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特開2024-148028延伸機、レール、部分レールおよび油膜形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148028
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】延伸機、レール、部分レールおよび油膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/16 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
B29C55/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060908
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 柾紀
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一郎
【テーマコード(参考)】
4F210
【Fターム(参考)】
4F210AJ08
4F210AJ14
4F210QA02
4F210QC07
4F210QD25
4F210QG01
4F210QG18
4F210QL04
4F210QL05
4F210QL06
4F210QL16
4F210QL20
(57)【要約】
【課題】レールの摩耗を抑制して延伸機の寿命を延ばす。
【解決手段】一実施の形態の延伸機は、レールと、レールの側面に接触しながら移動する複数のローラを備えるリンク機構と、を有する。レールを構成する部分レール14aの内部には油路50が設けられ、部分レール14aの表面には複数の吐出口60が設けられる。油路50は、主油路51と、主油路51の異なる2以上の位置から主油路51に対して斜めに延びる複数の分岐油路とを含み、主油路51に供給された潤滑油が複数の分岐油路を介して複数の吐出口60に送られる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂膜を引き延ばす延伸機であって、
レールと、
前記レールの側面に接触しながら移動する複数のローラを備えるリンク機構と、
前記レールの内部に設けられた油路と、
前記レールの前記側面と上面との間の角部または前記上面の縁部に設けられ、当該レールの長手方向に沿って並ぶ複数の吐出口と、を有し、
前記油路は、主油路と、前記主油路の異なる2以上の位置から前記主油路に対して斜めに延びる複数の分岐油路と、を含み、
前記主油路に供給された潤滑油が前記複数の分岐油路を介して前記複数の吐出口に送られる、延伸機。
【請求項2】
請求項1に記載の延伸機において、
前記油路は、前記主油路と前記レールの下面に設けられた供給口とを繋ぐ給油路を含む、延伸機。
【請求項3】
請求項1に記載の延伸機において、
前記主油路および前記分岐油路は、前記レールに設けられた貫通孔よって形成されている、延伸機。
【請求項4】
請求項1に記載の延伸機において、
前記レールの一方の前記側面と前記上面との間の前記角部に設けられた複数の前記吐出口を含む第1吐出口群と、
前記レールの他方の前記側面と前記上面との間の前記角部に設けられた複数の前記吐出口を含む第2吐出口群と、
前記主油路の一側に配置され、前記第1吐出口群に属するそれぞれの前記吐出口に連通する複数の前記分岐油路を含む第1分岐油路群と、
前記主油路の他側に配置され、前記第2吐出口群に属するそれぞれの前記吐出口に連通する複数の前記分岐油路を含む第2分岐油路群と、を有する延伸機。
【請求項5】
請求項1に記載の延伸機において、
前記角部に前記レールの前記側面と前記上面とに跨る複数のテーパ部が形成され、
それぞれの前記テーパ部に前記吐出口が設けられている、延伸機。
【請求項6】
請求項1に記載の延伸機において、
前記レールは、連結された複数の部分レールによって構成され、
前記レールの一部の区間を構成する前記部分レールに前記油路および前記吐出口が設けられている、延伸機。
【請求項7】
請求項6に記載の延伸機において、
前記一部の区間は、引き伸ばされた前記樹脂膜を把持する前記リンク機構が走行する区間である、延伸機。
【請求項8】
延伸機のリンク機構が走行するレールであって、
前記リンク機構が備える複数のローラが接触しながら移動する側面と、
内部に設けられた油路と、
前記側面と上面との間の角部または前記上面の縁部に設けられ、当該レールの長手方向に沿って並ぶ複数の吐出口と、を有し、
前記油路は、主油路と、前記主油路の異なる2以上の位置から前記主油路に対して斜めに延びる複数の分岐油路と、を含み、
前記主油路に供給された潤滑油が前記複数の分岐油路を介して前記複数の吐出口に送られる、レール。
【請求項9】
請求項8に記載のレールにおいて、
連結された複数の部分レールによって構成され、
引き伸ばされた樹脂膜を把持する前記リンク機構が走行する一部の区間を形成する前記部分レールに、前記油路および前記吐出口が設けられている、レール。
【請求項10】
延伸機のリンク機構が走行するレールを構成する部分レールであって、
前記リンク機構が備える複数のローラが接触しながら移動する側面と、
内部に設けられた油路と、
前記側面と上面との間の角部または前記上面の縁部に設けられ、当該レールの長手方向に沿って並ぶ複数の吐出口と、を有し、
前記油路は、主油路と、前記主油路の異なる2以上の位置から前記主油路に対して斜めに延びる複数の分岐油路と、を含み、
前記主油路に供給された潤滑油が前記複数の分岐油路を介して前記複数の吐出口に送られる、部分レール。
【請求項11】
請求項10に記載の部分レールにおいて、
引き伸ばされた樹脂膜を把持する前記リンク機構が走行する前記レールの一部の区間を構成する、部分レール。
【請求項12】
延伸機のリンク機構が走行するレールの表面に油膜を形成する油膜形成方法であって、
前記レールの内部に設けられている油路を通して、前記レールの側面と上面との間の角部または前記上面の縁部に設けられている複数の吐出口に潤滑油を送る、油膜形成方法。
【請求項13】
請求項12に記載の油膜形成方法において、
前記油路は、主油路と、前記主油路の異なる2以上の位置から前記主油路に対して斜めに延びる複数の分岐油路と、により構成され、
前記主油路に供給した潤滑油を前記複数の分岐油路を介して前記複数の吐出口に送る、油膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸機に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜(例えば、樹脂シート又は樹脂フィルム)を搬送しながら縦方向や横方向に引き延ばす延伸機が知られている。特許文献1には、シート状物の縦延伸と横延伸とを行う同時二軸延伸機が記載されている。特許文献1に記載されている同時二軸延伸機は、無端リンク装置を有している。無端リンク装置は、レールおよびレールに沿って移動する複数の等長リンク装置から構成されており、それぞれの等長リンク装置は、レール上を転がりながら移動するローラを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4379306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
延伸機の寿命を延ばすために、レールの摩耗を抑制することが求められる。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態の延伸機は、レールと、レールの側面に接触しながら移動する複数のローラを備えるリンク機構と、を有する。レールの内部には油路が設けられ、レールの表面には複数の吐出口が設けられる。油路は、主油路と主油路の異なる2以上の位置から主油路に対して斜めに延びる複数の分岐油路とを含み、主油路に供給された潤滑油が複数の分岐油路を介して複数の吐出口に送られる。
【発明の効果】
【0007】
一実施の形態の延伸機では、レールの摩耗が抑制され、寿命が延長され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施の形態に係る薄膜製造システムの構成を示す模式図である。
図2】一実施の形態に係る薄膜製造システムを構成する延伸機の構造を模式的に示す平面図である。
図3】一実施の形態に係る薄膜製造システムを構成する延伸機の構造を模式的に示す他の平面図である。
図4A】一実施の形態に係るリンク機構およびレールの一部を模式的に示す平面図である。
図4B】一実施の形態に係るリンク機構およびレールの一部を模式的に示す他の平面図である。
図5】一実施の形態に係るリンク機構の幾つかを拡大して示す斜視図である。
図6】一実施の形態に係る部分レールの斜視図である。
図7】一実施の形態に係る部分レールの平面図である。
図8】一実施の形態に係る部分レールの側面図である。
図9】一実施の形態に係る部分レールの端面図である。
図10】一実施の形態に係る油路を模式的に示す説明図である。
図11】部分レールの一変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するために参照する全ての図面において、同一または実質的に同一の機能を有する機器や部材には同一の符号を付す。また、一度説明した機器や部材については、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0010】
<薄膜製造システムの構成>
図1は、本実施の形態に係る薄膜製造システム1の構成を示す模式図である。薄膜製造システム1は、押出装置(押出機、混練押出機)2,Tダイ3,原反冷却装置4,延伸機5,引き取り装置6,巻き取り装置7を有している。
【0011】
本実施の形態に係る薄膜製造システム1では、次のようなプロセスによって樹脂膜が製造される。まず、押出装置2に原料が供給される。より特定的には、押出装置2の原料供給部(原料投入口,ホッパ)2aに、樹脂材料(例えば、ペレット状の熱可塑性樹脂材料)が供給される。
【0012】
押出装置2に供給された原料は、混練(混合)されながら搬送される。より特定的には、押出装置2に供給された原料は、押出装置2が備えるスクリューの回転によって前方へ送られながら溶融され、かつ、混練される。
【0013】
押出装置2によって混練された原料(混練物)は、Tダイ3に送り込まれる。Tダイ3に送り込まれた混練物は、Tダイ3を通過し、Tダイ3のスリットから原反冷却装置4に向けて押し出される。混練物は、Tダイ3を通過することにより、所望の形状(ここでは、フィルム形状)に成形される。
【0014】
混練物は、Tダイ3から原反冷却装置4に向けて連続的に押し出される。Tダイ3から押し出された混練物は、原反冷却装置4によって冷却されて樹脂膜8となる。その後、樹脂膜8は延伸機5に供給される。
【0015】
延伸機5に供給された樹脂膜8は、延伸機5によってMD方向およびTD方向に延伸される。延伸機5によって延伸処理(引き伸ばし処理)が施された樹脂膜8は、引き取り装置6を介して巻き取り装置7に搬送され、巻き取り装置7に巻き取られる。巻き取り装置7に巻き取られた樹脂膜8は、必要に応じて切断される。
【0016】
薄膜製造システム1は、上記のようなプロセスによって樹脂膜8を製造する。もっとも、薄膜製造システム1は、製造する樹脂膜の特性などに応じて種々の変更が可能である。例えば、図1に示されている引き取り装置6の近傍に抽出槽が設置され、樹脂膜8に含まれる可塑剤(例えば、パラフィン)が除去される実施の形態もある。
【0017】
薄膜製造システム1を構成している延伸機5は、樹脂膜8をMD方向に搬送しながら、その樹脂膜8をMD方向およびTD方向に引き延ばす。言い換えれば、MD(Machine Direction)方向は、樹脂膜8の搬送方向である。また、TD(Transverse Direction)方向は、樹脂膜8の搬送方向と交差する方向である。そこで、以下の説明では、MD方向を“搬送方向”または“縦方向”と呼び、TD方向を“横方向”と呼ぶ場合がある。
【0018】
MD方向(搬送方向,縦方向)とTD方向(横方向)とは、互いに交差する方向であり、より特定的には、互いに直交する方向である。つまり、延伸機5は、樹脂膜8を搬送しながら、その樹脂膜8を互いに交差する二方向に同時に延伸させることが可能な延伸機であり、一般的に“同時二軸延伸機”と呼ばれる。
【0019】
<延伸機>
次に、延伸機5についてより詳しく説明する。図2図3は、延伸機5の構造を模式的に示す平面図である。延伸機5は、一対のリンク装置10を有している。一対のリンク装置10は、平面視において互いに離間している。以下の説明では、一対のリンク装置10の一方を“リンク装置10R”と呼び、一対のリンク装置10の他方を“リンク装置10L”と呼んで区別する場合がある。もっとも、かかる区別は説明の便宜上の区別に過ぎない。
【0020】
図2図3では、リンク装置10Rは、搬送方向(MD方向)に対して右側(R側)に配置されており、リンク装置10Lは、搬送方向(MD方向)に対して左側(L側)に配置されている。また、リンク装置10Rとリンク装置10Lとは、TD方向に離間しており、樹脂膜8を挟んで対向している。
【0021】
樹脂膜8は、リンク装置10Rとリンク装置10Lとの間のスペースをMD方向に搬送される。別の見方をすると、対向するリンク装置10Rとリンク装置10Lとの間のスペースは、樹脂膜8を搬送するための搬送路として利用される。
【0022】
図3を参照する。延伸機5は、搬送方向(MD方向)に沿って3つの領域20A,20B,20Cに分けられる。領域20Aは予熱領域(プレヒート領域)であり、領域20Bは延伸領域であり、領域20Cは熱固定領域である。予熱領域20A,延伸領域20B,熱固定領域20Cは、この順で搬送方向(MD方向)に並んでいる。
【0023】
図2図3中に「IN」と表示されている部分は、延伸機5における樹脂膜8の入口であって、予熱領域20Aに位置している。また、図2図3中に「OUT」と表示されている部分は、延伸機5における樹脂膜8の出口であって、熱固定領域20Cに位置している。そして、樹脂膜8の入口がある予熱領域20Aと樹脂膜8の出口がある熱固定領域20Cとの間に、延伸処理が行われる延伸領域20Bが位置している。
【0024】
熱処理部9は、予熱領域20Aの一部,延伸領域20Bの全部および熱固定領域20Cの一部を覆っている。また、熱処理部9は、リンク装置10R,10Lの中央部を覆っており、リンク装置10R,10Lによって搬送される樹脂膜8を加熱する。本実施の形態の熱処理部9は、樹脂膜8を所望の温度に加熱可能なオーブンによって構成されている。樹脂膜8は、リンク装置10R,10Lに把持された状態で、熱処理部9としてのオーブンの庫内を通過する。
【0025】
<リンク装置>
リンク装置10R,10Lのそれぞれは、無端チェーンを構成するように連結された複数のリンク機構11を備えており、それぞれのリンク機構11は、樹脂膜8を把持するクリップ21を備えている。樹脂膜8は、リンク装置10Rを構成しているリンク機構11のクリップ21と、リンク装置10Lを構成しているリンク機構11のクリップ21と、によって保持される。すなわち、樹脂膜8の一側(右側/R側)は、リンク装置10Rが備える複数のクリップ21によって把持され、樹脂膜8の他側(左側/L側)は、リンク装置10Lが備える複数のクリップ21によって把持される。
【0026】
リンク装置10R,10Lのそれぞれは、複数のリンク機構11に加えて、支持台(ベッド)の上に配置された一対のレール13,14を備えている。それぞれのリンク装置10R,10Lのレール13は、それぞれのリンク装置10R,10Lのレール14の内側に配置されている。言い換えれば、それぞれのリンク装置10R,10Lのレール14は、それぞれのリンク装置10R,10Lのレール13の外側に配置されている。
【0027】
そこで、レール13は“内側レール”と呼ばれ、レール14は“外側レール”と呼ばれることがある。また、レール13は“基準レール”や“SPレール”と呼ばれ、レール14は“MDレール”と呼ばれることもある。
【0028】
それぞれのリンク装置10R,10Lが備えるレール13,14は、連結された複数本の部分レールによって構成されており、予熱領域20A,延伸領域20B,熱固定領域20Cを巡る環状に形成されている。より特定的には、レール13,14は、樹脂膜8の入口がある予熱領域20Aと樹脂膜8の出口がある熱固定領域20Cとで折り返されて環状の走行路を形成している。レール13,14については、後に改めて説明する。
【0029】
リンク装置10Rのレール13の内側に、3つのスプロケット19a,19b,19cが設けられている。同様に、リンク装置10Lのレール13の内側に、3つのスプロケット19a,19b,19cが設けられている。
【0030】
それぞれのリンク装置10R,10Lのスプロケット19a,19bは、予熱領域20Aに配置されており、それぞれのリンク装置10R,10Lのスプロケット19cは、熱固定領域20Cに配置されている。もっとも、スプロケット19a,19bは、予熱領域20Aの一部を覆っている熱処理部9の外に位置している。また、スプロケット19cは、熱固定領域20Cの一部を覆っている熱処理部9の外に位置している。つまり、それぞれのリンク装置10R,10Lのスプロケット19a,19b,19cは、オーブンの庫外に配置されている。
【0031】
リンク装置10R,10Lが備える複数のリンク機構11は、それぞれのレール13,14の上に配置され、それぞれのレール13,14に沿って移動する。つまり、リンク機構11は、レール13,14上を走行する。
【0032】
より特定的には、リンク装置10Rのスプロケット19a,19b,19cが回転すると、リンク装置10Rの複数のリンク機構11に駆動力が働き、それらリンク機構11がレール13,14上を移動(走行)する。また、リンク装置10Lのスプロケット19a,19b,19cが回転すると、リンク装置10Lの複数のリンク機構11に駆動力が働き、それらリンク機構11がレール13,14上を移動(走行)する。
【0033】
つまり、リンク装置10R,10Lが備えるレール13,14は、複数のリンク機構11を移動(走行)させるためのガイドレールである。
【0034】
以下の説明では、図3に示されているリンク装置10R,10Lのそれぞれについて、樹脂膜8と対向する側を“膜側”と呼び、膜側と反対側を“リターン側”と呼ぶ場合がある。つまり、クリップ21が樹脂膜8を把持した状態で、複数のリンク機構11が入口(IN)から出口(OUT)に向かって移動する側(サイド)が膜側である。一方、膜側の反対に位置し、クリップ21が樹脂膜8を把持しない状態で、複数のリンク機構11が出口(OUT)から入口(IN)に向かって移動する側(サイド)がリターン側である。
【0035】
互いに隣り合うリンク機構11の間のピッチ(“リンクピッチ”と呼ばれることもある。)は、レール13とレール14との間隔(離間距離)に応じて変化する。言い換えれば、レール13とレール14との離間距離を調整することにより、隣り合うリンク機構11の間のピッチを調整することができる。
【0036】
図4A図4Bは、リンク機構11及びレール13,14の一部を模式的に示す平面図である。図4A図Bに示されるように、レール13,14の離間距離L1が小さくなるほど、隣り合うリンク機構11が成す角度が大きくなり、隣り合うリンク機構11の間のピッチP1が大きくなる。一方、レール13,14の離間距離L1が大きくなるほど、隣り合うリンク機構11が成す角度が小さくなり、隣り合うリンク機構11の間のピッチP1が小さくなる。
【0037】
既述のとおり、それぞれのリンク機構11は、樹脂膜8を把持するクリップ21を備えている。よって、隣り合うリンク機構11の間のピッチP1の増減に応じて、隣り合うクリップ21の間のピッチP2も増減する。具体的には、レール13,14の離間距離L1が減少すると、リンク機構11のピッチP1が増大し、リンク機構11のピッチP1が増大すると、クリップ21のピッチP2も増大する(図4A図4B)。一方、レール13,14の離間距離L1が増大すると、リンク機構11のピッチP1が減少し、リンク機構11のピッチP1が減少すると、クリップ21のピッチP2も減少する(図4B図4A)。
【0038】
なお、複数のリンク機構11は、それぞれがクリップ21を備えている。よって、隣り合う2つのリンク機構11の間のピッチP1と、それらリンク機構11が備える2つのクリップ21の間のピッチP2とは、同一である。すなわち、図4A図4Bにおいて、P1=P2が成り立つ。
【0039】
<延伸機の動作>
図1に示される原反冷却装置4から延伸機5に供給された樹脂膜8は、延伸機5の入口でリンク装置10R,10Lに保持される。より特定的には、樹脂膜8は、図2図3に示されるリンク装置10R,10Lのリンク機構11が備えるクリップ21によって把持される。具体的には、樹脂膜8の幅方向一側がリンク装置10Rを構成しているリンク機構11が備えるクリップ21によって把持され、樹脂膜8の幅方向他側がリンク装置10Lを構成しているリンク機構11が備えるクリップ21によって把持される。
【0040】
幅方向両側がクリップ21によって把持された樹脂膜8は、リンク機構11の移動に伴って、延伸機5の入口から出口に向かって搬送され、予熱領域20A,延伸領域20B,熱固定領域20Cをこの順で通過する。樹脂膜8は、延伸領域20Bを通過する過程でMD方向およびTD方向に引き伸ばされる。その後、引き伸ばされた樹脂膜8は、熱固定領域20Cを経て出口に到達し、クリップ21から外される。クリップ21から外された樹脂膜8は、引き取り装置6に搬送され、引き取り装置6から巻き取り装置7に搬送される。
【0041】
図3に示されるように、予熱領域20Aでは、リンク装置10Rのレール13,14とリンク装置10Lのレール13,14との間の間隔(TD方向の離間距離)L2は、ほぼ一定である。従って、予熱領域20Aでは、樹脂膜8の幅(TD方向の寸法)は変化せず、一定のままである。
【0042】
また、予熱領域20Aでは、リンク装置10Rの膜側におけるレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、ほぼ一定である。このため、予熱領域20Aでは、リンク装置10Rの膜側におけるリンク機構11のピッチP1はほぼ一定であり、従って、リンク装置10Rの膜側におけるクリップ21のピッチP2もほぼ一定である。また、予熱領域20Aでは、リンク装置10Lの膜側おけるレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、ほぼ一定である。このため、予熱領域20Aでは、リンク装置10Lの膜側におけるリンク機構11のピッチP1はほぼ一定であり、従って、リンク装置10Lの膜側におけるクリップ21のピッチP2もほぼ一定である。従って、予熱領域20Aでは、樹脂膜8の長さ(MD方向の寸法)は変化せず、一定のままである。
【0043】
つまり、予熱領域20Aでは、樹脂膜8は、TD方向にもMD方向にも引き伸ばされない。別の見方をすると、予熱領域20Aでは、樹脂膜8に対するTD方向の延伸処理も、MD方向の延伸処理も行われない。
【0044】
延伸領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rのレール13,14とリンク装置10Lのレール13,14との間の間隔(TD方向の離間距離)L2が徐々に大きくなっている。このため、延伸領域20Bでは、樹脂膜8は、搬送方向(MD方向)に進むに従ってTD方向に引っ張られて引き伸ばされる。言い換えれば、延伸領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、樹脂膜8の幅(TD方向の寸法)が徐々に大きくなる。
【0045】
また、延伸領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rの膜側におけるレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、徐々に小さくなっており、また、リンク装置10Lの膜側におけるレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1も、徐々に小さくなっている。このため、延伸領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Rの膜側におけるリンク機構11のピッチP1が徐々に大きくなり、それに従ってリンク装置10Rの膜側におけるクリップ21のピッチP2も徐々に大きくなる。また、延伸領域20Bでは、搬送方向(MD方向)に進むに従って、リンク装置10Lの膜側におけるリンク機構11のピッチP1が徐々に大きくなり、それに従ってリンク装置10Lの膜側におけるクリップ21のピッチP2も徐々に大きくなる。この結果、延伸領域20Bでは、樹脂膜8は、搬送方向(MD方向)に進むに従ってMD方向に引っ張られて引き伸ばされる。
【0046】
つまり、延伸領域20Bでは、樹脂膜8は、TD方向およびMD方向に引き伸ばされる。別の見方をすると、延伸領域20Bでは、樹脂膜8に対して、TD方向の延伸処理およびMD方向の延伸処理が行われる。
【0047】
熱固定領域20Cでは、リンク装置10Rのレール13,14とリンク装置10Lのレール13,14との間の間隔(TD方向の離間距離)L2は、ほぼ一定である。
【0048】
また、熱固定領域20Cでは、リンク装置10Rの膜側におけるレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1は、ほぼ一定である。このため、熱固定領域20Cでは、リンク装置10Rの膜側におけるリンク機構11のピッチP1はほぼ一定であり、従って、リンク装置10Rの膜側におけるクリップ21のピッチP2もほぼ一定である。また、熱固定領域20Cでは、リンク装置10Lの膜側おけるレール13とレール14との間の間隔(離間距離)L1も、ほぼ一定である。このため、熱固定領域20Cでは、リンク装置10Lの膜側におけるリンク機構11のピッチP1もほぼ一定であり、従って、リンク装置10Lの膜側におけるクリップ21のピッチP2もほぼ一定である。
【0049】
従って、熱固定領域20Cでは、樹脂膜8は、TD方向にもMD方向にも引き伸ばされない。別の見方をすると、熱固定領域20Cでは、樹脂膜8に対するTD方向の延伸処理も、MD方向の延伸処理も行われない。
【0050】
上述のように、予熱領域20Aでは、リンク装置10Rのレール13,14とリンク装置10Lのレール13,14との間の間隔(TD方向の離間距離)L2は、ほぼ一定である。その後、延伸領域20Bでは、リンク装置10Rのレール13,14とリンク装置10Lのレール13,14との間の間隔(TD方向の離間距離)L2は、徐々に拡大する。そして、熱固定領域20Cでは、リンク装置10Rのレール13,14とリンク装置10Lのレール13,14との間の間隔(TD方向の離間距離)L2は、再び一定に維持される。つまり、リンク装置10Rのレール13,14とリンク装置10Lのレール13,14との間の間隔(TD方向の離間距離)L2は、熱固定領域20Cで最大となる。
【0051】
<リンク機構の構成>
図5は、リンク装置10を構成するリンク機構11の幾つかを拡大して示す斜視図である。それぞれのリンク機構11は、クリップ21に加えて、上段リンクプレート22及び下段リンクプレート23を備えている。また、それぞれのリンク機構11は、外側レールホルダ24a及び内側レールホルダ24bを備えており、これらはベース部材25を介して連結されている。
【0052】
外側レールホルダ24aは、レール14上に配置され、レール14に沿って移動(走行)する。一方、内側レールホルダ24bは、レール13上に配置され、レール13に沿って移動(走行)する。
【0053】
なお、以下の説明では、外側レールホルダ24aと内側レールホルダ24bとを特に区別しない場合、これらを“レールホルダ24”と総称する場合がある。
【0054】
<レールホルダ>
レールホルダ24は、ローラ保持部31と、ローラ保持部31の長手方向中央に設けられたシャフト32と、を有する。外側レールホルダ24aのローラ保持部31は、レール14上に配置されており、レール14を横断している。この結果、レール14上に配置されているローラ保持部31の長手方向一端側は、レール14の外側に突出し、ローラ保持部31の長手方向他端側は、レール14の内側(レール13と対向する側)に突出している。
【0055】
一方、内側レールホルダ24bのローラ保持部31は、レール13上に配置されており、レール13を横断している。この結果、レール13上に配置されているローラ保持部31の長手方向一端側は、レール13の外側(レール14と対向する側)に突出し、ローラ保持部31の長手方向他端側は、レール13の内側に突出している。
【0056】
外側レールホルダ24aのシャフト32は、上段リンクプレート22,下段リンクプレート23及びベース部材25の長手方向一端側(基端側)を貫通している。別の見方をすると、上段リンクプレート22,下段リンクプレート23及びベース部材25の基端側は、外側レールホルダ24aのシャフト32によって回転可能に連結されている。
【0057】
一方、内側レールホルダ24bのシャフト32は、ベース部材25の長手方向他端側(先端側)を貫通して当該ベース部材25から突出している。ベース部材25から突出している内側レールホルダ24bのシャフト32は、隣接する他のリンク機構11の上段リンクプレート22及び下段リンクプレート23の長手方向一端側(先端側)を貫通している。別の見方をすると、1つのリンク機構11のベース部材25の先端側と、隣接する他の1つのリンク機構11の上段リンクプレート22及び下段リンクプレート23の先端側とは、内側レールホルダ24bのシャフト32によって回転可能に連結されている。
【0058】
言い換えれば、外側レールホルダ24aのシャフト32は、上段リンクプレート22,下段リンクプレート23及びベース部材25の基端側の回転軸である。また、内側レールホルダ24bのシャフト32は、上段リンクプレート22,下段リンクプレート23及びベース部材25の先端側の回転軸である。
【0059】
別の見方をすると、上段リンクプレート22,下段リンクプレート23及びベース部材25の基端側は、外側レールホルダ24aによって回転可能に支持され、上段リンクプレート22,下段リンクプレート23及びベース部材25の先端側は、内側レールホルダ24bによって回転可能に支持されている。
【0060】
<クリップ>
クリップ21は、それぞれのリンク機構11のベース部材25の基端側に設けられている。クリップ21は、本体部21a,把持部21b,バネ部21cなどを有している。本体部21aは、ベース部材25の基端側に固定されている。把持部21bは、本体部21aに上下動可能に取り付けられている。バネ部21cは、把持部21bが下方に向かって動作するように、把持部21bを付勢している。バネ部21cの付勢によって把持部21bが下方に向かって動作すると、本体部21aと把持部21bとの間に樹脂膜8が挟まれる。つまり、クリップ21によって樹脂膜8が把持される。一方、バネ部21cの付勢に抗して把持部21bが上方に向かって動作すると、樹脂膜8の把持が解除される。
【0061】
<ローラ保持部>
それぞれのレールホルダ24のローラ保持部31は、ベース部材25の下方に突出しているシャフト32の下端に、回転可能に取り付けられている。より特定的には、それぞれのローラ保持部31は、シャフト32の下端に軸受を介して取り付けられている。
【0062】
既述のとおり、外側レールホルダ24aのローラ保持部31は、レール14を横断してレール14の両側に突出している。一方、内側レールホルダ24bのローラ保持部31は、レール13を横断してレール13の両側に突出している。
【0063】
レール14の外側に突出している外側レールホルダ24aのローラ保持部31の一端側には、シャフト(ローラシャフト)が設けられている。また、レール14の内側に突出している外側レールホルダ24aのローラ保持部31の他端側には、他のシャフト(他のローラシャフト)が設けられている。それぞれのローラシャフトの上部は、ローラ保持部31に設けられている取付け孔に圧入されている。
【0064】
同様に、レール13の外側に突出している内側レールホルダ24bのローラ保持部31の一端側には、シャフト(ローラシャフト)が設けられている。また、レール13の内側に突出している内側レールホルダ24bのローラ保持部31の他端側には、他のシャフト(他のローラシャフト)が設けられている。それぞれのローラシャフトの上部は、ローラ保持部31に設けられている取付け孔に圧入されている。
【0065】
<ガイドローラ>
レールホルダ24は、レール13,14に沿って移動する複数のローラを有している。より特定的には、外側レールホルダ24aのローラ保持部31の下方に、レール14を挟んで対向する一対のガイドローラ41,42が回転可能に設けられている。同様に、内側レールホルダ24bのローラ保持部31の下方に、レール13を挟んで対向する一対のガイドローラ41,42が回転可能に設けられている。それぞれのガイドローラ41,42は、軸方向両端が開口した筒形の形状を有しており、上端にフランジが一体成形されている。
【0066】
外側レールホルダ24aのガイドローラ41は、ローラ保持部31の一側から下方に向かって突出しているローラシャフトの下部に、回転可能に取り付けられている。外側レールホルダ24aのガイドローラ42は、ローラ保持部31の他側から下方に向かって突出している他のローラシャフトの下部に、回転可能に取り付けられている。
【0067】
つまり、外側レールホルダ24aの2つのガイドローラ41,42は、ローラ保持部31によって回転可能に保持されている。そして、ガイドローラ41は、レール14の一方の側面(外側面15)に接触しながらレール14の外側を移動し、ガイドローラ42は、レール14の他方の側面(内側面16)に接触しながらレール14の内側を移動する。
【0068】
内側レールホルダ24bのガイドローラ41は、ローラ保持部31の一側から下方に向かって突出しているローラシャフトの下部に、回転可能に取り付けられている。内側レールホルダ24bのガイドローラ42は、ローラ保持部31の他側から下方に向かって突出している他のローラシャフトの下部に、回転可能に取り付けられている。
【0069】
つまり、内側レールホルダ24bの2つのガイドローラ41,42は、ローラ保持部31によって回転可能に保持されている。そして、ガイドローラ41は、レール13の一方の側面(外側面15)に接触しながらレール13の外側を移動し、ガイドローラ42は、レール13の他方の側面(内側面16)に接触しながらレール13の内側を移動する。
【0070】
<レール>
既述のとおり、リンク機構11のガイドローラ41,42は、レール13,14の側面に接触しながら移動する。このため、レール13,14は、ガイドローラ41,42との接触によって徐々に摩耗する。従って、定期的に、或いは必要に応じてレール13,14の全部または一部を交換する必要がある。別の見方をすると、レール13,14の摩耗を抑制することができれば、リンク機構11を含む延伸機5の寿命を延ばすことができる。
【0071】
そこで、本実施の形態のレール13,14は、油膜形成方法を実施可能な構造を有している。本実施の形態に係る油膜形成方法では、レール13,14の表面(特に、ガイドローラ41,42が接触する外側面15及び内側面16)に油膜を形成するための潤滑油がレール13,14に供給される。レール13,14に供給された潤滑油は、レール13,14の内部に設けられている油路を通してレール13,14に表面に設けられている複数の吐出口に送られ、それら吐出口から溢れ出る。吐出口から溢れ出た潤滑油は、レール13,14の表面に拡がって油膜を形成する。
【0072】
なお、レール13,14は、少なくとも油膜形成方法の実施との関係では同一の構造を有している。そこで、レール14の構造について説明することにより、レール13の構造についても明らかにする。
【0073】
<部分レール>
図6は、レール14を構成する部分レール14aの斜視図である。図7は部分レール14aの平面図であり、図8は部分レール14aの側面図であり、図9は部分レール14aの端面図である。なお、図6図7では、図8図9に示されているガイドローラ41,42の図示が省略されている。
【0074】
既述のとおり、レール14は、連結された複数本の部分レール14aによって、予熱領域20A,延伸領域20B,熱固定領域20Cを巡る環状に形成されている。図6図9に示されている部分レール14aは、熱固定領域20Cに配置されている部分レールの1つである。言い換えれば、図6図9に示されている部分レール14aは、レール14の一部の区間(熱固定領域の区間)を形成している部分レールの1つである。
【0075】
図7に示されている部分レール14aの長さLは1200mm、幅Wは38mmである。また、図8に示されている部分レール14aの高さHは30mmである。もっとも、部分レール14aの寸法は特に限定されず、適宜変更することができる。
【0076】
<油路>
部分レール14aの内部には油路50が設けられている。図10は、部分レール14aの内部に設けられている油路50を模式的に示す説明図である。
【0077】
油路50は、主油路51,複数の分岐油路52及び給油路53を含んでいる。より特定的には、油路50は、1本の主油路51と、8本の分岐油路52と、1本の給油路53とから構成されている。
【0078】
主油路51は、部分レール14aをその長手方向に貫く貫通孔によって形成されている。この結果、主油路51の一端は、部分レール14aの一方の端面に開口しており、主油路51の他端は、部分レール14aの他方の端面に開口している。もっとも、主油路51の両端には穴付きの止めねじ51aが装着されている。つまり、主油路51の両端は閉塞されている。
【0079】
それぞれの分岐油路52は、主油路51の異なる2以上の位置から斜め上向きに延びる複数の貫通孔によって形成されている。つまり、それぞれの分岐油路52は、主油路51に連通している。また、4本の分岐油路52は、主油路51の一側に配置されて分岐油路群52Aを構成している。一方、他の4本の分岐油路52は、主油路51の他側に配置されて分岐油路群52Bを構成している。
【0080】
給油路53は、主油路51の中央または略中央から下向きに延びる貫通孔によって形成されている。つまり、給油路53は、主油路51に連通している。
【0081】
<吐出口>
部分レール14aの表面には複数の吐出口60が設けられている。より特定的には、部分レール14aの表面に8つの吐出口60が設けられている。一部の吐出口60は、部分レール14aの幅方向一側に配置され、他の一部の吐出口60は、部分レール14aの幅方向他側に配置されている。
【0082】
より特定的には、部分レール14aの外側面15と上面17との間の角部61に4つの吐出口60が設けられている。また、部分レール14aの内側面16と上面17との間の角部62に他の4つの吐出口60が設けられている。
【0083】
角部61に設けられている4つの吐出口60は、部分レール14aの長手方向に沿って一列に配置されて吐出口群60Aを構成している。また、角部62に設けられている4つの吐出口60は、部分レール14aの長手方向に沿って一列に配置されて吐出口群60Bを構成している。
【0084】
別の見方をすると、部分レール14aの2つの角部61,62には、部分レール14aの長手方向に沿って並ぶ複数の吐出口60からなる吐出口列が設けられている。
【0085】
分岐油路群52Aに属する分岐油路52は、吐出口群60Aに属する吐出口60に連通している。また、分岐油路群52Bに属する分岐油路52は、吐出口群60Bに属する吐出口60に連通している。
【0086】
別の見方をすると、吐出口群60Aに属する吐出口60は、分岐油路群52Aに属する分岐油路52を介して主油路51と繋がっている。また、吐出口群60Bに属する吐出口60は、分岐油路群52Bに属する分岐油路52を介して主油路51と繋がっている。
【0087】
<供給口>
部分レール14aの表面には供給口70が設けられている。より特定的には、部分レール14aの下面18に供給口70が設けられており、この供給口70に給油路53が連通している。別の見方をすると、供給口70は、給油路53を介して主油路51と繋がっている。
【0088】
なお、図10に示されている主油路51の直径D1は4.0mm、分岐油路52の直径D2は1.5mm、給油路53の直径D3は6.0mmである。もっとも、主油路51,分岐油路52及び給油路53の直径は特に限定されず、適宜変更することができる。
【0089】
供給口70に供給された潤滑油は、部分レール14aの内部に設けられている油路50を通してそれぞれの吐出口60に送られる(分配される)。より特定的には、供給口70に供給された潤滑油は、給油路53を通って主油路51の中央または略中央に流入する。主油路51に流入した潤滑油の一部は、主油路51の一端側に向かって流れ、主油路51に流入した潤滑油の他の一部は、主油路51の他端側に向かって流れる。この結果、主油路51内が潤滑油で満たされる。
【0090】
その後、主油路51内を満たした潤滑油は、複数の分岐油路52に流入し、それぞれの分岐油路52が連通している吐出口60に到達する。吐出口60に到達した潤滑油は、吐出口60の外に溢れ出す。
【0091】
本実施の形態では、部分レール14aの側面(外側面15,内側面16)と上面17との間の角部61,62に複数の吐出口60が設けられている。別の見方をすると、それぞれの吐出口60は、部分レール14aの外側面15又は内側面16の上端又はその近傍に設けられている。従って、吐出口60から溢れ出た潤滑油は、外側面15や内側面16上をこれらの下端に向かって流れ落ちる。この結果、外側面15及び内側面16に油膜が形成される。
【0092】
さらに、本実施の形態では、複数の吐出口60が外側面15及び内側面16の上端又はその近傍に一列に並べられている。従って、外側面15及び内側面16の全面または略全面に潤滑油が効率的に供給される。別の見方をすると、外側面15及び内側面16の全面または略全面に、迅速かつ均一に潤滑油が供給される。
【0093】
加えて、本実施の形態では、角部61,62に複数のテーパ部63が等間隔で形成されており、それぞれのテーパ部63上に吐出口60が設けられている。それぞれのテーパ部63は、部分レール14aの側面(外側面15,内側面16)と上面17とに跨る斜面である。従って、吐出口60から溢れ出た潤滑油は、テーパ部63の傾斜によって外側面15及び内側面16に円滑に案内される。
【0094】
なお、部分レール14aの外側面15及び内側面16が、連結された複数の部分レール14aによって構成されるレール14の外側面15及び内側面16に相当することは明らかである。
【0095】
ここで、レール14を構成している複数の部分レール14aは、互いの端面同士が突き合わされた状態で連結されている。別の見方をすると、2つの部分レール14aの端面同士が突き合わされている箇所は、それら部分レール14aの継ぎ目である。そこで、2つの部分レール14a間の継ぎ目からの潤滑油の漏洩を防止する策を講じれば、止めねじ51aを省略し得る。また、止めねじ51aは、ゴム栓や樹脂栓などの他の封止部材に置換することができる。
【0096】
<部分レールの一変形例>
図11は、部分レール14aの一変形例を示す斜視図である。図11に示されている部分レール14aは、これまでに説明した部分レール14aと同一の基本構造を備えている。但し、図11に示されている部分レール14aでは、上面17の縁部に吐出口60が設けられている。
【0097】
より特定的には、上面17の幅方向一側に位置する縁部64に複数の吐出口60が設けられ、上面17の幅方向他側に位置する縁部65に複数の吐出口60が設けられている。
【0098】
縁部64に設けられている4つの吐出口60は、部分レール14aの長手方向に沿って一列に配置されて吐出口群60Aを構成している。また、縁部65に設けられている4つの吐出口60は、部分レール14aの長手方向に沿って一列に配置されて吐出口群60Bを構成している。
【0099】
図11に示されている部分レール14aは、これまでに説明した部分レール14aと同じく、レール14を構成し得る。また、図11に示されている部分レール14aと同一の部分レールは、レール13を構成し得る。
【0100】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態または実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0101】
例えば、油路50及び吐出口60は、レール13,14の熱固定領域区間以外の区間や、熱固定領域区間を含む全区間に設けられていてもよい。もっとも、隣り合うリンク機構11の間のピッチP1は、熱固定領域20Cで最大となる。この結果、レール13,14がガイドローラ41,42から受ける力は、熱固定領域区間で最大となる。別の見方をすると、レール13,14の熱固定領域区間は、最も摩耗しやすい区間である。
【0102】
よって、レール13,14の摩耗を低コストで効果的に抑制する観点からは、熱固定領域区間に油路50及び吐出口60を設けることが好ましい。
【0103】
吐出口60及び分岐油路52の数は適宜増減させることができる。また、吐出口群または吐出口列を構成する複数の吐出口60は、等ピッチで並んでいなくてもよい。
【0104】
他の一実施の形態では、2本の分岐油路52が一箇所で主油路51に連通する。この場合、2本の分岐油路52は、互いに離間しながら主油路51から異なる2つの吐出口60へ向かって延びる。
【0105】
他の一実施の形態では、レール13,14の外側面15及び内側面16に複数の溝が形成される。より特定的には、レール13,14の全区間または一部の区間(例えば、熱固定領域区間)の外側面15および内側面16に、レール13,14の長手方向に対して傾斜した溝が形成される。
【0106】
溝は、吐出口60から溢れ出して外側面15及び内側面16に広がった潤滑油の一部を保持する。この結果、潤滑油がレール13,14の外側面15及び内側面16に長期間に亘って留まる。つまり、レール13,14の表面に、油膜が長期間に亘って形成され続ける。
【0107】
他の一実施の形態では、レールホルダ24に、レール13,14の上面17に接触しながら移動するローラ(支持ローラ)が設けられる。この場合、油路50を通して吐出口60に送られた潤滑剤によって形成される油膜は、支持ローラとの接触によるレール13,14の摩耗抑制にも寄与する。
【0108】
他の一実施の形態では、レールホルダ24に3つのガイドローラが設けられる。例えば、ガイドローラ41の前方または後方に追加のガイドローラが設けられる。追加されたガイドローラは、径方向の一部がガイドローラ41と重なっていてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 薄膜製造システム
2 押出装置
3 Tダイ
4 原反冷却装置
5 延伸機
6 引き取り装置
7 巻き取り装置
8 樹脂膜
9 熱処理部
10,10R,10L リンク装置
11 リンク機構
13,14 レール
13a,14a 部分レール
15 外側面
16 内側面
17 上面
18 下面
19a,19b,19c スプロケット
20A 予熱領域
20B 延伸領域
20C 熱固定領域
21 クリップ
21a 本体部
21b 把持部
21c バネ部
22 上段リンクプレート
23 下段リンクプレート
24 レールホルダ
24a 外側レールホルダ
24b 内側レールホルダ
25 ベース部材
31 ローラ保持部
32 シャフト
41,42 ガイドローラ
50 油路
51 主油路
51a 止めねじ
52 分岐油路
52A,52B 分岐油路群
53 給油路
60 吐出口
60A,60B 吐出口群
61,62 角部
63 テーパ部
64 縁部
70 供給口
L1,L2 離間距離
P1,P2 ピッチ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11