(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148081
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】モータ制御装置、モータ制御方法
(51)【国際特許分類】
E05F 15/695 20150101AFI20241009BHJP
E05F 15/41 20150101ALI20241009BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20241009BHJP
H02P 7/06 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
E05F15/695
E05F15/41
B60J1/17 A
H02P7/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060995
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】工藤 正善
【テーマコード(参考)】
2E052
3D127
5H571
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052EA14
2E052EB01
2E052EC01
2E052GB06
2E052GC01
2E052GC07
3D127AA02
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3D127DF35
3D127FF05
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3D127FF09
5H571AA03
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5H571JJ04
5H571LL08
5H571LL10
5H571LL22
5H571LL32
(57)【要約】
【課題】開閉部材の位置の誤認識に由来して挟み込み防止制御が不作動となる恐れを低減可能な技術を提供する。
【解決手段】メインコントローラは、モータに付加されている回転センサから出力されるパルス信号を回転量情報として受信する。メインコントローラは、モータ電流の極性に基づいてモータの回転方向を判定する。メインコントローラは、回転量情報と回転方向とに基づいて開閉部材の位置を推定し、開閉部材の推定位置が、挟み込み防止制御を実施しない領域である閉め切り領域にあるか否かを判定する。メインコントローラは、モータ電流が所定条件を充足しているときに入力されたパルス信号の数を判定不能パルス数としてカウントし、判定不能パルス数のカウント値が多いほど閉め切り領域を小さくする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉部材の位置を変更するためのモータを制御するモータ制御部(F8)と、
前記モータに付加されている回転センサから出力されるパルス信号を回転量情報として受信する回転量取得部(F1)と、
モータ電流の極性に基づいて前記モータの回転方向を判定する回転方向判定部(F2)と、
前記回転量取得部が取得した前記回転量情報と前記回転方向判定部が判定した前記回転方向とに基づいて前記開閉部材の位置を推定する位置推定部(F3)と、
前記位置推定部が特定している前記開閉部材の位置が、挟み込み防止制御を実施しない領域である閉め切り領域にあるか否かを判定する領域判定部(F71)と、
所定の特定状況において受信した前記パルス信号の数を判定不能パルス数としてカウントするカウント部(F4)と、
前記カウント部が保持している前記判定不能パルス数に応じて、前記閉め切り領域の大きさを調整する調整部(F6)と、を備えるモータ制御装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記カウント部がカウントしている前記判定不能パルス数が多いほど、前記閉め切り領域を小さくするように構成されている、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記判定不能パルス数が所定値以上となった場合には、所定の初期化操作の実行を促す通知を行う通知部(F9)をさらに備える、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記モータ制御部は、前記判定不能パルス数が所定値以上であることに基づいて、前記開閉部材の移動速度を低下させるように構成されている、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記カウント部は、前記モータ電流の大きさが所定値未満である状況において受信した前記パルス信号の数を前記判定不能パルス数としてカウントするように構成されている、請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記開閉部材は、車両に設けられた窓ガラスであって、
前記窓ガラスの開閉を制御するパワーウィンドウシステムのための請求項1から5の何れか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
全閉状態において前記窓ガラスが当接する部分にウェザーストリップが設けられた前記パワーウィンドウシステムのための、請求項6に記載のモータ制御装置であって、
前記調整部が前記閉め切り領域の大きさを調整可能な範囲を規定する最大調整量は、前記閉め切り領域の境界線の初期位置から、前記ウェザーストリップの先端までの距離に応じた値に設定されているモータ制御装置。
【請求項8】
開閉部材の位置を変更するためのモータを制御するモータ制御方法であって、
前記モータに付加されている回転センサから出力されるパルス信号を回転量情報として受信することと、
モータ電流の極性に基づいて前記モータの回転方向を判定することと、
前記回転量情報と前記回転方向とに基づいて前記開閉部材の位置を推定することと、
前記開閉部材の位置が、挟み込み防止制御を実施しない領域である閉め切り領域にあるか否かを判定することと、
所定の特定状況において受信した前記パルス信号の数を判定不能パルス数としてカウントすることと、
前記判定不能パルス数に応じて、前記閉め切り領域の大きさを調整することと、を含むモータ制御方法。
【請求項9】
カウントされている前記判定不能パルス数が大きいほど、前記閉め切り領域を小さくすることを含む、請求項8に記載のモータ制御方法。
【請求項10】
前記判定不能パルス数が所定値以上となった場合には、所定の初期化操作の実行を促す通知を行うことを含む、請求項8に記載のモータ制御方法。
【請求項11】
前記判定不能パルス数が所定値以上であることに基づいて、前記開閉部材の移動速度を低下させることを含む、請求項8に記載のモータ制御方法。
【請求項12】
前記特定状況は、前記モータ電流の大きさが所定値未満である状況である、請求項8に記載のモータ制御方法。
【請求項13】
前記開閉部材は、車両に設けられた窓ガラスであって、
前記窓ガラスの開閉を制御するパワーウィンドウシステムのための請求項8から12の何れか1項に記載のモータ制御方法。
【請求項14】
全閉状態において前記窓ガラスが当接する部分にウェザーストリップが設けられた前記パワーウィンドウシステムのための、請求項13に記載のモータ制御方法であって、
前記閉め切り領域の大きさを調整可能な範囲を規定する最大調整量は、前記閉め切り領域の境界線の初期位置から、前記ウェザーストリップの先端までの距離に応じた値に設定されているモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータを用いて開閉部材の位置を変更するモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、窓ガラスの摺動範囲内に挟み込み防止領域と閉め切り領域とが設定されているパワーウィンドウ装置が開示されている。挟み込み防止領域とは、挟み込み防止制御を実施する範囲である。挟み込み防止制御は、窓ガラスを上げる方向にモータを作動している状況において、物体(例えば頭部や手、指)の挟み込みを検出した場合に、モータの回転方向を反転させることにより、窓の開度を所定量増大させる制御である。
【0003】
閉め切り領域は、上記の挟み込み防止制御を実施しない領域である。換言すれば、閉め切り領域は、モータ電流の上昇や回転速度の低下といった、挟み込みを示唆する事象が生じても、窓を閉める方向へのモータ駆動を継続する領域と解されて良い。窓の上端位置から一定距離(例えば12mm~20mm)以内の領域が、閉め切り領域設定されうる。閉め切り領域よりも下方が挟み込み防止領域である。
【0004】
特許文献2には、モータの両端電圧差に基づいて回転方向を検出する方法が開示されている。ここでの回転センサとは、モータの回転に応じてパルス信号を出力するセンサであって、位置センサとも呼ばれうる。回転センサは、ホール素子などの磁気を利用するセンサであってもよいし、モータの回転円盤に設けられたスリットを通過する光パルスを検出する光学式センサであってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-218730号公報
【特許文献2】国際公開第2019/082785号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
挟み込み防止制御を実施するモータ制御装置において、窓ガラスの現在位置、換言すれば、上端位置までの残り距離を誤認識していると、本来はまだ挟み込み防止制御を実施すべき位置において、挟み込み防止制御が実行されないことが起こりうる。モータ制御装置は、モータの回転量と回転方向の組み合わせによって窓ガラスの現在位置を推定する。一般的なパワーウィンドウシステムのモータ制御装置は、複数の回転センサの出力信号を組み合わせることにより、モータの回転方向を特定するように構成されているケースが多い。
【0007】
一方で、本開示の開発者らは、コスト削減又は他の観点から、モータに流れる電流の極性に基づいて回転方向を推定し、その推定結果と1つの回転センサの出力パルス数との組み合わせから、窓ガラスの現在位置を特定するモータ制御装置について検討した。そして、当該構成について検討を進めたところ、開発者らは、モータ電流が非常に小さくなる特定状況においては回転方向を誤判定するケースがあり、その結果として、窓ガラスの推定位置が実際の位置からずれることがあるとの知見を得た。特定状況とは、モータの駆動を停止した後に生じる惰性回転の終盤や、その後の反動による逆回転時など、モータがゆっくりと回転している状況に相当する。このような特定状況では、モータ電流が小さいため、ノイズや回路特性によって、回転方向が誤判定されうる。
【0008】
前述の通り、回転方向を誤判定するとモータ制御装置が認識している窓ガラスの現在位置と、実際の窓ガラスの位置との間にズレが生じる。その結果、実際には挟み込み防止制御を実施すべき位置に窓ガラスがあるにも関わらず、挟み込み防止制御が作動しないことが起こりうる。
【0009】
本開示は、上記の検討又は着眼点に基づいて成されたものであり、その目的の1つは、開閉部材の位置の誤認識に由来して挟み込み防止制御が不作動となる恐れを低減可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに開示されるモータ制御装置の1つは、開閉部材の位置を変更するためのモータを制御するモータ制御部(F8)と、モータに付加されている回転センサから出力されるパルス信号を回転量情報として受信する回転量取得部(F1)と、モータ電流の極性に基づいてモータの回転方向を判定する回転方向判定部(F2)と、回転量取得部が取得した回転量情報と回転方向判定部が判定した回転方向とに基づいて開閉部材の位置を推定する位置推定部(F3)と、位置推定部が特定している開閉部材の位置が、挟み込み防止制御を実施しない領域である閉め切り領域にあるか否かを判定する領域判定部(F71)と、所定の特定状況において受信したパルス信号の数を判定不能パルス数としてカウントするカウント部(F4)と、カウント部が保持している判定不能パルス数に応じて、閉め切り領域の大きさを調整する調整部(F6)と、を備える。
【0011】
上記構成において、特定状況において受信したパルス信号の数である判定不能パルス数は、開閉部材の推定位置と実際の位置のずれ度合いを表すパラメータとして機能する。判定不能パルス数に応じて閉め切り領域の大きさを調整することにより、開閉部材の位置の誤認識に由来して挟み込み防止制御が不作動となる恐れを低減できる。
【0012】
本開示のモータ制御方法は、開閉部材の位置を変更するためのモータを制御するモータ制御方法であって、モータに付加されている回転センサから出力されるパルス信号を回転量情報として受信することと、モータ電流の極性に基づいてモータの回転方向を判定することと、回転量情報と回転方向とに基づいて開閉部材の位置を推定することと、開閉部材の位置が、挟み込み防止制御を実施しない領域である閉め切り領域にあるか否かを判定することと、所定の特定状況において受信したパルス信号の数を判定不能パルス数としてカウントすることと、判定不能パルス数に応じて、閉め切り領域の大きさを調整することと、を含む。
【0013】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】パワーウィンドウシステムの構成を示す図である。
【
図2】窓ガラスの移動範囲を説明するための図である。
【
図3】上枠部付近の構成と閉め切り領域を説明するための図である。
【
図5】モータ駆動を止めた後のモータの動きとモータ電流の関係を示す図である。
【
図6】閉め切り領域の調整にかかるメインコントローラの作動を説明するためのフローチャートである。
【
図8】パワーウィンドウシステムの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本開示のモータ制御装置をパワーウィンドウシステム100に適用した場合について図を用いて説明する。本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の構成は、要旨を逸脱しない範囲内で変更して実施されてよい。種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施されてよい。明示しない組み合わせも本開示の範囲に含まれうる。以降において同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については他の箇所に記載の説明を適用することができる。
【0016】
<全体構成>
本実施形態のパワーウィンドウシステム100は、車両のドアに設けられた窓ガラス70の位置(換言すれば開度)を、モータ40を用いて制御するものである。窓ガラス70が開閉部材に相当する。以降では窓ガラス70をウィンドウと簡略的に記載することがある。パワーウィンドウシステム100は、
図1に示すように、メインコントローラ10、操作部20、モータドライバ30、モータ40、電流モニタ50、及び回転センサ60を含む。
【0017】
窓ガラス70は窓枠80に対して上下に摺動可能に構成されている。すなわち、パワーウィンドウシステム100は、
図2に示すようにドアに設けられた窓枠80の上端から下端まで窓ガラス70をスライド可能に構成されている。窓ガラス70を上げる制御は、窓を閉じる制御である閉制御に対応する。窓ガラス70を下げる制御は、窓を開ける制御である開制御に対応する。窓を閉じる方向を本開示では閉方向とも記載する。車両にとっての上方向が閉方向に対応する。一方、窓を開ける方向を本開示では開方向とも称する。車両にとっての下方が開方向に相当する。以下では窓枠80の上側縁部を上枠部81と記載する。上枠部81は、全閉状態において窓ガラス70の上端であるガラス上端部71が当接する部分である。窓枠80の下側縁部を下枠部82と記載する。
【0018】
上枠部81には
図3に示すようにウェザーストリップ83が設けられている。ウェザーストリップ83は、窓ガラス70と窓枠80との隙間を塞いで騒音、雨、風などが車室内に進入するのを防ぐための保護材である。ウェザーストリップ83はゴム製であってよい。ウェザーストリップ83は、シール部材あるいはガスケットなどとも呼ばれうる。窓ガラス70が全閉状態のとき、ガラス上端部71がウェザーストリップ83に挟み込まれた状態となる。ガラス上端部71は、窓ガラス70の先端(換言すれば上端)を指す。ウェザーストリップ83は所定量の深さを有するため、窓ガラス70は、全閉状態だけでなく、略全閉状態であってもガラス上端部71はウェザーストリップ83に挟み込まれた状態となる。略全閉状態は、全閉状態から開方向に微小量移動した状態である。
【0019】
パワーウィンドウシステム100は挟み込み防止制御を実施可能に構成されている。挟み込み防止制御は、挟み込みを検知した場合にモータ40の回転を停止及び逆転させる制御である。挟み込みとは、窓ガラス70と上枠部81の間に、頭部や手、指といった物体が挟み込まれた状態を指す。挟み込みが生じている場合、モータ40の負荷が増大するため、モータ電流が増大したり、回転が停止/低速化したりしうる。物体の挟み込みは、モータ電流の上昇又は回転速度の低下などをもとに検出されてよい。回転速度の低下は、後述する回転センサ60によるパルス信号の出力間隔から検出されて良い。
【0020】
ところで、ガラス上端部71がウェザーストリップ83に接触している場合にも、窓ガラス70の移動にかかる抵抗が増大するため、モータ電流の上昇又は回転速度の低下といった事象が生じうる。故に、ガラス上端部71がウェザーストリップ83に接する位置まで達したときに、挟み込み防止制御が有効であると、窓ガラス70がウェザーストリップ83に接したことを挟み込みとして誤検出するおそれがある。ウェザーストリップ83との接触を異物の挟み込みと誤検出すると、挟み込み防止制御が実行され、全閉状態に至らない。その結果、ユーザの利便性が低下しうる。
【0021】
このため、パワーウィンドウシステム100には、挟み込み防止領域と、閉め切り領域とが設定されている。挟み込み防止領域は、挟み込み防止制御が有効な領域である。閉め切り領域は、挟み込み防止制御を実施しない領域である。閉め切り領域は、モータ電流の上昇や回転速度の低下といった、挟み込みを示唆する事象が生じても、窓を閉める方向へのモータ駆動を継続する領域と解されて良い。全閉位置から一定距離(例えば12mm~20mm)以内となる領域が、閉め切り領域に設定されている。挟み込み防止領域は、閉め切り領域よりも下方が挟み込み防止領域である。閉め切り領域の下端が、挟み込み領域の上端に相当する。閉め切り領域と挟み込み領域の境界線の位置を、本開示では境界位置とも称する。全閉位置とは、上枠部81にガラス上端部71が接している時のウィンドウ位置に相当する。ここでのウィンドウ位置とは、上下方向におけるガラス上端部71の位置と解されて良い。全閉位置は、最高位置/上方限界位置と言い換えられて良い。以下における全開位置は、窓が全開状態にある場合の窓ガラス70の位置を意味する。全開位置は、最低位置/下方限界位置と言い換えられて良い。
【0022】
図3中のL1は、全閉位置から境界位置までの距離、換言すれば、閉め切り領域の上下方向における長さを表している。閉め切り領域の上下方向における長さは、閉め切り領域の大きさと解されて良い。また、L2は、ウェザーストリップ83の深さを表すパラメータである。ウェザーストリップ83の深さ(L2)は一般的に8mm~16mmであることが多い。L3は、ウェザーストリップ83の先端部84から境界位置までの距離(以降、ギャップ長)を表すパラメータである。先端部84は、上枠部81に設けれられたウェザーストリップ83の最下端である。境界位置は、先端部84を基準に設定されて良い。境界位置は、先端部84から4mm下方となる位置に設定されていてよい。つまり、ギャップ長(L3)は、4mmであってよい。もちろん、ギャップ長(L3)は、3mmや、5mm、6mm、8mmなどであってよい。ギャップ長は、子供の指や手首などといった、所定の保護対象物の直径よりも小さい値に設定されていて良い。
【0023】
閉め切り領域の大きさの初期値である初期サイズ、換言すれば、境界位置の初期値である初期位置は、メインコントローラ10に予め登録されている。初期位置は、例えば全閉位置から下側に12mmとなる位置などに設定されていてよい。なお、初期位置は、全開位置を基準として表現されても良い。全開位置から全閉位置までの距離が400mmである場合、初期位置は、全開位置から388mm上側となる位置などに設定されていてよい。また、初期位置は、ミリメートルなどの距離の次元ではなく、後述するパルス数で定義されていてもよい。
【0024】
<各構成について>
メインコントローラ10は、モータ40の動作を制御する回路モジュールである。メインコントローラ10は、プロセッサ11、メモリ12、ストレージ13、入出力回路14等を備えたコンピュータであってよい。プロセッサ11は、メモリ12と結合された演算処理のためのハードウェアである。プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算コアを少なくとも一つ含む。プロセッサ11は、メモリ12へのアクセスにより、種々の演算処理を実行する。メモリ12は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリである。
【0025】
ストレージ13は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体である。ストレージ13は、ROM(Read Only Memory)とフラッシュメモリなど、複数種類の記憶媒体を含んでいてよい。ストレージ13には、プロセッサ11によって実行されるプログラムであるモータ制御プログラムが格納されている。プロセッサ11がモータ制御プログラムを実行することは、モータ制御プログラムに対応する方法であるモータ制御方法が実行されることに相当する。
【0026】
入出力回路14は、電流モニタ50及び回転センサ60の出力信号を受信するための入力回路、及び、モータドライバ30につながる出力回路を含む回路モジュールである。入出力回路14は、プロセッサ11が他の車載装置と通信するための回路を含んでいてよい。入出力回路14は、車載ネットワークの通信規格に準拠したPHYチップを含んでよい。入出力回路14は、車両に搭載されている多様な車載装置からの信号を受信してよい。
【0027】
メインコントローラ10では、ストレージ13に格納されたモータ制御プログラムに従って、プロセッサ11が複数の処理を実行する。メインコントローラ10は、操作部20又は図示しない他の制御装置からの信号に基づき、モータ40の動作を制御する。その際、メインコントローラ10は、電流モニタ50からの出力信号、及び回転センサ60からの信号に基づいて、モータ40を制御するための制御信号を生成する。メインコントローラ10の詳細は別途後述する。
【0028】
操作部20は、窓ガラス70の位置をユーザが調整するための少なくとも1つのスイッチを含む構成である。スイッチはレバーであってよい。操作部20は、押し込み操作と、引き上げ操作が可能に構成されていて良い。操作部20が備えるスイッチは上下の2方向に可動であってよい。操作部20は、スイッチが押下されている間、プッシュ信号をメインコントローラ10へ出力する。メインコントローラ10は操作部20からプッシュ信号が入力されている間、窓ガラス70を下げるための制御を実行する。なお、メインコントローラ10は、スイッチが深く(強く)押しこまれたことに基づいて、窓ガラス70を全開位置まで下降させる全開制御を実行するように構成されていても良い。
【0029】
また操作部20は、スイッチが引き上げられている間、プル信号をメインコントローラ10へ出力する。メインコントローラ10は操作部20からプル信号が入力されている間、窓ガラス70を上げるための制御を実行する。なお、メインコントローラ10は、操作部20が強く引き上げられたことに基づいて、窓ガラス70を全閉位置まで上昇させる全閉制御を実行するように構成されていても良い。
【0030】
モータドライバ30は、メインコントローラ10からの制御信号に従って、モータ40に駆動電流を通電する回路モジュールである。モータドライバ30は、4つのスイッチング素子31、32、34、35と、2つのスイッチコントローラ33、36と、2つの出力端子37、38と、を含む。スイッチング素子31~32、34~35は、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタ又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などであってよい。4つのスイッチング素子31、32、34、35には、それぞれ、還流ダイオードが逆並列接続されている。4つのスイッチング素子31、32、34、35は、モータ40を駆動するためのHブリッジ回路を形成している。スイッチコントローラ33は、メインコントローラ10からの制御信号に応じて、スイッチング素子31、32の導通状態(オン/オフ)を制御する。スイッチコントローラ36は、メインコントローラ10からの制御信号に応じて、スイッチング素子34、35の導通状態を制御する。
【0031】
出力端子37、38はモータ40に電力を供給するための端子である。出力端子37は、モータ40の電極端子(例えばプラス端子)と接続されている。また、出力端子37は、スイッチング素子31、32のドレイン極をつなぐ信号線と電気的につながっている。便宜上、出力端子37の出力信号を第1出力とも称する。出力端子38は、モータ40の他の電極端子(例えばマイナス端子)と接続されている。出力端子38は、スイッチング素子32、34のドレイン極をつなぐ信号線とも電気的につながっている。便宜上、出力端子38の出力信号を第2出力とも称する。
【0032】
メインコントローラ10は、モータ40を正転させるとき、スイッチコントローラ33、36を介して、スイッチング素子31、35をオンさせ、スイッチング素子32、34をオフさせる。つまり、第1出力をハイ(Hi)レベル、第2出力をロー(Lo)レベルに設定する。これにより図中のImを付与した矢印の向きに電流が流れ、モータ40は正方向に回転(つまり正転)する。図中のImはモータ電流を表している。なお、本実施形態ではモータ40が正転するとウィンドウ位置が上昇し、反転するとウィンドウ位置が下がるように構成されている。もちろん、他の態様においては、正転方向はウィンドウ位置の下降方向に対応していても良い。
【0033】
逆に、メインコントローラ10は、モータ40を逆転させるとき、スイッチコントローラ33、36を介して、スイッチング素子32、34をオンさせ、スイッチング素子31、35をオフさせる。つまり、第1出力をローレベル、第2出力をハイレベルに設定する。これにより図中のImを付与した矢印とは逆の向きに電流が流れ、モータ40は逆転する。
【0034】
さらに、メインコントローラ10は、モータ40の回転を止めるとき、スイッチコントローラ33、36を介して、スイッチング素子32、35又はスイッチング素子31、34をオンにする。当該設定によれば、モータ40の両端に同電位が印加される。そのため、モータ40への通電が停止される。つまり、メインコントローラ10は、第1出力及び第2出力の両方をハイレベル又はローレベルに設定することにより、モータ40の駆動を停止する。本開示では第1出力及び第2出力を同電位に設定することによってモータ40の駆動を停止することを制動運転と称する。
【0035】
モータ40は、パワーウィンドウシステム100によって回転駆動するものである。モータ40は、ブラシ付き直流モータ(以下、直流モータと呼ぶ)であってよい。モータ40は、回転子(換言すればロータ)と、固定子とを備える。モータ40は、モータドライバ30から通電されることにより、正転又は逆転する。モータ40の回転は、ギヤやワイヤ、レギュレータ等といった動力伝達部材を介して、ウィンドウ位置、換言すれば窓の開度を変更するように作用する。
【0036】
電流モニタ50は、モータ40に通電される電流を検出する回路モジュールである。電流モニタ50は、モータ40への給電経路において、モータ40と直列に接続されたシャント抵抗51を含む。さらに、電流モニタ50は、モータ40に通電される電流に応じた、シャント抵抗51の両端電圧を増幅する差動増幅回路52を含む。差動増幅回路52によって増幅された出力信号は、メインコントローラ10に入力される。電流モニタ50の出力信号は、モータ電流の大きさと、その極性(プラス/マイナス)を示す。本実施形態のパワーウィンドウシステム100は、通常運転時のモータ電流が+10A~+12Aとなるように構成されている。ここでの通常運転とは、モータ40を所定の速度で正転又は逆転させることであってよい。通常運転とは、障害物がない状況で、窓ガラス70を上昇/下降させる制御に対応する。
【0037】
回転センサ60は、モータ40の回転を検出するセンサである。回転センサ60は、磁気式又は電磁誘導式のセンサであってよい。回転センサ60は、ホール素子又はホールICなどであってよい。回転センサ60は、モータ40のロータに設けられた永久磁石が作り出す磁界の変化に応じてパルス信号を出力する。回転センサ60は、モータ40が所定量回転するためにパルス信号を出力するように構成されている。例えば回転センサ60及びモータ40は、1回転で10個のパルスを出力するように構成されている。当該構成は、モータ40が36°回転する度にパルス信号を1つ出力する構成に相当する。回転センサ60が出力するパルス信号は、回転量を示す信号であるため、回転量情報に相当する。
【0038】
なお、回転センサ60は、光学式のセンサであってもよい。光学式の回転センサ60は、ロータ又はコードホイールに設けられたスリットを通過する光(つまり通過光)を検出することで回転を検出するタイプのセンサであっても良い。光学式の回転センサ60は、ロータ又はコードホイールに付与された反射部材で反射された光を検出することで回転を検出するタイプのセンサであってもよい。本実施形態のパワーウィンドウシステム100は、回転センサ60を1つしか備えない。なお、他の態様として、パワーウィンドウシステム100は、複数(例えば3つ)の回転センサ60を備えていてもよい。
【0039】
<メインコントローラ>
メインコントローラ10は、プロセッサ11によるモータ制御プログラムの実行によって、
図4に示す複数の機能を実現する。すなわちメインコントローラ10は、機能ブロックとして、回転量取得部F1、回転方向判定部F2、位置推定部F3、カウント部F4、ずれ量推定部F5、領域調整部F6、基本制御部F7、及びモータ制御部F8を備える。基本制御部F7は、領域判定部F71と挟み込み検出部F72を含む。
【0040】
以降における回転量取得部F1、回転方向判定部F2、カウント部F4、ずれ量推定部F5、領域調整部F6、位置推定部F3、基本制御部F7、及びモータ制御部F8の記載は、適宜、プロセッサ11/メインコントローラ10と言い換えられて良い。位置推定部F3やモータ制御部F8などは基本制御部F7と統合されていても良い。機能配置は適宜変更されて良い。
【0041】
回転量取得部F1は、回転センサ60の出力信号に基づいてモータ40の回転量を検出する構成である。回転量取得部F1は、回転センサ60の出力信号のレベルが、ローからハイに立ち上がった場合に1つのパルス信号を受信したと判定する。なお、他の態様として回転量取得部F1は、回転センサ60の出力信号のレベルがハイからローに立ち下がった場合に1つのパルスを受信したと見なしてもよい。パルス信号は、回転センサ60の出力信号の立ち上がり/たち下がりと言い換えられてよい。回転量取得部F1は、受信したパルス信号の数をもとに回転量を特定する機能を備えていても良い。回転量取得部F1は、パルス信号を受信したことを示す信号であるパルス検出信号を位置推定部F3及びカウント部F4に出力する。
【0042】
回転方向判定部F2は、電流モニタ50から入力されるモータ電流の極性(プラス/マイナス)に基づいてモータ40の回転方向を判定する構成である。回転方向判定部F2は、モータ電流が正の値である場合には回転方向は正と判定し、モータ電流が負である場合には回転方向は負と判定してよい。回転方向を判定することは、窓ガラス70の移動方向であるウィンドウ移動方向を判定することに対応する。
【0043】
また、回転方向判定部F2は、制動運転を開始してから所定のオフセット時間が経過したタイミング以降において、モータ電流の大きさが所定の判定不能値よりも小さい場合には、判定不能信号をカウント部F4及び位置推定部F3に出力する。オフセット時間は、モータ電流が十分に立ち下がる長さに設定されていればよい。オフセット時間は数10ミリ秒~数100ミリ秒に設定されていてよい。
【0044】
電流モニタ50は、回路の特性上、モータ電流が小さすぎると、モータ電流の情報として、実際のモータ40の回転方向とは異なる極性を有する電流値を出力することがある。あるいは、モータ電流が非常に小さい場合、ノイズの重畳によって、電流モニタ50の出力値が、実際のモータ電流とは逆の極性を有する値となることがある。例えば-10mAのモータ電流に+30mAのノイズが重畳した場合、電流モニタ50の出力値は+20mAとなる。判定不能値は、上記の事象に着眼して導入されるパラメータである。判定不能値は、50mAや、80mA、100mA、120mAなどに設定されている。判定不能値は電流モニタ50の回路特性及びノイズレベルの想定値に応じた値に設定されてよい。回転方向判定部F2は、判定不能信号を位置推定部F3にも出力してよい。大きさが判定不能値よりも小さい電流範囲は、判定不能領域あるいは判定不能レベルと呼ばれて良い。
【0045】
位置推定部F3は、モータ40の回転量と回転方向の情報からウィンドウ位置を推定する構成である。仮にモータ1回転当りのウィンドウ移動距離が1mmであって、モータ1回転の間にパルス信号が10回出力されるように構成されている場合、1パルス当りのウィンドウ移動距離は、0.1mmである。位置推定部F3は、回転量取得部F1が取得したパルスの数に基づいて、全開位置/全閉位置を出発してからウィンドウの移動距離を算出する。その際の移動方向は、回転方向から特定されて良い。ウィンドウ位置は、具体的な距離の次元で表現されても良いし、パルス数で表現されて良い。ウィンドウ位置は、全開位置と全閉位置のどちらを基準として表現されてもよい。ウィンドウ位置は、全閉位置までの残り距離を直接的に又は間接的に示す。なお、位置推定部F3は、回転方向判定部F2から判定不能信号が入力されている場合は、ウィンドウ位置の更新を停止しても良い。
【0046】
カウント部F4は、モータ電流が小さすぎて回転方向が判定できなかったパルスの数をカウントする構成である。カウント部F4は、回転方向判定部F2から判定不能信号が入力されている状態において回転量取得部F1からパルス検出信号が入力された回数を、判定不能パルス数としてカウントする。本開示では電流の絶対値(いわゆる振幅)が判定不能値よりも小さい状況において受信したパルス信号を、判定不能パルスとも記載する。判定不能パルスはエラーパルスや例外パルスなどと言い換えられて良い。カウント部F4は、判定不能パルスカウント部と呼ばれて良い。
【0047】
ずれ量推定部F5は、判定不能パルス数のデータに基づいて、位置推定部F3が推定しているウィンドウ位置と実際のウィンドウ位置との間のずれ量を推定する構成である。ずれ量推定部F5は、判定不能パルス数に所定の変換係数を乗じた値を、ずれ量として算出して良い。変換係数は、パルス数を距離(mm)に変換するパラメータである。前述の通り、1パルス当りの窓ガラス70の移動量が0.1mmであって、判定不能パルス数が5である場合、ずれ量推定部F5は、ずれ量は0.5mm(0.1mm×5)と推定する。
【0048】
ずれ量推定部F5は、所定の初期化操作が実行されると、ずれ量を0にリセットする。初期化操作は、全閉状態から全開状態までの距離(パルス数)を登録するための操作と解されて良い。初期化操作は、全閉状態から全開状態まで連続的に窓ガラス70を移動させること、又は、全開状態から全閉状態まで連続的に窓ガラス70を移動させることを少なくとも含む。
【0049】
初期化操作は、例えば、ウィンドウ位置が全開位置であることを確認したのちに、全閉位置まで窓ガラス70を上げる操作であってよい。全開位置から全閉状態になったと判定されるまでの距離(パルス数)が、全閉位置を表す。また、初期化操作は、ウィンドウ位置が全閉位置であることを確認したのちに、全開位置まで窓ガラス70を下げる操作であってよい。なお、初期化操作は、一方の限界位置(例えば全閉位置)から他方の限界位置まで連続的に窓ガラス70を移動させることを所定回数繰り返す操作であってよい。
【0050】
領域調整部F6は、ずれ量推定部F5が推定したずれ量の情報をもとに、閉め切り領域のサイズ、換言すれば境界位置を調整する。例えばずれ量が0.3mmである場合、領域調整部F6は、境界位置を初期位置から0.3mm上げる。換言すれば、閉め切り領域のサイズを初期サイズよりも0.3mm小さくする。境界位置を上げることは、閉め切り領域を小さくすることに相当する。境界位置の調整量は、閉め切り領域の縮小量と解されて良い。また、閉め切り領域を縮小することは、挟み込み防止領域を拡張することに対応する。よって、境界位置を上げることは挟み込み防止領域を大きくすることに対応する。境界位置の調整量は、挟み込み防止領域の拡張量と言い換えられてよい。初期位置は、ずれ量が0である場合に適用されうる境界位置である。初期サイズもずれ量が0である場合に適用される閉め切り領域の大きさを表す設計値である。
【0051】
境界位置の調整量は、ずれ量と同じであってもよいし、ずれ量に所定の係数を乗じた値であってもよい。領域調整部F6は、ずれ量が大きいほど、境界位置を上昇させる。ただし、調整量には上限が設定されていて良い。調整量の最大値である最大調整量は、2mmや3mmなどに設定されていて良い。最大調整量は、ギャップ長に応じた値に設定されていて良い。最大調整量は、ギャップ長(L3)の0.5倍や、0.8倍、0.9倍などであって良い。なお、境界位置がウェザーストリップ83の先端部84よりも上方に設定されると、ウェザーストリップ83とガラス上端部71との接触に反応して基本制御部F7が挟み込み防止制御が実行しうる。故に、最大調整量は、ギャップ長よりも小さい値に設定されてよい。
【0052】
領域調整部F6は、ずれ量に応じて算出される調整量が最大調整量を超える場合には、調整量を最大調整量に設定する。換言すれば、ずれ量あるいは判定不能パルス数が所定値以上である場合、領域調整部F6は調整量を最大調整量に設定する。
【0053】
基本制御部F7は、パワーウィンドウの基本制御を行う構成である。基本制御には、操作部20からの入力信号及び認識しているウィンドウ位置に応じて、ウィンドウ位置の上昇/下降/停止に対応する指示信号をモータ制御部F8に出力することを含む。また、基本制御には、全開位置に到達したことの検出、全閉位置に到達したことの検出、挟み込みの検出なども含まれる。さらに、基本制御には、挟み込み防止制御の指示出力も含まれる。
【0054】
領域判定部F71は、位置推定部F3が推定しているウィンドウ位置と境界位置との比較に基づいて、ウィンドウ位置が閉め切り領域内にあるか、挟み込み防止領域内に在るかを判定する構成である。推定されているウィンドウ位置が境界位置よりも上方に位置する場合、領域判定部F71は、ウィンドウ位置が閉め切り領域内にあると判定する。また推定されているウィンドウ位置が境界位置以下である場合、領域判定部F71は、ウィンドウ位置が挟み込み防止領域内にあると判定してよい。
【0055】
基本制御部F7は、ウィンドウ位置が閉め切り領域内にあると判定しており且つウィンドウ位置の上昇指示をモータ制御部F8に出力している状況において、モータ電流値が所定値以上となった場合にウィンドウ位置が全閉位置に達したと判定してよい。基本制御部F7は、ウィンドウ位置が閉め切り領域内にあると判定しており且つウィンドウ位置の上昇指示をモータ制御部F8に出力している状況において、回転センサ60からパルス信号を受信しない状態が一定時間継続した場合にウィンドウ位置が全閉位置に達したと判定してもよい。基本制御部F7は、ウィンドウ位置が全閉位置に到達したと判定すると、モータ制御部F8に停止指示を出力する。ウィンドウ位置が全開位置に到達したことも、所定のモータ電流値が所定値以上となったこと、又は、パルス信号を受信しない状態が一定時間継続したことに基づいて判断されて良い。
【0056】
基本制御部F7は、ウィンドウ位置が閉め切り領域内にあると判定している場合、挟み込み防止制御を停止させる(換言すれば無効化する)。これにより、窓ガラス70がウェザーストリップ83に接し、摩擦が増大しても、モータ40の駆動を継続し、窓を閉め切ることが可能となる。
【0057】
基本制御部F7は、ウィンドウ位置が挟み込み防止領域内にあると判定しており且つモータ40の上昇指示をモータ制御部F8に出力している状況において、負荷増大事象を検出した場合には、挟み込みが発生したと判定してよい。負荷増大事象は、モータ電流値が所定値以上となったこと、パルスの出力間隔が所定値以上となったこと、又は、パルスが検出されない状態が一定時間継続したことであってよい。モータ電流及び回転センサ60の出力信号に基づいて挟み込みを検出する機能部が挟み込み検出部F72に相当する。
【0058】
その他、基本制御部F7は、操作部20から特定の信号が入力された場合に、初期化操作に対応するモータ制御シーケンスを自動的に実行しても良い。初期化操作に対応する制御を初期化制御と称する。初期化制御は、全開位置又は全閉位置までウィンドウを移動させたのちに、反対側の限界位置までウィンドウを移動させることを含む一連の制御であってよい。基本制御部F7は、全開位置又は全閉位置から反対側の限界位置まで、途中で止まることなく達したとき、全開位置から全閉位置までの距離を示すデータを更新してよい。
【0059】
モータ制御部F8は、基本制御部F7の指示/決定に従って、モータ40の回転/停止のための信号を生成し、モータドライバ30に出力する構成である。モータ制御部F8は、基本制御部F7から上昇指示が入力されている場合には、モータドライバ30に向けてモータ40を正転させるための制御信号(以降、正転信号)を出力する。正転信号は、第1出力をハイレベル、第2出力をローレベルに設定するための信号であってよい。また、モータ制御部F8は、基本制御部F7から下降指示が入力されている場合には、モータドライバ30に向けてモータ40を逆転させるための制御信号(以降、逆転信号)を出力する。逆転信号は、第1出力をローレベル、第2出力をハイレベルに設定するための信号であってよい。
【0060】
モータ制御部F8は、基本制御部F7の指示に従ってモータ40の回転を停止させる場合には、停止信号をモータドライバ30に出力する。停止信号は、第1出力及び第2出力をともにハイレベル又はローレベルに設定させる信号であってよい。以降における制動運転中との記載は、第1出力及び第2出力を同電位にしている状態と解されて良い。また、通常運転中との記載は、第1出力及び第2出力の何れか一方をハイレベルに設定し、他方をローレベルに設定している状態と解されてよい。
【0061】
ところで、ウィンドウ位置が中間位置である時にモータ40の駆動が停止されると、モータ40は、
図5に示すように惰性回転及び反動回転を経て、完全に停止する。中間位置とは、全開位置と全閉位置の間を指す。中間位置においてモータ40の駆動が停止された場合とは、窓を閉じている途中/開いている途中でモータ40を停止させた場合に相当する。
図5中の「V1」は、出力端子37の電位(つまり第1出力)を表している。「V2」は、出力端子38の電位(つまり第2出力)を表している。「Im」は、モータ電流を表している。各グラフの横軸は何れも時間を表す。縦軸は、電位/電流を表している。
【0062】
図5中の時刻T1は、制動運転を開始したタイミング、すなわち、モータ40の駆動を停止したタイミングを示している。時刻T1までは、モータ40が定速回転(通常運転)している状態に相当する。また、時刻T1~T2は、モータ40が惰性で回転している状態である。惰性回転の速度は、摩擦等によって徐々に減少していき、時刻T2にてモータ40は一時停止する。
【0063】
惰性回転時はモータ40が発電機(すなわち電源)として機能するため、モータ電流の極性は反転する。ただし、回転方向自体は、直前の定速回転時と同じである。回転方向判定部F2は、モータ40の駆動を停止している期間においては、モータ電流の極性による回転方向を通常運転時とは逆向きに判定してよい。つまり制動運転中においては、回転方向判定部F2は、モータ電流がマイナス値である場合にはモータ40は正転していると判定し、モータ電流がプラス値である場合には逆転していると判定して良い。
【0064】
惰性回転中のモータ電流の大きさは、回転速度に応じる。惰性回転の回転速度が遅くなるにつれてモータ電流は小さくなっていく。時刻T2の一時停止のタイミングでは、モータ電流は0となる。時刻T2~T3は、反動による反転が生じている期間を表している。反動反転中においても、モータ40の回転速度に応じたモータ電流が流れうる。なお、反動反転時はモータ電流の極性が再び入れ替わる。
【0065】
停止直前などの回転速度が非常に遅い状態(以降、準停止状態とも記載)におけるモータ電流は、判定不能値以下となる。そのため準停止状態で、パルスが発生した場合、モータ電流が小さすぎることに由来して、回転方向判定部F2は、モータ電流から回転方向を判断することが困難となる。また、ノイズ重畳などの影響で、回転方向を誤判定する懸念もある。
【0066】
その結果、位置推定部F3が推定しているウィンドウ位置(以降、推定位置とも記載)が、実際のウィンドウ位置(以降、実際位置とも記載)に対してずれることがある。なお、推定位置と実際位置のずれは、ウィンドウを中間位置で止めた直後だけでなく、その後においても起こりうる。ウィンドウ位置が中間位置で止まっている場合には、走行に伴う振動やガラス上端部71への荷重の作用などにより、ウィンドウ位置は変化しうる。その際のモータ電流は非常に微量であるため、推定位置と実際位置との間のずれが発生/増大しうる。
【0067】
そして、推定位置が実際位置よりも上側にずれている場合、初期位置よりも低い位置で挟み込み防止制御が無効化されうる。換言すれば、本来よりも早いタイミングで挟み込み防止制御が停止しうる。
【0068】
そのような課題に対し、本実施形態のメインコントローラ10は、モータ電流が判定不能値よりも小さい場合にはカウント部F4を有効化し、回転方向を判別できないパルスの数に応じて閉め切り領域を狭める。メインコントローラ10の具体的な作動について
図6を用いて説明する。
【0069】
図6に示すフローチャートは、回転センサ60からパルス信号が入力されたことを受けて実行されて良い。パルス信号の入力(受信)は、立ち上がり/たち下がりの検知と言い換えられて良い。各ステップは何れもプロセッサ11によって実行される。以下の処理の実行主体としてのプロセッサ11との記載は、メインコントローラ10/回転量取得部F1/回転方向判定部F2/位置推定部F3/カウント部F4/ずれ量推定部F5/領域調整部F6/基本制御部F7/モータ制御部F8と言い換えられて良い。
【0070】
プロセッサ11は、回転量取得部F1がパルス信号を受信した場合、ステップS101として、回転方向判定部F2が取得しているモータ電流の情報を参照する。ステップS101が完了すると、処理はステップS102に進む。なお、
図6に示すフローチャートは、ステップS101の上側に、回転センサ60からパルス信号を受信するステップを有していても良い。
【0071】
ステップS102は、電流モニタ50でパルス受信時において検出されているモータ電流の絶対値(つまり大きさ)が判定不能値よりも小さいか否かをプロセッサ11が判定するステップである。
図6中の「|Im|」は、検出されているモータ電流の絶対値を表している。また、「Th」は判定不能値を表している。モータ電流の絶対値が判定不能値以上である場合、処理はステップS103に進む。判定不能値よりも小さい場合、処理はステップS105に進む。
【0072】
ステップS103は、検出されているモータ電流の極性に基づいてプロセッサ11が、モータ40の回転方向を特定するステップである。回転方向を特定することは、ウィンドウ移動方向を特定することに対応する。ステップS103はウィンドウ移動方向を判定するステップと解されて良い。なお、前述の通り、通常運転中か制動運転中かに応じて、モータ電流の極性に対するウィンドウ位置の移動方向の解釈は逆転させてよい。通常運転中である場合には、モータ電流がプラス値であることからウィンドウ移動方向は上方向と判定する構成においては、制動運転中である場合にはモータ電流がプラス値であるからウィンドウ移動方向は下方向と判定してよい。ステップS103が完了すると処理はステップS104に進む。
【0073】
ステップS104は、ステップS103の結果に基づいて定まるウィンドウ移動方向を用いて、ウィンドウの推定位置を更新するステップである。ステップS104では、1パルス分だけ、ウィンドウの推定位置を上げる/下げるステップであってよい。ステップS104が完了すると本フローは終了する。
【0074】
ステップS105は、判定不能パルス数をプロセッサ11が1つ増加させるステップである。ステップS105が完了すると処理はステップS106に進む。ステップS106は判定不能パルス数に基づいて、調整量を算出するステップである。プロセッサ11は、判定不能パルス数をいったんずれ量に変換してから調整量を決定してよい。1パルス当りのずれ量は一定であるため、ステップS106における調整量の増加幅も一定となりうる。ステップS106は、調整量を所定量増加させるステップであってよい。また、プロセッサ11は、ずれ量を算出せずに、判定不能パルス数から調整量を算出しても良い。
【0075】
ステップS107は、ステップS106で算出された境界位置の調整量(dL)が、最大調整量(Lmx)未満であるか否かを判定するステップである。図中の「dL」は、ステップS106で算出された境界位置の調整量、換言すれば調整量の現在値を表している。「Lmx」は最大調整量を表している。
【0076】
調整量の現在値が最大調整量未満である場合(S107 YES)、ステップS108に進み、境界位置を更新する。すなわち、調整量の現在値が最大調整量未満である場合、
図7に示すように初期位置よりも調整量だけ上側となる位置に境界位置を設定する。換言すれば、閉め切り領域のサイズを初期値よりも調整量だけ小さくする。
図7に示すL1aは、初期位置を表しており、L1bは調整後の境界位置を表している。
【0077】
また、ステップS106で算出された調整量が最大調整量以上である場合には(S107 NO)、ステップS109に進み、調整量を最大調整量に設定する。そして、境界位置を、初期位置よりも最大調整量だけ上側となる位置に設定する。換言すれば、閉め切り領域のサイズを初期値よりも最大調整量だけ小さくする。
【0078】
以上の構成によれば、推定位置と実際のウィンドウ位置との間に乖離が生じている場合には、そのずれ量に応じて境界位置が上方にシフトされる。よって、ウィンドウ位置の誤認識によって、挟み込み制御が不作動となる恐れを低減できる。
【0079】
なお、モータ40に複数の回転センサ60を付加した構成によれば、複数の回転センサ60の出力の組み合わせから回転方向が特定できるため、窓ガラスの現在位置を大きく誤認識する恐れを低減できる。一方、複数の回転センサ60を設ける構成では、回転センサの数だけコストが増大しうる。本開示は、コスト抑制又はその他の観点から、回転センサ60が1つしかない構成において好適である。もちろん、本開示は複数の回転センサ60を備える構成に適用されても良い。
【0080】
<補足>
調整量が最大調整量以上である場合、プロセッサ11は初期化制御を実行するように構成されていてよい。その際、プロセッサ11は、ディスプレイ90に初期化制御を実行することを通知するための画像を表示しても良い。
【0081】
また、調整量が最大調整量以上である場合、プロセッサ11は初期化操作の実行を促す案内画像をディスプレイ90に表示しても良い。案内画像は初期化操作の手順を示す情報を含んでいてよい。
図8は当該技術的思想に対応するパワーウィンドウシステム100の構成を示すブロック図である。メインコントローラ10は、機能ブロックとして、案内画像の表示を行う通知部F9を備えていて良い。なお、
図8ではカウント部F4などの一部の構成の図示を省略している。
【0082】
ディスプレイ90は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなど、カラー画像を表示可能な装置であってよい。ディスプレイ90は、インストゥルメントパネルに配置されていても良いし、ドアトリムなどに配置されていても良い。調整量が最大調整量以上である場合に限らず、プロセッサ11は、判定不能パルス数が所定値以上である場合には、初期化操作の実行を促す案内画像をディスプレイ90に表示しても良い。
【0083】
調整量が最大調整量以上である場合、プロセッサ11はウィンドウの移動速度を所定量低下させるように構成されていても良い。当該構成によれば、万が一挟み込みが発生した時の被害を軽減可能となる。調整量が最大調整量以上である場合に限らず、プロセッサ11は、判定不能パルス数が所定値以上である場合には、プロセッサ11はウィンドウの移動速度を所定量低下させるように構成されていても良い。
【0084】
なお、移動速度(換言すれば回転速度)の低下は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって実現されて良い。例えば第1出力又は第2出力をハイレベルに設定する比率(いわゆるデューティー比)を小さくすることによって、移動速度は低減されて良い。また、移動速度の低下は、モータ40への印加電圧を下げることにより実現されてもよい。速度を低下させる範囲は、全開位置から全閉位置までの全領域であってもよいし、全閉位置から所定距離(例えば20mm)以内となる限定領域であってもよい。
【0085】
なお、調整量が最大調整量以上である場合との表現は、判定不能パルス数が所定値以上である場合と言い換えられて良い。ずれ量及び調整量は、判定不能パルス数に応じて定まるパラメータである。そのため、上記の実施形態は、判定不能パルス数に応じて境界位置を調整する構成と解されて良い。ずれ量及び調整量の算出は任意の要素であって省略されても良い。プロセッサ11は、判定不能パルス数が所定値以上である場合には、境界位置を初期位置から所定量、上にシフトさせるように構成されていて良い。
【0086】
また、プロセッサ11は、境界位置を初期位置よりも上側にシフトしている状況において、境界位置付近にて挟み込み防止制御が所定回数繰り返し実行した場合、挟み込み防止制御を無効化してもよい。境界位置付近で挟み込み防止制御が繰り返されているということは、ウェザーストリップ83との接触を挟み込みと誤検出している可能性を示唆する。また、ユーザが窓を閉め切るための操作を繰り返していることを意味する。境界位置を初期位置よりも上側にシフトしている状況において、境界位置付近にて挟み込み防止制御が所定回数繰り返し実行した場合には、挟み込み防止制御を無効化することにより、ユーザの利便性を損なう恐れも低減できる。ここでの所定回数は、2回や3回などであってよい。
【0087】
以上では、モータ電流の絶対値(いわゆる振幅)が判定不能値よりも小さい状況において受信したパルス信号を判定不能パルスとみなす態様を述べた。つまり、電流の絶対値が判定不能値である状況が特定状況に設定されている場合について述べた。ただし、特定状況はこれに限定されない。カウント部F4は、モータ駆動を止めてからの経過時間が、所定のカウント開始時間以上である状態で受信したパルス信号の数を、判定不能パルス数としてカウントするように構成されていても良い。カウント開始時間は、惰性運転が収束していることが期待できる時間に設定されていて良い。カウント開始時間は、試験等によって決定されてよい。特定状況は、ウィンドウが中間位置にある状態で制動運転を開始してからの経過時間がカウント開始時間以上である状況であってもよい。
【0088】
本開示は、パワーウィンドウシステム以外にも、パワースライドドアシステムや、パワーバックドア(パワーリアゲート)システムなどに適用されてよい。つまり、開閉部材は、車両のドア又はトランクドアであってよい。さらに本開示は、車両が備える開閉部材以外にも適用されてよい。建物の窓やドア、シャッター、ゲートの開閉を制御する装置に本開示は適用されて良い。
【0089】
<付言(1)>
本開示には以下の技術的思想も含まれる。また、以下のモータ制御装置に対応するモータ制御方法も本開示の範囲に含まれる。
[技術的思想1]
開閉部材の位置を変更するためのモータを制御するモータ制御部(F8)と、
前記モータに付加されている回転センサから出力されるパルス信号を回転量情報として受信する回転量取得部(F1)と、
モータ電流の極性に基づいて前記モータの回転方向を判定する回転方向判定部(F2)と、
前記回転量取得部が取得した前記回転量情報と前記回転方向判定部が判定した前記回転方向とに基づいて前記開閉部材の位置を推定する位置推定部(F3)と、
前記位置推定部が特定している前記開閉部材の位置が、挟み込み防止制御を実施しない領域である閉め切り領域にあるか否かを判定する領域判定部(F71)と、
前記モータ電流の極性から前記回転方向を判定することが困難である特定状況において受信した前記パルス信号の数を判定不能パルス数としてカウントするカウント部(F4)と、
前記カウント部が保持している前記判定不能パルス数に応じて、前記閉め切り領域の大きさを調整する調整部(F6)と、を備えるモータ制御装置。
[技術的思想2]
前記調整部は、前記カウント部がカウントしている前記判定不能パルス数が大きいほど、前記閉め切り領域を小さくするように構成されている、技術的思想1に記載のモータ制御装置。
[技術的思想3]
前記判定不能パルス数が所定値以上となった場合には、所定の初期化操作の実行を促す通知を行う通知部(F9)をさらに備える、技術的思想1又は2に記載のモータ制御装置。
[技術的思想4]
前記モータ制御部は、前記判定不能パルス数が所定値以上であることに基づいて、前記開閉部材の移動速度を低下させるように構成されている、技術的思想1から3の何れか1つに記載のモータ制御装置。
[技術的思想5]
前記カウント部は、前記モータ電流の大きさが所定値未満である状況において受信した前記パルス信号の数を前記判定不能パルス数としてカウントするように構成されている、技術的思想1から4の何れか1つに記載のモータ制御装置。
[技術的思想6]
前記開閉部材は、車両に設けられた窓ガラスであって、
前記窓ガラスの開閉を制御するパワーウィンドウシステムのための技術的思想1から5の何れか1項に記載のモータ制御装置。
[技術的思想7]
全閉状態において前記窓ガラスが当接する部分にウェザーストリップが設けられた前記パワーウィンドウシステムのための、技術的思想6に記載のモータ制御装置であって、
前記調整部が前記閉め切り領域の大きさを調整可能な範囲を規定する最大調整量は、前記閉め切り領域の境界線の初期位置から、前記ウェザーストリップの先端までの距離に応じた値に設定されているモータ制御装置。
<付言(2)>
本開示に示す種々のフローチャートは何れも一例であって、フローチャートを構成するステップの数や、処理の実行順は適宜変更可能である。各フローチャートに示す制御は矛盾のない範囲で組み合わせて/並列的に実行されてよい。取得、判定、検出、生成、受信、及び算出といった表現は相互に言い換えられて良い。プロセッサ11が或るデータを取得することには、他の装置/センサから入力された信号を元にプロセッサ11が当該データを生成することも含まれる。
【0090】
本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。プロセッサは、CPUや、MPU、GPU、DFP(Data Flow Processor)など、任意の演算コアであってよい。メインコントローラ10が備える機能の一部又は全部は、システムオンチップ(SoC:System-on-Chip)、IC(Integrated Circuit)、及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)の何れかを用いて実現されていてもよい。
【0091】
コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションを含む。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に記憶されていてよい。コンピュータプログラムの記録媒体は、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等、多様な媒体であってよい。
【符号の説明】
【0092】
10 メインコントローラ、11 プロセッサ、30 モータドライバ、40 モータ、50 電流モニタ、60回転センサ、70 窓ガラス(開閉部材)、83 ウェザーストリップ、F1 回転量取得部、F2 回転方向判定部、F3 位置推定部、F4 カウント部、F5 ずれ量推定部、F6 領域調整部(調整部)、F7 基本制御部、F8 モータ制御部、F9 通知部、F71 領域判定部