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特開2024-148063予約通信制御装置、予約通信制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148063
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】予約通信制御装置、予約通信制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/50 20230101AFI20241009BHJP
   H04W 72/12 20230101ALI20241009BHJP
【FI】
H04W72/50
H04W72/12
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060960
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】藤本 八雲
(72)【発明者】
【氏名】海老沢 憲一
(72)【発明者】
【氏名】小林 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 弘一
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD11
5K067DD20
5K067EE02
5K067EE16
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】BDTの実行によるKPIの劣化、BDTに係るSLA違反等を回避するように、BDTの予約を適切に取り扱うことができる技術を実現する。
【解決手段】コアネットワークに接続される端末装置に係るBDTの予約要求であって、データ容量および実行時間帯が指定された予約要求を受信する受信部と、第1のセル情報によって特定されるセルであって、予約要求のBDTの実行時間帯に端末装置が接続されるセルの実行時間帯のスループットである第1のスループットを予測して、セルによって予約要求のBDTを実行時間帯に完了できるか否かを判定する第1の判定部と、セルで予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を、第1のスループットから減じた第2のスループットを予測して、セルの第2のスループットが閾値以上か否かを判定する第2の判定部と、第1の判定部の判定結果および第2の判定部の判定結果に基づいて、予約要求の受諾または拒否を決定する予約可否決定部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックグラウンドデータ伝送(BDT)の予約、および、前記予約の実行を制御する予約通信制御装置であって、
コアネットワークに接続される端末装置に係るBDTの予約要求であって、データ容量および実行時間帯が指定された予約要求を受信する受信部と、
第1のセル情報によって特定されるセルであって、前記予約要求のBDTの実行時間帯に前記端末装置が接続されるセルの前記実行時間帯のスループットである第1のスループットを予測して、前記セルによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できるか否かを判定する第1の判定部と、
前記セルで前記予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を、前記第1のスループットから減じた第2のスループットを予測して、前記セルの前記第2のスループットが閾値以上か否かを判定する第2の判定部と、
前記第1の判定部の判定結果および前記第2の判定部の判定結果に基づいて、前記予約要求の受諾または拒否を決定する予約可否決定部とを備える
予約通信制御装置。
【請求項2】
前記第1の判定部は、
前記コアネットワークによって記録された過去の通信に係る情報に基づいて予測される前記セルの前記実行時間帯におけるスループットに基づいて前記第1のスループットを予測し、
前記第2の判定部は、
前記実行時間帯に実行されるBDTの数に対応して算出される低下量を、前記第1のスループットから減じることで前記第2のスループットを予測する
請求項1に記載の予約通信制御装置。
【請求項3】
前記受信部は、前記端末装置の位置情報をさらに受信し、
前記位置情報に対応する位置と、前記位置において接続可能なセルとを対応付ける位置セルテーブルと、
前記位置セルテーブルを参照して前記第1のセル情報を出力するセル特定部をさらに備え、
前記セル特定部は、前記位置情報に対応する位置において接続可能な1または複数のセルを、前記実行時間帯に前記端末装置が接続されるセルとして特定して前記第1のセル情報を出力する
請求項1に記載の予約通信制御装置。
【請求項4】
前記予約可否決定部は、
前記第1の判定部により、前記第1のセル情報に含まれるセルの全てによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できると判定され、かつ、第2の判定部により前記セルの全てにおいて前記第2のスループットが閾値以上であると判定された場合、前記予約要求の受諾を決定する
請求項3に記載の予約通信制御装置。
【請求項5】
前記予約可否決定部は、
前記第1の判定部により、前記第1のセル情報に含まれるセルのうち、1以上のセルによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できると判定され、かつ、第2の判定部により前記1以上のセルにおいて前記第2のスループットが閾値以上であると判定された場合、前記1以上のセルを指定して前記予約要求の受諾を決定する
請求項3に記載の予約通信制御装置。
【請求項6】
前記受信部は、前記端末装置から前記第1のセル情報をさらに受信する
請求項1に記載の予約通信制御装置。
【請求項7】
前記予約要求のBDTの実行を開始するときに前記端末装置が接続されているセルを特定する第2のセル情報を、コアネットワークから取得する実行開始状態確認部と、
前記第2のセル情報によって特定されるセルが、前記第1の判定部によって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できると判定され、かつ、前記第2の判定部によって、前記第2のスループットが閾値以上であると判定されたセルに含まれない場合、前記予約要求のBDTの実行を中止する実行制御部とをさらに備える
請求項1に記載の予約通信制御装置。
【請求項8】
バックグラウンドデータ伝送(BDT)の予約、および、前記予約の実行を制御する予約通信制御方法であって、
コアネットワークに接続される端末装置に係るBDTの予約要求であって、データ容量および実行時間帯が指定された予約要求を受信し、
第1のセル情報によって特定されるセルであって、前記予約要求のBDTの実行時間帯に前記端末装置が接続されるセルの前記実行時間帯のスループットである第1のスループットを予測して、前記セルによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できるか否かを判定する第1の判定を実行し、
前記セルで前記予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を、前記第1のスループットから減じた第2のスループットを予測して、前記セルの前記第2のスループットが閾値以上か否かを判定する第2の判定を実行し、
前記第1の判定の判定結果および前記第2の判定の判定結果に基づいて、前記予約要求の受諾または拒否を決定するステップを含む
予約通信制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、
バックグラウンドデータ伝送(BDT)の予約、および、前記予約の実行を制御する予約通信制御装置であって、
コアネットワークに接続される端末装置に係るBDTの予約要求であって、データ容量および実行時間帯が指定された予約要求を受信する受信部と、
第1のセル情報によって特定されるセルであって、前記予約要求のBDTの実行時間帯に前記端末装置が接続されるセルの前記実行時間帯のスループットである第1のスループットを予測して、前記セルによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できるか否かを判定する第1の判定部と、
前記セルで前記予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を、前記第1のスループットから減じた第2のスループットを予測して、前記セルの前記第2のスループットが閾値以上か否かを判定する第2の判定部と、
前記第1の判定部の判定結果および前記第2の判定部の判定結果に基づいて、前記予約要求の受諾または拒否を決定する予約可否決定部とを備える予約通信制御装置として機能させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予約通信制御装置、予約通信制御方法およびプログラムに関し、BDTの実行によるKPIの劣化や、BDTのSLA違反を回避するように、BDTの予約を適切に取り扱うことができる予約通信制御装置、予約通信制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
5Gネットワークにおいて、主要性能指標(KPI:Key Performance Indicator)が利用されており、スループット、コールドロップレート、ミュートコールレートなどの性能指標が計算される。
【0003】
KPIに関する情報は、通信事業者のネットワーク内でのイベント等から算出され、例えば、通信事業者は、自社のKPIに基づいてネットワーク性能改善計画を実行する。基地局はトラフィックのKPIを記録し、データサーバに送信する。
【0004】
また、5Gネットワークでは、ネットワークリソースの最適化のために、比較的時間上の制約が少ない大量のデータ(例えば、ソフトウェアアップデート用のデータ)を低優先度で伝送するバックグラウンドデータ伝送(BDT)が提供される。このような伝送は、例えば、ネットワークの負荷が少ない時間にスケジュールされる。5Gコアネットワークのネットワーク機能部であるNEF(Network Exposure Function)/PCF(Policy Control Function)には通信の予約を行う機能がある。
【0005】
例えば、特許文献1によれば、アプリケーション機能(AF)とコアネットワーク(CN)との間でネゴシエーションによりBDTポリシを更新する方式が開示されている。この技術では、PCFにより、悪化したネットワーク性能による影響が判定されてBDTポリシ情報が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2022-537714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、BDTの予約を適切に取り扱わないと、KPIの悪化を招くことがある。また、新たなBDTの予約によって既存のBDTの予約のSLA(Service Level Agreement)を満たせなく場合がある。
【0008】
特に、BDTが実行される時間帯に端末装置が接続される基地局のセルのスループットなどが、KPIや予約のSLAに大きく影響し得る。さらに、BDTの予約時に端末装置が接続されると予測された基地局のセルと、実際にBDTが実行されるときに端末装置が接続されている基地局のセルとが異なる場合に意図せぬ結果となる。
【0009】
本発明の一態様は、BDTの実行によるKPIの劣化、BDTに係るSLA違反等を回避するように、BDTの予約を適切に取り扱うことができる技術を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る予約通信制御装置は、バックグラウンドデータ伝送(BDT)の予約、および、前記予約の実行を制御する予約通信制御装置であって、コアネットワークに接続される端末装置に係るBDTの予約要求であって、データ容量および実行時間帯が指定された予約要求を受信する受信部と、第1のセル情報によって特定されるセルであって、前記予約要求のBDTの実行時間帯に前記端末装置が接続されるセルの前記実行時間帯のスループットである第1のスループットを予測して、前記セルによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できるか否かを判定する第1の判定部と、前記セルで前記予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を、前記第1のスループットから減じた第2のスループットを予測して、前記セルの前記第2のスループットが閾値以上か否かを判定する第2の判定部と、前記第1の判定部の判定結果および前記第2の判定部の判定結果に基づいて、前記予約要求の受諾または拒否を決定する予約可否決定部とを備える。
【0011】
本発明の一態様に係る予約通信制御方法は、バックグラウンドデータ伝送(BDT)の予約、および、前記予約の実行を制御する予約通信制御方法であって、コアネットワークに接続される端末装置に係るBDTの予約要求であって、データ容量および実行時間帯が指定された予約要求を受信し、第1のセル情報によって特定されるセルであって、前記予約要求のBDTの実行時間帯に前記端末装置が接続されるセルの前記実行時間帯のスループットである第1のスループットを予測して、前記セルによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できるか否かを判定し、前記セルで前記予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を、前記第1のスループットから減じた第2のスループットを予測して、前記セルの前記第2のスループットが閾値以上か否かを判定し、前記第1の判定部の判定結果および前記第2の判定部の判定結果に基づいて、前記予約要求の受諾または拒否を決定するステップを含む。
【0012】
本発明の各態様は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータに上記方法の各ステップを実行させるプログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、BDTの実行によるKPIの劣化や、BDTのSLA違反を回避するように、BDTの予約を適切に取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】5G通信システムの構成例を説明する図である。
図2】第1の実施形態に係る予約通信制御装置の機能的構成例を示すブロック図である。
図3】位置セルテーブルの例を示す図である。
図4】予測スループットの算出方式の一例を説明する図である。
図5】伝送スケジュールの例を説明する図である。
図6】実行されるBDTの数に対応する低下量を考慮したセルのスループットの予測を説明する図である。
図7】予約要求受付処理の例を説明するフローチャートである。
図8】伝送スケジュール生成処理の例を説明するフローチャートである。
図9】影響算出処理の例を説明するフローチャートである。
図10】予約可否決定処理の例を説明するフローチャートである。
図11】予約可否決定処理の別の例を説明するフローチャートである。
図12】予約実行制御処理の例を説明するフローチャートである。
図13】第2の実施形態に係る予約通信制御装置の機能的構成例を示すブロック図である。
図14】各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0016】
(5G通信システムの構成)
図1は、本実施形態に係る5G通信システム10の構成例を説明する図である。
【0017】
図1に示されるように、5G通信システム10のコアネットワーク50は、複数の基地局と接続される。実際には、数万の基地局がコアネットワーク50に接続されるが、図1の例では、基地局41-1および基地局41-2が示されている。なお、基地局41-1と基地局41-2とを、適宜、まとめて基地局41と称することにする。
【0018】
基地局41は、図中の楕円により示されるセルであって、所定の無線通信領域であるセル内に位置する端末装置であるUE(User Equipment)21と通信する。なお、実際には、1つの基地局41が、同時に数百台のUE21と通信することができる。UE21は、例えば、ユーザが所有するスマートフォンであってもよいし、車両に取り付けられる電子機器などであってもよい。
【0019】
図1の例では、基地局41-1に対応するセル42-1と、基地局41-2に対応するセル42-2が示されている。この例では、セル42-1の無線通信領域と、セル42-2の無線通信領域の一部が重複しており、UE21はこの重複する部分に位置している。従って、UE21は、セル42-1の基地局41-1に接続されることもできるし、セル42-2の基地局41-2に接続されることもできる。なお、セル42-1とセル42-2とを、適宜、まとめてセル42と称することにする。
【0020】
コアネットワーク50には、複数のネットワーク機能部(NF)が設けられている。図1の例では、コアネットワーク50のNFとして、ユーザプレーン機能部(UPF)、ネットワーク公開機能部(NEF)、ポリシ制御機能部(PCF)が示されている。コアネットワーク50は、この他にもAMF(Access and Mobility Management Function)、SMF(Session Management Function)などのNFを有するが、ここでは、それらの説明は省略する。
【0021】
UPFは、主にユーザデータの伝送に係る制御を実行する。例えば、UPFを介してUE21とアプリケーションサーバ60との間の通信、または、UE21と予約通信制御装置80との間のユーザデータの通信が行われる。PCFおよびNEFは、主に制御信号の伝送に係るNFである。PCFおよびNEFは、例えば、アプリケーションサーバ60、または、UE21などによる通信の実行の予約を行う機能を有している。
【0022】
各NFは、それぞれに対応するサーバによって構成されてもよいし、例えば、クラウドなど複数のサーバにより構成されるようにしてもよい。さらに、各NFは、仮想マシン(VM)やコンテナなどのようにソフトウェアとして実装されることで構成されるようにしてもよい。
【0023】
また、図1には、コアネットワーク50を介してUE21と通信するアプリケーションサーバ60が示されている。アプリケーションサーバ60は、例えば、UE21にデータを配信する機能を有するサーバとされ、一例として、UE21のソフトウェアのアップデートのためのデータを配信する。
【0024】
5G通信システム10では、ネットワークリソースの最適化のために、比較的時間上の制約が少ない大量のデータ(例えば、ソフトウェアアップデート用のデータ)を低優先度で伝送するバックグラウンドデータ伝送(BDT)が提供される。例えば、アプリケーションサーバ60からUE21へのデータの伝送は、BDTとして実行される。BDTは、例えば、アプリケーションサーバ60、UE21などから、実行時間帯とデータ容量を指定して予約される。
【0025】
なお、上述のネットワークリソースとしては、例えば、UE21と基地局41との間の無線リソース、基地局41と5Gネットワークのネットワーク機能部であるUPFとの間の通信路のリソース、UPFとアプリケーションサーバ60との間の通信路のリソース、などが挙げられる。
【0026】
また、図1には、予約通信制御装置80が示されている。予約通信制御装置80は、例えば、アプリケーションサーバ60とUE21との間で実行されるBDTの予約に係る制御を行う装置である。予約通信制御装置80は、例えば、コアネットワーク50と通信可能な、1または複数のサーバによって構成される。あるいは、予約通信制御装置80が、仮想マシンやコンテナなどのようにソフトウェアとして実装されることで構成されるようにしてもよい。
【0027】
<第1の実施形態>
(予約通信制御装置の構成例)
図2は、予約通信制御装置80の機能的構成例を示すブロック図である。この例では、予約通信制御装置80の機能ブロックとして、予約要求受信部101、セル照会部102、伝送スケジュール生成部103、影響算出部104、および、予約可否決定部105が示されている。予約通信制御装置80は、さらに、予約実行開始状態確認部106、実行制御部107、位置セルテーブル121、セル・時間帯別スループットテーブル122、および、予約テーブル123を含んで構成されている。
【0028】
(予約要求受信部)
予約要求受信部101は、コアネットワークに接続される端末装置に係るBDTの予約要求であって、データ容量および実行時間帯が指定された予約要求を受信する。予約要求受信部101は、例えば、アプリケーションサーバ60などからBDTの予約要求を受信する。BDTの予約要求には、例えば、伝送元であるアプリケーションサーバ60の識別情報(アドレスなど)および伝送先であるUE21の識別情報、伝送されるデータの容量、並びに、伝送を行う時間帯を指定する情報が含まれる。
【0029】
また、予約要求受信部101は、UE21からUE21の位置情報を受信する。なお、位置情報は、例えば、緯度、経度によって特定されたUE21の位置を表す情報であってよい。
【0030】
位置情報は、必ずしもUE21の現在位置でなくてもよい。位置情報は、例えば、BDTの実行時間帯にUE21が位置している場所であってよい。例えば、UE21が車両に取り付けられる電子機器などである場合、位置情報は、車両が駐車される駐車場の場所を特定する情報であってよい。
【0031】
(セル照会部)
セル照会部102は、予約要求受信部101を介して位置情報を取得し、位置セルテーブル121を参照して、当該位置情報によって特定される位置のUE21が接続される基地局41のセル42を特定する。
【0032】
位置セルテーブル121は、位置情報と、当該位置情報の位置において接続可能なセルとを対応付ける情報が記述されたテーブルである。図3は、位置セルテーブル121の例を示す図である。
【0033】
図3の例では、位置情報として、「geomesh」が示されており、「geomesh」として記述された文字列により特定される緯度「lat」と、経度「lon」とが示されている。例えば、「geomesh」が「xn76fgre」である場合、緯度(lat)は35.6581であり、経度(lon)は139.7016である。予約要求受信部101を介して取得されるUE21の位置情報は、例えば、「geomesh」であってよい。
【0034】
また、図3の例では、位置情報に対応するセルの情報として「cellList」が示されている。「cellList」には、当該位置のUE21が接続され得る基地局41のセル42の一覧、すなわち、セルの候補のリストが示されている。例えば、「cellList」の「cell1」には第1番目の候補となるセルの識別情報が記述され、「rsrp1」には「cell1」のセルの電界強度が記述されている。同様に、「cell2」、「cell3」、・・・には第2番目、第3番目、・・・の候補となるセルの識別情報が記述され、「rsrp2」、「rsrp3」、・・・には「cell2」、「cell3」、・・・のセルの電界強度が記述される。
【0035】
セル照会部102は、「geomesh」として記述されたUE21の位置情報によって位置セルテーブル121を検索することにより、「cellList」に記述されたセルを特定する。
【0036】
例えば、UE21の位置情報が「xn76fgre」である場合、識別情報が「Cell-000」であるセルが「cellList」に記述されている。この場合、UE21は、識別情報が「Cell-000」であるセルに接続される。セル照会部102は、「cellList」に記述されている1つのセルを、BDTの実行時間帯においてUE21が接続されるセルを示す第1のセル情報として、伝送スケジュール生成部103に供給する。
【0037】
また、例えば、UE21の位置情報が「xn76fgrf」である場合、識別情報が「Cell-000」であるセルと識別情報が「Cell-004」であるセルとが「cellList」に記述されている。この場合、UE21は、識別情報が「Cell-000」であるセルと識別情報が「Cell-004」であるセルのいずれか一方に接続される。セル照会部102は、「cellList」に記述されている2つのセルを特定する情報を、BDTの実行時間帯においてUE21が接続されるセルを示す第1のセル情報として、伝送スケジュール生成部103に供給する。
【0038】
セル照会部102は、このように、位置セルテーブル121を参照して第1のセル情報を出力する。この際、セル照会部102は、位置情報に対応する位置において接続可能な1または複数のセルを、実行時間帯にUE21が接続されるセルとして特定して第1のセル情報を出力する。
【0039】
(伝送スケジュール生成部)
伝送スケジュール生成部103は、予約要求に含まれるデータの容量を示す情報および伝送を行う実行時間帯を示す情報に基づいて、当該容量のデータの伝送を完了させるのに必要となる時間を表す伝送スケジュールを生成する。伝送スケジュール生成部103は、セル・時間帯別スループットテーブル122を参照して伝送スケジュールを生成する。
【0040】
セル・時間帯別スループットテーブル122には、各セルの各時間帯における予測スループットを示す情報が記憶されている。例えば、識別情報が「Cell-000」であるセルについて、20:00~21:00までの時間帯の予測スループット、21:00~22:00までの時間帯の予測スループット、・・・を示す情報が記憶されている。同様に、識別情報が「Cell-001」であるセル、識別情報が「Cell-002」であるセル、・・・についても各時間帯の予測スループットが記憶されている。なお、同じ時間帯でも、例えば、曜日別、日付別に予測スループットが示されるようにしてもよい。
【0041】
予測スループットの算出方式は任意である。例えば、コアネットワーク50内のネットワーク機能部等によって記録された各セル別のスループットを示す情報を、過去の一定期間分だけ収集して時間帯別の平均値を求めることによって、予測スループットが算出されてもよい。このようにして算出された予測スループットを、適宜、第1のスループットと称することにする。すなわち、コアネットワーク50によって記録された過去の通信に係る情報に基づいて予測されるセルの実行時間帯におけるスループットに基づいて第1のスループットが予測される。
【0042】
図4は、第1のスループットの算出方式の一例を説明する図である。同図は、縦軸がスループットとされ、横軸が時間とされ、1つのセルのスループットの時間の経過に伴う変化が曲線によって示されている。
【0043】
図4の曲線201aは、ネットワーク機能部によって記録された当該セルのスループットを示す情報を、過去の1ヶ月分収集して時間帯別の平均値を求めることによって算出されたスループットを示している。図4の曲線201bは、将来、当該セルのスループットが曲線201aと同様に変化すると仮定して予測されたスループットを示している。なお、ここでは、第1のスループットの算出方式の一例として平均値を求める例を説明したが、算出方式はこれに限られるものではない。例えば、当該セルの過去のスループットを示す情報に対して、機械学習や統計処理などを適用して第1のスループットが算出されるようにしてもよい。
【0044】
伝送スケジュール生成部103は、予約要求に含まれる伝送を行う時間帯(実行時間帯と称することにする)を示す情報に基づいて、伝送を開始する時刻(伝送開始時刻と称することにする)を特定する。また、伝送スケジュール生成部103は、セル・時間帯別スループットテーブル122を参照して、セル照会部102から供給される第1のセル情報によって特定されるセルの伝送開始時刻以後の時間帯の予測スループットを取得する。そして、伝送スケジュール生成部103は、伝送開始時刻に予約要求に含まれる容量のデータの伝送を開始した場合、伝送が完了する時刻(伝送完了時刻と称することにする)を特定する。
【0045】
図5は、伝送スケジュールの例を説明する図である。同図には、一例として、識別情報が「Cell-000」のセルの伝送スケジュールが示されており、横軸が時間とされ、図中の縦線により時間帯が区切られている。この例では、20:00~21:00までの時間帯、21:00~22:00までの時間帯、・・・、07:00~08:00までの時間帯が示されている。
【0046】
なお、図5に示す例では、説明を簡単にするために、1時間ごとの時間帯が示されているが、実際にはもっと短い時間帯(例えば、10分ごと)に区切られるようにしてもよい。
【0047】
図5の中の横長の矩形の枠によって伝送スケジュールが示されている。この例では、伝送スケジュールTS1~伝送スケジュールTS4が示されている。
【0048】
各伝送スケジュールの枠線は予約要求に含まれる実行時間帯に対応して記されている。例えば、伝送スケジュールTS1に係るBDTの実行時間帯は20:00から02:00までの時間帯とされ、伝送スケジュールTS4に係るBDTの実行時間帯は23:00から06:00までの時間帯とされる。
【0049】
各伝送スケジュールにおいて伝送開始時刻と伝送完了時刻とに対応して枠内の所定の部分がハッチングされて示されている。例えば、伝送スケジュールTS1に係るBDTは、データの容量が63GBなので、伝送開始時刻が20:00である場合、伝送完了時刻は01:00となる。このため、伝送スケジュールTS1に係るBDTは、予約要求で指定された実行時間帯に伝送を完了させることが可能である。
【0050】
また、伝送スケジュールTS2に係るBDTは、データの容量が50GBなので、伝送開始時刻が22:00である場合、伝送完了時刻はほぼ01:00となる。このため、伝送スケジュールTS2に係るBDTもやはり、予約要求で指定された実行時間帯に伝送を完了させることが可能である。
【0051】
なお、伝送スケジュール生成部103は、受信された予約要求だけでなく、後述する予約テーブル123に記憶されたBDTの予約情報に基づいて伝送スケジュールを生成する。例えば、図5の伝送スケジュールTS1~伝送スケジュールTS3は、予約テーブル123に記憶されたBDTの予約情報に基づいて生成され、伝送スケジュールTS4は、直近に受信された予約要求に基づいて生成される。伝送スケジュール生成部103の判定結果、および、セルごとに生成された伝送スケジュールは、影響算出部104に供給される。
【0052】
伝送スケジュール生成部103は、直近に受信された予約要求に対応するBDTが予約要求で指定された実行時間帯に伝送を完了させることができるか否かを判定する。
【0053】
BDTが予約要求で指定された実行時間帯に伝送を完了させることができると判定された場合、伝送スケジュール生成部103は、実行時間帯の伝送完了の可否を示す第1フラグをONに設定し、例えば図5に示されるような、伝送スケジュールを生成する。
【0054】
一方、BDTが予約要求で指定された実行時間帯に伝送を完了させることができないと判定された場合、伝送スケジュール生成部103は、第1フラグをOFFに設定する。この場合、図5に示されるような、伝送スケジュールは生成されない。
【0055】
なお、UE21が接続されるセルの電界強度が小さい場合、当該セルによる伝送のスループットが低くなることがある。このため、例えば、図3の「cellList」に記述されたセルの電界強度が所定の閾値より小さい場合、伝送スケジュール生成部103が、実行時間帯に伝送を完了させることができるか否かを判定する際に用いるスループットが補正されるようにしてもよい。
【0056】
例えば、セル・時間帯別スループットテーブル122を参照して得られた第1のスループットに、電界強度に応じた1未満の数値が乗じられて値が補正されるようにしてもよい。そして、補正されたスループットで予約要求のデータの容量を伝送する時間が算出され、実行時間帯に伝送を完了させることができるか否かが判定されるようにしてもよい。
【0057】
このように、伝送スケジュール生成部103は、第1のセル情報によって特定されるセルであって、予約要求のBDTの実行時間帯に端末装置が接続されるセルの実行時間帯のスループットである第1のスループットを予測して、当該セルによって予約要求のBDTを実行時間帯に完了できるか否かを判定する。
【0058】
そして、伝送スケジュール生成部103は、このような処理を、第1のセル情報によって特定されるセルごとに行う。
【0059】
(影響算出部)
影響算出部104は、伝送スケジュール生成部103から供給される伝送スケジュールを参照して、当該セルで前記予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を算出する。スループットの低下量は、例えば、当該時間帯に実行されるBDTの数に対応して定まる。
【0060】
そして、影響算出部104は、第1のスループットから、当該時間帯に実行されるBDTの数に対応して算出される低下量を減じることで第2のスループットを予測する。
【0061】
図6は、当該時間帯に実行されるBDTの数に対応する低下量を考慮したセルのスループットの予測を説明する図である。同図は、横軸が時間とされ、縦軸がスループットとされ、1つのセルにおける、時間の経過に伴うスループットの変化が曲線によって示されている。
【0062】
曲線201は、当該セルの第1のスループットを示している。各時間帯における第1のスループットの値から当該時間帯に実行されるBDTの数に対応する低下量を減じて得られた予測スループットが、曲線202で示されている。スループットの低下量は、実行されるBDTの数をパラメータとする関数として表現され、実際には複雑な演算により算出される。ここでは、説明を簡単にするため、例えば、1つのBDTが実行されることにより、セルのスループットが1Mbpsずつ低下することとして説明する。
【0063】
例えば、図5の縦の点線によって示される時刻(23:45)には、4つのBDTが実行されており、スループットは約4Mbps低下する。また、セル・時間帯別スループットテーブル122を参照して得られたこの時間帯(23:00~24:00)のスループットは30Mbpsである。このため、影響算出部104は、23:00~24:00の時間帯におけるスループットの低下量を4Mbpsとして算出し、当該セルの23:00~24:00の時間帯における予測スループット(第2のスループット)を26Mbps(=30Mbps-4Mbps)として算出する。
【0064】
影響算出部104は、予約要求に基づいて作成された伝送スケジュールの伝送開始時刻から伝送完了時刻までの間の各時刻(例えば、1分ごと)において第2のスループットを算出し、算出された第2のスループットを予め設定された閾値と比較する。ここでは、閾値は、例えば、当該セルによって実現されるべきスループットの下限の値である下限スループットとされ、例えば、KPIに基づいて設定される。
【0065】
例えば、「Cell-000」のセルの下限スループットが8Mbpsであった場合、第2のスループット(26Mbps)は、下限スループット(8Mbps)以上である。影響算出部104は、このように第2のスループットを算出して閾値以上であるか否かを判定する。
【0066】
第2のスループットが閾値以上である場合、影響算出部104は、第2のスループットの下限値要件の適否を示す第2フラグをONに設定する。一方、第2のスループットが閾値未満である場合、影響算出部104は、第2フラグをOFFに設定する。
【0067】
このように、影響算出部104は、当該セルで予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を、第1のスループットから減じた第2のスループットを予測して、当該セルの第2のスループットが閾値以上か否かを判定する。
【0068】
そして、影響算出部104は、このような判定を、セル照会部102から供給される第1のセル情報によって特定されるセルごとに行う。
【0069】
影響算出部104の判定結果(第2フラグのON/OFF)は、伝送スケジュール生成部103による判定結果(第1フラグのON/OFF)とともに予約可否決定部105に供給される。
【0070】
なお、伝送スケジュールが生成されなかったセルについて、影響算出部104は、第2のスループットを算出と閾値との比較とを行わない。伝送スケジュールが生成されなかったセルでは、直近に受信された予約要求に対応するBDTが予約要求で指定された実行時間帯に伝送を完了させることができないので、このセルで当該BDTを実行することはできないからである。
【0071】
(予約可否決定部)
予約可否決定部105は、影響算出部104による判定結果および伝送スケジュール生成部103による判定結果に基づいて予約要求受信部101によって受信された予約要求を受諾するか拒否するかを決定する。
【0072】
例えば、セル照会部102から供給される情報によって特定されるセルの全てにおいて、伝送スケジュールのBDTが予約要求で指定された実行時間帯に伝送を完了させることができる場合、それらのセルの全てにおいて第2のスループットが閾値以上であるとき、予約可否決定部105は、予約要求を受諾する。
【0073】
このように、予約可否決定部105は、伝送スケジュール生成部103により、第1のセル情報に含まれるセルの全てによって予約要求のBDTを実行時間帯に完了できると判定され、かつ、影響算出部104によりセルの全てにおいて第2のスループットが閾値以上であると判定された場合、予約要求の受諾を決定する。
【0074】
予約要求を受諾する場合、予約可否決定部105は、受諾した予約要求に含まれる情報を予約テーブル123に書き込む。予約テーブル123は、セルごとに受諾された予約要求の情報を記録したテーブルである。この場合、予約可否決定部105は、セル照会部102から供給される第1のセル情報によって特定されるセルの識別情報と、受諾した予約要求に含まれる情報とを含む予約情報を予約テーブル123に書き込む。
【0075】
一方、セル照会部102から供給される情報によって特定されるセルのいずれかにおいて、伝送スケジュールのBDTが予約要求で指定された実行時間帯に伝送を完了させることができない場合、または、それらのセルのいずれかにおいて第2のスループットが閾値未満である場合、予約可否決定部105は、予約要求を拒否する。
【0076】
予約可否決定部105は、予約要求の受諾または拒否の決定を、UE21およびアプリケーションサーバ60に通知する。予約要求が受諾された場合、実行時間帯のUE21の位置が予約要求とともに受信された位置情報に対応する位置であることを条件に、要約要求で指定された容量のデータを実行時間帯に伝送することがSLA(Service Level Agreement)となる。
【0077】
なお、上述した例では、候補となるセルの全てにおいて、指定された実行時間帯に伝送を完了させることができ、かつ、それらのセルの全てにおいて第2のスループットが閾値以上であれば、予約要求が受諾されると説明した。しかし、例えば、候補となるセルのいずれかにおいて、指定された実行時間帯に伝送を完了させることができかつ、第2のスループットが閾値以上であれば、予約要求が受諾されるようにしてもよい。
【0078】
すなわち、候補となるセルのうち、要件を満たすセルについてのみ予約要求が受諾されるようにしてもよい。指定された実行時間帯に伝送を完了させることができ、かつ、第2のスループットが閾値以上であれば、そのセルは要件を満たすことになる。
【0079】
このように、予約可否決定部105は、伝送スケジュール生成部103により、第1のセル情報に含まれるセルのうち、1以上のセルによって予約要求のBDTを実行時間帯に完了できると判定され、かつ、影響算出部104により当該1以上のセルにおいて第2のスループットが閾値以上であると判定された場合、当該1以上のセルを指定して予約要求の受諾を決定するようにしてもよい。
【0080】
この場合、要件を満たすセルの識別情報と、受諾した予約要求に含まれる情報とを含む予約情報が予約テーブル123に書き込まれる。そして、予約可否決定部105は、予約要求の受諾の決定を、UE21およびアプリケーションサーバ60に通知する際に、指定されたセル(すなわち、要件を満たすセル)に係る情報も通知する。例えば、予約要求の受諾の決定の通知の際に、要件を満たすセルに対応するRFSP index(RAT/Frequency Selection Priority index)/SPID (Subscriber Profile ID for RAT/Frequency Priority)などが通知されるようにしてもよい。
【0081】
(予約実行開始状態確認部)
予約実行開始状態確認部106は、予約可否決定部105によって受諾が決定された予約要求に対応するBDTの実行が開始される時のUE21の状態を確認する。より具体的には、予約実行開始状態確認部106は、BDTの実行を開始するときにUE21が接続されているセルを特定する第2のセル情報を、コアネットワーク50から取得する。
【0082】
予約実行開始状態確認部106は、予約テーブル123を参照して各BDTの伝送開始時刻を取得する。予約実行開始状態確認部106は、予約されているBDTの伝送開始時刻が近づいた時(例えば、伝送開始時刻の1分前)に、当該BDTに係る予約要求において指定されたUE21が接続されているセルを特定する。
【0083】
UE21が接続されているセルは、例えば、コアネットワーク50のネットワーク機能部から在圏情報を取得することによって特定することができる。図13の例の場合、コアネットワーク50のNEFから在圏情報が取得される。
【0084】
予約実行開始状態確認部106は、特定されたセルの識別情報を含む第2のセル情報を、実行制御部107に供給する。
【0085】
(実行制御部)
実行制御部107は、予約実行開始状態確認部106から供給される情報を参照して予約されたBDTの実行を制御する。
【0086】
実行制御部107は、予約テーブル123を参照して各BDTの伝送開始時刻を取得する。実行制御部107は、各BDTの伝送を開始する時に予約実行開始状態確認部106から供給される情報に基づいて、UE21が接続されているセルを特定する。
【0087】
そして、実行制御部107は、個々のBDTについて、UE21が接続されているセルが、予約情報に記述されているセルとは異なるか否かを判定する。
【0088】
UE21が接続されているセルが、予約情報に記述されているセルとは異なると判定された場合、実行制御部107は、当該BDTの実行を中止する。すなわち、予約可否決定部が受諾を決定したBDTの伝送が、受諾の決定に係るセルとは異なるセルで実行されることになる場合は、BDTの実行が中止される。異なるセルで実行された場合、予約要求の実行時間帯に伝送が完了しない可能性があり、また、実行時間帯に伝送が完了するとしてもセルのスループットの下限値要件を満たせなくなる可能性があるからである。
【0089】
このように、実行制御部107は、第2のセル情報によって特定されるセルが伝送スケジュール生成部103によって予約要求のBDTを実行時間帯に完了できると判定され、かつ、影響算出部104によって、第2のスループットが閾値以上であると判定されたセルに含まれない場合、予約要求のBDTの実行を中止する。
【0090】
一方、UE21が接続されているセルが、予約情報に記述されているセルのいずれかに該当すると判定された場合、実行制御部107は、当該BDTの伝送を実行する。
【0091】
(予約要求受付処理の流れ)
次に、予約通信制御装置による予約要求受付処理の流れについて説明する。図7は、予約要求受付処理の例を説明するフローチャートである。
【0092】
ステップS20において、予約要求受信部101は、BDTの予約に係る顧客の同意があるか否かを判定する。例えば、BDTの予約の条件や制限などに事前に同意しているか否かが判定される。
【0093】
なお、ステップS20の処理は実行されないようにしてもよい。
【0094】
ステップS20においてBDTの予約に係る顧客の同意があると判定された場合、ステップS21の処理が実行され、同意がないと判定された場合、予約要求受付処理は終了する。
【0095】
ステップS21において、予約要求受信部101は、予約要求と位置情報とを受信する。
【0096】
このとき、例えば、アプリケーションサーバ60などからBDTの予約要求を受信する。BDTの予約要求には、例えば、伝送元であるアプリケーションサーバ60の識別情報(アドレスなど)および伝送先であるUE21の識別情報、伝送されるデータの容量、並びに、伝送を行う実行時間帯を指定する情報が含まれる。
【0097】
また、予約要求受信部101は、UE21からUE21の位置情報を受信する。なお、位置情報は、例えば、緯度、経度によって特定されたUE21の位置を表す情報であってよい。
【0098】
ステップS22において、セル照会部102は、予約要求受信部101を介してUE21の位置情報を取得し、位置セルテーブル121を参照して、当該位置情報によって特定される位置のUE21が接続される基地局41のセル42を特定する。
【0099】
このとき、例えば、図3を参照して説明したように、セル照会部102は、「geomesh」として記述されたUE21の位置情報によって位置セルテーブル121を検索することにより、「cellList」に記述されたセルの候補を特定する。これにより、第1のセル情報が出力される。
【0100】
ステップS23において、ステップS22で特定されたセルのそれぞれに付される番号として利用される変数iの値が1に設定される。
【0101】
ステップS24において、伝送スケジュール生成部103は、i番目のセルを対象とする伝送スケジュール生成処理を実行する。これにより、予約要求に対応するBDTが予約要求で指定された実行時間帯に伝送を完了させることができるか否かが判定される。また、実行時間帯に伝送を完了させることができると判定された場合は、例えば、図5を参照して説明した伝送スケジュールが生成される。
【0102】
ステップS25において、影響算出部104は、i番目のセルを対象とする影響算出処理を実行する。これにより、ステップS21で受信された予約要求のBDTを実行した場合、i番目のセルがスループットの下限値要件を満たすか否かが判定される。
【0103】
ステップS26において、予約可否決定部105は、i番目のセルの予約適否を記憶する。予約適否は、例えば、ステップS24とステップS25の処理の結果得られる第1フラグと第2フラグとによって示されるようにしてもよい。
【0104】
ステップS27において、変数iの値が上限(Max)に達したか否かが判定される。
【0105】
例えば、ステップS22で特定されたセルの数が2であった場合、2が上限となる。ステップS27において、変数iの値がまだ上限(Max)に達していないと判定された場合、ステップS29において変数iの値が1だけインクリメントされる。その後、ステップS24~ステップS27の処理が繰り返し実行される。
【0106】
ステップS27において、変数iの値が上限に達したと判定された場合、ステップS28の処理が実行される。
【0107】
ステップS28において、予約可否決定部105は、予約可否決定処理を実行する。これにより、ステップS21で受信された予約要求を受諾するか拒否するかが決定され、その結果がUE21とアプリケーションサーバ60とに通知される。
【0108】
このようにして、予約要求受付処理が実行される。
【0109】
(伝送スケジュール生成処理の流れ)
次に、図7のステップS24の伝送スケジュール生成処理の詳細な流れについて説明する。図8は、伝送スケジュール生成処理の例を説明するフローチャートである。
【0110】
ステップS41において、伝送スケジュール生成部103は、第1のスループットを特定する。
【0111】
このとき、伝送スケジュール生成部103は、例えば、予約要求に含まれる実行時間帯を示す情報に基づいて、伝送開始時刻を特定する。また、伝送スケジュール生成部103は、セル・時間帯別スループットテーブル122を参照して、セル照会部102から供給される情報によって特定されるセルの伝送開始時刻以後の時間帯の予測スループットである第1のスループットを特定する。
【0112】
ステップS42において、伝送スケジュール生成部103は、予約要求の実行時間帯にBDTの伝送が完了するか否かを判定する。
【0113】
このとき、伝送スケジュール生成部103は、伝送開始時刻に予約要求に含まれる容量のデータの伝送を開始した場合の伝送完了時刻を特定し、BDTの伝送が予約要求の実行時間帯に完了するか否かを判定する。
【0114】
ステップS42において、実行時間帯に完了すると判定された場合、ステップS43の処理が実行される。
【0115】
ステップS43において、伝送スケジュール生成部103は、伝送スケジュールを生成する。このとき、例えば、i番目のセルについて、図5に示されるような伝送スケジュールが生成される。
【0116】
ステップS43において、伝送スケジュール生成部103は、実行時間帯の伝送完了の可否を示す第1フラグをONに設定する。
【0117】
一方、ステップS42において、実行時間帯に完了しないと判定された場合、ステップS45の処理が実行される。ステップS45において、伝送スケジュール生成部103は、第1フラグをOFFに設定する。
【0118】
このようにして、伝送スケジュール生成処理が実行される。
【0119】
(影響算出処理の流れ)
次に、図7のステップS25の影響算出処理の詳細な流れについて説明する。図9は、影響算出処理の例を説明するフローチャートである。
【0120】
ステップS61において、影響算出部104は、第1フラグがONに設定されているか否かを判定する。ステップS61において、第1フラグがONに設定されていると判定された場合、ステップS62の処理が実行される。
【0121】
ステップS62において、影響算出部104は、i番目のセルについて第2のスループットを算出する。
【0122】
このとき、影響算出部104は、例えば、図8のステップS43で生成された伝送スケジュールを参照して、i番目のセルで予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を算出する。そして、影響算出部104は、セル・時間帯別スループットテーブル122に記憶されている第1のスループットから、当該時間帯に実行されるBDTの数に対応して算出される低下量を減じることによってi番目のセルの当該時間帯の第2のスループットを算出する。
【0123】
なお、影響算出部104は、予約要求に基づいて作成された伝送スケジュールの伝送開始時刻から伝送完了時刻までの間の各時刻(例えば、1分ごと)において第2のスループットを算出する。
【0124】
ステップS63において、影響算出部104は、ステップS62で算出された第2のスループットが閾値以上であるか否かを判定する。ステップS63において、閾値以上であると判定された場合、ステップS64の処理が実行される。
【0125】
ステップS64において、影響算出部104は、第2のスループットの下限値要件の適否を示す第2フラグをONに設定する。
【0126】
一方、ステップS63において、閾値未満であると判定された場合、ステップS66の処理が実行され、影響算出部104は、第2フラグをOFFに設定する。
【0127】
また、ステップS61において、第1フラグがオンではないと判定された場合、ステップS61~ステップS65の処理はスキップされる。
【0128】
このようにして影響算出処理が実行される。
【0129】
(予約可否決定処理の流れ)
次に、図7のステップS26の予約可否決定処理の詳細な流れについて説明する。図10は、予約可否決定処理の例を説明するフローチャートである。
【0130】
ステップS81において、予約可否決定部105は、全てのセルで第2フラグがONに設定されているか否かを判定する。ステップS81において、全てのセルで第2フラグがONに設定されていると判定された場合、ステップS82の処理が実行される。
【0131】
ステップS82において、顧客が予約内容に同意するか否かが判定される。ここでは、例えば、図7のステップS21で受信した予約要求の内容を再度顧客に送信して同意を示す応答があったか否かが判定される。なお、ステップS82の処理は実行されないようにしてもよい。
【0132】
ステップS82において、予約内容に同意すると判定された場合、ステップS83の処理が実行される。一方、ステップS82において、予約内容に同意しないと判定された場合、予約可否決定処理は終了する。
【0133】
ステップS83において、予約可否決定部105は、ステップS21で受信された予約要求を許諾する。
【0134】
ステップS84において、予約可否決定部105は、受諾した予約要求に含まれる情報を予約テーブル123に書き込む。このとき、予約可否決定部105は、セル照会部102から供給される情報によって特定されるセルの識別情報と、受諾した予約要求に含まれる情報とを含む予約情報を予約テーブル123に書き込む。
【0135】
一方、ステップS81において、いずれかのセルで第2フラグがONに設定されていないと判定された場合、ステップS85の処理が実行される。ステップS85において、予約可否決定部105は、ステップS21で受信された予約要求を拒否する。
【0136】
ステップS86において、予約可否決定部105は、予約要求の受諾または拒否の決定を、UE21およびアプリケーションサーバ60に通知する。
【0137】
このようにして予約可否決定処理が実行される。図10の例の場合、例えば、ステップS22で特定されたセルの全てにおいて、伝送スケジュールのBDTが予約要求で指定された実行時間帯に伝送を完了させることができ、かつ、それらのセルの全てにおいて第2のスループットが閾値以上である場合、予約可否決定部105は、予約要求を受諾する。
【0138】
(予約可否決定処理の別の例)
一方、ステップS22で特定されたセルのいずれかにおいて、指定された実行時間帯に伝送を完了させることができかつ、第2のスループットが閾値以上であれば、予約要求が受諾されるようにしてもよい。この場合、図7のステップS26の予約可否決定処理の詳細な流れは、図11に示されるようになる。図11は、予約可否決定処理の別の例を説明するフローチャートである。
【0139】
ステップS101において、予約可否決定部105は、いずれかのセルで第2フラグがONに設定されているか否かを判定する。ステップS101において、いずれかのセルで第2フラグがONに設定されていると判定された場合、ステップS102の処理が実行される。
【0140】
ステップS102において、顧客が予約内容に同意するか否かが判定される。ここでは、例えば、図7のステップS21で受信した予約要求の内容を再度顧客に送信して同意を示す応答があったか否かが判定される。なお、ステップS102の処理は実行されないようにしてもよい。
【0141】
ステップS102において、予約内容に同意すると判定された場合、ステップS103の処理が実行される。一方、ステップS102において、予約内容に同意しないと判定された場合、予約可否決定処理は終了する。
【0142】
ステップS103において、予約可否決定部105は、ステップS21で受信された予約要求を、セルを指定して許諾する。
【0143】
ステップS104において、予約可否決定部105は、受諾した予約要求に含まれる情報を予約テーブル123に書き込む。このとき、予約可否決定部105は、要件を満たすセルの識別情報と、受諾した予約要求に含まれる情報とを含む予約情報を予約テーブル123に書き込む。
【0144】
一方、ステップS101において、いずれのセルでも第2フラグがONに設定されていないと判定された場合、ステップS105の処理が実行される。ステップS105において、予約可否決定部105は、ステップS21で受信された予約要求を拒否する。
【0145】
ステップS106において、予約可否決定部105は、予約要求の受諾または拒否の決定を、UE21およびアプリケーションサーバ60に通知する。予約要求の受諾の決定が通知される場合、指定されたセルに係る情報も通知する。例えば、予約要求の受諾の決定の通知の際に、指定されたセルに対応するRFSP indexなどが通知されるようにしてもよい。
【0146】
予約可否決定処理は、このように実行されるようにしてもよい。
【0147】
次に、予約通信制御装置による予約実行制御処理の流れについて説明する。図12は、予約実行制御処理の例を説明するフローチャートである。
【0148】
ステップS121において、予約実行開始状態確認部106は、所定の時間内(例えば、1分以内)に伝送が開始される予約があるか否かを判定し、予約があると判定されるまで待機する。このとき、例えば、予約実行開始状態確認部106は、予約テーブル123を参照して各BDTの伝送開始時刻を取得する。
【0149】
ステップS121において、伝送が開始される予約があると判定された場合、ステップS122の処理が実行される。
【0150】
ステップS122において、予約実行開始状態確認部106は、所定の時間内に伝送開始されるBDTに係る予約要求において指定されたUE21が接続されているセルを特定する。このとき、予約実行開始状態確認部106は、例えば、コアネットワーク50のNEFから在圏情報を取得することで、UE21が現在接続されているセルを特定し、特定されたセルの識別情報を含む第2のセル情報を生成する。
【0151】
ステップS123において、実行制御部107は、実行制御部107は、所定の時間内に伝送開始されるBDTについて、第2のセル情報によって特定されるセルが、予約情報に記述されているセルとは異なるか否かを判定する。第2のセル情報によって特定されるセルが、予約情報に記述されているセルとは異なると判定された場合、ステップS124の処理が実行される。
【0152】
なお、図11のステップS103において、セルを指定して予約要求が許諾された場合、ステップS123では、第2のセル情報によって特定されるセルが、予約情報において指定されたセルと異なるか否かが判定される。すなわち、ステップS123では、第2のセル情報によって特定されるセルが伝送スケジュール生成部103によって予約要求のBDTを実行時間帯に完了できると判定され、かつ、影響算出部104によって、第2のスループットが閾値以上であると判定されたセルに含まれるか否かが判定される。
【0153】
ステップS124において、実行制御部107は、当該BDTの伝送を中止する。
【0154】
一方、ステップS123において、UE21が接続されているセルが、予約情報に記述されている(または指定されている)セルのいずれかに該当すると判定された場合、ステップS125の処理が実行される。
【0155】
ステップS125において、実行制御部107は、伝送開始時刻になったと判定されるまで待機する。ステップS125において、伝送開始時刻になったと判定された場合、実行制御部107は、ステップS126において、当該BDTを実行する。
【0156】
このようにして、予約実行制御処理が実行される。
【0157】
(第1の実施形態の効果)
このように、本実施形態によれば、予約要求に係るBDTの伝送が実行時間帯に完了できることを確認して予約要求の受諾が決定される。従って、BDTに係るSLA違反が生じることを回避することができる。
【0158】
また、本実施形態によれば、予約要求に係るBDTを実行しても、当該BDTの伝送に係るセルがスループットの下限値要件を満たすことを確認して予約要求の受諾が決定される。従って、BDTの実行によるKPIの劣化を回避することができる。
【0159】
<第2の実施形態>
第1の実施形態においては、セル照会部102が、UE21から送信された位置情報に基づいて位置セルテーブル121を検索することで、UE21が接続されるセルを特定する例について説明した。しかしながら、例えば、セル照会部102と位置セルテーブル121とを省略して予約通信制御装置80を構成することも可能である。
【0160】
(予約通信制御装置の別の構成例)
図13は、予約通信制御装置80の別の機能的構成例を示すブロック図である。同図では、第1の実施形態における各機能ブロックと対応する機能ブロックには同一の符号が付されている。
【0161】
図13の例では、図2の場合とは異なり、予約通信制御装置80に、セル照会部102および位置セルテーブル121が設けられていない。また、この例では、UE21は、位置情報とともに、または、位置情報に代えて、自身が接続されるセルの識別情報を含む第1のセル情報を、予約要求受信部101に送信するものとする。
【0162】
図13のその他の構成については、図2を参照して上述した場合と同様なので、詳細な説明を省略する。
【0163】
この場合、伝送スケジュール生成部103は、UE21から送信される第1のセル情報を参照して、伝送スケジュールを生成する。
【0164】
すなわち、伝送スケジュール生成部103は、セル・時間帯別スループットテーブル122を参照して、UE21から送信された第1のセル情報に対応するセルの伝送開始時刻以後の時間帯の予測スループットを取得する。また、伝送スケジュール生成部103は、伝送開始時刻に予約要求に含まれる容量のデータの伝送を開始した場合の伝送完了時刻を特定する。
【0165】
このようにすることで、予約通信制御装置80の構成を簡素化することが可能になる。特に、位置セルテーブル121を生成するための、電界強度の調査等が不要となり、例えば、予約通信制御装置80のコストを抑制することができる。
【0166】
<その他の実施形態>
上述した実施形態においては、予約要求の実行時間帯の開始時刻と、伝送スケジュールの伝送開始時刻とが一致している場合の例について説明したが、実行時間帯の開始時刻と伝送開始時刻とが必ずしも一致しなくてもよい。
【0167】
例えば、伝送スケジュール生成部103は、実行時間帯の開始時刻から所定の時間後(例えば、1分後)を伝送開始時刻として特定するようにしてもよい。
【0168】
あるいは、伝送スケジュール生成部103が、直近に受信された予約要求に基づいて伝送スケジュールを生成する際に、伝送完了時刻が実行時間帯の終了時刻より充分に早い場合、伝送開始時刻を遅らせるようにしてもよい。伝送スケジュール生成部103はこのようにして、例えば、同時間帯に実行されるBDTの数をできるだけ少なくするように調整してもよい。
【0169】
<ソフトウェアによる実現例>
上述した予約通信制御装置80は、コンピュータを機能させるためのプログラムであって、予約通信制御装置80としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。この場合、予約通信制御装置80は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。このようなコンピュータの一例を図14に示す。
【0170】
コンピュータ500は、少なくとも1つのプロセッサ501と、少なくとも1つのメモリ502と、を備えている。メモリ502には、コンピュータ500を予約通信制御装置80として動作させるためのプログラム520が記録されている。コンピュータ500において、プロセッサ501は、このプログラム520をメモリ502から読み取って実行することにより、予約通信制御装置80の各機能が実現される。
【0171】
プロセッサ501としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0172】
メモリ502としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0173】
なお、コンピュータ500は、プログラム520を実行時に展開したり、各種データを一時的に記憶したりするためのRAM(Random Access Memory)を更に備えていてもよい。また、コンピュータ500は、他の装置との間でデータを送受信するための通信インターフェースを更に備えていてもよい。また、コンピュータ500は、キーボードやマウス、ディスプレイやプリンタなどの入出力機器を接続するための入出力インターフェースを更に備えていてもよい。
【0174】
また、コンピュータ500を予約通信制御装置80として動作させるためのプログラム520は、コンピュータ500が読み取り可能な、一時的でない有形の記録媒体530に記録することができる。このような記録媒体530としては、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、又はプログラマブルな論理回路などを用いることができる。コンピュータ500は、このような記録媒体530を介してプログラム520を取得することができる。
【0175】
また、コンピュータ500を予約通信制御装置80として動作させるためのプログラム520は、伝送媒体を介して伝送することができる。このような伝送媒体としては、例えば、通信ネットワーク、又は放送波などを用いることができる。コンピュータ500は、このような伝送媒体を介してプログラム520を取得することもできる。
【0176】
また、予約通信制御装置80の各機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0177】
以上説明してきた本発明の各態様によれば、上述した作用効果を奏することにより、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と具術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0178】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0179】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る予約通信制御装置は、バックグラウンドデータ伝送(BDT)の予約、および、前記予約の実行を制御する予約通信制御装置であって、コアネットワークに接続される端末装置に係るBDTの予約要求であって、データ容量および実行時間帯が指定された予約要求を受信する受信部と、第1のセル情報によって特定されるセルであって、前記予約要求のBDTの実行時間帯に前記端末装置が接続されるセルの前記実行時間帯のスループットである第1のスループットを予測して、前記セルによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できるか否かを判定する第1の判定部と、前記セルで前記予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を、前記第1のスループットから減じた第2のスループットを予測して、前記セルの前記第2のスループットが閾値以上か否かを判定する第2の判定部と、前記第1の判定部の判定結果および前記第2の判定部の判定結果に基づいて、前記予約要求の受諾または拒否を決定する予約可否決定部とを備える。
【0180】
本発明の態様2に係る予約通信制御装置は、上記の態様1において、前記第1の判定部は、前記コアネットワークによって記録された過去の通信に係る情報に基づいて予測される前記セルの前記実行時間帯におけるスループットに基づいて前記第1のスループットを予測し、前記第2の判定部は、前記実行時間帯に実行されるBDTの数に対応して算出される低下量を、前記第1のスループットから減じることで前記第2のスループットを予測する。
【0181】
本発明の態様3に係る予約通信制御装置は、上記の態様1または2において、前記受信部は、前記端末装置の位置情報をさらに受信し、前記位置情報に対応する位置と、前記位置において接続可能なセルとを対応付ける位置セルテーブルと、前記位置セルテーブルを参照して前記第1のセル情報を出力するセル特定部をさらに備え、前記セル特定部は、前記位置情報に対応する位置において接続可能な1または複数のセルを、前記実行時間帯に前記端末装置が接続されるセルとして特定して前記第1のセル情報を出力する。
【0182】
本発明の態様4に係る予約通信制御装置は、上記の態様3において、前記予約可否決定部は、前記第1の判定部により、前記第1のセル情報に含まれるセルの全てによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できると判定され、かつ、第2の判定部により前記セルの全てにおいて前記第2のスループットが閾値以上であると判定された場合、前記予約要求の受諾を決定する。
【0183】
本発明の態様5に係る予約通信制御装置は、上記の態様3において、前記予約可否決定部は、前記第1の判定部により、前記第1のセル情報に含まれるセルのうち、1以上のセルによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できると判定され、かつ、第2の判定部により前記1以上のセルにおいて前記第2のスループットが閾値以上であると判定された場合、前記1以上のセルを指定して前記予約要求の受諾を決定する。
【0184】
本発明の態様6に係る予約通信制御装置は、上記の態様1または2において、前記受信部は、前記端末装置から前記第1のセル情報をさらに受信する。
【0185】
本発明の態様7に係る予約通信制御装置は、上記の態様1乃至6のいずれかにおいて、前記予約要求のBDTの実行を開始するときに前記端末装置が接続されているセルを特定する第2のセル情報を、コアネットワークから取得する実行開始状態確認部と、前記第2のセル情報によって特定されるセルが、前記第1の判定部によって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できると判定され、かつ、前記第2の判定部によって、前記第2のスループットが閾値以上であると判定されたセルに含まれない場合、前記予約要求のBDTの実行を中止する実行制御部とをさらに備える。
【0186】
本発明の態様8に係る予約通信制御方法は、バックグラウンドデータ伝送(BDT)の予約、および、前記予約の実行を制御する予約通信制御方法であって、コアネットワークに接続される端末装置に係るBDTの予約要求であって、データ容量および実行時間帯が指定された予約要求を受信し、第1のセル情報によって特定されるセルであって、前記予約要求のBDTの実行時間帯に前記端末装置が接続されるセルの前記実行時間帯のスループットである第1のスループットを予測して、前記セルによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できるか否かを判定する第1の判定を実行し、前記セルで前記予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を、前記第1のスループットから減じた第2のスループットを予測して、前記セルの前記第2のスループットが閾値以上か否かを判定する第2の判定を実行し、前記第1の判定の判定結果および前記第2の判定の判定結果に基づいて、前記予約要求の受諾または拒否を決定するステップを含む。
【0187】
本発明の態様9に係るプログラムは、コンピュータを、バックグラウンドデータ伝送(BDT)の予約、および、前記予約の実行を制御する予約通信制御装置であって、コアネットワークに接続される端末装置に係るBDTの予約要求であって、データ容量および実行時間帯が指定された予約要求を受信する受信部と、第1のセル情報によって特定されるセルであって、前記予約要求のBDTの実行時間帯に前記端末装置が接続されるセルの前記実行時間帯のスループットである第1のスループットを予測して、前記セルによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できるか否かを判定する第1の判定部と、前記セルで前記予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を、前記第1のスループットから減じた第2のスループットを予測して、前記セルの前記第2のスループットが閾値以上か否かを判定する第2の判定部と、前記第1の判定部の判定結果および前記第2の判定部の判定結果に基づいて、前記予約要求の受諾または拒否を決定する予約可否決定部とを備える予約通信制御装置として機能させる。
【符号の説明】
【0188】
21 UE
41 基地局
42 セル
50 コアネットワーク
60 アプリケーションサーバ
80 予約通信制御装置
101 予約要求受信部
102 セル照会部
103 伝送スケジュール生成部
104 影響算出部
105 予約可否決定部
106 予約実行開始状態確認部
107 実行制御部
121 位置セルテーブル
122 セル・時間帯別スループットテーブル
123 予約テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-09-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックグラウンドデータ伝送(BDT)の予約、および、前記予約の実行を制御する予約通信制御装置であって、
コアネットワークに接続される端末装置に係るBDTの予約要求であって、データ容量および実行時間帯が指定された予約要求を受信する受信部と、
第1のセル情報によって特定されるセルであって、前記予約要求のBDTの実行時間帯に前記端末装置が接続されるセルの前記実行時間帯のスループットである第1のスループットを予測して、前記セルによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できるか否かを判定する第1の判定部と、
前記セルで前記予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を、前記第1のスループットから減じた第2のスループットを予測して、前記セルの前記第2のスループットが閾値以上か否かを判定する第2の判定部と、
前記第1の判定部の判定結果および前記第2の判定部の判定結果に基づいて、前記予約要求の受諾または拒否を決定する予約可否決定部とを備える
予約通信制御装置。
【請求項2】
前記第1の判定部は、
前記コアネットワークによって記録された過去の通信に係る情報に基づいて予測される前記セルの前記実行時間帯におけるスループットに基づいて前記第1のスループットを予測し、
前記第2の判定部は、
前記実行時間帯に実行されるBDTの数に対応して算出される低下量を、前記第1のスループットから減じることで前記第2のスループットを予測する
請求項1に記載の予約通信制御装置。
【請求項3】
前記受信部は、前記端末装置の位置情報をさらに受信し、
前記位置情報に対応する位置と、前記位置において接続可能なセルとを対応付ける位置セルテーブルと、
前記位置セルテーブルを参照して前記第1のセル情報を出力するセル特定部をさらに備え、
前記セル特定部は、前記位置情報に対応する位置において接続可能な1または複数のセルを、前記実行時間帯に前記端末装置が接続されるセルとして特定して前記第1のセル情報を出力する
請求項1に記載の予約通信制御装置。
【請求項4】
前記予約可否決定部は、
前記第1の判定部により、前記第1のセル情報に含まれるセルの全てによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できると判定され、かつ、第2の判定部により前記セルの全てにおいて前記第2のスループットが閾値以上であると判定された場合、前記予約要求の受諾を決定する
請求項3に記載の予約通信制御装置。
【請求項5】
前記予約可否決定部は、
前記第1の判定部により、前記第1のセル情報に含まれるセルのうち、1以上のセルによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できると判定され、かつ、第2の判定部により前記1以上のセルにおいて前記第2のスループットが閾値以上であると判定された場合、前記1以上のセルを指定して前記予約要求の受諾を決定する
請求項3に記載の予約通信制御装置。
【請求項6】
前記受信部は、前記端末装置から前記第1のセル情報をさらに受信する
請求項1に記載の予約通信制御装置。
【請求項7】
前記予約要求のBDTの実行を開始するときに前記端末装置が接続されているセルを特定する第2のセル情報を、コアネットワークから取得する実行開始状態確認部と、
前記第2のセル情報によって特定されるセルが、前記第1の判定部によって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できると判定され、かつ、前記第2の判定部によって、前記第2のスループットが閾値以上であると判定されたセルに含まれない場合、前記予約要求のBDTの実行を中止する実行制御部とをさらに備える
請求項1に記載の予約通信制御装置。
【請求項8】
受信部と、第1の判定部と、第2の判定部と、予約可否決定部とを備え、バックグラウンドデータ伝送(BDT)の予約、および、前記予約の実行を制御する予約通信制御装置の予約通信制御方法であって、
受信部が、コアネットワークに接続される端末装置に係るBDTの予約要求であって、データ容量および実行時間帯が指定された予約要求を受信し、
第1の判定部が、第1のセル情報によって特定されるセルであって、前記予約要求のBDTの実行時間帯に前記端末装置が接続されるセルの前記実行時間帯のスループットである第1のスループットを予測して、前記セルによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できるか否かを判定する第1の判定を実行し、
第2の判定部が、前記セルで前記予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を、前記第1のスループットから減じた第2のスループットを予測して、前記セルの前記第2のスループットが閾値以上か否かを判定する第2の判定を実行し、
予約可否決定部が、前記第1の判定の判定結果および前記第2の判定の判定結果に基づいて、前記予約要求の受諾または拒否を決定す
予約通信制御方法。
【請求項9】
コンピュータを、
バックグラウンドデータ伝送(BDT)の予約、および、前記予約の実行を制御する予約通信制御装置であって、
コアネットワークに接続される端末装置に係るBDTの予約要求であって、データ容量および実行時間帯が指定された予約要求を受信する受信部と、
第1のセル情報によって特定されるセルであって、前記予約要求のBDTの実行時間帯に前記端末装置が接続されるセルの前記実行時間帯のスループットである第1のスループットを予測して、前記セルによって前記予約要求のBDTを前記実行時間帯に完了できるか否かを判定する第1の判定部と、
前記セルで前記予約要求のBDTを実行することによるスループットの低下量を、前記第1のスループットから減じた第2のスループットを予測して、前記セルの前記第2のスループットが閾値以上か否かを判定する第2の判定部と、
前記第1の判定部の判定結果および前記第2の判定部の判定結果に基づいて、前記予約要求の受諾または拒否を決定する予約可否決定部とを備える予約通信制御装置として機能させる
プログラム。