(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024147997
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】テープフィーダ
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
H05K13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060836
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 健一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 彰祥
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直也
(72)【発明者】
【氏名】門川 錠二
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353HH12
5E353HH13
5E353HH25
5E353HH26
5E353HH30
5E353HH32
5E353HH33
5E353HH34
5E353HH36
5E353QQ30
(57)【要約】
【課題】キャリアテープの形状を適正に矯正することができるとともに、キャリアテープを搬送するときの支障を抑制することができるテープフィーダを提供する。
【解決手段】テープフィーダは、リールから引き出されたキャリアテープを所定の部品供給位置まで案内するテープ搬送路と、テープ搬送路に沿ってキャリアテープを搬送するテープ搬送機構と、テープ搬送路に、凹曲面を含む第一矯正面と、第一矯正面に対向するように凸曲面を含む第二矯正面を設け、第一矯正面の搬送方向の上流側端部、下流側端部および第二矯正面とでキャリアテープを屈曲させて案内する屈曲搬送路と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールから引き出されたキャリアテープを所定の部品供給位置まで案内するテープ搬送路と、
前記テープ搬送路に沿って前記キャリアテープを搬送するテープ搬送機構と、
前記テープ搬送路に、凹曲面を含む第一矯正面と、前記第一矯正面に対向するように凸曲面を含む第二矯正面を設け、前記第一矯正面の搬送方向の上流側端部、下流側端部および前記第二矯正面とで前記キャリアテープを屈曲させて案内する屈曲搬送路と、
を備えるテープフィーダ。
【請求項2】
前記第一矯正面の前記上流側端部および前記凸曲面に接する上流仮想平面と、前記凸曲面および前記第一矯正面の前記下流側端部に接する下流仮想平面との成す矯正角度が4°~11°の範囲にある、請求項1に記載のテープフィーダ。
【請求項3】
前記矯正角度が6°~9°の範囲にある、請求項2に記載のテープフィーダ。
【請求項4】
前記第一矯正面は、前記凸曲面の搬送方向の中央よりも下流側に位置する下流側凹曲面を含むとともに、前記凸曲面の搬送方向の中央よりも上流側に位置する上流側面を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のテープフィーダ。
【請求項5】
前記下流側凹曲面の上流側端部および下流側端部を結ぶ第一仮想平面と、前記凸曲面との間の第一離間距離は、前記テープフィーダで使用される複数種類の前記キャリアテープの最大厚み寸法の1.5倍以上あり、
前記上流側面と、前記凸曲面との間の第二離間距離は、前記最大厚み寸法の1.8倍以上ある、
請求項4に記載のテープフィーダ。
【請求項6】
前記第一離間距離が前記最大厚み寸法の1.9倍以上あり、前記第二離間距離が前記最大厚み寸法の2.2倍以上ある、請求項5に記載のテープフィーダ。
【請求項7】
前記屈曲搬送路は、少なくとも一部に紙が用いられた紙製キャリアテープの形状を矯正するとともに、前記紙が用いられない非紙製キャリアテープの形状を矯正しない、請求項1に記載のテープフィーダ。
【請求項8】
前記非紙製キャリアテープは、部品を収容するキャビティが形成された中央部、および前記中央部の両側面に位置して前記中央部よりも厚み寸法が小さい二つの側縁部を有する樹脂製エンボステープを含み、
前記屈曲搬送路は、
前記テープ搬送路に、溝部を挟んで互いに離隔する二つの前記第一矯正面と、前記第二矯正面を設けて構成され、
前記紙製キャリアテープの全厚み寸法が通過するとともに、前記樹脂製エンボステープの二つの前記側縁部が通過しつつ前記中央部が前記溝部を通過することを許容する、
請求項7に記載のテープフィーダ。
【請求項9】
前記紙製キャリアテープは、部品を収容するキャビティおよび搬送用の送り穴がテープ幅方向に並んで設けられ、
前記屈曲搬送路は、前記送り穴に近い側の一方の前記第一矯正面の一部が変形される、
請求項7または8に記載のテープフィーダ。
【請求項10】
前記テープフィーダは、前記キャリアテープを構成するベーステープからカバーテープを剥離する剥離部を備え、
前記第二矯正面をもつ部材は、剥離された前記カバーテープを通過させるカバーテープ通路を有する、
請求項1に記載のテープフィーダ。
【請求項11】
前記カバーテープ通路は、前記カバーテープを摺動可能に通過させる回転自在なガイドローラが設けられる、請求項10に記載のテープフィーダ。
【請求項12】
前記キャリアテープは、前記リールに巻回されることによって巻き癖がつき、
前記屈曲搬送路は、前記キャリアテープを前記巻き癖の逆方向に屈曲させることによって前記巻き癖を軽減した形状に矯正する、
請求項1~3、7、8、10、11のいずれか一項に記載のテープフィーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、キャリアテープを用いて部品を供給するテープフィーダに関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンが形成された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。対基板作業機の代表例として、部品を基板に装着する装着作業を実施する部品装着機がある。多くの部品装着機は、リールから引き出されたキャリアテープを所定の部品供給位置まで送って部品を供給するテープフィーダを備える。キャリアテープは、部品を収容するキャビティをもつベーステープ、およびベーステープに剥離可能に接着されてキャビティを覆うカバーテープを含んで構成される。キャリアテープは、リールに巻回されることによって巻き癖がつく。この巻き癖によってテープフィーダが部品を供給するときの信頼性が低下するおそれ、および部品装着機の装着作業がエラーになるおそれが生じる。この種のキャリアテープの形状の矯正に関する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された供給装置は、媒体を上部に配置したキャリアテープのリールを受ける受け部と、後続のピッキング工程のためにリールから媒体を提供する提供場所と、キャリアテープが提供場所に移動する際に媒体を永久に変形させる第1の湾曲部を含む媒体矯正装置と、を備える。これによれば、キャリアテープ上に位置する媒体を曲げ戻してカールを取り、矯正することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された技術をテープフィーダに応用する場合に、湾曲部の形状がキャリアテープの性状に適合していないと、不足矯正や過剰矯正が生じ得る。この場合、キャリアテープのキャビティが変形した状態で部品供給位置(提供場所)に搬送されることになり、部品採取具がキャビティから部品を採取できない採取エラーが生じやすくなる。また、湾曲部は、キャリアテープに負荷をかけてその形状を矯正するので、負荷の分だけキャリアテープの所要搬送力が増加する。したがって、矯正時の負荷が過大となって、キャリアテープの搬送に支障が生じ易くなる。
【0006】
それゆえ、本明細書では、キャリアテープの形状を適正に矯正することができるとともに、キャリアテープを搬送するときの支障を抑制することができるテープフィーダを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、リールから引き出されたキャリアテープを所定の部品供給位置まで案内するテープ搬送路と、前記テープ搬送路に沿って前記キャリアテープを搬送するテープ搬送機構と、前記テープ搬送路に、凹曲面を含む第一矯正面と、前記第一矯正面に対向するように凸曲面を含む第二矯正面を設け、前記第一矯正面の搬送方向の上流側端部、下流側端部および前記第二矯正面とで前記キャリアテープを屈曲させて案内する屈曲搬送路と、を備えるテープフィーダを開示する。
【0008】
なお、本明細書では、出願当初の請求項7において「請求項1に記載のテープフィーダ」を「請求項1~6のいずれか一項に記載のテープフィーダ」に変更した技術的思想、出願当初の請求項10において「請求項1に記載のテープフィーダ」を「請求項1~9のいずれか一項に記載のテープフィーダ」に変更した技術的思想、および出願当初の請求項12において「請求項1~3、7、8、10、11のいずれか一項に記載のテープフィーダ」を「請求項1~11のいずれか一項に記載のテープフィーダ」に変更した技術的思想を開示している。
【発明の効果】
【0009】
開示したテープフィーダにおいて、屈曲搬送路は、第一矯正面の搬送方向の上流側端部、下流側端部および第二矯正面の三箇所でキャリアテープを屈曲させることにより、その形状を適正に矯正することができる。かつ、キャリアテープの搬送経路は、上記の三箇所以外では自由度が生じるので矯正時の負荷が過大にならず、したがって、キャリアテープを搬送するときの支障を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】紙製キャリアテープの構成を示すテープ幅方向の断面図である。
【
図2】樹脂製エンボステープの構成を示すテープ幅方向の断面図である。
【
図3】実施形態のテープフィーダの全体構成を示す側面図である。
【
図7】矯正部の搬送方向の中央付近の断面を示す斜視図である。
【
図8】樹脂製エンボステープが矯正部を通過する形態を説明する正面図である。
【
図9】紙製キャリアテープが矯正部を通過する形態を説明する正面図である。
【
図10】矯正部が紙製キャリアテープの巻き癖を矯正する作用を説明する側面図である。
【
図11】形状が適正な矯正部を矯正角度とともに示す側面図である。
【
図12】形状が適正でない矯正部を示す側面図である。
【
図13】形状が適正でない別の矯正部を示す側面図である。
【
図14】形状が適正な矯正部を第一離間距離および第二離間距離とともに示す側面図である。
【
図15】形状が適正でないさらに別の矯正部を示す側面図である。
【
図16】矯正部に代えて挿入ガイドおよびカバーテープガイドを備えた従来技術のテープフィーダを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.キャリアテープの構成
実施形態のテープフィーダ1は、図略の部品装着機に装備され、キャリアテープを用いて部品を供給する。まず、キャリアテープの種類および構成について予め説明する。キャリアテープは、少なくとも一部に紙が用いられた紙製キャリアテープ8、および紙が用いられない非紙製キャリアテープに大別される。以降の説明において、紙製および非紙製の種類を区別する必要がない場合、単にキャリアテープと呼称する。
【0012】
紙製キャリアテープ8は、
図1に示されるように、カバーテープ81およびベーステープ82からなる。ベーステープ82は、紙製の一定厚さの本体テープ83の下面に薄いフィルム製のボトムテープ84が貼られて形成される。詳細には、本体テープ83のテープ幅方向の中央から一方の側縁に寄った位置に、テープ長さ方向に等ピッチで多数の矩形孔状のキャビティ85が設けられる。キャビティ85の各々に、それぞれ部品Pが収容される。本体テープ83の他方の側縁に寄った位置に、テープ長さ方向に等ピッチで多数の搬送用の送り穴86が設けられる。換言すると、キャビティ85および搬送用の送り穴86がテープ幅方向に並んで設けられる。ボトムテープ84は、その幅寸法が本体テープ83と同じで送り穴86が設けられる。または、ボトムテープ84は、その幅寸法が本体テープ83よりも小さく、キャビティ85を覆うが、送り穴86を塞がない。
【0013】
ベーステープ82の上面に、薄いフィルム製のカバーテープ81が剥離可能に接着される。詳細には、カバーテープ81は、キャビティ85の内部の部品Pを目視や光学カメラで確認できるように透明なフィルムで形成される。ベーステープ82のキャビティ85と一方の側縁との間に、テープ長さ方向に延びる第一の接着部87が設けられる。さらに、ベーステープ82のキャビティ85と送り穴86との間に、テープ長さ方向に延びる第二の接着部88が設けられる。二条の接着部(87、88)は、複数のキャビティ85を挟んで配置され、ベーステープ82とカバーテープ81とを接着している。カバーテープ81は、その幅寸法がベーステープ82よりも小さく、キャビティ85を覆うが、送り穴86を覆わない。紙製キャリアテープ8は、カバーテープ81が存在する範囲で、概ね一定の全厚み寸法T1を有する。
【0014】
一方、非紙製キャリアテープは、
図2に示された樹脂製エンボステープ9を含む。樹脂製エンボステープ9は、紙製キャリアテープ8と同様、カバーテープ91およびベーステープ92からなる。ベーステープ92は、樹脂製テープのテープ長さ方向に等ピッチで膨張加工が施されて部品Pを収容するキャビティ95が形成される。ベーステープ92は、紙製キャリアテープ8と同様、送り穴96および二条の接着部(97、98)が設けられる。樹脂製エンボステープ9は、キャビティ95が形成された幅方向の中央部9Aで全厚み寸法T2を有する。また、中央部9Aの両側面に位置する二つの側縁部9Bは、中央部9Aよりも小さな厚み寸法T3を有する。
【0015】
紙製キャリアテープ8および樹脂製エンボステープ9は、部品Pの様々な大きさに適用できるように、寸法諸元の相違する複数種類がそれぞれ用いられる。一般的に、紙製キャリアテープ8および樹脂製エンボステープ9は、使用上の互換性を有する。紙製キャリアテープ8および樹脂製エンボステープ9は、リールRL(
図3参照)に巻回された状態でベンダーからユーザに納入され、このリールRLがテープフィーダ1にセットされる。
【0016】
紙製キャリアテープ8および樹脂製エンボステープ9は、リールRLに巻回されることによって巻き癖がつく。この巻き癖は、樹脂製エンボステープ9(非紙製キャリアテープ)よりも紙製キャリアテープ8で顕著になりやすく、かつ全厚み寸法(T1、T2)が大きい程顕著になりやすい。さらに、巻き癖は、リールRLの巻き芯RC(
図3参照)に近い紙製キャリアテープ8の終端付近で最もつき易い。紙製キャリアテープ8では、巻き癖の程度に応じてキャビティ85が変形する。すると、キャビティ85内の部品Pの位置が不安定になったり、カバーテープ81の剥離時に部品Pの姿勢が変化したりするおそれが生じる。
【0017】
キャビティ85が変形した状態のままで部品供給位置に搬送された場合、部品装着機の部品採取具がキャビティ85から部品Pを採取できない採取エラーが生じ易くなる。したがって、紙製キャリアテープ8の形状を矯正してキャビティ85の変形を抑制し、部品供給の信頼性を高める必要がある。一方、樹脂製エンボステープ9では、構成材料の違いに起因して巻き癖がつきにくいので、その形状を矯正する必要性が低い。
【0018】
2.実施形態のテープフィーダ1の全体構成
次に、実施形態のテープフィーダ1の全体構成について、
図3を参考にして説明する。
図3の右下の矢印に示されるように、水平面内のX軸方向およびY軸方向、ならびに鉛直方向に相当するZ軸方向を便宜的に定める。X軸方向は、テープフィーダ1を装備する部品装着機において基板を搬送する方向に一致する。Y軸方向は、キャリアテープを搬送する所定の搬送方向に一致し、
図3の左側が搬送方向の上流側、右側が下流側となる。テープフィーダ1は、キャリアテープを下流寄り上部の部品供給位置31まで搬送して部品Pを供給する。テープフィーダ1は、フィーダ本体11、リール保持部2、テープ搬送路3、テープ搬送機構4、カバーテープ回収部5、および矯正部6などで構成される。
【0019】
フィーダ本体11は、Y軸方向に長い1枚の側板を主材にして形成される。フィーダ本体11のX軸方向の幅寸法は、複数種類のキャリアテープのテープ幅寸法に合わせて定められる。フィーダ本体11の下面に、着脱レール12が設けられる。着脱レール12は、部品装着機の本体側に設けられた取り付け台のスロットに挿入され、これによってテープフィーダ1が装備される。フィーダ本体11の下流側端面に、図略の位置決めピンおよびコネクタが設けられる。位置決めピンは、部品装着機に対するテープフィーダ1の位置決めを行う。コネクタは、部品装着機に設けられた受け側コネクタに自動的に嵌合して、テープフィーダ1への電源供給、および通信接続を行う。
【0020】
リール保持部2は、フィーダ本体11の上流側下部に設けられる。リール保持部2は、キャリアテープが巻回されたリールRLを交換可能に保持する。リール保持部2は、符号略の外周保持部および保持軸の少なくとも一方によって構成される。外周保持部は、リールRLの外周縁を回転可能に保持する。保持軸は、X軸方向に延びるように配置され、リールRLの中心孔を回転可能に保持する。リール保持部2は、開閉可能な保持カバー21が設けられており、リールRLの逸脱が防止される。
【0021】
テープ搬送路3は、フィーダ本体11の下流側上部に設けられる。テープ搬送路3は、リールRLから引き出されたキャリアテープを所定の部品供給位置31まで案内する。テープ搬送路3は、例えば、底板、2枚の側板、および天井板を用いて矩形筒状に形成される。テープ搬送路3は、キャリアテープを底板に押し付けるテープ押さえを有してもよく、また、天井板の一部が省略されてもよい。テープ搬送路3の上流寄りの一部は、矯正部6となっている。矯正部6の詳細構成については後述する。
【0022】
テープ搬送路3は、下流側端部の近くに部品供給位置31をもつ。部品供給位置31よりも上流側に、詳細図略の剥離部32が設けられる。剥離部32は、キャリアテープを構成するベーステープ(82、92)からカバーテープ(81、91)を剥離して、キャビティ(85、95)を開放する。剥離されたカバーテープ(81、91)は、テープ搬送路3の上方を通って上流側に向かい、カバーテープ回収部5に回収される。一方、キャビティ(85、95)が開放されたベーステープ(82、92)は、部品供給位置31に搬送されて部品Pを供給する。その後、ベーステープ(82、92)は、テープフィーダ1の下流方向に排出され、部品装着機に設けられたベーステープ回収部に回収される。
【0023】
テープ搬送機構4は、テープ搬送路3の下側に配置される。テープ搬送機構4は、テープ搬送路3に沿ってキャリアテープを搬送する。テープ搬送機構4は、例えば、スプロケット41、駆動モータ42、および伝達ギヤ機構43などで構成される(具体的な詳細構造は省略)。スプロケット41は、フィーダ本体11に回転可能に支持される。スプロケット41の歯は、テープ搬送路3の底板に形成された溝から突出して、キャリアテープの送り穴(86、96)に嵌入する。スプロケット41は、駆動モータ42の駆動力が伝達ギヤ機構43を介して伝達される。駆動モータ42は、間欠動作および連続動作が可能とされ、かつ、正転および逆転の切り替えが可能となっている。
【0024】
テープ搬送機構4は、キャリアテープを搬送方向に一定ピッチずつ搬送して、部品供給位置31で部品Pを順番に供給することができる。また、テープ搬送機構4は、新しくセットされたキャリアテープを搬送方向に連続的に搬送することができる。さらに、テープ搬送機構4は、使いかけのキャリアテープを逆方向に連続的に搬送して、取り外しの便宜を図ることができる。
【0025】
カバーテープ回収部5は、フィーダ本体11の上流側上部に設けられる。カバーテープ回収部5は、剥離部32で剥離されたカバーテープ(81、91)を回収する。カバーテープ回収部5は、例えば、回収リール51、回収用モータ52、およびガイドローラ53などで構成される。回収リール51は、フィーダ本体11に交換可能かつ回転可能に支持される。回収リール51は、キャリアテープの使用開始時に、剥離されたカバーテープ(81、91)の先端が留められる。
【0026】
回収用モータ52は、回収リール51を回転駆動する。これにより、回収リール51は、カバーテープ(81、91)を巻き取って回収する。回収用モータ52は、テープ搬送機構4の駆動モータ42と同期して動作するように制御される。あるいは、回収用モータ52は、常に励磁されており、回収リール51に小さな巻き取りトルクを常時付与する。この態様では、キャリアテープが搬送されてカバーテープ(81、91)の剥離が進むたびに、回収リール51は、カバーテープ(81、91)を自動的に巻き取る。
【0027】
ガイドローラ53は、剥離されたカバーテープ(81、91)を回収リール51へと案内する。ガイドローラ53は、フィーダ本体11に回転自在に支持され、カバーテープ(81、91)を摺動可能に通過させる。ガイドローラ53は、カバーテープ(81、91)の進行方向を変更する機能を有してもよい。ガイドローラ53の数量および位置は、剥離部32と回収リール51との距離および位置関係に基づいて、適正に設定される。
【0028】
3.矯正部6の詳細構成
次に、矯正部6の詳細構成について、
図4~
図7を参考にして説明する。矯正部6は、キャリアテープの形状を矯正する部位である。矯正部6は、少なくとも紙製キャリアテープ8についた巻き癖(塑性変形)を軽減した形状に矯正する。矯正部6は、その他に弾性変形しているキャリアテープをほぐして直線形状に矯正してもよい。
図4~
図7に示されるように、矯正部6は、フィーダ本体11に固定された第一矯正部材61および第二矯正部材6Aなどで構成される。
【0029】
図5に示されるように、第一矯正部材61は、凹曲面を含む第一矯正面62を上側にもつ。第二矯正部材6Aは、搬送方向において第一矯正部材61よりも小さく形成され、第一矯正部材61の上方に配置される。第二矯正部材6Aは、凸曲面6Cを含む第二矯正面6Bを下側にもつ。第一矯正面62および第二矯正面6Bは対向するように配置され、両者の間に屈曲搬送路7が形成される。屈曲搬送路7は、下方に突出する屈曲形状を有してテープ搬送路3の一部となっており、キャリアテープを屈曲させて案内する。つまり、テープ搬送路3に第一矯正面62と第二矯正面6Bとを設けて、屈曲搬送路7を構成することができる。なお、屈曲搬送路7の屈曲方向を複数とする蛇行化は、矯正時の負荷を増大させるため採用されない。
【0030】
第一矯正面62は、第二矯正部材6Aの下方に位置する中央部分が低く、上流側端部621および下流側端部622が高い凹形状に形成される。第一矯正面62は、下流側凹曲面63および上流側面64を含む。下流側凹曲面63は、凸曲面6Cの搬送方向の中央6Dよりも下流側に位置する。下流側凹曲面63は、下方にへこんだ概ね円筒面状の凹曲面であり、上流側端部631よりも下流側端部632が高く位置する。下流側端部632は、下流側端部622と同じ位置でもよく、別の位置でもよい。下流側凹曲面63は、キャリアテープ8の先端を屈曲搬送路7に挿入してセットする装填作業の作業性を改善する目的で設けられる。下流側凹曲面63は、キャリアテープ8の先端を挿入する空間を拡げて装填作業を容易化し、後述する溝部65にキャリアテープが斜めに入り込でしまうことを防止する。
【0031】
上流側面64は、凸曲面6Cの中央6Dよりも上流側に位置する。上流側面64は、上流側で高く下流側で低く傾斜した平面に形成されている。上流側面64は、凸曲面6Cの中央6Dの概ね真下で、下流側凹曲面63の上流側端部631に滑らかに連なっている。なお、上流側面64は、平面である必要はなく、曲面とされてもよい。
【0032】
また、第一矯正部材61は、
図4および
図6に示されるように、溝部65を挟んで幅方向に互いに離隔する二つの第一矯正面(62、66)が設けられる。一方の第一矯正面62は、キャリアテープのキャビティ(85、95)に近い側の側縁部9Bが通過する。他方の第一矯正面66は、一方の第一矯正面62よりも幅寸法が大きく形成されており、キャリアテープの送り穴(86、96)に近い側の側縁部9Bが通過する。他方の第一矯正面66は、第一矯正面62の上流側面64と同じ形状の上流側面67を含む。しかしながら、構造上の制約があるため、他方の第一矯正面66は、下流側凹曲面63に代わる下流側平面68を含む(
図7参照)。つまり、一方の第一矯正面62を基準として、他方の第一矯正面66の一部が変形される。
【0033】
第二矯正面6Bは、
図5に示されるように、上流側と下流側とで概ね対称形状の凸曲面6Cを含む。凸曲面6Cは、
図5に示される側面視において、等脚台形に丸みが付与された形状を有する。これに限定されず、凸曲面6Cは、円筒面や楕円筒面の一部分であってもよい。なお、本実施形態において、第二矯正面6Bと凸曲面6Cは一致している。これに限定されず、第二矯正面6Bは、凸曲面6Cの上流側および下流側の少なくとも一方に平面などが追加されていてもよい。
【0034】
図4および
図6に示されるように、第二矯正部材6Aの上部に、カバーテープ通路6Eが設けられる。さらに、カバーテープ通路6Eの下側に、回転自在なガイドローラ6Fが設けられる。カバーテープ通路6Eは、剥離部32で剥離されたカバーテープ(81、91)をカバーテープ回収部5のガイドローラ53に向けて通過させる。ガイドローラ6Fは、回転しながらカバーテープ(81、91)を摺動可能に通過させて通過抵抗を軽減する。第二矯正部材6Aがカバーテープ通路6Eおよびガイドローラ6Fを備えることにより、カバーテープ通路6Eおよびガイドローラ6Fを矯正部6と別に設ける構成と比較して構成部品点数が削減され、製造コストが低廉化される。
【0035】
4.テープフィーダ1の動作(矯正部6の動作、作用、および効果)
次に、テープフィーダ1の動作のうち主に矯正部6の動作、作用、および効果について、
図8~
図10を参考にして説明する。テープ搬送路3に沿って搬送される樹脂製エンボステープ9は、
図8に示される形態で矯正部6を通過する。すなわち、樹脂製エンボステープ9の厚み寸法T3の二つの側縁部9Bは、屈曲搬送路7を通過する。また、全厚み寸法T2をもつ中央部9Aは、屈曲搬送路7よりも下方の溝部65を通過することが許容される。したがって、小さな厚み寸法T3をもつ側縁部9Bのみが屈曲搬送路7を通過するため、樹脂製エンボステープ9は、実質的に矯正されない。これにより、矯正部6は、巻き癖がつきにくい樹脂製エンボステープ9に対して無意味な矯正を行わず、キャビティ95および部品Pに不要なストレスを加えることが抑制される。
【0036】
一方、テープ搬送路3に沿って搬送される紙製キャリアテープ8は、
図9に示される形態で矯正部6を通過する。すなわち、紙製キャリアテープ8の全厚み寸法T1が屈曲搬送路7を通過する。これによれば、紙製キャリアテープ8は、
図10に示される形態で巻き癖が矯正される。図示されるように、紙製キャリアテープ8は、リールRLから引き出されて屈曲搬送路7まで進行する時点で、上方に突出する方向の巻き癖がついている。
【0037】
紙製キャリアテープ8は、第一矯正面62の上流側端部621に接して屈曲搬送路7に進入し、上流側面64から離隔しつつ第二矯正面6B(凸曲面6C)に当接しながら進行する。さらに、紙製キャリアテープ8は、下流側凹曲面63から離隔しつつ進行し、下流側端部622に当接する。これにより、紙製キャリアテープ8は、上流側端部621、第二矯正面6B(凸曲面6C)、および下流側端部622の三箇所で強制的に巻き癖と逆方向に屈曲される(逆反りされる)ように扱かれる(しごかれる)。その結果、紙製キャリアテープ8は、巻き癖が軽減された形状に矯正される。この後、紙製キャリアテープ8は、下流側端部622に接しながら進行し、テープ搬送路3の下流方向に搬送される。
【0038】
ここで、一方の第一矯正面62は、他方の第一矯正面66と比較してキャビティ85に接近している。また、他方の第一矯正面66は、送り穴86に接近している。このため、一方の第一矯正面62は、キャビティ85の形状を矯正する作用の過半を担う。したがって、他方の第一矯正面66が変形されていても、矯正部6は、実用的に十分な矯正作用を発揮することができる。当然ながら、他方の第一矯正面66は、一方の第一矯正面62と同じ形状であってもよい。紙製キャリアテープ8の搬送経路は、第一矯正面62の上流側端部621、下流側端部622、および第二矯正面6B(凸曲面6C)以外では自由度が生じる。したがって、負荷に相当する摩擦抵抗などの発生が抑制されて、矯正時の負荷が過大にならない。
【0039】
5.矯正部6の適正形状
上記した矯正部6の作用および効果を確実なものとするために、本願出願人は、複数種類の矯正部(6、6X、6Y、6Z)を試作して性能確認実験を行い、矯正部6の適正形状を求めている。以降では、
図11~
図15を参考にして、試作品の形状および実験結果を要約して説明する。
図11および
図14は、形状が適正な矯正部6の側面を示し、
図12、
図13、および
図15は、形状が適正でない矯正部(6X、6Y、6Z)の側面を示す。なお、性能確認実験は、テープフィーダ1で使用される複数種類の紙製キャリアテープ8を対象としており、その全厚み寸法T1は最小厚み寸法から最大厚み寸法T1mの範囲にある。
【0040】
図11~
図13において、第一矯正面62の上流側端部621および凸曲面6Cに接する上流仮想平面FU(破線)を仮想し、凸曲面6Cおよび第一矯正面62の下流側端部622に接する下流仮想平面FD(実線)を仮想する。そして、上流仮想平面FUと下流仮想平面FDとの成す角度を矯正角度ACとする。矯正角度ACは、キャリアテープに接する上流側端部621、下流側端部622、および凸曲面6Cの相対位置関係を表すパラメータであって、屈曲搬送路7の屈曲の程度および矯正作用の強弱を表すパラメータとなる。
【0041】
図11に示される適正な矯正部6において、矯正角度ACは、7.20°であった。この矯正部6では、紙製キャリアテープ8の種類を問わず、過不足のない適正な矯正が可能であった。かつ、紙製キャリアテープ8の搬送は、テープ搬送機構4によって良好に行われた。これに対比して、
図12に示される適正でない矯正部6Xにおいて、矯正角度ACは、3.49°であった。この矯正部6Xでは、紙製キャリアテープ8の不足矯正となり、巻き癖を十分な程度まで軽減することができなかった。また、
図13に示される適正でない矯正部6Yにおいて、矯正角度ACは、11.74°であった。この矯正部6Yでは、適正な矯正が可能であったが、紙製キャリアテープ8の搬送に難が生じた。つまり、矯正時の負荷が過大となり、テープ搬送機構4の駆動モータ42が過負荷状態に陥った。
【0042】
次に、
図14および
図15において、下流側凹曲面63の上流側端部631および下流側端部632を結ぶ第一仮想平面F1を仮想し、凸曲面6Cとの間の距離を第一離間距離L1とする。また、上流側面64と凸曲面6Cとの間の距離を第二離間距離L2とする。なお、上流側面64が曲面とされた構成では、曲面の上側に接する第二仮想平面と、凸曲面6Cとの間の距離を第二離間距離L2とする。第一離間距離L1および第二離間距離L2は、紙製キャリアテープ8が屈曲搬送路7を通過するときの通り易さ、換言すると矯正時の負荷の大小を表すパラメータとなる。
【0043】
図14に示される適正な矯正部6において、第一離間距離L1は最大厚み寸法T1mの1.92倍、第二離間距離L2は最大厚み寸法T1mの2.26倍であった。これに対比して、
図15に示される適正でない矯正部6Zにおいて、第一離間距離L1は最大厚み寸法T1mの1.44倍、第二離間距離L2は最大厚み寸法T1mの1.73倍であった。この矯正部6Zでは、適正な矯正が可能であったが、矯正時の負荷が過大となり、駆動モータ42が過負荷状態に陥った。
【0044】
さらに、図示省略した多数の試作品を含む実験結果を総合的に解析して考察を加えることにより、矯正部6の適正形状を求めることができた。すなわち、矯正角度ACが4°~11°の範囲にあり、かつ、第一離間距離L1が最大厚み寸法T1mの1.5倍以上あり、第二離間距離L2が最大厚み寸法T1mの1.8倍以上ある矯正部6は、適正な矯正作用を発揮するとともに、矯正時の負荷が過大にならないことが判明した。また、矯正角度ACが6°~9°の範囲にあり、かつ、第一離間距離L1が最大厚み寸法T1mの1.9倍以上あり、第二離間距離L2が最大厚み寸法T1mの2.2倍以上ある矯正部6は、適正な矯正作用および矯正時の負荷に対して十分な裕度をもつことが判明した。
【0045】
6.従来技術のテープフィーダとの関連性
次に、従来技術のテープフィーダとの関連性について、
図16を参考にして説明する。従来技術のテープフィーダは、
図16に示されるように矯正部6を備えず、それ以外の構成が実施形態のテープフィーダ1と同じである。従来技術において、第一矯正部材61の位置に挿入ガイド6Pが設けられる。挿入ガイド6Pは、第一矯正面62を備えず、テープ搬送路3の入り口に相当する概ね直線状の搬送路を形成する。また、第二矯正部材6Aの位置にカバーテープガイド6Qが設けられる。カバーテープガイド6Qは第二矯正面6Bを備えず、カバーテープ通路6Eおよびガイドローラ6Fを備える。
【0046】
従来技術のテープフィーダが備えるテープ搬送機構4は、前記した性能確認実験に用いられており、矯正時の負荷が過大であるか否かを判定する基準となっていた。そして、従来技術のテープフィーダで紙製キャリアテープ8を使用した場合と比較して、実施形態のテープフィーダ1で紙製キャリアテープ8を使用した場合に、部品採取具による採取エラーの発生率を格段に改善できることが判明した。つまり、実施形態のテープフィーダ1を用いることにより、矯正部6の矯正作用の効果で部品供給の信頼性を従来よりも格段に高めることができた。
【0047】
また、実施形態のテープフィーダ1は、従来技術のテープフィーダの構成部材の大多数そのまま使用して製造することができる。さらに、従来技術のテープフィーダの挿入ガイド6Pおよびカバーテープガイド6Qを第一矯正部材61および第二矯正部材6Aに交換して、実施形態のテープフィーダ1とすることができる。つまり、ユーザに納入済みのテープフィーダに対して、矯正部6を容易にかつ低コストで追加する改造が可能となる。
【0048】
実施形態のテープフィーダ1において、屈曲搬送路7は、第一矯正面62の搬送方向の上流側端部621、下流側端部632、および第二矯正面6Bの三箇所で紙製キャリアテープ8を屈曲させることにより、その形状を適正に矯正することができる。かつ、紙製キャリアテープ8の搬送経路は、上記の三箇所以外では自由度が生じるので矯正時の負荷が過大にならず、したがって、紙製キャリアテープ8を搬送するときの支障を抑制することができる。
【0049】
7.実施形態の応用および変形
なお、テープフィーダ1は、リール保持部2およびカバーテープ回収部5の少なくとも一方が別体とされた分離型の構成であってもよい。また、矯正部6の適正形状を規定するために、矯正角度AC、第一離間距離L1、および第二離間距離L2以外のパラメータを用いてもよい。実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:テープフィーダ 11:フィーダ本体 2:リール保持部 3:テープ搬送路 31:部品供給位置 32:剥離部 4:テープ搬送機構 5:カバーテープ回収部 6、6X、6Y、6Z:矯正部 61:第一矯正部材 62:第一矯正面 63:下流側凹曲面 64:上流側面 6A:第二矯正部材 6B:第二矯正面 6C:凸曲面 7:屈曲搬送路 8:紙製キャリアテープ 81:カバーテープ 82:ベーステープ 85:キャビティ 86:送り穴 9:樹脂製エンボステープ 91:カバーテープ 92:ベーステープ 95:キャビティ 96:送り穴 9A:中央部 9B:側縁部 P:部品 RL:リール T1、T2:全厚み寸法 T1m:最大厚み寸法 FD:下流仮想平面 FU:上流仮想平面 AC:矯正角度 F1:第一仮想平面 L1:第一離間距離 L2:第二離間距離