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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014803
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】サスペンション機構
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/00 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B60B33/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023117521
(22)【出願日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2022116877
(32)【優先日】2022-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勅使河原 誠一
(57)【要約】
【課題】装置全体を大きくすることなく、簡素な構成で低床化可能なサスペンション機構を提供する。
【解決手段】サスペンション機構1は、車体の底部を構成する板状の第一基台10と、下面が第一基台10の上面に対向するように配置される板状の第二基台20と、第一基台10及び第二基台20の一方に固定され、第一基台10及び第二基台20の他方に形成された貫通孔を貫通するよう他方側に向かって直立する軸部材12と、車軸が第二基台20より上方に位置し、かつ第二基台20に支持される駆動輪40と、第二基台20に支持され駆動輪40を駆動する駆動源(モータ41及び伝達機構42)と、軸部材12が内周側を挿通する筒状であって他方と軸部材12の一方側とは反対側の端部との間に介在する弾性体30と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の底部を構成する板状の第一基台と、
下面が前記第一基台の上面に対向するように配置される板状の第二基台と、
前記第一基台及び前記第二基台の一方に固定され、前記第一基台及び前記第二基台の他方に形成された貫通孔を貫通するよう前記他方側に向かって直立する軸部材と、
車軸が前記第二基台より上方に位置し、かつ前記第二基台に支持される駆動輪と、
前記第二基台に支持され前記駆動輪を駆動する駆動源と、
前記軸部材が内周側を挿通する筒状であって前記他方と前記軸部材の前記一方側とは反対側の端部との間に介在する弾性体と、
を備える、サスペンション機構。
【請求項2】
前記軸部材の前記一方側とは反対側の端部と前記弾性体との間に介在する第一制動部材と、
前記第一基台及び前記第二基台の前記他方と前記弾性体との間に介在し、前記第一制動部材との間の距離を所定量以上に維持する第二制動部材と、
を備える、請求項1に記載のサスペンション機構。
【請求項3】
車体の底部を構成する板状の第一基台と、
下面が前記第一基台の上面と対向するように配置される板状の第二基台と、
前記第一基台及び前記第二基台の一方に固定され、前記第一基台及び前記第二基台の他方に形成された貫通孔を貫通するよう前記他方側に向かって直立する軸部材と、
車軸が前記第二基台より上方に位置し、かつ前記第二基台に支持される駆動輪と、
前記第二基台に支持され前記駆動輪を駆動する駆動源と、
前記軸部材が内周側を挿通する筒状であって前記第一基台と前記第二基台との間に介在する弾性体と、
を備える、サスペンション機構。
【請求項4】
前記第一基台と前記弾性体との間に介在する第一制動部材と、
前記第二基台と前記弾性体との間に介在し、前記第一制動部材との間の距離を所定量以上に維持する第二制動部材と、
を備える、請求項3に記載のサスペンション機構。
【請求項5】
前記弾性体は、引張コイルばね、又は粘弾性材料で形成される円筒体を含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載のサスペンション機構。
【請求項6】
前記第一基台及び前記第二基台は、前記駆動輪の一部を下方に露出させるための開口を有する枠形状であり、
前記軸部材は、前記開口を挟むように前記駆動輪の位置に対して均等に複数設けられる、
請求項1から4のいずれか1項に記載のサスペンション機構。
【請求項7】
前記軸部材は、前記駆動輪の車軸に対して直交する方向に前記開口を挟んで2つずつ合計4つ設けられる、
請求項6に記載のサスペンション機構。
【請求項8】
前記駆動源は、
前記駆動輪の車軸と平行な出力軸から回転駆動力を出力するモータと、
前記出力軸の回転駆動力を前記駆動輪の車軸に伝達する伝達機構と、
を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のサスペンション機構。
【請求項9】
前記駆動輪が停止している状態において、前記第一基台の上面と前記第二基台の下面との間に間隙を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のサスペンション機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション機構に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送物を積載して床面上を走行する搬送器具に接続し、搬送器具の走行を実現又は補助する無人搬送車(AGV;Auto Guided Vehicle)、自律走行搬送ロボット(AMR;Autonomous Mobile Robot)、搬送補助駆動装置等の搬送補助装置が知られている。
【0003】
このような搬送補助装置では、走行時の振動を低減させ、搬送器具の走行を安定させるために、車輪にサスペンション機構が設けられることが好ましい。特許文献1には、中央では駆動輪を支持し、一方の端部では基体に回転軸で軸支され、他方の端部ではスプリングで基体に吊り下げられたトレーリングアームを備えたサスペンション機構が開示されている。また、特許文献2には、車体に対して垂直方向のみ車輪が移動可能に保持するガイドと、垂直方向の弾発力を車輪に印加する弾発手段と、によって車体と車輪との間を支持するサスペンション機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-224654号公報
【特許文献2】特開2020-189564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、搬送器具の下に潜り込んで接続する搬送補助装置では、できるかぎり低床化されることが好ましい。しかしながら、特許文献1及び特許文献2は、車体の基台より下方に車輪が位置し、これらの間をサスペンション機構によって接続しているため、車高が高くなってしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡素な構成で低床化可能なサスペンション機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るサスペンション機構は、車体の底部を構成する板状の第一基台と、下面が前記第一基台の上面に対向するように配置される板状の第二基台と、前記第一基台及び前記第二基台の一方に固定され、前記第一基台及び前記第二基台の他方に形成された貫通孔を貫通するよう前記他方側に向かって直立する軸部材と、車軸が前記第二基台より上方に位置し、かつ前記第二基台に支持される駆動輪と、前記第二基台に支持され前記駆動輪を駆動する駆動源と、前記軸部材が内周側を挿通する筒状であって前記他方と前記軸部材の前記一方側とは反対側の端部との間に介在する弾性体と、を備える。
【0008】
サスペンション機構は、駆動輪の車軸が上面側で支持される第二基台の上下動を軸部材で案内するとともに、弾性体で吸収する。したがって、車体の基台と基台の下方に配置される車輪との間に介在する従来のサスペンション機構と比較して、駆動輪が接地する路面から第一基台までの高さを低くでき、サスペンション機構を搭載する車両の低床化が実現できる。また、このようなサスペンション機構は、直動を案内する軸部材及び弾性体による簡素な構成で実現できる。
【0009】
本発明の一態様に係るサスペンション機構は、前記軸部材の前記一方側とは反対側の端部と前記弾性体との間に介在する第一制動部材と、前記第一基台及び前記第二基台の前記他方と前記弾性体との間に介在し、前記第一制動部材との間の距離を所定量以上に維持する第二制動部材と、を備える。
【0010】
これにより、サスペンション機構の過剰な変位を防止することができるため、サスペンション機構のみでは支えきれない大荷重が作用しても、第一制動部材及び第二制動部材によって支えることができる。したがって、サスペンション機構の弾性体の永久変形等による機能低下の防止や、過剰な変位によるサスペンション機構と搬送装置の内部部品との干渉防止に寄与する。
【0011】
本発明の一態様に係るサスペンション機構は、車体の底部を構成する板状の第一基台と、下面が前記第一基台の上面と対向するように配置される板状の第二基台と、前記第一基台及び前記第二基台の一方に固定され、前記第一基台及び前記第二基台の他方に形成された貫通孔を貫通するよう前記他方側に向かって直立する軸部材と、車軸が前記第二基台より上方に位置し、かつ前記第二基台に支持される駆動輪と、前記第二基台に支持され前記駆動輪を駆動する駆動源と、前記軸部材が内周側を挿通する筒状であって前記第一基台と前記第二基台との間に介在する弾性体と、を備える。
【0012】
サスペンション機構は、駆動輪の車軸が上面側で支持される第二基台の上下動を軸部材で案内するとともに、弾性体で吸収する。したがって、車体の基台と基台の下方に配置される車輪との間に介在する従来のサスペンション機構と比較して、駆動輪が接地する路面から第一基台までの高さを低くでき、サスペンション機構を搭載する車両の低床化が実現できる。また、このようなサスペンション機構は、直動を案内する軸部材及び弾性体による簡素な構成で実現できる。
【0013】
本発明の一態様に係るサスペンション機構は、前記第一基台と前記弾性体との間に介在する第一制動部材と、前記第二基台と前記弾性体との間に介在し、前記第一制動部材との間の距離を所定量以上に維持する第二制動部材と、を備える。
【0014】
これにより、サスペンション機構の過剰な変位を防止することができるため、サスペンション機構のみでは支えきれない大荷重が作用しても、第一制動部材及び第二制動部材によって支えることができる。したがって、サスペンション機構の弾性体の永久変形等による機能低下の防止や、過剰な変位によるサスペンション機構と搬送装置の内部部品との干渉防止に寄与する。
【0015】
本発明の一態様に係るサスペンション機構において、前記弾性体は、引張コイルばね、又は粘弾性材料で形成される円筒体を含む。
【0016】
これにより、第一基台及び第二基台の他方と軸部材の一方側とは反対側の端部との間、あるいは第一基台と第二基台との間に介在し、かつこれらの間の上下動を吸収する手段を、簡単な構造で実現できる。
【0017】
本発明の一態様に係るサスペンション機構において、前記第一基台及び前記第二基台は、前記駆動輪の一部を下方に露出させるための開口を有する枠形状であり、前記軸部材は、前記開口を挟むように前記駆動輪の位置に対して均等に複数設けられる。
【0018】
これにより、駆動輪が接地する路面の凹凸等による振動を、複数の軸部材に対応する弾性体で均等に吸収できるので、サスペンション機構が搭載される車両の安定的な走行に寄与する。
【0019】
本発明の一態様に係るサスペンション機構において、前記軸部材は、前記駆動輪の車軸に対して直交する方向に前記開口を挟んで2つずつ合計4つ設けられる。
【0020】
これにより、駆動輪が接地する路面の凹凸等による振動を、4つの軸部材に対応する弾性体で均等に吸収できるので、サスペンション機構が搭載される車両の安定的な走行に寄与する。
【0021】
本発明の一態様に係るサスペンション機構において、前記駆動源は、前記駆動輪の車軸と平行な出力軸から回転駆動力を出力するモータと、前記出力軸の回転駆動力を前記駆動輪の車軸に伝達する伝達機構と、を含む。
【0022】
これにより、駆動輪の車軸方向にモータが配置される構成と比較して、車軸方向のサイズを小さくできる。
【0023】
本発明の一態様に係るサスペンション機構において、前記駆動輪が停止している状態において、前記第一基台の上面と前記第二基台の下面との間に間隙を有する。
【0024】
これにより、サスペンション機構が搭載される車両の走行時における振動を、弾性体の圧縮及び伸長によって吸収し、第一基台及び第二基台が互い接近又は離隔する際に、第一基台と第二基台とが衝突することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、簡素な構成で低床化可能なサスペンション機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施形態に係るサスペンション機構の構成例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すサスペンション機構の分解図である。
図3図3は、図1に示すサスペンション機構を備える適用形態の搬送装置の側面図である。
図4図4は、図3に示す搬送装置におけるサスペンション機構の配置を示す平面図である。
図5図5は、図3に示す搬送装置100による搬送器具200の接続前の状態を示す側面図である。
図6図6は、第1変形例に係るサスペンション機構の簡易模式図である。
図7図7は、第2変形例に係るサスペンション機構の簡易模式図である。
図8図8は、第3変形例に係るサスペンション機構の簡易模式図である。
図9図9は、第4変形例に係るサスペンション機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0028】
[実施形態]
まず、実施形態に係るサスペンション機構1の構成について、図を参照して説明する。なお、実施形態を示す図において、発明に係る構成要素以外の構成要素は、適宜省略して図示される。図1は、実施形態に係るサスペンション機構1の構成例を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すサスペンション機構1の分解図である。
【0029】
サスペンション機構1は、車両(例えば、後述の図3及び図4に示す搬送装置100)に搭載され、走行時における路面の凹凸等による車輪の上下動を吸収することで、車体の振動を抑制し、水平姿勢を維持させる機構である。サスペンション機構1は、互いに略水平に配置される第一基台10と、第二基台20と、の間の振動を吸収するように構成される。サスペンション機構1は、第一基台10と、軸部材12と、第二基台20と、弾性体30と、駆動輪40と、モータ41及び伝達機構42(駆動源)と、を備える。
【0030】
第一基台10は、サスペンション機構1が搭載される車両の車体の底部を構成する板状のフレームである。第一基台10は、例えば、サスペンション機構1を後述の図3及び図4に示す搬送装置100に適用する場合、搬送装置100の車体110の底面を構成する板材に相当する。第一基台10は、後述の駆動輪40の一部を第一基台10より下方に露出させるための開口11を有する。すなわち、第一基台10は、平面視において、枠形状を含む。また、第一基台10の上面側には、複数の軸部材12が設けられる。
【0031】
軸部材12は、第一基台10から第二基台20側、すなわち上方に直立し、下端部が第一基台10の上面に固定して設けられる円柱状の軸部材である。軸部材12は、例えば、スタットボルトである。軸部材12は、開口11を挟むように少なくとも2つ設けられる。軸部材12は、実施形態において、開口11の前後に2つずつ、合計4つ設けられる。なお、ここでいう前後とは、水平かつ後述の駆動輪40の車軸40aに対して直交する方向を指す。複数の軸部材12は、後述の駆動輪40の位置に対して均等に設けられることが好ましい。
【0032】
軸部材12は、後述の弾性体30及び一対のばね押さえ31と、直動案内機構24と、第二基台20に形成された貫通孔と、に上方から順に挿通する。軸部材12は、弾性体30、一対のばね押さえ31、直動案内機構24、及び第二基台20の軸方向(図2の一点鎖線で示す方向)への移動を案内し、軸方向に交差する方向への移動を規制する。軸部材12は、外径がばね押さえ31の内径より大きい鍔部を上端に有し、ばね押さえ31が上方に抜けることを制止している。
【0033】
第二基台20は、第一基台10より上方に位置し、下面が第一基台10の上面と対向する板状のフレームである。第二基台20には、後述の駆動輪40の一部を第一基台10より下方に露出させるための開口21と、複数の貫通孔と、が形成されている。開口21は、平面視において、第一基台10の開口11と同一の位置に設けられる。貫通孔は、軸部材12に対応する位置にそれぞれ形成され、対応する軸部材12の通過を許容する。また、第二基台20の上面側には、一対のシャフトホルダ22と、モータ支持部23と、複数の直動案内機構24と、が設けられる。
【0034】
一対のシャフトホルダ22は、開口21を挟んで対向するように設けられ、第二基台20の上面に固定される。シャフトホルダ22の間には、駆動輪40が配置される。シャフトホルダ22は、駆動輪40の車軸40aを、第二基台20より上方の位置において、第二基台20に対して水平姿勢に支持する。一対のシャフトホルダ22は、駆動輪40の車軸40aの両端部をそれぞれ支持する。
【0035】
モータ支持部23は、第二基台20の上面に固定される。モータ支持部23は、後述のモータ41の筐体を固定し、モータ41の出力軸41aが駆動輪40の車軸40aと平行になるように支持する。
【0036】
直動案内機構24は、軸部材12に沿って軸部材12の軸方向に直動移動する円筒状の転がり軸受(リニアブッシュ)である。直動案内機構24は、円筒の軸心が、第二基台20の貫通孔の軸心に一致するように、第二基台20の上面側に固定して設けられる。第二基台20は、第二基台20に形成された貫通孔及び直動案内機構24が、第一基台10に設けられた軸部材12によって案内されて、軸部材12の軸方向に直動移動することで、第一基台10に対して、垂直に接近又は離隔する方向に移動可能である。
【0037】
弾性体30は、筒状に形成され、内周側を軸部材12が挿通する。弾性体30は、軸部材12の軸方向への移動を許容する。弾性体30は、第二基台20の上面側と軸部材12の第一基台10側とは反対側の端部である上端との間に介在する。弾性体30は、例えば、圧縮コイルばね、又はゴム等の粘弾性材料で形成される円筒体を含む。
【0038】
弾性体30は、実施形態において、上端側及び下端側に一対のばね押さえ31を有する。ばね押さえ31は、環状に形成され、内周側を軸部材12が挿通する。一方のばね押さえ31は、弾性体30の上端と、軸部材12の上端の鍔部との間に配置される。他方のばね押さえ31は、弾性体30の下端と、直動案内機構24の上端との間に配置される。
【0039】
弾性体30は、軸部材12及び一方のばね押さえ31を介して第一基台10と接続する。弾性体30は、直動案内機構24及びばね押さえ31を介して第二基台20と接続する。これにより、弾性体30は、第一基台10と第二基台20との間の垂直方向への近接及び離隔による衝撃を吸収する。
【0040】
駆動輪40は、車軸40a回りに回動可能であるように一対のシャフトホルダ22に支持される。駆動輪40は、例えば、全方向移動が可能なオムニホイール、又はメカナムホイールであってもよい。駆動輪40には、車軸40a回りの回転駆動力がモータ41から伝達される。
【0041】
モータ41は、例えば、サスペンション機構1が搭載される車両の車体側に設けられたモータドライバによって制御され、バッテリ等から電力が供給されることにより、回転駆動力を発生させる。モータ41は、例えば、BLDC(Brush-Less Direct-Current)モータを含む。モータ41は、出力軸41aが駆動輪40の車軸40aと平行となるように、筐体がモータ支持部23に支持され、第二基台20の上面側に固定される。
【0042】
伝達機構42は、モータ41の出力軸41aの回転を、駆動輪40の車軸40aへ伝達する。伝達機構42は、実施形態において、プーリ43、44と、ベルト45と、を含む。プーリ43は、駆動輪40の車軸40aに対して軸心が一致するように固定される。プーリ44は、モータ41の出力軸41aに対して軸心が一致するように固定される。ベルト45は、プーリ43とプーリ44との間に掛け回される無端のベルトである。ベルト45は、プーリ44がモータ41の出力軸41aとともに軸心回りに回動することによって、プーリ43及びプーリ44の間を移動し、プーリ43を駆動輪40の車軸40aとともに回動させる。プーリ43、44は、例えば、タイミングプーリであり、ベルト45は、例えば、タイミングベルトである。伝達機構42は、ベルト45の代わりにチェーンを有していてもよい。
【0043】
次に、サスペンション機構1が搭載される車両が凹凸のある路面を走行する際のサスペンション機構1の挙動について説明する。平常時において、弾性体30は、車両側からかかる荷重、すなわち第一基台10にかかる荷重によって、軸部材12を介して、上方から荷重を受けている。また、弾性体30は、駆動輪40が路面から受ける反力によって、シャフトホルダ22、第二基台20及び直動案内機構24を介して、下方から荷重を受けている。これにより、弾性体30は、上下方向から圧縮されている。
【0044】
駆動輪40が路面の凸状部を走行すると、駆動輪40及びシャフトホルダ22とともに第二基台20が上方に変位し、上方向の加速度が発生することで、直動案内機構24を介して弾性体30の下端部に上方への圧縮荷重がかかる。弾性体30は、下方から受ける荷重に対して圧縮することで、駆動輪40が路面から受ける衝撃を吸収する。これにより、弾性体30の上端部における上方向の加速度は、弾性体30の下端部における上方向の加速度に対して減少するため、軸部材12及び第一基台10にかかる加速度が、駆動輪40にかかる加速度に対して減少する。
【0045】
駆動輪40が路面の凹状部を走行すると、駆動輪40及びシャフトホルダ22とともに第二基台20が下方に変位し、下方向の加速度が発生することで、直動案内機構24を介して弾性体30の下端部に下方への引張荷重がかかる。弾性体30は、下方に引っ張られる荷重によって伸長することで、駆動輪40が路面から受ける衝撃を吸収する。これにより、弾性体30の上端部における下方向の加速度は、弾性体30の下端部における下方向の加速度に対して減少するため、軸部材12及び第一基台10にかかる加速度が、駆動輪40にかかる加速度に対して減少する。
【0046】
サスペンション機構1は、平常時において、第一基台10の上面と第二基台20の下面との間に、間隙を有することが好ましい。これにより、サスペンション機構1が搭載される車両の走行時における振動を、弾性体30の圧縮及び伸長によって吸収し、第一基台10及び第二基台20が互い接近又は離隔する際に、第一基台10と第二基台20とが衝突することを抑制する。
【0047】
[適用形態]
次に、実施形態のサスペンション機構1の搭載例として、適用形態に係る搬送装置100の構成について、図を参照して説明する。図3は、図1に示すサスペンション機構1を備える適用形態の搬送装置100の側面図である。図4は、図3に示す搬送装置100におけるサスペンション機構1の配置を示す平面図である。図5は、図3に示す搬送装置100による搬送器具200の接続前の状態を示す側面図である。
【0048】
適用形態の搬送装置100は、搬送器具200の下に潜り込んで下方から搬送器具200に接続し、走行することで搬送器具200を搬送する、又は使用者の操作による搬送器具200の走行を補助する車両である。搬送装置100は、車体110と、接続部120と、4つのサスペンション機構1と、を備える。車体110は、平面視形状が略正方形状の直方体である。車体110には、例えば、接続部120を昇降させる昇降機構、各種センサ、各部に供給する電力の電源、及び各構成要素を制御する制御部等が搭載される。
【0049】
接続部120は、平面視において、車体110の中央部に配置される。接続部120は、不図示の昇降機構により、車体110に対して昇降可能である。接続部120は、最も下降した位置にある場合、上面が車体110の上面とほぼ同一の高さであることが好ましい。接続部120は、搬送装置100が搬送器具200の下に潜り込んだ状態で、搬送器具200の下方から上昇することによって、搬送器具200に接続する。
【0050】
接続部120は、例えば、荷重受け部材130と、荷重受け部材130に対して着脱自在な取り付け部材140と、を含む。荷重受け部材130は、上方に突出して設けられるピン部131を有する。取り付け部材140は、搬送器具200の下面に固定される。下方からピン部131が挿通して嵌合可能なピン挿通穴141を下面に有する。接続部120は、ピン挿通穴141にピン部131を挿通して嵌合させることで、搬送器具200に接続される。接続部120は、搬送器具200の下方から上昇させることで搬送器具200の下面に吸着するマグネット又は吸盤を含んでもよい。
【0051】
搬送器具200は、例えば、台車、搬送カート、移動ベッド、ストレッチャー等である。適用形態の搬送装置100が搬送する搬送器具200は、搬送対象を載せる本体部201と、本体部201を水平姿勢に維持して水平方向に移動させることが可能な複数の従動輪202(自在輪)と、を少なくとも備えるものを想定する。搬送装置100が、搬送器具200の走行を補助する装置である場合、搬送器具200は、使用者が搬送器具200を操作するためのハンドルをさらに備えてもよい。
【0052】
図5に示す搬送器具200は、第1アーム211と、第1アーム211に並設した第2アーム212と、を含むガイド部材215をさらに備える。ガイド部材215は、搬送装置100の接続部120の荷重受け部材130を取り付け部材140の位置に誘導するための部材である。
【0053】
第1アーム211及び第2アーム212は、取り付け部材140を挟んで向かい合って設置される。第2アーム212は、第1アーム211に交差せず、本体部201の外側の一方向に向かって延びている。第1アーム211及び第2アーム212の後端側は、搬送器具200の進行方向に対して垂直の取り付け部材140の位置に固定されている。第1アーム211及び第2アーム212の先端側は、弓形状に外側に広がって延びている。第1アーム211と第2アーム212との間隔は、搬送器具200の下方の接続位置が最も小さくなるような構造である。
【0054】
第1アーム211及び第2アーム212は、取り付け部材140よりも突出しているため、荷重受け部材130が搬送器具200への接続前に搬送器具200の下方に潜り込む際に、荷重受け部材130と取り付け部材140との間に空間が設けられることになる。荷重受け部材130は、第1アーム211と第2アーム212との間に侵入し、第1アーム211及び第2アーム212は、搬送器具200に対する搬送装置100の相対位置を搬送器具200の下方の接続位置に誘導する。
【0055】
適用形態の搬送装置100では、車体110の底部を構成する板状のフレームが、実施形態のサスペンション機構1の第一基台10に相当する。4つのサスペンション機構1は、平面視において、略正方形状である車体110の4辺の各々の中心近傍に配置される。対向する平行な2辺の近傍に各々配置された2つのサスペンション機構1は、駆動輪40の車軸40aが、車体110の略中央を通る水平軸であって、互いに同軸となるように配置される。すなわち、適用形態に搭載される4つのサスペンション機構1は、平面視において車体110の中心部に配置される接続部120を、それぞれの駆動輪40によって四方を囲むように配置される。
【0056】
サスペンション機構1は、適用形態の搬送装置100に搭載され、搬送装置100の接続部120が搬送対象を載せた搬送器具200に接続して搬送器具200から下方へ荷重を受けている状態において、第一基台10の上面と第二基台20の下面との間に、間隙を有することが好ましい。これにより、搬送装置100の走行時における振動を弾性体30の圧縮及び伸長によって吸収し、第一基台10及び第二基台20が互い接近又は離隔する際に、第一基台10と第二基台20とが衝突することを抑制する。
【0057】
以上説明したように、実施形態のサスペンション機構1は、車体の底部を構成する板状の第一基台10と、下面が第一基台10の上面に対向するように配置される板状の第二基台20と、第一基台10及び第二基台20の一方(実施形態では第一基台10)に固定され、第一基台10及び第二基台20の他方(実施形態では第二基台20)に形成された貫通孔を貫通するよう他方(第二基台20)側に向かって直立する軸部材12と、車軸40aが第二基台20より上方に位置し、かつ第二基台20に支持される駆動輪40と、第二基台20に支持され駆動輪40を駆動する駆動源(モータ41及び伝達機構42)と、軸部材12が内周側を挿通する筒状であって他方(第二基台20)と軸部材12の一方(第一基台10)側とは反対側の端部との間に介在する弾性体30と、を備える。
【0058】
サスペンション機構1は、駆動輪40の車軸40aが上面側で支持される第二基台20の上下動を、軸部材12で案内するとともに、弾性体30で吸収する。したがって、車体の基台と基台の下方に配置される車輪との間に介在する従来のサスペンション機構と比較して、駆動輪40が接地する路面から第一基台10までの高さを低くでき、サスペンション機構1を搭載する車両(例えば、搬送装置100)の低床化が実現できる。また、このようなサスペンション機構1は、直動を案内する軸部材12及び弾性体30による簡素な構成で実現できる。
【0059】
また、実施形態のサスペンション機構1において、弾性体30は、圧縮コイルばね、又は粘弾性材料で形成される円筒体を含む。
【0060】
これによれば、第一基台10及び第二基台20の他方(実施形態では第二基台20の上面側)と軸部材12の一方側とは反対側の端部(実施形態では上端)との間に接続しかつこれらの間の上下動を吸収する手段を、簡単な構造で実現できる。
【0061】
また、実施形態のサスペンション機構1において、第一基台10及び第二基台20は、駆動輪40の一部を下方に露出させるための開口11、21を有する枠形状であり、軸部材12は、開口11を挟むように駆動輪40の位置に対して均等に複数設けられる。
【0062】
これによれば、駆動輪40が接地する路面の凹凸等による振動を、複数の軸部材12に対応する弾性体30で均等に吸収できるので、サスペンション機構1が搭載される車両(例えば、搬送装置100)の安定的な走行に寄与する。
【0063】
また、実施形態のサスペンション機構1において、軸部材12は、駆動輪40の車軸40aに対して直交する方向に開口11を挟んで2つずつ合計4つ設けられる。
【0064】
これによれば、駆動輪40が接地する路面の凹凸等による振動を、4つの軸部材12に対応する弾性体30で均等に吸収できるので、サスペンション機構1が搭載される車両(例えば、搬送装置100)の安定的な走行に寄与する。
【0065】
また、実施形態のサスペンション機構1において、駆動源は、駆動輪40の車軸40aと平行な出力軸41aから回転駆動力を出力するモータ41と、出力軸41aの回転駆動力を駆動輪40の車軸40aに伝達する伝達機構42と、を含む。
【0066】
これによれば、駆動輪40の車軸40a方向にモータ41が配置される構成と比較して、車軸40a方向のサイズを小さくできる。
【0067】
また、実施形態のサスペンション機構1において、駆動輪40が停止している状態において、第一基台10の上面と第二基台20の下面との間に間隙を有する。
【0068】
これによれば、サスペンション機構1が搭載される車両(例えば、搬送装置100)の走行時における振動を、弾性体30の圧縮及び伸長によって吸収し、第一基台10及び第二基台20が互い接近又は離隔する際に、第一基台10と第二基台20とが衝突することを抑制することができる。
【0069】
なお、本実施形態は、上記態様に限定されるものではない。即ち、本実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、軸部材12、第二基台20の貫通孔、及び弾性体30は、実施形態において、駆動輪40の前後に2組ずつ4組設けられるが、本実施形態では、少なくとも2組設けられればよく、3組、又は5組以上であってもよい。また、平面視において軸部材12及び第二基台20の貫通孔が配置される位置は、他の部材と干渉しない範囲であれば任意の位置に設定可能である。また、伝達機構42は、実施形態のようなベルト45又はチェーンを介して伝達する構成に限定されず、平歯車等の複数の歯車を介して伝達する歯車機構を含んでもよい。
【0070】
また、路面の凹凸等によって駆動輪40を支持する第二基台20が上下動した時に、弾性体30が緩衝材となってその振動の第一基台10への伝達を抑制するものであれば、軸部材12及び弾性体30の配置は実施形態に限定されない。以下に、軸部材12及び弾性体30の配置が実施形態と異なる例を、第1変形例から第3変形例までを挙げて説明する。
【0071】
[第1変形例]
図6は、第1変形例に係るサスペンション機構1Aの簡易模式図である。図6に示す第1変形例について、実施形態と同様の構成は省略し、異なる構成のみ説明する。第1変形例のサスペンション機構1Aは、第一基台10Aと、第二基台20Aと、軸部材12Aと、弾性体30Aと、実施形態と同様の駆動輪40、モータ41及び伝達機構42(駆動源)と(図1から図4までを参照)、を備える。
【0072】
第1変形例の第一基台10Aは、実施形態の第一基台10と比較して、軸部材12Aが固定されず、軸部材12Aが挿通する貫通孔が形成される点で異なる。また、第1変形例の第二基台20Aは、実施形態の第二基台20と比較して、軸部材12Aが挿通する貫通孔が形成されず、軸部材12Aの上端部が下面に固定される点で異なる。
【0073】
第1変形例の軸部材12Aは、実施形態の軸部材12と比較して、固定される対象及び位置、体勢が異なる。具体的には、軸部材12Aは、第二基台20Aから第一基台10A側、すなわち下方に直立し、上端部が第二基台20Aの下面に固定して設けられる。
【0074】
第1変形例の弾性体30Aは、実施形態の弾性体30と比較して、配置される位置が異なる。具体的には、弾性体30Aは、第一基台10Aの下面側と軸部材12Aの第二基台20側とは反対側の端部である下端との間に介在する。
【0075】
このようなサスペンション機構1Aが搭載される車両が凹凸のある路面を走行する際のサスペンション機構1Aの挙動について説明する。平常時において、弾性体30Aは、車両側からかかる荷重、すなわち第一基台10にかかる荷重によって、上方から荷重を受けている。また、弾性体30は、駆動輪40(図1から図4までを参照)が路面から受ける反力によって、第二基台20及び軸部材12を介して、下方から荷重を受けている。これにより、弾性体30は、上下方向から圧縮されている。
【0076】
駆動輪40が路面の凸状部を走行すると、駆動輪40とともに第二基台20A及び軸部材12Aが上方に変位し、上方向の加速度が発生することで、弾性体30Aの下端部に上方への圧縮荷重がかかる。弾性体30Aは、下方から受ける荷重に対して圧縮することで、駆動輪40が路面から受ける衝撃を吸収する。これにより、弾性体30Aの上端部における上方向の加速度は、弾性体30Aの下端部における上方向の加速度に対して減少するため、第一基台10Aにかかる加速度が、駆動輪40にかかる加速度に対して減少する。
【0077】
駆動輪40が路面の凹状部を走行すると、駆動輪40とともに第二基台20A及び軸部材12Aが下方に変位し、下方向の加速度が発生することで、弾性体30Aの下端部に下方への引張荷重がかかる。弾性体30Aは、下方に引っ張られる荷重によって伸長することで、駆動輪40が路面から受ける衝撃を吸収する。これにより、弾性体30Aの上端部における下方向の加速度は、弾性体30Aの下端部における下方向の加速度に対して減少するため、第一基台10Aにかかる加速度が、駆動輪40にかかる加速度に対して減少する。
【0078】
以上説明したように、第1変形例のサスペンション機構1Aは、車体の底部を構成する板状の第一基台10Aと、下面が第一基台10Aの上面に対向するように配置される板状の第二基台20Aと、第一基台10及び第二基台20の一方(第1変形例では第二基台20)に固定され、第一基台10及び第二基台20の他方(第1変形例では第一基台10)に形成された貫通孔を貫通するよう他方(第一基台10)側に向かって直立する軸部材12Aと、車軸40aが第二基台20より上方に位置し、かつ第二基台20に支持される駆動輪40と(実施形態を参照)、第二基台20に支持され駆動輪40を駆動する駆動源(モータ41及び伝達機構42)と(実施形態を参照)、軸部材12Aが内周側を挿通する筒状であって他方(第一基台10)と軸部材12Aの一方(第二基台20)側とは反対側の端部との間に介在する弾性体30Aと、を備える。
【0079】
サスペンション機構1Aは、駆動輪40の車軸40aが上面側で支持される第二基台20Aの上下動を軸部材12Aで案内するとともに、弾性体30Aで吸収する。したがって、車体の基台と基台の下方に配置される車輪との間に介在する従来のサスペンション機構と比較して、駆動輪40が接地する路面から第一基台10Aまでの高さを低くでき、サスペンション機構1Aを搭載する車両の低床化が実現できる。また、このようなサスペンション機構1Aは、直動を案内する軸部材12A及び弾性体30Aによる簡素な構成で実現できる。
【0080】
[第2変形例]
図7は、第2変形例に係るサスペンション機構1Bの簡易模式図である。図7に示す第2変形例について、実施形態と同様の構成は省略し、異なる構成のみ説明する。第2変形例のサスペンション機構1Bは、第一基台10Bと、第二基台20Bと、軸部材12Bと、弾性体30Bと、実施形態と同様の駆動輪40、モータ41及び伝達機構42(駆動源)と(図1から図4までを参照)、を備える。
【0081】
第2変形例の第一基台10Bは、実施形態の第一基台10と比較して、上面側に弾性体30Bが設けられる点で異なる。また、第2変形例の第二基台20Bは、実施形態の第二基台20と比較して、下面側に弾性体30Bが設けられる点で異なる。
【0082】
第2変形例の軸部材12Bは、実施形態の軸部材12と比較して、間接的に第二基台20に接続しない点で異なる。すなわち、実施形態では、第一基台10、軸部材12、弾性体30、第二基台20が順に直列的に接続されるのに対し、第2変形例では、第一基台10Bと第二基台20Bとの間の接続において、弾性体30Bのみ介在し、軸部材12Bは、第二基台20Bに接続しない。
【0083】
第2変形例の弾性体30Bは、実施形態の弾性体30と比較して、配置及び特性が異なる。具体的には、弾性体30Bは、第一基台10Bの上面側と第二基台20の下面側との間に介在する。また、弾性体30Bは、引張コイルばね、又はゴム等の粘弾性材料で形成される円筒体を含む。
【0084】
このようなサスペンション機構1Bが搭載される車両が凹凸のある路面を走行する際のサスペンション機構1Bの挙動について説明する。平常時において、弾性体30Bは、車両側からかかる荷重、すなわち第一基台10にかかる荷重によって、下方から引張力を受けている。また、弾性体30は、駆動輪40(図1から図4までを参照)が路面から受ける反力によって、第二基台20及び軸部材12を介して、上方から引張力を受けている。これにより、弾性体30は、上下方向から引っ張られている。
【0085】
駆動輪40が路面の凸状部を走行すると、駆動輪40とともに第二基台20Bが上方に変位し、上方向の加速度が発生することで、弾性体30Bの上端部に上方から引張力を受ける。弾性体30Bは、上方に引っ張られる引張力によって伸長することで、駆動輪40が路面から受ける衝撃を吸収する。これにより、弾性体30Bの下端部における上方向の加速度は、弾性体30Bの上端部における上方向の加速度に対して減少するため、第一基台10Bにかかる加速度が、駆動輪40にかかる加速度に対して減少する。
【0086】
駆動輪40が路面の凹状部を走行すると、駆動輪40とともに第二基台20Bが下方に変位し、下方向の加速度が発生することで、弾性体30Bの上端部に上方から圧縮力を受ける。弾性体30Bは、上方から受ける圧縮力に対して圧縮することで、駆動輪40が路面から受ける衝撃を吸収する。これにより、弾性体30Bの上端部における下方向の加速度は、弾性体30Bの下端部における下方向の加速度に対して減少するため、第一基台10Bにかかる加速度が、駆動輪40にかかる加速度に対して減少する。
【0087】
以上説明したように、第2変形例のサスペンション機構1Bは、車体の底部を構成する板状の第一基台10Bと、下面が第一基台10Bの上面に対向するように配置される板状の第二基台20Bと、第一基台10及び第二基台20の一方(第2変形例では第一基台10)に固定され、第一基台10及び第二基台20の他方(第2変形例では第二基台20)に形成された貫通孔を貫通するよう他方(第二基台20)側に向かって直立する軸部材12Bと、車軸40aが第二基台20より上方に位置し、かつ第二基台20に支持される駆動輪40と(実施形態を参照)、第二基台20に支持され駆動輪40を駆動する駆動源(モータ41及び伝達機構42)と(実施形態を参照)、軸部材12Bが内周側を挿通する筒状であって第一基台10と第二基台20との間に介在する弾性体30Bと、を備える。
【0088】
サスペンション機構1Bは、駆動輪40の車軸40aが上面側で支持される第二基台20Bの上下動を軸部材12Bで案内するとともに、弾性体30Bで吸収する。したがって、車体の基台と基台の下方に配置される車輪との間に介在する従来のサスペンション機構と比較して、駆動輪40が接地する路面から第一基台10Bまでの高さを低くでき、サスペンション機構1Bを搭載する車両の低床化が実現できる。また、このようなサスペンション機構1Bは、直動を案内する軸部材12B及び弾性体30Bによる簡素な構成で実現できる。
【0089】
また、第2変形例のサスペンション機構1Bにおいて、弾性体30Bは、引張コイルばね、又は粘弾性材料で形成される円筒体を含む。
【0090】
これによれば、第一基台10Bと第二基台20Bとの間に介在しかつこれらの間の上下動を吸収する手段を、簡単な構造で実現できる。
【0091】
[第3変形例]
図8は、第3変形例に係るサスペンション機構1Cの簡易模式図である。図8に示す第3変形例について、第2変形例と同様の構成は省略し、異なる構成のみ説明する。第3変形例のサスペンション機構1Cは、第一基台10Cと、第二基台20Cと、軸部材12Cと、弾性体30Cと、実施形態と同様の駆動輪40、モータ41及び伝達機構42(駆動源)と(図1から図4までを参照)、を備える。
【0092】
第3変形例の第一基台10Cは、第2変形例の第一基台10Bと比較して、軸部材12Cが固定されず、軸部材12Cが挿通する貫通孔が形成される点で異なる。また、第3変形例の第二基台20Cは、第2変形例の第二基台20Bと比較して、軸部材12Cが挿通する貫通孔が形成されず、軸部材12Cの上端部が下面に固定される点で異なる。
【0093】
第3変形例の軸部材12Cは、第2変形例の軸部材12Bと比較して、固定される対象及び位置、体勢が異なる。具体的には、軸部材12Cは、第二基台20Cから第一基台10C側、すなわち下方に直立し、上端部が第二基台20Cの下面に固定して設けられる。第3変形例の弾性体30Cは、第2変形例の弾性体30Bと同様の構成及び配置であるため、説明を省略する。
【0094】
このように、第3変形例のサスペンション機構1Cは、第2変形例のサスペンション機構1Bに対して、軸部材12Cが、第一基台10Cと第二基台20との間で上下が反対に配置される以外、同様の構成である。また、搭載される車両が凹凸のある路面を走行する際のサスペンション機構1Cの挙動は、第2変形例のサスペンション機構1Bの挙動と同様であるため、説明を省略する。
【0095】
以上説明したように、第3変形例のサスペンション機構1Cは、車体の底部を構成する板状の第一基台10Cと、下面が第一基台10Cの上面に対向するように配置される板状の第二基台20Cと、第一基台10及び第二基台20の一方(第3変形例では第二基台20)に固定され、第一基台10及び第二基台20の他方(第3変形例では第一基台10)に形成された貫通孔を貫通するよう他方(第一基台10)側に向かって直立する軸部材12Cと、車軸40aが第二基台20より上方に位置し、かつ第二基台20に支持される駆動輪40と(実施形態を参照)、第二基台20に支持され駆動輪40を駆動する駆動源(モータ41及び伝達機構42)と(実施形態を参照)、軸部材12Cが内周側を挿通する筒状であって第一基台10と第二基台20との間に介在する弾性体30Cと、を備える。
【0096】
サスペンション機構1Cは、駆動輪40の車軸40aが上面側で支持される第二基台20Cの上下動を軸部材12Cで案内するとともに、弾性体30Cで吸収する。したがって、車体の基台と基台の下方に配置される車輪との間に介在する従来のサスペンション機構と比較して、駆動輪40が接地する路面から第一基台10までの高さを低くでき、サスペンション機構1Cを搭載する車両の低床化が実現できる。また、このようなサスペンション機構1Cは、直動を案内する軸部材12C及び弾性体30Cによる簡素な構成で実現できる。
【0097】
[第4変形例]
図9は、第4変形例に係るサスペンション機構1Dの斜視図である。図9に示す第4変形例について、実施形態と同様の構成は省略し、異なる構成のみ説明する。第4変形例のサスペンション機構1Dは、実施形態のサスペンション機構1と比較して、弾性体30の上端側及び下端側に配置される一対のばね押さえ31の代わりに、上部制動部材50と、下部制動部材60と、を備える点で異なる。なお、図9では、第一基台10の描写を省略しているが、第4変形例における第一基台10と軸部材12との接合は、実施形態と同様である。
【0098】
実施形態のばね押さえ31は、1つの弾性体30の上端部及び下端部に1つずつ配置されて、他の弾性体30に配置されるばね押さえ31と独立していた(図1及び図2等参照)。これに対し、第4変形例の上部制動部材50及び下部制動部材60は、駆動輪40の車軸40a方向に隣接する2つの弾性体30に対して1つずつ設けられる。
【0099】
上部制動部材50は、弾性体30の上端側に配置される水平姿勢のブロック形状に形成される。上部制動部材50は、隣接する2つの軸部材12が各々挿通する2つの貫通孔51を有する。貫通孔51は、大径部52と、小径部53と、を含む。大径部52は、貫通孔51のうち上端側に位置する部分であり、軸部材12の鍔部より大きい内径を有する部分である。小径部53は、大径部52の下端に連通し、貫通孔51のうち下端側に位置する部分であり、軸部材12の鍔部より小さい内径を有する部分である。
【0100】
下部制動部材60は、弾性体30の下端側に配置される水平姿勢のブロック形状に形成される。下部制動部材60は、隣接する2つの軸部材12が各々挿通する2つの貫通孔61を有する。下部制動部材60は、弾性体30の下端と、直動案内機構24の上端との間に配置される。ここで、上部制動部材50の小径部53は、軸部材12の鍔部と弾性体の上端部との間に位置する。言い換えると、上部制動部材50は、実質的に、軸部材12の上端の鍔部と、弾性体の上端部と、の間に挟まれて配置される。
【0101】
すなわち、上部制動部材50及び下部制動部材60は、ばね押さえとしての機能を有する。弾性体30は、軸部材12及び上部制動部材50を介して第一基台10と接続するとともに、直動案内機構24及び下部制動部材60を介して第二基台20と接続する。これにより、弾性体30は、第一基台10と第二基台20との間の垂直方向への近接及び離隔による衝撃を吸収する。
【0102】
下部制動部材60は、さらに、2つの貫通孔61の間の上面側に、上方に突出する凸部62を有する。凸部62の上端は、上部制動部材50の下面側に対向する平坦面63に形成される。上部制動部材50の下面と平坦面63とは、弾性体30が軸方向に所定量圧縮変形した場合、互いに面合わせで当接する。下部制動部材60は、平坦面63が上部制動部材50の下面に当接することで、上部制動部材50との間の距離を所定量以上に維持する。すなわち、上部制動部材50及び下部制動部材60は、ばね押さえとしての機能を有するとともに、弾性体30のストローク量を制限するストッパとしての機能を有する。
【0103】
上部制動部材50及び下部制動部材60の接触により、サスペンション機構1Dの過剰な変位を防止することができるため、サスペンション機構1のみでは支えきれない大荷重が作用しても、上部制動部材50及び下部制動部材60によって支えることができる。上部制動部材50の下面の平坦面63と接触する部分と、平坦面63と、の少なくともいずれかには、接触時の衝撃を吸収するゴムシートが設けられてもよい。
【0104】
以上説明したように、第4変形例のサスペンション機構1Dは、軸部材12の一方(第4変形例では第一基台10)側とは反対側の端部と弾性体30との間に介在する第一制動部材(上部制動部材50)と、第一基台10及び第二基台20の他方(第4変形例では第二基台20)と弾性体30との間に介在し、第一制動部材(上部制動部材50)との間の距離を所定量以上に維持する第二制動部材(下部制動部材60)と、を備える。
【0105】
これによれば、サスペンション機構1Dの過剰な変位を防止することができるため、サスペンション機構1のみでは支えきれない大荷重が作用しても、上部制動部材50及び下部制動部材60によって支えることができる。したがって、サスペンション機構1Dの弾性体30の永久変形等による機能低下の防止や、過剰な変位によるサスペンション機構1Dと搬送装置100の内部部品との干渉防止に寄与する。
【0106】
なお、凸部62は、上部制動部材50側に設けられていてもよい。すなわち、上部制動部材50の下面に下方に突出する凸部を設けてもよい。また、第4変形例は、実施形態の変形例として説明したが、第1変形例、第2変形例、又は第3変形例と組み合わせてもよい。
【0107】
第1変形例と第4変形例とを組み合わせる場合、軸部材12の一方(第二基台20)側とは反対側の端部と弾性体30との間に介在する第一制動部材(上部制動部材50;第1変形例と組み合わせる場合は、弾性体30Aの下方に位置する)と、第一基台10及び第二基台20の他方(第一基台10)と弾性体30との間に介在し、第一制動部材(上部制動部材50)との間の距離を所定量以上に維持する第二制動部材(下部制動部材60;第1変形例と組み合わせる場合は、弾性体30Aの上方に位置する)と、を備えればよい。
【0108】
また、第2変形例又は第3変形例と第4変形例とを組み合わせる場合、第一基台10と弾性体30との間に介在する第一制動部材(上部制動部材50;第2変形例又は第3変形例と組み合わせる場合は、弾性体30B、30Cの下方に位置する)と、第二基台20と弾性体30との間に介在し、第一制動部材(上部制動部材50)との間の距離を所定量以上に維持する第二制動部材(下部制動部材60;第2変形例又は第3変形例と組み合わせる場合は、弾性体30B、30Cの上方に位置する)と、を備えればよい。
【符号の説明】
【0109】
1、1A、1B、1C、1D サスペンション機構
10、10A、10B、10C 第一基台
11 開口
12、12A、12B、12C 軸部材
20、20A、20B、20C 第二基台
21 開口
22 シャフトホルダ
23 モータ支持部
24 直動案内機構
30、30A、30B、30C 弾性体
31 ばね押さえ
40 駆動輪
40a 車軸
41 モータ(駆動源)
41a 出力軸
42 伝達機構
43、44 プーリ
45 ベルト
50 上部制動部材(第一制動部材)
51 貫通孔
52 大径部
53 小径部
60 下部制動部材(第二制動部材)
61 貫通孔
62 凸部
63 平坦面
100 搬送装置(車両)
110 車体
120 接続部
130 荷重受け部材
131 ピン部
140 取り付け部材
141 ピン挿通穴
200 搬送器具
201 本体部
202 従動輪
211 第1アーム
212 第2アーム
215 ガイド部材
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9