(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148005
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンク及びこのタンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
B61D 35/00 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
B61D35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060852
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】591009451
【氏名又は名称】株式会社五光製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利弘
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来の鉄道車両用の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクは、重量やコストや耐久性を軽減することが難しかった。
【解決手段】本発明の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクの製造方法は、ポリエチレン製のタンク本体を成形するための金型の内側面の、FRP樹脂が接着されるタンク本体の外表面を形成する部分に、繊維部材を設ける第一の工程と、上記金型内に、流動化したポリエチレンを流し込みポリエチレン製のタンク本体を形成する第二の工程と、上記ポリエチレン製のタンク本体を上記金型から取り外し、上記繊維部材が入り込んだ上記タンク本体の外表面部の外表面、又は/及び、上記繊維部材に、FRP樹脂を接着する第三の工程とよりなることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の床板の下に固定されるポリエチレン製のタンク本体と、
該タンク本体の外表面部が、内側面に入り込み、外側面が、上記タンク本体の外表面部の外部に露出して設けられた繊維部材と、
上記タンク本体の外表面部の外表面、又は/及び、上記繊維部材に接着されたFRP樹脂とよりなることを特徴とする鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンク。
【請求項2】
鉄道車両の床板の下に固定されるポリエチレン製のタンク本体と、
該タンク本体の外表面を、上下方向、及び、左右方向、及び、前後方向の3方向をそれぞれ覆うように設けたFRP樹脂とよりなることを特徴とする鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンク。
【請求項3】
上記FRP樹脂は、上記床板の下に固定された床固定部及び車両に固定された外部管に接続される、上記タンク本体の接続部を除いた、上記タンク本体の外表面全面を覆うように形成されたことを特徴とする請求項2に記載の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンク。
【請求項4】
上記ポリエチレン製のタンク本体は、ウレタン発泡材が添加されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンク。
【請求項5】
上記車両に固定された外部管と、該外部管に接続される、上記タンク本体の接続部とを連通して連結する弾性部材からなる継手を有することを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンク。
【請求項6】
上記継手は、ゴム継手であることを特徴とする請求項5に記載の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンク。
【請求項7】
ポリエチレン製のタンク本体を成形するための金型の内側面の、FRP樹脂が接着されるタンク本体の外表面を形成する部分に、繊維部材を設ける第一の工程と、
上記金型内に、流動化したポリエチレンを流し込みポリエチレン製のタンク本体を形成する第二の工程と、
上記ポリエチレン製のタンク本体を上記金型から取り外し、上記繊維部材が入り込んだ上記タンク本体の外表面部の外表面、又は/及び、上記繊維部材に、FRP樹脂を接着する第三の工程とよりなることを特徴とする鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクの製造方法。
【請求項8】
上記ポリエチレンは、ウレタン発泡材が添加されていることを特徴とする請求項7に記載の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用の床下に設置される汚物タンク又は水タンク及びこのタンクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両において、トイレや洗面台に水を供給するための水タンクや、トイレからの汚水や汚物を溜めるための汚物タンクは、床上の空間確保のために、床板の下に配置される。
【0003】
上記タンクは、従来、ステンレス製やFRP樹脂製で作られていたが、外気温による断熱対策、線路からの飛び石などによる破損対策、防火対策などために、ポリエチレン製のタンク本体の周囲に断熱材を巻き、その上に外板として鉄板を設置したポリエチレン製タンクがある。
【0004】
例えば、上記ポリエチレン製タンクとしては、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記ポリエチレン製タンクは、重量やコストや耐久性を軽減することが難しかった。
【0007】
本発明は上記の欠点を除くようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクは、鉄道車両の床板の下に固定されるポリエチレン製のタンク本体と、該タンク本体の外表面部が、内側面に入り込み、外側面が、上記タンク本体の外表面部の外部に露出して設けられた繊維部材と、上記タンク本体の外表面部の外表面、又は/及び、上記繊維部材に接着されたFRP樹脂とよりなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクは、鉄道車両の床板の下に固定されるポリエチレン製のタンク本体と、該タンク本体の外表面を、上下方向、及び、左右方向、及び、前後方向の3方向をそれぞれ覆うように設けたFRP樹脂とよりなることを特徴とする。
【0010】
また、上記FRP樹脂は、上記床板の下に固定された床固定部及び車両に固定された外部管に接続される、上記タンク本体の接続部を除いた、上記タンク本体の外表面全面を覆うように形成されたことを特徴とする。
【0011】
また、上記ポリエチレン製のタンク本体は、ウレタン発泡材が添加されていることを特徴とする。
【0012】
また、上記車両に固定された外部管と、該外部管に接続される、上記タンク本体の接続部とを連通して連結する弾性部材からなる継手を有することを特徴とする。
【0013】
また、上記継手は、ゴム継手であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクの製造方法は、ポリエチレン製のタンク本体を成形するための金型の内側面の、FRP樹脂が接着されるタンク本体の外表面を形成する部分に、繊維部材5を設ける第一の工程と、上記金型内に、流動化したポリエチレンを流し込みポリエチレン製のタンク本体を形成する第二の工程と、上記ポリエチレン製のタンク本体を上記金型から取り外し、上記繊維部材が入り込んだ上記タンク本体の外表面部の外表面、又は/及び、上記繊維部材に、FRP樹脂を接着する第三の工程とよりなることを特徴とする。
【0015】
また、上記ポリエチレンは、ウレタン発泡材が添加されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクによれば、ポリエチレン製のタンク本体にFRP樹脂を強固に固定することができ、鉄道車両用のタンクとして使用でき、軽量化、低コスト化、耐久性を上げることができるようになる。
【0017】
また、タンク本体からFRP樹脂の脱落を防止することができるようになる。
【0018】
また、タンクの外部管の接続部の破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクの縦断側面図である。
【
図2】本発明の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクの製造方法の説明用縦断側面図である。
【
図3】本発明の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクの製造方法の説明用縦断側面図である。
【
図4】本発明の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクの製造方法の説明用縦断側面図である。
【
図5】本発明の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクの製造方法の説明用縦断側面図である。
【
図6】本発明の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクの製造方法の説明用縦断側面図である。
【
図7】本発明の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクの縦断側面図である。
【
図8】本発明の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンクの他の実施例の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面によって本発明の実施例を説明する。
【実施例0021】
本発明の鉄道車両用の床下汚物タンク又は水タンク1は、
図1に示すように、鉄道車両の床板2の下に吊り脚3などの床固定具により吊り下げて固定された、ウレタン発泡材が添加されたポリエチレン製のタンク本体4と、内側面において、上記タンク本体4の外表面部が入り込み(浸透し)、外側面が、上記外表面部の外部に露出して(即ち、上記タンク本体4に完全に埋め込まれずに)設けられた布やガラス繊維等のシート状の繊維部材5と、上記繊維部材5を介して、上記ポリエチレン製タンク本体4の外表面部の外表面、又は/及び、上記繊維部材5に接着して設けられた防火性のFRP樹脂6とよりなる。
【0022】
なお、上記タンク本体4の形状は、例えば、直方体状や、横円筒状などがある。
【0023】
また、上記ポリエチレン製のタンク本体4は、ウレタン発泡材が添加されていなくてもよい。
【0024】
また、上記タンク本体4の外表面部は、上記繊維部材5内に形成された、縦横奥方向に複雑に絡み合って伸びる隙間部分内に入り込み(浸透し)、該外表面部の外表面は、上記繊維部材5の外側面まで達せず、上記繊維部材5内までとなる縦横奥方向に凹凸する複雑な形状、又は、上記繊維部材5内までとなる部分と、上記繊維部材5の外側面まで達する部分とによりなる縦横奥方向に凹凸する複雑な形状に形成される。
【0025】
また、上記汚物タンク又は水タンク1の製造方法は、例えば、
図2に示すポリエチレン製のタンク本体を成形する金型7の内側面の、FRP樹脂が接着されるタンク本体の外表面を形成する部分7aに、
図3に示すように、予め、シート状の上記繊維部材5を貼り付けて設ける。
【0026】
なお、貼り付けることなく、繊維部材5を位置させるようにしてもよい。
【0027】
次に、
図4に示すように、上記金型7内に、流動化した、ウレタン発泡材を添加したポリエチレンを流し込む。これにより、従来のように、タンク本体に断熱材を覆う必要性を省くことができるようになる。
【0028】
なお、上記ポリエチレンに、ウレタン発泡材を添加するのを省略してもよい。
【0029】
そして、上記ウレタン発泡材を添加したポリエチレンを冷やして、上記金型7から取り出し、
図5に示すように、ポリエチレン製のタンク本体4を成形する。
【0030】
この時、上記タンク本体4の外表面部は、複雑に重なり合った繊維により形成された、縦横奥方向に複雑に絡み合って伸びる複雑で微細な隙間部分内に入り込み、そして、上記タンク本体4の外表面部の外表面は、上記繊維部材5の外側面まで達せず、上記繊維部材5内までとなる縦横奥方向に凹凸する複雑な形状、又は、上記繊維部材5内までとなる部分と、上記繊維部材5の外側面まで達する部分とによりなる縦横奥方向に凹凸する複雑な形状に形成され、上記タンク本体4の外表面の面積が増えるようになる。
【0031】
次に、
図6に示すように、上記繊維部材5を介して、上記複雑で微細な縦横奥方向の凹凸に形成された上記タンク本体4の外表面部の外表面、又は/及び、上記繊維部材5に、FRP部材6を接着して、ポリエチレン製タンク1を形成する。
【0032】
従来、タンク本体の外表面には、線路からの飛び石等による破損対策、防火対策として鉄板を用いていたが、鉄板では重量が重くなるため、ポリエチレン製タンク本体の外表面に耐火性のFRP樹脂を覆うようにする。
【0033】
しかしながら、ポリエチレンは、接着が難しいので、単に、ポリエチレンにFRP樹脂を接着したポリエチレン製タンクを車両の汚物タンク又は水タンクに使用すると、振動や、路線からの飛び石により、接着したFRP樹脂がはがれてしまう場合がある。
【0034】
そこで、本願発明のように、上記ポリエチレン製タンク本体の外表面部を、繊維部材内に入り込みさせ(浸透させ)、上記ポリエチレン製タンク本体の外表面に複雑で微細な凹凸を形成させ、外表面の接着表面積を増やして、接着することにより、ポリエチレンにFRP樹脂が強固に接着されるようになる。
【0035】
また、上記ポリエチレン製タンク本体の外表面部に、繊維部材を入り込みさせる(浸透させる)ことにより、上記繊維部材5が、上記ポリエチレン製タンク本体4に強固に固定され、そして、この繊維部材5に、FRP樹脂が接着されることにより、上記FRP樹脂が、上記ポリエチレン製タンク本体4に強固に固定されるようになる。
【0036】
また、縦横奥方向の凹凸に形成されたタンク本体の外表面部と、同様に形成された、縦横奥方向の凹凸に形成されたFRP樹脂側の接着部とが、係合しあって、上記タンク本体から、上記FRP樹脂がはがれるのを防ぐことができるようになる。
【0037】
そして、このように形成されることにより、振動や、路線からの飛び石に耐える汚水タンク又は水タンクを形成できるようになる。
【0038】
なお、鉄道車両用のタンクは、車両基地での給水による配管、車両車の手洗、トイレに給水する配管、満水を検知するオーバーフロー管などの外部管が多岐に接続されている。
【0039】
しかしながら、上記ポリエチレン製タンクの場合、車両の振動では、溶液が入っているタンクの表面が大きく歪むため、車両に固定されている外部管と、該外部管が接続される、上記タンク本体の接続部に負荷がかかり破断してしまうおそれがある。
【0040】
そのため、
図7に示すように、上記ポリエチレン製タンク1の接続部1aと各配管などの外部管8とを、ゴム継手等の弾性部材からなる継手9により、連通して連結して、振動の歪を吸収し負担を解消するようにする。
即ち、上記タンクは、例えば、吊り脚3などの床固定具及び外部管8に接続される接続部1aを除く、すべてのタンク本体の外周に、防火性のFRP樹脂6で覆うようにする。
なお、例えば、FRP樹脂を、上記タンク本体の外周面に上下方向に覆うとは、上記タンク本体に対して、FRP樹脂が上下方向に移動できないように覆う事を意味する。