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特開2024-148020連続式粉体処理装置及びその運転監視装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148020
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】連続式粉体処理装置及びその運転監視装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 35/213 20220101AFI20241009BHJP
   B01J 2/10 20060101ALI20241009BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20241009BHJP
   B01F 23/60 20220101ALI20241009BHJP
   B01F 23/53 20220101ALI20241009BHJP
   B01F 27/112 20220101ALI20241009BHJP
   B01F 27/701 20220101ALI20241009BHJP
   B01F 27/191 20220101ALI20241009BHJP
   B01F 27/171 20220101ALI20241009BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20241009BHJP
   B01F 35/214 20220101ALI20241009BHJP
   B01F 35/222 20220101ALI20241009BHJP
   B01F 35/75 20220101ALI20241009BHJP
   B01F 101/06 20220101ALN20241009BHJP
   B01F 101/22 20220101ALN20241009BHJP
【FI】
B01F35/213
B01J2/10 Z
B01J2/00 A
B01F23/60
B01F23/53
B01F27/112
B01F27/701
B01F27/191
B01F27/171
B01F35/71
B01F35/214
B01F35/222
B01F35/75
B01F101:06
B01F101:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060882
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 明紀
(72)【発明者】
【氏名】長峯 豊
【テーマコード(参考)】
4G004
4G035
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4G004AA02
4G004FA01
4G035AB46
4G035AB48
4G035AE03
4G035AE07
4G035AE13
4G037AA05
4G037AA18
4G037EA03
4G078AA20
4G078AA30
4G078AB09
4G078AB20
4G078BA01
4G078BA09
4G078DA01
4G078EA08
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】連続式粉体処理装置の運転状態をオンラインで監視する運転監視装置であって、異常を早期に検出可能なものを提案する。
【解決手段】粉体の混合又は粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置の運転状態を監視する運転監視装置は、連続式粉体処理装置において粉体の混合又は造粒が行われる処理容器の出口及び出口から排出される処理済物を連続的又は断続的に撮像した撮像データを取得し、撮像データから導き出される処理済物の排出状況に基づいて連続式粉体処理装置の運転状態の異常を検出する異常検出処理を行い、異常検出処理で異常が検出された場合に異常信号を出力するように構成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体の混合又は粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置の運転状態を監視する運転監視装置であって、
前記連続式粉体処理装置において前記粉体の混合又は造粒が行われる処理容器の出口及び前記出口から排出される処理済物を連続的又は断続的に撮像した撮像データを取得し、
前記撮像データから導き出される前記処理済物の排出状況に基づいて前記連続式粉体処理装置の運転状態の異常を検出する異常検出処理を行い、
前記異常検出処理で異常が検出された場合に異常信号を出力するように構成されている、
連続式粉体処理装置の運転監視装置。
【請求項2】
前記異常検出処理は、前記撮像データを画像処理することにより前記処理済物の排出状況を示す排出指標を生成し、前記排出指標の変動に基づいて前記連続式粉体処理装置の運転状態の異常を検出することを含む、
請求項1に記載の連続式粉体処理装置の運転監視装置。
【請求項3】
前記排出指標は、所定の基準面積に対する撮像野内の前記処理済物が占める面積の割合である、
請求項2に記載の連続式粉体処理装置の運転監視装置。
【請求項4】
前記異常検出処理は、前記連続式粉体処理装置の運転状態が健常であるときに得られる前記排出指標を基準値としたときに、前記排出指標が前記基準値を下回る状態が所定の判断時間以上継続する場合に、前記連続式粉体処理装置の運転状態の異常を検出することを含む、
請求項3に記載の連続式粉体処理装置の運転監視装置。
【請求項5】
前記異常検出処理は、前記連続式粉体処理装置の運転状態が健常であるときに得られる前記排出指標を基準値としたときに、前記排出指標が脈動する状態が所定の判断時間以上継続する場合に、前記連続式粉体処理装置の運転状態の異常を検出することを含む、
請求項3に記載の連続式粉体処理装置の運転監視装置。
【請求項6】
前記異常検出処理は、前記撮像データから色の分布を生成し、当該色の分布を前記連続式粉体処理装置の運転状態が健常であるときに得られる基準分布と比較することにより、前記連続式粉体処理装置の運転状態の異常を検出することを含む、
請求項1に記載の連続式粉体処理装置の運転監視装置。
【請求項7】
前記異常検出処理は、前記撮像データから所定の値よりも大きな粒子径の顆粒を抽出してカウントし、所定の時間あたりのカウント数が所定の閾値を超えると、前記連続式粉体処理装置の運転状態の異常を検出することを含む、
請求項1に記載の連続式粉体処理装置の運転監視装置。
【請求項8】
前記異常検出処理は、前記撮像データを含む入力データと前記連続式粉体処理装置の運転状態の健常又は異常の判断結果を含む出力データとの相関性を学習した学習済みモデルを用いて、認識すべき前記入力データに対応する前記出力データを導き出すことを含む、
請求項1に記載の連続式粉体処理装置の運転監視装置。
【請求項9】
前記学習済みモデルは、教師用の健常な前記撮像データと教師用の異常な前記撮像データとを夫々学習しており、色、明るさ、面積、形状、及びエッジのうち少なくとも1つの観点から両者の最も違いのある部分を判断要素とし、認識すべき前記入力データと教師用の健常な前記撮像データとの一致度を求め、前記一致度の値に基づいて前記入力データを健常と異常に分類するように構成されている、
請求項8に記載の連続式粉体処理装置の運転監視装置。
【請求項10】
入口及び出口を有し、前記入口から前記出口へ向かって横向きの送り方向に延びる筒状の処理容器と、
前記処理容器の前記出口から排出された処理済物を前記出口より下方に配置された第1排出口へ案内するシュートと、
前記処理容器の前記入口と連続して配置され、前記送り方向に延びる供給管と、
前記供給管へ粉体を供給するフィーダと、
前記処理容器内及び前記供給管内に配置された回転シャフトと、
前記供給管内で前記回転シャフトに固定されて、前記供給管内の前記粉体を前記処理容器の前記入口へ送り出すスクリューと、
前記処理容器内で前記回転シャフトに固定された前記送り方向に並ぶ複数の回転羽根であって、回転することにより、前記送り方向へ移動する送り力を前記粉体に与えるとともに前記粉体を攪拌及び解砕する前記複数の回転羽根と、
前記フィーダ及び前記回転シャフトの駆動を制御する制御装置と、
前記シュート内において前記処理容器の前記出口及び当該出口から排出される前記処理済物を撮像する撮像装置と、
請求項1に記載の運転監視装置とを、備え、
前記運転監視装置は前記異常信号を前記制御装置へ出力し、当該異常信号を取得した前記制御装置は所定の異常対応処理を行うように構成されている、
連続式粉体処理装置。
【請求項11】
前記異常対応処理が、前記回転シャフトの駆動を継続させながら前記フィーダの駆動を停止することを含む、
請求項10に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項12】
前記シュートは、前記第1排出口と異なる第2排出口と、当該シュートを通過する前記処理済物の流路を前記第1排出口へ案内する第1流路と前記第2排出口へ案内する第2流路との間で切り替える切替弁とを有し、
前記制御装置は前記切替弁の動作を制御し、
前記異常対応処理が、前記シュートの流路を前記第1流路から前記第2流路に切り替えるように前記切替弁を動作させることを更に含む、
請求項11に記載の連続式粉体処理装置。
【請求項13】
前記異常対応処理が、前記回転シャフト及び前記フィーダの駆動を停止することを含む、
請求項10に記載の連続式粉体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉体の混合又は湿潤した粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば医薬品、化成品、食品などの分野では、複数の粉体を混合し、混合した粉体を湿潤させ、その粉体から造粒物を製造することが行われている。粉体はそのままではハンドリングが困難であるため、造粒物とすることでハンドリング性を向上させることができる。このような粉体の混合や粉体から顆粒の造粒に、連続式粉体処理装置が用いられることがある。特許文献1は、この種の連続式粉体処理装置を開示する。
【0003】
特許文献1の連続式粉体処理装置(特許文献1では、「連続式撹拌処理装置」と称呼)は、軸方向一方の端部に入口が設けられ他方の端部に出口が設けられた筒状の処理容器と、処理容器の内部に挿通されたアジテータとを備える。アジテータは、回転軸と、回転軸の外周部に設けられた複数の攪拌羽根とを有する。攪拌羽根の各々は、回転面(即ち、回転軸に直角な面)と平行に扁平な形状を有し、当該攪拌羽根の回転方向の前部には片刃状のナイフエッジ部が設けられている。この攪拌羽根が回転軸を中心として回転することにより、処理容器内の被処理物が攪拌混合されるとともに、被処理物がナイフエッジ部で解砕されて分散される。
【0004】
また、特許文献1では、処理容器の排出口から排出される造粒物の物性(水分値等)を光学センサで検出し、この検出結果を制御装置にフィードバックして、処理操作因子(例えば、処理容器への粉体の供給速度、バインダの添加量及び添加速度、アジテータの回転速度及び回転方向、スクレーパの回転速度及び回転方向)を制御できるようにしている。更に、処理容器から排出された造粒物を、乾燥させてから、整粒装置で整粒したもの(即ち、製品)の粒子径や粒子形状などを光学式の画像処理装置で検出し、この検出結果を制御装置にフィードバックして、処理操作因子を制御できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-7571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のバッチ式粉体処理装置では、バッチごとに粉体の性状や機械の調子が整えられたうえ、製造された処理済物を検査することで安定した品質が確保される。これに対し、上記特許文献1のような連続式粉体処理装置では、一旦、粉体の性状や機械の調子が損なわれるなどの運転状態の異常が生じると以後は不良品が製造され続ける。バッチ式では、不良品が生じたバッチの製品のみを廃棄すれば済むが、連続式ではそれまでに製造されていた良品に不良品が混じることになり大量の廃棄品が生じるおそれがある。このような事情から、連続式粉体処理装置では、運転状態の異常の早期発見が肝要となる。
【0007】
そこで、本開示では、連続式粉体処理装置の運転状態をオンラインで監視する運転監視装置であって、異常を早期に検出可能なものを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る連続式粉体処理装置の運転監視装置は、粉体の混合又は粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置の運転状態を監視する運転監視装置であって、
前記連続式粉体処理装置において前記粉体の混合又は造粒が行われる処理容器の出口及び前記出口から排出される処理済物を連続的又は断続的に撮像した撮像データを取得し、
前記撮像データから導き出される前記処理済物の排出状況に基づいて前記連続式粉体処理装置の運転状態の異常を検出する異常検出処理を行い、
前記異常検出処理で異常が検出された場合に異常信号を出力するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
また、本開示の一態様に係る連続式粉体処理装置は、
入口及び出口を有し、前記入口から前記出口へ向かって横向きの送り方向に延びる筒状の処理容器と、
前記処理容器の前記出口から排出された処理済物を前記出口より下方に配置された第1排出口へ案内するシュートと、
前記処理容器の前記入口と連続して配置され、前記送り方向に延びる供給管と、
前記供給管へ粉体を供給するフィーダと、
前記処理容器内及び前記供給管内に配置された回転シャフトと、
前記供給管内で前記回転シャフトに固定されて、前記供給管内の前記粉体を前記処理容器の前記入口へ送り出すスクリューと、
前記処理容器内で前記回転シャフトに固定された前記送り方向に並ぶ複数の回転羽根であって、回転することにより、前記送り方向へ移動する送り力を前記粉体に与えるとともに前記粉体を攪拌及び解砕する複数の回転羽根と、
前記フィーダ及び前記回転シャフトの駆動を制御する制御装置と、
前記シュート内において前記処理容器の前記出口及び当該出口から排出される前記処理済物を撮像する撮像装置と、
前記運転監視装置とを、備え、
前記運転監視装置は前記異常信号を前記制御装置へ出力し、当該異常信号を取得した前記制御装置は所定の異常対応処理を行うように構成されていることを特徴としている。
【0010】
上記構成の連続式粉体処理装置及びその運転監視装置によれば、処理容器の出口から排出される処理済物の排出状況に基づいて、連続式粉体処理装置の運転状態の異常が検出される。処理済物の排出状況は撮像データに含まれる処理容器の出口及び当該出口から排出される処理済物の撮像画像に現れる情報から認識することができ、詳細な物性の測定などは不要である。このことから、上記運転監視装置では、連続式粉体処理装置の稼働中にオンラインで運転状態の異常を検出することが可能である。同様の理由から、上記運転監視装置では、連続式粉体処理装置で運転状態の異常が生じたときに、速やかに異常を検出できる。よって、連続式粉体処理装置では運転状態の異常が生じたときに速やかに異常対応処理を行うことができ、結果として廃棄品を削減できる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、連続式粉体処理装置の運転状態をオンラインで監視する運転監視装置であって、異常を早期に検出可能なものを提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る連続式粉体処理装置の縦断面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った横断面図である。
図3図3は、図1の要部の拡大図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿った正面断面図である。
図5図5は、連続式粉体処理装置の制御系統の構成を示すブロック図である。
図6図6は、運転監視装置の概略構成を示すブロック図である。
図7図7は、運転監視装置の機能的構成を示すブロック図である。
図8図8は、第1例に係る異常検出部の構成を示すブロック図である。
図9図9は、撮像データに含まれる撮像画像の一例である。
図10図10は、撮像データに含まれる撮像画像の一例である。
図11図11は、排出指標の経時変化の一例を示す図表である。
図12図12は、第2例に係る異常検出部の構成を示すブロック図である。
図13図13は、第2例に係る異常検出部の分類部の機能を説明する図である。
図14図14は、変形例に係るシュートを備えた連続式粉体処理装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び図2に、本開示の一実施形態に係る連続式粉体処理装置1を示す。この連続式粉体処理装置1は、粉体の混合又は湿潤した粉体の造粒に用いられるものである。例えば、湿潤前の混合粉体の平均粒径は30~70μmであり、造粒物の平均粒径は80~250μmである。
【0014】
〔連続式粉体処理装置1の概略構成〕
本実施形態に係る連続式粉体処理装置1は、横向きに延びる筒状の処理容器2と、処理容器2の入口2aと連続して配置された供給管3と、処理容器2及び供給管3の内部に配置された回転シャフト4と、供給管3内において回転シャフト4に取り付けられたスクリュー5と、処理容器2内において回転シャフト4に取り付けられた複数の回転羽根6とを備える。ここで「横向き」は或る略水平方向を向いていることを意味する。
【0015】
処理容器2は、両端開放の筒状体であって、一方の開口端部の内周面2cによって形成された入口2aと、他方の開口端部の内周面2cによって形成された出口2bとを有する。入口2aから出口2bへ向かう横向きの方向を「送り方向X」と称する。送り方向Xは、処理容器2の中心軸20の延在方向と平行である。本実施形態に係る処理容器2では、中心軸20は略水平に延びる。但し、処理容器2の中心軸20は、入口2aから出口2bへ向かって下向きに若干傾斜してもよいし、入口2aから出口2bへ向かって上向きに若干傾斜してもよい。このように処理容器2の中心軸20を傾斜させることで、処理容器2内での粉体の滞留時間を調整できる。
【0016】
本実施形態では、処理容器2の内周面2cの入口側端部が径方向内向きに張り出しており、入口2aの直径が出口2bの直径よりも小さい。即ち、処理容器2の内周面2cは、入口側端部以外では、一定の直径Dの円筒面である。処理容器2の入口2aに、供給管3の端部が嵌入されている。
【0017】
供給管3の内部には、送り方向Xと平行に延びる円筒状のガイド穴3aが設けられている。ガイド穴3aは処理容器2の内部と連通している。供給管3の処理容器2と連通される端部には、第1閉塞部材12が接合されている。第1閉塞部材12と処理容器2の入口側端面との間の空間には、当該空間へ処理容器2の入口2aと供給管3との間の隙間を通じて粉体または粉体が流入するのを防止するために、図略の圧縮機から圧縮空気が導入される。この圧縮空気は、処理容器2の入口2aと供給管3との間の隙間を通じて処理容器2の内部へ流出する。
【0018】
供給管3には、上向きに開口する投入口3bが設けられている。この投入口3bにシュート35が接続されている。シュート35を通じて投入口3bへ、混合される粉体、又は、処理液が添加されて湿潤した粉体が投入される。
【0019】
本実施形態において、処理容器2はフレーム11によって回転可能に支持されている。フレーム11は、処理容器2の側方に位置するベース11aと、ベース11aから突出する一対の容器支持部11b,11cを含む。容器支持部11b,11cは、ベアリング21,22を介して処理容器2を中心軸20を中心として回転可能に支持する。
【0020】
フレーム11のベース11aには、処理容器2を回転させる電動機71が取り付けられている。電動機71の出力シャフト及び処理容器2の外周面には、ベベルギア72,73がそれぞれ設けられており、それらのベベルギア72,73が互いに噛み合っている。
【0021】
フレーム11のベース11aには電動機支持部16が固定されており、この電動機支持部16に、回転シャフト4を回転させる電動機75が取り付けられている。更に、フレーム11の容器支持部11bには、ベアリング21及びその内側を覆う第1閉塞部材12が固定されており、容器支持部11cには、ベアリング22及びその内側を覆う第2閉塞部材13が固定されている。本実施形態では、第1閉塞部材12が円盤状であり、供給管3と一体となっている。第2閉塞部材13は環状であり、処理容器2に貫通されている。また、フレーム11の容器支持部11b,11cには、それらの間の空間を覆うカバー15が取り付けられている。第2閉塞部材13には、処理容器2の出口2bから排出される処理済物を案内するシュート14が取り付けられている。
【0022】
図3及び図4に示すように、回転シャフト4は、処理容器2内及び供給管3内において、処理容器2の軸方向(即ち、送り方向X)に延びている。本実施形態では、供給管3内及び処理容器2内における回転シャフト4の断面形状が正方形状である。但し、回転シャフト4の形状はこれに限られるものではない。
【0023】
本実施形態では、回転シャフト4の中心軸40が処理容器2の中心軸20よりも下方に位置している。即ち、回転シャフト4は処理容器2に対し偏心している。例えば、処理容器2の中心軸20に対する回転シャフト4の中心軸40の偏心量eは、処理容器2の内周面2cの中央部及び出口側端部の直径Dの1/12以上1/6以下である。
【0024】
更に、本実施形態では、回転シャフト4の回転方向が処理容器2の回転方向と同じであるとともに、回転シャフト4の回転速度が処理容器2の回転速度よりも速い。回転シャフト4の回転速度は、後述する回転羽根6の先端部での周速が10m/s程度となるように設定され、処理容器2の回転速度は、処理容器2の内周面2cでの周速が1m/s程度となるように設定される。
【0025】
供給管3内では、回転シャフト4の周囲にスクリュー5が設けられている。スクリュー5は、回転シャフト4に挿通されるボス51と、ボス51の外周面に設けられた螺旋状のスクリュー羽根52を含む。スクリュー5の長さは、ガイド穴3aの長さと同程度である。
【0026】
一方、処理容器2内では、回転シャフト4の周囲に複数の回転羽根6が設けられている。より詳細には、回転シャフト4には複数の回転羽根6と複数のスペーサリング61とが挿通されている。
【0027】
各回転羽根6は、略菱形の板状体である。回転羽根6の回転方向前部には、回転方向前方へ向かって尖るようにナイフエッジ6bが形成されている(図4、参照)。ナイフエッジ6bは、回転方向前方に向かって、入口2aへ近づく(即ち、出口2bから遠ざかる)ように傾斜している。このため、回転羽根6が回転すると、ナイフエッジ6bによって、粉体へ処理容器2の出口2bへ向かう送り力が付与される。
【0028】
図3及び図4に戻って、複数の回転羽根6は、隣り合う回転羽根6の位相が90°ずれるように、回転シャフト4に取り付けられる。隣り合う回転羽根6の間には、スペーサリング61が適宜配置される。各スペーサリング61は、回転シャフト4の断面形状と対応した正方形状の貫通孔を有し、回転シャフト4に挿通される。回転シャフト4の先端には、回転羽根6及びスペーサリング61の落脱を防止する、保持部材62が取り付けられている。回転羽根6の直径は、各回転羽根6と処理容器2の内周面2cとの最短距離(即ち、処理容器2の中心軸20の真下でのクリアランス)が数ミリ(例えば、1~5mm)程度となるように設定される。
【0029】
図5は、連続式粉体処理装置1の制御系統の構成を示す図である。図5に示すように、連続式粉体処理装置1は、その運転を司る制御ユニット8を備える。制御ユニット8は、コンピュータを備え、プロセッサでメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、各種のセンサから入力される各種信号の解読や演算処理を行って、処理容器2を回転させる電動機71、回転シャフト4を回転させる電動機75、及び、シュート35へ粉体を供給するフィーダ77などの動作制御、出力ポートからの信号出力などを行う。
【0030】
制御ユニット8は、電動機71、電動機75、及びフィーダ77などの動作を制御する制御装置81と、連続式粉体処理装置1の運転を監視する運転監視装置82との各機能部を有する。制御装置81と運転監視装置82とは、独立したコンピュータとして構成されていてもよいし、これらの機能が1つのコンピュータに構成されていてもよい。
【0031】
制御装置81には、電動機71、電動機75、及びフィーダ77が電気的に接続されている。制御装置81は、電動機71、電動機75、及びフィーダ77へ動作指令を出力するとともに、これらの機器が備えるインバータ及び回転検出器から出力される信号を取得する。また、制御装置81には、回転シャフト4や処理容器2の回転数を測定する回転センサ(図示略)が電気的に接続されおり、これらの回転センサから出力される信号を取得する。更に、運転監視装置82は、シュート14に設けられた撮像装置9と電気的に接続されており、撮像装置9で撮像したデータを取得し、連続式粉体処理装置1の運転状態を監視する。運転監視装置82は、連続式粉体処理装置1の運転状態に異常があれば、所定の異常検出後処理を行うように制御装置81へ異常信号を出力する。運転監視装置82については、後ほど詳細に説明する。
【0032】
〔連続式粉体処理装置1の動作〕
ここで、上記構成の連続式粉体処理装置1で湿潤粉体の造粒を行う場合の動作について説明する。連続式粉体処理装置1では、ホッパーに貯留されている湿潤した粉体(例えば、バインダと粉体との混合体)が、シュート35及び投入口3bを通じて供給管3内へ投入される。供給管3内の粉体は、スクリュー5の回転によって処理容器2の入口2aへ定量的に供給される。処理容器2内では、回転羽根6が回転シャフト4と一体的に回転することによって、粉体が送り方向Xへ送られるとともに、粉体が混合及び解砕される。粉体は、処理容器2を送り方向Xへ移動するうちに造粒物となって出口2bから排出される。このようにして造粒物が製造され、製造された造粒物が処理容器2の出口2bから排出される。なお、連続式粉体処理装置1が造粒に用いられる場合について説明したが、連続式粉体処理装置1は粉体の混合に用いられる場合も前述と同様に動作する。
【0033】
〔運転監視装置82〕
以下、運転監視装置82について詳細に説明する。図6に示すように、運転監視装置82は、演算制御器400を備える。運転監視装置82の後述する各機能部が少なくとも1つの演算制御器400で構成されていてもよいし、複数の機能部のうち2つ以上が1つの演算制御器400で構成されていてもよい。運転監視装置82の演算制御器400は、プロセッサ401、ROM及びRAMなどのメモリ402、及び、I/O部403を備える。演算制御器400には、インターフェース404を介して記憶装置405、スピーカ406、ディスプレイ407、及び、撮像装置9が接続されている。
【0034】
撮像装置9の撮像範囲は固定されている。撮像範囲には処理容器2の出口2b(シュート14側)が含まれ、撮像装置9が生成する撮像データには処理容器2の出口2b及びそこを通過している処理済物の画像が含まれる。撮像データには、データが生成された時刻が含まれていてもよい。撮像装置9は、所定時間間隔で撮像を行い、時系列的に断続的な撮像データを生成してよい。或いは、撮像装置9は、ほぼ連続的に撮像を行い、時系列的に連続した撮像データ(即ち、映像データ)を生成してよい。
【0035】
図7に示すように、運転監視装置82は、撮像データ取得部85、異常検出部86、及び、異常出力部87の各機能部を有する。
【0036】
撮像データ取得部85は、撮像装置9から送られてくる撮像データを取得する。また、撮像データ取得部85は、取得した撮像データを記憶装置405に格納する。
【0037】
異常検出部86は、撮像データから導き出される処理済物の排出状況に基づいて、連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出する。異常検出部86の構成については、後ほど詳述する。
【0038】
異常出力部87は、異常検出部86で異常が検出された場合に、異常信号を出力する。異常信号は、制御装置81へ入力される。制御装置81は異常信号に応答して、制御装置81は所定の異常対応処理を行う。
【0039】
異常対応処理において、制御装置81はフィーダ77を停止させる。これにより、供給管3への粉体の投入が停止される。制御装置81は、フィーダ77の停止に伴い、処理容器2及び回転シャフト4の回転が停止するように、電動機71及び電動機75の駆動を停止させてもよい。
【0040】
或いは、処理容器2内で粉体が詰まったり処理容器2の内周面2cに粉体が固着したりすることを防止するために、制御装置81は、フィーダ77の停止時点で処理容器2内に残留している粉体が排出されるまで電動機71及び電動機75の駆動を継続してから、それらを停止させてもよい。この場合、異常対応処理後に処理容器2から排出される処理済物は不良品である可能性が高いことから、それまでの処理済物と分けて回収されることが望ましい。そこで、図14に示すように、シュート14に、主に良品となる処理済物が排出される第1排出口14aと、不良品の可能性がある処理済物が排出される第2排出口14bとが設けられ、シュート14内の処理済物の流路を第1排出口14aへ案内される第1流路W1と第2排出口14bへ案内される第2流路W2とに切り替える切替弁66が設けられてもよい。この場合、制御装置81は、異常対応処理において、シュート14内の流路が第1流路W1から第2流路W2に切り替えられるように、切替弁66を動作させる。
【0041】
更に、異常信号は、ディスプレイ407などの表示出力装置、スピーカ406などの音声出力装置、及び、表示灯やサイレンなどの異常出力装置(図示略)のうち少なくとも1つに入力されてもよい。これにより、異常出力装置を通じてオペレータに対し異常が生じたことが報知される。
【0042】
以下、上記の異常検出部86の第1例(異常検出部86A)及び第2例(異常検出部86B)について説明する。
【0043】
《異常検出部86の第1例》
図8に示すように、第1例に係る異常検出部86Aは、撮像データを画像処理する画像処理部861と、画像処理されたデータに基づいて連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出する異常検出処理を行う検出部862とを有する。
【0044】
図9及び図10では、撮像データに含まれる撮像画像が示されている。但し、これらの図に示された顆粒は誇張されており、実際の顆粒は個々の粒は目視では確認が難しいほどに小さい。撮像画像において、撮像野Fには、処理容器2の出口2b、及び、出口2bから排出される処理済物Gが写されている。画像処理部861は、撮像データから処理済物Gの排出状況を示す排出指標を生成する。本実施形態では、所定の基準面積のうち処理済物Gが占める面積の割合を排出指標とする(排出指標=処理済物Gの面積/基準面積)。基準面積は、例えば、撮像野Fの面積、処理容器2の出口2bの面積、などの任意の面積であってよい。
【0045】
図9に示す撮像データは、処理済物Gが排出されていない状態の処理容器2の出口2b及びその近傍を撮像したものであって、この撮像データにおいて排出指標は0である。図10に示す撮像データは、処理容器2の出口2bから処理済物Gが排出されている状態の処理容器2の出口2b及びその近傍を撮像したものであって、この撮像データにおいて排出指標は0.2程度である。撮像画像において、処理済物Gは色や形状に基づいて周囲から識別され得る。画像処理部861は、例えば、画像処理によって撮像画像から処理済物Gを抽出するとともにその面積を求め、排出指標を算出する。
【0046】
検出部862は、画像処理部861が求めた排出指標に基づいて、連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出する。画像処理部861が求めた排出指標を時系列に並べたものが、図11に示す図表である。この図表において、縦軸が排出指標を表し横軸が時間を表している。画像処理部861はこのような排出指標の時系列データを利用して、連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出することができる。
【0047】
図11の領域A1に示されるように、連続式粉体処理装置1の運転状態が健常である場合は、排出指標は概ね基準値で維持される。検出部862は、排出指標が概ね基準値に維持されているときは、異常を検出しない(即ち、運転状態を健常と判断する)。なお、検出部862には、連続式粉体処理装置1の運転状態が健常である場合の排出指標が基準値として予め記憶されている。
【0048】
供給管3における粉体の詰まりや処理容器2の内周面2cへの粉体の付着量の増加などが生じると、処理済物Gの排出量が低下する。このような場合には、図11の領域A2に示されるように、排出指標が大きく基準値を下回る。そこで、検出部862は、排出指標が所定の基準値を下回る状態が所定の判断時間以上継続する場合には、連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出する。ここで、検出部862は、異常の検出とともに、異常の原因を推定してもよい。
【0049】
また、処理容器2内で粉体が良好に送られなかったり混合が不十分となったりして、処理容器2内で粉体の疎密が生じると、処理済物Gの排出量が変動する。このような場合には、図11の領域A3に示されるように、排出指標が大小に脈動(即ち、振動)する。そこで、検出部862は、排出指標の脈動が所定の判断時間以上継続する場合には、連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出する。ここで、検出部862は、異常の検出とともに、異常の原因を推定してもよい。
【0050】
画像処理部861は、処理済物Gの面積の割合に加えて、撮像画像中の処理済物Gの色や色の分布(即ち、色のばらつき具合)に基づいて、連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出できるように撮像データを処理してもよい。この場合、画像処理部861は、例えば、撮像データを画像処理することにより色の分布を生成し、検出部862はこの色の分布を基準分布と比較することにより、運転状態の異常を検出する。なお、基準分布は、連続式粉体処理装置1の運転状態が健常である場合に得られる色の分布としてよい。
【0051】
対象の色の分布に基準分布に見られないピークが見つかる場合には、混合の不十分や粉体の材料の変化によって、正常な処理済物Gと異なる色の処理済物Gが排出されていると推定される。そこで、検出部862は、対象の色の分布に基準分布に見られないピーク(色)が見つかる場合には、連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出する。また、粉体の混合にムラがある場合には、対象の色の分布に基準分布に見られない複数のピークが見つかることがある。そこで、検出部862は対象の色の分布に基準分布に見られない複数のピークが見つかる場合には、連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出する。
【0052】
更に、画像処理部861は、処理済物Gの面積の割合及び/又は処理済物Gの色や色の分布に加えて又は代えて、処理済物Gの粒の大きさに基づいて連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出できるように撮像データを処理してもよい。水分の過剰や粉体の供給過剰が生じると、処理容器2の内壁や回転羽根6に付着する粉体の量が多くなり、付着量があるレベルを超えて剥離すると、正常な顆粒と比較して大きな粒子径を有する顆粒が排出されることがある。
【0053】
そこで、処理済物Gの粒の大きさに基づいて異常を検出する場合に、画像処理部861は、撮像データから処理済物Gの輪郭を抽出して所定の粒子径よりも大きな粒子径を有する顆粒の数を粒径不良としてカウントし、所定の時間内にカウントされた粒径不良の数が所定の閾値を超えると異常を検出するように構成されていてよい。ここで、所定の粒子径とは、例えば、健常運転時には造粒されないような大きな粒子径であって、任意に設定されてよい。また、カウント数の閾値は1以上の任意の数であってよい。
【0054】
或いは、処理済物Gの粒の大きさに基づいて異常を検出する場合に、画像処理部861は、撮像データから処理済物Gの粒度分布を生成し、検出部862は得られた粒度分布を所定の基準粒度分布と比較することにより異常を検出するように構成されていてよい。基準粒度分布は、連続式粉体処理装置1の運転状態が健常である場合に得られる粒度分布としてよい。処理済物Gに良品よりも大きな塊(例えば、粒径の大きな処理済物や処理済物の凝集体)が多数含まれる場合には、基準粒度分布と比較して粒度分布のピークが大きいほうへずれる。そこで、検出部862は、基準粒度分布と比較して粒度分布のピークが大きいほうへ所定の閾値以上ずれている場合には、連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出する。
【0055】
《運転監視装置82の第2例》
図12に示すように、第2例に係る運転監視装置82(82B)は、撮像データを健常と異常とに分類する分類部864、及び、分類部864を学習させる学習部865の各機能部を有する。
【0056】
分類部864は、図13に示すように、撮像データを含む入力データと、連続式粉体処理装置1の運転状態の健常又は異常の判断結果を含む出力データとの相関性を学習した学習済みモデル(即ち、学習済みパラメータが組み込まれた推論プログラム)を有する。分類部864は、この学習済みモデルを用いて、認識すべき撮像データ(即ち、入力データ)に対応する連続式粉体処理装置1の運転状態の健常又は異常の判断結果(即ち、出力データ)を導き出す。分類部864の学習済みモデルは、学習部865によって機械学習技術を用いて生成される。
【0057】
例えば、学習部865は、教師あり学習アルゴリズムを用いて、学習済みモデルを生成することができる。この場合、学習部865は、教師用の健常な撮像データ(即ち、健常データ)と教師用の異常な撮像データ(即ち、異常データ)とを記憶し、色、明るさ、面積、形状、エッジ(即ち、明暗の境界点)など様々な視点から両者の最も違いのある部分を見つけ出し、最も違いのある部分を健常・異常の判断要素として設定された学習済みモデルを生成するように構成されている。この学習済みモデルは、判断要素として設定された特徴について認識すべき入力データと健常データとの一致度(或いは乖離度)を求め、一致度の値に基づいて入力データを健常・異常に分類する。なお、判断要素とされる特徴は、1つでもよいが、精度を高めるために2つ以上であることが望ましい。この場合、複数の特徴について一致度が求められ、複数の一致度に基づいて総合的な一致度が算出され、この一致度に基づいて健常・異常の分類が行われてよい。
【0058】
また、教師あり学習アルゴリズムを用いて学習済みモデルを生成する学習部865は、ラベル(健常・異常の判定)が付けられた撮像データを学習データとし、大量の学習データから入力データと出力データとの相関性を暗示する特徴を識別することで、新たな入力データに対応する出力データを推定するための相関性モデルを学習し、この相関性モデルを学習済みモデルとするように構成されていてもよい。この学習済みモデルは、認識すべき入力データを健常・異常のいずれかのラベルに分類し、その分類結果を出力する。
【0059】
或いは、学習部865は、教師なし学習アルゴリズムを用いて、学習済みモデルを生成することができる。この場合、学習部865は、例えば、連続式粉体処理装置1の運転状態が健常であるときの撮像データを学習データとし、大量の学習データを学習することにより、学習済みモデルを生成するように構成されていてよい。この学習済みモデルは、認識すべき入力データが正常な状態からどの程度逸脱しているかを数値化し、この数値に基づいて入力データを健常か異常に分類し、その分類結果を出力する。
【0060】
学習部865が用いる学習用モデルは、適切な分類が行われるように前処理されたものであってよい。前処理の内容としては、撮像データに含まれる撮像画像における処理済物の面積の抽出処理や輪郭の抽出処理などが例示される。
【0061】
なお、上記では学習済みモデル及びその学習方法を例示したが、本開示において異常検出部86の学習済みモデル及びその学習方法は上記に限定されない。
【0062】
〔総括〕
本開示の第1の項目に係る連続式粉体処理装置1の運転監視装置82は、粉体の混合又は粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置1の運転状態を監視する運転監視装置82であって、
連続式粉体処理装置1において粉体の混合又は造粒が行われる処理容器2の出口2b及び出口2bから排出される処理済物Gを連続的又は断続的に撮像した撮像データを取得し、
撮像データから導き出される処理済物Gの排出状況に基づいて連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出する異常検出処理を行い、
異常検出処理で異常が検出された場合に異常信号を出力するように構成されているものである。
【0063】
第2の項目に係る運転監視装置82は、第1の項目に係る運転監視装置82において、異常検出処理が、撮像データを画像処理することにより処理済物Gの排出状況を示す排出指標を生成し、排出指標の変動に基づいて連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出することを含むものである。ように構成されている。
【0064】
第3の項目に係る運転監視装置82は、第2の項目に係る運転監視装置82において、排出指標が、所定の基準面積に対する撮像野内の処理済物Gが占める面積の割合であるものである。このような排出指標は、比較的単純に求められ得ることから、オンラインで連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出に際し好適である。
【0065】
第4の項目に係る運転監視装置82は、第3の項目に係る運転監視装置82において、異常検出処理は、連続式粉体処理装置1の運転状態が健常であるときに得られる排出指標を基準値としたときに、排出指標が基準値を下回る状態が所定の判断時間以上継続する場合に、連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出することを含むものである。
【0066】
第5の項目に係る運転監視装置82は、第3の項目に係る運転監視装置82において、異常検出処理は、連続式粉体処理装置1の運転状態が健常であるときに得られる排出指標を基準値としたときに、排出指標が脈動する状態が所定の判断時間以上継続する場合に、連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出することを含むものである。
【0067】
第6の項目に係る運転監視装置82は、第1乃至5のいずれかの項目に係る運転監視装置82において、異常検出処理は、撮像データから色の分布を生成し、色の分布を連続式粉体処理装置1の運転状態が健常であるときに得られる基準分布と比較することにより、連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出することを含むものである。これにより、処理済物Gの色や色の分布の変化に基づいて、粉体の混合の不十分や粉体の材料の変化に起因する連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出することができる。
【0068】
第7の項目に係る運転監視装置82は、第1乃至6のいずれかの項目に係る運転監視装置82において、異常検出処理は、撮像データから所定の値よりも大きな粒子径の顆粒を抽出してカウントし、所定の時間あたりのカウント数が所定の閾値を超えると、連続式粉体処理装置1の運転状態の異常を検出することを含むものである。
【0069】
第8の項目に係る運転監視装置82は、第1の項目に係る運転監視装置82において、異常検出処理は、撮像データを含む入力データと連続式粉体処理装置1の運転状態の健常又は異常の判断結果を含む出力データとの相関性を学習した学習済みモデルを用いて、認識すべき入力データに対応する出力データを導き出すことを含むものである。
【0070】
第9の項目に係る運転監視装置82は、第8の項目に係る運転監視装置82において、学習済みモデルは、教師用の健常な撮像データと教師用の異常な撮像データとを夫々学習しており、色、明るさ、面積、形状、及びエッジのうち少なくとも1つの観点から両者の最も違いのある部分を判断要素とし、認識すべき入力データと教師用の健常な撮像データとの一致度を求め、一致度の値に基づいて入力データを健常・異常に分類するように構成されているものである。
【0071】
第8及び9の項目に係る運転監視装置82では、連続式粉体処理装置1の運転状態の健常・異常の識別に用いる要素を決めるために機械学習の技術が用いられ、収集されたデータのうち撮像データの特徴をよく表している要素がオペレータの恣意や経験に基づくのではなく客観的に選択されるため、連続式粉体処理装置1の運転状態の高い識別精度が期待できる。また、運転監視装置82は、上記の撮像データに加えて、制御装置81が取得したプロセスデータ(例えば、回転数、電流値、トルク等)を、運転状態の健常・異常の判断のために利用してもよい。
【0072】
本開示の第10の項目に係る連続式粉体処理装置1は、粉体の混合又は粉体から顆粒の造粒を行う連続式粉体処理装置1であって、
入口2a及び出口2bを有し、入口2aから出口2bへ向かって横向きの送り方向Xに延びる筒状の処理容器2と、
処理容器2の出口2bから排出された処理済物Gを出口2bより下方に配置された第1排出口14aへ案内するシュート14と、
処理容器2の入口2aと連続して配置され、送り方向Xに延びる供給管3と、
供給管3へ粉体を供給するフィーダ77と、
処理容器2内及び供給管3内に配置された回転シャフト4と、
供給管3内で回転シャフト4に固定されて、供給管3内の粉体を処理容器2の入口2aへ送り出すスクリュー5と、
処理容器2内で回転シャフト4に固定された送り方向Xに並ぶ複数の回転羽根6であって、回転することにより、送り方向Xへ移動する送り力を粉体に与えるとともに粉体を攪拌及び解砕する複数の回転羽根6と、
フィーダ77及び回転シャフト4の駆動を制御する制御装置81と、
シュート14内において処理容器2の出口2b及び当該出口2bから排出される処理済物Gを撮像する撮像装置9と、
第1乃至10のいずれかの項目に係る運転監視装置82とを、備え、
運転監視装置82は異常信号を制御装置81へ出力し、当該異常信号を取得した制御装置81は所定の異常対応処理を行うように構成されていることを特徴としている。
【0073】
第11の項目に係る連続式粉体処理装置1は、第10の項目に係る連続式粉体処理装置1において、異常対応処理が、回転シャフト4の駆動を継続させながらフィーダ77の駆動を停止することを含むものである。
【0074】
第12の項目に係る連続式粉体処理装置1は、第11の項目に係る連続式粉体処理装置1において、シュート14は、第1排出口14aと異なる第2排出口14bと、シュート14を通過する処理済物Gの流路を第1排出口14aへ案内する第1流路W1と第2排出口14bへ案内する第2流路W2との間で切り替える切替弁66とを有し、制御装置81は切替弁66の動作を制御し、異常対応処理が、シュート14の流路を第1流路W1から第2流路W2に切り替えるように切替弁66を動作させることを更に含むものである。
【0075】
第13の項目に係る連続式粉体処理装置1は、第10の項目に係る連続式粉体処理装置1において、異常対応処理が、回転シャフト4及びフィーダ77の駆動を停止することを含むものである。
【0076】
上記第1乃至9の項目に係る運転監視装置82、及び、第10乃至13の項目に係る連続式粉体処理装置1によれば、連続式粉体処理装置1の処理容器2の出口2bから排出される処理済物Gの排出状況に基づいて、連続式粉体処理装置1の運転状態の異常が検出される。処理済物Gの排出状況は撮像データに含まれる処理容器2の出口2b及び当該出口2bから排出される処理済物Gの撮像画像に現れる情報から認識することができ、詳細な物性の測定などは不要である。このことから、上記運転監視装置82では、連続式粉体処理装置1の稼働中にオンラインで運転状態の異常を検出することが可能である。同様の理由から、上記運転監視装置82では、連続式粉体処理装置1で運転状態の異常が生じたときに、速やかに異常を検出することができる。よって、連続式粉体処理装置1では運転状態の異常が生じたときに速やかに異常対応処理を行うことができ、結果として廃棄品を削減することができる。
【0077】
以上に本開示の好適な実施の形態を説明したが、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本開示に含まれ得る。上記の構成は、例えば、以下のように変更することができる。
【0078】
例えば、上記の連続式粉体処理装置1では、処理容器2が回転するが、処理容器2は回転が固定されていてもよい。また、処理容器2が固定されている場合には、処理容器2と供給管3とが分離構成されて、処理容器2に上方に向けて開口した入口2aが設けられていてもよい。
【0079】
また、例えば、上記の連続式粉体処理装置1では、処理容器2の中心軸20に対し回転シャフト4の中心軸40が偏心しているが、処理容器2の中心軸20に対し回転シャフト4の中心軸40とが同心状に配置されていてもよい。
【0080】
本明細書中に記載されている制御装置81及び運転監視装置82により実現される機能は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、汎用プロセッサ、特定用途プロセッサ、集積回路、ASICs(Application Specific Integrated Circuits)、CPU(Central Processing Unit)、従来型の回路、及び/又は それらの組合せを含む、circuitry又は processing circuitryにおいて実装されてもよい。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含み、circuitry又はprocessing circuitryとみなされる。プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行する、programmed processorであってもよい。本明細書において、circuitry、ユニット、手段は、記載された機能を実現するようにプログラムされたハードウェア、又は実行するハードウェアである。当該ハードウェアは、本明細書に開示されているあらゆるハードウェア、又は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、又は、実行するものとして知られているあらゆるハードウェアであってもよい。当該ハードウェアがcircuitryのタイプであるとみなされるプロセッサである場合、当該circuitry、手段、又はユニットは、ハードウェアと、当該ハードウェア及び又はプロセッサを構成する為に用いられるソフトウェアの組合せである。
【符号の説明】
【0081】
1 :連続式粉体処理装置
2 :処理容器
2a :入口
2b :出口
3 :供給管
4 :回転シャフト
5 :スクリュー
6 :回転羽根
8 :制御ユニット
9 :撮像装置
14 :シュート
14a :第1排出口
14b :第2排出口
66 :切替弁
77 :フィーダ
81 :制御装置
82 :運転監視装置
85 :撮像データ取得部
86,86A,86B :異常検出部
87 :異常出力部
862 :検出部
864 :分類部
865 :学習部
F :撮像野
G :処理済物
W1 :第1流路
W2 :第2流路
X :送り方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14