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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148045
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】運搬機構および管体の搬送方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20241009BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20241009BHJP
   E01D 15/24 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
E02B3/06
E01D21/00 Z
E01D15/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060927
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】仲野 勝博
(72)【発明者】
【氏名】吉川 修
(72)【発明者】
【氏名】亀井 良至
(72)【発明者】
【氏名】宇尾 朋之
(72)【発明者】
【氏名】大野 真一
(72)【発明者】
【氏名】小林 修二
(72)【発明者】
【氏名】武地 真一
【テーマコード(参考)】
2D059
2D118
【Fターム(参考)】
2D059BB15
2D118AA30
(57)【要約】
【課題】管体の搬送に適した運搬機構等を提供する。
【解決手段】本発明の運搬機構は、鋼管を運搬して立て起こす際に用いる。運搬機構は、レール30に沿って走行する、鋼管を載せるための台車10と、鋼管の一端を取り付け可能であり、且つ鉛直面内で回転可能な取付部20と、を有する。取付部20は、鋼管の管壁を内外から挟むように配置される取付片21、22を有する。台車10は、レール30上を自走する自走式のものである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体を運搬して立て起こす際に用いる運搬機構であって、
レールに沿って走行する、前記管体を載せるための台車と、
前記管体の一端を取り付け可能であり、且つ鉛直面内で回転可能な取付部と、
を有し、
前記取付部は、前記管体の管壁を内外から挟むように配置される取付片を有することを特徴とする運搬機構。
【請求項2】
前記台車は、レール上を自走することを特徴とする請求項1記載の運搬機構。
【請求項3】
前記レールに沿って並ぶ複数の前記台車を有し、
一本の管体が前記複数の前記台車に載せられ、
前記複数の前記台車のうちの一台の前記台車に、前記取付部が設けられることを特徴とする請求項1記載の運搬機構。
【請求項4】
前記取付部の鉛直面内での回転を規制するために用いる規制手段を有することを特徴とする請求項1記載の運搬機構。
【請求項5】
前記取付部は、平面においても回転可能であることを特徴とする請求項1記載の運搬機構。
【請求項6】
鉛直面内で回転可能な取付部に管体の一端を取り付けた状態で、前記管体を載せた台車を桟橋に設けたレール上で前記桟橋の前端部まで走行させることで、前記管体の運搬を行う工程と、
前記管体の他端を、当該他端の後方で前記桟橋上に設置されたクレーンによって吊り上げ、前記取付部を前進させながら前記管体を立て起こし、立て起こした前記管体を前記クレーンにより移動させる工程と、
を有することを特徴とする管体の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体の運搬機構およびこれを用いた管体の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水域での橋梁基礎等の施工時に、仮設の桟橋を陸から延ばし、その前端部で鋼管を水底に打設することがある。鋼管はトレーラー等で桟橋の前端部まで運搬し、前端部に設置したクレーンで吊り上げて立て起こし、施工箇所まで移動させる。
【0003】
特許文献1には、部材の立て起こしに用いる装置として、2台の台車に柱材を載置し、一方の台車の取付部に柱材の一端を取り付けるものが記載されており、柱材の他端を吊り上げて柱材を立て起こす際に、取付部が鉛直面内で回転するとともに、上記一方の台車が前進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2734353号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
桟橋やその周囲の施工条件によっては、鋼管を載せたトレーラー等を桟橋の前端部まで走行させることが効率等の面から適切でないケースがあり、このようなケースにおいて、鋼管の運搬と立て起こしを含む鋼管の搬送工程を好適に実施できる方法が求められていた。
【0006】
この点、特許文献1の装置は運搬目的を有しておらず、桟橋上での鋼管の運搬には向かなかった。また装置の適用対象もプレキャストボックス柱であり、鋼管のような管体を対象とするものではなかった。前記の鋼管は一般的にプレキャストボックス柱よりも長尺となり、クレーンで吊り上げて立て起こす際に不安定になり易い。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、管体の搬送に適した運搬機構等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための第1の発明は、管体を運搬して立て起こす際に用いる運搬機構であって、レールに沿って走行する、前記管体を載せるための台車と、前記管体の一端を取り付け可能であり、且つ鉛直面内で回転可能な取付部と、を有し、前記取付部は、前記管体の管壁を内外から挟むように配置される取付片を有することを特徴とする運搬機構である。
【0009】
本発明では、レール上を走行する台車により、管体を必要な箇所まで効率良く運搬することができ、長距離の運搬も可能である。また管体の一端は鉛直面内で回転可能な取付部に取り付けられ、管体の吊り上げ時には取付部が回転することで管体が起き上がり、管体の一端を固定したまま管体の吊り上げを安定して行うことができる。そのため、管体の運搬と立て起こしを含む管体の搬送工程を好適に実施できる。さらに、管体の一端では、管体の管壁が内外の取付片に挟まれて嵌合されるので、当該一端の固定をより確実に行うことができる。
【0010】
前記台車は、レール上を自走することが望ましい。
これにより、台車の走行に人力が不要となり、長距離の走行も容易且つ安全に行うことが可能となる。
【0011】
前記レールに沿って並ぶ複数の前記台車を有し、一本の管体が前記複数の前記台車に載せられ、前記複数の前記台車のうちの一台の前記台車に、前記取付部が設けられることが望ましい。
これにより個々の台車を小型化できるので台車の搬入等が容易になり、また管体の吊り上げ時には、取付部を設けた台車を、取付部の回転に合わせて前進させることができる。
【0012】
前記取付部の鉛直面内での回転を規制するために用いる規制手段を有することが望ましい。
これにより、取付部の転倒を防止でき、安全性が向上する。
【0013】
前記取付部は、平面においても回転可能であることが望ましい。
これにより、管体の吊り上げ時に芯ずれ等が生じた場合にも、台車や取付部に回転力が加わることがない。
【0014】
第2の発明は、鉛直面内で回転可能な取付部に管体の一端を取り付けた状態で、前記管体を載せた台車を桟橋に設けたレール上で前記桟橋の前端部まで走行させることで、前記管体の運搬を行う工程と、前記管体の他端を、当該他端の後方で前記桟橋上に設置されたクレーンによって吊り上げ、前記取付部を前進させながら前記管体を立て起こし、立て起こした前記管体を前記クレーンにより移動させる工程と、を有することを特徴とする管体の搬送方法である。
これにより、工事に用いる管体を台車によって桟橋の前端部のクレーンの前方まで運搬し、当該クレーンで吊り上げて施工箇所まで移動させることができ、管体の運搬と立て起こしを含む管体の搬送工程を桟橋上で好適に実施することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、管体の搬送に適した運搬機構等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】工事状況の概略を示す図。
図2】運搬機構1を示す図。
図3】運搬機構1を示す図。
図4】前方の台車10-1を示す図。
図5】後方の台車10-2を示す図。
図6】鋼管300の搬送方法を示す図。
図7】鋼管300の載置工程について説明する図。
図8】鋼管300の吊り上げ工程について説明する図。
図9】鋼管300を立て起こした後の状態を示す図。
図10】スライド台16に取付部20を設ける例。
図11】平面において回転可能な取付部20の例。
図12】鋼管300の吊り上げ時を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
(1.工事状況の概略)
本発明の実施形態に係る運搬機構および管体の搬送方法等は、図1に示すように、水域Wでの橋梁基礎等の施工時に、水底の地盤に鋼管300を打設する際に用いられる。鋼管300は、筒状に並ぶように複数本打設される。
【0019】
本実施形態では、桟橋100が、陸Lから水域Wに向かって鋼管300の施工箇所Cまで延びるように設けられる。また桟橋100の前端部には、鋼管300の移動用のクレーン200が設けられる。以下、「前」とは、水域Wにおける鋼管300の施工箇所C側を指し、その反対側すなわち陸L側をいうときは「後」の語を用いる。
【0020】
桟橋100の上面にはレール30が設けられる。レール30は桟橋100の延長方向に沿って延びるように配置される。レール30の後端部には、鋼管300を運搬するための台車10が配置される。レール30の前端部には、台車10の逸走を防止するためのストッパー31が設けられる。
【0021】
(2.運搬機構1)
図2、3は、台車10を含む鋼管300の運搬機構1を示す図である。図2は運搬機構1の概略を示す斜視図であり、図3(a)は運搬機構1を側方から見た図である。図3(b)は図3(a)の線a-aに沿った断面を示す図である。
【0022】
図2、3に示すように、運搬機構1は台車10と取付部20を有する。
【0023】
台車10は鋼管300を載置して運搬するためのものであり、レール30上を走行する。台車10は、レール30に沿って並ぶように複数台配置される。本実施形態では、これら複数台の台車10(10-1、10-2)に、一本の鋼管300が載せられる。
【0024】
図4は前方の台車10-1を示す図である。図4に示すように、前方の台車10-1は、左右一対の走行桁11の上に横桁12を架け渡して構成される。
【0025】
走行桁11は、左右のレール30の上に載置され、レール30に沿って延びるように設けられる。走行桁11は、H形鋼等の鋼材を組み合わせて形成される。
【0026】
走行桁11は、レール30上を走行する車輪111を有する。車輪111は、走行桁11の前後に設けられる。また走行桁11の前後の面には緩衝材112も設けられる。本実施形態の台車10はレール30上を自走する自走式のものであり、車輪111を駆動させるためのモータ等の駆動機構(不図示)や、車輪111の回転を止めるためのブレーキ機構(不図示)も設けられる。
【0027】
横桁12は、H形鋼等の鋼材を用いて形成され、前後に一対配置される。横桁12の長手方向の端部には、前後の横桁12に亘る側板13が取り付けられる。側板13は、横桁12の長手方向の両端部において設けられる。
【0028】
前後の横桁12の上には、載置台121と固定ピース122が設けられる。
【0029】
載置台121は、鋼管300を載置するための部材であり、横桁12の長手方向の中央部において、当該長手方向に一対並べて設けられる。これらの載置台121の上面は、互いの載置台121に向かって下降する傾斜を有する。
【0030】
固定ピース122は、鋼管300の固定に用いる部材である。固定ピース122は、横桁12の長手方向の両端部に設けられる。
【0031】
図3(a)に示すように、鋼管300はベルト40を用いて台車10に固定され、当該ベルト40の両端部が固定ピース122に取り付けられる。固定ピース122は、ベルト40を取り付けるための孔を有する。なお固定ピース122は、台車10を吊り上げて移動する際にも用いることができる。
【0032】
図5は、後方の台車10-2を示す図である。図5に示すように、後方の台車10-2は、前記と同様の走行桁11、横桁12、側板13を有する他、走行桁11の間に縦桁14が設けられる。また台車10-2には、鋼管300の基端(鋼管300の一端)を取り付けるための取付部20が設けられる。
【0033】
後方の横桁12の上には、前記の固定ピース122の他、横桁12の長手方向の中央部にブラケット50が設けられる。ブラケット50は、取付部20を鉛直面内で回転可能に取り付けるためのものである。ブラケット50の頂部には、取付部20の回転を規制し、その転倒を防ぐための規制手段としてストッパー51が設けられる。
【0034】
前方の横桁12の上には、前記した固定ピース122の他、横桁12の長手方向の中央部に載置板124が設けられる。載置板124は、取付部20を載置するための板状の部材である。
【0035】
縦桁14は、前後の横桁12の下面に固定して走行桁11と平行に配置される。縦桁14にはH形鋼等の鋼材が用いられる。
【0036】
取付部20は、取付片21、22、回転部23等を有する。
【0037】
取付片21は、円筒を半割した半割円筒状の部材であり、ブラケット50側の端部が半円状の底板211で閉じられる。
【0038】
取付片22は、取付片21より径の小さい円柱を半割した半割円柱状の部材であり、底板211のブラケット50と反対側の面に固定される。取付片22は、取付片21の内側で、取付片21から隙間を空けて配置される。
【0039】
回転部23は、底板211のブラケット50側の面に設けられる。本実施形態では、回転部23とブラケット50とが、ヒンジHにより鉛直面内で回転可能に連結される。
【0040】
本実施形態では、取付片22のブラケット50側の端部と縦桁14の後端部のそれぞれに転倒防止ピース60が設けられる。転倒防止ピース60は、前記のストッパー51と同様、取付部20の回転を規制し、その転倒を防ぐために用いられる。
【0041】
(3.鋼管300の搬送方法)
図6は、鋼管300の搬送方法について説明する図である。本実施形態では、まず図6(a)に示すように、トレーラー(不図示)等で桟橋100の後端部まで運搬した鋼管300を、クレーン(不図示)等で吊り上げて移動させ、矢印aに示すように台車10の上に載置する。
【0042】
この際、図7に示すように鋼管300を吊り降ろした状態で、矢印bに示すように後方の台車10-2を前方に移動させる。これにより、図3(a)に示すように鋼管300が取付片21の内部に挿入される。なお、台車10-2を前方に移動させる代わりに、鋼管300を後方に移動させてもよいが、その操作は若干難しい。
【0043】
この時、鋼管300の管壁は図3(b)に示すように取付片21、22によって内外から挟まれ、鋼管300の基端が取付部20に嵌合される。この後、ベルト40を用いて鋼管300を台車10(10-1、10-2)に固定する。一部のベルト40は、鋼管300と取付片21に巻き付けて用いられる。
【0044】
次に、台車10(10-1、10-2)をレール30上で自走させ、図6(b)に示すように、鋼管300を桟橋100の前端部まで運搬する。この時、鋼管300の先端(鋼管300の他端)は、クレーン200の前方に位置する。
【0045】
その後、図6(c)に示すように、クレーン200で鋼管300の先端を吊り上げ、図6(d)に示すように鋼管300を鉛直方向に沿って立て起こす。鋼管300の先端は上記したようにクレーン200の前方に位置するので、鋼管300を吊り上げる際にクレーン200を大きく旋回する必要はない。
【0046】
図8に示すように、鋼管300の吊り上げ時には、取付部20がヒンジHを中心として鉛直面内で回転して起き上がる。また後方の台車10-2は、取付部20の回転と並行して矢印cに示すように前方に移動する。この移動は、台車10-2の速度を制御しつつレール30上を自走させることで行われる。
【0047】
図9は、鋼管300を立て起こした後の状態を示す図である。本実施形態では、鋼管300が鉛直方向に立て起こされた時に、取付片21の底板211がブラケット50のストッパー51に当接する。これにより、取付部20の後方への回転が規制され、取付部20が後方に転倒することが無くなる。
【0048】
なお前記のベルト40に関しては、台車10(10-1、10-2)の固定ピース122に固定したものについては鋼管300の吊り上げ前に取り外し、鋼管300と取付片21に巻き付けたベルト40(図9に示すベルト40)については、鋼管300を立て起こした後に取り外す。その後、鋼管300を更に吊り上げて取付部20から抜き取り、クレーン200によって施工箇所Cまで移動させる。
【0049】
鋼管300と取付片21に巻き付けたベルト40を取り外す前には、鎖線dで示すように、前記した2つの転倒防止ピース60をレバーホイスト等の連結材を用いて連結する。これにより、取付部20の前方への回転が規制され、取付部20が前方に転倒するのが防止される。鋼管300を抜き取った後は、レバーホイスト等を緩めながら取付部20を徐々に前方に倒してゆき、最終的に台車10-2の載置板124の上に載置すればよい。
【0050】
この後、本実施形態では、台車10(10-1、10-2)をレール30上で自走させて桟橋100の後端部まで移動させ、再度図6(a)に示すように鋼管300の載置を行って図6(b)~(d)の工程を繰り返す流れとなる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態では、レール30上を走行する台車10により、鋼管300を必要な箇所まで効率良く運搬することができ、長距離の運搬も可能である。また鋼管300の一端は鉛直面内で回転可能な取付部20に取り付けられ、鋼管300の吊り上げ時には取付部20が回転することで鋼管300が起き上がり、鋼管300の一端を固定したまま鋼管300の吊り上げを安定して行うことができる。そのため、鋼管300の運搬と立て起こしを含む鋼管300の搬送工程を好適に実施できる。さらに、鋼管300の一端では、鋼管300の管壁が内外の取付片21、22に挟まれて嵌合されるので、当該一端の固定をより確実に行うことができる。
【0052】
特に本実施形態では、台車10を用い、工事に用いる鋼管300を桟橋100の前端部のクレーン200の前方まで運搬し、当該クレーン200で吊り上げて施工箇所Cまで移動させることができる。そのため、桟橋100やその周囲の施工条件により、鋼管300を載せたトレーラーを桟橋100の前端部まで走行させることが効率等の面から適切でないケースでも、桟橋100上で鋼管300の搬送工程を好適に実施できる。
【0053】
また本実施形態の台車10は自走式のものであるので、台車10の走行に人力が不要となり、長距離の走行も容易且つ安全に行うことが可能となる。なお、自走する台車10の動力源に関しては、台車10と電源(不図示)とをケーブルで連結してもよく、電源となる発電機を積載した台車(不図示)を、台車10に連結してレール30上で走行させてもよい。
【0054】
また本実施形態では一本の鋼管300を複数の台車10に載せるので、個々の台車10を小型化でき、台車10の搬入等が容易になる。鋼管300の吊り上げ時には、取付部20を設けた台車10-2を、取付部20の回転に合わせて前進させることができる。
【0055】
また本実施形態では、前記したストッパー51や転倒防止ピース60などが取付部20の回転を規制するための規制手段として用いられ、これにより取付部20の転倒を防止でき、安全性が向上する。
【0056】
しかしながら、本発明が以上の実施形態に限られることはない。例えば台車10の構成は前記したものに限らず、レール30上を走行可能であり、且つ鋼管300の吊り上げ時に取付部20が前方に移動可能なものであればよい。
【0057】
例えば図10(a)、(b)に概略を示すように、前後の台車10-1、10-2の横桁12の間にガイドレール15を架け渡し、当該ガイドレール15に沿って前後にスライド可能なスライド台16を設け、このスライド台16に設置したブラケット50に取付部20を取り付けても良い。
【0058】
図10(a)に示すように、スライド台16の初期位置は後方の台車10-2上であるが、鋼管300の吊り上げ時には、図10(b)に示すようにスライド台16が前方にスライドすることで取付部20が前方に移動する。なお図10(a)、(b)では鋼管固定用のベルト40等の図示を省略している。
【0059】
また取付部20は鉛直面内だけでなく平面においても回転可能としてよい。図11(a)はその一例であり、平面において回転可能なターンテーブル18の上にブラケット50や転倒防止ピース60を設置し、ブラケット50に取付部20を取り付けることで、取付部20が鉛直面と平面の双方において回転可能となる。
【0060】
図11(b)、(c)は台車10-2とターンテーブル18を分けて示したものである。ターンテーブル18は、円柱部材181の上下に円形のフランジ182を設けたものであり、上部のフランジ182の上面に、前記のブラケット50や転倒防止ピース60が設けられる。台車10-2では、後方の横桁12が幅広のものとなっており、横桁12の長手方向の中央部に孔123が設けられる。ターンテーブル18は、円柱部材181を孔123内に配置することで、平面において回転可能に横桁12に取り付けられる。
【0061】
取付部20を平面において回転可能とすることで、図12に示すように、クレーン200で鋼管300の先端を吊り上げる位置がレール30から多少ずれていても、取付部20がそれに追従して回転する。そのため、鋼管300の吊り上げ時に芯ずれ等が生じた場合でも、取付部20や台車10-2等に回転力が加わることがなく、鋼管300の吊り上げを安全且つ容易に行うことができる。
【0062】
また本実施形態では、前後の台車10(10-1、10-2)を自走式のものとし、各工程で台車10の速度をコントロールしながら台車10を自走させているが、台車10は常に自走するものに限らない。例えば鋼管300の吊り上げ時には後方の台車10-2が前方に移動するが、この移動に関しては、例えば当該台車10-2のブレーキを開放して自由に走行ができる状態とし、鋼管300の吊り上げに伴って台車10-2が前進するようにしてもよい。
【0063】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
1:運搬機構
10、10-1、10-2:台車
20:取付部
21、22:取付片
30:レール
100:桟橋
200:クレーン
300:鋼管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12