(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148030
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
F01D 15/10 20060101AFI20241009BHJP
H02K 7/18 20060101ALI20241009BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20241009BHJP
F01K 23/02 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
F01D15/10 A
H02K7/18 Z
H02K7/116
F01K23/02 Z
F01D15/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060910
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 基光
(72)【発明者】
【氏名】橋本 篤徳
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 光里
【テーマコード(参考)】
3G081
5H607
【Fターム(参考)】
3G081BA02
3G081BA20
3G081BB04
3G081BC06
3G081BD00
5H607AA12
5H607BB02
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC05
5H607DD03
5H607EE33
5H607FF30
(57)【要約】
【課題】熱エネルギーを効率よく取り出して発電効率を高めた発電システムを構成する。
【解決手段】冷媒を循環させる第一ポンプ14と、第一ポンプ14から吐出された冷媒を蒸発させる蒸発器11と、蒸発器11から流出した冷媒により運動エネルギーを出力する膨張機12と、当該膨張機12から流出した冷媒を凝縮させる凝縮器13と、が配置された冷媒流路15を有する熱機関モジュールGaと、運動エネルギーを、キャリア24を介してプラネタリギヤ22に伝達する遊星歯車機構20と、遊星歯車機構20のサンギヤ21に回転軸が接続されたモータジェネレータ16と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を循環させる第一ポンプと、当該第一ポンプから吐出された前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、当該蒸発器から流出した前記冷媒により運動エネルギーを出力する膨張機と、当該膨張機から流出した前記冷媒を凝縮させる凝縮器と、が配置された冷媒流路を有する熱機関モジュールと、
前記運動エネルギーを、キャリアを介してプラネタリギヤに伝達する遊星歯車機構と、
前記遊星歯車機構のサンギヤに回転軸が接続されたモータジェネレータと、を備えた発電システム。
【請求項2】
冷却液を循環させる第二ポンプと、ラジエータと、熱交換器とが配置された冷却流路と、
前記第二ポンプを回転させるモータと、を更に備え、
前記第二ポンプの回転軸は、前記遊星歯車機構のリングギヤの回転が伝えられる請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記蒸発器は、燃料電池を冷却する冷却回路としての前記冷却流路と、前記冷媒流路との間で熱交換する請求項2に記載の発電システム。
【請求項4】
前記モータジェネレータのトルク指令値に基づいて前記膨張機の回転数を制御する制御部を更に備えた請求項1~3の何れか一項に記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ランキンサイクルシステムを備えた発電システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。ランキンサイクルシステムは、ポンプの駆動により圧送された冷媒が蒸発器、タービン(膨張機)、凝縮器の順に流れて、発電可能に構成されている。
【0003】
特許文献1に記載の発電システムは、タービン軸がポンプ軸と同軸上に配置され、タービン軸とポンプ軸との間に変速機を配置している。この変速機は、アクチュエータの駆動力により所定のギヤ比に変換する。また、ポンプは、始動時においてモータジェネレータにより駆動され、このモータジェネレータは、タービン軸の発生トルクからポンプの駆動トルクを減算した余剰トルクにより発電可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発電システムは、アクチュエータの駆動力により変速機を所定のギヤ比に変換しており、膨張機の回転数を連続的に変速できないため、熱エネルギーの取り出し効率が悪くなる。また、タービン軸がポンプ軸と同軸上に配置されて、さらに余剰エネルギーを用いてモータジェネレータで発電するため、機械損失に加えて電気エネルギー損失が加わり、発電効率が悪くなる。
【0006】
そこで、熱エネルギーを効率よく取り出して発電効率を高めた発電システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発電システムの特徴構成は、冷媒を循環させる第一ポンプと、当該第一ポンプから吐出された前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、当該蒸発器から流出した前記冷媒により運動エネルギーを出力する膨張機と、当該膨張機から流出した前記冷媒を凝縮させる凝縮器と、が配置された冷媒流路を有する熱機関モジュールと、前記運動エネルギーを、キャリアを介してプラネタリギヤに伝達する遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構のサンギヤに回転軸が接続されたモータジェネレータと、を備えた点にある。
【0008】
本構成では、膨張機が出力した運動エネルギーが、キャリアを介してプラネタリギヤに伝達され、サンギヤに回転軸が接続されたモータジェネレータへと伝達される。このため、遊星歯車機構の減速比を変更するアクチュエータが不要であり、熱エネルギーを効率よく取り出すことができる。
【0009】
また、モータジェネレータを用いて膨張機を駆動させる際には、モータトルクを制御すればキャリア回転数を容易に制御可能となるため、膨張機の回転数を連続的に変速することができる。その結果、膨張機の出力効率の良い領域で発電することが可能となる。このように、熱エネルギーを効率よく取り出して発電効率を高めた発電システムとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】遊星歯車機構と、タービンと、発電機との斜視図である。
【
図3】遊星歯車機構の各部の回転数を示す共線図である。
【
図4】タービンの回転数とモータトルクとを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示すように、燃料電池FCと、走行インバータ1と、モータユニット2と、コンバータ3と、二次電池から成るバッテリー4とを備えて燃料電池車(FCV)の走行駆動装置Aが構成されている。
【0012】
走行駆動装置Aは、燃料電池FCで発電した電力を電力ラインLによって走行インバータ1に供給する。走行インバータ1は、運転者のアクセル操作等に連係してモータユニット2に供給する電力を制御する。モータユニット2は、供給された電力によって回転するモータと、モータの駆動力を車輪Wに伝えるファイナルギヤ等を備えている。
【0013】
コンバータ3は、電力ラインLに流れる電力の電圧を降圧してバッテリー4に供給するモードと、バッテリー4の電力を昇圧して電力ラインLに供給するモードとの切換が可能に構成されている。
【0014】
燃料電池FCは、燃料ガスとして水素ガスがアノード側に供給され、酸化剤ガスとして酸素を含む空気がカソード側に供給されることにより電気化学反応により発電を行う。図面には示していないが燃料電池FCは、水素ガスの供給を制御するバルブ等の補機と、空気を供給するコンプレッサ等の補機とが制御されることにより発電が実現する。
【0015】
燃料電池FCは、発電時の発熱による温度上昇を抑制する冷却回路Cを備えている。冷却回路Cは、熱交換器5と、ラジエータ6と、冷却流路7と、冷却ポンプ8(第二ポンプの一例)を備えている。
【0016】
冷却回路Cは、燃料電池FCの内部の熱を、熱交換器5の冷却液が奪い、冷却ポンプ8の駆動により冷却液の熱をラジエータ6で放熱する。また、冷却ポンプ8は、ポンプモータ9(モータの一例)によって駆動される。
【0017】
尚、冷却液は、エチレングリコールや、プロピレングリコール等を含むロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油等が用いられる。
【0018】
走行駆動装置Aは、走行時にモータユニット2に供給する電力の増大に伴い、走行インバータ1の発熱量も増大する。この発熱は、熱エネルギーであるが、従来、有効に利用されることはなく、外部に放出していた。
【0019】
このような熱エネルギーの無駄をなくすため、
図1に示す走行駆動装置Aは、走行インバータ1の熱エネルギーを回収して運動エネルギーに変換して冷却ポンプ8(第二ポンプ)のポンプモータ9に供給する発電システムGを備えている。尚、発電システムGは、冷却ポンプ8に限らず他の機器に電力を供給する構成でも良い。
【0020】
発電システムGは、熱エネルギーを運動エネルギーに変換するランキンサイクル型の熱機関モジュールGaと、運動エネルギーを冷却ポンプ8に伝える機械駆動モジュールGbとを備えている。
【0021】
熱機関モジュールGaは、運動エネルギーを遊星歯車機構20から発電機16(モータジェネレータの一例)に伝える。機械駆動モジュールGbは、遊星歯車機構20から取り出した駆動力を機械的に冷却ポンプ8に伝える。これらの詳細は後述する。
【0022】
尚、発電システムGは、モータユニット2の熱も併せて回収することや、燃料電池FCの熱を冷却回路Cを介して回収する等、他の発熱源の熱を回収するように構成することも可能である。
【0023】
〔発電システム〕
熱機関モジュールGaは、蒸発器11と、タービン12(膨張機の一例)と、凝縮器13と、電動型の冷媒ポンプ14(第一ポンプの一例)と、これらに冷媒を流す冷媒流路15とを有している。
【0024】
熱機関モジュールGaは、走行インバータ1の熱により蒸発器11において冷媒を蒸発させ、蒸発した冷媒によってタービン12を回転させ、運動エネルギーを出力する。タービン12を通過した冷媒の熱を凝縮器13が奪うことにより冷媒を凝縮し、冷媒ポンプ14が冷媒を冷媒流路15に循環させる。
【0025】
この熱機関モジュールGaは、冷媒としてハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)等が用いられる。
【0026】
図1、
図2に示すように、遊星歯車機構20は、サンギヤ21と、複数のプラネタリギヤ22と、リングギヤ23と、複数のプラネタリギヤ22を支持するキャリア24とを有している。また、キャリア24は、ワンウェイクラッチ17によって回転方向が規制される。
【0027】
ワンウェイクラッチ17は、例えば、タービン12が停止した状況において、発電機16に電力を供給してモータとして駆動回転させた場合に、キャリア24の回転を規制することにより、回転駆動力を冷却ポンプ8に伝え、冷却ポンプ8の駆動を可能にする。
【0028】
発電システムGは、タービン12の出力軸12aがキャリア24に連結し、発電機16の駆動軸16a(回転軸の一例)がサンギヤ21に連結している。発電機16は、タービン12が回転し、この回転力が遊星歯車機構20のキャリア24と、プラネタリギヤ22とに順次伝えられ、サンギヤ21に伝えられることにより駆動軸16aが回転し、発電を行う。
【0029】
図1に示すように、発電システムGは、発電機16で発電された電流の制御が可能な電流制御部31と、電流制御部31からの電流を変換してポンプモータ9に供給するポンプインバータ32とを備えている。
【0030】
熱機関モジュールGaは、タービン12の回転数を検知する回転センサ33と、発電機16を制御する制御ユニット34(制御部の一例)とを備えている。
【0031】
機械駆動モジュールGbは、リングギヤ23は、外周に形成されたギヤ部に咬合する入力ギヤ25と、中間軸26、一対のギヤで成る伝動ギヤ27を介してポンプモータ9の作動軸9a(冷却ポンプ8の回転軸としても機能する)に伝える伝動系で構成されている。
【0032】
この機械駆動モジュールGbは、タービン12から伝えられる駆動力によってリングギヤ23が回転した際に、この回転力をポンプモータ9の作動軸9aに直接伝えることにより冷却ポンプ8を直接的に駆動する。
【0033】
〔作動形態〕
発電システムGでは、サンギヤ21に対し駆動軸16aを介して発電機16の負荷が作用し、リングギヤ23に対し機械駆動モジュールGbを介して冷却ポンプ8の負荷が作用する状態にある。これにより、遊星歯車機構20は、タービン12から伝えられる駆動力を分割して発電機16と、中間軸26と出力するように機能する。
【0034】
この発電システムGでは、走行インバータ1の熱により蒸発器11において蒸発した冷媒がタービン12に供給され、このタービン12の回転エネルギー(運動エネルギー)が遊星歯車機構20のキャリア24に伝えられる。
【0035】
キャリア24に伝えられる回転力は、プラネタリギヤ22からサンギヤ21に伝えられ発電機16の駆動軸16aが回転する。
【0036】
熱機関モジュールGaは、熱エネルギーから取り出された運動エネルギーが遊星歯車機構20を介して発電機16に伝えられる結果、発電が行われる。発電された電力は、電流制御部31、ポンプインバータ32に順次供給され、ポンプモータ9が駆動回転し、冷却ポンプ8が駆動される。
【0037】
また、熱機関モジュールGaにおいて熱エネルギーから取り出された運動エネルギーは、遊星歯車機構20のリングギヤ23から機械駆動モジュールGbを介してポンプモータ9の作動軸9aに伝えられ、結果として、冷却ポンプ8が駆動される。
【0038】
このように冷却ポンプ8は、電力供給によるポンプモータ9からの駆動力と、機械駆動モジュールGbから伝えられる駆動力とによって駆動される。
【0039】
〔制御形態〕
タービン12は、効率的に回転する回転数(単位時間あたりの回転数)が決まっている。制御ユニット34は、タービン12を効率的な回転数で回転させる制御によって効率的な発電を可能にする回転制御部34aを備えている。
【0040】
回転制御部34aは、タービン12の効率的な回転数を目標回転数Nct(
図3、
図4を参照)としてメモリ等に記憶しており、この目標回転数Nctに設定するための制御プログラムをメモリ等に記憶している。
【0041】
回転制御部34aは、タービン12が回転する際に、タービン12の回転数を取得し、発電機16に作用するトルク(以下、モータトルクと称する)を取得する。尚、モータトルクは、発電機16から出力される電流(発電機16のコイルに流れる電流の値)から取得される。
【0042】
回転制御部34aの制御プログラムは、電流制御部31の電力素子(電力トランジスタ等)のON時間に対するOFF時間の設定(デュティ比と同様の概念)することにより、発電機16の電流を制御し、モータトルクを操作している。
【0043】
つまり、発電機16と電流制御部31の間に流れる電流を抑制などすることで発電機16の駆動軸16aに作用するモータトルクを低減し、結果として、タービン12(膨張機)の回転数(キャリア24の回転数と一致する)の増大を実現する。これとは逆に、発電機16と電流制御部31の間に流れる電流を増大などさせることで発電機16の駆動軸16aに作用するモータトルクを増大させ、結果として、タービン12の回転数の低減を実現する。
【0044】
図3の共線図は、遊星歯車機構20の各部の回転数(単位時間あたりの回転数)を示している。図中の「S」はサンギヤ21の回転数を示し、「C」はキャリア24の回転数を示し、「R」はリングギヤ23の回転数を示している。
【0045】
尚、キャリア24の回転数は、タービン12の回転数(出力軸12aの回転数)と等しい。リングギヤ23の回転数はポンプモータ9の作動軸9aの回転数と比例する。また、冷却ポンプ8の回転数は固定されているため、ポンプモータ9の作動軸9aの値は決まった値を維持する。
【0046】
図3に示すように、タービン12が低回転数Ncxで回転する際のキャリア24、タービン12夫々の回転数の関係を示すグラフを目標グラフXとして示している。これに対し、タービン12が効率的な回転数としての目標回転数Nctで回転する際のキャリア24、タービン12夫々の回転数の関係を示すグラフを目標グラフFとして示している。
【0047】
回転制御部34aは、例えば、タービン12が
図3に示すように、低回転数Ncx(例えば、1500rpm)で回転する状況において、目標回転数Nct(例えば、3000rpm)まで上昇させる場合には、モータトルクを低減する。つまり、
図4に示すように、発電機16に作用するモータトルクの初期値Tx(例えば、-100N・m)である場合に、モータトルクを低減値Tt(例えば、-50N・m)に達するようにモータトルクを制御する。この制御では、モータトルクを低減値Ttが指令値であり、タービン12(膨張機)の回転数を制御する。
【0048】
この制御では、
図4の第一タイミングtaでモータトルクの低減開始し、
図4の上段に示すように、キャリア24の回転数を目標回転数Nctまで上昇させる。回転制御部34aは、回転センサ33の検知信号から回転数の上昇を確認した第二タイミングtbでモータトルクを-100N・mに戻す制御を行う。これにより、タービン12は、効率的な回転数としての目標回転数Nctで回転し、この目標回転数Nctは、モータトルクを戻した後にも継続する。
【0049】
この制御の説明において、低回転数Ncx、目標回転数Nctとして記載した回転数は一例であり、モータトルクの値も一例である。
【0050】
このように、回転制御部34aによる制御は、タービン12の回転数を無段階に調整することが可能であり、タービン12の回転数の微調整も可能となる。この調整によりタービン12を効率的な回転数で回転させ、運動エネルギーを無駄に消費することなく、遊星歯車機構20に伝え、発電機16で効率的な発電を実現する。また、機械駆動モジュールGbにおいても遊星歯車機構20からの駆動力によって冷却ポンプ8を効率的に駆動することが可能となる。
【0051】
〔実施形態の作用効果〕
発電システムGは、車両で発生する熱を運動エネルギーに変換する熱機関モジュールGaと、遊星歯車機構20と、発電機16と、遊星歯車機構20から取り出した駆動力を機械的に伝える機械駆動モジュールGbとで構成されている。このため、発電機16で発電した電気エネルギーでポンプモータ9を駆動し、冷却ポンプ8を駆動することが可能となる。また、遊星歯車機構20からの駆動力を機械駆動モジュールGbによって冷却ポンプ8を駆動することも可能となる。
【0052】
特に、熱機関モジュールGaにおいて取り出した運動エネルギーを機械駆動モジュールGbによって冷却ポンプ8と機械的に接続する構成では、電気エネルギーで冷却ポンプ8を駆動する構成と比較して、エネルギー損失の少ない駆動が可能となる。
【0053】
つまり、電気エネルギーでポンプモータ9を駆動し、冷却ポンプ8を駆動する構成は、発電機16、ポンプモータ9、電流制御部31、ポンプインバータ32の夫々の効率によって多くの損失を生ずるが、熱機関モジュールGaを用いる構成では、電気エネルギーよりエネルギー損失が小さいため、高い効率で冷却ポンプ8の駆動が可能となる。
【0054】
また、発電システムGは、タービン12からの回転エネルギーを遊星歯車機構20に伝え、更に、遊星歯車機構20から発電機16に伝える構成であり、この発電機16から負荷側に流れる電流の制御により発電機16の回転数を制御し、結果として、タービン12を高い効率で回転させることが可能となり熱エネルギーを無駄に消費することがない。
【0055】
このように、熱エネルギーを無駄に消費することなく取得した運動エネルギーで冷却ポンプ8を駆動する構成では、燃料電池FCで水素ガスを無駄に消費することがなく、車両の航続距離の延長が可能となる。
【0056】
発電システムGは、タービン12が停止した状況において、発電機16に電力を供給してモータとして機能させ、ワンウェイクラッチ17によってキャリア24の回転を停止させたまま、駆動力を冷却ポンプ8に伝え、冷却流路7で冷却液の循環を可能にする。
【0057】
発電システムGは、発電機16と電流制御部31の間に流れる電流を制御することにより、タービン12の回転数を無段階に調節することが可能であり、例えば、変速ギヤを用いて回転数を切り換えるものと比較して、構成が簡単になるだけでなく、タービン12の回転数の微調整が可能であり、熱機関モジュールGaの熱エネルギーが変化した場合にも、迅速に対応させることが可能となる。
【0058】
上述した実施形態では、下記の構成が想起される。
(1)冷媒を循環させる第一ポンプ(冷媒ポンプ14)と、第一ポンプ(冷媒ポンプ14)から吐出された冷媒を蒸発させる蒸発器(11)と、蒸発器(11)から流出した冷媒により運動エネルギーを出力する膨張機(タービン12)と、膨張機(タービン12)から流出した冷媒を凝縮させる凝縮器(13)と、が配置された冷媒流路(15)を有する熱機関モジュール(Ga)と、運動エネルギーを、キャリア(24)を介してプラネタリギヤ(22)に伝達する遊星歯車機構(20)と、遊星歯車機構(20)のサンギヤ(21)に回転軸(駆動軸16a)が接続されたモータジェネレータ(発電機16)と、を備えた発電システム(G)。
【0059】
本構成では、膨張機(タービン12)が出力した運動エネルギーが、キャリア(24)を介してプラネタリギヤ(22)に伝達され、サンギヤ(21)に回転軸(駆動軸16a)が接続されたモータジェネレータ(発電機16)へと伝達され発電する。このため、遊星歯車機構(20)の減速比を変更するアクチュエータが不要であり、熱エネルギーを効率よく取り出すことができる。
【0060】
また、モータジェネレータ(発電機16)を用いて膨張機(タービン12)を駆動させる際には、モータトルクを制御すればキャリア回転数を容易に制御可能となるため、膨張機(タービン12)の回転数を連続的に変速することができる。その結果、膨張機(タービン12)の出力効率の良い領域で発電することが可能となる。このように、熱エネルギーを効率よく取り出して発電効率を高めた発電システム(G)となっている。
【0061】
(2)(1)に記載の発電システム(G)は、冷却液を循環させる第二ポンプ(冷却ポンプ8)と、ラジエータ(6)と、熱交換器(5)とが配置された冷却流路(7)と、第二ポンプ(冷却ポンプ8)を回転させるモータ(ポンプモータ9)と、を更に備え、第二ポンプ(冷却ポンプ8)の回転軸は、遊星歯車機構(20)のリングギヤ(23)の回転が伝えられると好適である。
【0062】
本構成では、遊星歯車機構(20)のリングギヤ(23)を介して、膨張機(タービン12)の熱エネルギーから生成された運動エネルギーを直接的に第二ポンプ(冷却ポンプ8)の駆動力として用いている。よって熱エネルギーを有効活用できる。
【0063】
(3)(2)に記載の発電システム(G)の蒸発器(11)は、燃料電池(FC)を冷却する冷却回路(C)としての冷却流路(7)と、冷媒流路(15)との間で熱交換すると好適である。
【0064】
本構成のように、蒸発器(タービン12)を用いて燃料電池(FC)の冷却流路(7)と冷媒流路(15)との間で熱交換を行えば、燃料電池(FC)を冷却しつつ、燃料電池(FC)の廃熱を効率的に使用することができる。
【0065】
(4)(1)~(3)の何れか一項に記載の発電システム(G)は、モータジェネレータ(16)のトルク指令値に基づいて膨張機(11)の回転数を制御する制御部(制御ユニット34)を更に備えていると好適である。
【0066】
本構成のようにモータジェネレータ(発電機16)のトルク指令値に基づいて膨張機(タービン12)の回転数を制御すれば、膨張機(タービン12)の出力効率の最も高い回転領域で運転することが可能となる。また、モータジェネレータ(発電機16)のトルク指令値を変更するだけで良いため、制御が簡便である。
【0067】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0068】
(a)ポンプモータ9を備えずに、遊星歯車機構20のリングギヤ23から機械駆動モジュールGbを介して伝えられる駆動力によって冷却ポンプ8(第二ポンプ)を駆動するように構成する。このように構成することにより、ポンプモータ9を駆動する電力供給系が不要となり部品点数の低減が可能となる。
【0069】
(b)発電機16で発電した電力を、燃料電池FCに空気を供給するコンプレッサや、車内の温調のためのヒータや、車両に備えたモータ類に供給することが可能となる。また、発電された電力をバッテリー4に供給して充電することも可能である。
【0070】
(c)熱機関モジュールGaに対し、燃料電池FCで発生する熱、モータユニット2で発生する熱、あるいは、他の機器で発生する熱を利用してタービン12を駆動する構成を備える。その構成の具体例として、例えば、燃料電池FCを冷却する冷却回路Cの冷却流路7に流れる冷却液の熱によって、熱機関モジュールGaを構成する冷媒流路15に流れる冷媒の温度上昇を図るように冷却流路7と冷媒流路15との間で熱交換を行う熱交換器を備えることが考えられる。
【0071】
この別実施形態(c)の構成により、走行インバータ1の熱だけでなく、燃料電池FCの熱エネルギー、車体に備えた他の機器の熱エネルギーを運動エネルギーに変換し、発電することが可能となる。
【0072】
(d)実施形態に記載した冷却回路Cの構成に代えて、蒸発器11、タービン12(膨張機)、凝縮器13、冷媒ポンプ14(第一ポンプ)、冷媒流路15を備えることにより、ランキンサイクル側の熱機関モジュールGaを構成する。更に、この構成に加えて遊星歯車機構20と発電機16を備える。
【0073】
この別実施形態(d)構成により、燃料電池FCの熱を利用して発電を行うことも可能となる。
【0074】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、発電システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
5:熱交換器、6:ラジエータ、7:冷却流路、8:冷却ポンプ(第二ポンプ)、9:ポンプモータ(モータ)、9a:作動軸(回転軸)、11:蒸発器、12:タービン(膨張機)、13:凝縮器、14:冷媒ポンプ(第一ポンプ)、15:冷媒流路、16:発電機(モータジェネレータ)、16a:駆動軸(回転軸)、20:遊星歯車機構、21:サンギヤ、22:プラネタリギヤ、23:リングギヤ、34:制御ユニット(制御部)、C:冷却回路、FC:燃料電池、G:発電システム、Ga:熱機関モジュール