(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148003
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】保温ジャケット
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20241009BHJP
A41D 13/002 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
A41D13/005 101
A41D13/005 108
A41D13/002
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060850
(22)【出願日】2023-04-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年11月1日にゼビオ株式会社、株式会社ヴィクトリア、株式会社ゴルフパートナーが運営する店舗で販売。 令和4年10月28日にトミーアーマーのWEBサイト(https://tommy-armour.com/sp/movedown2/)で掲載。 令和4年11月7日にゼビオコミュニケーションネットワークス株式会社が管理するスーパースポーツゼビオの販売サイト(https://www.supersports.com/ja-jp/xebio/products/B-10817084301?rtoken=cvBxCgsI0YquoQYQ_ZCwBxABGiQ2NDI4ZGE5Ny0wMDAwLTI0YzEtOWYyOC0zYzI4NmQ0MDU0NTYqFTE0OTc4OTM4MjkuMTU4NjgzODE1MzIUwvCeFaaL7xeOvp0V1LKdFcXL8xc6DmRlZmF1bHRfc2VhcmNo)で掲載。 令和4年11月7日に楽天市場の販売サイト(https://item.rakuten.co.jp/victoriagolf/108170844011/)で掲載。 令和4年11月7日にYAHOO!ショッピングの販売サイト(https://store.shopping.yahoo.co.jp/victoriagolf/10817084401.html?sc_i=shp_pc_search_itemlist_shsrfg_img&ea=13)で掲載。 令和4年10月28日にインスタグラムのアカウントの投稿ページ(https://www.instagram.com/p/CkQpVZqjs_R/)で掲載。 令和5年1月26日にプレジデント社が発売した刊行物アルバトロスビュー2月9日号で掲載。
(71)【出願人】
【識別番号】517217232
【氏名又は名称】クロステクノロジーラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100164286
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 卓夫
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100073483
【弁理士】
【氏名又は名称】八鍬 昇
(72)【発明者】
【氏名】村井 宏行
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211AA01
3B211AB01
3B211AC01
3B211AC21
(57)【要約】
【課題】一対の発熱体2の熱を後身頃12の中央全体に蓄熱させることで、後身頃12の内側の構成を簡略化するとともに着用者の身体を効率良く保温し、パフォーマンスの低下を抑制した保温ジャケット1を提供する。
【解決手段】
保温ジャケット1は、右前身頃11bと、左前身頃11aと、後身頃12と、後身頃12の内側に形成された一対の収納部20と、を有し、右前身頃11b、左前身頃11aおよび後身頃12とで胴体を少なくとも保温するジャケット本体10と、収納部20に収納される一対の発熱体2と、を備え、発熱体2の熱でジャケット本体10内を加熱して保温し、一対の収納部20は、熱を蓄熱する蓄熱素材で形成されており、後身頃12の略中央を挟むように上下に離間して位置しており、後身頃12の内側における一対の収納部20に挟まれた第1の部分30は、蓄熱素材で形成されており、収納部20内に収納された発熱体2の熱を蓄熱する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の胴体の右前側を覆う右前身頃と、前記右前身頃の左側に位置し前記胴体の左前側を覆う左前身頃と、前記右前身頃と前記左前身頃とを接続し前記胴体の後側を覆う後身頃と、前記後身頃の内側に形成された一対の収納部と、を有し、前記右前身頃、前記左前身頃および前記後身頃とで前記胴体を少なくとも保温するジャケット本体と、前記収納部に収納され、熱源として発熱する一対の発熱体と、を備え、前記発熱体の熱でジャケット本体内を加熱して保温する保温ジャケットであって、
前記一対の収納部は、熱を蓄熱する蓄熱素材で形成されており、前記後身頃の略中央を挟むように上下に離間して位置しており、
前記後身頃の内側における前記一対の収納部に挟まれた第1の部分は、前記蓄熱素材で形成されており、前記収納部内に収納された前記発熱体の熱を蓄熱することを特徴とする保温ジャケット。
【請求項2】
前記ジャケット本体には、さらに、前記右前身頃と前記後身頃との間において、前記着用者の右腕を通すための穴状の右袖孔が形成されており、前記左前身頃と前記後身頃との間において、前記着用者の左腕を通すための穴状の左袖孔が形成されており、
前記後身頃の内側における、前記右袖孔および前記左袖孔よりも下側の位置から上端部に亘る第2の部分は、水分を吸収して熱を発生する吸湿発熱素材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の保温ジャケット。
【請求項3】
前記後身頃の前記第1の部分は、前記後身頃の幅方向中央における前記上端部から下端部に亘って形成されており、前記上端部に近づくにつれて、幅が広く形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の保温ジャケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の身体を保温する保温ジャケット、特に発熱体により着用者の身体を加熱して保温する保温ジャケットに関する。
【背景技術】
【0002】
保温ジャケットは、一般的に、冬等において外気温度が低い場所にいる場合に身体を保温する目的で使用される。外気温度が体温に比して著しく低い場合は、低体温症のリスクがあり、またスポーツなどにおいて十分なパフォーマンスを発揮することができなくなる。このため、着用者の身体を保温、保湿して外気温度が低い場合でも着用者の身体を十分に温め、着用者が快適に着用することができる保温ジャケットが近年鋭意研究されている。
【0003】
例えば、
図6で示すように、特許文献1(従来例)には、左右2つの前身頃102a、102bと後身頃103とを備えており、後身頃103の内側に、保温剤108を収納または固定するための保持手段107a、107b、107cを少なくとも1つ以上備えてなるベスト100が開示されている。
【0004】
この従来例によるベスト100によれば、防護服(不図示)を着ていても、こもった熱気により熱中症になることや、寒さによる作業効率の低下を引き起こすことなく、快適な環境下で作業を行うことができる。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来例のベスト100では、後身頃103の内側に保持手段107a、107b、107cが設けられ、保持手段107a、107b、107cの内部に保温剤108を収納又は固定するのみであり、熱伝導に関して何ら特殊な構造は設けられていなかった。このため、着用者の身体を保温するに際して、この保温剤108を保温したい箇所全部に収納又は固定する必要があり、多数の保温剤108の重量がかさむことにより着用者のパフォーマンスが十分に発揮できないという問題があった。また、多数の保温剤108を収納する保持手段107a、107b、107cを形成する必要があり、後身頃103の内側の構成が複雑になるという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされるものであって、一対の発熱体の熱を後身頃の中央に蓄熱させることで、後身頃の内側の構成を簡略化するとともに着用者の身体を効率良く保温し、パフォーマンスの低下を抑制した保温ジャケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、着用者の胴体の右前側を覆う右前身頃と、前記右前身頃の左側に位置し前記胴体の左前側を覆う左前身頃と、前記右前身頃と前記左前身頃とを接続し前記胴体の後側を覆う後身頃と、前記後身頃の内側に形成された一対の収納部と、を有し、前記右前身頃、前記左前身頃および前記後身頃とで前記胴体を少なくとも保温するジャケット本体と、前記収納部に収納され、熱源として発熱する一対の発熱体と、を備え、前記発熱体の熱でジャケット本体内を加熱して保温する保温ジャケットであって、前記一対の収納部は、熱を蓄熱する蓄熱素材で形成されており、前記後身頃の略中央を挟むように上下に離間して位置しており、前記後身頃の内側における前記一対の収納部に挟まれた第1の部分は、前記蓄熱素材で形成されており、前記収納部内に収納された前記発熱体の熱を蓄熱することを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の保温ジャケットによれば、後身頃の内側における略中央を挟む一対の収納部およびこれらに挟まれた第1の部分を蓄熱素材で形成することで、一対の発熱体の発熱を一対の収納部および第1の部分に熱を伝えて蓄熱することで、中枢神経が通る背中を効率良く温めることができ、身体全体を効果的に温めることができる。このように、一対の発熱体により効率良く背中を温めることができるため、3つ以上の発熱体を収容しなくても、着用者の身体を加熱して保温することができるため、後身頃の内側の構成を簡易化するとともに保温ジャケットの全体の重量を低減して、着用者のパフォーマンスの低下を抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載された保温ジャケットであって、前記ジャケット本体には、さらに、前記右前身頃と前記後身頃との間において、前記着用者の右腕を通すための穴状の右袖孔が形成されており、前記左前身頃と前記後身頃との間において、前記着用者の左腕を通すための穴状の左袖孔が形成されており、前記後身頃の内側における、前記右袖孔および前記左袖孔よりも下側の位置から上端部に亘る第2の部分は、水分を吸収して熱を発生する吸湿発熱素材で形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、後身頃の内側における、右袖孔および左袖孔よりも下側の位置から上端部に亘る第2の部分は、水分を吸収して熱を発生する吸湿発熱素材で形成されているので、この吸湿発熱素材が着用者の脇周りの身体から出る汗を吸湿し、熱を発生させることができる。このため、この第2の部分の発熱により肩甲骨周りの筋肉を効率良く温めることができ着用者のパフォーマンスを向上させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載された保温ジャケットであって、前記後身頃の前記第1の部分は、前記後身頃の幅方向中央における上端部から下端部に亘って形成されており、前記上端部に近づくにつれて、幅が広く形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、第1の部分の幅方向の長さを上端部へ向かうほど大きく形成することで、頭部に近く神経の多い頸部を重点的に温めることができる。このため、着用者の発汗を促し、前身頃と後身頃の発熱を促進することができる。また、肩から背中にかけての大きな筋肉である僧帽筋が冷えて固まり運動のパフォーマンスを低下させることを防ぐこともできる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本願発明によれば、一対の発熱体の発熱による熱を一対の収納部およびこれら一対の収納部に挟まれた第1の部分に伝えることで、中枢神経が通る背中全体を温めることができ、身体全体を効果的に温めることができる。このため、一対の発熱体により熱を発生させ、着用者の身体を加熱して保温することができるため、後身頃の内側の構成を簡略化し、保温ジャケットの重量を軽減するとともに着用者のパフォーマンスの低下も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】
図1の保温ジャケットの内側を示す概略図である。
【
図4】
図3の保温ジャケットにおいて収納部に発熱体を収納する状態を示す概略図である。
【
図5】
図1の保温ジャケットを着用する手順を示したフローチャート図である。
【発明の詳細な説明】
【0017】
(第1実施例)
本発明の実施例に係る保温ジャケット1の構成について、
図1乃至
図4を参照しながら説明する。
【0018】
図1は本実施例の保温ジャケット1の正面図であり、
図2は
図1の保温ジャケット1の背面図であり、
図3は
図1の保温ジャケット1の内側を示す概略図であり、
図4は
図3の保温ジャケットにおいて収納部20に発熱体2を収納する状態を示す概略図である。
図3の破線は、ジャケット本体10内に位置する第2の部分32を示すものである。
【0019】
以下では、説明のために、
図1の保温ジャケット1の幅方向をX軸方向、保温ジャケット1の上下方向をY軸方向、保温ジャケット1の厚み方向をZ軸方向と記載する。
【0020】
保温ジャケット1は、
図3および
図4で示すように、着用者(不図示)の胴体(不図示)を覆うジャケット本体10と、熱源として発熱する発熱体2と、を備え、発熱体2の熱でジャケット本体10内を発熱するものである。
【0021】
図1で示すように、ジャケット本体10は、着用者の右前側の胴体を覆う右前身頃11bと、右前身頃11bの左側に位置し着用者の左前側の胴体を覆う左前身頃11aと、右前身頃11bと左前身頃11aとを接続し着用者の背中(不図示)を覆う後身頃12と、後身頃12の内側に形成された一対の収納部20と、を有する。
【0022】
ジャケット本体10は、
図3で示すように、また、右前身頃11bと後身頃12とを接続する右接続部13bと、左前身頃11aと後身頃12とを接続する左接続部13aと、右前身頃11bと左前身頃11aとを着用者の胴体の前側で係合する係合手段14と、を有する。
【0023】
このジャケット本体10の右前身頃11bと後身頃12と右接続部13bとの境界には、右腕を通すための穴状の右袖孔15bが形成されており、左前身頃11aと後身頃12と左接続部13aとの境界には、左腕を通すための穴状の左袖孔15aが形成されている。
【0024】
右前身頃11bと左前身頃11aとは互いに左右対称となるように形成されている。
【0025】
また、右前身頃11bと左前身頃11aと後身頃12の内部は、羽毛などのダウン素材により形成されている。これにより、軽量で保温性能の高いジャケット本体10を得ることができる。
【0026】
後身頃12の内側には、
図3および
図4で示すように、一対の収納部20に挟まれた部分である第1の部分30と、後身頃12の内側における、右袖孔14bおよび左袖孔14aよりも下側の位置から上端部に亘る第2の部分32とが形成されている。より具体的には、第2の部分32は、後身頃12の内側の上半分の領域全体に形成されている。また、この後身頃12の内部もダウン素材により形成されている。
【0027】
第1の部分30は、後身頃12の幅方向中央における上端部から下端部に亘って形成されており、上端部に近づくにつれて幅が広くなるように形成されている。すなわち、第1の部分30は、後身頃12における裾側から襟元側へ進むにつれて、幅が広く形成されている。
【0028】
この第1の部分30は、蓄熱素材で形成されており、一対の収納部20を互いに接続し、一対の収納部20内に収納された一対の発熱体2の熱を相互間に伝達し、蓄熱する。
【0029】
この蓄熱素材は、例えば赤外線を効率的に吸収することができるように波長成分が大きな橙色や赤色で形成されている。具体的には、波長成分が590から770nmの色(橙色や赤色)で構成されるのが好ましく、波長成分が640から770nmの色(赤色)で構成されるのがより好ましい。
【0030】
第2の部分32は、後身頃12における第1の部分30よりも外側(Z軸方向の外側)、すなわちこの後身頃12の内部に設けられている。この第2の部分32も、水分を吸収して熱を発生する吸湿発熱素材により形成されている。
【0031】
吸湿発熱素材とは、水分が繊維に吸着することにより発生する吸着熱により、繊維を発熱させる素材である。
【0032】
吸湿発熱素材として、例えば湿度40%の状態の検査機に生地を入れて湿度90%まで上昇させ発熱温度を計測した際に+2℃上昇する素材が用いられると良い。
【0033】
また、本実施例で使用される吸湿発熱素材は、例えば吸着した水分をジャケット本体10の外側に排出し、熱をジャケット本体10の内側に反射する素材が用いられると良い。
【0034】
図3および
図4で示すように一対の収納部20は、上を向いて開口しており、後身頃12の幅方向中央に位置し、後身頃12の略中央を挟むように上下方向に並んで位置するとともに、熱を蓄熱する蓄熱素材で形成されている。
【0035】
この収納部20には、
図4で示すように、発熱体2が収納される。発熱体2としては、本実施例では鉄粉が酸素と化学反応して酸化鉄になる際に発生する反応熱を利用する使い捨てカイロが用いられる。
【0036】
収納部20は、熱を蓄積する素材、すなわち蓄熱素材により形成されている。この蓄熱素材は、人体から発生する赤外線をジャケット本体10の内側に反射する性質を有するものである。
【0037】
図1および
図3で示すように、右前身頃11bと後身頃12とにおける右袖孔15bよりも下の部分は、右接続部13bにより接続されている。また、左前身頃11aと後身頃12とにおける左袖孔15aよりも下の部分は、右接続部13bにより接続されている。
【0038】
これら右接続部13bと左接続部13aは、伸縮性の部材が用いられる。これにより、着用者の体格に応じて右接続部13bおよび左接続部13aが変形し、ジャケット本体10に大きな力が加わった際にもジャケット本体10が破れるリスクを抑制することができる。
【0039】
右接続部13bと右前身頃11bとの境界には小物を収納することができる右ポケット16bがそれぞれ形成されており、左接続部13aと左前身頃11aとの境界にも小物を収納することができる左ポケット16aが形成されている。着用者はこの右ポケット16b、および左ポケット16aにも発熱体2を収納することでジャケット本体10の内部をさらに保温することができる。
【0040】
図1および
図3で示すように、後身頃12の右上側は、右前身頃11bの左上側と接続されており、後身頃12の右下側と右前身頃11bの左下側とは右接続部13bと接続されている。
【0041】
また、後身頃12の左上側は、左前身頃11aの右上側と接続されており、後身頃12の左下側と左前身頃11aの右下側とは左接続部13aと接続されている。
【0042】
右袖孔15bは、これら後身頃12と右前身頃11bと右接続部13bとの間に穴状に形成されている。また、左袖孔15aは、後身頃12と左前身頃11aと左接続部13aとの間に穴状に形成されている。
【0043】
着用者はこれら右袖孔15bと左袖孔15aに腕を通してこのジャケット本体10を着用する。
【0044】
図1及び
図3で示すように、右前身頃11bと左前身頃11aとは係合手段14により内部が密閉となるように係合可能に形成されている。
【0045】
具体的には、右前身頃11bの開放端部側(後身頃12が接続されている側とは反対側)の周縁部には係合部14bが形成され、左前身頃11aの開放端部側(後身頃12が接続されている側とは反対側)の周縁部には被係合部14aが形成されている。これら係合部14bと被係合部14aとが係合することにより着用時に右前身頃11bと左前身頃11aとを係合し、右前身頃11bと左前身頃11aとを密閉し、ジャケット本体10内部の保温性能を向上させることができる。
【0046】
図5は、
図1のジャケット本体10を着用する手順を示したフローチャート図である。
【0047】
図4で示すように、ジャケット本体10の着用者は、ジャケット本体10を着用する前に一対の収納部20のそれぞれに発熱体2を収納する(STEP1,2)。
【0048】
次に着用者は、右袖孔15bと左袖孔15aに腕(右腕と左腕)をそれぞれ通し、ジャケット本体10を着用する(STEP3)。
【0049】
さらに、着用者は係合部14bと被係合部14aとを係合させ右前身頃11bと左前身頃11aとを密閉して閉じる(STEP4,5)。
【0050】
以上説明した実施例に係るジャケット本体10によれば、吸湿発熱素材により形成された第2の部分32が水分を吸収して発熱し、蓄熱素材により形成された第1の部分30が後身頃12の幅方向に延びて襟元の中央部から裾に亘って配置されているので、着用者の汗から熱が発生し、その熱を第1の部分に蓄積させ、中枢神経が通る背中を温めることにより、身体全体を効果的に温めることができる。このため、上着をさらに着ることなく発熱、保温することができる軽量な保温ジャケット本体10を得ることができ、着用者のパフォーマンスの低下を抑制することができる。
【0051】
後身頃12の内側における、右袖孔14bおよび左袖孔14aよりも下側の位置から上端部に亘る第2の部分32は、水分を吸収して熱を発生する吸湿発熱素材で形成されているので、この吸湿発熱素材が着用者が発汗しやすい部位である着用者の脇周りの身体から出る汗を吸湿し、熱を発生させることができる。このため、この第2の部分32の発熱により肩甲骨周りの筋肉を効率よく温めることができ着用者のパフォーマンスを向上させることができる。
【0052】
また、収納部20および第1の部分30における襟元側の幅を裾側の部分の幅よりも広く形成することで、頭部に近く神経の多い頸部を重点的に温めることができる。このため、着用者の発汗を促し、前身頃11b、11aと後身頃12の発熱を促進することができる。
【0053】
肩から背中にかけての大きな筋肉である僧帽筋に沿って上側の収納部20および第1の部分30を位置させることで、僧帽筋が冷えて固まり、着用者の運動のパフォーマンスを低下させることを防ぐこともできる。
【0054】
また、第2の部分32を発汗しやすい部位である脇の周囲に亘って形成することで、着用者から出る汗を効率よく吸湿し、発熱させることができ、着用者を保温する熱量を十分確保することができるので、第2の部分32を後身頃12全体に亘って設ける必要がなく、吸湿発熱素材で形成された第2の部分32を必要最低限にすることで、ジャケット本体10の製造コストを低減することができる。
【0055】
さらに、本実施例の保温ジャケット1は、一対の収納部20および第1の部分30を蓄熱素材で形成することで、一対の収納部20内にそれぞれ発熱体2を収納するだけで、背中の中央部を温めることができるため、3つ以上の発熱体2を収容する必要がないため、後身頃12の構成を従来例よりも簡略化するとともに保温ジャケット1の重量を低減し、着用者のパフォーマンスを向上させることもできる。
(他の実施例)
【0056】
上記実施例では発熱体2として使い捨てカイロを使用したが、発熱体2として使用することができるものは使い捨てカイロに限られず、一定時間熱を発生することが可能な物であればよく、例えば充電式カイロ、電子レンジカイロ、温石などを用いることもできる。
【0057】
上記実施例では右袖孔15bおよび左袖孔15aを穴状に形成したが、右袖孔15bおよび左袖孔15aの形状は穴状である必要はなく、腕を通すことができる長袖を形成しても良い。すなわち、上記実施例では、ジャケット本体10を袖なしのベストとして説明したが、長袖のジャケットであっても良い。
【0058】
上記実施例では、右前身頃11bおよび左前身頃11aを吸湿発熱素材により形成したが、右前身頃11bおよび左前身頃11aの素材はこれに限られず、例えば後身頃12の第1の部分30や収納部20と同様に蓄熱素材により形成しても良い。
【0059】
上記実施例では、係合手段14として用いることができるものは密閉性能が確保されるものであればファスナーに限られず、例えば面ファスナーやボタンであっても良い。
【0060】
上記実施例では、第1の部分30が、後身頃12の内側の幅方向中央において、襟元から裾にまで上下方向に形成されているものとして説明したが、特にこれに限られるものではなく、後身頃12の略中央を挟むように並ぶ一対の収納部20を挟む部分のみとしても良い。
【0061】
この構成により、蓄熱素材で形成された第1の部分30を少なくすることができ、保温ジャケット1の製造コストを低減化することができる。
【0062】
上記実施例で、右前身頃11b、左前身頃11aおよび第2の部分32を吸湿発熱素材で形成されたものとして説明したが、特にこれに限られるものではなく、一対の収納部20および第1の部分30が蓄熱素材で形成されていれば良い。
【0063】
上記実施例で、第2の部分32を後身頃12の内側の上半分の領域全体に形成されたものとして説明したが、これに限られるものではなく、右袖孔14bおよび、左袖孔14aの下側の位置から上端部までの領域であればよい。例えば、後身頃12の下端部から上端部に亘って第2の部分32が形成されても良い。
【0064】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく。他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替及び改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0065】
1…保温ジャケット
2…発熱体
10…ジャケット本体
11a…左前身頃 11b…右前身頃 12…後身頃
13a…左接続部13b…右接続部
14…係合手段 14a…被係合部 14b…係合部
15a…左袖 15b…右袖
16a…左ポケット 16b…右ポケット
20…収納部
30…第1の部分 32…第2の部分
【手続補正書】
【提出日】2023-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の胴体の右前側を覆う右前身頃と、前記右前身頃の左側に位置し前記胴体の左前側を覆う左前身頃と、前記右前身頃と前記左前身頃とを接続し前記胴体の後側を覆う後身頃と、前記後身頃の内側に形成された一対の収納部と、を有し、前記右前身頃、前記左前身頃および前記後身頃とで前記胴体を少なくとも保温するジャケット本体と、前記収納部に収納され、熱源として発熱する一対の発熱体と、を備え、前記発熱体の熱でジャケット本体内を加熱して保温する保温ジャケットであって、
前記一対の収納部は、熱を蓄熱する蓄熱素材で形成されており、前記後身頃の略中央を挟むように上下に離間して位置しており、
前記後身頃の内側における前記一対の収納部に挟まれた部分を含む第1の部分は、前記蓄熱素材で形成されており、前記一対の収納部を互いに接続し、前記一対の収納部内に収納された一対の発熱体の熱を相互間に伝達し、蓄熱することを特徴とする保温ジャケット。
【請求項2】
前記ジャケット本体には、さらに、前記右前身頃と前記後身頃との間において、前記着用者の右腕を通すための穴状の右袖孔が形成されており、前記左前身頃と前記後身頃との間において、前記着用者の左腕を通すための穴状の左袖孔が形成されており、
前記後身頃の内側における、前記右袖孔および前記左袖孔よりも下側の位置から上端部に亘る上半分の領域全体の第2の部分は、水分を吸収して熱を発生する吸湿発熱素材で形成されており、前記着用者の脇周りの身体から出る汗も吸湿し熱を発生させることを特徴とする請求項1に記載の保温ジャケット。
【請求項3】
前記後身頃の前記第1の部分は、前記着用者の僧帽筋に沿うように前記後身頃の幅方向中央における前記上端部から下端部に亘って形成されており、前記上端部に近づくにつれて、幅が広く形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の保温ジャケット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、着用者の胴体の右前側を覆う右前身頃と、前記右前身頃の左側に位置し前記胴体の左前側を覆う左前身頃と、前記右前身頃と前記左前身頃とを接続し前記胴体の後側を覆う後身頃と、前記後身頃の内側に形成された一対の収納部と、を有し、前記右前身頃、前記左前身頃および前記後身頃とで前記胴体を少なくとも保温するジャケット本体と、前記収納部に収納され、熱源として発熱する一対の発熱体と、を備え、前記発熱体の熱でジャケット本体内を加熱して保温する保温ジャケットであって、前記一対の収納部は、熱を蓄熱する蓄熱素材で形成されており、前記後身頃の略中央を挟むように上下に離間して位置しており、前記後身頃の内側における前記一対の収納部に挟まれた部分を含む第1の部分は、前記蓄熱素材で形成されており、前記一対の収納部を互いに接続し、前記一対の収納部内に収納された一対の発熱体の熱を相互間に伝達し、蓄熱することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記ジャケット本体には、さらに、前記右前身頃と前記後身頃との間において、前記着用者の右腕を通すための穴状の右袖孔が形成されており、前記左前身頃と前記後身頃との間において、前記着用者の左腕を通すための穴状の左袖孔が形成されており、前記後身頃の内側における、前記右袖孔および前記左袖孔よりも下側の位置から上端部に亘る上半分の領域全体の第2の部分は、水分を吸収して熱を発生する吸湿発熱素材で形成されており、前記着用者の脇周りの身体から出る汗も吸湿し熱を発生させることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記後身頃の前記第1の部分は、前記着用者の僧帽筋に沿うように前記後身頃の幅方向中央における前記上端部から下端部に亘って形成されており、前記上端部に近づくにつれて、幅が広く形成されていることを特徴とする。