、1つ又は複数の通路416のうちの特定のものを利用しなくてもよい。外科医が、軟組織に充分な量の張力を付加するために、1つ又は複数の縫合糸410(及び/又は1つ又は複数の縫合糸アンカー414)のうちの特定のものにさまざまな張力を付加することを選択してもよい。
【0065】
動作中、上記で考察したように、骨400は、その内部に凹部を形成することによって、上腕骨インプラント部品418を受容するように準備されるであろう。上腕骨インプラント部品418は、骨400に埋め込まれるであろう。上腕骨インプラント部品418が移植された時点で、骨切断針426は、1つ又は複数の通路416によって案内されて、通路428を形成するであろう。1つ又は複数の縫合糸410は、骨切断針426を用いて、1つ又は複数の通路416及び通路428を通過するであろう。次いで、骨切断針426は、1つ又は複数の縫合糸410との結合から取り外すことができる。次いで、1つ又は複数の縫合糸410は軟組織に結合され、所望に応じて張力をかけることができ、このプロセスによって、縫合糸アンカー414を展開して上腕骨インプラント部品418に対して固定することができる。このようにして、1つ又は複数の縫合糸410を介して軟組織を骨400に(縫合糸アンカー414によって係合された上腕骨インプラント部品418を介して)固定することができる。
【0066】
図6は、上腕骨インプラント部品418と、1つ又は複数の縫合糸410と、案内要素412と、縫合糸アンカー414と、を備えるシステム408を示す。図6図5とは、第1の面424の一部ではない専用の面、面429によって縫合糸アンカー414が捕捉されている点が異なる。このため、面429は、第1の面424から凹むことができる(カウンタボアによって形成される)。凹んだ面429を備えた座ぐりが示されているが、縫合糸アンカー414を固定するために、側面、専用面又は突出面などの代替面を利用することもあり得る。さらに、図6の縫合糸アンカー414は、ロックプロファイルとして結び目構造500に変形される。他の例によれば、結び目構造500は、1つ又は複数の通路416の側面と係合することに加えて、第1の側425に隣接する面429と少なくとも部分的に係合することができる。図5又は図6に示していないが、1つ又は複数の通路416は、所望に応じて、縫合糸アンカー414による係合を容易にするように構成できる(例えば、1つ又は複数の通路416に制限区画、座ぐりなどを設けることができる)。案内要素412は、骨切断針ではなく、挿入器502であってもよい。骨内に通路を形成するためのドリルなどの第2の案内要素を図6には示していない。「第1の面」及び「第1の側面」という用語は、特に指定しない限り、近位面及び近位側面に限定される必要はないと考えられる。むしろ、このような用語は別の面(例えば、凹面、隆起面、専用面、側面、遠位面など)であってもよく、インプラントのどの側面であってもよい。
【0067】
図7A及び図7Bは、いくつかの例に従って利用することができる湾曲した骨切断針626の例を示す。骨切断針626は、長手方向軸線LAに対して湾曲している。骨切断針626は、(図示しない)1つ又は複数の縫合糸に圧着接続するように構成できる。
【0068】
本発明の主題の性質を説明するために説明し、図示した部品及び方法の段階の詳細、材料、及び配置の他のさまざまな変更が、従属請求項に記載している本発明の主題の原理及び範囲から逸脱することなく、可能であることが当業者には容易に理解されよう。例えば、当業者には理解されるように、方法のステップ又は段階の順序は、上記のものから変更することができる。
【0069】
このほか、さまざまな従属請求項と、例と、従属請求項及び例に記載された特徴とは、上記及び/又は最初の請求項に提示したものとは異なる方法で組み合わせることができることが理解されよう。例えば、上記の例の任意の特徴を、記載した他の例と共有することができたり、及び/又は特定の従属請求項の特徴を、当業者には理解される組み合わせで、別の従属請求項又は独立請求項と共有したりしてもよい。
【0070】
上記の詳細な説明には、詳細な説明の一部を形成する添付図面への参照が含まれている。図面は、本発明を実施することができる特定の実施形態を例示として示している。このような実施形態はこのほか、本明細書では「例」と呼ばれる。このような例には、図示するか説明した要素に加えた要素が含まれることがある。しかし、本発明者らはこのほか、図示するか説明した要素のみが提供される例を考慮している。さらに、本発明者らはこのほか、本明細書に図示するか説明した特定の例(又はその1つ又は複数の態様)に関して、あるいは他の例(又はその1つ又は複数の態様)に関して、図示するか説明した要素(又はその1つ又は複数の態様)の任意の組み合わせ又は置換を使用する例を考慮している。
【0071】
この文書と、参照によって組み込まれる他の文書との間で使用法が一致しない場合は、この文書での使用法が優先される。この文書では、「含む(including)」及び「このなかで(in which)」という用語は、「具備する、備える(comprising)」及び「ここで(wherein)」というそれぞれの用語の平易な英語の同等物として使用する。このほか、以下の請求項では、「含む」及び「具備する、備える」という用語は制約のないものであり、即ち、請求項においてこのような用語の後に列挙される要素のほかの要素を含むシステム、装置、物品、組成物、配合物又はプロセスが、依然としてその請求項の範囲内に含まれるものと考えられる。
【0072】
この文書では、特許文書で一般的であるように、「a」又は「an」という用語を、「少なくとも1つ」又は「1つ又は複数」という任意の他の用例又は用法とは無関係に、1つ又は複数を含むために使用する。この文書では、「又は」という用語を、特に明記しない限り、「A又はB」が「AであるがBではない」、「BであるがAではない」及び「A及びB」を含むように、非排他的な「又は」を指すように使用する。この文書では、「含む」及び「このなかで」という用語を、「具備する、備える」及び「ここで」というそれぞれの用語の平易な英語の同等物として使用する。このほか、以下の請求項では、「含む」及び「具備する、備える」という用語は制約のないものであり、即ち、請求項においてこのような用語の後に列挙される要素のほかの要素を含むシステム、装置、物品、組成物、配合物又はプロセスが、依然としてその請求項の範囲内に含まれるものと考えられる。さらに、以下の請求項では、「第1」、「第2」、「第3」などの用語を単にラベルとして使用しており、それぞれの物体に数値的要件を課すことを意図したものではない。
【0073】
上記の説明は例示を目的としたものであり、限定を目的とするものではない。例えば、上記の例(又はその1つ又は複数の態様)は、互いに組み合わせて使用されてもよい。当業者であれば上記の説明を検討すれば、他の実施形態を使用することもできる。要約を、読者が技術的開示の性質を迅速に確認することができるようにするために、37C.F.R.§1.72(b)に準拠するように提供する。要約は、請求項の範囲又は意味を解釈するために使用されるものでも、制限するために使用されるものではないことを理解したうえで提出する。このほか、上記の詳細な説明では、開示を合理化するためにさまざまな特徴をまとめる場合がある。これは、請求されていない開示の特徴が何れかの請求項に必須であることを意図していると解釈されるべきではない。むしろ、発明の主題が、開示した特定の実施形態の全特徴にあるわけではない。このため、以下の請求項は、例又は実施形態として詳細な説明に組み込まれ、各請求項は別個の実施形態として独立しており、このような実施形態が、さまざまな組み合わせ又は順列で互いに組み合わせ可能であることが考慮される。本発明の範囲は、添付の請求項を、このような請求項に権利を与える均等物の全範囲と共に参照して判定されるべきである。
図1
図2
図3
図3A
図3B
図4
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
【外国語明細書】