IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝ホームテクノ株式会社の特許一覧 ▶ 東芝ライフスタイル株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-炊飯器および炊飯方法 図1
  • 特開-炊飯器および炊飯方法 図2
  • 特開-炊飯器および炊飯方法 図3
  • 特開-炊飯器および炊飯方法 図4
  • 特開-炊飯器および炊飯方法 図5
  • 特開-炊飯器および炊飯方法 図6
  • 特開-炊飯器および炊飯方法 図7
  • 特開-炊飯器および炊飯方法 図8
  • 特開-炊飯器および炊飯方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148053
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】炊飯器および炊飯方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
A47J27/00 109G
A47J27/00 109Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060939
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 裕一
(72)【発明者】
【氏名】中村 大輔
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA03
4B055BA62
4B055BA66
4B055BA71
4B055CD63
4B055DB14
4B055GA04
4B055GA11
4B055GC02
4B055GC25
4B055GD05
4B055GD06
(57)【要約】
【課題】炊き上げたご飯の食味も良好にするとともに、炊き上げた後に冷凍し、再加熱した際のご飯の食味が良好になるようご飯を炊き上げることが可能な炊飯器、および炊飯方法を提供する。
【解決手段】炊飯器1は、米および水を収容可能な鍋5と、鍋5の内圧を大気圧より低い減圧状態に減圧可能な減圧ポンプ48と、鍋5内を加熱可能な加熱コイル11と、減圧ポンプ48の減圧動作および加熱コイル11の加熱動作を制御する炊飯制御部77と、を備えている。炊飯器1は、鍋5の内圧を減圧状態にして米が糊化する温度より低く、米の還元糖量の増加に寄与する酵素が活性化しやすい温度以上の温度帯で所定のひたし時間以上、米をひたした後に、ご飯を炊き上げる。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米および水を収容可能な鍋と、
前記鍋の内圧を大気圧より低い減圧状態に減圧可能な減圧部と、
前記鍋内を加熱可能な加熱部と、
前記減圧部の減圧動作および前記加熱部の加熱動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記鍋の内圧を前記減圧状態にして前記米が糊化する温度より低く、前記米の還元糖量の増加に寄与する酵素が活性化しやすい温度以上の温度帯で所定のひたし時間以上、前記米をひたした後に、ご飯を炊き上げる炊飯器。
【請求項2】
前記温度帯は、摂氏43度以上、摂氏53度以下である請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記所定のひたし時間は、15分以上である請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定のひたし時間より前に前記鍋の内圧を一旦減圧し、大気圧に回復させた後、再度前記減圧状態になるよう前記減圧部を動作させる請求項1に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記鍋内の前記米および前記水を摂氏98度以上の温度で20分以上加熱して前記ご飯を炊き上げる請求項1に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記鍋の内圧を大気圧より高い加圧状態に加圧可能な加圧部を備え、
前記ひたしを実施した後に前記ご飯を炊き上げるときの、前記加圧状態の合計時間は、前記ひたしを実施せずに前記ご飯を炊き上げるときの前記加圧状態の合計時間よりも短い請求項1に記載の炊飯器。
【請求項7】
前記制御部は、炊き上げられた前記ご飯を冷凍した後、再加熱することを目途に選択される所定のコースを含む、前記米および前記水を前記ご飯に炊き上げるための複数の炊飯コースを有し、前記所定のコースが実行された場合に前記ひたしを実行する請求項1に記載の炊飯器。
【請求項8】
米および水を鍋に収容し、
前記鍋の内圧を大気圧より低く減圧し、
前記米が糊化する温度より低く、前記米の還元糖量の増加に寄与する酵素が活性化しやすい温度以上の温度帯で所定のひたし時間以上、前記米をひたし、
前記ひたしの後に、ご飯を炊き上げる炊飯方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は、炊飯器および炊飯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食用に適した米飯を炊き上げるための通常モードと冷凍用に適した米飯を炊き上げるための冷凍モードとを選択可能な炊飯器が知られている。
【0003】
通常モードで炊き上げる米飯の糊化度は、予め設定された基準値を超え、冷凍モードで炊き上げる米飯の糊化度は、この基準値以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-065736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷凍モードを実行する従来の炊飯器は、通常モードでご飯を炊き上げる場合に比べてご飯の糊化を進めず、糊化度を低く抑える。
【0006】
しかしながら、冷凍モードを実行する従来の炊飯器で炊き上げられた、糊化度の低いご飯の食味は、良好と言えない。
【0007】
そこで、本発明は、炊き上げたご飯の食味も良好にするとともに、炊き上げた後に冷凍し、再加熱した際のご飯の食味が良好になるようご飯を炊き上げることが可能な炊飯器、および炊飯方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る炊飯器は、米および水を収容可能な鍋と、前記鍋の内圧を大気圧より低い減圧状態に減圧可能な減圧部と、前記鍋内を加熱可能な加熱部と、前記減圧部の減圧動作および前記加熱部の加熱動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記鍋の内圧を前記減圧状態にして前記米が糊化する温度より低く、前記米の還元糖量の増加に寄与する酵素が活性化しやすい温度以上の温度帯で所定のひたし時間以上、前記米をひたした後に、ご飯を炊き上げる。
【0009】
また、前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る炊飯方法は、米および水を鍋に収容し、前記鍋の内圧を大気圧より低く減圧し、前記米が糊化する温度より低く、前記米の還元糖量の増加に寄与する酵素が活性化しやすい温度以上の温度帯で所定のひたし時間以上、前記米をひたし、前記ひたしの後に、ご飯を炊き上げる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器の斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器の縦断面図。
図3】本実施形態に係る炊飯器の内枠および加熱コイルの断面図。
図4】本実施形態に係る炊飯器の内枠および加熱コイルの底面図。
図5】本発明の実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器の制御ブロック図。
図6】本実施形態に係る炊飯器および炊飯方法が炊き上げるご飯の用途を概念的に説明する図。
図7】本実施形態の炊飯器の冷凍好適ご飯の炊飯動作における鍋内の温度、鍋の内圧、加熱コイルの出力の時間変化を示す図。
図8】本発明の実施形態に係る加熱調理器の炊飯メニュー選択画面の一例を示す図。
図9】本発明の実施形態に係る加熱調理器の炊飯メニュー選択画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る炊飯器、および炊飯方法の実施形態について図1から図9を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当する構成には同一の符号が付されている。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器の斜視図である。
【0013】
図2は、本発明の実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器の縦断面図である。
【0014】
なお、図1は、本実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器1の右斜め前上方から炊飯器1を見た斜視図である。つまり、図1では炊飯器1の正面、右側面、および上面は見えていて、炊飯器1の背面、左側面、および底面は隠れている。
【0015】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る炊飯器1は、上方へ開放された鍋収容部2を有する矩形状の本体3と、鍋収容部2に収容される鍋5と、本体3の上面に覆い被さって鍋収容部2を開閉可能に閉じる蓋体6と、蓋体6を本体3に開閉可能に支持するヒンジ機構7と、外部電源、例えば商用交流電源のコンセントに接続可能な電力線8と、を備えている。蓋体6を本体3の上方へ開くと、鍋5を鍋収容部2から取り出すことができる。
【0016】
炊飯器1は、鍋5に収容された被炊飯物である水や米を加熱して炊飯し、炊飯したご飯(米飯)を加熱コイル11で加熱して保温する。炊飯器1は、複数の炊飯コースから択一的に選択される炊飯コースで被炊飯物を炊飯する。
【0017】
それぞれの炊飯コースは、鍋5内の被炊飯物を所定の圧力で加圧して加熱する。それぞれの炊飯コースは、米の銘柄や精米歩合に応じて設定される工程を有している。それぞれの工程は、例えば、鍋5に投入された米の吸水を促進させるひたし炊き工程と、被炊飯物の温度を短時間で沸点まで上昇させる沸騰加熱工程と、被炊飯物の沸騰を継続させる沸騰継続工程と、ご飯を焦がさない程度の高温に維持するむらし工程と、を含んでいる。炊飯器1は、炊飯コースとは別に、または炊飯コースに連続して鍋5内のご飯を所定の保温温度に保つ保温工程を実行することもできる。
【0018】
炊飯器1は、予め定める加熱パターンで鍋5に収容された被炊飯物以外の被調理物を加熱する調理コースを実行することもできる。被調理物は、特に断りのない限り被炊飯物を含む。
【0019】
鍋5は、底を有する容器であって、被炊飯物である水や米を収容する。鍋5は、熱伝導性の高いアルミニウム製の主材5aと、主材の外周面下部から底面を覆うように接合される発熱体5bと、を有している。発熱体の素材は、例えばフェライト系ステンレス製の磁性金属板である。
【0020】
鍋5は、径方向外側へ突出して外周面の全周を巡るフランジ部12を備えている。
【0021】
本体3の平面形状は、矩形状である。本体3は、蓋体6より下方の炊飯器1の正面、背面、左側面、右側面、および底面を画定している。本体3は、本体3の底面を画定する底板15と、底板15の上方を覆って本体3の上面の一部と側面とを画定する上枠16と、上枠16に一体成型される椀状の内枠17と、本体3の上面の残部を画定する外枠18と、を備えている。
【0022】
底板15、上枠16、および外枠18は、本体3の外郭である。底板15および上枠16は、合成樹脂、例えばポリプロピレン(Polypropylene、PP)の成型品である。外枠18は、金属材料、例えばステンレスの成形品である。
【0023】
上枠16、および内枠17は、鍋収容部2を画定している。内枠17は、鍋収容部2の底板に相当する。内枠17は、合成樹脂、例えばポリエチレンテレフタラート(Polyethylene terephthalate、PET)の成型品である。
【0024】
また、本体3は、外郭と鍋収容部2との間に区画される制御部収容室19を有している。本体3の外郭は、制御部収容室19に外気を導く通気口21を有している。通気口21は、本体3の底面または側面に配置されていることが好ましい。
【0025】
本体3は、制御部収容室19に収容される加熱制御回路板22を備えている。加熱制御回路板22は、マイクロプロセッサー、およびマイクロプロセッサーが実行する各種演算プログラム、パラメーターなどのデジタル情報を記憶する記憶装置を備えている。記憶装置は、予め設定される複数の炊飯モードに関連する種々の設定(引数)を記憶している。 また、本体3は、加熱制御回路板22のマイクロプロセッサーに取り付けられる放熱器23と、放熱器23に空気を吹き掛ける冷却ファン25と、を備えている。
【0026】
放熱器23の材料は、熱伝導性の良好な材料、例えばアルミニウムである。冷却ファン25は、放熱器23の下方または側方に配置されている。放熱器23と冷却ファン25とを組み合わせた冷却性能は、マイクロプロセッサーの温度を使用温度範囲内に保つよう設定されている。冷却ファン25と本体3の通気口21とは、鍋5を挟むように配置されることが好ましい。そのような配置の関係は、製品の小型化に寄与する。
【0027】
さらに、本体3は、内枠17の外面に設けられる加熱コイル11と、内枠17の底面中央部に設けられて鍋5の底部の温度を検知する鍋温度センサー26と、を備えている。
【0028】
加熱コイル11は、鍋収容部2に収容された鍋5の外周面下部から底面に対向するよう配置されている。加熱コイル11は、交番磁界を発生させて鍋5の発熱体を電磁誘導加熱する。
【0029】
鍋温度センサー26は、鍋5の底部の温度を検知するサーミスターを有している。鍋5の底部の温度を、以下、「鍋底温度」とも呼ぶ。鍋温度センサー26は、ばね力によって鍋5の底面に押し当てられている。鍋温度センサー26が検出する鍋底温度は、加熱コイル11による鍋5の加熱温度の管理にもっぱら利用される。
【0030】
ヒンジ機構7は、本体3と蓋体6とを揺動可能に連結するヒンジシャフト31と、鍋収容部2を閉じる蓋体6がヒンジシャフト31を中心にして本体3の上方へ向かって開くよう蓋体6にばね力を作用させるヒンジバネ32と、を備えている。ヒンジシャフト31は、本体3の背面上部の近傍に配置されている。
【0031】
蓋体6の平面形状は、本体3を覆い隠す矩形状である。蓋体6は、本体3より上方の炊飯器1の正面、背面、左側面、右側面、および上面を画定している。蓋体6は、炊飯器1の頂部に配置される外蓋35と、外蓋35と本体3との間に配置される外蓋カバー36と、外蓋カバー36に設けられる金属製の放熱板37と、放熱板37に設けられる蓋ヒーター38と、外蓋カバー36に着脱自在に取り付けられて放熱板37の下方に着脱可能に装着される内蓋ユニット39と、を備えている。
【0032】
内蓋ユニット39は、放熱板37の下方に配置されて放熱板37に接触する金属製の内蓋41と、内蓋41の外周に設けられる蓋パッキン42と、内蓋41と蓋パッキン42とを一体化するパッキンベース43と、を備えている。
【0033】
放熱板37および内蓋41は、陽極酸化処理されたアルミニウム製の板材、またはステンレスの板材の成形品である。内蓋41は、蓋体6の底面に相当する。内蓋41は、鍋5の上方開口部と実質的に同径の円盤形状を有している。
【0034】
蓋パッキン42は、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴムの成型品である。蓋パッキン42は、蓋体6が閉じられると鍋5と内蓋41との隙間を塞ぐシール材である。蓋パッキン42は、蓋体6が閉じている状態で鍋5のフランジ部12の上面に接触する。
【0035】
内蓋ユニット39が取り付けられた蓋体6が閉じられると、蓋パッキン42は、鍋5のフランジ部12の上面に押し当てられ、内蓋ユニット39は、鍋5の上方開口部を隙間なく覆い、鍋5を加熱した際に発生する蒸気を密閉する。
【0036】
蓋ヒーター38は、例えばコードヒーターである。蓋ヒーター38は、放熱板37を加熱することにより、放熱板37に接触している内蓋41を加熱する。
【0037】
また、蓋体6は、蓋体6の上面後半部に着脱可能に装着されて鍋5内の被炊飯物から発生する蒸気を炊飯器1の外部に排出する蒸気口45と、鍋5内の蒸気を蒸気口45へ導く蒸気排出通路46と、蒸気排出通路46における気体の流通を許可または遮断する調圧弁47と、を備えている。
【0038】
蒸気排出通路46は、蒸気口45と調圧弁47とを繋いでいる。
【0039】
調圧弁47は、例えば電磁弁である。調圧弁47を開くと鍋5内と炊飯器1の外部とが繋がる。このとき、調圧弁47は、鍋5内を大気に開放する。鍋5内で発生した蒸気は、炊飯器1の外部へ放出される。調圧弁47を閉じると、鍋5内と炊飯器1の外部との繋がりが断たれて蒸気排出通路46を通じた気体の出入りが制限される。このとき、調圧弁47は、鍋5内を密閉する。鍋5内で発生した蒸気は、鍋5の内圧を大気圧より上昇させる。調圧弁47を閉じた状態で鍋5内の気体を吸い出すことで、鍋5の内圧を大気圧より減圧することもできる。
【0040】
調圧弁47は、蒸気排出通路46における気体の流通を許可または遮断するボール状の弁体47aと、弁体47aを開閉駆動するソレノイド47bと、を備えている。鍋5内の蒸気を炊飯器1の外部へ放出する場合には、ソレノイド47bは、弁体47aを一方の方向へ回転させて蒸気排出通路46を開放し、鍋5の内圧を加圧状態または減圧状態にする場合には、ソレノイド47bは、弁体47aを他方の方向へ回転させて蒸気排出通路46を閉塞する。鍋5内の被調理物が沸騰して蒸気が発生し、この蒸気が鍋5内に充満して鍋5の内圧が所定値を越えると、弁体47aは、自重に抗して蒸気排出通路46を開放する。そして、鍋5の内圧が所定値以下に下がると、弁体47aは、自重によって蒸気排出通路46を閉塞する。このような弁体47aの動作によって、鍋5内の圧力が大気圧以上に維持される。
【0041】
さらに、蓋体6は、蓋体6を閉じた状態で鍋5内を減圧する減圧ポンプ48を備えている。
【0042】
減圧ポンプ48の吸い込み側は、内蓋41の減圧孔49に接続されている。減圧ポンプ48は、減圧孔49から鍋5内の気体を炊飯器1の外部へ排出して鍋5の内圧を減圧する。鍋5の内圧を減圧する場合には、鍋5が鍋収容部2に収容され、蓋体6が閉じられ、かつ調圧弁47が閉じられている。鍋5の内圧を減圧状態から大気圧に回復させる場合には、減圧ポンプ48が停止され、調圧弁47が開かれる。そうすると鍋5内と炊飯器1の外部とが繋がって外気が鍋5内に流れ込む。減圧ポンプ48と減圧孔49とを繋ぐ通路は、気体の流通を許可または遮断する開閉弁を備えていても良い。
【0043】
換言すると、減圧ポンプ48および調圧弁47は、鍋5の内圧を大気圧より低い減圧状態に減圧可能な減圧部として機能し、調圧弁47は、鍋5の内圧を大気圧より高い加圧状態に加圧可能な加圧部としても機能する。
【0044】
また、蓋体6は、蓋体6の上面前半部に設けられる蓋開ボタン50と、入出力装置としての操作パネル52と、操作パネル52の動作を制御する入出力制御回路板53と、を備えている。
【0045】
蓋開ボタン50が操作されると、鍋収容部2を閉じる蓋体6と本体3とのロックが解除される。蓋体6と本体3とのロックが解除されると、ヒンジバネ32のばね力がヒンジシャフト31を回転中心に蓋体6を開く。
【0046】
操作パネル52は、種々の情報を表示する表示部55と、種々の操作を受け付ける操作部56と、を備えている。
【0047】
表示部55は、炊飯器1の現在の状態を、視覚で認識可能に表示する出力装置である。表示部55は、例えばディスプレイおよび発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)である。ディスプレイは、液晶パネル(Liquid Crystal Display、LCD)または有機ELパネル(Organic Electro-Luminescence、Organic Light-Emitting Diode)である。
【0048】
表示部55は、予約が設定されて炊飯動作を予約待機している場合に「予約」(図1)の文字列を点灯させる発光ダイオード、鍋5内の被調理物の保温行程を実行している場合に「保温」(図1)の文字列を点灯させる発光ダイオード、鍋5の内圧が大気圧より低い減圧状態の場合に「真空」(図1)の文字列を点灯させる発光ダイオード、炊飯動作を実行して鍋5の内圧が大気圧より高い加圧状態の場合に「加圧」(図1)の文字列を点灯させる発光ダイオードを含む複数の発光ダイオードを備えている。そのため、ディスプレイの光量を下げた減光状態であっても、使用者は、炊飯器1の現在の状態を容易に認識することができる。複数の発光ダイオードの発光色は、統一されていても良いし、相互に異なっていても良い。使用者は、発光色の相違によって炊飯器1の現在の状態をより容易に認識することができる。ディスプレイと発光ダイオードとの設置位置は、近接していても良いし、離れていても良い。これら発光ダイオードによる表示をディスプレイで表示しても良い。
【0049】
操作部56は、入力装置であって、いわゆるタッチセンサーである。操作部56は、表示部55に覆い被さるように表示部55の真上に配置されている。タッチセンサーは、平面に配列される複数のキー要素を備えている。それぞれのキー要素は、例えば導電性ポリマーを用いた透明電極部と、入出力制御回路板53に接続される接点部と、透明電極部と接点部とを繋ぐパターン配線と、を備えている。表示部55が表示するいずれかの表示要素に指先を押さえつける、接する、または近づけることで、その表示要素の真上に配置されるキー要素が操作される。このキー要素が受け付ける操作は、その真下に表示されている表示部55の表示要素の選択として入出力制御回路板53へ出力される。
【0050】
入出力制御回路板53は、蓋体6に収容され、かつ操作パネル52の真下に配置されている。入出力制御回路板53は、マイクロプロセッサーと、マイクロプロセッサーが実行する各種演算プログラム、パラメーターなどのデジタル情報を記憶する記憶装置と、計時機能を有するリアルタイムクロック(real-time clock、RTC)と、を備えている。記憶装置は、予め設定される複数の炊飯モードに関連する種々の設定(引数)を記憶している。リアルタイムクロックは、炊飯器1の現在時刻を刻む時計の機能、および計時機能を有している。リアルタイムクロックは、加熱制御回路板22および入出力制御回路板53のいずれか一方にあれば良い。
【0051】
ところで、炊飯器1の使用者は、炊飯器1の正面に向かい合う位置に立って操作パネル52を操作するものと推定される。そこで、本実施形態に係る炊飯器1は、炊飯器1の正面に向かい合う使用者に近い上面前半部に配置される蓋開ボタン50と、炊飯器1の正面に向かい合う使用者から遠い上面後半部に配置される蒸気口45と、を備えている。そのため、本実施形態に係る炊飯器1は、蓋開ボタン50と蒸気口45との間に表示部55を配置するための大きなスペースを容易に確保し、かつ表示部55の真上に配置される操作部56のサイズを極力大きく設定できる。したがって、炊飯器1は、表示部55の高い視認性、操作部56の高い操作性、および蒸気口45から排出される蒸気に対する高い安全性を獲得できる。
【0052】
また、本実施形態に係る炊飯器1は、従来の炊飯器に設けられていた、例えば炊飯キー、および切キーを含む物理的な操作キーを備えず、操作部56のみで操作できる。そのため、本実施形態に係る炊飯器1は、操作キーを探す手間を省き、直感的な操作性を提供できる。また、物理的な操作キーのない炊飯器1は、表示部55および操作部56を一纏めにしてスペースの利用効率を高め、入力装置と出力装置とが分散配置される従来の炊飯器に比べて極めてスマートな外観をデザインし易い。さらに、物理的な操作キーのない炊飯器1の上面は、ほとんど凹凸のない平坦面、あるいは緩やかな曲面にすることが可能である。それら炊飯器1の上面形状は、拭き掃除などの掃除を容易に行うことができる。
【0053】
図3は、本実施形態に係る炊飯器の内枠および加熱コイルの断面図である。
【0054】
図4は、本実施形態に係る炊飯器の内枠および加熱コイルの底面図である。
【0055】
図3および図4に示すように、本実施形態に係る炊飯器1の加熱コイル11は、複数のコイル11u、11dを含んでいる。
【0056】
第一コイル11uは、内枠17の外側面に設けられ、第二コイル11dは、内枠17の底部外面に設けられている。第一コイル11uは、内枠17を挟んで鍋5の外側面下部に向かい合う。第二コイル11dは、内枠17を挟んで鍋5の底部外面に向かい合う。
【0057】
加熱コイル11に通電したときの熱の移動について説明する。
【0058】
第一コイル11uに通電されると、鍋5の外側面下部が最初に昇温し、この部分の熱が鍋5の主材5aに伝導し、鍋5の内側面下部に接している被調理物に含まれる水に移動する。被調理物内の熱の移動は主に水の移動、つまり対流とともに行われる。被調理物に含まれる米が存在する場所では、水の移動は米粒の間の狭い隙間のみに制限されてしまい、水および熱の移動が鈍化する一方、米が存在しない場所では、水および熱の移動、つまり対流が活発になる。そのため、内側面下部に接している水に次いで、被調理物の上層部分の水が昇温する。米粒が自重で鍋5の下方へ沈むため、被調理物の上層部分は、ほとんど米粒を含まず、実質的に水のみを含む。その後、被調理物の中央部分では、高温になった上層部分の水および熱が、未だ低温の被調理物の中層部分に移動し、さらに被調理物の下層部分に移動する。この現象は、いわゆる熱対流であり、第一コイル11uによる「外対流」と呼ぶ。
【0059】
また、第二コイル11dに通電されると、鍋5の底部の外面が最初に昇温し、この部分の熱が鍋5の主材5aに伝導し、鍋5の底部の内面、いわゆる鍋底に接している被調理物の下層部分に含まれる水に移動する。米粒が自重で鍋5の下方へ沈むため、鍋底は、被調理物の下層部分に含まれる米および水で覆われたような状態である。したがって、鍋底の熱は、鍋底を覆う水の温度および圧力を上昇させる。その後、温度および圧力が上昇した鍋底の水は、被調理物に含まれる米粒の隙間を通り抜けて上方に移動する。つまり、被調理物の下層部分で昇温された水、すなわち熱水は、熱とともに被調理物の中層部分に移動し、その後、被調理物の上層部分に移動する。この現象は、いわゆる吹上げであり、第二コイル11dによる「内対流」と呼ぶ。
【0060】
そして、第一コイル11uと第二コイル11dとを交互に通電させると、鍋5内の被調理物には外対流と内対流とが交互に発生する。つまり、第一コイル11uと第二コイル11dとを交互に通電させると、鍋5内の被調理物に含まれる水の撹拌が促進されて被調理物の加熱ムラが低減される。
【0061】
本実施形態に係る炊飯器1の加熱制御回路板22は、第一コイル11uの通電時間、第二コイル11dの通電時間、第一コイル11uの出力、および第二コイル11dの出力を様々に組み合わせた複数の通電類型で加熱コイル11を動作させる。これら複数の通電類型は、記憶部に記憶されている。
【0062】
通電類型に含まれる、ある一類型は、第一出力W1、第一通電時間T1で第一コイル11uに通電した後、第二出力W2、第二通電時間T2で第二コイル11dに通電する。それぞれの通電時間T1、T2は、数秒以上であることが好ましい。そうすることで、鍋5内の被調理物に外対流と内対流とが交互に所定時間以上発生させることができる。それら外対流と内対流との交互発生は、鍋5内の被調理物の水の撹拌を促進し、加熱ムラを低減する。
【0063】
第一通電時間T1と第二通電時間T2とは、異なっていることが好ましい。つまり、ある通電類型で外対流が発生している時間と内対流が発生している時間を異ならせることが好ましい。
【0064】
通電類型は、加熱コイル11の通電時間および出力のいずれか一方を変動させ、他方を不変とするものを含んでいても良い。それぞれのコイル11、11dの通電時間が一定である一方、それぞれのコイル11、11dの出力が異なっていても良い。また、それぞれのコイル11、11dの出力が一定である一方、それぞれのコイル11、11dの通電時間が異なっていても良い。
【0065】
複数の通電類型は、全ての加熱コイル11の通電が遮断される無通電時間を有するものを含んでいても良い。すなわち、通電類型は、2つのコイル11、11dの一方を所定の通電時間および出力で通電した後、第一無通電時間が経過すると2つのコイル11、11dの他方を所定の通電時間および出力で通電し、さらに第二無通電時間の経過の経過を待つ。第一無通電時間と第二無通電時間とは、同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0066】
また、通電類型は、2つのコイル11、11dの一方のみに間欠的に通電し、2つのコイル11、11dの他方に通電しない(無通電)ものを含んでいても良い。そのような通電類型は、所定の通電時間および所定の通電出力で2つのコイル11、11dの一方に通電し、所定の通電時間で2つのコイル11、11dの双方に通電しない。このような通電類型は、保温工程に好適である。
【0067】
それら通電類型は、所定の時間、あるいは所定の回数、繰り返し実行される。
【0068】
通電類型を切り替えると、第一出力W1、第一通電時間T1で第一コイル11uに通電した後、第二出力W2、第二通電時間T2で第二コイル11dに通電する第一通電類型から第三出力W3、第三通電時間T3で第一コイル11uに通電した後、第四出力W4、第四通電時間T4で第二コイル11dに通電する第二通電類型に切り替わる。それぞれの通電類型は、切替の前後で所定の時間、あるいは所定の回数、繰り返し実行される。
【0069】
それぞれの通電類型の内容、および複数の通電類型の組み合わせは、炊飯コースおよび調理コースに含まれるそれぞれの工程で、好適に設定される。
【0070】
なお、通電類型において第一コイル11uの出力調整、および第二コイル11dの出力調整は、例えばPWM制御(Pulse Width Modulation)による。
【0071】
図5は、本発明の実施形態に係る加熱調理器の一例である炊飯器の制御ブロック図である。
【0072】
図1から図4に加えて図5に示すように、本実施形態に係る炊飯器1は、入出力制御回路板53と加熱制御回路板22とを連携させて動作する。入出力制御回路板53および加熱制御回路板22は、双方方向に制御信号を入出力し合う。入出力制御回路板53は、加熱制御回路板22へ加熱制御信号を出力し、加熱制御回路板22は、入出力制御回路板53へ表示制御信号を出力する。
【0073】
また、炊飯器1は、加熱コイル11に通電するコイル駆動回路61と、蓋ヒーター38に通電する蓋ヒーター駆動回路63と、内蓋41の温度を検出する蓋温度センサー65と、蓋体6の内部に設けられて蓋体6の開閉を検知する蓋開閉センサー66と、鍋5の内圧を検出する圧力センサー67と、報知部68と、を備えている。
【0074】
コイル駆動回路61は、加熱制御回路板22が出力する第一加熱制御信号に基づいて第一コイル11uに高周波電流を通電させる第一駆動回路61uと、加熱制御回路板22が出力する第二加熱制御信号に基づいて第二コイル11dに高周波電流を通電させる第二駆動回路61dと、を含んでいる。2つのコイル駆動回路61u、61dは、例えば電源回路、インバーター、IH(Induction Heating)駆動回路、およびスイッチング素子の少なくともいずれかである。コイル駆動回路61は、2つのコイル11u、11dに通電する高周波電流の周期、および通電する時間のデューティーサイクルの少なくともいずれか一方を変化させて、2つのコイル11u、11dの出力を増減させる。
【0075】
なお、説明の便宜のため、炊飯器1は、2つのコイル11u、11dの通電を択一的に選択するスイッチング素子を備えているものとする。炊飯器1は、2つのコイル11u、11dを同時に通電可能であっても良い。つまり、2つのコイル11u、11dが同時に通電される期間があっても良い。
【0076】
蓋ヒーター駆動回路63は、加熱制御回路板22が出力する蓋加熱制御信号に基づいて蓋ヒーター38に直流電流または交流電流を通電させる。
【0077】
蓋温度センサー65は、サーミスターである。蓋温度センサー65は、放熱板37の温度を検知する。蓋温度センサー65の検知温度、つまり放熱板37の温度は、内蓋41の温度に相関する。つまり、蓋温度センサー65の検知温度から内蓋41の温度が推測できる。蓋温度センサー65が検出する温度から推測される内蓋41の温度を、以下、「蓋温度」とも呼ぶ。蓋温度センサー65が検出する蓋温度は、蓋ヒーター38による内蓋41の加熱温度の管理にもっぱら利用される。
【0078】
蓋開閉センサー66は、ヒンジ機構7の近傍に配置されていることが好ましい。蓋開閉センサー66は、蓋体6の開閉に基づく検知信号を入出力制御回路板53へ出力できる限り、光学式、機械式、磁石式など、どのような検知方式のセンサーでも良い。
【0079】
圧力センサー67は、蓋体6の内部に設けられて蒸気排出通路46の調圧弁47よりも鍋5側の圧力を検知し、加熱制御回路板22へ出力する。
【0080】
報知部68は、点灯または点滅する光源、例えばランプ、または発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)であり炊飯器1の使用者の視覚に訴えるもの、電気的に合成された音声やブザー音などを発する発音器など炊飯器1の使用者の聴覚に訴えるもの、バイブレーターなど炊飯器1の使用者の触覚に訴えるもの、の少なくともいずれか1つである。
【0081】
入出力制御回路板53の入力は、操作部56のそれぞれのキー要素が出力する操作信号、および加熱制御回路板22が出力する表示制御信号である。これら入力に基づいて、入出力制御回路板53は、表示部55の表示動作を制御し、報知部68の動作を制御し、加熱制御回路板22へ加熱制御信号を出力する。
【0082】
入出力制御回路板53のマイクロプロセッサーは、所定のプログラムを実行することで、それぞれのキー要素が出力する操作信号に対応する制御信号を生成する入力信号生成部72、表示部55の表示動作を制御する表示制御部73、および入力信号生成部72および表示制御部73と連携してキー要素で選択できる種々の条件の提示、選択、および設定を可能にする条件設定部75、として機能する。
【0083】
条件設定部75は、例えば調理コースおよび炊飯コースを含む複数のコースを順次に提示し、所望のコースの選択および設定を可能にする。
【0084】
入出力制御回路板53の記憶装置は、例えば米の銘柄、炊き方、かたさなど、キー要素で選択できる種々の条件に対応する炊飯コースを記憶している。表示部55は、記憶装置が記憶する炊飯コースの種々の条件を表示し、操作部56でそれら条件を選択する操作を受け付けることで、適宜に炊飯コースおよび調理コースの選択、および設定が行われる。
【0085】
本体3の加熱制御回路板22は、鍋温度センサー26が検出する鍋底温度および蓋温度センサー65が検出する蓋温度に基づいて、炊飯時や保温時に加熱コイル11、蓋ヒーター38を加熱調整して鍋5の温度や内蓋41の温度を制御する。
【0086】
加熱制御回路板22の入力は、鍋温度センサー26が出力する温度検知信号と、蓋温度センサー65が出力する温度検知信号と、圧力センサー67が出力する内圧検知信号と、蓋開閉センサー66が出力する蓋開閉検知信号と、入出力制御回路板53が出力する加熱制御信号と、である。
【0087】
これら入力に基づいて、加熱制御回路板22は、炊飯時および保温時に鍋5を加熱する加熱コイル11と、内蓋41を加熱する蓋ヒーター38と、をそれぞれ制御する。加熱制御回路板22は、鍋温度センサー26が出力する温度検知信号に基づいて主に加熱コイル11を制御して鍋5の底部の温度を管理する。加熱制御回路板22は、蓋温度センサー65が出力する温度検知信号に基づいて主に蓋ヒーター38を制御して内蓋41の温度を管理する。
【0088】
また、加熱制御回路板22は、圧力センサー67が出力する内圧検知信号に基づいて蒸気排出通路46の調圧弁47の開閉、および減圧ポンプ48の動作をそれぞれ制御する。
【0089】
加熱制御回路板22のマイクロプロセッサーは、所定のプログラムを実行することで炊飯制御部77および保温制御部78として機能する。
【0090】
炊飯制御部77は、操作部56に炊飯開始が入力されると、ひたし炊き工程、沸騰加熱工程、沸騰継続工程、およびむらし工程を順次に実行して、ご飯を炊き上げる。また、炊飯制御部77は、操作部56に調理開始が入力されると、調理工程を順次に実行する。
【0091】
保温制御部78は、保温工程を実行する。保温工程は、鍋5内のご飯を所定の保温温度に保つ単純保温工程、および鍋5内の所定の保温温度より低温なご飯を所定の保温温度に再加熱する再加熱保温工程を実行する。
【0092】
加熱制御回路板22の記憶装置は、調圧弁47および減圧ポンプ48の駆動タイミングを様々に組み合わせた加減圧類型、および第一コイル11uおよび第二コイル11dの通電類型、炊飯コースおよび調理コースにおける、それら実行タイミングの組み合わせを記憶している。
【0093】
炊飯器1による炊飯動作の一例を説明する。
【0094】
被炊飯物が鍋5内に入れられる。次いで被炊飯物を収容した鍋5が本体3の鍋収容部2に収容され、蓋体6が閉じられる。
【0095】
炊飯器1の電源プラグが商用交流電源のコンセントに差し込まれると、炊飯器1は炊飯や保温を実行していない初期状態で起動する。初期状態は、待機状態、または停止状態とも呼ばれる。待機状態で操作部56のキー要素が操作される都度に、操作されたキー要素に対応する操作信号が入力信号生成部72に入力される。条件設定部75は、入力信号生成部72と連携してコースの設定を変更し、表示制御部73と連携して変更された設定を表示部55に表示させる。表示部55は、操作されたキー要素に対応する現在のコース設定を炊飯器1の使用者に視覚的に提示する。
【0096】
コースの決定に対応するキー要素が操作されると、コースの決定に対応する操作信号が入力信号生成部72に入力される。条件設定部75は、表示部55に表示されているコースを記憶装置に記憶し、選択されたコースに対応する加熱パターンを加熱制御回路板22へ出力する。加熱制御回路板22の炊飯制御部77は、入力された加熱パターンに沿ってひたし炊き工程、沸騰加熱工程、沸騰継続工程、およびむらし工程を実行する。
【0097】
ひたし炊き工程では、炊飯制御部77は、調圧弁47、および減圧ポンプ48を制御して鍋5の内圧を減圧する。ひたし炊き工程が開始されると、表示制御部73は、「真空」の文字列の真下に配置される発光ダイオードを点灯させる。
【0098】
炊飯制御部77は、調圧弁47を閉じて蒸気排出通路46における気体の流通を遮断し、減圧ポンプ48を動作させて鍋5内の気体を炊飯器1の外部へ排気する。炊飯制御部77は、減圧ポンプ48を動作させ、密閉した鍋5の内部の空気を減圧ポンプ48で抜き取る真空引きを行なう。炊飯制御部77は、圧力センサー67が出力する鍋5の内圧検知信号に基づいて鍋5内の内圧が所定の値以下に維持されるように減圧ポンプ48を制御する。つまり、ひたし炊き工程の全期間に亘って、鍋5の内圧は、大気圧よりも低い減圧状態に保たれる。
【0099】
炊飯制御部77は、鍋温度センサー26が出力する温度検知信号に基づいて加熱コイル11の通電をスイッチングして鍋5を加熱し、米の吸水を促進させる。このとき、鍋5の温度が所定の温度に到達するまでに要する時間、および加熱量から被炊飯物の炊飯量を推定する。ひたし炊き工程は、予め定める所定の時間が経過すると終了する。
【0100】
沸騰加熱工程では、炊飯制御部77は、被炊飯物の沸騰を検知するまで、加熱コイル11に通電する。鍋5内の被炊飯物は、ひたし炊き工程よりも強く加熱され、被炊飯物の温度は、短時間で沸騰温度まで上昇する。炊飯制御部77は、減圧ポンプ48を停止させて調圧弁47を開放する。そうすると、鍋5の内圧は、直ちに大気圧まで回復する。表示制御部73は、「真空」の文字列の真下に配置される発光ダイオードを消灯させる。
【0101】
その後、炊飯制御部77は、鍋5の底部の温度が所定温度以上、例えば摂氏90度以上になり、かつ内蓋41の温度が所定温度以上、例えば摂氏90度以上になると、調圧弁47を開き、大気圧下で被炊飯物の沸騰検知を開始する。表示制御部73は、圧力センサー67が検知する鍋5の内圧に基づいて「加圧」の文字列の真下に配置される発光ダイオードを点灯させる。炊飯制御部77は、鍋5の底部の単位時間あたりの温度上昇率、または内蓋41の単位時間あたりの温度上昇率を監視し、それら温度上昇率が所定の上昇率以下になると被炊飯物が沸騰したものと判断する。
【0102】
沸騰継続工程では、炊飯制御部77は、加熱コイル11の通電をスイッチングして鍋5の底部の温度を所定の温度以上、例えば摂氏98度以上に維持し、蓋ヒーター38を連続通電して内蓋41の温度を所定の温度以上、例えば摂氏98度以上に維持する。
【0103】
炊飯制御部77は、鍋5の底部の温度上昇率が所定の上昇率以上になる、または鍋5内の余剰な水分が無くなるドライアップ温度、例えば摂氏120度に達すると、被炊飯物の炊き上がりを判断して沸騰継続工程を終える。
【0104】
むらし工程では、炊飯制御部77は、内蓋41の温度に基づいて蓋ヒーター38の通電をスイッチングし、内蓋41への露付きを防止する。また、炊飯制御部77は、鍋5の底部の温度に基づいて加熱コイル11の通電をスイッチングし、被炊飯物の温度を管理する。むらし工程は、予め定められる所定の時間継続する。むらし工程が終了すると、炊飯制御部77は、炊飯動作を完了し、保温制御部78は、保温工程を開始する。
【0105】
炊飯動作を終えた加熱制御回路板22は、炊飯動作の終了に対応する表示制御信号を出力する。この表示制御信号が入力された入出力制御回路板53は、表示部55の表示動作を制御し、報知部68の報知動作を制御して炊飯工程の完了を使用者に知らせる。
【0106】
保温制御部78は、ご飯の温度が炊き立ての温度、実質的に摂氏100度から保温温度、実質的に摂氏73度に低下するまで加熱コイル11を発熱させ、摂氏73度で保温温度が安定した後にも加熱コイル11を発熱させる。保温制御部78は、鍋5の底部の温度が一定になるように加熱コイル11の出力を調整する。
【0107】
炊飯器1は、鍋5内のご飯を再加熱することもできる。
【0108】
図6は、本実施形態に係る炊飯器および炊飯方法が炊き上げるご飯の用途を概念的に説明する図である。
【0109】
図6に示すように、本実施形態に係る炊飯器1および炊飯方法は、一旦冷凍し、これを再加熱して食することが好適なご飯R3を炊き上げる用途を想定している。また、炊飯器1および炊飯方法は、炊き上げた後、冷凍する前に食しても好適なご飯R3を炊き上げる用途を想定する。つまり、本実施形態に係る炊飯器1および炊飯方法は、冷凍の前後で食感の差が少ないご飯R3を炊き上げる用途を想定している。
【0110】
先ず、生米R1を水にひたして、実線矢印「吸水」のように吸水させる。吸水を完了した米R2を加熱し、蒸らして実線矢印「α化」のように糊化し、ご飯R3を炊き上げる。
【0111】
次いで、ご飯R3を実線矢印「冷凍」のように冷凍し、保存に好適な冷凍ご飯R4にする。ご飯R3の冷凍には、冷凍庫を有する、一般家庭に普及している冷蔵庫が利用されることを想定する。また、冷凍ご飯R4は、一般家庭に普及している冷蔵庫の冷凍能力で冷凍され、保存されることを想定している。
【0112】
なお、炊き上げられたご飯R3は、摂氏60度以下で老化(β化)し始め、摂氏0度から摂氏10度の温度帯で最も老化が進む。一方、冷凍することでご飯R3の老化を防ぐことができる。
【0113】
そして、然るべき時宜に冷凍ご飯R4を実線矢印「再α化」のように再加熱する。そうすると、再加熱ご飯R5が得られる。ご飯R5の再加熱には、一般家庭に普及している電子レンジが利用されることを想定する。
【0114】
本実施形態に係る炊飯器1および炊飯方法は、生米R1をご飯R3に炊き上げる工程、つまり実線矢印「吸水」および実線矢印「α化」を制御することで冷凍の前後で食感の差が少ないご飯R3を提供する。
【0115】
ここで、炊きたてのご飯R3に比べて同等の食感を有すると評価される再加熱ご飯R5、または炊きたてのご飯R3よりも良い食感を有すると評価される再加熱ご飯R5は、次のような傾向を有する。先ず、再加熱ご飯R5が、炊きたてのご飯R3よりやわらかめ、または同等のかたさの食感を有する場合にそのように評価される。また、再加熱ご飯R5が、炊きたてのご飯R3と差が少ないねばりの食感を有する場合にそのように評価される。
【0116】
なお、再加熱ご飯R5は、炊きたてのご飯R3に比べてもちもち感が強くなる傾向を有している。
【0117】
そして、発明者らは、冷凍の前後の食感に差のあるご飯に比べて十分に糊化させることで、含水率が高く、冷凍の前後で食感の差が少ないご飯R3を炊き上げることができることを見いだした。
【0118】
また、発明者らは、鍋5の内圧を減圧状態にして米が糊化する温度より低く、米の還元糖量の増加に寄与する酵素が活性化しやすい温度以上の温度帯で所定のひたし時間以上、米をひたした後に、ご飯を炊き上げることで、冷凍の前後で食感の差が少ないご飯R3を炊き上げることができることを見いだした。温度帯は、米が糊化する温度である摂氏60度未満、かつ米の還元糖量の増加に寄与する酵素が活性化しやすい温度である摂氏30度以上である。より好ましい温度帯は、摂氏43度以上、摂氏53度以下である。所定のひたし時間は、15分以上であれば良い。それら温度条件および時間条件で米をひたす行為、工程を「冷凍好適ひたし」と呼ぶ。
【0119】
さらに、発明者らは、冷凍ひたしした米および水を摂氏90度以上の温度で20分以上加熱してご飯を炊き上げることで、冷凍の前後で食感の差が少ないご飯R3を炊き上げることができることを見いだした。それら温度条件および時間条件で米を炊き上げる行為、工程を「冷凍好適炊き上げ」と呼ぶ。
【0120】
なお、説明の便宜のため、冷凍の前後で食感の差が少ないご飯R3を、以下「冷凍好適ご飯」と呼ぶ。冷凍好適ご飯は、冷凍の前後で良好な食感を両立する。
【0121】
次いで炊飯器1で冷凍好適ご飯を炊き上げるための炊飯動作について詳述する。
【0122】
図7は、本実施形態の炊飯器の冷凍好適ご飯の炊飯動作における鍋内の温度、鍋の内圧、加熱コイルの出力の時間変化を示す図である。
【0123】
図7は、鍋温度センサー26が検知する鍋底温度および蓋温度センサー65が検知する蓋温度から推定される鍋内温度Ti、第二コイル11dの出力PD、第一コイル11uの出力PU、および圧力センサー67が検知する鍋5の内圧Piの時間変化を図示している。
【0124】
図7に示すように、本実施形態に係る炊飯器1は、ひたし炊き工程、沸騰加熱工程、沸騰継続工程、およびむらし工程の4つの工程を含む炊飯動作を実行して米と水をご飯に炊き上げる。
【0125】
ひたし炊き工程は、被炊飯物の量を判定する容量判定工程と、被炊飯物に含まれる米の吸水を促進させるひたし工程と、を含んでいる。被炊飯物の量を、以下、単に「調理量」と呼ぶ。
【0126】
ひたし炊き工程が開始されると、炊飯制御部77は、冷凍好適ひたしの開始前、つまり所定のひたし時間Tdより前に鍋5の内圧Piを一旦減圧し、大気圧に回復させた後、再度減圧状態になるよう減圧ポンプ48および調圧弁47を動作させる。
【0127】
先ず、炊飯制御部77は、ソレノイド47bを動作させて調圧弁47で蒸気排出通路46を閉塞し、鍋5内と減圧ポンプ48とを繋ぐ経路の気体の流通を許可し、減圧ポンプ48を動作させて鍋5内の気体を抜き取る。
【0128】
次いで、炊飯制御部77は、ソレノイド47bを動作させて調圧弁47で蒸気排出通路46を開放し、鍋5内を炊飯器1の外部に繋げる。そうすると、蒸気排出通路46を通じて蒸気口45から減圧状態の鍋5内に外気が流れ込み、鍋5の内圧は大気圧に回復する。 さらにその後、炊飯制御部77は、ソレノイド47bを動作させて調圧弁47で蒸気排出通路46を閉塞し、鍋5内と減圧ポンプ48とを繋ぐ経路の気体の流通を許可し、減圧ポンプ48を動作させて鍋5内の気体を抜き取る。
【0129】
つまり、ひたし炊き工程が開始されると、鍋5の内圧は、図6の破線領域PS1に示すように変動する。この圧力の変動は、米内部の空気を米の外に追い出し、追い出された空気の代わりに水を米の中心部まで浸透させる。
【0130】
表示制御部73は、鍋5の内圧Piが大気圧より減圧される都度、「真空」の文字列の真下の発光ダイオードを点灯し、鍋5の内圧Piが大気圧に回復する都度、「真空」の文字列の真下の発光ダイオードを消灯する。
【0131】
ひたし炊き工程の開始は、容量判定工程の開始でもある。容量判定工程を実行する炊飯制御部77は、所定の出力、所定の予熱時間で第一コイル11uに通電し、予熱時間の経過後に所定の昇温時間で第一コイル11uに再度通電し、昇温時間の経過後の鍋内温度Tiに基づいて調理量を判定する。
【0132】
昇温時間は、予熱時間の終了から調理量を判定可能な温度低下を生じさせることができる長さに設定される。容量判定工程で通電する加熱コイル11は、鍋温度センサー26に近い方の第二コイル11dではなく、鍋温度センサー26から遠い方の第一コイル11uであることが好ましい。そうすることで、鍋温度センサー26の検知結果に対する加熱コイル11の影響が軽減され、調理量の予測精度が向上する。
【0133】
容量判定工程における予熱時間は、例えば30秒以上である。予熱時間の最小値は、容量判定可能な最小調理量とそれ以上の調理量とを判定をするために必要な、もっとも短い時間以上であることが好ましい。容量判定工程における昇温時間は、例えば1分以上である。昇温時間の最小値は、最小調理量とそれ以上の調理量とを判定をするために必要な、もっとも短い時間以上であることが好ましい。そのため、炊飯コースに含まれる、炊飯時間を優先させる「早炊き」コースでは、予熱時間を30秒に設定し、昇温時間を1分に設定して良い。
【0134】
炊飯制御部77は、昇温時間が終了すると、ひたし工程に移行する。このひたし工程は、冷凍好適ひたしである。
【0135】
ひたし工程を実行する炊飯制御部77は、2つのコイル11u、11dを交互に通電して鍋5を加熱する。ひたし工程に適用される通電類型は、容量判定工程で判定された調理量によらない、特定の通電類型であっても良いし、2つのコイル11u、11dの出力および通電時間の異なる複数の調理類型から調理量に応じて選択されるものであっても良いし、特定の通電類型を調理量に応じて補正したものであっても良い。
【0136】
炊飯制御部77は、米が糊化する温度である摂氏60度未満、かつ米の還元糖量の増加に寄与する酵素が活性化しやすい温度である摂氏30度以上に被炊飯物を昇温させて米の吸水を促進させる。好ましくは、炊飯制御部77は、摂氏43度以上、摂氏53度以下の温度帯Trでひたし時間Td以上継続するように2つのコイル11u、11dを通電させ、または通電を遮断して米の吸水を促進させる。そうすることで、炊飯器1は、冷凍好適ひたしで米が糊化することを防ぎ、米に十分に吸水させる。
【0137】
また、炊飯制御部77は、ひたし炊き工程の全期間に渡って、鍋内温度Tiが摂氏60度を超えないように2つのコイル11u、11dを通電させ、または通電を遮断する。そうすることで、炊飯器1は、被炊飯物である米および水が、ひたし工程で糊化することを防ぎ、ご飯の炊き上がりが悪化することを回避する。
【0138】
炊飯制御部77は、ひたし時間が終了すると、沸騰加熱工程に移行する。
【0139】
沸騰加熱工程は、被炊飯物を沸騰直前の状態まで速やかに加熱する加熱工程と、被炊飯物の沸騰を検知する沸騰検知工程と、を含んでいる。
【0140】
炊飯制御部77は、ソレノイド47bを動作させて調圧弁47で蒸気排出通路46を開放し、鍋5内を炊飯器1の外部に繋げる。そうすると、鍋5内の蒸気は、蒸気排出通路46を通じて蒸気口45から炊飯器1の外部に放出される。沸騰加熱工程の全期間に渡って調圧弁47は開放される。つまり、鍋5は大気に開放され、鍋5の内圧Piは、1気圧に維持される。表示制御部73は、「真空」の文字列の真下の発光ダイオードを消灯する。
【0141】
沸騰加熱工程の開始は、加熱工程の開始でもある。炊飯制御部77は、鍋底温度および蓋温度が所定の条件を満足するまで加熱工程を実行する。加熱工程を実行する炊飯制御部77は、2つのコイル11u、11dを交互に通電してひたし炊き工程よりも鍋5内の被炊飯物を強く加熱する。加熱工程は、例えば初期加熱工程、中期加熱工程、終期加熱工程の3つの工程を含んでいる。3つの工程は、個別に定められる実行時間を有している。それら3つの工程に適用される通電類型は、第一コイル11uの通電、無通電時間、第二コイル11dの通電、および無通電時間を順次に行うことが好ましい。
【0142】
さらに、炊飯制御部77は、調理量に応じて2つのコイル11u、11dの通電時間を変更することが好ましい。例えば第二コイル11dの通電時間は、調理量に反比例するよう変更され、第一コイル11uの通電時間は、調理量に正比例するよう設定され、通電類型の繰り返し間隔、すなわち通電類型の周期は、調理量に正比例するよう設定される。
【0143】
初期加熱工程を実行する炊飯制御部77は、例えば第二コイル11dの通電時間がひたし工程の通電時間よりも少しだけ高く、かつ第一コイル11uの通電時間が第二コイル11dの通電時間と実質的に同じ初期通電類型で2つのコイル11u、11dに通電する。初期通電類型は、ひたし炊き工程に適用される通電類型よりも少しだけ強い出力で2つのコイル11u、11dを加熱する。初期加熱工程の開始から所定の第一実行時間が経過すると、炊飯制御部77は、中期加熱工程へ移行する。
【0144】
中期加熱工程を実行する炊飯制御部77は、2つのコイル11u、11dの通電時間の和が初期通電類型と実質的に同じ、または異なり、かつ2つのコイル11u、11dの出力が初期通電類型と実質的に同じ、または低い中期通電類型で2つのコイル11u、11dに通電する。中期加熱工程の開始から所定の第二実行時間が経過すると、炊飯制御部77は、終期加熱工程へ移行する。
【0145】
終期加熱工程を実行する炊飯制御部77は、2つのコイル11u、11dの通電時間の和が中期通電類型と実質的に同じ、または異なり、かつ2つのコイル11u、11dの出力が中期通電類型と実質的に同じ、または低い終期通電類型で2つのコイル11u、11dに通電する。
【0146】
つまり、加熱工程における鍋5への入熱は、時間の経過によらず実質的に保たれ、または徐々に低下する。
【0147】
加熱工程が進むにつれて、鍋底温度および蓋温度は次第に上昇する。炊飯制御部77は、鍋底温度が所定の温度以上、例えば摂氏90度以上、および蓋温度が所定の温度以上、例えば摂氏90度以上、の少なくともいずれか一方に達すると、沸騰検知工程へ移行する。
【0148】
沸騰検知工程を実行する炊飯制御部77は、加圧状態における被炊飯物の沸騰を検知する。沸騰検知工程を「安定#1工程」と呼ぶ場合がある。
【0149】
炊飯制御部77は、第一コイル11uの通電時間が終期通電類型の第一コイル11uの通電時間よりも少しだけ長く、第二コイル11dの通電時間が終期通電類型の第二コイル11dの通電時間よりも少しだけ短く、かつ2つのコイル11u、11dの通電時間の和が終期通電類型と実質的に同じ通電類型で2つのコイル11u、11dに通電する。
【0150】
つまり、沸騰検知工程に適用される通電類型は、加熱工程に適用される通電類型と異なっている。一方、炊飯制御部77は、加熱工程と同じように沸騰検知工程でも、調理量に応じて2つのコイル11u、11dの通電時間を変更することが好ましい。
【0151】
炊飯制御部77は、被炊飯物に含まれる水が沸騰しているか否かを判断するために、鍋底温度の単位時間あたりの上昇率、または蓋温度の単位時間あたりの上昇率を算出する。鍋底温度の上昇率が、例えば120秒間で摂氏3度以下のように所定の温度上昇率以下であれば、炊飯制御部77は、鍋底温度に基づく第一沸騰判定条件が成立したと判定する。蓋温度の上昇率が、例えば60秒間で摂氏1度以下のように所定の温度上昇率以下であれば、炊飯制御部77は、蓋温度に基づく第二沸騰判定条件が成立したと判定する。そして、2つの沸騰判定条件が何れか成立、またはいずれも成立すると、炊飯制御部77は、沸騰検知工程を終了する。
【0152】
鍋底温度の温度上昇率の判定値、および蓋温度の温度上昇率の判定値は、調理量に応じて変更しても良い。炊飯制御部77は、第一沸騰判定条件および第二沸騰判定条件のいずれか一方の成立を以て沸騰検知工程を終了し、沸騰継続工程に移行しても良い。
【0153】
本実施形態に係る炊飯制御部77は、加熱工程で3つの異なる通電類型で2つのコイル11u、11dに通電し、沸騰検知工程でさらに異なる通電類型で2つのコイル11u、11dに通電する。つまり、炊飯器1は、被炊飯物に含まれる水を沸騰させるのに適切な通電類型をきめ細かく変更して、ご飯の炊きムラを低減させる。
【0154】
また、炊飯制御部77は、調理量に応じて通電類型を選択したり、補正したり、変更したりすることができる。そうすることで、炊飯器1は、調理量に好適な通電類型をきめ細かく適用して、ご飯の炊きムラを低減させる。
【0155】
炊飯制御部77は、沸騰加熱工程が終了すると、沸騰継続工程に移行する。
【0156】
沸騰継続工程、および沸騰継続工程に続くむらし工程は、冷凍好適炊き上げである。炊飯制御部77は、沸騰継続工程およびむらし工程の全期間に渡って、被炊飯物を摂氏90度以上の温度Tcuで20分以上(時間Tc≧20分)加熱する。炊飯制御部77は、例えば沸騰継続工程を7分間で実行し、むらし工程を13分間で実行する。この冷凍好適炊き上げ条件は、冷凍好適ひたしで吸水を促進した米を、十分に糊化させる。
【0157】
沸騰継続工程は、被炊飯物の炊き上がりを検知する炊上工程を含んでいる。沸騰継続工程の開始から炊上工程へ移行するまでの工程を「安定#2工程」と呼ぶ場合がある。
【0158】
沸騰継続工程を実行する炊飯制御部77は、鍋底温度が所定の温度に達するまで2つのコイル11u、11dを交互に通電し、蓋温度が所定の温度以上、例えば摂氏98度以上を維持するように蓋ヒーター38に通電する。炊飯制御部77は、2つのコイル11u、11dの無通電時間が沸騰検知工程の通電類型より長い通電類型で2つのコイル11u、11dに通電する。
【0159】
沸騰継続工程が開始されると、炊飯制御部77は、鍋5の内圧Piを一旦加圧し、一旦大気圧に急激に減圧し、再度鍋5の内圧Piを一旦加圧し、再度大気圧に急激に減圧させた後、鍋5の内圧Piを大気開放状態で維持する。
【0160】
先ず、炊飯制御部77は、沸騰継続工程の開始直後、ソレノイド47bを動作させて調圧弁47で蒸気排出通路46を閉塞し、鍋5の内圧Piを一時的に1.05気圧程度に加圧する。
【0161】
次いで、炊飯制御部77は、ソレノイド47bを動作させて調圧弁47で蒸気排出通路46を開放し、鍋5内を炊飯器1の外部に繋げる。そうすると、蒸気排出通路46を通じて蒸気口45から加圧状態の鍋5内の蒸気が流れ出し、鍋5の内圧Piは大気圧に減圧する。
【0162】
さらにその後、炊飯制御部77は、ソレノイド47bを動作させて調圧弁47で蒸気排出通路46を閉塞し、鍋5の内圧Piを一時的に1.05気圧程度に加圧する。
【0163】
そして最後、炊飯制御部77は、ソレノイド47bを動作させて調圧弁47で蒸気排出通路46を開放し、鍋5内を炊飯器1の外部に繋げる。そうすると、蒸気排出通路46を通じて蒸気口45から加圧状態の鍋5内の蒸気が流れ出し、鍋5の内圧Piは大気圧に減圧する。この後、沸騰加熱工程の最後まで、鍋5の内圧Piは大気開放状態に維持される。
【0164】
つまり、冷凍好適炊き上げが開始されると、鍋5の内圧は、図6の破線領域PS2に示すように変動する。この圧力の変動とそれに続く大気開放状態は、冷凍好適ご飯のもちもちする食感を向上させる。
【0165】
表示制御部73は、鍋5の内圧Piが加圧される都度、「加圧」の文字列の真下の発光ダイオードを点灯し、鍋5の内圧Piが大気圧に回復する都度、「加圧」の文字列の真下の発光ダイオードを消灯する。
【0166】
鍋底温度が所定の温度以上に達する、または所定の温度上昇率以上、例えば10秒間で摂氏0.5度以上のように所定の温度上昇率以上であれば、炊飯制御部77は、鍋5内の水が無くなりはじめたと推定し、炊上工程を開始する。
【0167】
炊上工程を実行する炊飯制御部77は、第二コイル11dの通電時間が安定#2工程の通電類型の第二コイル11dの通電時間より長く、第一コイル11uの通電時間が安定#2工程の通電類型の第一コイル11uの通電時間以下、かつ第二コイル11dの通電時間が第一コイル11uの通電時間よりも長い炊上通電類型で2つのコイル11u、11dに通電する。
【0168】
炊上工程では、鍋5内に被炊飯物の水が殆ど無く、内対流および外対流は発生しない。第二コイル11dの通電時間が第一コイル11uの通電時間よりも長い炊上通電類型は、鍋底に残る水を効率的に加熱できる。第二コイル11dの通電時間は、調理量に正比例する、または時間が逆転しないように設定され、第一コイル11uの通電時間も、調理量に正比例する、または時間が逆転しないように設定される。
【0169】
炊飯制御部77は、鍋底温度が所定のドライアップ温度、例えば摂氏120度に達する、または鍋温度の上昇率が、例えば10秒間で摂氏0.5度以上のように所定の温度上昇率以上であれば、被炊飯物の炊き上がりを判定してむらし工程に移行する。
【0170】
むらし工程を実行する炊飯制御部77は、蓋温度が所定の温度を維持するように蓋ヒーター38に通電する。また、炊飯制御部77は、内蓋41に露が付かないよう、また鍋5内のご飯が焦げない程度の高温が維持されるように加熱コイル11に通電する。むらし工程に適用される通電類型は、炊上工程の通電類型とほぼ同じである。
【0171】
炊飯制御部77は、所定の時間が経過するとむらし工程を終了し、つまり冷凍好適ご飯の炊飯動作を完了する。
【0172】
本実施形態に係る炊飯器1は、鍋底温度の温度上昇率の変化、および蓋温度の温度上昇率の変化に基づいて被炊飯物に含まれる水の沸騰を検知した後も、炊上工程で加熱コイル11の通電類型を切替え、またむらし工程で加熱コイル11の通電類型を切替える。したがって、炊飯器1は、被炊飯物に含まれる水の沸騰を継続させ、ご飯が焦げない程度の高温を維持する際にも好適な通電類型をきめ細かく適用できる。そうすることで、炊飯器1は、ご飯に炊きムラを低減させる。
【0173】
ここで、冷凍好適ご飯との区別のために、冷凍の前後で食感の差を許容し、冷凍前の食感を優先するご飯を「冷凍劣後ご飯」と呼ぶ。
【0174】
なお、冷凍劣後ご飯のひたし工程は、冷凍好適ひたしの温度条件よりも若干高い温度条件、かつ冷凍好適ひたしの時間条件より短い時間条件で実行される。その場合の温度帯の中央値は、冷凍好適ひたしの温度帯Trの中央値である摂氏48度よりも若干高い摂氏50度程度で良い。ひたし時間は、冷凍好適ひたしのひたし時間Tdの最小値15分よりも短い、例えば10分程度で良い。
【0175】
また、冷凍劣後ご飯の沸騰継続工程およびむらし工程は、鍋5を加圧して実行される。鍋5の内圧Piは、沸騰継続工程の開始から炊上工程の開始まで、つまり安定#2工程の間、およびむらし工程の初期に加圧される。このとき、炊飯制御部77は、調圧弁47を周期的に開閉して鍋5の内圧Piを1.1気圧と1.05気圧との間で繰り返し変化させる。換言すると、冷凍好適炊き上げにおける加圧状態の合計時間は、冷凍劣後ご飯を炊き上げるときの加圧状態の合計時間よりも短い。加圧下における沸騰継続工程およびむらし工程は、冷凍好適炊き上げに比べて短時間で良い。加圧下における沸騰継続工程は、例えば5分で済み、むらし工程は7分で済む。
【0176】
なお、上述の炊飯動作で炊き上げられる冷凍劣後ご飯の含水率は、冷凍前を100パーセントとすると、冷凍後、再加熱した後に2.49パーセントも低下する。
【0177】
一方、冷凍適合ご飯の含水率は、冷凍前を100パーセントとすると、冷凍後、再加熱した後に1.53パーセントしか低下しない。この冷凍前後における含水率の変化量の違いが、再加熱後の冷凍適合ご飯の食感を良好にしていると推測される。
【0178】
図8、および図9は、本発明の実施形態に係る加熱調理器の炊飯メニュー選択画面の一例を示す図である。
【0179】
図8は、本実施形態に係る炊飯器1の表示部55が表示する、被炊飯物に含まれる米の種類を選択可能な第一画面SS1の一例である。
【0180】
図8に示すように、第一画面SS1は、複数の表示要素91を表示する。
【0181】
複数の表示要素91は、第一画面SS1の上側の縁の近傍に配置されて「お米を選択してください」と表示される表示要素91aと、第一画面SS1の下側の縁の左端近傍に配置されて「戻る」と表示される表示要素91bと、第一画面SS1の下側の縁の右端近傍に配置されて「切」と表示される表示要素91cと、を含んでいる。
【0182】
また、複数の表示要素91は、第一画面SS1の上側の表示要素91aと第一画面SS1の下側の表示要素91b、91cとに挟まれる中央領域に行列状に表示される複数の表示要素91dから表示要素91iを含んでいる。複数の表示要素91dから表示要素91iは、被炊飯物に含まれる米の種類の選択肢を表示する。例えば6つの表示要素91dから表示要素91iは、2行3列の行列状に配置されている。それぞれの表示要素91dから表示要素91iは、選択肢の内容を連想させるテキストおよび背景画像を組み合わせて表示する。
【0183】
さらに、複数の表示要素91は、現在選択されている選択肢、例えば表示要素91dを判別できるよう表示要素91dを縁取るように囲む表示要素91jを含んでいる。
【0184】
表示要素91aを除くそれぞれの表示要素91は、操作部56のそれぞれのキー要素に対応付けられている。
【0185】
それぞれの表示要素91dから表示要素91iに含まれるテキスト、つまり「白米(銘柄おまかせ)」、「白米(銘柄選択)」、「無洗米(銘柄おまかせ)」、「玄米」、「雑穀米」、および「麦ご飯」は、お米の種類の選択肢の例である。白米(銘柄選択)を選択すると、その後、あきたこまち、コシヒカリ、ゆめぴりかに代表される種々の銘柄を選択する画面(図示省略)へ遷移する。銘柄を選択することで、その銘柄に好適な炊き方が選択される。「白米(銘柄おまかせ)」が選択され、「無洗米(銘柄おまかせ)」が選択され、または「白米(銘柄選択)」が選択され、さらに銘柄が選択された後、図9に示す、炊き方を選択可能な画面に遷移する。
【0186】
図9は、本実施形態に係る炊飯器1の表示部55が表示する、被炊飯物の炊き方を選択可能な第二画面SS2の一例である。
【0187】
図9に示すように、第二画面SS2は、複数の表示要素93を表示する。
【0188】
複数の表示要素93は、第二画面SS2の上側の縁の近傍に配置されて「炊き方を選択してください」と表示される表示要素93aと、第二画面SS2の下側の縁の左端近傍に配置されて「戻る」と表示される表示要素93bと、第二画面SS2の下側の縁の右端近傍に配置されて「取消」と表示される表示要素93cと、第二画面SS2の下側の縁の中央部に配置されて右向き三角形状に表示される表示要素93dと、を含んでいる。表示要素93dは、炊飯動作の開始を意味している。
【0189】
また、複数の表示要素93は、第二画面SS2の上側の表示要素93aと第二画面SS2の下側の表示要素93bから表示要素93dとに挟まれる中央領域に行列状に表示される複数の表示要素93eから表示要素93jを含んでいる。複数の表示要素93eから表示要素93jは、被炊飯物の炊き方の選択肢を表示する。例えば6つの表示要素93eから表示要素93jは、2行3列の行列状に配置されている。それぞれの表示要素93eから表示要素93jは、選択肢の内容を連想させるテキストおよび背景画像を組み合わせて表示する。
【0190】
さらに、複数の表示要素93は、現在選択されている選択肢、例えば表示要素93iを判別できるよう表示要素93iを縁取るように囲む表示要素93kを含んでいる。
【0191】
表示要素93aを除くそれぞれの表示要素93は、操作部56のそれぞれのキー要素に対応付けられている。
【0192】
それぞれの表示要素93eから表示要素93jに含まれるテキスト、つまり「かまど名人」、「ねらい炊き」、「甘み炊き」、「そくうま」、「冷凍ごはん」、および「お弁当」は、炊き方の選択肢の例である。
【0193】
「かまど名人」は、食感を「かため」、「しゃっきり」、「おすすめ」、「もちもち」、「やわらか」のように細かに設定可能な炊き方である。
【0194】
「ねらい炊き」は、食感の選択肢を「かまど名人」よりも絞り込みつつ、ユーザーの所望の時間にご飯を炊き上げる炊き方である。
【0195】
「甘み炊き」は、食感の選択肢を「かまど名人」よりも絞り込みつつ、炊き上がるご飯の甘みを引き出す炊き方である。
【0196】
「そくうま」は、他の炊き方に比べて短時間でご飯を炊き上げる、いわゆる早炊きである。
【0197】
「お弁当」は、他の炊き方に比べて冷めても固くなりにくいご飯の炊き方である。
【0198】
そして、「冷凍ごはん」は、本実施形態に係る炊飯方法、つまり冷凍好適ご飯を炊き上げることを目途に選択される炊き方である。
【0199】
それら図8および図9の選択肢の組み合わせによって炊飯コースが選択され、決定され、実行される。
【0200】
つまり、炊飯器1は、ご飯を冷凍した後、再加熱することを目途に選択される「冷凍ごはん」を含む、米および水をご飯に炊き上げるための複数の炊飯コースを有している。炊飯器1は、所定のコースとしての「冷凍ごはん」が実行された場合に冷凍好適ひたしを実行し、冷凍好適炊き上げを実行する。炊飯器1は、図8に示す「白米(銘柄おまかせ)」が選択され、「無洗米(銘柄おまかせ)」が選択され、または「白米(銘柄選択)」が選択され、さらに銘柄が選択された後、図9に示す「冷凍ごはん」が選択され、表示要素93dである右向き三角形状が選択されると、図7に示す冷凍好適ご飯の炊飯動作、すなわち本実施形態に係る炊飯方法を実行する。
【0201】
以上のように構成される本実施形態に係る炊飯器1は、鍋5の内圧Piを減圧状態にして米が糊化する温度より低く、米の還元糖量の増加に寄与する酵素が活性化しやすい温度以上の温度帯で所定のひたし時間以上、米をひたした後に、ご飯を炊き上げる。また、本実施形態に係る炊飯方法は、米および水を鍋5に収容し、鍋5の内圧を大気圧より低く減圧し、米が糊化する温度より低く、米の還元糖量の増加に寄与する酵素が活性化しやすい温度以上の温度帯で所定のひたし時間以上、米をひたし、ひたしの後に、ご飯を炊き上げる。つまり、炊飯器1および炊飯方法は、冷凍好適ひたしで米をひたした後に、ご飯を炊き上げる。そのため、炊飯器1および炊飯方法は、予め炊き上げ、冷凍保存することで老化を防ぎ、しかも所望のタイミングで再加熱して美味しく食べることができるご飯(冷凍ご飯)を提供できる。そのような炊飯器1および炊飯方法は、日々の時間に追われる現代のライフスタイルに極めて合致し、極めて高い利便と、豊かな食事を利用者に提供できる。
【0202】
また、本実施形態に係る炊飯器1は、摂氏43度以上、摂氏53度以下の温度帯Trで米をひたす。そのため、炊飯器1は、米が糊化することを防ぎ、米に十分に吸水させて、冷凍好適ご飯の含水率を高め、冷凍前後の食感の差異を低減できる。
【0203】
さらに、本実施形態に係る炊飯器1は、所定のひたし時間として15分以上、米をひたす。そのため、炊飯器1は、米に十分に吸水させて、冷凍好適ご飯の含水率を高め、冷凍前後の食感の差異を低減できる。
【0204】
また、本実施形態に係る炊飯器1は、所定のひたし時間より前に鍋5の内圧Piを一旦減圧し、大気圧に回復させた後、再度、減圧状態になるよう鍋5の内圧Piを減圧状態に減圧可能な減圧ポンプ48を備えている。そのため、炊飯器1は、米に十分に吸水させて、冷凍好適ご飯の含水率を高め、冷凍前後の食感の差異を低減できる。
【0205】
さらに、本実施形態に係る炊飯器1および炊飯方法は、鍋5内の米および水を摂氏90度以上の温度で20分以上加熱してご飯を炊き上げる。そのため、炊飯器1および炊飯方法は、冷凍好適ひたしで十分に吸水した米を、十分に糊化させて冷凍前後の食感の差異を低減できる。
【0206】
また、本実施形態に係る炊飯器1は、冷凍好適ひたしを実施した後にご飯を炊き上げるときの加圧状態の合計時間を、冷凍好適ひたしを実施せずにご飯を炊き上げるときの加圧状態の合計時間よりも短く終わらせる。そのため、炊飯器1および炊飯方法は、冷凍前後の食感の差異、特にもちもち感の減退を防ぐことができる。
【0207】
さらに、本実施形態に係る炊飯器1は、冷凍好適ご飯を炊き上げることを目途に選択される「冷凍ごはん」コースを含む、米および水をご飯に炊き上げるための複数の炊飯コースを有し、「冷凍ごはん」コースが選択された場合に冷凍好適ひたしを実行する。そのため、炊飯器1は、極めて容易な操作で冷凍好適ご飯を利用者に提供し得る。
【0208】
したがって、本発明に係る炊飯器1によれば、炊き上げた後に冷凍し、再加熱した際のご飯の食味が良好になるようご飯、つまり冷凍好適ご飯を炊き上げることができる。
【0209】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0210】
1…炊飯器、2…鍋収容部、3…本体、5…鍋、5a…主材、5b…発熱体、6…蓋体、7…ヒンジ機構、8…電力線、11…加熱コイル、11u…第一コイル、11d…第二コイル、12…フランジ部、15…底板、16…上枠、17…内枠、18…外枠、19…制御部収容室、21…通気口、22…加熱制御回路板、23…放熱器、25…冷却ファン、26…鍋温度センサー、31…ヒンジシャフト、32…ヒンジバネ、35…外蓋、36…外蓋カバー、37…放熱板、38…蓋ヒーター、39…内蓋ユニット、41…内蓋、42…蓋パッキン、43…パッキンベース、45…蒸気口、46…蒸気排出通路、47…調圧弁、47a…弁体、47b…ソレノイド、48…減圧ポンプ、49…減圧孔、50…蓋開ボタン、52…操作パネル、53…入出力制御回路板、55…表示部、56…操作部、61…コイル駆動回路、61u…第一駆動回路、61d…第二駆動回路、63…蓋ヒーター駆動回路、65…蓋温度センサー、66…蓋開閉センサー、67…圧力センサー、68…報知部、72…入力信号生成部、73…表示制御部、75…条件設定部、75…条件設定部、77…炊飯制御部、78…保温制御部、91、91aから91j…表示要素、93、93aから93k…表示要素。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9