(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148026
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】ビームスプリッタ、及び、ビームスプリッタ製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/04 20060101AFI20241009BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20241009BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20241009BHJP
【FI】
G02B5/04 B
G02B5/08 D
G02B1/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060902
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智史
(72)【発明者】
【氏名】杉本 達哉
(72)【発明者】
【氏名】大崎 拓真
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 貴文
【テーマコード(参考)】
2H042
2K009
【Fターム(参考)】
2H042CA06
2H042CA14
2H042CA16
2H042DA02
2H042DA04
2H042DA08
2H042DA16
2H042DA19
2K009AA02
(57)【要約】
【課題】光学特性の劣化を抑制可能なビームスプリッタ、及びビームスプリッタ製造方法を提供する。
【解決手段】ビームスプリッタ3は、第1面34aを有する光学ブロック34と、第2面35aを有する光学ブロック35と、光学分岐膜50と、光学ブロック34と光学ブロック35とを接着するための接着部材40と、を備える。光学ブロック34と光学ブロック35とは、第1面34aと第2面35aとが光学分岐膜50を挟んで対向するように配置されている。光学分岐膜50は、第1層51と第1層51上に積層された第2層52と、を有する。第2層52は、第1層51の上面を覆うように延在する第1部分52aと、第1部分52aの端部から第1層51の側面を覆うように延在する第2部分52bと、第2部分52bの端部に接続されて第1層51と反対側に向けて延在する第3部分52cと、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を異なる複数の成分に分岐して出射するためのビームスプリッタであって、
第1面を有し、前記入射光に対して透過性を有する第1光透過部材と、
第2面を有し、前記入射光に対して透過性を有する第2光透過部材と、
前記入射光を前記複数の成分に分岐する機能を有する光学分岐膜と、
前記第1光透過部材と前記第2光透過部材とを接着するための接着部材と、
を備え、
前記第1光透過部材と前記第2光透過部材とは、前記第1面と前記第2面とが前記光学分岐膜を挟んで対向するように配置されており、
前記光学分岐膜は、
前記第1面上に形成された第1層と、
前記第1面に交差する第1方向に沿って、前記第1面及び前記第1層上に積層された第2層と、
を有し、
前記第2層は、
前記第1層の前記第1面と反対側の上面を覆うように延在する第1部分と、
前記第1方向に交差する第2方向における前記第1部分の端部に接続され、当該第1部分の端部から前記第1層の側面を覆うように前記第1方向に沿って延在する第2部分と、
前記第2部分における前記第1部分との接続部分と反対側の端部に接続され、前記第2方向について前記第1層と反対側に向けて延在する第3部分と、
を含み、
前記接着部材は、
前記第1面と前記第2面とに挟まれる領域のうちの前記第2層の前記第1部分に対向する領域に配置された第1接着部と、
前記第1接着部と一体に形成され、前記第1面と前記第2面とに挟まれる領域のうちの前記第2層の前記第2部分と前記第3部分とに対向する領域に配置された第2接着部と、
を有する、
ビームスプリッタ。
【請求項2】
前記光学分岐膜は、前記第1方向に沿って、前記第1面、前記第1層、及び前記第2層上に積層された第3層を有し、
前記第3層は、
前記第2層の前記第1部分を覆うように延在する第4部分と、
前記第2方向における前記第4部分の端部に接続され、当該第4部分の端部から前記第2層の前記第2部分を覆うように前記第1方向に沿って延在する第5部分と、
前記第5部分における前記第4部分との接続部分と反対側の端部に接続され、前記第2方向について前記第1層と反対側に向けて延在する第6部分と、
を含み、
前記第6部分は、前記第3部分に対向するように配置されている、
請求項1に記載のビームスプリッタ。
【請求項3】
前記第3層は、酸化層であり、
前記第3層は、前記光学分岐膜の前記第1面と反対側に臨む表面を形成し、前記接着部材に接触している、
請求項2に記載のビームスプリッタ。
【請求項4】
前記光学分岐膜は、
前記第1方向に沿って前記第1層を挟むように配置された一対の第4層と、
前記第1方向に沿って前記第1層及び前記一対の第4層を挟むように配置された一対の第5層と、
を含み、
前記第2層の前記第1部分は、前記第5層上に形成されて前記第5層に接している、
請求項1に記載のビームスプリッタ。
【請求項5】
前記第4層は、第1材料から構成されており、
前記第5層は、前記第1材料を酸化処理した材料から構成される酸化層である、
請求項4に記載のビームスプリッタ。
【請求項6】
前記第4層は、Si、Ge、SiN、及び、ZnSのうちの1つから構成され、
前記第5層は、SiO2、Al2O3、TiO2、Y2O3、及び、Ta2O5のうちの1つから構成されている、
請求項4に記載のビームスプリッタ。
【請求項7】
前記第4層は、前記第2層と同一の材料から構成されている、
請求項4に記載のビームスプリッタ。
【請求項8】
前記第1方向からみたときの前記第1層の外縁は、短辺と前記短辺に交差する方向に延びる長辺とを含み、
前記第1方向からみて、前記短辺と前記第1面の外縁との距離は、前記長辺と前記第1面の外縁との距離よりも大きい、
請求項1に記載のビームスプリッタ。
【請求項9】
前記第1面の外縁は、当該ビームスプリッタを外部部材に搭載したときに当該外部部材側に臨む第1辺を含み、
前記第1層は、前記第1方向からみて当該第1層の外縁の一部が前記第1辺に重なるように延在している、
請求項1に記載のビームスプリッタ。
【請求項10】
前記第1方向からみたときの前記第1層の角部は、円弧状に形成されている、
請求項1に記載のビームスプリッタ。
【請求項11】
前記入射光の入射面と、
前記第1面、前記光学分岐膜、及び前記第2面を介して前記入射面の反対側に位置する第3面と、
を備え、
前記第3面には、前記光学分岐膜を透過した光を反射する反射膜が形成されている、
請求項1に記載のビームスプリッタ。
【請求項12】
前記光学分岐膜で反射された光を外部に出射する出射面を備え、
前記出射面には、反射防止膜が形成されている、
請求項1に記載のビームスプリッタ。
【請求項13】
前記入射光の入射面を備え、
前記入射面には、反射防止膜が形成されている、
請求項1に記載のビームスプリッタ。
【請求項14】
前記第1層は、金属材料から構成されており、
前記第2層は、半導体材料又は誘電体材料から構成されている、
請求項1に記載のビームスプリッタ。
【請求項15】
前記第1層は、Ag又はAlから構成されており、
前記第2層は、Si、Ge、SiO2、SiN、Al2O3、Y2O3、Ta2O5、TiO2、及び、ZnSのうちの1つから構成されている、
請求項1に記載のビームスプリッタ。
【請求項16】
請求項1に記載のビームスプリッタを製造するためのビームスプリッタ製造方法であって、
前記第1光透過部材となる部分を複数含む第1部材と、前記第2光透過部材となる部分を複数含む第2部材と、を用意する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記第1部材に含まれる複数の前記第1光透過部材となる前記部分のそれぞれの前記第1面に前記光学分岐膜を形成する第2工程と、
前記第2工程の後に、前記光学分岐膜を介して前記接着部材により前記第1部材と前記第2部材とを接着することにより、連続する複数の前記ビームスプリッタを含む構造体を形成する第3工程と、
前記第3工程の後に、前記構造体を個片化することにより、前記構造体から複数の前記ビームスプリッタを得る第4工程と、
を備える、
ビームスプリッタ製造方法。
【請求項17】
前記第3工程と前記第4工程との間において、前記構造体の表面を研磨する第5工程を備え、
前記ビームスプリッタは、当該ビームスプリッタを外部部材に搭載するときに前記外部部材に接触する接触面を含み、
前記第5工程では、少なくとも、前記構造体における複数の前記接触面を含む表面を研磨する、
請求項16に記載のビームスプリッタ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ビームスプリッタ、及び、ビームスプリッタ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キューブ型の非偏光ビームスプリッタが記載されている。この非偏光ビームスプリッタでは、入射媒質としての直角二等辺三角形プリズムの斜面に誘電体層と金属層とが順にコートされている。また、当該直角二等辺三角形プリズムの斜面には、これらの2層膜を挟んで、別の直角二等辺三角形プリズムが貼り合わせられている。誘電体層及び金属層の材料としては、それぞれ、TiO2及びAgが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の非偏光ビームスプリッタでは、誘電体層及び金属層のいずれも、プリズムの斜面の外縁に至るように設けられ、それらの端部がビームスプリッタの外表面に露出している。このため、金属層が大気との接触によって腐食しやく、ビームスプリッタの光学特性が劣化するおそれがある。
【0005】
本開示は、光学特性の劣化を抑制可能なビームスプリッタ、及びビームスプリッタ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るビームスプリッタは、[1]「入射光を異なる複数の成分に分岐して出射するためのビームスプリッタであって、第1面を有し、前記入射光に対して透過性を有する第1光透過部材と、第2面を有し、前記入射光に対して透過性を有する第2光透過部材と、前記入射光を前記複数の成分に分岐する機能を有する光学分岐膜と、前記第1光透過部材と前記第2光透過部材とを接着するための接着部材と、を備え、前記第1光透過部材と前記第2光透過部材とは、前記第1面と前記第2面とが前記光学分岐膜を挟んで対向するように配置されており、前記光学分岐膜は、前記第1面上に形成された第1層と、前記第1面に交差する第1方向に沿って、前記第1面及び前記第1層上に積層された第2層と、を有し、前記第2層は、前記第1層の前記第1面と反対側の上面を覆うように延在する第1部分と、前記第1方向に交差する第2方向における前記第1部分の端部に接続され、当該第1部分の端部から前記第1層の側面を覆うように前記第1方向に沿って延在する第2部分と、前記第2部分における前記第1部分との接続部分と反対側の端部に接続され、前記第2方向について前記第1層と反対側に向けて延在する第3部分と、を含み、前記接着部材は、前記第1面と前記第2面とに挟まれる領域のうちの前記第2層の前記第1部分に対向する領域に配置された第1接着部と、前記第1接着部と一体に形成され、前記第1面と前記第2面とに挟まれる領域のうちの前記第2層の前記第2部分と前記第3部分とに対向する領域に配置された第2接着部と、を有する、ビームスプリッタ」である。
【0007】
このビームスプリッタでは、第1光透過部材と第2光透過部材とが、光学分岐膜を介在させた状態で接着部材により互いに接着されている。光学分岐膜は、第1光透過部材における第2光透過部材に対向する第1面上に形成された第1層と、当該第1面及び第1層上に積層された第2層と、を含む。そして、第2層は、第1層の上面を覆うように延在する第1部分と、第1部分から第1層の側面を覆うように延在する第2部分と、第2部分から第1層と反対側に向けて延在する第3部分とを含む。このように、第1層の側面は、少なくとも第2部分が存在する領域において第2層に覆われる。この結果、第1層の側面が外部に露出することが避けられ、第1層の腐食といった劣化が抑制される。また、第1層の上面についても、第2層の第1部分に覆われている。このため、第1光透過部材と第2光透過部材とを接着するまでの間(製造時)にも、第1層の腐食といった劣化が抑制される。よって、このビームスプリッタによれば、光学特性の劣化が抑制される。
【0008】
なお、このビームスプリッタでは、第1層の劣化の抑制に寄与する第2層が、光学分岐膜を構成する層である。よって、光学分岐膜とは別に保護膜を形成する場合と比較して、製造工程の簡略化、及び低コスト化等を図ることができる。さらに、このビームスプリッタでは、接着部材が、第1面と第2面とに挟まれる領域のうちの第2層の第1部分に対向する領域に配置された第1接着部と、第1面と第2面とに挟まれる領域のうちの第2層の第2部分と第3部分とに対向する領域に配置された第2接着部とを含む。このため、第1光透過部材と第2光透過部材との接着が強固となる。
【0009】
本開示に係るビームスプリッタは、[2]「前記光学分岐膜は、前記第1方向に沿って、前記第1面、前記第1層、及び前記第2層上に積層された第3層を有し、前記第3層は、前記第2層の前記第1部分を覆うように延在する第4部分と、前記第2方向における前記第4部分の端部に接続され、当該第4部分の端部から前記第2層の前記第2部分を覆うように前記第1方向に沿って延在する第5部分と、前記第5部分における前記第4部分との接続部分と反対側の端部に接続され、前記第2方向について前記第1層と反対側に向けて延在する第6部分と、を含み、前記第6部分は、前記第3部分に対向するように配置されている、上記[1]に記載のビームスプリッタであってもよい。この場合、第1層の側面は、少なくとも第2部分が存在する領域において、さらに第3層に覆われることとなる。また、第1層の上面についても、第3層によってさらに覆われる。この結果、第1層の腐食といった劣化が確実に抑制され、光学特性の劣化が確実に抑制される。
【0010】
本開示に係るビームスプリッタは、[3]「前記第3層は、酸化層であり、前記第3層は、前記光学分岐膜の前記第1面と反対側に臨む表面を形成し、前記接着部材に接触している、上記[2]に記載のビームスプリッタ」であってもよい。この場合、第1光透過部材と第2光透過部材とを接着するまでの間(製造時)に、第2層の酸化が抑制される。
【0011】
本開示に係るビームスプリッタは、[4]「前記光学分岐膜は、前記第1方向に沿って前記第1層を挟むように配置された一対の第4層と、前記第1方向に沿って前記第1層及び前記一対の第4層を挟むように配置された一対の第5層と、を含み、前記第2層の前記第1部分は、前記第5層上に形成されて前記第5層に接している、上記[1]~[3]のいずれかに記載のビームスプリッタ」であってもよい。光学分岐膜は、このような多層構造により構成されてもよい。
【0012】
本開示に係るビームスプリッタは、[5]「前記第4層は、第1材料から構成されており、前記第5層は、前記第1材料を酸化処理した材料から構成される酸化層である、上記[4]に記載のビームスプリッタ」であってもよい。この場合、第1層が酸化することによる吸収係数の増大(反射率、透過率の低下)を抑制することができる。また、第2層を形成するまでの間(製造時)、第4層の酸化を抑制することができる。
【0013】
本開示に係るビームスプリッタは、[6]「前記第4層は、Si、Ge、SiN、及び、ZnSのうちの1つから構成され、前記第5層は、SiO2、Al2O3、TiO2、Y2O3、及び、Ta2O5のうちの1つから構成されている、上記[4]又は[5]に記載のビームスプリッタ」であってもよい。これらの材料から第4層及び第5層の材料を選択してもよい。
【0014】
本開示に係るビームスプリッタは、[7]「前記第4層は、前記第2層と同一の材料から構成されている、上記[4]~[6]のいずれかに記載のビームスプリッタ」であってもよい。この場合、光学分岐膜を製造するに際して成膜源の数を削減することができ、光学分岐膜の製造が容易となる。
【0015】
本開示に係るビームスプリッタは、[8]「前記第1方向からみたときの前記第1層の外縁は、短辺と前記短辺に交差する方向に延びる長辺とを含み、前記第1方向からみて、前記短辺と前記第1面の外縁との距離は、前記長辺と前記第1面の外縁との距離よりも大きい、上記[1]~[7]のいずれかに記載のビームスプリッタ」であってもよい。この場合、第1光透過部材と第2光透過部材とを接着する際に(製造時に)、第1層の短辺に交差する方向に位置ずれが生じても、第1層が第2面の外縁に達して露出すること抑制される。
【0016】
本開示に係るビームスプリッタは、[9]「前記第1面の外縁は、当該ビームスプリッタを外部部材に搭載したときに当該外部部材側に臨む第1辺を含み、前記第1層は、前記第1方向からみて当該第1層の外縁の一部が前記第1辺に重なるように延在している、上記[1]~[8]のいずれかに記載のビームスプリッタ」であってもよい。この場合、第1層がより広く形成され、より広い有効エリアの形成を図ることが可能となる。一方で、第1層の外縁の一部が、第1面の外縁の第1辺に至ることとなるが、当該第1辺は、ビームスプリッタを外部部材に搭載する際に外部部材に臨む辺である。したがって、第1層の外縁の一部が外部に露出することが避けられる。
【0017】
本開示に係るビームスプリッタは、[10]「前記第1方向からみたときの前記第1層の角部は、円弧状に形成されている、上記[1]~[9]のいずれかに記載のビームスプリッタ。」であってもよい。この場合、第1光透過部材や第2光透過部材の角部に欠けが生じても、第1層が露出しにくくなる。
【0018】
本開示に係るビームスプリッタは、[11]「前記入射光の入射面と、前記第1面、前記光学分岐膜、及び前記第2面を介して前記入射面の反対側に位置する第3面と、を備え、前記第3面には、前記光学分岐膜を透過した光を反射する反射膜が形成されている、上記[1]~[10]のいずれかに記載のビームスプリッタ」であってもよい。この場合、光学分岐膜を透過した光を所定の方向に反射することが可能となる。
【0019】
本開示に係るビームスプリッタは、[12]「前記光学分岐膜で反射された光を外部に出射する出射面を備え、前記出射面には、反射防止膜が形成されている、上記[1]~[11]のいずれかに記載のビームスプリッタ」であってもよい。この場合、光学分岐膜で反射された光を出射させる際に、出射面での反射が抑制される。
【0020】
本開示に係るビームスプリッタは、[13]「前記入射光の入射面を備え、前記入射面には、反射防止膜が形成されている、上記[1]~[12]のいずれかに記載のビームスプリッタ」であってもよい。この場合、入射光の入射面での反射が抑制される。
【0021】
本開示に係るビームスプリッタは、[14]「前記第1層は、金属材料から構成されており、前記第2層は、半導体材料又は誘電体材料から構成されている、上記[1]~[13]のいずれかに記載のビームスプリッタ」であってもよい。この場合、金属材料から構成される第1層の腐食といった劣化が抑制される。
【0022】
本開示に係るビームスプリッタは、[15]「前記第1層は、Ag又はAlから構成されており、前記第2層は、Si、Ge、SiO2、SiN、Al2O3、Y2O3、Ta2O5、TiO2、及び、ZnSのうちの1つから構成されている、上記[1]~[14]のいずれかに記載のビームスプリッタ」であってもよい。この場合、Ag又はAlから構成される第1層の腐食といった劣化が抑制される。
【0023】
本開示に係るビームスプリッタ製造方法は、[16]「上記[1]~[15]のいずれかに記載のビームスプリッタを製造するためのビームスプリッタ製造方法であって、前記第1光透過部材となる部分を複数含む第1部材と、前記第2光透過部材となる部分を複数含む第2部材と、を用意する第1工程と、前記第1工程の後に、前記第1部材に含まれる複数の前記第1光透過部材となる前記部分のそれぞれの前記第1面に前記光学分岐膜を形成する第2工程と、前記第2工程の後に、前記光学分岐膜を介して前記接着部材により前記第1部材と前記第2部材とを接着することにより、連続する複数の前記ビームスプリッタを含む構造体を形成する第3工程と、前記第3工程の後に、前記構造体を個片化することにより、前記構造体から複数の前記ビームスプリッタを得る第4工程と、を備える、ビームスプリッタ製造方法」である。
【0024】
この方法によれば、光学特性の劣化を抑制可能なビームスプリッタを効率よく製造することが可能となる。
【0025】
本開示に係るビームスプリッタ製造方法は、[17]「前記第3工程と前記第4工程との間において、前記構造体の表面を研磨する第5工程を備え、前記ビームスプリッタは、当該ビームスプリッタを外部部材に搭載するときに前記外部部材に接触する接触面を含み、前記第5工程では、少なくとも、前記構造体における複数の前記接触面を含む表面を研磨する、上記[16]に記載のビームスプリッタ製造方法」であってもよい。この場合、ビームスプリッタにおける外部部材との接触面が平坦化されることで、ビームスプリッタを外部部材に搭載しやすくなる。また、当該接触面がビームスプリッタにおける光の出射面とする場合、当該出射面である接触面の研磨により、入射面から出射面に至る光路長のばらつきを低減することができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、光学特性の劣化を抑制可能なビームスプリッタ、及びビームスプリッタ製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る光モジュールを示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたミラーユニット及びビームスプリッタを示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1,2に示されたビームスプリッタの斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿った模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示された第1面及び第1層を第1方向からみた場合を示す模式図である。
【
図6】
図6は、ビームスプリッタ製造方法の一工程を示す図ある。
【
図7】
図7は、ビームスプリッタ製造方法の一工程を示す図ある。
【
図8】
図8は、ビームスプリッタ製造方法の一工程を示す図ある。
【
図9】
図9は、変形例に係る第1面及び第1層を第1方向からみた場合を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、一実施形態について、図面を参照して説明を行う。なお、各図面の説明においては、同一又は相当する要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。また、各図には、X方向、X方向に交差するY方向、及び、X方向及びY方向に交差するZ方向を規定する直交座標系を示す場合がある。或いは、各図には、第1方向D1、第1方向D1に交差する第2方向D2、及び、第1方向D1及び第2方向D2に交差する第3方向D3を規定する別の直交座標系を示す場合がある。
【0029】
図1は、一実施形態に係る光モジュールを示す断面図である。
図1に示されるように、光モジュール1は、ミラーユニット2と、ビームスプリッタ3と、光入射部4と、第1光検出器6と、第2光源7と、第2光検出器8と、支持体9と、第1支持構造11と、第2支持構造12と、を備えている。ミラーユニット2は、Z方向における支持体9の一方の側に配置されており、例えば接着剤によって、支持体9に取り付けられている。支持体9は、例えば銅タングステンによって形成されており、例えば矩形板状を呈している。ミラーユニット2は、Z方向に沿って移動する可動ミラー22と、位置が固定された固定ミラー16と、を含んでいる。なお、Z方向は、例えば鉛直方向であり、Z方向における一方の側は、例えば上側である。
【0030】
ビームスプリッタ3は、Z方向におけるミラーユニット2の一方の側に配置されており、第1支持構造11によって支持されている。第1支持構造11は、例えば接着剤によって、支持体9に取り付けられている。光入射部4は、X方向におけるビームスプリッタ3の一方の側に配置されており、第2支持構造12によって支持されている。第1光検出器6、第2光源7、及び第2光検出器8は、Z方向におけるビームスプリッタ3の一方の側に配置されており、第2支持構造12によって支持されている。第2支持構造12は、例えばボルトによって、支持体9に取り付けられている。
【0031】
光モジュール1では、ビームスプリッタ3、可動ミラー22、及び固定ミラー16によって、測定光L0及びレーザ光L10のそれぞれについて干渉光学系が構成される。測定光L0及びレーザ光L10のそれぞれについて構成される干渉光学系は、例えばマイケルソン干渉光学系である。
【0032】
測定光L0については、次のように、測定光の干渉光L1が検出される。すなわち、第1光源(図示省略)から測定対象(図示省略)を介して入射した測定光L0又は測定対象から発せられた測定光L0(例えば、測定対象自体の発光等)が、光入射部4からビームスプリッタ3に入射すると、当該測定光L0は、ビームスプリッタ3において一部及び残部に分割される。そして、測定光L0の一部は、Z方向に沿って往復移動する可動ミラー22で反射されてビームスプリッタ3に戻る。一方、測定光L0の残部は、固定ミラー16で反射されてビームスプリッタ3に戻る。ビームスプリッタ3に戻った測定光L0の一部及び残部は、干渉光L1としてビームスプリッタ3から出射され、当該測定光の干渉光L1が第1光検出器6によって検出される。
【0033】
レーザ光L10については、次のように、レーザ光の干渉光L11が検出される。すなわち、第2光源7から出射されたレーザ光L10がビームスプリッタ3に入射すると、当該レーザ光L10は、ビームスプリッタ3において一部及び残部に分割される。そして、レーザ光L10の一部は、Z方向に沿って往復移動する可動ミラー22で反射されてビームスプリッタ3に戻る。一方、レーザ光L10の残部は、固定ミラー16で反射されてビームスプリッタ3に戻る。ビームスプリッタ3に戻ったレーザ光L10の一部及び残部は、干渉光L11としてビームスプリッタ3から出射され、当該レーザ光の干渉光L11が第2光検出器8によって検出される。
【0034】
光モジュール1によれば、レーザ光の干渉光L11の検出結果に基づいて、Z方向における可動ミラー22の位置の計測が可能となり、その位置の計測結果、及び測定光の干渉光L1の検出結果に基づいて、測定対象についての分光分析が可能となる。
【0035】
図2は、
図1に示されたミラーユニット及びビームスプリッタを示す断面図である。
図1,2に示されるように、ビームスプリッタ3は、例えば屈折率整合剤を兼ねた光学接着剤によって、第1支持構造11の光透過部材112におけるミラーデバイス20とは反対側の表面112aに取り付けられている。
【0036】
ミラーデバイス20は、ミラーユニット2の一部である。すなわち、ミラーユニット2は、光学機能部材13と、固定ミラー16と、ミラーデバイス20と、を有している。ミラーデバイス20は、ベース21と、可動ミラー22と、駆動部23と、を含んでいる。ベース21は、第1表面21a(Z方向における一方の側の表面)、及び第1表面21aとは反対側の第2表面21bを有している。第1表面21a及び第2表面21bの各々は、ベース21の主面である。ベース21は、例えば矩形板状を呈している。可動ミラー22は、ミラー面22aと、ミラー面22aが配置された可動部22bと、を有している。可動ミラー22は、第1表面21aに垂直なZ方向に沿って移動可能となるようにベース21において支持されている。駆動部23は、Z方向に沿って可動ミラー22を移動させる。
【0037】
ミラーデバイス20には、一対の光通過部24,25が設けられている。一対の光通過部24,25は、X方向における可動ミラー22の両側に配置されている。光通過部24は、ビームスプリッタ3と固定ミラー16との間の光路の第1部分を構成している。
【0038】
ベース21、可動ミラー22の可動部22b、及び駆動部23は、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板によって構成されている。つまり、ミラーデバイス20は、SOI基板によって構成されている。ミラーデバイス20は、例えば、矩形板状に形成されている。SOI基板は、支持層101、デバイス層102及び中間層103を有している。支持層101は、第1シリコン層である。デバイス層102は、第2シリコン層である。中間層103は、支持層101とデバイス層102との間に配置された絶縁層である。SOI基板は、支持層101、中間層103及びデバイス層102を、Z方向における一方の側からこの順に有している。
【0039】
ベース21は、支持層101、デバイス層102及び中間層103の一部によって構成されている。ベース21の第1表面21aは、支持層101における中間層103とは反対側の表面である。ベース21の第2表面21bは、デバイス層102における中間層103とは反対側の表面である。ベース21を構成する支持層101は、ベース21を構成するデバイス層102よりも厚い。ベース21を構成する支持層101の厚さは、例えば、ベース21を構成するデバイス層102の厚さの4倍程度である。ミラーユニット2では、後述するように、ベース21の第2表面21bと光学機能部材13の第3表面13aとが互いに接合されている。
【0040】
ミラーデバイス20では、リードピン及びワイヤ(図示省略)を介して、Z方向に沿って可動ミラー22を移動させるための電気信号が駆動部23に入力される。これにより、Z方向に沿って可動ミラー22をその共振周波数レベルで往復動させることができる。このように、駆動部23は、静電アクチュエータとして機能する。
【0041】
光学機能部材13は、ベース21の第2表面21bと対向する第3表面13a(Z方向における一方の側の表面)、及び第3表面13aとは反対側の第4表面13bを有している。光学機能部材13は、測定光L0及びレーザ光L10に対して透過性を有する材料によって一体的に形成されている。光学機能部材13は、例えばガラスによって矩形板状に形成されており、例えば15mm×20mm×4mm(厚さ)程度のサイズを有している。なお、光学機能部材13の材料は、例えば、光モジュール1の感度波長が近赤外領域である場合にはガラス、光モジュール1の感度波長が中赤外領域である場合にはシリコンというように、光モジュール1の感度波長によって選択される。
【0042】
光学機能部材13には、光透過部14が設けられている。光透過部14は、光学機能部材13のうち、Z方向においてミラーデバイス20の光通過部24と対向する部分である。光透過部14におけるミラーデバイス20側の表面は、第3表面13aと同一平面上に位置している。光透過部14は、ビームスプリッタ3と固定ミラー16との間の光路の第2部分(一部分)を構成している。光透過部14は、ビームスプリッタ3と可動ミラー22との間の光路と、ビームスプリッタ3と固定ミラー16との間の光路と、の間に生じる光路差を補正する部分である。
【0043】
光学機能部材13は、ミラーデバイス20の可動ミラー22及び駆動部23と対向する第5表面13dを有している。第5表面13dは、第3表面13aよりも第4表面13b側に位置している。このため、第5表面13dは、可動ミラー22及び駆動部23と対向する領域においてミラーデバイス20から離れることになる。また、光透過部14の表面は、ミラーデバイス20の光通過部24と対向している。これにより、ミラーユニット2では、可動ミラー22がZ方向に沿って往復移動した際に、可動ミラー22及び駆動部23が光学機能部材13に接触することが防止されている。
【0044】
固定ミラー16は、光学機能部材13に対してミラーデバイス20とは反対側に配置されており、ミラーデバイス20のベース21に対する位置が固定されている。固定ミラー16は、例えば蒸着によって、光学機能部材13の第4表面13bに形成されている。固定ミラー16は、Z方向に垂直なミラー面16aを有している。本実施形態では、可動ミラー22のミラー面22a及び固定ミラー16のミラー面16aが、Z方向における一方の側(ビームスプリッタ3側)に向いている。なお、固定ミラー16は、光学機能部材13の各光透過部14を透過する光を反射するように、光学機能部材13の第4表面13bに連続的に形成されている。
【0045】
ビームスプリッタ3は、例えば屈折率整合剤を兼ねた光学接着剤によって、光透過部材112におけるミラーデバイス20とは反対側の表面112aに取り付けられている。ビームスプリッタ3は、第1ミラー面31、第2ミラー面32及び複数の光学面33a,33b,33c,33dを有している。ビームスプリッタ3は、複数の光学ブロック34,35が接合されることで構成されている。各光学ブロック34,35は、光学機能部材13と屈折率が同一又は類似の材料によって形成されている。
【0046】
第1ミラー面31は、Z方向に対して傾斜したミラー面(例えば、ハーフミラー面)であり、光学ブロック34と光学ブロック35との間に形成されている。本実施形態では、第1ミラー面31は、Y方向に平行な面であり、且つZ方向と45°の角度を成す面であって、ミラーデバイス20に近付くほど光入射部4から離れるように傾斜した面である。第1ミラー面31は、測定光L0の一部を反射し且つ測定光L0の残部を透過させる機能、及びレーザ光L10の一部を反射し且つレーザ光L10の残部を透過させる機能を有している。第1ミラー面31は、例えば誘電体多層膜によって形成されている。第1ミラー面31は、Z方向から見た場合に、ミラーデバイス20の光通過部24、光学機能部材13の光透過部14、及び固定ミラー16のミラー面16aと重なっており、且つX方向から見た場合に光入射部4と重なっている(
図1参照)。つまり、第1ミラー面31は、Z方向において固定ミラー16と対向しており、且つX方向において光入射部4と対向している。
【0047】
第2ミラー面32は、第1ミラー面31に平行なミラー面(例えば、全反射ミラー面)であり、第1ミラー面31に対して光入射部4とは反対側に位置するように光学ブロック35に形成されている。第2ミラー面32は、測定光L0を反射する機能、及びレーザ光L10を反射する機能を有している。第2ミラー面32は、例えば金属膜によって形成されている。第2ミラー面32は、Z方向から見た場合にミラーデバイス20の可動ミラー22のミラー面22aと重なっており、且つX方向から見た場合に第1ミラー面31と重なっている。つまり、第2ミラー面32は、Z方向において可動ミラー22と対向しており、且つX方向において第1ミラー面31と対向している。
【0048】
光学面33aは、Z方向に垂直な面であり、第1ミラー面31に対してミラーデバイス20とは反対側に位置するように光学ブロック35に形成されている。光学面33bは、Z方向に垂直な面であり、第2ミラー面32に対してミラーデバイス20側に位置するように光学ブロック35に形成されている。光学面33cは、Z方向に垂直な面であり、第1ミラー面31に対してミラーデバイス20側に位置するように光学ブロック34に形成されている。
【0049】
光学面33b及び光学面33cは、同一平面上に位置している。光学面33dは、X方向に垂直な面であり、第1ミラー面31に対して光入射部4側に位置するように光学ブロック34に形成されている。各光学面33a,33b,33c,33dは、測定光L0を透過させる機能、及びレーザ光L10を透過させる機能を有している。以上のように構成されたビームスプリッタ3は、同一平面上に位置する光学面33b及び光学面33cが例えば光学接着剤によって光透過部材112の表面112aに固定されることで、光透過部材112に取り付けられている。
【0050】
ここで、ミラーユニット2及びビームスプリッタ3における測定光L0の光路及びレーザ光L10の光路について説明する。光学面33dを介してビームスプリッタ3にX方向に沿って測定光L0が入射すると、測定光L0の一部は、第1ミラー面31を透過して第2ミラー面32で反射され、光学面33b及び光透過部材112を介して可動ミラー22のミラー面22aに至る。当該測定光L0の一部は、可動ミラー22のミラー面22aで反射され、同一の光路P1上を逆方向に進行して第1ミラー面31で反射される。
【0051】
測定光L0の残部は、第1ミラー面31で反射され、光学面33c、光透過部材112、ミラーデバイス20の光通過部24、及び光学機能部材13の光透過部14を介して、固定ミラー16のミラー面16aに至る。当該測定光L0の残部は、固定ミラー16のミラー面16aで反射され、同一の光路P2上を逆方向に進行して第1ミラー面31を透過する。第1ミラー面31で反射された測定光L0の一部と、第1ミラー面31を透過した測定光L0の残部とは、干渉光L1となり、当該測定光の干渉光L1は、光学面33aを介してビームスプリッタ3からZ軸方向に沿って出射される。
【0052】
一方、光学面33aを介してビームスプリッタ3にZ方向に沿ってレーザ光L10が入射すると、レーザ光L10の一部は、第1ミラー面31及び第2ミラー面32で反射され、光学面33b及び光透過部材112を介して可動ミラー22のミラー面22aに至る。当該レーザ光L10の一部は、可動ミラー22のミラー面22aで反射され、同一の光路P3上を逆方向に進行して第1ミラー面31で反射される。
【0053】
レーザ光L10の残部は、第1ミラー面31を透過し、光学面33c、光透過部材112、ミラーデバイス20の光通過部24、及び光学機能部材13の光透過部14を介して、固定ミラー16のミラー面16aに至る。当該レーザ光L10の残部は、固定ミラー16のミラー面16aで反射され、同一の光路P4上を逆方向に進行して第1ミラー面31を透過する。第1ミラー面31で反射されたレーザ光L10の一部と、第1ミラー面31を透過したレーザ光L10の残部とは、干渉光L11となり、当該レーザ光の干渉光L11は、光学面33aを介してビームスプリッタ3からZ方向に沿って出射される。
【0054】
以上のように、ミラーデバイス20の光通過部24は、ビームスプリッタ3と固定ミラー16との間の光路のうち、測定光L0の光路P2の第1部分P2a、及びレーザ光L10の光路P4の第1部分P4aを構成している。また、光学機能部材13の光透過部14は、ビームスプリッタ3と固定ミラー16との間の光路のうち、測定光L0の光路P2の第2部分P2b、及びレーザ光L10の光路P4の第2部分P4bを構成している。
【0055】
測定光L0の光路P2の第2部分P2bが光透過部14によって構成されることで、測定光L0の光路P1の光路長(当該光路が通る各媒質の屈折率を考慮した光路長)と測定光L0の光路P2の光路長との差が小さくなるように、光路P1,P2間の光路差が補正される。同様に、レーザ光L10の光路P4の第2部分P4bが光透過部14によって構成されることで、レーザ光L10の光路P3の光路長とレーザ光L10の光路P4の光路長との差が小さくなるように、光路P3,P4間の光路差が補正される。本実施形態では、光透過部14の屈折率が、ビームスプリッタ3を構成する各光学ブロックの屈折率と等しく、X方向に沿った第1ミラー面31と第2ミラー面32との距離が、Z方向に沿った光透過部14の厚さ(すなわち、Z方向に沿った光透過部14の表面と光学機能部材13の第4表面13bとの距離)に等しい。
【0056】
引き続いて、ビームスプリッタ3の詳細について説明する。
図3は、
図1,2に示されたビームスプリッタの斜視図である。
図4は、
図3のIV-IV線に沿った模式的な断面図である。
図3,4に示されるビームスプリッタ3は、上述したように、入射光(測定光L0及びレーザ光L10)を異なる複数の成分(測定光L0の一部及び残部、並びに、レーザ光L10の一部及び残部)に分岐して出射する。そのために、ビームスプリッタ3は、光学ブロック34(第1光透過部材)、光学ブロック35(第2光透過部材)、接着部材40、及び、光学分岐膜50を備えている。なお、ビームスプリッタ3は、入射光を透過側と反射側とで等分するハーフミラーとして機能してもよい。
【0057】
光学ブロック34は、第1面34aを有しており、入射光に対して透過性有している。本実施形態では、光学ブロック34は、互いに平行な一対の直角三角形状の端面を有する三角柱状に形成されており、第1面34aは、光学ブロック34における互いに略直交する光学面33dと光学面33cとを接続する側面(斜面)である。光学ブロック35は、第2面35aを有しており、入射光に対して透過性を有している。本実施形態では、光学ブロック35は、互いに平行な一対の平行四辺形状の端面を有する四角柱状に形成されており、第2面35aは、光学ブロック35における互いに平行な光学面33aと光学面33bとを接続する側面(斜面)である。
【0058】
光学ブロック34と光学ブロック35とは、第1面34aと第2面35aとが対向するように配置されている。接着部材40は、入射光に対して透過性を有しており、第1面34aと第2面35aとの間に配置されている。光学分岐膜50は、第1面34aと第2面35aとの間に配置されており、入射光を複数の成分に分岐する機能を有する。なお、ビームスプリッタ3がハーフミラーとして機能する場合には、光学分岐膜50は、入射光を透過側と反射側で等分する機能を有する。
【0059】
したがって、光学ブロック34と光学ブロック35とは、第1面34aと第2面35aとが接着部材40及び光学分岐膜50を挟んで対向するように配置されており、接着部材40により互いに接着されている。これにより、本実施形態では、ビームスプリッタ3は、全体として、互いに平行な一対の台形状の端面を有する四角柱状に形成される。接着部材40及び光学分岐膜50は、上述した第1ミラー面31を構成する。すなわち、第1面34aは、光学ブロック34における第1ミラー面31に臨む面であり、第2面35aは、光学ブロック35における第1ミラー面31に臨む面である。第1面34aと第2面35aとは、互いに略平行とされている。
【0060】
第1方向D1は、第1面34a及び第2面35aに交差(直交)する方向である。第1方向D1は、Z方向に対して、例えば45°傾斜している。したがって、第1面34a及び第2面35aも、Z方向に対して、例えば45°傾斜している。第2方向D2は、第1方向D1に交差(直交)すると共に第1面34a及び第2面35aに沿った方向である。第2方向D2は、ここではY方向と一致している。第3方向D3は、第1方向D1及び第2方向D2に交差(直交)すると共に第1面34a及び第2面35aに沿った方向である。第3方向D3は、X方向に対して例えば45°傾斜している。
【0061】
光学分岐膜50は、一例として第1面34aに形成されており(第2面35aに形成されていてもよい)、第1方向D1に沿って積層された複数の層から構成されている(多層膜構造を有している)。より具体的には、光学分岐膜50は、第1面34a上に形成された第1層51と、第1方向D1に沿って、第1面34a及び第1層51上に積層された第2層52と、を有している。さらに、本実施形態では、光学分岐膜50は、第1方向D1に沿って、第1面34a、第1層51、及び、第2層52上に積層された第3層53と、第1方向D1に沿って第1層51を挟むように配置された一対の第4層54a,54bと、第1方向D1に沿って第1層51及び第4層54a,54bを挟むように配置された一対の第5層55a,55bと、を備えている。
【0062】
これにより、光学分岐膜50の中心を含む主な部分(有効エリア50p)においては、第1面34a側から順に、第5層55a、第4層54a、第1層51、第4層54b、第5層55b、第2層52、第3層53が積層されている。第2層52の第1部分52aは、第5層55b上に形成されて第5層55bに接している。これらの層のうちの互いに隣り合う層同士は、互いに接触している。なお、光学分岐膜50は、第1面34aに接触するベース層56を備えており、上記の各層は、当該ベース層56上に積層されている。
【0063】
第1層51は、第1方向D1からみて矩形状を有している。第1層51は、平坦な層であり、第1方向D1からみてベース層56の全面を覆っている。第1層51は、例えばAg又はAlといった金属材料から構成されている。
【0064】
第2層52は、第1方向D1からみて矩形状を有している。第2層52は、第1方向D1からみて、第1層51を覆うと共に、第1層51の外縁51eを越えて第1面34a上に延在している。第2層52は、第1層51の外縁51eを越えた部分において、第1面34aに接触している。より具体的には、第2層52は、第1部分52aと第2部分52bと第3部分52cとからなる。第1部分52aは、第1層51の第1面34aと反対側の上面を覆うように延在する部分である。第1部分52aは、第1方向D1からみて第1層51を覆っている。
【0065】
第2部分52bは、第2方向D2における第1部分52aの端部に接続され、当該第1部分52aの端部から第1層51の側面(ここでは第2方向D2に交差する面)を覆うように第1方向D1に沿って延在している。本実施形態では、第2部分52bは、第1層51の側面に加えて、第4層54a,54b、第5層55a,55b、及びベース層56の側面を覆うように延在して第1面34aに至っている。第3部分52cは、第2部分52bにおける第1部分52aとの接続部分と反対側の端部に接続され、第2方向D2(及び第3方向D3)について第1層51と反対側(外側)に向けて延在している。第3部分52cは、第1面34aに接触している。これにより、第2層52では、第1部分52aと第3部分52cとの間に段差が形成されている。なお、第2部分52bは、当該第2部分52bの第1方向D1の端部において、第1部分52a及び第3部分52cとそれぞれ接続されている。
【0066】
第2層52は、半導体材料、又は誘電体材料から構成されている。第2層52を構成する半導体材料の一例としては、SiやGeが挙げられる。第2層52を構成する誘電体材料の一例としては、SiO2、SiN、Al2O3、Y2O3、Ta2O5、TiO2、及び、ZnSが挙げられる。第2層52は、第1層51よりも耐湿性の高い材料によって構成され得る。一例として、本実施形態では、第2層52は、Siからなる。なお、ベース層56の材料は、例えば、第2層52の材料と同様の材料から選択され得る。
【0067】
第3層53は、第1方向D1からみて矩形状を有している。第3層53は、第1方向D1からみて、第2層52を覆っている。より具体的には、第3層53は、第4部分53aと第5部分53bと第6部分53cとからなる。第4部分53aは、第2層52の第1部分52aを覆うように延在している。第5部分53bは、第2方向D2における第4部分53aの端部に接続され、当該第4部分53aの端部から第2層52の第2部分52bを覆うように第1方向D1に沿って延在している。第6部分53cは、第5部分53bにおける第4部分53aとの接続部分と反対側の端部に接続され、第2方向D2(及び第3方向D3)について第1層51と反対側(外側)に向けて延在している。これにより、第3層53では、第4部分53aと第6部分53cとの間に段差が形成されている。
【0068】
第6部分53cは、第2層52の第3部分52cに対向するように配置されている。本実施形態では、第6部分53cは第3部分52cに接触している。また、本実施形態では、第3層53は、光学分岐膜50の最外層であり、光学分岐膜50の表面50sを有している。すなわち、第3層53は、光学分岐膜50の第1面34aと反対側に臨む表面50sを形成し、接着部材40に接触している。第3層53は、例えば酸化層であり、一例としてSiO2から構成される。
【0069】
第4層54a,54bは、第1方向D1からみて矩形状を有している。第4層54a,54bは、第1方向D1からみて第1層51を覆っている。第4層54a,54bは、平坦な層である。第4層54a,54bは、例えば、Si、Ge、SiN、及びZnSのうちの1つから構成され得る。また、第4層54a,54bは、第2層52と同一の材料から構成され得る。本実施形態では、第4層54a,54bは、一例としてSiから構成される。
【0070】
第5層55a,55bは、第1方向D1からみて矩形状を有している。第5層55a,55bは、第1方向D1からみて第1層51及び第4層54a,54bを覆っている。第5層55a,55bは、例えば、SiO2、Al2O3、TiO2、Y2O3、及び、Ta2O5のうちの1つから構成され得る。本実施形態では、第5層55a,55bは、例えばSiO2から構成される。一例として、第4層54a,54bは、酸化処理がされていない第1材料(例えばSi)から構成され、第5層55a,55bは、当該第1材料を酸化処理した材料(例えばSiO2)から構成される酸化層であり得る。
【0071】
接着部材40は、第1接着部41と第2接着部42とから構成される。第1接着部41は、光学分岐膜50の第1面34aと第2面35aとに挟まれる領域のうち、第2層52の第1部分52a(すなわち第3層53の第4部分53a)に対向する領域に配置(充填)され、当該領域において第2面35aと表面50sとに接着されている。第2接着部42は、光学分岐膜50の第1面34aと第2面35aとに挟まれる領域のうち、第2層52の第2部分52b(すなわち第3層53の第5部分53b)と、第2層52の第3部分52c(すなわち第3層53の第6部分53c)とに対向する領域に配置(充填)され、当該領域において第2面35aと表面50sとに接着されている。第1接着部41と第2接着部42とは、互いに一体に形成されている。これにより、接着部材40は、光学分岐膜50の段差部を埋めるように形成されており、光学分岐膜50を介して第1面34aと第2面35aとを接着している。
【0072】
以上のように、光学分岐膜50は、第1層51、第2層52、第3層53、第4層54a,54b、及び、第5層55a,55bが積層されて構成された相対的に厚い有効エリア50pと、有効エリア50pを囲うように有効エリア50pの外側に形成され、第2層52と第3層53とが積層されて構成された相対的に薄い環状の非有効エリア50rとからなる。
【0073】
なお、光学ブロック34の光学面33c、及び、光学ブロック35の光学面33bは、ビームスプリッタ3の底面3sを構成している。底面3sは、ビームスプリッタ3を外部部材(ここでは光透過部材112)に搭載するときに外部部材に接触する接触面である。
【0074】
図5は、
図4に示された第1面及び第1層を第1方向からみた場合を示す模式図である。
図4,5に示されるように、光学ブロック34の第1面34aは、第1方向D1からみて、第2方向D2よりも第3方向D3に長尺な矩形状を呈している。したがって、第1面34aの外縁34e(すなわち、第1方向D1からみたときの光学ブロック34の外縁)は、互いに平行な一対の短辺E1と、短辺E1に交差する方向に延びると共に、互いに平行な一対の長辺E2と、から構成される。一方の短辺E1は、ビームスプリッタ3を外部部材に搭載したときに外部部材に臨む(接触する)底面3s(光学面33c)に相当する第1辺である。他方の短辺E1は、ビームスプリッタ3におけるレーザ光L10の入射面、干渉光L1,L11の出射面となる光学面33aに相当する。
【0075】
同様に、光学分岐膜50の第1層51は、第1方向D1からみて、第2方向D2よりも第3方向D3に長尺な矩形状を呈している。したがって、第1層51の外縁51eは、互いに平行な一対の短辺F1と、短辺F1に交差する方向に延びると共に、互いに平行な一対の長辺F2と、を含む。短辺F1は、それぞれ、第1面34aの短辺E1のそれぞれに対向すると共に、当該短辺E1に平行に延在している。長辺F2は、それぞれ、第1面34aの長辺E2のそれぞれに対向すると共に、当該長辺E2に平行に延在している。第1層51における短辺F1と長辺F2とが交わる角部51rは、面取りされており、ここでは第1層51の外側に凸となる円弧状に形成されている。
【0076】
第1方向D1からみたとき、第1層51の短辺F1と第1面34aの外縁34eとの距離T1は、第1層51の長辺F2と第1面34aの外縁34eとの距離T2よりも大きくされている。距離T1は、短辺F1のそれぞれと、当該短辺F1のそれぞれに対向する第1面34aの短辺E1のそれぞれとの距離である。また、距離T2は、長辺F2のそれぞれと、当該長辺F2のそれぞれに対向する第1面34aの長辺E2のそれぞれとの距離である。
【0077】
なお、第2層52の第1部分52a、第3層53の第4部分53a、第4層54a,54b、及び、第5層55a,55b、すなわち、光学分岐膜50の有効エリア50pも、第1方向D1からみたときの第1層51と同様の形状を有している。また、
図5では図示を省略しているが、第2層52及び第3層53は、本実施形態では、第1面34aの外縁34eに至っている(ただし至っていなくてもよい)。したがって、本実施形態では、第1面34aの全体に光学分岐膜50が形成される。
【0078】
また、ビームスプリッタ3では、各面に対して、反射膜や反射防止膜等の光学的な機能を有する膜を形成され得る。例えば、ビームスプリッタ3では、一の入射光(測定光L0)の入射面となる光学面33d、及び、別の入射光(レーザ光L10)の入射面となる光学面33aには、反射防止膜が形成され得る。また、ビームスプリッタ3では、第1ミラー面31(光学分岐膜50)を介して光学面33dの反対側に位置する第2ミラー面32(第3面)には、光学分岐膜50を透過した光を反射する反射膜が形成され得る。さらに、ビームスプリッタ3では、光学分岐膜50で反射された光を外部に出射する出射面である光学面33b,33cには、反射防止膜が形成され得る。
【0079】
引き続いて、以上のビームスプリッタ3を製造するためのビームスプリッタ製造方法の一実施形態について説明する。
図6~8は、ビームスプリッタ製造方法の一工程を示す図ある。
図6に示されるように、ここでは、まず、第1部材34Pと第2部材35Pとを用意する(工程S101、第1工程)。第1部材34Pは、一方向に連続的に配列された複数の光学ブロック34を含む部材であり、第2部材35Pは、一方向に連続的に配列された複数の光学ブロック35を含む部材である。換言すれば、第1部材34Pは、後述する工程S104での切断により光学ブロック34となる部分を複数含み、第2部材35Pは、後述する工程S104での切断により光学ブロック35となる部分を複数含む。
【0080】
続いて、第1部材34Pに含まれる複数の光学ブロック34のそれぞれの第1面34aに光学分岐膜50を形成する(工程S102、第2工程)。ここでは、一方向に連続する複数の第1面34aに対して、一括して、光学分岐膜50を形成する。このとき、互いに隣り合う光学分岐膜50同士は、非有効エリア50rにおいて繋がっていてもよいし、離間していてもよい。
【0081】
続いて、
図7に示されるように、接着部材40により第1部材34Pと第2部材35Pとを接着する(工程S103、第3工程)。このとき、第1部材34Pの複数の第1面34aからなる面34mと、第2部材35Pの複数の第2面35aからなる面35mとが対向するように、第1部材34Pと第2部材35Pとを配置して接着する。これにより、第1面34aのそれぞれと第2面35aのそれぞれとの間に光学分岐膜50が介在され、複数のビームスプリッタ3を含む構造体MPが形成される。
【0082】
続いて、
図8に示されるように、例えば切断によって構造体MPを個片化することにより、構造体MPから複数のビームスプリッタ3を得る(工程S104、第4工程)。なお、工程S103と工程S104との間において、構造体MPの表面を研磨する工程(工程S105、第5工程)を実施してもよい。工程S105では、少なくとも、ビームスプリッタ3を外部部材に搭載するときに外部部材に接触する底面3s(光学面33b,33c)を研磨することができる。また、工程S104の後に工程S105を実施してもよい。すなわち、工程S104の後に、構造体MPの個片化により得られたビームスプリッタ3に対して、少なくとも底面3s(光学面33b,33c)等の表面を研磨してもよい。
【0083】
以上説明したように、ビームスプリッタ3では、光学ブロック34と光学ブロック35とが、光学分岐膜50を介在させた状態で接着部材40により互いに接着されている。光学分岐膜50は、光学ブロック34における光学ブロック35に対向する第1面34a上に形成された第1層51と、当該第1面34a及び第1層51上に積層された第2層52と、を含む。そして、第2層52は、第1層51の上面を覆うように延在する第1部分52aと、第1部分52aから第1層51の側面を覆うように延在する第2部分52bと、第2部分52bから第1層51と反対側に向けて延在する第3部分52cとを含む。
【0084】
このように、第1層51の側面は、少なくとも第2部分52bが存在する領域において第2層52に覆われる(本実施形態では、第1層51の側面の全周が第2層52に覆われる)。この結果、第1層51の側面が外部に露出することが避けられ、第1層51の腐食といった劣化が抑制される。また、第1層51の上面についても、第2層52の第1部分52aに覆われている。このため、光学ブロック34と光学ブロック35とを接着するまでの間(製造時)にも、第1層51の腐食といった劣化が抑制される。よって、ビームスプリッタ3によれば、光学特性の劣化が抑制される。
【0085】
なお、ビームスプリッタ3では、第1層51の劣化の抑制に寄与する第2層52が、光学分岐膜50を構成する層である。よって、光学分岐膜50とは別に保護膜を形成する場合と比較して、製造工程の簡略化、及び低コスト化等を図ることができる。さらに、ビームスプリッタ3では、接着部材40が、第1面34aと第2面35aとに挟まれる領域のうちの第2層52の第1部分52aに対向する領域に配置された第1接着部41と、当該領域のうちの第2層52の第2部分52bと第3部分52cとに対向する領域に配置された第2接着部42とを含む。このため、光学ブロック34と光学ブロック35との接着が強固となる。
【0086】
また、ビームスプリッタ3では、光学分岐膜50は、第1方向D1に沿って、第1面34a、第1層51、及び第2層52上に積層された第3層53を有している。第3層53は、第2層52の第1部分52aを覆うように延在する第4部分53aと、第2方向D2における第4部分53aの端部に接続され、当該第4部分53aの端部から第2層52の第2部分52bを覆うように第1方向D1に沿って延在する第5部分53bと、第5部分53bにおける第4部分53aとの接続部分と反対側の端部に接続され、第2方向D2について第1層51と反対側に向けて延在する第6部分53cと、を含む。第6部分53cは、第3部分52cに対向するように配置されている。このため、第1層51の側面は、少なくとも第2部分52bが存在する領域において(本実施形態では、全周において)、さらに第3層53に覆われることとなる。また、第1層51の上面についても、第3層53によってさらに覆われる。この結果、第1層51の腐食といった劣化が確実に抑制され、光学特性の劣化が確実に抑制される。
【0087】
また、ビームスプリッタ3では、第3層53は、酸化層であってもよく、光学分岐膜50の第1面34aと反対側に臨む表面50sを形成し、接着部材40に接触している。この場合、光学ブロック34と光学ブロック35とを接着するまでの間(製造時)に、第2層52の酸化が抑制される。
【0088】
また、ビームスプリッタ3では、光学分岐膜50は、第1方向D1に沿って第1層51を挟むように配置された一対の第4層54a,54bと、第1方向D1に沿って第1層51及び一対の第4層54a,54bを挟むように配置された一対の第5層55a,55bと、を含む。そして、第2層52の第1部分52aは、第5層55b上に形成されて第5層55bに接している。光学分岐膜50は、このような多層構造により構成されてもよい。
【0089】
また、ビームスプリッタ3では、第4層54a,54bは、第1材料から構成されており、第5層55a,55bは、当該第1材料を酸化処理した材料から構成される酸化層であってもよい。この場合、第1層51が酸化することによる吸収係数の増大(反射率、透過率の低下)を抑制することができる。また、第2層52を形成するまでの間(製造時)、第4層54a,54bの酸化を抑制することができる。
【0090】
また、ビームスプリッタ3では、第4層54a,54bは、Si、Ge、SiN、及び、ZnSのうちの1つから構成され、第5層55a,55bは、SiO2、Al2O3、TiO2、Y2O3、及び、Ta2O5のうちの1つから構成されていてもよい。このように、これらの材料から第4層及び第5層の材料を選択してもよい。
【0091】
また、ビームスプリッタ3では、第4層54a,54bは、第2層52と同一の材料から構成されていてもよい。この場合、光学分岐膜50を製造するに際して成膜源の数を削減することができ、光学分岐膜50の製造が容易となる。
【0092】
また、ビームスプリッタ3では、第1方向D1からみたときの第1層51の外縁51eは、短辺F1と短辺F1に交差する方向に延びる長辺F2とを含む。そして、第1方向D1からみて、短辺F1と第1面34aの外縁34eとの距離T1は、長辺F2と第1面34aの外縁34eとの距離T2よりも大きい。このため、光学ブロック34と光学ブロック35とを接着する際に(製造時に)、第1層51の短辺F1に交差する方向に位置ずれが生じても、第1層51が第2面35aの外縁に達して露出すること抑制される。
【0093】
また、ビームスプリッタ3では、第1方向D1からみたときの第1層51の角部51rは、円弧状に形成されていてもよい。この場合、光学ブロック34や光学ブロック35の角部に欠けが生じても、第1層51が露出しにくくなる。
【0094】
また、ビームスプリッタ3は、第1面34a、光学分岐膜50、及び第2面35aを介して入射面(光学面33d)の反対側に位置する第3面(第2ミラー面32)を備えている。そして、当該第3面には、光学分岐膜50を透過した光を反射する反射膜が形成されていてもよい。この場合、光学分岐膜50を透過した光を所定の方向に反射することが可能となる。
【0095】
また、ビームスプリッタ3では、光学分岐膜50で反射された光を外部に出射する出射面には、反射防止膜が形成されていてもよい。この場合、光学分岐膜50で反射された光を出射させる際に、出射面での反射が抑制される。
【0096】
また、ビームスプリッタ3では、入射面には反射防止膜が形成されていてもよい。この場合、入射光の入射面での反射が抑制される。
【0097】
また、ビームスプリッタ3では、第1層51は、金属材料から構成されており、第2層52は、半導体材料又は誘電体材料から構成されていてもよい。この場合、金属材料から構成される第1層51の腐食といった劣化が抑制される。
【0098】
さらに、ビームスプリッタ3では、第1層51は、Ag又はAlから構成されており、第2層52は、Si、Ge、SiO2、SiN、Al2O3、Y2O3、Ta2O5、TiO2、及び、ZnSのうちの1つから構成されていてもよい。この場合、Ag又はAlから構成される第1層51の腐食といった劣化が抑制される。
【0099】
ここで、ビームスプリッタ製造方法は、光学ブロック34となる部分を複数含む第1部材34Pと、光学ブロック35となる部分を複数含む第2部材35Pと、を用意する工程S101と、第1部材34Pに含まれる複数の光学ブロック34のそれぞれの第1面34aに光学分岐膜50を形成する工程S102と、光学分岐膜50を介して接着部材40により光学ブロック34と光学ブロック35とを接着することにより、連続する複数のビームスプリッタ3を含む構造体MPを形成する工程S103と、構造体MPを個片化することにより、構造体MPから複数のビームスプリッタ3を得る工程S104と、を備える。この方法によれば、光学特性の劣化を抑制可能なビームスプリッタを効率よく製造することが可能となる。
【0100】
また、ビームスプリッタ製造方法は、工程S103と工程S104との間において、構造体MPの表面を研磨する工程S105を備えてもよい。そして、工程S105では、少なくとも、構造体MPにおける複数の底面3sを含む表面を研磨してもよい。この場合、ビームスプリッタ3における外部部材との接触面(底面3s)が平坦化されることで、ビームスプリッタ3を外部部材に搭載しやすくなる。また、当該接触面がビームスプリッタ3における光の出射面とする場合、当該出射面である接触面の研磨により、入射面から出射面に至る光路長のばらつきを低減することができる。
【0101】
以上の実施形態は、本発明の一態様を説明したものである。したがって、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、任意に変形され得る。
【0102】
例えば、
図9に示されるように、ビームスプリッタ3では、第1面34aの外縁34eは、当該ビームスプリッタ3を外部部材に搭載したときに当該外部部材側に臨む第1辺(一対の短辺E1のうちの底面3sに相当する一方)を含む。そして、第1層51は、第1方向D1からみて当該第1層51の外縁51eの一部(短辺F1のうちの底面3s側の一方)が、この第1辺に重なるように延在していてもよい。すなわち、第1層51が、底面3s側において、光学ブロック34の外縁まで延在していてもよい。この場合、第1層51がより広く形成され、より広い有効エリア50pの形成を図ることが可能となる。一方で、第1層51の外縁51eの一部が、第1面34aの外縁34eの第1辺に至ることとなるが、当該第1辺は、ビームスプリッタ3を外部部材に搭載する際に外部部材に臨む(接触する)辺である。したがって、第1層51の外縁51eの当該一部が外部に露出することが避けられる。
【0103】
また、上記実施形態における光学分岐膜50の積層構造についても、第1層51及び第2層52が維持される範囲において、任意に変形され得る。例えば、第1層51及び第2層52以外の少なくとも1つの層が省略されてもよいし、他の層が追加されてもよい。
【0104】
また、第1層51の角部51rは、面取りされていなくてもよいし、面取りされている場合であっても円弧状でなくてもよい。また、第1方向D1からみたときの第1層51の形状は、一方向に長尺の矩形状に限定されず、正方形状であってもよいし、他の形状であってもよい。光学分岐膜50の他の層や第1面34aの形状についても同様である。
【符号の説明】
【0105】
3…ビームスプリッタ、34…光学ブロック(第1光透過部材)、34a…第1面、35…光学ブロック(第2光透過部材)、35a…第2面、40…接着部材、41…第1接着部、42…第2接着部、50…光学分岐膜、51…第1層、52…第2層、52a…第1部分、52b…第2部分、52c…第3部分、53…第3層、53a…第4部分、53b…第5部分、53c…第6部分、54a,54b…第4層、55a,55b…第5層、E1,F1…短辺、E2,F2…長辺。