(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148022
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】溶接評価装置
(51)【国際特許分類】
B23K 31/00 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
B23K31/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060887
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】古川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】門田 圭二
(57)【要約】
【課題】処理負荷を軽減しつつ、適切に溶接を評価することができる溶接評価装置を提供する。
【解決手段】溶接評価装置100は、実施された溶接を評価する溶接評価装置であって、溶接時の溶接波形を取得する溶接波形取得部110と、取得した溶接波形に基づいて特徴量を抽出する特徴量抽出部120と、抽出した特徴量に基づいて、特徴量を入力データとして溶接の評価を出力データとする機械学習モデルを用いて溶接を評価する溶接評価部130と、評価した結果を出力する出力部140と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施された溶接を評価する溶接評価装置であって、
前記溶接時の溶接波形を取得する溶接波形取得部と、
前記取得した溶接波形に基づいて特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記抽出した特徴量に基づいて、特徴量を入力データとして溶接の評価を出力データとする機械学習モデルを用いて前記溶接を評価する溶接評価部と、
前記評価した結果を出力する出力部と、を備える、
溶接評価装置。
【請求項2】
前記特徴量抽出部は、前記溶接波形から導出可能な少なくとも1つの項目に関する情報を前記特徴量として抽出する、
請求項1に記載の溶接評価装置。
【請求項3】
前記特徴量抽出部は、溶接波形を入力データとして特徴量を出力データとする機械学習モデルを用いて特徴量を抽出する、
請求項2に記載の溶接評価装置。
【請求項4】
前記溶接の溶接条件を取得する溶接条件取得部を、さらに備え、
前記溶接評価部は、前記抽出した特徴量及び前記取得した溶接条件に基づいて、溶接波形及び溶接条件を入力データとして溶接の評価を出力データとする機械学習モデルを用いて前記溶接を評価する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の溶接評価装置。
【請求項5】
前記溶接評価部は、前記溶接に関する複数の評価項目を評価する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の溶接評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業界において、多くのロボットが普及している。当該ロボットは、例えば、電子部品及び機械部品の組み立て、溶接及び搬送等に用いられ、工場の生産ラインの効率化及び自動化が図られている。
【0003】
溶接ロボットでは、生産ラインの効率化のために溶接時間やタクトタイムの短縮化が求められる一方で、アーク溶接におけるビードの仕上がりを考慮した溶接品質を確保しなければならない。
【0004】
溶接品質を評価する項目として、ビードの形状や内部欠陥の有無等があるが、これらを評価する手法として、溶接後にレーザやカメラ等のセンサを用いて評価する手法が知られているが、例えば、特許文献1では、機械学習により溶接異常を判定する技術が開示されている。
【0005】
具体的には、特許文献1では、溶接電流検出値又は溶接電圧検出値を時系列的に記録した時系列波形データを周波数解析することで周波数スペクトルデータを生成し、当該周波数スペクトルデータに基づいて、対応する溶接状態における各種の異常の有無を判定する。そして、その判定において、機械学習アルゴリズムに深層学習(ディープラーニング)を適用し、2次元マッピングデータとしての解析周波数スペクトルデータに対して、当該解析周波数スペクトルデータに表出されている特徴から判定可能な溶接異常の有無とその種別を判定情報として出力するよう設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、特定の溶接異常を判定しているだけであって、詳細な情報を把握できず、また、機械学習アルゴリズムに深層学習(ディープラーニング)を適用しているため処理負荷が大きいという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、処理負荷を軽減しつつ、適切に溶接を評価することができる溶接評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る溶接評価装置は、実施された溶接を評価する溶接評価装置であって、溶接時の溶接波形を取得する溶接波形取得部と、取得した溶接波形に基づいて特徴量を抽出する特徴量抽出部と、抽出した特徴量に基づいて、特徴量を入力データとして溶接の評価を出力データとする機械学習モデルを用いて溶接を評価する溶接評価部と、評価した結果を出力する出力部と、を備える。
【0010】
この態様によれば、溶接波形取得部は、溶接時の溶接波形を取得し、特徴量抽出部は、溶接波形に基づいて特徴量を抽出する。溶接評価部は、特徴量に基づいて、機械学習モデルを用いて溶接を評価し、出力部は、評価した結果を出力する。溶接電流波形から特徴量を抽出して、これらに基づいて機械学習モデルを用いて溶接を評価していることから、処理負荷を軽減しつつ、適切に溶接を評価することができる。
【0011】
上記態様において、特徴量抽出部は、溶接波形から導出可能な少なくとも1つの項目に関する情報を特徴量として抽出してもよい。
【0012】
この態様によれば、溶接の評価に影響する項目を溶接波形から抽出するため、より適切に溶接を評価することができる。
【0013】
上記態様において、特徴量抽出部は、溶接波形を入力データとして特徴量を出力データとする機械学習モデルを用いて特徴量を抽出してもよい。
【0014】
この態様によれば、機械学習モデルを用いて特徴量を抽出するため、フィードバックされた学習済みモデルを用いて、より適切に特徴量を抽出することができる。その結果、より適切に溶接を評価することができる。
【0015】
上記態様において、溶接の溶接条件を取得する溶接条件取得部を、さらに備え、溶接評価部は、抽出した特徴量及び取得した溶接条件に基づいて、溶接波形及び溶接条件を入力データとして溶接の評価を出力データとする機械学習モデルを用いて溶接を評価してもよい。
【0016】
この態様によれば、溶接評価部は、特徴量に加えて、さらに、溶接条件取得部によって取得された溶接条件に基づいて、機械学習モデルを用いて溶接を評価するため、より適切に、溶接を評価することができる。
【0017】
上記態様において、溶接評価部は、溶接に関する複数の評価項目を評価してもよい。
【0018】
この態様によれば、溶接評価部は、溶接に関する複数の評価項目を評価するため、多面的に溶接を評価することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、処理負荷を軽減しつつ、適切に溶接を評価することができる溶接評価装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る溶接ロボットシステム10を示すシステム概要図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る溶接評価装置100の各機能を示す機能ブロック図である。
【
図3】溶接波形取得部110によって取得された溶接電流波形から抽出される特徴量を示す図である。
【
図4】溶接電流波形から抽出された特徴量を入力データとして、機械学習モデルを用いて、評価結果を出力する様子を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る溶接評価装置100が実行する溶接評価方法M100を示すフローチャートである。
【
図6】溶接電流波形を入力データとして、1つの機械学習モデルを用いて、溶接に関する複数の評価項目を出力データとする様子を示す図である。
【
図7】溶接波形取得部110によって取得された溶接電圧波形から抽出される特徴量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0022】
<一実施形態>
[溶接ロボットシステムの概要]
図1は、本発明の一実施形態に係る溶接ロボットシステム10を示すシステム概要図である。
図1において、溶接ロボットシステム10は、溶接ロボット20と、ティーチペンダント30と、ロボット制御装置40と、電源50とを備える。
【0023】
溶接ロボット20は、ケーブルを介してロボット制御装置40と接続されており、ロボット制御装置40からの動作指令に基づいてアーク溶接を行う。溶接ロボット20は、アーム先端部に溶接トーチ21を備えており、当該溶接トーチ21の先端から溶接ワイヤを送給し、溶接対象である溶接母材(金属材料のワーク)との間にアークを発生させることによりアーク溶接を行う。
【0024】
溶接トーチ21は、ケーブルを介して電源50と接続されており、溶接ワイヤへの溶接電圧や溶接電流の供給を受ける。アーク溶接では、溶接ワイヤを金属材料に瞬間的に接触させて通電させると、溶接ワイヤと金属材料との間にアーク放電が発生し、発生したアークの熱により溶接ワイヤと金属材料とを溶解させることで、溶接が行われる。
【0025】
ティーチペンダント30は、溶接ロボット20の溶接関連教示情報について、溶接作業を実施する作業者からの入力を受け付ける。作業者は、アークの状態を確認しつつ、ティーチペンダント30を用いて最適な溶接関連教示情報を入力する。
【0026】
ここで、溶接関連教示情報とは、溶接ロボット20により行われる溶接に関する情報であり、溶接ロボット20の動作を教示する教示情報及び溶接の施工条件が含まれる。
【0027】
溶接ロボット20の教示情報には、溶接ロボット20のアームの動作に関する情報、溶接ロボット20の位置及び姿勢に関する情報、溶接トーチ21の先端から送給される溶接ワイヤの突出長さに関する情報等が含まれる。
【0028】
また、溶接の施工条件には、溶接ワイヤに印加される溶接電圧、溶接ワイヤを流れる溶接電流の値、溶接中における溶接線方向への溶接トーチ21の移動速度を表す溶接速度及び停止時間等が含まれ、さらにはワイヤ送給装置によって制御されるワイヤ送給速度が含まれてもよい。
【0029】
ロボット制御装置40は、溶接ロボット20の制御を行う機器である。ロボット制御装置40は、ティーチペンダント30に接続されており、当該ティーチペンダント30に入力された溶接関連教示情報を取得することができる。ロボット制御装置40は、当該溶接関連教示情報に基づいて溶接ロボット20及び電源50を制御する。
【0030】
電源50は、ケーブルを介して溶接ロボット20に接続されており、ロボット制御装置40からの指令に基づいて溶接ロボット20における溶接トーチ21へ溶接電圧や溶接電流を供給する。
【0031】
なお、
図1では、ティーチペンダント30は、ケーブルを介してロボット制御装置40に接続されているが、ワイヤレスで接続されていてもよい。すなわち、ティーチペンダント30とロボット制御装置40とは、無線通信を行う通信部を備えていてもよい。ロボット制御装置40とティーチペンダント30とがワイヤレスに接続されることで、作業者はケーブルの存在に煩わされたり、ケーブルの長さによる移動範囲の制限を受けたりすることなく、自由に移動をしながら溶接関連教示情報の入力を行うことができる。
【0032】
このように、溶接ロボットシステム10では、ロボット制御装置40によって溶接ロボット20を動作させることによりアーク溶接を実施している。
【0033】
[溶接評価装置の構成]
以下、上述のように実施された溶接を評価する溶接評価装置について、説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る溶接評価装置100の各機能を示す機能ブロック図である。
図2に示されるように、溶接評価装置100は、溶接波形取得部110と、特徴量抽出部120と、溶接評価部130と、出力部140と、記憶部150とを備える。溶接評価装置100におけるこれらの機能を有する各部の全部又は一部を、上述した溶接ロボット20、ティーチペンダント30、ロボット制御装置40、その他周辺機器、及びパソコンなどのコンピュータやモニタなどの表示機器などに備えてもよく、これらの機能を有する各部によって溶接評価装置100とする構成であってもよい。
【0034】
溶接波形取得部110は、溶接時の溶接波形を取得する。例えば、溶接波形取得部110は、溶接ロボット20によって溶接が実施される期間の溶接電流波形及び/又は溶接電圧波形を取得する。溶接が実施される期間について、所定時間毎でもよいし、所定区間の溶接作業毎でもよい。
【0035】
特徴量抽出部120は、溶接波形取得部110によって取得された溶接波形に基づいて特徴量を抽出する。例えば、特徴量抽出部120は、溶接電流波形及び/又は溶接電圧波形から、予め設定された要素を特徴量として抽出するとよい。
【0036】
図3は、溶接波形取得部110によって取得された溶接電流波形から抽出される特徴量を示す図である。
図3に示されるように、溶接電流波形から、(a)パルス電流、(b)ベース電流、(c)パルス間隔、(d)パルス時間、(e)立上り時間、及び(f)立下り時間の各要素が特徴量として抽出される。
【0037】
なお、溶接電流波形からこれらの各要素を特徴量として抽出する際には、溶接の開始時・終了時を除く安定期間のうち、例えば、所定時間における溶接電流波形から特徴量を抽出するようにしてもよい。溶接の開始時・終了時は、安定期間とは異なる制御をしているため、溶接電流波形も異なり、適切な特徴量を抽出できない可能性がある。
【0038】
さらに、特徴量として抽出される各要素は、それぞれ平均値、及び標準偏差や分散を用いて算出するようにしてもよい。例えば、
図3に示される(c)パルス間隔を1周期として、複数周期分の溶接電流波形から、それぞれ(a)パルス電流、(b)ベース電流、(c)パルス間隔、(d)パルス時間、(e)立上り時間、及び(f)立下り時間の各要素を抽出し、それぞれ平均値を算出することにより、各要素の特徴量としてもよい。これにより、各要素についてバラツキを軽減して、より適切に、各要素を特徴量として抽出することができる。
【0039】
また、ここでは、各要素を(a)パルス電流、(b)ベース電流、(c)パルス間隔、(d)パルス時間、(e)立上り時間、及び(f)立下り時間としているが、これらに限定されるものではない。例えば、これらのうち1つ又は2つ以上のいずれかの要素のみを特徴量として抽出してもよいし、溶接電流波形から抽出可能であって、溶接の評価に影響を与え得る要素であれば、これら以外の要素(例えば、立上り傾き、立下り傾き、短絡電流、短絡復帰電流、短絡時間、短絡回数など)を特徴として抽出してもよい。いずれの要素を抽出するかについては、予めユーザによって選択・設定可能なようにしていてもよい。
【0040】
また、特徴量抽出部120は、機械学習モデルを用いて特徴量を抽出してもよい。例えば、溶接電流波形を入力データとして、機械学習モデルを用いて、上述したような(a)パルス電流、(b)ベース電流、(c)パルス間隔、(d)パルス時間、(e)立上り時間、及び(f)立下り時間などの各要素を特徴量として出力してもよい。ここで、いずれの要素を出力するかについても、当該機械学習モデルを用いてもよい。フィードバックされた学習済みモデルを用いることにより、各要素を、より適切な特徴量として抽出することができる。
【0041】
溶接評価部130は、特徴量抽出部120によって抽出された特徴量に基づいて、機械学習モデルを用いて溶接を評価する。例えば、溶接評価部130は、
図3で説明した特徴量としての、(a)パルス電流、(b)ベース電流、(c)パルス間隔、(d)パルス時間、(e)立上り時間、及び(f)立下り時間の各要素を入力データとして、機械学習モデルを用いて、溶接を評価する。
【0042】
図4は、溶接電流波形から抽出された特徴量を入力データとして、機械学習モデルを用いて、評価結果を出力する様子を示す図である。
図4に示されるように、(a)パルス電流、(b)ベース電流、(c)パルス間隔、(d)パルス時間、(e)立上り時間、及び(f)立下り時間の各要素を入力データとして、機械学習モデルを用いて、(A)ビード幅、(B)ビード高さ、(C)アンダーカット、及び(D)スパッタ量など溶接に関する複数の評価項目について、溶接の評価結果として出力している。各評価項目については、例えば、「1」~「5」の5段階評価(「1」を最悪、「3」を標準、「5」を最良)とするスコアを評価結果として出力したり、さらには、それらを総合して、1つのスコアを評価結果として出力したりしてもよい。
【0043】
ここで用いられる機械学習モデルとしては、特に限定はしないが、例えば、LightGBM、ランダムフォレスト及びサポートベクターマシンであれば、ニューラルネットワークを用いたアルゴリズムより処理負荷が軽減される。
【0044】
また、
図4に示されるように複数の評価結果を出力する場合には、複数の評価結果を出力可能な機械学習モデルを用いてもよいし、それぞれ1つの評価結果を出力する機械学習モデルを複数用いてもよい。
【0045】
なお、評価項目として、(A)ビード幅、(B)ビード高さ、(C)アンダーカット、及び(D)スパッタ量としているが、これらに限定されるものではない。例えば、これらのうち1つ又は2つ以上のいずれかの要素のみを評価項目としてもよいし、溶接を評価し得る要素であれば、これら以外の評価項目(例えば、溶込み、ブローホールなど)を評価項目として出力してもよい。いずれの評価項目を出力するかについては、予めユーザによって選択・設定可能なようにしていてもよく、その場合、それらに応じた機械学習モデルを備えていればよい。
【0046】
さらに、溶接評価装置100は、溶接条件取得部を備えていてもよい。溶接条件取得部は、溶接ロボット20が溶接した際の溶接の施工条件(作業者によって設定された溶接の施工条件)を取得する。溶接の施工条件は、例えば、溶接電流値、溶接電圧値、溶接速度、停止時間、アーク発生時間、アーク停止時間、ピッチ間隔及び冷却時間等が含まれ、さらにはワイヤ送給装置によって制御されるワイヤ送給速度が含まれてもよい。
【0047】
そして、溶接評価部130は、特徴量抽出部120によって抽出された特徴量に加えて、溶接条件取得部によって取得された溶接条件に基づいて、機械学習モデルを用いて溶接を評価してもよい。具体的には、
図4に示された機械学習モデルにおいて、溶接電流波形から抽出された特徴量に加えて、さらに、溶接条件取得部によって取得された溶接条件(例えば、溶接電流値、溶接電圧値、溶接速度、停止時間、アーク発生時間、アーク停止時間、ピッチ間隔及び冷却時間等の溶接の施工条件)を入力データとして、(A)ビード幅、(B)ビード高さ、(C)アンダーカット、及び(D)スパッタ量など溶接に関する複数の評価項目について、溶接の評価結果として出力してもよい。これには、予め、特徴量抽出部120によって抽出された特徴量、及び溶接条件取得部によって取得された溶接条件を入力データとして、(A)ビード幅、(B)ビード高さ、(C)アンダーカット、及び(D)スパッタ量など溶接に関する複数の評価項目を出力データとする機械学習モデルを備えていればよい。その結果、より適切に、溶接を評価することができる。
【0048】
出力部140は、溶接評価部130によって評価された結果を出力する。例えば、モニタに出力したり、タブレットや専用端末の表示画面に出力したりしてもよい。
【0049】
記憶部150には、各種設定された条件、機械学習モデルが記憶されている。例えば、記憶部150には、溶接波形取得部110によって取得された溶接波形から、特徴量抽出部120によって抽出する特徴量に関する情報が記憶されており、特徴量抽出部120は、当該情報を参照する。また、記憶部150には、
図4に示された機械学習モデルが記憶されており、溶接評価部130は、当該機械学習モデルを用いて溶接を評価する。
【0050】
なお、記憶部150に記憶されるものはこれらに限定されるものではなく、これら以外にも溶接評価装置100の処理において必要なデータが記憶され、また、処理過程において一時的にデータが記憶されてもよい。
【0051】
[溶接評価方法]
次に、本発明の一実施形態における溶接の評価方法について、具体的に詳しく説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る溶接評価装置100が実行する溶接評価方法M100を示すフローチャートである。
図5に示されるように、溶接評価方法M100は、ステップS110~S140を含み、各ステップは、溶接評価装置100に含まれるプロセッサによって実行される。
【0052】
ステップS110では、溶接波形取得部110は、溶接時の溶接波形を取得する(溶接波形取得ステップ)。具体例として、溶接波形取得部110は、溶接ロボット20によって実施された溶接時の溶接電流波形を取得する。
【0053】
ステップS120では、特徴量抽出部120は、ステップS110で取得した溶接波形に基づいて特徴量を抽出する(特徴量抽出ステップ)。具体例として、特徴量抽出部120は、
図3に示されたように、溶接電流波形から、(a)パルス電流、(b)ベース電流、(c)パルス間隔、(d)パルス時間、(e)立上り時間、及び(f)立下り時間の各要素を特徴量として抽出する。
【0054】
ステップS130では、溶接評価部130は、ステップS120で抽出した特徴量に基づいて、機械学習モデルを用いて溶接を評価する(溶接評価ステップ)。具体例として、溶接評価部130は、
図4に示されたように、溶接評価部130は、(a)パルス電流、(b)ベース電流、(c)パルス間隔、(d)パルス時間、(e)立上り時間、及び(f)立下り時間の各要素を入力データとして、機械学習モデルを用いて、(A)ビード幅、(B)ビード高さ、(C)アンダーカット、及び(D)スパッタ量など溶接に関する複数の評価項目について、溶接の評価結果として出力する。
【0055】
ステップS140では、出力部140は、ステップS130で評価した結果を出力する(出力ステップ)。具体例として、出力部140は、ステップS130で評価された(A)ビード幅、(B)ビード高さ、(C)アンダーカット、及び(D)スパッタ量など溶接に関する複数の評価項目について、モニタに出力したり、タブレットや専用端末の表示画面に出力したりする。
【0056】
以上のように、本発明の一実施形態に係る溶接評価装置100及び溶接評価方法M100によれば、溶接波形取得部110は、溶接ロボット20によって実施された溶接時の溶接電流波形を取得し、特徴量抽出部120は、当該溶接電流波形から特徴量を抽出する。そして、溶接評価部130は、特徴量を入力データとして、機械学習モデルを用いて、溶接に関する複数の評価項目を出力データとして溶接を評価し、出力部140は、当該評価した結果をモニタなどに出力する。溶接電流波形から特徴量となる各要素を抽出して、これらを機械学習モデルの入力データとしていることから、処理負荷を軽減しつつ、適切に溶接を評価することができる。
【0057】
また、機械学習モデルの入力データとしての各要素を確認することができるため、例えば、作業者は、出力された溶接の評価結果に対する要因や影響を確認したり、分析したりすることができる。
【0058】
なお、本実施形態では、特徴量抽出部120によって溶接電流波形から特徴量を抽出し、溶接評価部130は、当該抽出した特徴量を入力データとして機械学習モデルを用いて溶接に関する複数の評価項目を出力データとして溶接を評価していた。また、特徴量抽出部120によって特徴量を抽出する場合、溶接電流波形を入力データとして機械学習モデルを用いて特徴量を抽出することも含まれるが、例えば、溶接電流波形を入力データとして、1つの機械学習モデルを用いて、溶接に関する複数の評価項目を出力データとして溶接を評価するようにしてもよい。
【0059】
図6は、溶接電流波形を入力データとして、1つの機械学習モデルを用いて、溶接に関する複数の評価項目を出力データとする様子を示す図である。
図6に示されるように、溶接電流波形を入力データとして、機械学習モデルを用いて、(A)ビード幅、(B)ビード高さ、(C)アンダーカット、及び(D)スパッタ量など溶接に関する複数の評価項目について、溶接の評価結果として出力している。
【0060】
ここで、1つの機械学習モデルは、例えば、LSTM(Long Short-Term Memory)などのRNN(Recurrent Neural Network)であるが、特徴量抽出層を備える。当該特徴量抽出層では、中間データとして、(a)パルス電流、(b)ベース電流、(c)パルス間隔、(d)パルス時間、(e)立上り時間、及び(f)立下り時間の各要素を抽出可能な構成にするとよい。
【0061】
例えば、溶接電流波形を入力データとして特徴量((a)パルス電流、(b)ベース電流、(c)パルス間隔、(d)パルス時間、(e)立上り時間、及び(f)立下り時間の各要素を)を抽出データとする機械学習モデル(特徴量抽出層)に全結合層を用いて構成され、(A)ビード幅、(B)ビード高さ、(C)アンダーカット、及び(D)スパッタ量など溶接に関する複数の評価項目を出力データとする機械学習モデルにしてもよい。
【0062】
なお、ここでは、1つの機械学習モデルをRNNとしたが、これに限定されるものではなく、溶接電流波形を入力データとして、溶接に関する複数の評価項目を出力データとして溶接を評価できるのであれば、例えば、LightGBM、ランダムフォレスト及びサポートベクターマシンなども1つの機械学習モデルとして用いてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、溶接波形取得部110によって取得される溶接時の溶接波形を溶接電流波形としたが、これに限定されるものではなく、例えば、溶接電圧波形でもよい。溶接時の溶接波形として、溶接電流波形を取得してもよいし、溶接電圧波形を取得してもよいし、さらには溶接電流波形及び溶接電圧波形を取得してもよい。
【0064】
図7は、溶接波形取得部110によって取得された溶接電圧波形から抽出される特徴量を示す図である。
図7に示されるように、溶接電圧波形の場合、特徴量抽出部120は、溶接電圧波形から、(a)パルス電圧、(b)ベース電圧、(c)パルス間隔、(d)パルス時間、(e)立上り時間、及び(f)立下り時間の各要素が特徴量として抽出すればよい。そして、溶接評価部130は、これらの各要素を入力データとして、機械学習モデルを用いて溶接を評価する。
【0065】
さらに、本実施形態では、溶接評価装置100は、溶接ロボット20によって実施された溶接を評価していたが、これに限定されるものではなく、例えば、作業者が手動で実施した手溶接の評価をすることも可能である。
【0066】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10…溶接ロボットシステム、20…溶接ロボット、21…溶接トーチ、30…ティーチペンダント、40…ロボット制御装置、50…電源、100…溶接評価装置、110…溶接波形取得部、120…特徴量抽出部、130…溶接評価部、140…出力部、150…記憶部、M100…溶接評価方法、S110~S140…溶接評価方法M100の各ステップ