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特開2024-148034異常診断装置、異常診断方法及び異常診断プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148034
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】異常診断装置、異常診断方法及び異常診断プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
G05B23/02 T
G05B23/02 302Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060914
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚田 圭祐
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA02
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223FF04
3C223FF22
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH01
(57)【要約】
【課題】異常データを含む運転データが蓄積されたライブラリが存在しない場合等においても、設備機器の異常を精度良く診断することができること。
【解決手段】設備機器Mの異常が観測されたときにその異常を診断する異常診断装置10において、設備機器の挙動を解析する解析モデルNを作成する解析モデル作成手段11と、設備機器の正常時の運転データに基づき解析モデルを逆解析させて、正常時入力パラメータ確率分布を作成する正常時入力パラメータ確率分布作成手段13と、設備機器の異常時に観測された異常データ及び正常時入力パラメータ確率分布に基づき解析モデルを逆解析させて、異常時入力パラメータ確率分布を作成する異常時入力パラメータ確率分布作成手段14と、正常時入力パラメータ確率分布と異常時入力パラメータ確率分布とを比較して、異常原因を特定する入力パラメータ確率分布評価手段15と、を有して構成されたものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備機器の異常が観測されたときに、その異常を診断する異常診断装置において、
前記設備機器の挙動を解析する解析モデルを作成する解析モデル作成手段と、
前記設備機器の正常時の運転データに基づき前記解析モデルを逆解析させて、正常時入力パラメータ確率分布を作成する正常時入力パラメータ確率分布作成手段と、
前記設備機器の異常時に観測された異常データ及び前記正常時入力パラメータ確率分布に基づき前記解析モデルを逆解析させて、異常時入力パラメータ確率分布を作成する異常時入力パラメータ確率分布作成手段と、
前記正常時入力パラメータ確率分布と前記異常時入力パラメータ確率分布とを比較して、異常原因を特定する入力パラメータ確率分布評価手段と、を有して構成されたことを特徴とする異常診断装置。
【請求項2】
前記正常時入力パラメータ確率分布作成手段及び異常時入力パラメータ確率分布作成手段は、ベイズ推定手法であるマルコフ連鎖モンテカルロ法を採用して解析モデルを逆解析させることを特徴とする請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項3】
前記解析モデルが、物理モデルにて構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の異常診断装置。
【請求項4】
前記解析モデルが、設備機器の運転データに基づいて前記設備機器の挙動を機械学習により予測する予測モデルと物理モデルとが組み合されて構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の異常診断装置。
【請求項5】
前記入力パラメータ確率分布評価手段は、正常時入力パラメータ確率分布と異常時入力パラメータ確率分布とのそれぞれのピークの変化量を算出することで、異常原因を特定するよう構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の異常診断装置。
【請求項6】
前記入力パラメータ確率分布評価手段は、正常時入力パラメータ確率分布と異常時入力パラメータ確率分布間での標準偏差の変化量に基いて、ノイズに起因する異常を診断するよう構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の異常診断装置。
【請求項7】
前記入力パラメータ確率分布評価手段は、異常原因が複数存在する場合に、それぞれの前記異常原因に対して算出した情報量規準に基づき、前記異常原因の優先順位を定量的に評価するよう構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の異常診断装置。
【請求項8】
設備機器の異常が観測されたときに、その異常を診断する異常診断方法において、
前記設備機器の挙動を解析する解析モデルを作成する解析モデル作成ステップと、
前記設備機器の正常時の運転データに基づき前記解析モデルを逆解析させて、正常時入力パラメータ確率分布を作成する正常時入力パラメータ確率分布ステップと、
前記設備機器の異常時に観測された異常データ及び前記正常時入力パラメータ確率分布に基づき前記解析モデルを逆解析させて、異常時入力パラメータ確率分布を作成する異常時入力パラメータ確率分布作成ステップと、
前記正常時入力パラメータ確率分布と前記異常時入力パラメータ確率分布とを比較して、異常原因を特定する入力パラメータ確率分布評価ステップと、を有することを特徴とする異常診断方法。
【請求項9】
コンピュータに、
設備機器の挙動を解析する解析モデルを作成する解析モデル作成ステップと、
前記設備機器の正常時の運転データに基づき前記解析モデルを逆解析させて、正常時入力パラメータ確率分布を作成する正常時入力パラメータ確率分布ステップと、
前記設備機器の異常時に観測された異常データ及び前記正常時入力パラメータ確率分布に基づき前記解析モデルを逆解析させて、異常時入力パラメータ確率分布を作成する異常時入力パラメータ確率分布作成ステップと、
前記正常時入力パラメータ確率分布と前記異常時入力パラメータ確率分布とを比較して、異常原因を特定する入力パラメータ確率分布評価ステップと、を実行させることを特徴とする異常診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、設備機器で観測された異常を診断する異常診断装置、異常診断方法及び異常診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
設備機器に異常な過渡事象や事故が観測されたときに、設備機器の観測データに基づき上記異常の診断を行う異常診断技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6116466号公報
【特許文献2】特許第6658250号公報
【特許文献3】特許第6856443号公報
【特許文献4】特許第5768834号公報
【特許文献5】国際公開第2015/079975号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の設備機器の異常診断技術では、過去の運転データを蓄積することで異常データを含めたライブラリを予め作成し、観測データをリアルタイムでライブラリと照合することで異常を診断している。ライブラリとの照合には機械学習などが用いられており、高速に実行することでリアルタイム診断を可能としている。また、特許文献2に記載の技術では、計測値(観測データ)を統計的に分析することで異常を検出する手法が提案されているが、ライブラリに存在しない異常を診断できないという課題がある。
【0005】
これに対し、特許文献3に記載の技術では、設備機器の解析モデルを作成し、予め想定した異常状態で解析を実行することで異常データを作成して、ライブラリを充実させる手法が提案されている。また、特許文献4に記載の技術では、上記解析モデルの作成方法にも確率的な手法を導入することで、運転データ等を学習させる手法が記載されている。
【0006】
上述の各異常診断技術は、ライブラリ内の過去の異常データと照合することで異常を診断することから、ライブラリに蓄積されていないデータを監視することが難しく、更に、運転開始初期などにおいても異常の診断が困難である。また、解析モデルにより異常データを作成したとしても、想定した異常のみが診断可能であり、複数の異常が複合した条件や、解析者が想定してない異常に対しては適用することが難しい。
【0007】
更に、実際の観測データには、解析結果に含まれない特徴的なノイズが含まれることがある。これは、計測器特有の電気ノイズである熱、電源ノイズ、さらには環境からのシールドが不十分であること等から拾うノイズなど多種多様であり、計測器の個体や設置場所に特有であることが少なくない。そのため、これらのノイズを含んだ実際の観測データを診断するためには、ノイズと異常とを区別する手法が必要である。また、特許文献5には、発生した異常データを使用し、解析モデルを逆解析することで、異常原因となる入力パラメータを計算して異常を診断する技術が記載されている。
【0008】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、異常データを含む運転データが蓄積されたライブラリが存在しない場合や、設備機器の運転データの蓄積が少ない運転開始初期の場合等においても、設備機器の異常を精度良く診断することができる異常診断装置、異常診断方法及び異常診断プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態における異常診断装置は、設備機器の異常が観測されたときに、その異常を診断する異常診断装置において、前記設備機器の挙動を解析する解析モデルを作成する解析モデル作成手段と、前記設備機器の正常時の運転データに基づき前記解析モデルを逆解析させて、正常時入力パラメータ確率分布を作成する正常時入力パラメータ確率分布作成手段と、前記設備機器の異常時に観測された異常データ及び前記正常時入力パラメータ確率分布に基づき前記解析モデルを逆解析させて、異常時入力パラメータ確率分布を作成する異常時入力パラメータ確率分布作成手段と、前記正常時入力パラメータ確率分布と前記異常時入力パラメータ確率分布とを比較して、異常原因を特定する入力パラメータ確率分布評価手段と、を有して構成されたことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の実施形態における異常診断方法は、設備機器の異常が観測されたときに、その異常を診断する異常診断方法において、前記設備機器の挙動を解析する解析モデルを作成する解析モデル作成ステップと、前記設備機器の正常時の運転データに基づき前記解析モデルを逆解析させて、正常時入力パラメータ確率分布を作成する正常時入力パラメータ確率分布ステップと、前記設備機器の異常時に観測された異常データ及び前記正常時入力パラメータ確率分布に基づき前記解析モデルを逆解析させて、異常時入力パラメータ確率分布を作成する異常時入力パラメータ確率分布作成ステップと、前記正常時入力パラメータ確率分布と前記異常時入力パラメータ確率分布とを比較して、異常原因を特定する入力パラメータ確率分布評価ステップと、を有することを特徴とするものである。
【0011】
更に、本発明の実施形態における異常診断プログラムは、コンピュータに、設備機器の挙動を解析する解析モデルを作成する解析モデル作成ステップと、前記設備機器の正常時の運転データに基づき前記解析モデルを逆解析させて、正常時入力パラメータ確率分布を作成する正常時入力パラメータ確率分布ステップと、前記設備機器の異常時に観測された異常データ及び前記正常時入力パラメータ確率分布に基づき前記解析モデルを逆解析させて、異常時入力パラメータ確率分布を作成する異常時入力パラメータ確率分布作成ステップと、前記正常時入力パラメータ確率分布と前記異常時入力パラメータ確率分布とを比較して、異常原因を特定する入力パラメータ確率分布評価ステップと、を実行させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、異常データを含む運転データが蓄積されたライブラリが存在しない場合や、設備機器の運転データの蓄積が少ない運転開始初期の場合等においても、設備機器の異常を精度良く診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る異常診断装置の全体構成を示すブロック図。
図2】一実施形態に係る異常診断方法の工程及び異常診断プログラムのアルゴリズムを説明する、図1の異常診断装置の異常診断手順の全体を示すフローチャート。
図3図1の解析モデルの一例を示すブロック図。
図4図1の解析モデルと入力パラメータとの関係を示すブロック図。
図5図1の解析モデルにおいて観測された異常データ等と入力パラメータとの関係を説明するブロック図。
図6】正常時と異常時とにおけるタンク圧力の変化の一例を示すグラフ。
図7図1の解析モデルにより作成された正常時入力パラメータ確率分布を示し、(A)が入力パラメータとしてのバルブ開度の、(B)が入力パラメータとしての流路抵抗係数のそれぞれグラフ。
図8図1の解析モデルにより正常時入力パラメータ確率分布を作成する手順を示すフローチャート。
図9図1の解析モデルにより作成された異常時入力パラメータ確率分布を示し、(A)が入力パラメータとしてのバルブ開度の、(B)が入力パラメータとしての流路抵抗係数のそれぞれグラフ。
図10図1の解析モデルにより異常時入力パラメータ確率分布を作成する手順を示すフローチャート。
図11図8及び図10において「MCMC方法を用いた解析モデルにより入力パラメータ確率分布を更新」する手順を示すフローチャート。
図12】異常時と正常時の入力パラメータ確率分布の差分を示し、(A)が入力パラメータとしてのバルブ開度の、(B)が入力パラメータとしての流路抵抗係数のそれぞれグラフ。
図13図1の入力パラメータ確率分布評価手段が行う異常診断結果の分類とそれに続く手順を示すフローチャート。
図14】観測データにてノイズが増加する異常が発生する場合において、正常時と異常時の入力パラメータ確率分布を示すグラフ。
図15】異常時入力パラメータ確率分布が複数のピークを有する場合を示すグラフ。
図16】複数のピークを有する異常時入力パラメータ確率分布から、(A)が一方の、(B)が他方のそれぞれピーク部分を分離した場合を示すグラフ。
図17】複数の異常原因を有する場合に情報量規準(AIC)を算出して異常原因の優先順位を評価する手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
図1は、一実施形態に係る異常診断装置の全体構成を示すブロック図である。この図1に示す異常診断装置10は、設備機器Mに異常が観測されたときにその異常を診断するものであり、解析モデル作成手段11、運転データ保存用DB12(DBはデータベースの略称、以下同様)、正常時入力パラメータ確率分布作成手段13、異常時入力パラメータ確率分布作成手段14及び入力パラメータ確率分布評価手段15を有して構成される。このうち入力パラメータ確率分布評価手段15は、比較・変化量算出部16、分布形状判定部17、標準偏差分析部18、分布形状分離部19、情報量規準算出部20及び診断結果出力部21を有する。
【0015】
このような異常診断装置10では、図1及び図2に示すように、解析モデル作成手段11が、設備機器Mの仕様情報に基づいて、設備機器Mの挙動を解析する解析モデルNを作成する(S1)。また、設備機器Mの運転時には、運転データ保存用DB12が、設備機器Mの正常時及び異常時の運転データを蓄積する。
【0016】
次に、正常時入力パラメータ確率分布作成手段13が、設備機器Mの仕様情報(図8の設定値との許容誤差情報)に基づいて、正常時入力パラメータ確率分布を仮決定し、この仮決定した正常時入力パラメータ確率分布と運転データ保存用DB12に保存された正常時の運転データ(観測データ)とに基づき解析モデルNを順解析で正常データを再現するような最適化問題を解くことで逆解析を実現し(以下、単に逆解析と呼ぶ)、正常時入力パラメータ確率分布を決定する(S2)。この正常時入力パラメータ確率分布の決定は、具体的には、正常時入力パラメータ確率分布作成手段13を構成する入力パラメータ確率分布更新部22が実施する。
【0017】
次に、異常時入力パラメータ確率分布作成手段14が正常時入力パラメータ確率分布に基づいて異常時入力パラメータ確率分布を仮決定した後、この仮決定した異常時入力パラメータ確率分布と設備機器Mの異常時運転データ(観測データ)とに基づき解析モデルNを逆解析させて、異常時入力パラメータ確率分布を決定する(S3)。この異常時入力パラメータ確率分布の決定は、具体的には、異常時入力パラメータ確率分布作成手段14を構成する入力パラメータ確率分布更新部23が実施する。
【0018】
上述の正常時入力パラメータ確率分布作成手段13の入力パラメータ確率分布更新部22と異常時入力パラメータ確率分布作成手段14の入力パラメータ確率分布更新部23は、ベイズ推定により確率分布を更新する。その方法としてはマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)を採用してもよい。このマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)を採用して解析モデルNを逆解析させて、それぞれ正常時入力パラメータ確率分布、異常時入力パラメータ確率分布を、後述の如く更新して決定する。なお、一般的なモンテカルロ法でも適用することができるのは勿論である。
【0019】
次に、入力パラメータ確率分布評価手段15の比較・変化量算出部16が、正常時入力パラメータ確率分布作成手段13からの正常時入力パラメータ確率分布と異常時入力パラメータ確率分布作成手段14からの異常時入力パラメータ確率分布とを比較し、両確率分布の差分を求めてピークの変化量を算出し、異常原因を特定(例えば異常原因の入力パラメータを特定)する(S4)。
【0020】
次に、入力パラメータ確率分布評価手段15の分布形状判定部17が、異常時入力パラメータ確率分布の形状を判定して、異常診断結果を分類する(S5)。このステップS5において、異常時入力パラメータ確率分布にピークが単一で、異常原因が1つであると分類されたときには(第1分類)、入力パラメータ確率分布評価手段15の診断結果出力部21が診断結果(単一の異常原因)をそのまま出力する(S6)。
【0021】
ステップS5において、異常時入力パラメータ確率分布の標準偏差が正常時入力パラメータ確率分布に比べて変化していると判断されたときには(第2分類)、入力パラメータ確率分布評価手段15の標準偏差分析部18が上述の変化量を分析してノイズに起因する異常を診断し(S7)、この診断結果を診断結果出力部21が出力する(S8)。
【0022】
ステップS5において、異常時入力パラメータ確率分布にピークが複数存在して異常原因が複数存在すると分類されたときには(第3分類)、まず入力パラメータ確率分布評価手段15の分布形状分離部19が、異常時入力パラメータ確率分布について複数のピーク部分を分離し、次に入力パラメータ確率分布評価手段15の情報量規準算出部20が、分離した異常時入力パラメータ確率分布のそれぞれについて情報量規準を算出して、異常原因の優先順位を定量的に評価し(S9)、診断結果出力部21がこの診断結果を出力する(S10)。
【0023】
次に、上述の異常診断装置10の構成及び作用(手順)を、図3図17を用いてより詳細に説明する。
図3は、例えば、蒸気を熱媒体とした発電用の設備機器Mの一部分をモデル化した図1の解析モデルNの構成を示す。この解析モデルNは代表的な例であり、入力に対して非線形な応答を返すモデルであれば適用可能である。解析モデルNは、例えば、発電システムの起動や低出力運転などの過渡的なシステム挙動を評価するために開発された1DCAEモデルである。この1DCAEモデルは、物理モデルである流入境界モデル1、配管モデル2、バルブモデル3、タンクモデル4、流出境界モデル5等からなる。但し、解析モデルNは1次元に限定する必要はなく、2次元、3次元モデルとしても構わない。なお、ここでの物理モデルとは、与えられた入力パラメータと境界条件に対して、支配方程式を解き、応答を返すモデルである。また、入力パラメータと境界条件に対して、応答を返す方法として、支配方程式以外にも、経験式や機械学習モデル、データベースを採用することも可能である。
【0024】
解析モデル(1DCAEモデル)Nは、流入境界モデル1から配管モデル2を通り蒸気が流れ、この蒸気が、バルブモデル3で流量が制御され、タンクモデル4に貯留された後に流出境界モデル5から流出するモデルである。解析モデルNは、上述の物理モデル1~5を解くことにより入力に対する応答を与える。入力としては、境界条件に加えて、各物理モデル1~5の入力パラメータである。
【0025】
ここで、解析モデルNは、設備機器Mの運転データに基づいて設備機器Mの挙動を機械学習により予測する予測モデルと物理モデルとが組み合されて構成されてもよい。
【0026】
図4に示すブロック図では、単純化された解析モデルN(物理モデル1~5)に対して、その上流側に設定された物理モデルである圧損(圧力損失)モデル6、伝熱モデル及び制御モデル8と、入力パラメータ9とを示している。つまり、配管モデル2には、その上流側に圧損モデル6及び伝熱モデル7が接続されており、配管への圧損係数と熱流束を与える構造になっている。これらの圧損モデル6及び伝熱モデル7に入力パラメータ9が入力される。この入力パラメータ9は単一の入力パラメータに限らず、複数の入力パラメータを内包した入力パラメータのセットであってもよい。
【0027】
バルブモデル3には、上流側に圧損モデル6及び伝熱モデル7が接続され、更に制御モデル8が接続されており、この制御モデル8がバルブモデル3の開度を制御する。バルブモデル3の上流側の圧損モデル6、伝熱モデル7及び制御モデル8に、それぞれを制御するための入力パラメータ9が入力される。また、タンクモデル4には配管モデル2と同様に、圧損モデル6及び伝熱モデル7が接続されている。このタンクモデル4の上流側の圧損モデル6及び伝熱モデル7に、それぞれを制御するための入力パラメータ9が入力される。
【0028】
また、各物理モデル(流入境界モデル1、配管モデル2、バルブモデル3、タンクモデル4、流出境界モデル5)に対しては、形状情報や物性値情報を直接入力する必要がある。例えば、配管モデル2には、入力パラメータ9として配管径、配管長さ、配管壁厚さ、配管セル数、初期圧力、初期温度、初期流速などが直接入力される。このため、単純な解析モデルNであっても入力パラメータ9の数は膨大になる。従って、異常診断手法では、異常となり得る入力パラメータ9を切り分けることで探索領域を削減しても構わない。例えば、配管径、配管長さ、配管セル数は設計条件であり、異常とは関係ないと判断することで除外することも可能である。以上が解析モデルNの設定である。
【0029】
図5に異常原因(異常値24)の発生と、それに伴う異常応答(異常データ25)が観測された状態を示す。実機の設備機器Mでは、異常原因(異常値24)は見えず、タンクに異常応答である異常データ25が観測される状態である。図5では、異常原因となる異常値24が、バルブモデル3の上流側の入力パラメータ9に存在し、下流側の制御モデル8、バルブモデル3、タンクモデル4へと伝播することで、異常データ25が観測される状態となっており、この流れを逆に辿ることが異常診断である。
【0030】
つまり、応答である観測された異常データ25から、入力である異常値24を予測する逆解析手法を異常診断手法として定義する。ここで、非線形な逆解析手法では一般解を得ることが困難であることから、異常データ25を再現するように入力パラメータ9を最適化すると読み替えることで解(異常原因)を求めることが一般的である。
【0031】
最適化手法の解法には、応答曲面法や遺伝的アルゴリズムが採用されることが多いが、異常診断のような多次元の入力パラメータに対して広域的な探索を必要とする最適化手法では、マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)を適用することで異常時入力パラメータ確率分布を求める。
【0032】
MCMC法は、ベイズ推定の数値解析的な実装手法の1つであり、正常時入力パラメータ確率分布を事前分布と仮定し、異常データ25に対して異常時入力パラメータ確率分布をベイズ推定により事後分布として求めることで、事前分布と事後分布の変化から異常診断を行う。
【0033】
図6に、正常時のタンク圧力と異常時のタンク圧力における時系列データの一例を示す。この一例では、異常時のタンク圧力は、定常状態においてタンク圧力が正常時よりも上昇した状態を示している。想定した異常原因(異常値24)は、バルブ開度の異常、具体的にはバルブ開度が設定値よりも大きくなることであるが、この異常原因を本実施形態の異常診断装置10により求める。
【0034】
図5に示す配管モデル2、バルブモデル3、タンクモデル4の上流側の入力パラメータ9は、定数あるいは時系列データを入力する際の多項式係数を含んだ多次元の入力であり、それぞれの定数に対して確率分布が存在すると仮定する。代表的な例として、バルブモデル3の上流側の制御モデル8に入力する入力パラメータ9であるバルブ開度について、その正常時入力パラメータ確率分布を図7(A)に示す。バルブモデル3の上流側の圧損モデル6に入力される入力パラメータ9である流路抵抗係数について、その正常時入力パラメータ確率分布を図7(B)に示す。図2のステップS2で前述した、図7(A)及び(B)に示す正常時入力パラメータ確率分布の作成手順を図8に示す。
【0035】
つまり、図8に示すように、設計値に対して許容される誤差範囲での一様分布や正規分布の情報に基づいて、正常時入力パラメータ確率分布を事前に仮決定する(S11)。次に、異常発生前の正常時の観測データに対してMCMC法を適用して解析モデルNを逆解析することで、正常時入力パラメータ確率分布を作成する(S12、S13)。
【0036】
図9(A)に、バルブモデル3の上流側の制御モデル8に入力する入力パラメータ9であるバルブ開度の異常時入力パラメータ確率分布を示す。また、図9(B)に、バルブモデル3の上流側の圧損モデル6に入力する入力パラメータ9である流路抵抗係数の異常時入力パラメータ確率分布を示す。図2のステップS3で前述した図9(A)及び(B)に示す異常時入力パラメータ確率分布の作成手順を図10に示す。
【0037】
つまり、図10に示すように、正常時入力パラメータ確率分布に基づいて異常時入力パラメータ確率分布を事前に仮決定する(S21)。次に、異常発生後の異常時の観測データに対しMCMC法を適用して解析モデルNを逆解析することで、異常時入力パラメータ確率分布を作成する(S22、S23)。
【0038】
ここで、図8のステップS12と図10のステップS22において、MCMC法を適用した解析モデルNの逆解析による正常時と異常時の入力パラメータ確率分布の更新手順を図11に示す。正常時あるいは異常時の観測データがノイズの影響により変動していることから、統計的な処理として、観測データの中央値を求め、標準偏差を評価することで観測データが正規分布していると仮定する。但し、観測データが正規分布ではなく一様分布やベータ分布などである場合には、この観測データに応じた確率分布を採用することが望ましい。正規分布する観測データでは解析データとの差分も正規分布することが明らかであることから、観測データの中央値と解析データの差分が正規分布するようにサンプル列(サンプルの集合)を求める。
【0039】
まず、更新前分布に基づいてサンプル点を決め(S31)、このサンプル点での解析モデルNによる逆解析を実行する(S32)。更新前分布として、正常時入力パラメータ確率分布を更新する場合に、例えば設計値に対する許容誤差情報から仮決定した入力パラメータ確率分布を、異常時入力パラメータ確率分布を更新する場合に、例えば正常時入力パラメータ確率分布をそれぞれ用いることができる。
【0040】
次に、解析データと観測データ(正常時入力パラメータ確率分布を更新する場合には正常時の観測データ、異常時入力パラメータ確率分布を更新する場合には異常時の観測データ)の平均差分の絶対値を、誤差として評価する(S33)。ここで、定常条件では、観測データの中央値と解析データとの差分を使用することが可能である。過渡的な変化を含む観測データに対しては、この時系列の観測データと解析データとの差分を計算して差分の時系列データを作成し、その差分の時系列データの絶対値の時間平均を算出する処理により誤差を評価することが可能である。また、観測データが複数ある条件においても、観測データと解析データとのノルム(二乗平均誤差)を計算することで誤差を評価することが可能である。
【0041】
次に、計算した誤差に対して、その分布が有意な誤差分布、例えばカイ二乗分布となっているかを判定する(S34)。即ち、サンプル点での誤差分布がカイ二乗分布に則っている場合には、その誤差分布が適切であるとしてサンプルを採択し、不適な場合には棄却する。誤差がカイ二乗分布にあると仮定するのは、正規分布する観測データと解析データとの二乗誤差もまた正規分布するからである。なお、観測データの分布が正規分布ではない場合には、誤差の分布をカイ二乗分布以外の例えばベータやベルヌーイ分布などを採用することが望ましい。
【0042】
次に、MCMC法の収束条件に基づき、サンプル数が更新後分布の作成に十分である場合には、更新後分布が作成可能であるとしてMCMC法を終了し(S35、S36)、それ以外の場合には、サンプル点を移動しながらS31~S35の処理を繰り返す(S37)。サンプル点での更新方法には、メトロポリス-ヘイスティング法、ハミルトニアンモンテカルロ法、NUTS(No-U-Turn Sampler)法などが有効である。
【0043】
図2のステップS4で前述したように、図9に示す異常時入力パラメータ確率分布と図7に示す正常時入力パラメータ確率分布とを比較することで、異常診断を行うことが可能になる。分布形状の比較方法は、解析者が見比べて判断することも可能である。図12には、正常時と異常時の入力パラメータ確率分布の定量的な比較手法の一例として、これらの両確率分布の差分を求める手法を示す。
【0044】
図12は、異常時入力パラメータ確率分布が正常時入力パラメータ確率分布に対して、異常の発生により入力パラメータ値(横軸)の方向に遷移(移動)したときの両確率分布の差分を示している。図12(A)に示す差分では、異常時入力パラメータ確率分布と正常時入力パラメータ確率分布のそれぞれにおけるピークの移動量(変化量)が寸法Tとして表されており、バルブ開度が大きくなる方向に異常が発生していると診断できる。一方、図12(B)では差分が平坦であることから、異常時と正常時とで入力パラメータ確率分布に変化がなく、流路抵抗係数に異常原因がないと診断できる。
【0045】
正常時と異常時の入力パラメータ確率分布の比較方法はこれに限らず、2つの確率分布の比を評価するなどの手法でもよい。例えば、配管で閉塞が発生した際には、異常時入力パラメータ確率分布は正常時入力パラメータ確率分布に比べ、ピークの中央値が大きくなる方向へ遷移(変化)する。このため、遷移前後の正常時と異常時の入力パラメータ確率分布を比較することで、その異常原因を判定することが可能になる。上述のようにして、診断結果が得られた後に、異常時入力パラメータ確率分布のピークの中央値を解析モデルに入力することで、観測データが再現されることを確認することが可能である。
【0046】
図13に示す処理では、図2のステップS5で前述したように、異常診断結果を分類することで、異常診断後の処理を異ならせて異常診断精度を向上させることが可能になる。具体的には、第1分類として単一の異常原因が診断された場合、第2分類として、異常時入力パラメータ確率分布が正常時入力パラメータ確率分布に比べて標準偏差に変化がある場合、第3分類として複数の異常原因が診断された場合であり、これらの各分類に分けて異常診断後の処理を行う。
【0047】
第1分類では、図12(A)に示すように、単一の異常原因が診断された場合(図13のS41)、追加の処理を実施せず、診断結果をそのまま出力する(S42、図2のS6)。単一の異常原因とは、複数の入力パラメータに渡る組み合わせでもよく、また、解析モデルによる解が入力パラメータ空間の1点に定まる状態でもよい。
【0048】
次に、第2分類について述べる。まず、異常原因の推定方法として、観測データに含まれるノイズの影響の処理方法を示す。正常時の観測データのノイズは、正常時入力パラメータ確率分布において考慮されているため、異常時入力パラメータ確率分布を正常時入力パラメータ確率分布と比較することで、異常時の観測データのノイズの増減の影響を評価することが可能になる。即ち、異常時入力パラメータ確率分布において、正常時入力パラメータ確率分布と比較して標準偏差が変化するのは、異常時の観測データにノイズ増減の影響を含んでいるためである。このため、異常時入力パラメータ確率分布のピーク(中央値)の移動のみではなく、その標準偏差の変化を評価する。
【0049】
具体的な処理を、図14における正常時と異常時の入力パラメータ確率分布を使用して示す。観測データのノイズのみが変化するような異常が観測された場合には、異常時入力パラメータ確率分布もその標準偏差が変化する(S43)。この標準偏差の変化はノイズの増加が要因であると推定できる。このとき、標準偏差に閾値Pを設定することで、閾値Pを超える異常時入力パラメータ確率分布を検出したときに、この検出された異常時入力パラメータ確率分布が、観測データのノイズの増加が原因の異常であると診断することが可能になる(S44、図2のS7)。
【0050】
閾値Pの設定方法の一例として、図14に示すように、正常時入力パラメータ確率分布の作成に使用した設計値とその許容誤差から、正規分布の95%の区間で許容誤差を超えない条件で閾値Pを設定する。従って、正規分布の95%の区間で許容誤差を超えない条件で閾値Pを設定したときには、例えば発生確率が1/1000の異常(ノイズが原因の異常)を診断することが可能になる。また、正規分布の99%の区間で許容誤差を超えない条件で閾値Pを設定したときには、例えば発生確率が1/10000の異常(ノイズが原因の異常)を診断することが可能になる。
【0051】
次に、第3分類について述べる。図15に示すように、異常時入力パラメータ確率分布に2つ以上のピークが存在する場合について、その異常診断手法を説明する。ピークが2つ以上存在するのは、異常原因として考えられる状態が複数存在するためである。例えば、入力パラメータがバルブ開度の場合に、異常原因が開時と閉時に存在する場合である。これ以外にも、異常原因となる入力パラメータが複数組み合されて存在する場合もある。
【0052】
上述のように、複数の異常原因が診断された場合には、それらの異常原因に優先順位を決定することで異常診断の精度を向上させることが可能になる。優先順位の算出では、それぞれの解(異常原因)の情報量規準を計算する。情報量規準の代表例としてはAIC(Akaike Information Criterion)あるいはWAIC(Widely Applicable Information criterion)がある。ここではAICの算出を例に処理を説明する。
【0053】
第1に、異常時入力パラメータ確率分布に基づき複数の異常原因が検知されたときに(図13のS45)、異常原因として診断された複数の解を、図16(A)及び(B)に示すようにそれぞれ正規分布A、Bとして分離する。これらの分離は、元の異常時入力パラメータ確率分布のそれぞれのピークを中央値として標準偏差を仮定することで作成される。これ以外に、検索範囲を狭めた条件で再度MCMC法を用いることで、単一のピークを有する異常時入力パラメータ確率分布をそれぞれ求めて分離することも可能である。
【0054】
第2に、分離した正規分布である異常時入力パラメータ確率分布のそれぞれについて、情報量規準の一例としてAICを算出して、異常原因の優先順位を評価する(S46、図2のS9)。上記AICの計算に解析モデルNと観測データを用いることで、その適合度(AIC)を計算する。ここで、解析モデルNは、分離したそれぞれの異常時入力パラメータ確率分布を用い、また、観測データには異常時の観測データを採用する。AICは、一般的に次式により定義される。但し、Lは解析モデルNの最大尤度であり、kは説明変数の数(入力パラメータの個数)である。なお、情報量規準には、AICのほかにBIC、WAIC、WBICなどがあり、AICによる実装は一例である。
AIC=-2logL+2(k+1)
【0055】
図17に示すように、解析モデルNは、分離したそれぞれの異常時入力パラメータ確率分布からサンプルを出力し(S51)、解析モデルNにより解析を実行することで(S52)、解析モデルによる解析データと観測された異常データとの誤差(尤度)を計算する(S53)。サンプル数が十分でないときにはサンプル点を移動して尤度を求め(S54、S55)、解析データと観測された異常データとの最大尤度Lを計算する(S56)。ここで、異常原因となる入力パラメータの個数は1つに限定されるものではなく、複数の入力パラメータが複合した異常であってもよいことから、その入力パラメータの個数も解によって異なる。このため、入力パラメータの個数が説明変数の数kに相当する(S57)。
【0056】
上述のようにして、複数の異常原因のそれぞれに対してAICを計算し(S58)、それらの値を比較して、AICの小さな解(異常原因)を、最も可能性が高い異常原因であると診断する。また、AICを小さい順に並べ、小さい順に異常として優先順位が高いと診断する。
【0057】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)~(3)を奏する。
(1)図1に示すように、異常診断装置10における入力パラメータ確率分布評価手段15の比較・変化量算出部16は、正常時と異常時のそれぞれの入力パラメータ確率分布に基づいて異常を診断するので、観測データに含まれる熱や振動等の外乱の影響を排除して異常を診断することができる。このため、異常データを含む運転データが蓄積されたライブラリが存在しない場合や、設備機器Mの運転データの蓄積が少ない運転開始初期の場合等においても、設備機器Mの異常を精度良く診断することができる。
【0058】
(2)異常診断装置10における入力パラメータ確率分布評価手段15の標準偏差分析部18は、正常時入力パラメータ確率分布と異常時入力パラメータ確率分布間での標準偏差の変化量に基づいて、ノイズに起因する異常を診断するよう構成されている。従って、実際の観測データに含まれるノイズに起因する異常と、それ以外の異常とを区別して異常診断を行うことができる。
【0059】
(3)異常診断装置10における入力パラメータ確率分布評価手段15の分布形状分離部19及び情報量規準算出部20は、異常原因が複数存在する場合に、それぞれの異常原因に対して算出した情報量規準(例えばAIC)に基づき、異常原因の優先順位を定量的に評価するよう構成されている。従って、優先順位が高い異常原因から順に設備機器Mの確認作業を実施することで、異常発生時に設備機器Mを迅速に復旧させることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができ、また、それらの置き換えや変更、組み合わせは、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0061】
以上説明した異常診断装置は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。このため、異常診断装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、異常診断プログラムにより動作させることが可能である
【0062】
また、異常診断プログラムは、ROM等に予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしてもよい。
【0063】
また、本実施形態に係る異常診断プログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしてもよい。また、異常診断装置は、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワーク又は専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【符号の説明】
【0064】
10…異常診断装置、11…解析モデル作成手段、13…正常時入力パラメータ確率分布作成手段、14…異常時入力パラメータ確率分布作成手段、15…入力パラメータ確率分布評価手段、16…比較・変化量算出部、18…標準偏差分析部、20…情報量規準算出部、M…設備機器、N…解析モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図17