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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148024
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】乗用芝刈機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/76 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
A01D34/76 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060898
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大翔
(72)【発明者】
【氏名】三宅 浩喜
(72)【発明者】
【氏名】渡部 智明
(72)【発明者】
【氏名】増田 龍太郎
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA12
2B083BA18
2B083DA03
2B083FA06
2B083FA13
2B083HA52
(57)【要約】
【課題】後進走行であっても安全性を確保しつつ、操作性が良好な乗用芝刈機を提供することを目的とする。
【解決手段】走行車体1の下方に芝草を刈取る作業機4を設け、該作業機4を駆動する作業機用原動機40と走行車体1の駆動輪3を駆動する走行用原動機30を備えた乗用芝刈機において、走行車体1の前進操作又は後進操作を検出する前後進検出手段94を設け、コントローラ100は作業機用原動機40が駆動しているときに後進操作を検知すると走行用原動機30の回転を規制して車速を制限する後進時車速制限モードを備えた。
【選択図】図17


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)の下方に芝草を刈取る作業機(4)を設け、該作業機(4)を駆動する作業機用原動機(40)と走行車体(1)の駆動輪(3)を駆動する走行用原動機(30)を備えた乗用芝刈機において、走行車体(1)の前進操作又は後進操作を検出する前後進検出手段(94)を設け、コントローラ(100)は作業機用原動機(40)が駆動しているときに後進操作を検知すると走行用原動機(30)の回転を規制して車速を制限する後進時車速制限モードを備えたことを特徴とする乗用芝刈機。
【請求項2】
後進時車速制限モードを一時的に無効化する車速制限解除スイッチ(105)を設け、コントローラ(100)は、車速が制限された後進中に車速制限解除スイッチ(105)が操作されると前後進検出手段(94)が検知した後進の操作に応じて走行車体(1)の車速を加減速するよう構成した請求項1に記載の乗用芝刈機。
【請求項3】
車速の加速値を監視し加速値が一定値を超えないように制御する加速値制御手段を備えた請求項2に記載の乗用芝刈機。
【請求項4】
作業機用原動機(40)の回転と停止を操作するPTOスイッチ(103)を設け、コントローラ(100)は作業機用原動機(40)が停止している状態で後進中にPTOスイッチ(103)を操作しても作業機用原動機(40)を作動させないよう構成した請求項1に記載の乗用芝刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園等を走行させて園内の芝刈りを行う乗用芝刈作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行車体の下方に芝刈り装置を備え、芝刈り装置への動力伝達を入り切りするPTOクラッチを有し、PTOクラッチが係合したままで後進操作が行われるとエンジンを停止することにより後進時の作業を規制するとともに、後進時の作業規制を一時的に無効にするスイッチを有する乗用芝刈機が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-96558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成によると、PTO回転中に車両を後進側操作するとエンジンが停止するものであるから、後進作業を未然に防止でき安全である。また、後進時エンジン停止モード解除スイッチを構成することにより、後進作業を行うことができるが、スイッチ操作を伴いオペレータ認識のもとでの作業であって安全性を担保できる。
【0005】
しかしながら、上記技術ではエンジンが停止してしまうため、復帰においてはエンジンを再始動する必要があり、操作性があまり良くなかった。
【0006】
本発明では安全性を確保しつつ、操作性が良好な乗用芝刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、走行車体1の下方に芝草を刈取る作業機4を設け、該作業機4を駆動する作業機用原動機40と走行車体1の駆動輪3を駆動する走行用原動機30を備えた乗用芝刈機において、走行車体1の前進操作又は後進操作を検出する前後進検出手段94を設け、コントローラ100は作業機用原動機40が駆動しているときに後進操作を検知すると走行用原動機30の回転を規制して車速を制限する後進時車速制限モードを備えた。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、後進時車速制限モードを一時的に無効化する車速制限解除スイッチ105を設け、コントローラ100は、車速が制限された後進中に車速制限解除スイッチ105が操作されると前後進検出手段94が検知した後進の操作に応じて走行車体1の車速を加減速するよう構成する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、車速の加速値を監視し加速値が一定値を超えないように制御する加速値制御手段を備える。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、作業機用原動機40の回転と停止を操作するPTOスイッチ103を設け、コントローラ100は作業機用原動機40が停止している状態で後進中にPTOスイッチ103を操作しても作業機用原動機40を作動させないよう構成する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、走行車体1を後進する操作を検知すると車速が所定以下に制限されるもので、芝草を刈取る作業機4を駆動したまま後進するときに安全に走行できる。また車速は制限されつつも車体1移動は行なえ作業機4は停止しないので、芝草の排出を継続できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、後進中といえども車速制限を解除できるため利便性が向上する。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の効果に加え、加速値に制限を設けることで急発進を防止し安全である。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、容易に作業機の回転数を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明における実施の形態の乗用芝刈機の左側面図である。
図2】本発明における実施の形態のボンネットカバーを開放姿勢にした作業車両の左側面図である。
図3】本発明における実施の形態の乗用芝刈機の一部を破断した要部の斜視図である。
図4】本発明における実施の形態の乗用芝刈機の背面図である。
図5】本発明における実施の形態の後輪と作業機の要部の平面図である。
図6】本発明における実施の形態の後輪と作業機の要部の左側面図である。
図7】本発明における実施の形態の後輪用の電動機と作業機用の電動機の左側面図である。
図8】本発明における実施の形態の走行車体の斜視図である。
図9】本発明における実施の形態のステアリングポストの斜視図である。
図10】本発明における実施の形態のバッテリとバッテリブラケットの斜視図である。
図11】本発明における実施の形態のバッテリブラケットの斜視図である。
図12】本発明における実施の形態の前輪と、バッテリと、バッテリブラケットの正面図である。
図13】本発明における実施の形態の乗用芝刈機の一部を破断した要部の平面図である。
図14】本発明における実施の形態の電装部品の斜視図である。
図15】本発明における実施の形態の操縦席の下方に設けられた電装部品の斜視図である。
図16】本発明における実施の形態の前・後進用アクセルペダルの斜視図である。
図17】(A)本発明における実施の形態のアクセルペダルセンサ検知と前・後進状態の関係を示すグラフ、(B)本発明における実施の形態の前・後進アクセルペダル操作量―PWMデューティ比関係一例のグラフである。
図18】(A)本発明における実施の形態のブレーキ関係平面図、(B)その側面図である。
図19】(A)、(B)本発明における実施の形態の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1に示すように、乗用芝刈機は、走行車体1と、走行車体1の前部に左右一対の前輪2が設けられ、走行車体1の後部に左右一対の後輪3が設けられ、走行車体1の下側における前輪2と後輪3の間に芝草を刈取る作業機4が設けられている。また、走行車体1の上側の前部にボンネット部5が設けられ、ボンネット部5の後側には操縦者が搭乗する操縦部6が設けられ、操縦部6の後側には操縦者を保護する安全フレーム(ロプス)8が設けられ、安全フレーム8の下部には作業機4で刈取られた芝等を貯留する集草容器7が設けられている。
【0018】
図2~4に示すように、ボンネット部5には、後輪3を駆動する電動機30等に供給する電力を蓄電するバッテリ50が設けられ、バッテリ50はボンネットカバー51で覆われている。なお、ボンネットカバー51は、走行車体1の前部に設けられた左右方向に延在する支軸(図示省略)に支持されている。これにより、ボンネット部5に形成される空間を有効に活用することができる。
【0019】
操縦部6の操縦席60の下側には、電装部品61が設けられている。これにより、操縦席60の下側に形成される空間を有効に活用することができる。
【0020】
安全フレーム8は、上下方向に延在する左支柱部8Lと、上下方向に延在する右支柱部8Rと、左支柱部8Lと右支柱部8Rの上部を連結する逆U字形状の連結部8Aから形成されている。
【0021】
図4~7に示すように、電装部品61の下側には後輪3を駆動する3相交流電圧波形で操作される同期電動機や誘導電動機等の電動機30が設けられている。電動機30の左右方向に延在して形成された出力軸30Aは、出力軸30Aから伝動される出力回転を減速して出力トルクを大きくしたり回転方向を逆さにするギアボックス31の上部に連結されている。なお、電動機30は左右方向の中央よりも左側に偏移した位置に設けられている。
【0022】
ギアボックス31で増減速された出力回転は、ギアボックス31の下部に設けられ差動歯車等で構成されたディファレンシャルギア32を介して左右方向に延在するドライブシャフト33に伝動される。ドライブシャフト33に伝動された出力回転は、ドライブシャフト33の両端部に支持された後輪3に伝動される。
【0023】
電動機30の下側には作業機4を駆動する3相交流電圧波形で操作される同期電動機や誘導電動機等の電動機40が設けられている。電動機40の前後方向に延在して形成された出力軸40Aは、前後方向に延在して設けられた自在継手41の後部に連結されている。また、出力軸40Aは、ドライブシャフト33の上側に、ドライブシャフト33と直交して設けられている。これにより、電動機30の下側に形成された空間を有効に活用することができる。また、電動機40と作業機4の間の伝動経路を短くすることができるので電動機40の出力回転を作業機4に効率良く伝動することができる。なお、電動機40は左右方向の中央よりも左側に偏移した位置に設けられている。
【0024】
自在継手41の前部は、自在継手41から伝動される出力回転を減速して出力トルクを大きくするギアボックス42に連結されている。ギアボックス42に伝動された出力回転は、ギアボックス42の上下方向に延在して形成された出力軸を介して作業機4の左排出通路45Lに設けられた左刈刃(図示省略)に伝動される。
【0025】
ギアボックス42には、左右方向に延在する連結部材43が連結され、連結部材43の右部はギアボックス44に連結されている。ギアボックス44に伝動された出力回転は、ギアボックス44の上下方向に延在して形成された出力軸を介して作業機4の右排出通路45Rに設けられた右刈刃(図示省略)に伝動される。なお、ギアボックス42の出力軸とギアボックス44の出力軸の出力回転の回転速度は同一速度であり、回転方向は逆方向、すなわち、平面視において、ギアボックス42出力軸は時計方向に回転し、ギアボックス44の出力軸は反時計方向に回転する。
【0026】
左排出通路45Lと右排出通路45Rの搬出口は、刈取られた芝等を集草容器7に搬送するシュータ46の搬入口に連結されている。シュータ46の搬出口は集草容器7の搬入口に連結されている。
【0027】
平面視において、シュータ46の前部は自在継手41の右側に設けられ、シュータ46の後部はギアボックス31の右側に設けられ、背面視において、シュータ46と集草容器7は、ギアボックス31と右側の後輪3の間に設けられている。これにより、自在継手41とギアボックス31の右側に形成される空間に大きなシュータ46を設けることができ、作業機4で刈取った芝等を効率良く集草容器7に搬送することができる。
【0028】
側面視において、シュータ46の上壁は後上がり傾斜に形成され、シュータ46の後部は電装部品61の下側を下方に向かって延在して設けられている。これにより、シュータ46の後部を大きくしてシュータ46の内部での芝等の詰まりを防止することができる。
【0029】
図8,9に示すように、走行車体1は、前輪2と後輪3を支持する走行車体本体10と、ステアリングシャフト63を支持するステアリングポスト11から形成されている。
【0030】
走行車体本体10には、前後方向に延在する左前後フレーム10Lと右前後フレーム10Rが形成され、ステアリングポスト11の下部には、前方に延出する左連結部11Lと右連結部11Rが形成されている。
【0031】
左前後フレーム10Lに左連結部11Lがボルト等の締結手段によって固定され、右前後フレーム10Rに右連結部11Rがボルト等の締結手段によって固定されて一体となり走行車体1を形成している。
【0032】
左前後フレーム10Lの前部には左支持部材12Lが設けられ、左支持部材12Lの連結部は左上がり傾斜に形成されている。また、右前後フレーム10Rの前部には右支持部材12Rが設けられ、右支持部材12Rの連結部は右上がり傾斜に形成されている。なお、左支持部材12Lと右支持部材12Rはチャンネル鋼材で形成されている。
【0033】
左連結部11Lの前部には左支持部材13Lが設けられ、左支持部材13Lの連結部は左上がり傾斜に形成されている。また、右連結部11Rの前部には右支持部材13Rが設けられ、右支持部材12Rの連結部は右上がり傾斜に形成されている。なお、左支持部材13Lと右支持部材13Rはチャンネル鋼材で形成されている。
【0034】
ステアリングポスト11の下部には、左右方向に所定の間隔を隔てて前側に突出すると突出部14が形成され、突出部14の先端にはゴム部材等から形成された緩衝部材15が設けられている。
【0035】
左前後フレーム10Lの後部には上方に延在する左上下フレーム20Lが設けられ、右前後フレーム10Rの後部には上方に延在する右上下フレーム20Rが設けられ、左上下フレーム20Lと右上下フレーム20Rの上部は左右方向に延在する左右フレーム21に連結されている。
【0036】
左右フレーム21の左部には安全フレーム8の左支柱部8Lの下部が連結される左連結部22Lが設けられ、左右フレーム21の右部には安全フレーム8の右支柱部8Rの下部が連結される右連結部22Rが設けられている。
【0037】
図10に示すように、ボンネット部5内に設けられるバッテリ50の下部は、バッテリブラケット52の内周部に内嵌されている。バッテリ50は、複数のエネルギ密度が高いリチウムイオンバッテリを直列と並列に接続して形成されている。これにより、ボンネット部5に形成された空間を有効活用できる。また、リチウムイオンバッテリはエネルギ密度が高いので、一回のフル充電によって作業車両を長距離走行させることができる。
【0038】
図11に示すように、バッテリブラケット52は、前後方向に延在する左前後フレーム52L及び右前後フレーム52Rと、左前後フレーム52Lと右前後フレーム52Rの前部を連結する前左右フレーム52Aと、左前後フレーム52Lと右前後フレーム52Rの後部を連結する後左右フレーム52Bで形成されている。なお、左前後フレーム52L及と右前後フレーム52Rはアングル鋼材で形成され、前左右フレーム52Aと後左右フレーム52Bはチャンネル鋼材で形成されている。
【0039】
左前後フレーム52Lの連結部は左上がり傾斜に形成され、右前後フレーム52Rの連結部は左上がり傾斜に形成されている。なお、背面視において、左支持部材13Lの連結部、左支持部材12Lの連結部、及び左前後フレーム52Lの連結部の左上がり傾斜は同一傾斜角度に形成され、右支持部材12Rの連結部、右支持部材12Rの連結部、及び右前後フレーム52Rの連結部の右上がり傾斜は同一傾斜角度に形成されている。
【0040】
左前後フレーム52Lの連結部の下面には、前後方向に所定の間隔を隔てて丸形の左防振部材53Lが設けられ、右前後フレーム52Rの連結部の下面には、前後方向に所定の間隔を隔てて丸形の右防振部材53Rが設けられている。
【0041】
左前後フレーム52Lは、左防振部材53Lを介して左前後フレーム10Lの左支持部材12Lと左連結部11Lの左支持部材13Lに連結され、右前後フレーム52Rは、右防振部材53Rを介して右前後フレーム10Rの右支持部材12Rと右連結部11Rの右支持部材13Rに連結される。これにより、作業車両の走行時に発生する走行車体本体10の振動がバッテリ50に伝わるのを抑制して、バッテリ50の破損等を防止することができる。
【0042】
図12に示すように、左前後フレーム52Lの連結部は、左防振部材53Lの中心と左側の左前輪2Lの中心を結ぶ左仮想線55Lに対して直交して設けられている。また、右前後フレーム52Rの連結部は、右防振部材53Rの中心と右側の右前輪2Rの中心を結ぶ右仮想線55Rに対して直交して設けられている。これにより、前輪2と後輪3を介して走行面の凹凸に起因する大きな振動を抑制して、バッテリ50の破損等を防止することができる。なお、符号57は左右の前輪2を支持する前輪支持フレームを示し、符号56は前輪支持フレームと走行車体本体10との連結部であり、前輪支持フレームの揺動軸を示している。
【0043】
また、バッテリブラケット52の後左右フレーム52Bの後面には、ステアリングポスト11の緩衝部材15の先端部が押当てられている。これにより、走行車体1の発進時にバッテリ50の後方への移動を抑制して、バッテリ50の破損等を防止することができる。
【0044】
前記左上下フレーム20L、右上下フレーム20R及び左右フレーム21により構成されるフレーム構造枠は集草容器7の支持フレーム25を構成している。この支持フレーム25に、集草容器7を連結する。すなわち、集草容器7の前上部の支点ピン7Pをもって該支点ピン7P回りに上下回動自在に連結される。もって図1に示すように、集草容器7は前面が前記支持フレーム25に囲われる遮蔽板部(図示せず)に接当する作業姿勢と、集草容器7後部が上方に跳ね上げ状態の刈草放出姿勢とに姿勢変更できる。集草容器7の右側には公知の回動ハンドル7Lを備えて上端の把持部をつかんで前方に倒すと非作業姿勢の前記刈草放出姿勢に変更できる。この場合には収容された芝草を前面の解放部から地面に排出する。
【0045】
図2,3に示すように、操縦部6の操縦席60の前側にはステアリングホイール62が設けられ、ステアリングホイール62は上下方向に延在するステアリングシャフト63の上部に支持されている。
【0046】
操縦席60の左側の左フェンダ64Lには、シュータ46の内部に残った刈草を後側の集草容器7へ搬送等を操作するクリーナレバー65が設けられ、操縦席60の右側のフェンダ64Rには、作業機4の昇降層を操作する操作レバー66が設けられている。また、操縦時に操縦者が足を載せるフロア67の左前部には、ブレーキペダル68が設けられ、右前部には、前進用アクセルペダル90と後進用アクセルペダル93が並設されている。
【0047】
作業機4のシュータ46と操縦席60の間に形成された空間に設けられた電装部品61は、バッテリ50から供給される直流電圧を交流電圧に変換して電動機30等を操作する3相交流電圧波形を生成するインバータ装置80と、バッテリ50の温度、充電状態、電圧保護、各セル短絡状態を監視するバッテリ監視装置81と、操縦席60の前側に設けられた走行速度等を表示するメータパネルに供給する電池を蓄電する鉛蓄電池等の補助バッテリ82と、バッテリ50から供給される直流電圧をクリーナレバー65等の操作位置を検出するセンサに供給する直流電圧に変更するコンバータ装置83から形成されている。
【0048】
インバータ装置80は、電動機30を操作するインバータ装置84と電動機40を操作するインバータ装置85から形成されている。また、インバータ装置84には、回生ブレーキの作動時、すなわち、前進用アクセルペダル90又は後進用アクセルペダル93が解放されて走行車体1の慣性力よって出力軸30Aが回転して電動機30が発電機として作動する場合には、電動機30からインバータ装置80に供給された電力をバッテリ50に充電する充電装置としての機能も兼ね備えている。
【0049】
同様に、後述のPTOスイッチ103がOFFに切り換わると、前記の左刈刃及び右刈刃の慣性力によって出力軸40Aが回転して電動機40が発電機として作動するが、この場合においても作業機4を停止すべく回生ブレーキが作動し、インバータ装置85には、電動機40からインバータ装置80に供給された電力をバッテリ50に充電する充電装置として機能する。
【0050】
平面視において、操縦席60の下側の前部にインバータ装置80が設けられ、インバータ装置80の後側にバッテリ監視装置81が設けられている。また、インバータ装置80の左側に補助バッテリ82が設けられ、バッテリ監視装置81の左側で補助バッテリ82の後側にコンバータ装置83が設けられている。これにより、操縦席60の下側に形成された空間を有効に活用することができる。また、重量が重いバッテリ監視装置81を後側に設けることにより、走行車体本体10の前部と後部に加わる重量の相違を抑制して走行安定性能を高めることができる(図13図14図15)。
【0051】
前記バッテリ監視装置81には残量を監視できる手段を備え、残量が所定未満に達すると先ず作業機用電動機40への駆動指令を停止する。これによって走行用電動機30のみの出力となって作業は中断するがバッテリ充電作業のための移動に支障がないものとなる。
【0052】
図16に示すように、前進用アクセルペダル90の基部は、フロア91の右前部に立設する支持部材92の後部に設けられた左右方向に延在する支軸に回転自在に支持され、後進用アクセルペダル93の基部は、支持部材92の前後方向の中間部に設けられた左右方向に延在する支軸に回転自在に支持されている。また、前進用アクセルペダル90の踏込み量に相当する前進用アクセルペダル90の回転角度と後進用アクセルペダル93の踏込み量に相当する後進用アクセルペダル93の回転角度は、支持部材92の前部に設けられたポテンションメータ等のアクセルペダルセンサ94によって測定される。すなわちアクセルペダルセンサ94は、走行車体1の前進操作又は後進操作を検出する前後進検出手段としての機能を備え、従って、アクセルペダルセンサ94の大小検出値と前進・停止・後進及び高低速の関係は図17(A)のようになり、アクセルペダルセンサ94の電圧範囲の両端を前進用アクセルペダル90,および後進用アクセルペダル93の最踏込み位置(高速)にし、電圧範囲の中心をニュートラル(中立)にしている。
【0053】
また、図18に示すように、フロア91にブレーキペダル95を備え、ブレーキロッド96の前端部を連結している。ブレーキロッド96の後端部には後輪3に設けられたブレーキ97に連結されている。ブレーキペダル95を踏込んだ場合には、ブレーキペダル95が左右方向に延在する支軸95Aを中心として反時計方向に回転してブレーキロッド96を前側に移動しブレーキ71を作動させる。支軸95A周りにブレーキペダル95と一体的に回動するブラケット98に、ブレーキペダル95の回動角度を測定できるポテンショメータ等のブレーキペダルセンサ99を設けている。
【0054】
走行車体1の前進操作又は後進操作を検出する前後進検出手段としてのアクセルペダルセンサ94で測定された回転角度はインバータ装置80に送信される。これにより、インバータ装置80では、送信されてきた回転角度に応じて3相交流電圧波形の周波数と振幅の増減が行われて電動機30の出力軸30Aの出力回転の増減速を行うことができる。
【0055】
次いで、後輪3を駆動する前記電動機30(以下、走行用電動機30)や作業機4を駆動する前記電動機40(以下、作業機用電動機40)の制御部(コントローラ)100について説明する。図19(A)のブロック図に示すように、走行用電動機30は、相互にCAN通信で情報授受が可能に接続されたコントローラ(VCU)100と走行用電動機ドライバーユニット(MDU1)101を通じて制御され、前記インバータ装置84へのインバータ信号の出力に基づいて回転制御されるものである。なおコントローラ100には前記アクセルペダルセンサ94、ブレーキペダルセンサ99の信号を入力し、前進用アクセルペダル90又は後進用アクセルペダル93の踏込み量に基づく演算により算出されるPWMデューティ比により高低調整された回転数出力が送信される。図17(B)は前進用アクセルペダル90と後進用アクセルペダル93の踏込み操作によるアクセルペダルセンサ94の出力値と演算によるPWMデューティ比の一例を示すもので、前進用アクセルペダル90及び後進用アクセルペダル93のそれぞれ前後範囲(例えば10%)は不感帯とする基本構成に加え、アクセルペダルセンサ94の中立位置より後進側にややずれた位置(例えば5%)を前進用アクセルペダル90と後進用アクセルペダル93の切り替え位置としたり、前進と後進の切り替え時は、一定時間走行モータのPWMのデューティ比を0%にする等の配慮をし、安全性を向上している。
【0056】
一方、作業機用電動機40は、相互にCAN通信で情報授受が可能に接続されたコントローラ(VCU)100と作業機用電動機ドライバーユニット(MDU2)102を通じて制御されるもので、前記インバータ装置84へのインバータ信号の出力に基づいて回転制御されるものである(図19(B))。コントローラ100には、PTOスイッチ103からの信号を入力し作業機用電動機40をON/OFF制御する。
【0057】
車両コントローラ100にはPTO回転数ダイヤル104が接続されていて、このダイヤル104設定によるPWMデューティ比をもって所定の回転数指令信号が出力される構成である。
【0058】
次いで、後進時車速制限モードについて説明する。PTOスイッチ103をONすると、コントローラ100は、作業機用電動機40を所定回転にて起動して芝草を刈り取る作業機4の刈刃を回転駆動する。そして前進用アクセルペダル90を操作することで車体は所定速度で前進しながら芝草を刈り取ることができる。この作業途中一旦停止しさらに後進用アクセルペダル93を操作して走行車体1を後退させる場合において、コントローラ100は、後進時車速を制限する。すなわち作業機用電動機40に対し所定回転数出力を送信しながら、走行用電動機30に対し後進用アクセルペダル93の踏込み量に基づく回転数出力を送信する場合に予め設定した所定回転数を超えないように制限した回転数出力を送信する構成としている。後進用アクセルペダル93の踏込み量が予め設定した所定回転数以下の場合はこの踏込み量に応じて回転出力できるが、この所定回転数を超えるペダル踏込み量の場合は所定回転数出力に制限する構成とする。図17(B)において、後進用アクセルペダル93の踏込み操作によるモータ制御出力は、一点鎖線(α)に示すように、所定踏込み量を超えると一定値に制限される。
【0059】
したがって、走行車体1を後進する操作を検知すると車速が所定以下に制限されるもので(後進時車速制限モード入り)、芝草を刈り取る作業機4を駆動したまま後進するときに安全に走行できる。また車速は制限されつつも車体移動は行なえ作業機4は停止しないので、作業機4で刈取った芝等はシュータ46を経て効率良く集草容器7に搬送することができ、芝草の排出を継続できる。
【0060】
なお、前記後進時車速制限モードを無効とするための車速制限解除スイッチ105を備えている。この解除スイッチ105を操作すると車速制限は解除され後進時車速制限モード入りは解除状態に突入し、後進車速の制限は行わない。前記図17(B)における実線(β)に復帰する。なお、解除スイッチ105操作とともに後進用アクセルペダル93の操作をもって解除状態とすることもできる。また、解除時の走行における後進用アクセルペダル93操作による車速の加速値を監視できる手段とこの加速値が一定値を超えないように制御する加速値制御手段を備えて安全性を確保している。
【0061】
そして、一旦後進時車速制限モード解除状態に突入すると一定の復帰条件を満たすまでこの後進時車速制限モード解除状態を維持するが、このモード入り状態に復帰させる方法として次のように構成している。第一に前進用アクセルペダル90の踏み込みを検知した場合がある。ただし後進用アクセルペダル93の踏み込み解除のみの操作では未だ復帰条件を満たさない。第二にPTOスイッチ103をOFF操作したとき又はキースイッチ106をOFF操作した場合である。第三に刈刃回転の条件を満足しない場合であって、例えばシートセンサ107、集草容器センサ108の検出に基づく場合としている。
【0062】
ここで、前記操縦席60と車体との間に設けるシートセンサ107は、搭乗者の着座の有無を検知し離席の時にはOFF信号を出力する。また、集草容器センサ108は、本体と集草容器7との接続部に設けられ、集草容器7が回動ハンドル7L操作で支点軸回りに回動する時にOFF信号を出力する構成である。つまり作業機用電動機40の駆動信号は、PTOスイッチ103のON操作信号、着座状態を検知するシートセンサ107のON信号、及び集草容器7が作業姿勢にあることを検知する集草容器センサ108のON信号全てが整うことを条件に出力され、もって作業機用電動機40は駆動するものである。したがって、PTOスイッチ103のOFF操作のほか、作業者が操縦席60から離席したり、集草容器7を非作業姿勢に回動することで、OFF信号が出力され駆動信号が停止される。
【0063】
次いで、後進時作業機出力制限モードについて説明する。すなわち、走行用電動機30に対し後進用アクセルペダル93の踏込み量に基づく回転数出力を送信する場合に、PTOスイッチ103を操作してもコントローラ100は、作業機用電動機40に回転出力を送信ぜず回転できない。もって作業機4は作動されないよう構成されている。このように走行車体1が後進中にPTOスイッチ103をONしても作業機用電動機40は駆動できないから(後進時作業機出力制限モード)、危険を回避できる。例えば後進中に作業機用電動機40を駆動すると、惰性で高速走行の状態のままで芝草刈取り作業機が駆動してしまう可能性があったり、前記後進時車速制限モードが働いて急制動となる危険があったが、上記のように作業機用電動機40を駆動できない構成とすることにより、これらの危険を未然に防止できる。
【0064】
前記の実施例の乗用芝刈機において、原動機として走行用電動機30及び作業機用電動機40を備えたが、電動機30及び/又は電動機40に代替してエンジンを設ける構成としても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 走行車体
3 後輪(駆動輪)
4 作業機
30 走行用電動機(走行用原動機)
40 作業機用電動機(作業機用原動機)
94 アクセルペダルセンサ(前後進検出手段)
100 コントローラ
103 PTOスイッチ
105 車速制限解除スイッチ
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