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特開2024-148032工事計画生成システム及び工事計画生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148032
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】工事計画生成システム及び工事計画生成方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20241009BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20241009BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060912
(22)【出願日】2023-04-04
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケミカルアンカー
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390011903
【氏名又は名称】株式会社イリア
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】藤井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 晴基
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】平田 真佑子
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】小菅 克己
(72)【発明者】
【氏名】坂口 忠明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 太郎
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】 適切な工事計画を生成する。
【解決手段】 工事計画生成システム10は、工事に用いられる建材の単位量あたりの、当該建材を用いた工事からの時間経過に応じた当該建材から生じる臭気の人の嗅覚による単位指標値を取得する単位指標値取得部11と、工事に用いられる建材の量を含む、工事の条件を示す条件情報を取得する条件情報取得部12と、取得された単位指標値及び条件情報から、建材を用いた工事を行った場合に、現場に生じる時系列の臭気の指標値を予測する予測部13と、予測された時系列の臭気の指標値に基づいて、工事計画を生成する工事計画生成部14とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事に用いられる建材の単位量あたりの、当該建材を用いた工事からの時間経過に応じた当該建材から生じる臭気の人の嗅覚による単位指標値を取得する単位指標値取得手段と、
工事に用いられる前記建材の量を含む、工事の条件を示す条件情報を取得する条件情報取得手段と、
前記単位指標値取得手段によって取得された単位指標値、及び前記条件情報取得手段によって取得された条件情報から、前記建材を用いた工事を行った場合に、現場に生じる時系列の臭気の指標値を予測する予測手段と、
前記予測手段によって予測された時系列の臭気の指標値に基づいて、工事計画を生成する工事計画生成手段と、
を備える工事計画生成システム。
【請求項2】
前記単位指標値取得手段は、所定の換気を行った場合の単位指標値を取得し、
前記条件情報取得手段は、換気に係る情報を含む条件情報を取得する請求項1に記載の工事計画生成システム。
【請求項3】
前記工事計画生成手段は、前記予測手段によって予測された時系列の臭気の指標値と、予め設定した閾値とを比較して、工事計画を生成する請求項1又は2に記載の工事計画生成システム。
【請求項4】
前記工事計画生成手段は、前記工事計画として、工事を行う建物を利用者に利用可能にする時期を算出する請求項1又は2に記載の工事計画生成システム。
【請求項5】
前記工事計画生成手段は、前記工事計画として、工事に用いる建材の種類の候補を決定する請求項1又は2に記載の工事計画生成システム。
【請求項6】
前記工事計画生成手段は、前記工事計画として、工事の際の換気について決定する請求項1又は2に記載の工事計画生成システム。
【請求項7】
前記条件情報取得手段は、工事の際に工事による臭気の影響を及ぼす領域全体に対する工事対象の領域を示す情報を含む条件情報を取得する請求項1又は2に記載の工事計画生成システム。
【請求項8】
工事計画生成システムの動作方法である工事計画生成方法であって、
工事に用いられる建材の単位量あたりの、当該建材を用いた工事からの時間経過に応じた当該建材から生じる臭気の人の嗅覚による単位指標値を取得する単位指標値取得ステップと、
工事に用いられる前記建材の量を含む、工事の条件を示す条件情報を取得する条件情報取得ステップと、
前記単位指標値取得ステップにおいて取得された単位指標値、及び前記条件情報取得ステップにおいて取得された条件情報から、前記建材を用いた工事を行った場合に、現場に生じる時系列の臭気の指標値を予測する予測ステップと、
前記予測ステップにおいて予測された時系列の臭気の指標値に基づいて、工事計画を生成する工事計画生成ステップと、
を含む工事計画生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事計画を生成する工事計画生成システム及び工事計画生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物を構成する資材から放散されるVOC(揮発性有機化合物)の建物内の濃度を予測することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7089924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、建物の改修工事の需要が高まっており、建物を利用しながら改修工事を行う「居ながら改修工事」の割合が多くなっている。居ながら改修工事では、建物の利用に係る生産性又は売り上げを確保しながら改修工事を行うことができるというメリットがある。しかし、居ながら改修工事における内装工事では、塗料及び化粧ボードに使用するプライマー等の建材から発生する臭気が問題となることが多く、利用者からのクレームにつながることがある。
【0005】
この問題を防止するためには、建物の利用者が改修工事を行う施工室の利用を開始し得る時期(供用開始時期)、使用する建材の設定及び施工中の換気計画等の工事計画(施工計画)を適切に立案する必要がある。即ち、工事中及び工事後の建物利用者に配慮した工事計画を立案する必要がある。
【0006】
VOC濃度は臭気に影響を及ぼすため、工事計画の立案に特許文献1に示されるVOC濃度の予測方法を利用することが考えられる。しかしながら、VOCの種類によっては、低濃度でもにおいを強く感じるもの、及び高濃度でもにおいを弱く感じるものがある。そのため、VOC濃度のみでは、建物から発生した臭気に対して人が容認できるレベルであるかを判断することができない。従って、工事計画の立案に、単に特許文献1に示されるVOC濃度の予測方法を利用するだけでは、必ずしも工事計画を適切に立案することはできない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、適切な工事計画を生成することができる工事計画生成システム及び工事計画生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る工事計画生成システムは、工事に用いられる建材の単位量あたりの、当該建材を用いた工事からの時間経過に応じた当該建材から生じる臭気の人の嗅覚による単位指標値を取得する単位指標値取得手段と、工事に用いられる建材の量を含む、工事の条件を示す条件情報を取得する条件情報取得手段と、単位指標値取得手段によって取得された単位指標値、及び条件情報取得手段によって取得された条件情報から、建材を用いた工事を行った場合に、現場に生じる時系列の臭気の指標値を予測する予測手段と、予測手段によって予測された時系列の臭気の指標値に基づいて、工事計画を生成する工事計画生成手段と、を備える。
【0009】
本発明に係る工事計画生成システムでは、人の嗅覚による単位指標値及び条件情報から現場に生じる時系列の臭気の指標値が予測されて、予測された指標値に基づいて、工事計画が生成される。従って、工事により発生する臭気がより適切に考慮されて、工事計画が生成される。このように本発明に係る工事計画生成システムによれば、適切な工事計画を生成することができる。
【0010】
単位指標値取得手段は、所定の換気を行った場合の単位指標値を取得し、条件情報取得手段は、換気に係る情報を含む条件情報を取得することとしてもよい。この構成によれば、換気を考慮した適切な工事計画を生成することができる。
【0011】
工事計画生成手段は、予測手段によって予測された時系列の臭気の指標値と、予め設定した閾値とを比較して、工事計画を生成することとしてもよい。この構成によれば、閾値に基づく適切な工事計画を生成することができる。
【0012】
工事計画生成手段は、工事計画として、工事を行う建物を利用者に利用可能にする時期を算出することとしてもよい。工事計画生成手段は、工事計画として、工事に用いる建材の種類の候補を決定することとしてもよい。工事計画生成手段は、工事計画として、工事の際の換気について決定することとしてもよい。これらの構成によれば、これらの具体的な工事計画を生成することができる。
【0013】
条件情報取得手段は、工事の際に工事による臭気の影響を及ぼす領域全体に対する工事対象の領域を示す情報を含む条件情報を取得することとしてもよい。この構成によれば、工事による臭気の影響を及ぼす領域に対する工事対象の領域を考慮した適切な工事計画を生成することができる。
【0014】
ところで、本発明は、上記のように工事計画生成システムの発明として記述できる他に、以下のように工事計画生成方法の発明としても記述することができる。これらはカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
【0015】
即ち、本発明に係る工事計画生成方法は、工事計画生成システムの動作方法である工事計画生成方法であって、工事に用いられる建材の単位量あたりの、当該建材を用いた工事からの時間経過に応じた当該建材から生じる臭気の人の嗅覚による単位指標値を取得する単位指標値取得ステップと、工事に用いられる建材の量を含む、工事の条件を示す条件情報を取得する条件情報取得ステップと、単位指標値取得ステップにおいて取得された単位指標値、及び条件情報取得ステップにおいて取得された条件情報から、建材を用いた工事を行った場合に、現場に生じる時系列の臭気の指標値を予測する予測ステップと、予測ステップにおいて予測された時系列の臭気の指標値に基づいて、工事計画を生成する工事計画生成ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、適切な工事計画を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る工事計画生成システムの機能構成を示す図である。
図2】建材の塗布からの時間経過に応じた臭気濃度のグラフの例である。
図3】建材の塗布からの時間経過に応じた非容認率のグラフの例である。
図4】入室式無臭室法を説明するための図である。
図5】三点比較式臭袋法を説明するための図である。
図6】臭気濃度と非容認率との関係を示す検量線のグラフの例である。
図7】建材の塗布からの時間経過に応じた臭気濃度の予測値のグラフの例である。
図8】建材の種類毎の臭気濃度と非容認率との関係を示す検量線のグラフの例である。
図9】建材の種類毎の建材の塗布からの時間経過に応じた臭気濃度の予測値のグラフの例である。
図10】換気回数毎の建材の塗布からの時間経過に応じた臭気濃度の予測値のグラフの例である。
図11】一部が施工区画となっている施工室を示す図である。
図12】対象とする領域毎の建材の塗布からの時間経過に応じた臭気濃度の予測値のグラフの例である。
図13】本発明の実施形態に係る工事計画生成システムで実行される処理である工事計画生成方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面と共に本発明に係る工事計画生成システム及び工事計画生成方法の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1に本実施形態に係る工事計画生成システム10の機能構成を示す。工事計画生成システム10は、工事計画を生成(立案)するシステム(装置)である。生成される工事計画に係る工事は、臭気を生じる建材を用いて行われるものである。工事計画生成システム10は、建材から生じる臭気を考慮した工事計画を生成する。
【0020】
例えば、当該工事は、建物を改修する工事である。また、当該工事は、建物を利用しながら部屋の改修工事を行う居ながら改修(リニューアル)工事であってもよい。工事に用いられる臭気を生じる建材は、例えば、塗料及び化粧ボードに使用するプライマー等の建材である。本実施形態では、これらの建材を、臭気を生じる建材の例として説明する。また、当該建材は、化粧フィルム用のプライマー、施工アンカー(例えば、ケミカルアンカー)又は塗料等であってもよい。
【0021】
建材を用いた工事(建材の施工)には、建材の設置、及び建材の塗布を含む。工事計画生成システム10によって生成される工事計画は、例えば、工事対象の建物の利用者が改修工事を行う施工室(部屋)の利用を開始し得る時期(供用開始時期)、工事に用いられる建材の設定及び施工中の換気計画である。但し、工事計画生成システム10によって生成される工事計画は、上記に限られず、工事に係る計画であればよい。
【0022】
建材から生じる臭気を考慮した工事計画を生成することで、工事を行う建設工事就労者の労働環境の向上、又は工事対象の建物の利用者に対する臭気の影響の低減を可能にする。
【0023】
工事計画生成システム10は、具体的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等のハードウェアを含むコンピュータであるPC(パーソナルコンピュータ)又はサーバ装置等である。工事計画生成システム10の後述する各機能は、これらの構成要素がプログラム等により動作することによって発揮される。なお、工事計画生成システム10は、一つのコンピュータで実現されてもよいし、複数のコンピュータがネットワークにより互いに接続されて構成されるコンピュータシステムにより実現されていてもよい。
【0024】
引き続いて、本実施形態に係る工事計画生成システム10の機能を説明する。図1に示すように、工事計画生成システム10は、単位指標値取得部11と、条件情報取得部12と、予測部13と、工事計画生成部14とを備えて構成される。
【0025】
単位指標値取得部11は、工事に用いられる建材の単位量あたりの、当該建材を用いた工事からの時間経過に応じた当該建材から生じる臭気の人の嗅覚による単位指標値を取得する単位指標値取得手段である。単位指標値取得部11は、所定の換気を行った場合の単位指標値を取得してもよい。
【0026】
本実施形態における臭気の指標値は、人の嗅覚によるものである。例えば、本実施形態における、臭気の指標値は臭気濃度である。図2に、単位指標値取得部11によって取得される、建材の塗布(建材を用いた工事)からの時間経過に応じた単位指標値のグラフの例を示す。図2に示すように、単位指標値は、上記の経過時間に応じた臭気濃度Dの値である。臭気濃度は、その臭気を無臭の清浄な空気で希釈した時ちょうど臭わなくなった時の希釈倍数、つまり、その臭気を無臭化するために必要な希釈倍数である。
【0027】
本実施形態では、臭気濃度に対応する経過時間に応じた非容認率Pの値も用いられる。図3に、建材の塗布(建材を用いた工事)からの時間経過に応じた非容認率Pのグラフの例を示す。非容認率Pは、全被験者数における、その臭気を受け入れられないと感じた人の割合である。非容認率Pは、工事計画生成部14による工事計画の生成に用いられる。臭気濃度D及び非容認率Pは、何れも人の嗅覚によって評価される値である。本実施形態で用いられる臭気濃度D及び非容認率Pの値は、後述するように予め設定される条件の下での値である。
【0028】
上記の非容認率及び臭気濃度の値(例えば、図2及び図3に示すグラフの値)は、予め用意される。例えば、上記の非容認率及び臭気濃度の値は、以下の方法によって得ることができる。非容認率は、入室式無臭室法(以下、入室法と呼ぶ)によって得られる。入室法は、岩崎好陽:臭気の嗅覚測定、公益社団法人におい・かおり環境協会、2004、PP.52-53(非特許文献1)、及び日本建築学会:日本建築学会環境基準 AIJES-A0003-2019 室内の臭気に関する対策・維持管理基準・同解説、2019、PP12-13(非特許文献2)に示されている。
【0029】
入室法は一定の大きさの部屋に臭気を満たし、被験者がその臭気を嗅ぎ、評価を行う方法である。例えば、図4(a)に示すユニットハウス内に、工事に用いられると共に臭気の発生源となる建材を塗布する。塗布後、被験者は予め設定した時間(0,24,72時間)経過後に、部屋に入り、図4(b)に示すアンケートにより臭いを評価する。アンケートは、(においを)「受け入れられる」及び「受け入れられない」の二者択一である。これを約60人程度の被験者を対象に実施し、得られたアンケート結果から以下の式を用いて非容認率を求める。
非容認率=(受け入れられないと回答した人数)/(被験者の全人数)
【0030】
また、非容認率の評価を行う直前又は直後に室内の臭気を捕集し、捕集した臭気を対象に、非特許文献1に示される三点比較式臭袋法により臭気濃度を評価(測定)する。
【0031】
三点比較式臭袋法は、例えば、以下のように行われる。図5に示すように、捕集した臭気を詰めた袋(原臭:ハッチングあり)1つと、無臭空気を詰めた袋(原臭:ハッチングなし)2つとの計3つの袋を用意する。被験者はこの3つの袋のにおいを嗅ぎ、臭いのする袋の番号を回答する。この回答が、捕集した空気を詰めた袋の番号と一致すれば、次に捕集した臭気を希釈した臭気を用いて同様の手順を行う。これを被験者が間違えるまで繰り返し、被験者が回答できる一番高い希釈倍率を求める。これを、6人を対象に実施することで、臭気濃度を求める。
【0032】
なお、入室法の際に塗布される建材の量が、当該建材の単位量となる。例えば、この際の建材の単位量を示す値として、この際の建材の負荷率が用いられる。建材の負荷率は、以下の式で算出される。
建材の負荷率 = 建材の塗布面積 / 部屋の容積
【0033】
また、入室法では、換気が行われてもよい。例えば、換気回数は、以下の式で算出される。
換気回数 = 1時間あたりの部屋に供給される空気量/部屋の容積
【0034】
例えば、上記の三点比較式臭袋法及び入室法を実施することで、臭気濃度及び非容認率の経過時間(0,24,72時間)毎の値が得られる。また、各経過時間で同一臭気を対象とし、臭気濃度及び非容認率を評価(測定)しているため、得られた臭気濃度及び非容認率の値から、臭気濃度と非容認率との関係を示す検量線を生成することができる。図6に、当該検量線の例のグラフを示す。図6に示す検量線では、縦軸が非容認率Pであり、横軸が臭気濃度Dである。検量線は、同一経過時間(0,24,72時間)における臭気濃度及び非容認率の値に基づいて、予め設定したモデルを用いて回帰分析を行うことで得ることができる。予め設定したモデルは、例えば、ロジスティック分析の回帰式である。なお、非特許文献1及び2には、工事に用いられる建材に対して、これらの値等を算出すること及び時系列の評価を行うことは示されていない。
【0035】
単位指標値取得部11は、単位指標値として臭気濃度Dの予め設定された経過時間(例えば、0,24,72時間)毎の値を取得する。単位指標値取得部11は、予め設定された経過時間毎の値にかえて、図2の点線のグラフに示すような臭気濃度Dの経過時間毎の値から得られた回帰式を取得してもよい。回帰式は、例えば、指数関数である。また、回帰式は、指数関数以外のモデルであってもよい。また、単位指標値取得部11は、単位指標値に係る情報として、臭気濃度Dの値に対応する上記の建材の負荷率及び換気回数を示す情報(又は、これらを算出するための情報)、及び臭気濃度と非容認率との検量線を示す情報を取得する。
【0036】
例えば、単位指標値取得部11は、工事計画生成システム10のユーザ(例えば、工事の施工者)によるこれらの情報の入力操作を受け付けて情報を取得する。この場合、工事計画生成システム10のユーザは、予め上記の方法によって各情報を取得しておく。また、単位指標値取得部11は、上記以外の方法で各情報を取得してもよい。単位指標値は、建材の単位量あたりの、当該建材を用いた工事からの時間経過に応じた当該建材から生じる臭気の人の嗅覚によるものであれば、必ずしも上記の情報でなくてもよい。なお、非容認率及び臭気濃度の値は、上記以外の方法で取得されてもよい。また、人の嗅覚による臭気の指標値は、上記以外のものが用いられてもよい。
【0037】
単位指標値取得部11によって取得される情報は、工事に用いられる建材固有の情報である。従って、異なる種類の建材を用いた工事計画を立案する場合には、単位指標値取得部11は、建材の種類毎の情報を取得する。また、建材は、工事に用いられる候補のものであってもよい。
【0038】
単位指標値取得部11は、取得した単位指標値及びそれに関連する情報を予測部13に出力する。単位指標値取得部11は、取得した臭気濃度と非容認率との検量線を示す情報を工事計画生成部14に出力する。
【0039】
条件情報取得部12は、工事に用いられる建材の量を含む、工事の条件を示す条件情報を取得する条件情報取得手段である。条件情報取得部12は、換気に係る情報を含む条件情報を取得してもよい。条件情報は、建材を用いた工事を行った場合に、現場に生じる時系列の臭気の指標値の予測部13による予測に用いられるものである。
【0040】
例えば、工事に用いられる建材の量は、当該建材の負荷率である。建材の負荷率は、以下の式で算出される。
建材の負荷率 = 建材の塗布面積 / 施工室の容積
【0041】
また、条件情報には、工事の対象となる施工室の換気回数を示す情報を含まれていてもよい。例えば、換気回数は、以下の式で算出される。
換気回数 = 1時間あたりの施工室に供給される空気量/施工室の容積
【0042】
条件情報取得部12は、建材の負荷率及び換気回数を示す情報(又は、これらを算出するための情報)を取得する。例えば、条件情報取得部12は、工事計画生成システム10のユーザによるこれらの情報の入力操作を受け付けて情報を取得する。この場合、工事計画生成システム10のユーザは、予め各情報を取得しておく。また、条件情報取得部12は、上記以外の方法で各情報を取得してもよい。また、条件情報は、工事に用いられる建材の量を含む、工事の条件を示す情報であれば、上記以外の情報であってもよい。条件情報取得部12は、取得した条件情報を予測部13に出力する。
【0043】
予測部13は、単位指標値取得部11によって取得された単位指標値、及び条件情報取得部12によって取得された条件情報から、建材を用いた工事を行った場合に、現場に生じる時系列の臭気の指標値を予測する予測手段である。
【0044】
予測部13は、例えば、以下のように現場に生じる時系列の臭気の指標値を予測する。予測部13は、単位指標値取得部11から単位指標値及びそれに関連する情報を入力する。予測部13は、条件情報取得部12から条件情報を入力する。予測部13は、予め記憶した予測の方法を基づき、入力した情報から時系列の臭気の指標値を予測する。予測される指標値は、単位指標値と同様の臭気濃度である。予測される現場に生じる時系列の臭気の指標値は、建材の塗布(建材を用いた工事)がなされた場合の塗布からの時間経過に応じた指標値である。図7に、予測部13の予測結果である時系列の臭気の指標値の例を示す。
【0045】
例えば、予測部13は、建材の塗布からの経過時間毎の単位指標値から現場での臭気の指標値を予測する式を記憶しておき、記憶した式に入力した情報によって示される値を入力して指標値を予測する。指標値を予測する式は、例えば、以下の式である。
2t = D1t × L/L × n/n
ここで、各文字の意味は以下の通りである。
2t:工事現場(施工室)での建材の塗布からの経過時間tでの臭気濃度(予測値)
1t:単位指標値である建材の塗布からの経過時間tでの臭気濃度
:単位指標値に対応する建材の負荷率(試験での建材の負荷率)
:条件情報によって示される建材の負荷率(工事現場(施工室)での負荷率)
:単位指標値に対応する換気回数(試験での換気回数)
:条件情報によって示される換気回数(工事現場(施工室)での換気回数)
【0046】
予測部13は、例えば、単位指標値を測定した経過時間(0,24,72時間)毎に臭気濃度を予測する。例えば、単位指標値取得部11で取得した回帰式を用いて各経過時間の臭気濃度を算出してもよい。あるいは、予測される現場での各経過時間の臭気濃度に対応する単位指標値取得部11で取得した単位指標値を用いてもよい。この場合、予測部13は、上記の経過時間以外の経過時間の臭気濃度については、上記の経過時間の臭気濃度から補完してもよい。例えば、図7に示すように、隣り合う上記の経過時間の臭気濃度間(例えば、0時間の臭気濃度と24時間の臭気濃度との間、及び24時間の臭気濃度と72時間の臭気濃度との間)で線形の関係となるように臭気濃度を補完してもよい。
【0047】
また、予測部13は、単位指標値及び条件情報を用いた予測であれば、上記以外の方法で現場に生じる時系列の臭気の指標値を予測してもよい。予測部13は、予測した時系列の臭気の指標値を示す情報を工事計画生成部14に出力する。
【0048】
工事計画生成部14は、予測部13によって予測された時系列の臭気の指標値に基づいて、工事計画を生成する工事計画生成手段である。工事計画生成部14は、予測部13によって予測された時系列の臭気の指標値と、予め設定した閾値とを比較して、工事計画を生成してもよい。工事計画生成部14は、工事計画として、工事を行う建物を利用者に利用可能にする時期を算出してもよい。工事計画生成部14は、工事計画として、工事に用いる建材の種類の候補を決定してもよい。工事計画生成部14は、工事計画として、工事の際の換気について決定してもよい。
【0049】
工事計画生成部14は、例えば、以下のように工事計画を生成する。まず、工事計画として、建材を塗布してから工事対象の建物の利用者が施工室の利用を開始し得る時期である供用開始時期を生成する場合の例を説明する。工事計画生成部14は、単位指標値取得部11から、臭気濃度と非容認率との検量線を示す情報を入力する。工事計画生成部14は、予測部13から、時系列の臭気の指標値の予測値を示す情報を入力する。なお、これらの情報の入力は、以下の別の例においても同様に行われる。
【0050】
まず、工事計画生成部14は、工事計画の生成に用いる臭気濃度の閾値を設定する。工事計画生成部14は、臭気濃度の閾値の設定のために非容認率の閾値を取得する。非特許文献2では、非容認率のグレードが以下のように示されている。
グレードA:非容認率15%以下
グレードB:非容認率20%以下
グレードC:非容認率30%以下
グレードAの「非容認率15%以下」とは、対象の空間に対する臭気を「受け入れられない」と感じる人の割合が全体の15%以下である状況を示す。上記の指標は、ISO17772-1(2017)の考え方を参考に建築学会が規定した数値である。
【0051】
工事計画生成部14は、上記のグレードに応じた非容認率の閾値を取得してもよい。例えば、グレードAであれば、非容認率の閾値は15%となる。非容認率の閾値は、工事計画生成システム10のユーザによって、工事対象の建物又は施工室の用途にあわせて任意に設定されればよい。工事計画生成部14は、例えば、工事計画生成システム10のユーザによる入力操作を受け付けて非容認率の閾値を取得する。
【0052】
工事計画生成部14は、単位指標値取得部11から入力した臭気濃度と非容認率との検量線において、取得した非容認率の閾値に対応する臭気濃度を臭気濃度の閾値として設定する。例えば、図6に示すように非容認率の閾値(設定した非容認率)が15%であれば、設定される臭気濃度の閾値は9となる。なお、臭気濃度の閾値は、必ずしも、非容認率の閾値から設定される必要はない(以下についても同様である)。例えば、工事計画生成部14は、工事計画生成システム10のユーザによる臭気濃度の閾値の入力操作を受け付けて臭気濃度の閾値を取得してもよい。
【0053】
臭気濃度の閾値が設定されると、予測部13によって予測された時系列の臭気濃度から、工事の対象となる施工室内において、建材を塗布してから、臭気濃度が臭気濃度の閾値となるまでの時間を算出することができる。工事計画生成部14は、この時間を算出して、算出した時間をもとに工事計画を生成する。例えば、上記のように臭気濃度の閾値が9と設定されると、図7に示す予測された時系列の臭気濃度では、上記の時間は60時間と算出される。
【0054】
工事計画生成部14は、生成する工事計画として、上記のように算出した時間(例えば、60時間)を、建材を塗布してから供用開始時期までの期間とする。供用開始時期をこのようにすることで、建材から発生する臭気に対して、利用者は不快に感じる時期を避けて快適に部屋を利用することができる。例えば、居ながら改修工事を行う際、施工室となる部屋を利用する人が、どのくらいの時間をあければ不快な臭気を感じずに部屋を利用できるかを提示することができる。
【0055】
続いて、工事計画として、使用する建材を設定する場合の例を説明する。この場合、予測部13による臭気濃度の予測は、工事に用いられる建材の候補となる建材の種類毎に行われる。臭気濃度と非容認率との検量線も、同様に建材の種類毎に用意される。この場合、工事計画生成部14は、上記と同様に非容認率の閾値を取得する。工事計画生成部14は、建材の種類毎の検量線を用いて、建材の種類毎に非容認率の閾値から臭気濃度の閾値を設定する。
【0056】
例えば、図8に示すように、使用する建材の候補となる建材の種類として、材料A及びBがあり、任意に設定した非容認率の閾値が20%であれば、材料Aについて設定される臭気濃度の閾値は6となり、材料Bについて設定される臭気濃度の閾値は12となる。
【0057】
続いて、工事計画生成部14は、建材の種類毎に、上記と同様に予測部13によって予測された時系列の臭気濃度から、工事の対象となる施工室内において、建材を塗布してから、臭気濃度が臭気濃度の閾値となるまでの時間を算出する。例えば、図9に示すように、臭気濃度の閾値が6と設定された材料Aでは、上記の時間は66時間と算出される。臭気濃度の閾値が12と設定された材料Bでは、上記の時間は30時間と算出される。
【0058】
工事計画生成部14は、生成する工事計画として、上記のように算出した時間が短い方の建材を、工事に用いる建材として設定する。例えば、上記の例では、材料Bが、工事に用いる建材として設定される。このように工事に用いる建材を設定することで、改修工事後(建材の塗布後)の部屋の利用者が不快に感じる期間がより短い建材を提案することができる。
【0059】
続いて、工事計画として、工事の際の換気計画を生成する場合の例を説明する。この場合、予測部13による臭気濃度の予測は、予め設定した複数の換気回数毎に行われる。例えば、条件情報取得部12によって各換気回数の条件情報が取得されて、各換気回数の条件情報毎に予測部13による臭気濃度の予測が行われればよい。
【0060】
工事計画生成部14は、上記と同様に非容認率の閾値を取得する。工事計画生成部14は、検量線を用いて非容認率の閾値から臭気濃度の閾値を設定する。例えば、図6に示すように、非容認率の閾値が15%であれば、臭気濃度の閾値は9となる。
【0061】
続いて、工事計画生成部14は、複数の換気回数毎に、上記と同様に予測部13によって予測された時系列の臭気濃度から、工事の対象となる施工室内において、建材を塗布してから、臭気濃度が臭気濃度の閾値となるまでの時間を算出する。例えば、上記のように臭気濃度の閾値が9と設定されると、図10に示す予測された時系列の臭気濃度では、換気回数aでは、上記の時間は40時間と算出され、換気回数bでは、上記の時間は60時間と算出される。
【0062】
工事計画生成部14は、上記のように算出した時間に基づいて、工事計画として工事の際の換気の回数を決定する。例えば、工事計画生成部14は、ユーザの入力操作を受け付けて予め求められる供用開始時期を示す情報を取得し、供用開始時期にあわせた換気回数を設定する。工事計画生成部14は、算出した上記の時間が、建材を塗布してから供用開始時期までの期間が最も短い換気回数を、工事の際の換気の回数として決定する。このように工事の際の換気について決定することで、工事の際に適切な換気を行うことができる。
【0063】
条件情報取得部12は、工事の際に工事による臭気の影響を及ぼす領域全体に対する工事対象の領域を示す情報を含む条件情報を取得してもよい。予測部13は、当該情報に基づいて時系列の臭気の指標値を予測する。
【0064】
例えば、図11に示すように、大きな部屋の一角のみが改修工事の対象となっている場合、改修工事の対象となっていない範囲を含めて施工室の容積として考慮することで、施工中の施工室の利用者への影響を把握することができる。例えば、換気回数が7.5回/h、床面積100m、天井高さ2.5mの部屋のうち、25mが施工区画(図11でハッチングした部分、施工対象区画)、塗料の施工面積が12.5%の場合、施工区画の負荷率は0.2m/mであるが、部屋全体で考えると負荷率は0.05m/mとなる。
【0065】
条件情報に含まれる、工事の際に工事による臭気の影響を及ぼす領域全体に対する工事対象の領域を示す情報としては、例えば、施工室全体(工事による臭気の影響を及ぼす領域全体)に対する施工区画(工事対象の領域)の面積若しくは体積の値、又はそれらの割合としてもよい。また、条件情報には、施工室全体の面積若しくは体積の値が含まれていてもよい。条件情報をこのようにすることで、予測部13は、施工区画及び施工室全体について、時系列の臭気濃度を予測することができる。
【0066】
工事計画生成部14は、上記と同様に非容認率の閾値を取得する。工事計画生成部14は、検量線を用いて非容認率の閾値から臭気濃度の閾値を設定する。例えば、図6に示すように、非容認率の閾値が15%であれば、臭気濃度の閾値は9となる。
【0067】
続いて、工事計画生成部14は、施工区画及び施工室全体それぞれについて、上記と同様に予測部13によって予測された時系列の臭気濃度から、工事の対象となる施工室内において、建材を塗布してから、臭気濃度が臭気濃度の閾値となるまでの時間を算出する。例えば、上記のように臭気濃度の閾値が9と設定されると、図12に示す予測された時系列の臭気濃度では、施工区画では、上記の時間は60時間と算出され、施工室全体では、上記の時間は0時間と算出される。
【0068】
工事計画生成部14は、生成する工事計画として、施工区画では供用開始時期を60時間として、施工室全体(施工区画以外の部分)では供用開始時期を0時間とする。従って、この場合、施工室全体では、工事中に施工区画以外の部分を利用しても問題ないと判断できる。その一方、施工区画内を利用できるようになるまで(臭気濃度が閾値に達するまで)には60時間を要すると判断できる。
【0069】
工事計画生成部14は、必ずしも上記の方法で工事計画を生成する必要はなく、予測部13によって予測された時系列の臭気の指標値に基づいて、工事計画を生成すればよい。
【0070】
工事計画生成部14は、生成した工事計画を示す情報を出力する。例えば、工事計画生成部14は、生成した工事計画を示す情報を工事計画生成システム10が備える表示装置に表示する。又は、工事計画生成部14は、生成した工事計画を示す情報をユーザの端末に送信する。ユーザは、出力された工事計画を示す情報を参照して、工事に利用することができる。以上が、本実施形態に係る工事計画生成システム10の機能である。
【0071】
引き続いて、図13のフローチャートを用いて、本実施形態に係る工事計画生成システム10で実行される処理である工事計画生成方法を説明する。本処理では、単位指標値取得部11によって、工事に用いられる建材の単位量あたりの、当該建材を用いた工事からの時間経過に応じた当該建材から生じる臭気の人の嗅覚による単位指標値が取得される(S01、単位指標値取得ステップ)。また、条件情報取得部12によって、工事に用いられる建材の量を含む、工事の条件を示す条件情報が取得される(S02、条件情報取得ステップ)。なお、単位指標値の取得(S01)及び条件情報の取得(S02)は、互いに独立して行われ得るので必ずしも上記の順番で行われる必要はない。
【0072】
続いて、予測部13によって、単位指標値取得部11によって取得された単位指標値、及び条件情報取得部12によって取得された条件情報から、建材を用いた工事を行った場合に、現場に生じる時系列の臭気の指標値が予測される(S03、予測ステップ)。続いて、工事計画生成部14によって、予測部13によって予測された時系列の臭気の指標値に基づいて、工事計画が生成される(S04、工事計画生成ステップ)。続いて、工事計画生成部14によって、生成された工事計画を示す情報が出力される(S05)。以上が、本実施形態に係る工事計画生成方法である。
【0073】
本実施形態では、人の嗅覚による単位指標値及び条件情報から現場に生じる時系列の臭気の指標値が予測されて、予測された指標値に基づいて、工事計画が生成される。従って、工事により発生する臭気(例えば、当該臭気に対する人の容認度)がより適切に考慮されて、工事計画が生成される。このように本実施形態によれば、適切な工事計画を生成することができる。例えば、上述したように居ながら改修工事を行う場合に適切な工事計画を生成することができる。その結果、適切な工事を行うことができる。例えば、上述したように、工事を行う建設工事就労者の労働環境の向上、又は工事対象の建物の利用者に対する臭気の影響の低減を可能にする。
【0074】
また、工事計画生成システム10の対象となる工事は、改修工事ではなく、建物の新築工事であってもよい。新築工事を対象とすることで、例えば、新築工事が終わった部分から段階的に供用を開始する場合に、工事計画生成システム10によって生成される工事計画を用いることができる。
【0075】
本実施形態のように、単位指標値取得部11は、所定の換気を行った場合の単位指標値を取得し、条件情報取得部12は、換気に係る情報を含む条件情報を取得することとしてもよい。この構成によれば、換気を考慮した適切な工事計画を生成することができる。但し、工事計画生成システム10では、換気に係る情報は、必ずしも利用される必要はない。
【0076】
本実施形態のように、工事計画生成部14は、予測部13によって予測された時系列の臭気の指標値と、予め設定した閾値とを比較して、工事計画を生成することとしてもよい。この構成によれば、閾値に基づく適切な工事計画を生成することができる。但し、工事計画生成部14は、閾値を用いずに工事計画を生成してもよい。
【0077】
本実施形態のように、工事計画は、工事を行う建物を利用者に利用可能にする時期であってもよい。また、工事計画は、工事に用いる建材の種類でもよい。また、工事計画は、工事の際の換気についてのものであってもよい。これらの構成によれば、これらの具体的な工事計画を生成することができる。但し、生成される工事計画は、予測された時系列の臭気の指標値に基づいて生成されるものであれば、上記以外のものであってもよい。
【0078】
本実施形態のように、条件情報は、工事の際に工事による臭気の影響を及ぼす領域全体(例えば、施工室全体)に対する工事対象の領域(例えば、施工区画)を示す情報を含んでいてもよい。この構成によれば、工事による臭気の影響を及ぼす領域に対する工事対象の領域を考慮した適切な工事計画を生成することができる。但し、条件情報には、必ずしも上記の情報が含まれていなくてもよい。
【0079】
本実施形態では、単位指標値取得部11によって取得される単位指標値及び予測部13によって予測される指標値は、臭気濃度であるとした。しかしながら、指標値は、建材から生じる臭気の人の嗅覚による指標値であれば、臭気濃度以外であってもよい。
【0080】
人が感知する臭気の主たるものはVOCである。従来のにおいセンサーには、VOCに反応する半導体又は膜が使用されている。そのため、臭気濃度等の人の嗅覚による指標値と従来のにおいセンサーの応答値とには相関があると考えられる。そのため、従来のにおいセンサーの値を工事計画生成システム10で用いる指標値としてもよい。あるいは、工事に用いる建材の種類毎のVOC濃度を指標値としてもよい。これらの場合、例えば、上述した非容認率及び臭気濃度の測定時に、室内の臭気を対象に、においセンサーによる測定、又はガスクロマトグラフ質量分析計等の化学分析機器を用いたVOCの濃度の測定を行って、建材の種類毎に予めVOC濃度以外の人の嗅覚による指標値とにおいセンサーの値又はVOC濃度との関係性を事前に明らかにしておく。
【0081】
本開示の工事計画生成システム及び工事計画生成方法は、以下の構成を有する。
[1] 工事に用いられる建材の単位量あたりの、当該建材を用いた工事からの時間経過に応じた当該建材から生じる臭気の人の嗅覚による単位指標値を取得する単位指標値取得手段と、
工事に用いられる前記建材の量を含む、工事の条件を示す条件情報を取得する条件情報取得手段と、
前記単位指標値取得手段によって取得された単位指標値、及び前記条件情報取得手段によって取得された条件情報から、前記建材を用いた工事を行った場合に、現場に生じる時系列の臭気の指標値を予測する予測手段と、
前記予測手段によって予測された時系列の臭気の指標値に基づいて、工事計画を生成する工事計画生成手段と、
を備える工事計画生成システム。
[2] 前記単位指標値取得手段は、所定の換気を行った場合の単位指標値を取得し、
前記条件情報取得手段は、換気に係る情報を含む条件情報を取得する[1]に記載の工事計画生成システム。
[3] 前記工事計画生成手段は、前記予測手段によって予測された時系列の臭気の指標値と、予め設定した閾値とを比較して、工事計画を生成する[1]又は[2]に記載の工事計画生成システム。
[4] 前記工事計画生成手段は、前記工事計画として、工事を行う建物を利用者に利用可能にする時期を算出する[1]~[3]の何れかに記載の工事計画生成システム。
[5] 前記工事計画生成手段は、前記工事計画として、工事に用いる建材の種類の候補を決定する[1]~[4]の何れかに記載の工事計画生成システム。
[6] 前記工事計画生成手段は、前記工事計画として、工事の際の換気について決定する[1]~[5]の何れかに記載の工事計画生成システム。
[7] 前記条件情報取得手段は、工事の際に工事による臭気の影響を及ぼす領域に対する工事対象の領域を示す情報を含む条件情報を取得する[1]~[6]の何れかに記載の工事計画生成システム。
[8] 工事計画生成システムの動作方法である工事計画生成方法であって、
工事に用いられる建材の単位量あたりの、当該建材を用いた工事からの時間経過に応じた当該建材から生じる臭気の人の嗅覚による単位指標値を取得する単位指標値取得ステップと、
工事に用いられる前記建材の量を含む、工事の条件を示す条件情報を取得する条件情報取得ステップと、
前記単位指標値取得ステップにおいて取得された単位指標値、及び前記条件情報取得ステップにおいて取得された条件情報から、前記建材を用いた工事を行った場合に、現場に生じる時系列の臭気の指標値を予測する予測ステップと、
前記予測ステップにおいて予測された時系列の臭気の指標値に基づいて、工事計画を生成する工事計画生成ステップと、
を含む工事計画生成方法。
【符号の説明】
【0082】
10…工事計画生成システム、11…単位指標値取得部、12…条件情報取得部、13…予測部、14…工事計画生成部。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
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