(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148018
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】磁気メモリデバイス
(51)【国際特許分類】
H10B 61/00 20230101AFI20241009BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20241009BHJP
【FI】
H10B61/00
H10N50/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060877
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 恬
(72)【発明者】
【氏名】吉川 将寿
(72)【発明者】
【氏名】村上 俊也
(72)【発明者】
【氏名】東 悠介
(72)【発明者】
【氏名】太田 健介
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 吉昭
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119BB01
4M119CC02
4M119CC05
4M119CC10
4M119DD09
4M119DD17
4M119DD32
4M119DD45
4M119EE03
4M119EE27
4M119JJ09
5F092AC12
5F092AC26
5F092AD03
5F092AD23
5F092AD24
5F092AD25
5F092BB23
5F092BB34
5F092BB36
5F092BB43
5F092BC03
5F092BC07
5F092CA25
(57)【要約】
【課題】磁化反転を安定化させる。
【解決手段】磁気メモリデバイスは、第1方向に延びる第1導電体層と、第1方向に延び、第1方向と交差する第2方向に第1導電体層と並ぶ第2導電体層と、第1導電体層に電気的に接続される第1磁気抵抗効果素子と、第2導電体層に電気的に接続される第2磁気抵抗効果素子と、第2方向に延び、第1磁気抵抗効果素子と接する第3導電体層と、を備える。第1磁気抵抗効果素子にデータを書き込む書込み動作において、第1導電体層には第1電流が印加され、第2導電体層には第2電流が印加され、第3導電体層には、第1電流及び第2電流とは独立に第3電流が印加される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる第1導電体層と、
前記第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向に前記第1導電体層と並ぶ第2導電体層と、
前記第1導電体層に電気的に接続される第1磁気抵抗効果素子と、
前記第2導電体層に電気的に接続される第2磁気抵抗効果素子と、
前記第2方向に延び、前記第1磁気抵抗効果素子と接する第3導電体層と、
を備え、
前記第1磁気抵抗効果素子にデータを書き込む書込み動作において、
前記第1導電体層には、第1電流が印加され、
前記第2導電体層には、第2電流が印加され、
前記第3導電体層には、前記第1電流及び前記第2電流とは独立に第3電流が印加される、
磁気メモリデバイス。
【請求項2】
前記第1方向に延び、前記第1導電体層に対して前記第2導電体層と反対側において前記第2方向に前記第1導電体層と並ぶ第4導電体層と、
前記第4導電体層に接続される第3磁気抵抗効果素子と、
を更に備え、
前記書込み動作において、
前記第4導電体層には、第4電流が、印加される、
請求項1記載の磁気メモリデバイス。
【請求項3】
前記第2磁気抵抗効果素子及び前記第3磁気抵抗効果素子は、前記第1磁気抵抗効果素子と前記第2方向に隣り合う、
請求項2記載の磁気メモリデバイス。
【請求項4】
前記第2電流の方向は、前記第4電流の方向と反平行である、
請求項2記載の磁気メモリデバイス。
【請求項5】
前記第1電流及び前記第2電流に基づいて前記第1磁気抵抗効果素子に印加される磁場は、前記第2方向の成分と、前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向の成分と、を有する、
請求項1記載の磁気メモリデバイス。
【請求項6】
前記第3導電体層は、前記第2磁気抵抗効果素子と更に接する、
請求項1記載の磁気メモリデバイス。
【請求項7】
前記第2電流は、前記第1電流より小さい、
請求項1記載の磁気メモリデバイス。
【請求項8】
前記第2方向に延び、前記第2磁気抵抗効果素子と接する第5導電体層を更に備えた、
請求項1記載の磁気メモリデバイス。
【請求項9】
前記第1磁気抵抗効果素子は、
前記第3導電体層に接する第1強磁性層と、
第2強磁性層と、
前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間の非磁性層と、
を含む、
請求項1記載の磁気メモリデバイス。
【請求項10】
前記書込み動作によって、前記第1強磁性層の磁化方向は、前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向から、前記第3方向と反平行な第4方向に変化し、
前記第2電流に基づいて発生する磁場は、前記第3方向と反平行かつ前記第4方向と平行な成分を有する、
請求項9記載の磁気メモリデバイス。
【請求項11】
前記第3導電体層は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銅(Cu)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、マンガン(Mn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、セレン(Se)、及びポロニウム(Po)から選択される少なくとも1つの元素を含む、
請求項1記載の磁気メモリデバイス。
【請求項12】
前記第1電流の印加が開始される第1時刻、及び前記第2電流の印加が開始される第2時刻は、前記第3電流の印加が開始される第3時刻と略一致し、
前記第1電流の印加が終了する第4時刻、及び前記第2電流の印加が終了する第5時刻は、前記第3電流の印加が終了する第6時刻と略一致する、
請求項1記載の磁気メモリデバイス。
【請求項13】
前記第1電流の印加が開始される第1時刻、及び前記第2電流の印加が開始される第2時刻は、前記第3電流の印加が開始される第3時刻と略一致し、
前記第1電流の印加が終了する第4時刻、及び前記第2電流の印加が終了する第5時刻は、前記第3電流の印加が終了する第6時刻と異なる、
請求項1記載の磁気メモリデバイス。
【請求項14】
前記第1電流の印加が開始される第1時刻、及び前記第2電流の印加が開始される第2時刻は、前記第3電流の印加が開始される第3時刻と異なり、
前記第1電流の印加が終了する第4時刻、及び前記第2電流の印加が終了する第5時刻は、前記第3電流の印加が終了する第6時刻と異なる、
請求項1記載の磁気メモリデバイス。
【請求項15】
前記第1電流の印加が開始される第1時刻は、前記第2電流の印加が開始される第2時刻と異なり、
前記第1電流の印加が終了する第4時刻は、前記第2電流の印加が終了する第5時刻と略一致する、
請求項1記載の磁気メモリデバイス。
【請求項16】
前記第1電流の印加が開始される第1時刻は、前記第2電流の印加が開始される第2時刻と異なり、
前記第1電流の印加が終了する第4時刻は、前記第2電流の印加が終了する第5時刻と異なる、
請求項1記載の磁気メモリデバイス。
【請求項17】
前記第1電流の印加が開始される第1時刻は、前記第2電流の印加が開始される第2時刻と略一致し、
前記第1電流の印加が終了する第4時刻は、前記第2電流の印加が終了する第5時刻と異なる、
請求項1記載の磁気メモリデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、磁気メモリデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗効果素子を記憶素子として用いた磁気メモリデバイスが知られている。磁気抵抗効果素子へデータを書き込む方式として、種々の手法が提案されている。例えば、磁気抵抗効果素子に直接電流を流すことなくデータを書き込む方式として、スピン軌道トルク(Spin Orbit Torque)を用いた方式が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0125654号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0051815号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2019/0244646号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁化反転を安定化させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の磁気メモリデバイスは、第1導電体層と、第2導電体層と、第3導電体層と、第1磁気抵抗効果素子と、第2磁気抵抗効果素子と、を備える。上記第1導電体層は、第1方向に延びる。上記第2導電体層は、上記第1方向に延び、上記第1方向と交差する第2方向に上記第1導電体層と並ぶ。上記第1磁気抵抗効果素子は、第1導電体層に電気的に接続される。上記第2磁気抵抗効果素子は、上記第2導電体層に電気的に接続される。上記第3導電体層は、上記第2方向に延び、上記第1磁気抵抗効果素子と接する。上記第1磁気抵抗効果素子にデータを書き込む書込み動作において、上記第1導電体層には第1電流が印加され、上記第2導電体層には第2電流が印加され、上記第3導電体層には上記第1電流及び上記第2電流とは独立に第3電流が印加される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る磁気メモリデバイスの構成の一例を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態に係るメモリセルアレイの回路構成の一例を示す回路図。
【
図3】第1実施形態に係るメモリストリングの一部の断面構造の一例を示す断面図。
【
図4】第1実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第1例でメモリセルアレイに印加される電圧の一例を示す図。
【
図5】第1実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第1例でメモリセルアレイに印加される電流及び磁場の一例を示す図。
【
図6】第1実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第2例でメモリセルアレイに印加される電圧の一例を示す図。
【
図7】第1実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第2例でメモリセルアレイに印加される電流及び磁場の一例を示す図。
【
図8】第1実施形態における磁気メモリデバイスの書込み動作で印加される電流の印加タイミングの第1印加例を示す図。
【
図9】第1実施形態における磁気メモリデバイスの書込み動作で印加される電流の印加タイミングの第2印加例を示す図。
【
図10】第1実施形態における磁気メモリデバイスの書込み動作で印加される電流の印加タイミングの第3印加例を示す図。
【
図11】第1実施形態における磁気メモリデバイスの書込み動作で印加される電流の印加タイミングの第4印加例を示す図。
【
図12】第1実施形態における磁気メモリデバイスの書込み動作で印加される電流の印加タイミングの第5印加例を示す図。
【
図13】第1実施形態における磁気メモリデバイスの書込み動作で印加される電流の印加タイミングの第6印加例を示す図。
【
図14】第2実施形態に係るメモリセルアレイの回路構成の一例を示す回路図。
【
図15】第2実施形態に係るメモリセルアレイの一部の断面構造の一例を示す断面図。
【
図16】第2実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第1例でメモリセルアレイに印加される電圧の一例を示す図。
【
図17】第2実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第1例でメモリセルアレイに印加される電流及び磁場の一例を示す図。
【
図18】第2実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第2例でメモリセルアレイに印加される電圧の一例を示す図。
【
図19】第2実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第2例でメモリセルアレイに印加される電流及び磁場の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照していくつかの実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する構成要素については、共通する参照符号を付す。また、共通する参照符号を有する複数の構成要素を区別する場合、当該共通する参照符号に添え字を付して区別する。なお、複数の構成要素について特に区別を要さない場合、当該複数の構成要素には、共通する参照符号のみが付され、添え字は付さない。添え字は、下付き文字や上付き文字に限らず、例えば、参照符号の末尾に添加される小文字のアルファベット、記号、及び配列を意味するインデックス等を含む。
【0008】
本明細書において、磁気メモリデバイスは、例えば、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)である。磁気メモリデバイスは、記憶素子として磁気抵抗効果素子を含む。磁気抵抗効果素子は、磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)によってトンネル磁気抵抗効果(Magnetoresistance effect)を有する抵抗変化素子である。この磁気抵抗効果素子は、MTJ素子とも称する。
【0009】
1.第1実施形態
第1実施形態に係る磁気メモリデバイスについて説明する。
【0010】
1.1 構成
まず、第1実施形態に係る磁気メモリデバイスの構成について説明する。
【0011】
1.1.1 磁気メモリデバイス
図1は、第1実施形態に係る磁気メモリデバイスの構成の一例を示すブロック図である。磁気メモリデバイス1は、メモリセルアレイ10、ロウ選択回路11、カラム選択回路12、デコード回路13、書込み回路14、読出し回路15、電圧生成回路16、入出力回路17、及び制御回路18を備える。
【0012】
メモリセルアレイ10は、磁気メモリデバイス1におけるデータの記憶部である。メモリセルアレイ10は、複数のメモリセルMCを備える。複数のメモリセルMCの各々は、行(row)及び列(column)の組に対応付けられる。同一行にあるメモリセルMCは、同一のワード線WLに対応付けられる。同一列にあるメモリセルMCは、同一の読出しビット線RBLに対応付けられる。
【0013】
ロウ選択回路11は、メモリセルアレイ10の行を選択する回路である。ロウ選択回路11は、ワード線WLを介してメモリセルアレイ10と接続される。ロウ選択回路11には、デコード回路13からのアドレスADDのデコード結果(ロウアドレス)が供給される。ロウ選択回路11は、アドレスADDのデコード結果に基づいた行に対応するワード線WLを選択する。以下において、選択されたワード線WLは、選択ワード線WLと言う。また、選択ワード線WL以外のワード線WLは、非選択ワード線WLと言う。
【0014】
カラム選択回路12は、メモリセルアレイ10の列を選択する回路である。カラム選択回路12は、読出しビット線RBLを介してメモリセルアレイ10と接続される。カラム選択回路12には、デコード回路13からのアドレスADDのデコード結果(カラムアドレス)が供給される。カラム選択回路12は、アドレスADDのデコード結果に基づいた列に対応する読出しビット線RBLを選択する。以下において、選択された読出しビット線RBLは、選択ビット線RBLと言う。また、選択ビット線RBL以外の読出しビット線RBLは、非選択ビット線RBLと言う。
【0015】
デコード回路13は、入出力回路17からのアドレスADDをデコードするデコーダである。デコード回路13は、アドレスADDのデコード結果を、ロウ選択回路11、及びカラム選択回路12に供給する。アドレスADDは、カラムアドレス及びロウアドレスを含む。
【0016】
書込み回路14は、例えば、書込みドライバ(図示せず)を含む。書込み回路14は、メモリセルMCへのデータの書込みを行う。
【0017】
読出し回路15は、例えば、センスアンプ(図示せず)を含む。読出し回路15は、メモリセルMCからのデータの読出しを行う。
【0018】
電圧生成回路16は、磁気メモリデバイス1の外部(図示せず)から提供された電源電圧を用いて、メモリセルアレイ10の各種の動作のための電圧を生成する。例えば、電圧生成回路16は、書込み動作の際に必要な種々の電圧を生成し、書込み回路14に出力する。また、例えば、電圧生成回路16は、読出し動作の際に必要な種々の電圧を生成し、読出し回路15に出力する。
【0019】
入出力回路17は、磁気メモリデバイス1の外部との通信を司る。入出力回路17は、磁気メモリデバイス1の外部からのアドレスADDを、デコード回路13に転送する。入出力回路17は、磁気メモリデバイス1の外部からのコマンドCMDを、制御回路18に転送する。入出力回路17は、種々の制御信号CNTを、磁気メモリデバイス1の外部と、制御回路18と、の間で送受信する。入出力回路17は、磁気メモリデバイス1の外部からのデータDATを書込み回路14に転送し、読出し回路15から転送されたデータDATを磁気メモリデバイス1の外部に出力する。
【0020】
制御回路18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を含む。制御回路18は、制御信号CNT及びコマンドCMDに基づいて、磁気メモリデバイス1内のロウ選択回路11、カラム選択回路12、デコード回路13、書込み回路14、読出し回路15、電圧生成回路16、及び入出力回路17の動作を制御する。
【0021】
1.1.2 メモリセルアレイ
次に、第1実施形態に係る磁気メモリデバイスのメモリセルアレイの構成について説明する。
【0022】
図2は、第1実施形態に係るメモリセルアレイの回路構成の一例を示す回路図である。
図2では、各種構成要素が、インデックス(“<>”)を含む添え字によって分類されて示される。
【0023】
メモリセルアレイ10は、複数のワード線WL、複数の読出しビット線RBL、書込みビット線WBL、ソース線SL、及び複数のメモリストリングMSを含む。また、メモリセルアレイ10は、複数のスイッチング素子SEL3を含む。複数のワード線WLは、(M+1)本のワード線WL<0>、…、WL<m>、…、及びWL<M>を含む。Mは、2以上の整数である(0<m<M)。なお、
図2の例では、Mが2以上の整数である場合について示したが、これに限られない。例えば、Mは、0であってもよいし、1であってもよい。複数の読出しビット線RBLは、(N+1)本の読出しビット線RBL<0>、…、RBL<n>、…、及びRBL<N>を含む。Nは、2以上の整数である(0<n<N)。複数のスイッチング素子SEL3は、(N+1)個のスイッチング素子SEL3<0>、…、及びSEL3<N>を含む。複数のメモリストリングMSは、(M+1)個のメモリストリングMS<0>、…、MS<m>、…、及びMS<M>を含む。メモリストリングMS<0>~MS<M>はそれぞれ、ワード線WL<0>~WL<M>に対応付けられる。メモリストリングMS<0>~MS<M>の各々は、同等の構成を有する。以下では、メモリストリングMS<m>を例にして説明する。
【0024】
メモリストリングMS<m>は、スイッチング素子SEL1<m>、配線SOTL<m>、及び(N+1)個のメモリセルMC<m,0>、…、MC<m,n>、…、及びMC<m,N>を含む。
【0025】
スイッチング素子SEL1<m>は、例えばMOSFETのような、3端子型のスイッチング素子である。具体的には、スイッチング素子SEL1<m>は、配線SOTL<m>に接続される第1端と、書込みビット線WBLに接続される第2端と、ワード線WL<m>に接続される制御端と、を有する。
【0026】
配線SOTL<m>は、スイッチング素子SEL1<m>の第1端に接続される第1端と、ソース線SLに接続される第2端と、両端の間の中央部と、を有する。配線SOTL<m>の中央部には、(N+1)個のメモリセルMC<m,0>、…、MC<m,n>、…、及びMC<m,N>が互いに離れて接続される。以下では、配線SOTL<m>の中央部のうち、メモリセルMC<m,0>~MC<m,N>のうちのいずれかと接続される部分を“セル部”とも呼ぶ。配線SOTL<m>の中央部のうち、隣り合う2個のセル部の間の部分を“配線部”とも呼ぶ。配線SOTL<m>の各セル部は、スイッチング素子SEL1<m>を介して書込みビット線WBLに接続される第1端と、ソース線SLに接続される第2端と、を有する。
【0027】
メモリセルMC<m,0>~MC<m,N>はそれぞれ、読出しビット線RBL<0>~RBL<N>に接続される。メモリセルMC<m,0>~MC<m,N>の各々は、同等の構成を有する。以下では、メモリセルMC<m,n>を例にして説明する。
【0028】
メモリセルMC<m,n>は、配線SOTL<m>のうちメモリセルMC<m,n>に対応するセル部、スイッチング素子SEL2<m,n>、及び磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>を含む。
【0029】
スイッチング素子SEL2<m,n>は、例えば、MOSFETのような3端子型のスイッチング素子である。スイッチング素子SEL2<m,n>は、磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>に接続される第1端と、読出しビット線RBL<n>に接続される第2端と、制御端と、を有する。
【0030】
磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>は、スイッチング素子SEL2<m,n>と、配線SOTL<m>のうちメモリセルMC<m,n>に対応するセル部と、の間を直列に接続する。磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>は、抵抗変化素子である。磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>は、その抵抗状態の変化によってデータを不揮発に記憶する記憶素子として機能する。
【0031】
以上のように、各メモリストリングMSは、1本の配線SOTLに接続される(N+1)個のメモリセルMCを含む。このため、メモリセルアレイ10は、(M+1)個のメモリストリングMSを有することにより、(M+1)×(N+1)個のメモリセルMC<0,0>、…、MC<0,n>、…、MC<0,N>、…、MC<m,0>、…、MC<m,n>、…、MC<m,N>、…、MC<M,0>、…、MC<M,n>、…、及びMC<M,N>を含む構成となる。
【0032】
スイッチング素子SEL3<0>~SEL3<N>の各々は、例えば、MOSFETのような3端子型のスイッチング素子である。スイッチング素子SEL3<0>~SEL3<N>の各々は、同等の構成を有する。以下では、スイッチング素子SEL3<n>を例にして説明する。スイッチング素子SEL3<n>は、読出しビット線RBL<n>の経路上に設けられる。スイッチング素子SEL3<n>の第1端には、読出しビット線RBL<n>を介して、(M+1)個のスイッチング素子SEL2<0,n>~SEL2<M,n>が共通接続される。これにより、スイッチング素子SEL3<n>は、読出しビット線RBL<n>に印加される電圧を(M+1)個のスイッチング素子SEL2<0,n>~SEL2<M,n>に転送するか否か、を制御することができる。
【0033】
1.1.3 メモリストリング
次に、第1実施形態に係る磁気メモリデバイスのメモリストリングの構成について説明する。以下では、メモリセルアレイ10が設けられる基板の表面に平行な面をXY平面とする。基板表面に対してメモリセルアレイ10が設けられる方向をZ方向又は上方向とする。XY平面内において互いに交差する方向をX方向及びY方向とする。
【0034】
図3は、第1実施形態に係るメモリストリングの一部の断面構造の一例を示す断面図である。
図3に示されるように、メモリストリングMS<m>は、導電体層30、複数の素子層40、複数の導電体層50、複数の素子層60、複数の導電体層70、及び複数の導電体層80を含む。
図3では、一例として、メモリストリングMS<m>のうち、配線SOTL<m>の一部、及び当該配線SOTL<m>の一部に接続される3個のメモリセルMC<m,n-1>、MC<m,n>、及びMC<m,n+1>が示される。
【0035】
(全体構造)
まず、メモリストリングMSの全体構造について説明する。
【0036】
基板(図示せず)の上方には、絶縁体層20が設けられる。絶縁体層20の上面上には、導電体層30が設けられる。導電体層30は、X方向に延びる。導電体層30は、配線SOTL<m>として使用される。導電体層30のうちZ方向に見て素子層40と重複する部分は、セル部として使用される。導電体層30のうちZ方向に見て素子層40と重複しない部分は、配線部として使用される。
【0037】
導電体層30は、非磁性及び導電性を有する重金属を含む連続膜である。導電体層30は、重金属として、例えば、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、銅(Cu)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、マンガン(Mn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、セレン(Se)、及びポロニウム(Po)から選択される少なくとも1つの元素を含む。導電体層30に重金属として含まれる元素は、酸化物、窒化物、又は硫化物を含んでもよい。また、タングステン(W)又はタンタル(Ta)が含まれる場合、当該元素の構造は、β構造が好ましい。導電体層30には、ルテニウム酸化物(RuO2)やイリジウム酸化物(IrO2)等のような導電性酸化物が用いられてもよい。また、導電体層30には、WTe2、WS2、WSe2等のような2次元層状構造を有するダイカルゴゲナイド化遷移金属が用いられてもよい。導電体層30は、上述した材料を含む単層で構成されていてもよいし、上述した材料を含む複数の層が積層されて構成されていてもよい。導電体層30は、内部を流れる電流により、主としてスピンホール効果起因のスピンを発生させる。また、スピンスプリッタ効果(Spin Splitter Effect)に起因するスピントルク、ラシュバ(Rashba)効果によるスピントルク等を発生させる場合もある。これらのスピントルクを総称して、スピン軌道トルク(SOT:Spin Orbit Torque)と呼ぶ。スピン軌道トルクは、素子層40のうち導電体層30に接する部分に作用する。
【0038】
導電体層30の上面上には、複数の素子層40が設けられる。複数の素子層40の各々は、Z方向に延びる柱形状を有する。複数の素子層40の各々は、磁気抵抗効果素子MTJとして使用される。素子層40の構成の詳細については、後述する。
【0039】
複数の素子層40の各々の上面上には、導電体層50が設けられる。複数の導電体層50の各々は、Z方向に延びる柱形状を有する。複数の導電体層50の各々は、素子層40と素子層60との間を電気的に接続する電極として使用される。
【0040】
複数の導電体層50の各々の上面上には、素子層60が設けられる。複数の素子層60の各々は、Z方向に延びる柱形状を有する。複数の素子層60の各々は、3端子型のスイッチング素子として使用される。素子層60の構成の詳細については、後述する。
【0041】
複数の素子層60の各々の上面上には、導電体層70が設けられる。複数の導電体層70の各々は、Z方向に延びる柱形状を有する。複数の導電体層70の各々は、素子層60と導電体層80との間を電気的に接続する電極として使用される。
【0042】
複数の導電体層70の各々の上面上には、導電体層80が設けられる。複数の導電体層80の各々は、Y方向に延びる。複数の導電体層80は、X方向に並ぶ。複数の導電体層80の各々は、読出しビット線RBLとして使用される。
【0043】
素子層40、導電体層50、素子層60、導電体層70、及び導電体層80は、絶縁体層90によって覆われる。
【0044】
(磁気抵抗効果素子MTJ)
次に、メモリストリングMSに含まれる磁気抵抗効果素子MTJの構造について説明する。
【0045】
複数の素子層40の各々は、強磁性層41、非磁性層42、強磁性層43、非磁性層44、及び強磁性層45を含む。強磁性層41、非磁性層42、強磁性層43、非磁性層44、及び強磁性層45は、この順に、下方から上方に向けて積層される。
【0046】
強磁性層41は、導電体層30の上面と接するように設けられる。強磁性層41は、強磁性を有する導電膜である。強磁性層41は、記憶層(Storage Layer)として使用される。強磁性層41は、膜面に垂直な方向(Z方向)に磁化容易軸方向を有する。強磁性層41には、導電体層30において発生したスピン軌道トルクが作用する。所定の大きさのスピン軌道トルクが作用した場合、強磁性層41の磁化方向は、反転するように構成される。
【0047】
強磁性層41は、一般的には、コバルト(Co)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni)から選択されるいずれかの元素を用いた強磁性層である。コバルト鉄(CoFe)合金、鉄(Fe)、コバルト鉄ボロン(CoFeB)、鉄ボロン(FeB)、コバルトボロン(CoB)、及びコバルト鉄ニッケルボロン(CoFeNiB)等が垂直磁化になる代表的な強磁性層である。これらは、体心立方構造(BCC構造)を有する。また、ボロン(B)に代わる元素としては、リン(P)、炭素(C)等も挙げられる。上述したCoFeB等の磁性材料は、NaCl(001)構造を有する酸化物と接することによって、界面で垂直磁気異方性を発生させる。MgO(001)/CoFeB積層膜等がその典型である。
【0048】
強磁性層41の上面上には、非磁性層42が設けられる。非磁性層42は、非磁性を有する絶縁膜である。非磁性層42は、トンネルバリア層(Tunnel Barrier Layer)として使用される。非磁性層42は、強磁性層41と強磁性層43との間に設けられて、これら2つの強磁性層と共に磁気トンネル接合を形成する。すなわち、磁気トンネル接合部分で磁気抵抗効果が発生する。また、強磁性層41の界面層にコバルト鉄ボロン(CoFeB)等の初期アモルファス層が用いられる場合、非磁性層42は、強磁性層41の結晶化処理において、強磁性層41との界面から結晶質の膜を成長させるための核となるシード材として機能する。同様に、強磁性層43の界面層としてコバルト鉄ボロン(CoFeB)が用いられる場合には、非磁性層42は、強磁性層43に対してもシード材として機能する。ここで、初期アモルファス層とは、成膜直後にアモルファス状態であり、アニール処理後に結晶化する層である。非磁性層42は、膜面が(001)面に配向した正方晶系又は立方晶系の構造を有する。非磁性層42に用いられる酸化物としては、例えば、酸化マグネシウム(MgO)が代表的である。非磁性層42に用いられる酸化物のその他の例としては、酸化マグネシウムアルミニウム(MgAlOx)等も挙げられる。以下は、酸化マグネシウム(MgO)が適用される場合について説明する。酸化マグネシウム(MgO)は、NaCl構造を有する。非磁性層42に酸化マグネシウム(MgO)が用いられる場合、酸化マグネシウム(MgO)の(001)界面とコバルト鉄ボロン(CoFeB)の(001)界面とは整合してアニール処理により結晶成長する。このため、コバルト鉄ボロン(CoFeB)は、(001)配向した体心立方構造となる。
【0049】
非磁性層42の上面上には、強磁性層43が設けられる。強磁性層43は、強磁性を有する導電膜である。強磁性層43は、参照層(Reference Layer)として使用される。強磁性層43は、膜面に垂直な方向(Z方向)に磁化容易軸方向を有する。強磁性層43の磁化方向は、固定されている。なお、「磁化方向が固定されている」とは、強磁性層41の磁化方向を反転させ得る大きさのトルクによって、磁化方向が変化しないことを意味する。
図3の例では、強磁性層43の磁化方向は、強磁性層41の方向を向いている。通常、強磁性層43には界面層を含む。強磁性層43の界面層としては、コバルト鉄ボロン(CoFeB)等の初期アモルファス層が用いられる。更に、当該コバルト鉄ボロン(CoFeB)層のうち、酸化マグネシウム(MgO)層に接する面とは反対側の面と接するように、補助的な強磁性層が設けられる。当該補助的な強磁性層は、例えば、コバルト白金(CoPt)、コバルトニッケル(CoNi)、及びコバルトパラジウム(CoPd)から選択される少なくとも1つの合金膜を含む。また、当該補助的な強磁性層としては、Co/Pt積層膜、Co/Pd積層膜等の積層膜も用いることができる。初期アモルファス層となっているコバルト鉄ボロン(CoFeB)層は、上記のCoPt、CoPd、Co/Pt積層膜、Co/Pd積層膜等と積層して用いられる。この場合、強磁性層43のうちの界面層、例えば上記したCoFeB層は、他の層よりも(001)配向したMgOが非磁性層42側に形成される。
【0050】
強磁性層43の上面上には、非磁性層44が設けられる。非磁性層44は、非磁性を有する導電膜である。非磁性層44は、スペーサ層(Spacer Layer)として使用される。非磁性層44は、例えば、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、及びクロム(Cr)から選択される元素又はこれらの合金からなる。
【0051】
非磁性層44の上面上には、強磁性層45が設けられる。強磁性層45は、強磁性を有する導電膜である。強磁性層45は、シフトキャンセル層(Shift Cancelling Layer)として使用される。強磁性層45は、膜面に垂直な方向(Z方向)に磁化容易軸方向を有する。強磁性層45は、例えば、コバルト白金(CoPt)、コバルトパラジウム(CoPd)、コバルトパラジウム白金(CoPdPt)、及びコバルトクロム白金(CoCrPt)から選択される少なくとも1つの合金層を含む。また、強磁性層45として、Co/Pt積層膜、Co/Pd積層膜、及びCo/Ni積層膜等の積層膜も用いることができる。
【0052】
強磁性層43及び強磁性層45は、非磁性層44によって反強磁性的に結合される。すなわち、強磁性層43及び強磁性層45は、互いに反平行な磁化方向を有するように結合される。このような強磁性層43、非磁性層44、及び強磁性層45の反強磁性的磁気結合を、SAF(Synthetic Anti - Ferromagnetic)カップリングという。SAF結合状態により、強磁性層45は、強磁性層43の漏洩磁界が強磁性層41の磁化方向の変化に与える影響を相殺し、強磁性層41に与える実質的な強磁性層43の漏洩磁界の影響を低減することができる。
【0053】
磁気抵抗効果素子MTJは、記憶層及び参照層の磁化方向の相対関係が平行か反平行かによって、低抵抗状態及び高抵抗状態のいずれかを取ることが出来る。磁気メモリデバイス1では、このような磁気抵抗効果素子MTJに書込み電流を流すことなく、参照層の磁化方向に対する記憶層の磁化方向を制御する。具体的には、配線SOTLに電流を流すことによって発生させたスピン軌道トルクを利用した書込み方式が採用される。
【0054】
配線SOTLに、X方向に或る大きさの書込み電流Ic0を流すと、記憶層及び参照層の磁化方向の相対関係は、平行になる。この平行状態の場合、磁気抵抗効果素子MTJの抵抗値は最も低くなり、磁気抵抗効果素子MTJは低抵抗状態に設定される。この低抵抗状態は、「P(Parallel)状態」と呼ばれ、例えばデータ“0”の状態と規定される。
【0055】
また、配線SOTLに、書込み電流Ic0と反対方向に書込み電流Ic1を流すと、記憶層及び参照層の磁化方向の相対関係は、反平行になる。この反平行状態の場合、磁気抵抗効果素子MTJの抵抗値は最も高くなり、磁気抵抗効果素子MTJは高抵抗状態に設定される。この高抵抗状態は、「AP(Anti - Parallel)状態」と呼ばれ、例えばデータ“1”の状態と規定される。
【0056】
なお、データ“1”及びデータ“0”の規定の仕方は、上述した例に限られない。例えば、P状態をデータ“1”と規定し、AP状態をデータ“0”と規定してもよい。
【0057】
(スイッチング素子SEL2)
次に、メモリストリングMSに含まれるスイッチング素子SEL2の構造について説明する。
【0058】
素子層60は、半導体膜61、絶縁体膜62、及び導電体層63を含む。素子層60は、例えば、SGT(Surrounding Gate Transistor)構造を有している。
【0059】
半導体膜61は、Z方向に見て素子層60の中央部に設けられる。半導体膜61は、Z方向に延び、導電体層50に接する下端と、導電体層70に接する上端と、を有する。半導体膜61は、スイッチング素子SEL2の電流経路(チャネル)として使用される。半導体膜61は、例えば、シリコン(Si)を含む。
【0060】
絶縁体膜62は、半導体膜61の側面を覆う。絶縁体膜62は、スイッチング素子SEL2のゲート絶縁膜として使用される。絶縁体膜62は、例えば、酸化シリコン(SiO2)を含む。
【0061】
導電体層63は、絶縁体膜62の側面の一部を覆う。導電体層63は、スイッチング素子SEL2のゲートとして使用される。導電体層63は、例えば、タングステン(W)を含む。
【0062】
1.2 書込み動作
次に、第1実施形態に係る磁気メモリデバイスの書込み動作について説明する。
【0063】
1.2.1 第1例
まず、書込み動作の第1例について説明する。書込み動作の第1例は、配線SOTLに書込み電流Ic0を流してデータ“0”を書き込む場合に対応する。
【0064】
図4は、第1実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第1例でメモリセルアレイに印加される電圧の一例を示す図である。
図4では、メモリセルアレイ10のうち、3本の配線SOTL<m-1>、SOTL<m>、及びSOTL<m+1>、並びに3本の読出しビット線RBL<n-1>、RBL<n>、及びRBL<n+1>に印加される電圧の一例が示される。なお、
図4では、オン状態のスイッチング素子SEL2及びSEL3の各々には“○”が付され、オフ状態のスイッチング素子SEL2及びSEL3の各々には“×”が付される。また、
図4では、書込み対象(すなわち、選択状態)のメモリセルMC<m,n>が、ハッチングされて示される。
【0065】
選択メモリセルMC<m,n>に対して書込み動作の第1例を実行する場合、全てのスイッチング素子SEL2は、オフ状態となる。スイッチング素子SEL3<n-1>、SEL3<n>、及びSEL3<n+1>は、オン状態となる。そして、その他の全てのスイッチング素子SEL3は、オフ状態となる。
【0066】
また、配線SOTL<m>の第1端及び第2端にはそれぞれ、電圧Vc0及びVSSが印加される。電圧VSSは、例えば、0Vである。電圧Vc0は、配線SOTLに書込み電流Ic0<m>(図示せず)を流すための電圧である。そして、配線SOTL<m>の両隣に位置する配線SOTL<m-1>及びSOTL<m+1>の各々の第1端及び第2端には、電圧VSSが印加される。なお、
図4には図示されていないが、その他の配線SOTLの各々の第1端及び第2端には、電圧VSSが印加される。
【0067】
また、選択ビット線RBL<n>の第1端及び第2端にはそれぞれ、電圧VSS及びVwが印加される。選択ビット線RBL<n>の第1端は、スイッチング素子SEL3<n>に対してメモリセルアレイ10と反対側の端部である。選択ビット線RBL<n>の第2端は、スイッチング素子SEL3<n>との間でメモリセルアレイ10を挟む側の端部である。電圧Vwは、選択ビット線RBL<n>に電流Iw0<n>(図示せず)を流すための電圧である。
【0068】
選択ビット線RBL<n>の両隣のうちの一方に位置する非選択ビット線RBL<n-1>の第1端及び第2端にはそれぞれ、電圧k1Vw及びVSSが印加される。非選択ビット線RBL<n-1>の第1端は、スイッチング素子SEL3<n-1>に対してメモリセルアレイ10と反対側の端部である。非選択ビット線RBL<n-1>の第2端は、スイッチング素子SEL3<n-1>との間でメモリセルアレイ10を挟む側の端部である。電圧k1Vwは、電圧Vwのk1倍の電圧である(0<k1<1)。電圧k1Vwは、非選択ビット線RBL<n-1>に電流Iw0<n-1>を流すための電圧である。
【0069】
選択ビット線RBL<n>の両隣のうちの他方に位置する非選択ビット線RBL<n+1>の第1端及び第2端にはそれぞれ、電圧VSS及びk2Vwが印加される。非選択ビット線RBL<n+1>の第1端は、スイッチング素子SEL3<n+1>に対してメモリセルアレイ10と反対側の端部である。非選択ビット線RBL<n+1>の第2端は、スイッチング素子SEL3<n+1>との間でメモリセルアレイ10を挟む側の端部である。電圧k2Vwは、電圧Vwのk2倍の電圧である(0<k2<1)。電圧k2Vwは、非選択ビット線RBL<n+1>に電流Iw0<n+1>を流すための電圧である。なお、k1及びk2は、互いに異なっていてもよいし、等しくてもよい。
【0070】
図5は、第1実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第1例でメモリセルアレイに印加される電流及び磁場の一例を示す図である。
図5では、
図4に示された電圧Vc0、Vw、k
1Vw、及びk
2Vwによってそれぞれ生じる電流Ic0<m>、Iw0<n>、Iw0<n-1>、及びIw0<n+1>、並びに磁場Hw0<n>、Hw0<n-1>、及びHw0<n+1>と、選択メモリセルMC<m,n>における磁化方向の変化と、が示される。
【0071】
上述の通り、配線SOTL<m>の両端にはそれぞれ、電圧Vc0及びVSSが印加される。これにより、導電体層30の紙面左側から紙面右側(
図5における+X方向)に向けて、書込み電流Ic0<m>が流れる。書込み電流Ic0<m>が導電体層30内を流れることにより、強磁性層41の磁化方向を強磁性層43に対して平行にしようとするスピン軌道トルクが発生する。スピン軌道トルクは、導電体層30に接する全ての強磁性層41に作用する。
【0072】
また、上述の通り、選択ビット線RBL<n>の両端にはそれぞれ、電圧VSS及びVwが印加される。非選択ビット線RBL<n-1>の両端にはそれぞれ、電圧k
1Vw及びVSSが印加される。非選択ビット線RBL<n+1>の両端にはそれぞれ、電圧VSS及びk
2Vwが印加される。これにより、選択ビット線RBL<n>に対応する導電体層80には、紙面奥側から紙面手前側(
図5における-Y方向)に向けて、電流Iw0<n>が流れる。非選択ビット線RBL<n-1>に対応する導電体層80には、紙面手前側から紙面奥側(
図5における+Y方向)に向けて、電流Iw0<n-1>が流れる。選択ビット線RBL<n+1>に対応する導電体層80には、紙面奥側から紙面手前側(
図5における-Y方向)に向けて、電流Iw0<n+1>が流れる。電流Iw0<n-1>及びIw0<n+1>はそれぞれ、例えば、電流Iw0<n>のk
1倍及びk
2倍の大きさとなる。すなわち、電流Iw0<n-1>及びIw0<n+1>の電流値は、電流Iw0<n>の電流値より小さい。
【0073】
電流Iw0<n>、Iw0<n-1>、Iw0<n+1>により、導電体層30と選択メモリセルMC<m,n>に対応する強磁性層41との界面近傍には、それぞれ磁場Hw0<n>、Hw0<n-1>、及びHw0<n+1>が印加される。磁場Hw0<n>、Hw0<n-1>、及びHw0<n+1>はそれぞれ、電流Iw0<n>、Iw0<n-1>、及びIw0<n+1>を中心とする同心円状に、電流Iw0<n>、Iw0<n-1>、及びIw0<n+1>の方向に対して反時計回りの方向に印加される。
【0074】
これにより、
図5の例では、選択メモリセルMC<m,n>に印加される磁場Hw0<n>は、電流Ic0<m>が流れる方向(+X方向)となる。また、
図5の例では、選択メモリセルMC<m,n>に印加される磁場Hw0<n-1>及びHw0<n+1>の方向は、電流Ic0<m>が流れる方向に対して-Z方向に傾いた方向となる。そして、選択メモリセルMC<m,n>に印加される磁場Hw0<n-1>及びHw0<n+1>は、-Z方向に互いに強め合う方向に印加される。このため、選択メモリセルMC<m,n>に印加される磁場Hw0<n>、Hw0<n-1>、及びHw0<n+1>の合成磁場は、+X方向の成分と、-Z方向の成分とを有する磁場となる。
【0075】
なお、磁場Hw0<n>の方向は、導電体層30を構成する材料に応じて決定される。このため、磁場Hw0<n>の方向は、電流Ic0<m>が流れる方向と反対方向(-X方向)となる場合もある。また、磁場Hw0<n-1>及びHw0<n+1>の合成磁場の方向は、当該書込み動作によって決定される強磁性層41の磁化方向(-Z方向)の成分を有する。
【0076】
選択メモリセルMC<m,n>に印加される磁場Hw0<n>、Hw0<n-1>、及びHw0<n+1>の合成磁場のX方向の成分は、スピン軌道トルクによる選択メモリセルMC<m,n>の強磁性層41の磁化方向の反転をアシストする。選択メモリセルMC<m,n>に印加される磁場Hw0<n>、Hw0<n-1>、及びHw0<n+1>の合成磁場のZ方向の成分は、スピン軌道トルクによる選択メモリセルMC<m,n>の強磁性層41の磁化方向の反転速度を速めると共に、反転過程におけるフラストレーションを抑制する。これにより、選択メモリセルMC<m,n>の強磁性層41の磁化方向は、強磁性層43の磁化方向に対して平行な方向に反転する。
【0077】
以上のように動作することにより、選択メモリセルMC<m,n>にデータ“0”が書き込まれる。
【0078】
1.2.2 第2例
次に、書込み動作の第2例について説明する。書込み動作の第2例は、配線SOTLに書込み電流Ic1を流してデータ“1”を書き込む場合に対応する。
【0079】
図6は、第1実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第2例でメモリセルアレイに印加される電圧の一例を示す図である。
図6は、書込み動作の第1例における
図4に対応する。
【0080】
選択メモリセルMC<m,n>に対して書込み動作の第2例を実行する場合、全てのスイッチング素子SEL2は、オフ状態となる。スイッチング素子SEL3<n-1>、SEL3<n>、及びSEL3<n+1>は、オン状態となる。そして、その他の全てのスイッチング素子SEL3は、オフ状態となる。
【0081】
また、配線SOTL<m>の第1端及び第2端にはそれぞれ、電圧VSS及びVc1が印加される。電圧Vc1は、配線SOTLに書込み電流Ic1<m>(図示せず)を流すための電圧である。このように、書込み動作の第2例で配線SOTL<m>に印加される電圧は、書込み動作の第1例で配線SOTL<m>に印加される電圧と極性が反転し、かつ大きさも異なり得る。そして、配線SOTL<m>の両隣に位置する配線SOTL<m-1>及びSOTL<m+1>の各々の第1端及び第2端には、電圧VSSが印加される。なお、
図6には図示されていないが、その他の配線SOTLの各々の第1端及び第2端には、電圧VSSが印加される。
【0082】
選択ビット線RBL<n>の第1端及び第2端にはそれぞれ、電圧VSS及びVwが印加される。非選択ビット線RBL<n-1>の第1端及び第2端にはそれぞれ、電圧VSS及びk1Vwが印加される。非選択ビット線RBL<n+1>の第1端及び第2端にはそれぞれ、電圧k2Vw及びVSSが印加される。このように、書込み動作の第2例で選択ビット線RBL<n>に印可される電圧は、書込み動作の第1例で選択ビット線RBL<n>に印加される電圧と同等である。一方、書込み動作の第2例で非選択ビット線RBL<n-1>及びRBL<n+1>に印加される電圧はそれぞれ、書込み動作の第1例で非選択ビット線RBL<n-1>及びRBL<n+1>に印加される電圧と極性が反転する。
【0083】
図7は、第1実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第2例でメモリセルアレイに印加される電流及び磁場の一例を示す図である。
図7は、書込み動作の第1例における
図5に対応する。
【0084】
上述の通り、配線SOTL<m>の両端にはそれぞれ、電圧VSS及びVc1が印加される。これにより、導電体層30の紙面右側から紙面左側(
図7における-X方向)に向けて、書込み電流Ic1<m>が流れる。書込み電流Ic1<m>が導電体層30内を流れることにより、強磁性層41の磁化方向を強磁性層43に対して反平行にしようとするスピン軌道トルクが発生する。スピン軌道トルクは、導電体層30に接する全ての強磁性層41に作用する。
【0085】
また、上述の通り、選択ビット線RBL<n>の両端にはそれぞれ、電圧VSS及びVwが印加される。非選択ビット線RBL<n-1>の両端にはそれぞれ、電圧VSS及びk
1Vwが印加される。非選択ビット線RBL<n+1>の両端にはそれぞれ、電圧k
2Vw及びVSSが印加される。これにより、選択ビット線RBL<n>に対応する導電体層80には、紙面奥側から紙面手前側(
図7における-Y方向)に向けて、電流Iw1<n>が流れる。非選択ビット線RBL<n-1>に対応する導電体層80には、紙面奥側から紙面手前側(
図7における-Y方向)に向けて、電流Iw1<n-1>が流れる。選択ビット線RBL<n+1>に対応する導電体層80には、紙面手前側から紙面奥側(
図7における+Y方向)に向けて、電流Iw1<n+1>が流れる。電流Iw1<n-1>及びIw1<n+1>はそれぞれ、例えば、電流Iw1<n>のk
1倍及びk
2倍の大きさとなる。すなわち、電流Iw1<n-1>及びIw1<n+1>の電流値は、電流Iw1<n>の電流値より小さい。
【0086】
電流Iw1<n>、Iw1<n-1>、Iw1<n+1>により、導電体層30と選択メモリセルMC<m,n>に対応する強磁性層41との界面近傍には、それぞれ磁場Hw1<n>、Hw1<n-1>、及びHw1<n+1>が印加される。選択メモリセルMC<m,n>に印加される磁場Hw1<n>の方向は、電流Ic1<m>が流れる方向と反対(+X方向)となる。選択メモリセルMC<m,n>に印加される磁場Hw1<n-1>及びHw1<n+1>の方向は、電流Ic1<m>が流れる方向に対して+Z方向に傾いた方向となる。そして、選択メモリセルMC<m,n>に印加される磁場Hw1<n-1>及びHw1<n+1>は、+Z方向に互いに強め合う方向に印加される。このため、選択メモリセルMC<m,n>に印加される磁場Hw1<n>、Hw1<n-1>、及びHw1<n+1>の合成磁場は、+X方向の成分と、+Z方向の成分とを有する磁場となる。
【0087】
なお、磁場Hw1<n>の方向は、磁場Hw0<n>の方向と同様に、導電体層30を構成する材料に応じて決定される。このため、磁場Hw1<n>の方向は、書き込まれるデータによらず変わらない。また、磁場Hw1<n-1>及びHw1<n+1>の合成磁場の方向は、当該書込み動作によって決定される強磁性層41の磁化方向(+Z方向)の成分を有する。
【0088】
選択メモリセルMC<m,n>に印加される磁場Hw1<n>、Hw1<n-1>、及びHw1<n+1>の合成磁場のX方向の成分は、スピン軌道トルクによる選択メモリセルMC<m,n>の強磁性層41の磁化方向の反転をアシストする。選択メモリセルMC<m,n>に印加される磁場Hw1<n>、Hw1<n-1>、及びHw1<n+1>の合成磁場のZ方向の成分は、スピン軌道トルクによる選択メモリセルMC<m,n>の強磁性層41の磁化方向の反転速度を速めると共に、反転過程におけるフラストレーションを抑制する。これにより、選択メモリセルMC<m,n>の強磁性層41の磁化方向は、強磁性層43の磁化方向に対して反平行な方向に反転する。
【0089】
以上のように動作することにより、選択メモリセルMC<m,n>にデータ“1”が書き込まれる。
【0090】
なお、書込み動作の第1例における磁場Hw0<n>、Hw0<n-1>、及びHw0<n+1>の合成磁場、並びに書込み動作の第2例における磁場Hw1<n>、Hw1<n-1>、及びHw1<n+1>の合成磁場は、非選択メモリセルMC<m,n-1>及びMC<m,n+1>にも作用する。しかしながら、非選択メモリセルMC<m,n-1>及びMC<m,n+1>に印加される合成磁場の大きさは、強磁性層41の磁化方向を反転させるための磁場の大きさに対して十分小さい。このため、書込み動作の第1例及び第2例のいずれの場合においても、非選択メモリセルMC<m,n-1>及びMC<m,n+1>にはデータは書き込まれない。
【0091】
1.2.3 電流の印加タイミング
次に、書込み動作の際に印加される電流の印加タイミングについて説明する。以下では、書込み動作の第1例及び第2例のいずれにも適用され得る6個の印加例について説明する。以下では、説明の便宜上、電流Ic0及びIc1は、単に電流Icと記載する。同様に、電流Iw0<n>及びIw1<n>、Iw0<n-1>及びIw1<n-1>、並びにIw0<n+1>及びIw1<n+1>はそれぞれ、単に電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>と記載する。
(第1印加例)
図8は、第1実施形態における磁気メモリデバイスの書込み動作で印加される電流の印加タイミングの第1印加例を示す図である。第1印加例は、電流Icの印加開始時刻と、電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>の各々の印加開始時刻とが略一致し、かつ電流Icの印加終了時刻と、電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>の各々の印加終了時刻とが略一致する場合に対応する。
【0092】
図8に示されるように、電流Icの印加開始時刻Tcsは、電流Iw<n>の印加開始時刻Tws<n>、電流Iw<n-1>の印加開始時刻Tws<n-1>、及び電流Iw<n+1>の印加開始時刻Tws<n+1>と略一致していてもよい。また、電流Icの印加終了時刻Tceは、電流Iw<n>の印加終了時刻Twe<n>、電流Iw<n-1>の印加終了時刻Twe<n-1>、及び電流Iw<n+1>の印加終了時刻Twe<n+1>と略一致していてもよい。
(第2印加例)
図9は、第1実施形態における磁気メモリデバイスの書込み動作で印加される電流の印加タイミングの第2印加例を示す図である。第2印加例は、電流Icの印加開始時刻と、電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>の各々の印加開始時刻とが略一致し、かつ電流Icの印加終了時刻と、電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>の各々の印加終了時刻とが異なる場合に対応する。
【0093】
図9に示されるように、電流Icの印加開始時刻Tcsは、電流Iw<n>の印加開始時刻Tws<n>、電流Iw<n-1>の印加開始時刻Tws<n-1>、及び電流Iw<n+1>の印加開始時刻Tws<n+1>と略一致していてもよい。また、電流Icの印加終了時刻Tceは、電流Iw<n>の印加終了時刻Twe<n>、電流Iw<n-1>の印加終了時刻Twe<n-1>、及び電流Iw<n+1>の印加終了時刻Twe<n+1>と異なっていてもよい。
【0094】
なお、
図9では、電流Icの印加が終了した後に、電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>の印加が終了する場合について示されているが、第2印加例はこれに限られない。例えば、第2印加例は、電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>の印加が終了した後に、電流Icの印加が終了する場合を含み得る。ただし、強磁性層41の磁化反転の安定性を向上させる観点からは、電流Icの印加が終了した後に、電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>の印加が終了する場合がより好ましい。
(第3印加例)
図10は、第1実施形態における磁気メモリデバイスの書込み動作で印加される電流の印加タイミングの第3印加例を示す図である。第3印加例は、電流Icの印加開始時刻と、電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>の各々の印加開始時刻とが異なり、かつ電流Icの印加終了時刻と、電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>の各々の印加終了時刻とが異なる場合に対応する。
【0095】
図10に示されるように、電流Icの印加開始時刻Tcsは、電流Iw<n>の印加開始時刻Tws<n>、電流Iw<n-1>の印加開始時刻Tws<n-1>、及び電流Iw<n+1>の印加開始時刻Tws<n+1>と異なっていてもよい。また、電流Icの印加終了時刻Tceは、電流Iw<n>の印加終了時刻Twe<n>、電流Iw<n-1>の印加終了時刻Twe<n-1>、及び電流Iw<n+1>の印加終了時刻Twe<n+1>と異なっていてもよい。
【0096】
また、
図10では、
図9と同様に、電流Icの印加が終了した後に、電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>の印加が終了する場合について示されているが、第2印加例はこれに限られない。例えば、第3印加例は、電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>の印加が終了した後に、電流Icの印加が終了する場合を含み得る。ただし、強磁性層41の磁化反転の安定性を向上させる観点からは、電流Icの印加が終了した後に、電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>の印加が終了する場合がより好ましい。
(第4印加例)
図11は、第1実施形態における磁気メモリデバイスの書込み動作で印加される電流の印加タイミングの第4印加例を示す図である。第4印加例は、電流Iw<n>の印加開始時刻と、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>の各々の印加開始時刻とが異なり、かつ電流Iw<n>の印加終了時刻と、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>の各々の印加終了時刻とが略一致する場合に対応する。
【0097】
図11に示されるように、電流Iw<n>の印加開始時刻Tws<n>は、電流Iw<n-1>の印加開始時刻Tws<n-1>、及び電流Iw<n+1>の印加開始時刻Tws<n+1>と異なっていてもよい。また、電流Iw<n>の印加終了時刻Twe<n>は、電流Iw<n-1>の印加終了時刻Twe<n-1>、及び電流Iw<n+1>の印加終了時刻Twe<n+1>と略一致していてもよい。
【0098】
なお、
図11では、電流Iw<n>の印加が開始した後に、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>の印加が開始する場合について示されているが、第4印加例はこれに限られない。例えば、第4印加例は、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>の印加が開始した後に、電流Iw<n>の印加が開始する場合を含み得る。
(第5印加例)
図12は、第1実施形態における磁気メモリデバイスの書込み動作で印加される電流の印加タイミングの第5印加例を示す図である。第5印加例は、電流Iw<n>の印加開始時刻と、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>の各々の印加開始時刻とが異なり、かつ電流Iw<n>の印加終了時刻と、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>の各々の印加終了時刻とが異なる場合に対応する。
【0099】
図12に示されるように、電流Iw<n>の印加開始時刻Tws<n>は、電流Iw<n-1>の印加開始時刻Tws<n-1>、及び電流Iw<n+1>の印加開始時刻Tws<n+1>と異なっていてもよい。また、電流Iw<n>の印加終了時刻Twe<n>は、電流Iw<n-1>の印加終了時刻Twe<n-1>、及び電流Iw<n+1>の印加終了時刻Twe<n+1>と異なっていてもよい。
【0100】
なお、
図12では、
図11と同様に、電流Iw<n>の印加が開始した後に、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>の印加が開始する場合について示されているが、第4印加例はこれに限られない。例えば、第4印加例は、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>の印加が開始した後に、電流Iw<n>の印加が開始する場合を含み得る。
【0101】
また、
図12では、電流Iw<n>の印加が終了した後に、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>の印加が終了する場合について示されているが、第5印加例はこれに限られない。例えば、第5印加例は、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>の印加が終了した後に、電流Iw<n>の印加が終了する場合を含み得る。
(第6印加例)
図13は、第1実施形態における磁気メモリデバイスの書込み動作で印加される電流の印加タイミングの第6印加例を示す図である。第6印加例は、電流Iw<n>の印加開始時刻と、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>の各々の印加開始時刻とが略一致し、かつ電流Iw<n>の印加終了時刻と、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>の各々の印加終了時刻とが異なる場合に対応する。
【0102】
図13に示されるように、電流Iw<n>の印加開始時刻Tws<n>は、電流Iw<n-1>の印加開始時刻Tws<n-1>、及び電流Iw<n+1>の印加開始時刻Tws<n+1>と略一致してもよい。また、電流Iw<n>の印加終了時刻Twe<n>は、電流Iw<n-1>の印加終了時刻Twe<n-1>、及び電流Iw<n+1>の印加終了時刻Twe<n+1>と異なっていてもよい。
【0103】
なお、
図13では、
図12と同様に、電流Iw<n>の印加が終了した後に、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>の印加が終了する場合について示されているが、第5印加例はこれに限られない。例えば、第6印加例は、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>の印加が終了した後に、電流Iw<n>の印加が終了する場合を含み得る。
【0104】
1.3 第1実施形態に係る効果
第1実施形態によれば、磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>への書込み動作の際に、配線SOTL<m>に電流Ic<m>が印加される。そして、電流Ic<m>が印加される期間と重複するように、読出しビット線RBL<n>、RBL<n-1>、及びRBL<n+1>にそれぞれ電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>が印加される。これにより、磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>に対応する強磁性層41と配線SOTL<m>との界面近傍に磁場Hw<n>、Hw<n-1>、及びHw<n+1>を印加することができる。
【0105】
磁場Hw<n>の方向は、+X方向に平行である。このため、磁場Hw<n>は、スピン軌道トルクによる選択メモリセルMC<m,n>の強磁性層41の磁化方向の反転をアシストすることができる。磁場Hw<n-1>及びHw<n+1>は、強磁性層41の磁化方向が+Z方向に磁化反転する場合には+Z方向の成分を有し、強磁性層41の磁化方向が-Z方向に磁化反転する場合には-Z方向の成分を有する。このため、磁場Hw<n-1>及びHw<n+1>は、スピン軌道トルクによる選択メモリセルMC<m,n>の強磁性層41の磁化方向が反転する際の安定性を向上させることができる。
【0106】
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態に係る磁気メモリデバイスについて説明する。第2実施形態では、配線SOTLがメモリセルMC毎に設けられる点において、第1実施形態と異なる。以下では、第1実施形態と異なる構成及び動作について主に説明する。第1実施形態と同等の構成及び動作については、説明を適宜省略する。
【0107】
2.1 メモリセルアレイ
図14は、第2実施形態に係るメモリセルアレイの回路構成の一例を示す回路図である。
図14は、第1実施形態における
図2に対応する。
【0108】
メモリセルアレイ10は、複数のワード線WL、複数の読出しビット線RBL、複数の書込みビット線WBL、及び複数のメモリセルMCを含む。また、メモリセルアレイ10は、複数のスイッチング素子SEL3を含む。
【0109】
複数のスイッチング素子SEL3は、第1実施形態における複数のスイッチング素子SEL3と同等の構成を有する。複数のワード線WLは、(M+1)本のワード線WL<0>、…、WL<m>、…、及びWL<M>を含む。複数の読出しビット線RBLは、(N+1)本の読出しビット線RBL<0>、…、RBL<n>、…、及びRBL<N>を含む。複数の書込みビット線WBLは、(N+1)本の書込みビット線WBL<0>、…、WBL<n>、…、及びWBL<N>を含む。複数のスイッチング素子SEL3は、(N+1)個のスイッチング素子SEL3<0>、…、及びSEL3<N>を含む。複数のメモリセルMCは、(M+1)×(N+1)個のメモリセルMC<0,0>、…、MC<0,n>、…、MC<0,N>、…、MC<m,0>、…、MC<m,n>、…、MC<m,N>、…、MC<M,0>、…、MC<M,n>、…、及びMC<M,N>を含む。メモリセルMC<0,0>~MC<M,N>は、同等の構成を有する。以下では、メモリセルMC<m,n>、及びメモリセルMC<m,n>に接続されるワード線WL<m>、読出しビット線RBL<n>、及び書込みビット線WBL<n>を例にして説明する。
【0110】
メモリセルMC<m,n>は、スイッチング素子SEL1<m,n>及びSEL2<m,n>、配線SOTL<m,n>、並びに磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>を含む。
【0111】
スイッチング素子SEL1<m,n>は、配線SOTL<m,n>に接続される第1端と、書込みビット線WBL<n>に接続される第2端と、制御端と、を有する。
【0112】
配線SOTL<m,n>は、スイッチング素子SEL1<m,n>の第1端に接続される第1端と、ワード線WL<m>に接続される第2端と、両端の間の中央部と、を有する。配線SOTL<m,n>の中央部には、磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>が接続される。
【0113】
磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>は、配線SOTL<m,n>の中央部に接続される第1端と、スイッチング素子SEL2<m,n>に接続される第2端と、を有する。
【0114】
スイッチング素子SEL2<m,n>は、磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>の第2端に接続される第1端と、読出しビット線RBL<n>に接続される第2端と、制御端と、を有する。
【0115】
以上のように、1個のメモリセルMCは、1本の配線SOTL及び1個の磁気抵抗効果素子MTJの組を含む。
【0116】
2.2 メモリセル
次に、第2実施形態に係る磁気メモリデバイスのメモリセルの構成について説明する。
【0117】
図15は、第2実施形態に係るメモリセルアレイの一部の断面構造の一例を示す断面図である。
図15では、一例として、X方向に並ぶ3個のメモリセルMC<m,n-1>、MC<m,n>、及びMC<m,n+1>が示される。
図15に示されるように、メモリセルMC<m,n>、MC<m,n-1>、及びMC<m,n+1>の各々は、導電体層30A、素子層40、導電体層50、素子層60、導電体層70、及び導電体層80を含む。
【0118】
第2実施形態におけるメモリセルMC<m,n-1>、MC<m,n>、及びMC<m,n+1>の断面構造は、配線SOTLとして使用される導電体層30AがメモリセルMC毎に離れて設けられている点を除き、第1実施形態におけるメモリセルMC<m,n-1>、MC<m,n>、及びMC<m,n+1>の断面構造と同等である。
【0119】
すなわち、導電体層30A<m、n-1>、導電体層30A<m,n>、及び導電体層30A<m,n+1>は、この順にX方向に互いに離れて並ぶ。導電体層30A<m,n-1>、導電体層30A<m,n>、及び導電体層30A<m,n+1>の各々は、X方向に延びる。導電体層30A<m,n-1>の上面上には、メモリセルMC<m,n-1>が設けられる。導電体層30A<m,n>の上面上には、メモリセルMC<m,n>が設けられる。導電体層30A<m,n+1>の上面上には、メモリセルMC<m,n+1>が設けられる。
【0120】
2.2 書込み動作
次に、第2実施形態に係る磁気メモリデバイスの書込み動作について説明する。
【0121】
2.2.1 第1例
まず、書込み動作の第1例について説明する。
【0122】
図16は、第2実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第1例でメモリセルアレイに印加される電圧の一例を示す図である。
図16は、第1実施形態における
図4に対応する。
図16では、メモリセルアレイ10のうち、3本の読出しビット線RBL<n-1>、RBL<n>、及びRBL<n+1>、3本の書込みビット線WBL<n-1>、WBL<n>、及びWBL<n+1>、並びに3本のワード線WL<m-1>、WL<m>、及びWL<m+1>に印加される電圧の一例が示される。なお、
図16では、オン状態のスイッチング素子SEL1、SEL2及びSEL3の各々には“○”が付され、オフ状態のスイッチング素子SEL1、SEL2及びSEL3の各々には“×”が付される。また、
図16では、書込み対象(すなわち、選択状態)のメモリセルMC<m,n>が、ハッチングされて示される。
【0123】
選択メモリセルMC<m,n>に対して書込み動作の第1例を実行する場合、スイッチング素子SEL1<m,n>は、オン状態となる。そして、スイッチング素子SEL1<m,n>を除く全てのスイッチング素子SEL1は、オフ状態となる。全てのスイッチング素子SEL2は、オフ状態となる。スイッチング素子SEL3<n-1>、SEL3<n>、及びSEL3<n+1>は、オン状態となる。そして、その他の全てのスイッチング素子SEL3は、オフ状態となる。
【0124】
ワード線WL<m>には、電圧Vc0が印加される。そして、ワード線WL<m-1>及びWL<m+1>を含むその他のワード線WLには、電圧VSSが印加される。また、全ての書込みビット線WBLには、電圧VSSが印加される。これにより、配線SOTL<m,n>の両端にはそれぞれ、電圧Vc0及びVSSが印加される。
【0125】
選択ビット線RBL<n>の第1端及び第2端にはそれぞれ、電圧VSS及びVwが印加される。そして、選択ビット線RBL<n>の両隣のうちの一方に位置する非選択ビット線RBL<n-1>の第1端及び第2端にはそれぞれ、電圧k3Vw及びVSSが印加される。電圧k3Vwは、電圧Vwのk3倍の電圧である(k3は正の実数)。選択ビット線RBL<n>の両隣のうちの他方に位置する非選択ビット線RBL<n+1>の第1端及び第2端にはそれぞれ、電圧VSS及びk4Vwが印加される。電圧k4Vwは、電圧Vwのk4倍の電圧である(k4は正の実数)。なお、k3及びk4は、互いに異なっていてもよいし、等しくてもよい。
【0126】
図17は、第2実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第1例でメモリセルアレイに印加される電流及び磁場の一例を示す図である。
図17は、第1実施形態における
図5に対応する。
【0127】
上述の通り、配線SOTL<m,n>の両端にはそれぞれ、電圧Vc0及びVSSが印加される。これにより、選択メモリセルMC<m,n>に対応する導電体層30Aの紙面左側から紙面右側(
図17における+X方向)に向けて、書込み電流Ic0<m>が流れる。書込み電流Ic0<m>が選択メモリセルMC<m,n>に対応する導電体層30A内を流れることにより、選択メモリセルMC<m,n>に対応する強磁性層41の磁化方向を選択メモリセルMC<m,n>に対応する強磁性層43に対して平行にしようとするスピン軌道トルクが発生する。
【0128】
また、上述の通り、選択ビット線RBL<n>の両端にはそれぞれ、電圧VSS及びVwが印加される。非選択ビット線RBL<n-1>の両端にはそれぞれ、電圧k
3Vw及びVSSが印加される。非選択ビット線RBL<n+1>の両端にはそれぞれ、電圧VSS及びk
4Vwが印加される。これにより、選択ビット線RBL<n>に対応する導電体層80には、紙面奥側から紙面手前側(
図17における-Y方向)に向けて、電流Iw0<n>が流れる。非選択ビット線RBL<n-1>に対応する導電体層80には、紙面手前側から紙面奥側(
図17における+Y方向)に向けて、電流Iw0<n-1>が流れる。選択ビット線RBL<n+1>に対応する導電体層80には、紙面奥側から紙面手前側(
図17における-Y方向)に向けて、電流Iw0<n+1>が流れる。第2実施形態における電流Iw0<n-1>及びIw0<n+1>はそれぞれ、例えば、電流Iw0<n>のk
3倍及びk
4倍の大きさとなる。すなわち、第2実施形態における電流Iw0<n-1>及びIw0<n+1>の電流値は、電流Iw0<n>の電流値より小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0129】
電流Iw0<n>、Iw0<n-1>、Iw0<n+1>により、選択メモリセルMC<m,n>に対応する導電体層30Aと選択メモリセルMC<m,n>に対応する強磁性層41との界面近傍には、それぞれ磁場Hw0<n>、Hw0<n-1>、及びHw0<n+1>が印加される。
【0130】
電流Ic0の大きさ及び方向、並びに磁場Hw0<n>、Hw0<n-1>、及びHw0<n+1>の各々の大きさ及び方向は、第1実施形態の場合と同等である。このため、選択メモリセルMC<m,n>にデータ“0”が書き込まれる。
【0131】
2.2.2 第2例
次に、書込み動作の第2例について説明する。
【0132】
図18は、第2実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第2例でメモリセルアレイに印加される電圧の一例を示す図である。
図18は、書込み動作の第1例における
図16に対応する。
【0133】
選択メモリセルMC<m,n>に対して書込み動作の第2例を実行する場合、スイッチング素子SEL1<m,n>は、オン状態となる。そして、スイッチング素子SEL1<m,n>を除く全てのスイッチング素子SEL1は、オフ状態となる。全てのスイッチング素子SEL2は、オフ状態となる。スイッチング素子SEL3<n-1>、SEL3<n>、及びSEL3<n+1>は、オン状態となる。そして、その他の全てのスイッチング素子SEL3は、オフ状態となる。
【0134】
書込みビット線WBL<n>には、電圧Vc1が印加される。そして、書込みビット線WBL<n-1>及びWBL<n+1>を含むその他の書込みビット線WBLには、電圧VSSが印加される。また、全てのワード線WLには、電圧VSSが印加される。これにより、配線SOTL<m,n>の両端にはそれぞれ、電圧VSS及びVc1が印加される。
【0135】
選択ビット線RBL<n>の第1端及び第2端にはそれぞれ、電圧VSS及びVwが印加される。非選択ビット線RBL<n-1>の第1端及び第2端にはそれぞれ、電圧VSS及びk3Vwが印加される。非選択ビット線RBL<n+1>の第1端及び第2端にはそれぞれ、電圧k4Vw及びVSSが印加される。このように、第1実施形態と同様に、第2実施形態における書込み動作の第2例で選択ビット線RBL<n>に印可される電圧は、第2実施形態における書込み動作の第1例で選択ビット線RBL<n>に印加される電圧と同等である。一方、第2実施形態における書込み動作の第2例で非選択ビット線RBL<n-1>及びRBL<n+1>に印加される電圧はそれぞれ、第2実施形態における書込み動作の第1例で非選択ビット線RBL<n-1>及びRBL<n+1>に印加される電圧と極性が反転する。
【0136】
図19は、第2実施形態に係る磁気メモリデバイスにおける書込み動作の第2例でメモリセルアレイに印加される電流及び磁場の一例を示す図である。
図19は、書込み動作の第1例における
図17に対応する。
【0137】
上述の通り、配線SOTL<m,n>の両端にはそれぞれ、電圧VSS及びVc1が印加される。これにより、選択メモリセルMC<m,n>に対応する導電体層30Aの紙面右側から紙面左側(
図19における-X方向)に向けて、書込み電流Ic1<m>が流れる。書込み電流Ic1<m>が選択メモリセルMC<m,n>に対応する導電体層30A内を流れることにより、選択メモリセルMC<m,n>に対応する強磁性層41の磁化方向を選択メモリセルMC<m,n>に対応する強磁性層43に対して反平行にしようとするスピン軌道トルクが発生する。
【0138】
また、上述の通り、選択ビット線RBL<n>の両端にはそれぞれ、電圧VSS及びVwが印加される。非選択ビット線RBL<n-1>の両端にはそれぞれ、電圧VSS及びk
3Vwが印加される。非選択ビット線RBL<n+1>の両端にはそれぞれ、電圧k
4Vw及びVSSが印加される。これにより、選択ビット線RBL<n>に対応する導電体層80には、紙面奥側から紙面手前側(
図19における-Y方向)に向けて、電流Iw1<n>が流れる。非選択ビット線RBL<n-1>に対応する導電体層80には、紙面奥側から紙面手前側(
図19における-Y方向)に向けて、電流Iw1<n-1>が流れる。選択ビット線RBL<n+1>に対応する導電体層80には、紙面手前側から紙面奥側(
図19における+Y方向)に向けて、電流Iw1<n+1>が流れる。
【0139】
電流Iw1<n>、Iw1<n-1>、Iw1<n+1>により、選択メモリセルMC<m,n>に対応する導電体層30Aと選択メモリセルMC<m,n>に対応する強磁性層41との界面近傍には、それぞれ磁場Hw1<n>、Hw1<n-1>、及びHw1<n+1>が印加される。
【0140】
電流Ic1の大きさ及び方向、並びに磁場Hw1<n>、Hw1<n-1>、及びHw1<n+1>の各々の大きさ及び方向は、第1実施形態の場合と同等である。このため、選択メモリセルMC<m,n>にデータ“1”が書き込まれる。
【0141】
2.3 第2実施形態に係る効果
第2実施形態によれば、磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>への書込み動作の際に、配線SOTL<m,n>に電流Ic<m>が印加される。そして、電流Ic<m>が印加される期間と重複するように、読出しビット線RBL<n>、RBL<n-1>、及びRBL<n+1>にそれぞれ電流Iw<n>、Iw<n-1>、及びIw<n+1>が印加される。これにより、磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>に対応する強磁性層41と配線SOTL<m,n>との界面近傍に磁場Hw<n>、Hw<n-1>、及びHw<n+1>を、第1実施形態と同様の方向及び大きさで印加することができる。このため、第1実施形態と同様に、磁場Hw<n>は、スピン軌道トルクによる選択メモリセルMC<m,n>の強磁性層41の磁化方向の反転をアシストすることができる。また、磁場Hw<n-1>及びHw<n+1>は、スピン軌道トルクによる選択メモリセルMC<m,n>の強磁性層41の磁化方向が反転する際の安定性を向上させることができる。
【0142】
また、磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>への書込み動作において、配線SOTL<m,n-1>及びSOTL<m,n+1>には電流が流れない。これにより、第2実施形態では、磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>への書込み動作において、磁気抵抗効果素子MTJ<m,n-1>及びMTJ<m,n+1>に誤ってデータが書き込まれる可能性が低い。このため、第2実施形態における電流Iw<n-1>及びIw<n+1>は、電流Iw<n>よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。したがって、書込み動作の制約を緩和することができる。
【0143】
3. 変形例等
なお、上述の第1実施形態及び第2実施形態は、上述の例に限らず、種々の変形が適用可能である。
【0144】
上述の第1実施形態及び第2実施形態では、磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>に対する書込み動作において、読出しビット線RBL<n-1>に電流Iw<n-1>を印加し、読出しビット線RBL<n+1>に電流Iw<n+1>を印加する場合について説明したが、これに限られない。例えば、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>のいずれか一方が印加されてもよい。このような場合でも、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同様に、スピン軌道トルクによる選択メモリセルMC<m,n>の強磁性層41の磁化方向が反転する際の安定性を向上させることができる。
【0145】
また、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>が互いに反平行な方向に印加される場合について説明したが、これに限られない。例えば、以下の条件を満たせば、電流Iw<n-1>及びIw<n+1>が互いに平行な方向に印加されてもよい。条件とは、磁場Hw<n-1>及びHw<n+1>の合成磁場が、磁気抵抗効果素子MTJ<m,n>内の強磁性層41の磁化方向が+Z方向に磁化反転する場合には+Z方向の成分を有し、強磁性層41の磁化方向が-Z方向に磁化反転する場合には-Z方向の成分を有することを含む。このような場合でも、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同様に、スピン軌道トルクによる選択メモリセルMC<m,n>の強磁性層41の磁化方向が反転する際の安定性を向上させることができる。
【0146】
また、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、磁気抵抗効果素子MTJが、強磁性層41が強磁性層43の下方に設けられるボトムフリー構造である場合について説明したが、これに限られない。例えば、磁気抵抗効果素子MTJは、強磁性層41が強磁性層43の上方に設けられるトップフリー構造であってもよい。この場合、導電体層30は、強磁性層41の上方に設けられる。
【0147】
また、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、強磁性層41が導電体層30の上面と接するように設けられる場合について説明したが、これに限られない。強磁性層41は、導電体層30の上方に中間層を介して設けられてもよい。中間層は、例えば、銅(Cu)等の導電層や酸化マグネシウム(MgO)等の絶縁層を含んでいてもよい。磁気抵抗効果素子MTJがボトムフリー構造である場合には、中間層は、磁気抵抗効果素子MTJの下地層として機能し得る。磁気抵抗効果素子MTJがトップフリー構造である場合には、中間層は、磁気抵抗効果素子MTJのキャップ層として機能し得る。
【0148】
また、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、スイッチング素子SEL1、SEL2、及びSEL3に3端子型のスイッチング素子が適用される場合について説明したが、これに限られない。例えば、スイッチング素子SEL1、SEL2、及びSEL3には、2端子型のスイッチング素子が適用されてもよい。
【0149】
2端子型のスイッチング素子は、2端子間に印加する電圧が閾値電圧Vth未満の場合、“高抵抗”状態又は“オフ”状態、例えば電気的に非導通状態となる。2端子型のスイッチング素子は、2端子間に印加する電圧が閾値電圧Vth以上の場合、“低抵抗”状態又は“オン”状態、例えば電気的に導通状態に変わる。2端子型のスイッチング素子は、2端子間に印加される電圧がどちらの極性でも(流れる電流の方向に依らず)、対応するメモリセルMCに印加される電圧の大きさに応じて、電流を流すか遮断するかを切替えることができる。
【0150】
スイッチング素子SEL2及びSEL3に2端子型のスイッチング素子が適用される場合でも、3端子型のスイッチング素子が適用される場合と同様に、磁場Hw<n>、Hw<n-1>、及びHw<n+1>の合成磁場を利用することによって、書込み動作の安定性を向上させることができる。
【0151】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0152】
1…磁気メモリデバイス
10…メモリセルアレイ
11…ロウ選択回路
12…カラム選択回路
13…デコード回路
14…書込み回路
15…読出し回路
16…電圧生成回路
17…入出力回路
18…制御回路
20,90…絶縁体層
30,30A,50,63,70,80…導電体層
40,60…素子層
41,43,45…強磁性層
42,44…非磁性層
61…半導体膜
62…絶縁体膜