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特開2024-148064共鳴器および共鳴器を利用した振動発電装置
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  • 特開-共鳴器および共鳴器を利用した振動発電装置 図1
  • 特開-共鳴器および共鳴器を利用した振動発電装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148064
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】共鳴器および共鳴器を利用した振動発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/18 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
H02N2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060963
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 巧真
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 久幸
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681BB08
5H681DD23
5H681DD34
5H681DD44
5H681DD85
5H681DD88
(57)【要約】
【課題】共鳴器と、共鳴器で増幅した振動をより効率的に振動発電素子に到達させ利用する振動発電装置を提供する。
【解決手段】空洞および前記空洞に連通する開口部とを有する筐体と、前記開口部に設けられ、前記筐体と共に閉鎖空間を画定する振動部と、を有し、前記振動部は音圧により前記閉鎖空間内の空気を振動させることで共鳴することを特徴とする、共鳴器を提供する。また、当該共鳴器の振動部に振動発電素子を設けた振動発電装置も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞および前記空洞に連通する開口部とを有する筐体と、
前記開口部に設けられ、前記筐体と共に閉鎖空間を画定する振動部と、を有し、
前記振動部は音圧により前記閉鎖空間内の空気を振動させることで共鳴することを特徴とする、共鳴器。
【請求項2】
前記振動部は前記筐体の他の部分よりも剛性が低い、請求項1に記載の共鳴器。
【請求項3】
前記振動部は、前記筐体の他の部分よりも厚さが薄い、請求項2に記載の共鳴器。
【請求項4】
前記振動部は前記筐体の他の部分と異なる材料から形成された振動板が接合されている、請求項2に記載の共鳴器。
【請求項5】
前記接合は、接着、溶着またはねじ留めにより行われる請求項4に記載の共鳴器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の共鳴器と、
前記振動部に設けられた振動発電素子と、
を備える振動発電装置。
【請求項7】
前記振動発電素子の可動子の振動方向が、前記振動部の振動方向と実質的に一致する、請求項6に記載の振動発電装置。
【請求項8】
前記振動発電素子が、圧電型振動発電素子からなる、請求項6に記載の振動発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共鳴器を用いた音振動発電に関する。
【背景技術】
【0002】
振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電素子は、センサ等の電子機器に用いられている。
【0003】
振動発電素子は、振動の大きさが大きいほど、発電量が大きくなる。そのため、音に対応する振動発電素子では、音の振動を大きくすることで、発電量を増やすことができる。
【0004】
音の振動を大きくする方法の一つに、ヘルムホルツ共鳴器が知られている。ヘルムホルツ共鳴器は、空洞と、当該空洞に連通し、一つの側面に開口部を有するネック部とを備えた箱体からなり、この箱体の空洞部に、ネック部を介して、音波を導入し、特定の周波数の振動に対して共鳴させるものである。
【0005】
ヘルムホルツ共鳴器を用いて音エネルギーを増幅する方法が特許文献1に記載されている。特許文献1では、ヘルムホルツ共鳴器の開口部に対向するように発電装置が設置され、発電装置のコイルを振動させて発電を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4633342号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、ヘルムホルツ共鳴器の開口部に対向するように発電装置が設置されているため、ヘルムホルツ共鳴器で共鳴され増幅された音が、ヘルムホルツ共鳴器を出るまでに、またヘルムホルツ共鳴器から出てコイルに到達する前に減衰するおそれがあった。
【0008】
これらを鑑み、本発明は、共鳴器と、当該共鳴器で増幅した振動をより効率的に振動発電素子へと到達させ利用する振動発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る一実施態様の共鳴器は、空洞および前記空洞に連通する開口部とを有する筐体と、前記開口部に設けられ、前記筐体と共に閉鎖空間を画定する振動部と、を有し、前記振動部は音圧により前記閉鎖空間内の空気を振動させることで共鳴することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の実施形態では、当該共鳴器の振動部に振動発電素子を備える振動発電装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、共鳴器と、当該共鳴器で増幅した振動をより効率的に振動発電素子へと到達させ利用する振動発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)本発明の第1の実施形態に係る振動発電装置の斜視図である。(b)(a)におけるIb-Ib線に沿った断面図である。
図2】本発明の共鳴器のモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明するが、本発明はこれらに限られない。
【0014】
1.振動発電装置
図1(a)は本発明の一実施形態に係る振動発電装置100の斜視図であり、図1(b)はその断面図である。図1(a)に示されるように、振動発電装置100は、共鳴器50と、共鳴器50に設けられた振動発電素子70とを備える。以下、振動発電装置100の各構成を順に説明する。
【0015】
なお、詳細は後述するが、本実施形態においては、閉鎖空間を有する共鳴器50と、振動発電素子70とを一体的に構成することにより、特許文献1のように、ヘルムホルツ共鳴器により増幅された音が振動発電素子を振動させる前に減衰されてしまうことを防ぐものである。
【0016】
(共鳴器)
共鳴器50は、空洞22および空洞22に連通する開口部24を有する筐体20と、開口部24に設けられ、筐体20と共に閉鎖空間を画定する振動部40とを有する。
【0017】
ここで、筐体20において、空洞22は、開口部24に振動部40が設けられることにより閉鎖空間となり、振動部40の振動に対し空気ばねとして共鳴することができる空間である。筐体20は、任意の形状であってよく、例えば、円筒形状や直方体形状であってもよい。
【0018】
振動部40は、筐体20よりも剛性が低い部分であり、筐体20よりも可撓性が高いため、音圧を受けて振動することができる。
【0019】
振動部40は、筐体20の一部に肉薄部を設け、筐体20の他の部分と一体的に形成してもよい。また、振動部40として別個の部品である振動板を筐体20に接合し、閉鎖空間を画定してもよい。振動板の接合方法は、これに限定されないが、例えば、接着、溶着、およびねじ留めなどを用いることができる。
【0020】
振動部40は任意の形状であってもよい。例えば、円盤状であってもよく、また多角形盤状であってもよい。後述するように、振動部40には振動発電素子70が設けられるため、振動発電素子70を保持する形状をさらに有してもよい。
【0021】
振動部40は、筐体20と同じ材料から形成されていてもよく、また異なる材料で形成されてもよい。筐体20と振動部40とが同じ材料で形成される場合、材料としてポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂、ポリカーボネート、および金属などを用いることができる。また、筐体20と振動部40とが異なる材料から形成される場合、上記の材料の組み合わせで作成することができる。例えば筐体20をアクリル樹脂で形成し、PETで形成された振動板を接合して、共鳴器50を形成してもよい。
【0022】
(振動発電素子)
振動発電素子70は、振動部40における振幅が大きくなる領域に設けられ、振動部40が外部からの音圧により振動し、さらに閉鎖空間内の空気ばねの共鳴によって増幅された振動で振動部40が振動することにより、発電を行う素子である。振動発電素子70により発電された電気エネルギーは、配線(不図示)により外部に伝達され、センサ信号などに利用することができる。
【0023】
振動発電素子70は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換する素子であれば任意の素子を用いることができる。例えば、振動発電素子として、櫛歯型電極を有する静電誘導型振動発電素子を用いてもよい。また、振動発電素子70は静電誘導型振動発電素子以外にもエレクトレット型発電素子、ピエゾ型発電素子、電磁誘導型、または磁歪型の発電素子を用いてもよい。
【0024】
また振動部40自体が振動発電素子70を形成してもよい。例えば、振動部40に圧電膜を成型した圧電型振動発電素子を設けることができる。
【0025】
一方、振動発電素子70として、櫛歯型電極を有する静電誘導型振動発電素子を用いた場合、振動発電素子70の可動電極の振動方向は、振動部40の振動方向と一致することが好ましい。図1に記載の本発明の一実施形態の振動部40は両矢印Aの方向に振動するため、振動発電素子70の可動電極の振動方向も実質的に両矢印Aの方向であるように設置されている。
【0026】
(共振周波数)
上述するように、共鳴器50は、振動部40が外部からの音圧により振動し、さらに閉鎖空間内の空気ばねの共鳴によって振動を増幅する。以下、共鳴器50の共振周波数について、図2のモデルを用いて説明する。
【0027】
図2のモデルでは、筐体55で囲まれた閉鎖空間を有する第1室(共鳴室)が振動部45を介し、閉鎖空間を有する第2室と隣接する。第1室の閉鎖空間はV1の容積とP1の内部圧力とを有し、第2室の閉鎖空間はV2の容積とP2の内部圧力とを有する。第2室は第1室(共鳴室)の外部空間を模しており、V2>>V1の関係を有する。振動部45には質量mの振動子80が存在し、振動子80の変位量はxで表される。振動部45上の振動子80が振動すると、第1室の容積V1の空気は空気ばねとして機能する。
【0028】
ここで、閉鎖空間内の空気が理想気体であり、第1室および第2室の空気が振動部45の振動により断熱圧縮すると仮定すると、以下の関係が成り立つ。なお、式(1)は運動方程式である。式(2)および式(3)は、第1室および第2室のそれぞれの内部エネルギーを示す。さらに、式(4)および式(5)は、第1室および第2室におけるポアソン関係式を表す。
【式1】
【0029】
(P0:大気圧
1:第1室の圧力
2:第2室の圧力
m:振動発電素子80の質量
x:質量mの変位量
S:振動部45の面積
1:第1室の容積
2:第2室の容積
α:振動部45の変位と容積変化の関係を表す係数
γ:比熱比)
【0030】
さらに、xの変位に対し、各室の圧力P1およびP2が速やかかつ均一に変化するものと仮定すると第1室および第2室の内部エネルギーU1およびU2は、以下のように表すことができる。
【式2】
【0031】
【0032】
ここで、式(6)の右辺の第1項は一定であり、第2項はばね定数kを有する空気ばねV1と解することができる。これにより、第1室の空気ばねV1の共振周波数f0は以下の式により求めることができる。
【式3】
【0033】
【0034】
なお、上記式(7)は第1室の閉鎖空間内の圧力が均一である場合を仮定して求めているため、閉鎖空間の大きさは、外部からの音圧が有する波長よりも小さいことが好ましい。一実施形態において、第1室の閉鎖空間を構成するすべての寸法は、波長λ/4=c(音速)/(4×f0)未満であることが好ましい。例えば、共振周波数f0が1kHzの場合、容積V1は20×20×3mm3以下であれば問題ない。
【0035】
(振動発電)
振動発電素子70は、特定の共振周波数付近の振動を受けると、効率よく発電を行うことができる。そのため、本発明の一実施形態において、振動発電素子70の共振周波数は、共鳴器50の共鳴周波数近傍に一致させることが好ましい。例えば50Hz~2000Hzである。
【0036】
このように、振動発電装置100は、共鳴器50の閉鎖空間による空気ばねの共鳴を引き起こす音圧を振動部40が受けた際、振動部40の振動は共鳴器50の空気ばねと共鳴して増幅し、振動部40をより強く振動させることができる。その結果、振動部40に設置された振動発電素子70を振動させ、発電が行われることとなる。
【0037】
本実施形態の振動発電装置100は、音圧を受けることができる環境であれば任意の場所に設置することができる。好ましくは外部振動の影響を抑制した環境に取り付けることが好ましい。例えば、ゴムやエラストマーなどの外部振動を遮断する部材に設置されてもよく、また機械的に振動を遮断する装置上に設けてもよい。
【0038】
さらに、本実施形態の振動発電装置100は、閉鎖空間で共鳴が行われるため、共鳴器内部に水やゴミなどの異物が混入することを防ぐことができる。
【0039】
以上説明した実施の形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0040】
(1)共鳴器は、空洞および前記空洞に連通する開口部とを有する筐体と、前記開口部に設けられ、前記筐体と共に閉鎖空間を画定する振動部と、を有し、前記振動部は音圧により前記閉鎖空間内の空気を振動させることで共鳴することを特徴とする。
【0041】
このように構成したので、共鳴器で増幅した振動をより効率的に増幅させる共鳴器を提供することができる。
【0042】
(2)前記振動部は前記筐体の他の部分よりも剛性が低い。
【0043】
このように構成したので、共鳴器の振動部は、音圧を受けて振動することができる。
【0044】
(3)前記振動部は、前記筐体の他の部分よりも厚さが薄い。
【0045】
このように構成したので、振動部は他の部分よりも剛性が低く形成することができる。
【0046】
(4)前記振動部は前記筐体の他の部分と異なる材料から形成された振動板が接合されている。
【0047】
このように構成したので、振動部は他の部分よりも剛性が低く形成することができる。
【0048】
(5)前記接合は、接着、溶着またはねじ留めにより行われる。
【0049】
このように構成したので、振動板を筐体に強固に接合することができる。
【0050】
(6)振動発電装置は、(1)~(5)のいずれか一項に記載の共鳴器と、前記振動部に設けられた振動発電素子と、を備える。
【0051】
このように構成したので、振動発電装置は、共鳴器により増幅された音圧の振動により効率よく発電を行うことができる。
【0052】
(7)前記振動発電素子の可動子の振動方向が、前記振動部の振動方向と実質的に一致する。
【0053】
このように構成したので、効率よく振動発電素子が発電を行うことができる。
【0054】
(8)前記振動発電素子は、圧電型振動発電素子からなる。
【0055】
このように構成したのでこのように構成したので、振動発電装置を小型化することができる。
【0056】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定
されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の
範囲内に含まれる。
【0057】
また、上述の各実施の形態および変形例の一つもしくは複数を、適宜組合せてもよい。
【符号の説明】
【0058】
20 筐体
22 空洞
24 開口部
25 第1室の閉鎖空間
35 第2室の閉鎖空間
40 振動部
45 振動部
50 共鳴器
55 筐体
70 振動発電素子
80 振動子
100 振動発電装置
図1
図2