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特開2024-148083画像記録システム、画像記録装置、画像記録方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148083
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】画像記録システム、画像記録装置、画像記録方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 301
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060998
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB40
2C056EB59
2C056EC53
2C056EC79
(57)【要約】
【課題】画像の記録の開始が遅れるのを抑えつつ、ノズルの異常状態に応じておいて適切に画像を記録する。
【解決手段】プリンタに、複数のノズルの各々について異常ノズルであるか否かを示す第1異常情報が記憶されている。プリンタと通信可能な外部装置に、画像データと、第1異常情報に基づいて取得された、異常ノズルの数N2が所定数Na以上であるか否かを示す第2異常情報とが記憶されている。第2異常情報が示す異常ノズルの数N2が所定数Na未満の場合には(S101:YES)、外部装置において画像データに基づいて吐出データを生成してプリンタに送信する(S102,S103)。第2異常情報が示す異常ノズルの数N2が所定数Na以上の場合には(S101:NO)、外部装置からプリンタに画像データ送信することにより(S104)、プリンタにおいて画像データに基づいて吐出データを生成するようにする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像を記録するヘッドと、前記複数のノズルの各々について液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを示す第1異常情報を記憶する第1記憶部と、第1制御部と、を有する画像記録装置と、
画像データを記憶する第2記憶部と、第2制御部と、を有し、前記画像記録装置と通信可能に構成された外部装置と、を備え、
前記第2制御部は、
前記第2記憶部に記憶されている前記画像データから前記複数のノズルから液体を吐出させるための別のデータを生成し当該別のデータを前記画像記録装置に送信する第1送信処理と、
前記第2記憶部に記憶されている前記画像データから前記別のデータを生成せず、前記画像データを画像記録装置に送信する第2送信処理と、を実行可能であり、
前記第1記憶部に記憶されている前記第1異常情報に基づいて取得した前記複数のノズルの異常状態を示す第2異常情報に応じて、前記第1送信処理を実行するか前記第2送信処理を実行するかを切り換えることを特徴とする画像記録システム。
【請求項2】
前記第2記憶部は、前記第2異常情報として、前記異常ノズルの数が所定数以上であるか否かについての情報を記憶し、
前記第2制御部は、
前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が、前記異常ノズルの数が所定数未満であることを示している場合に、前記第1送信処理を実行し、
前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が、前記異常ノズルの数が前記所定数以上であることを示している場合に、前記第2送信処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像記録システム。
【請求項3】
前記第2制御部は、
所定タイミングに前記画像記録装置と通信することによって前記第2異常情報を取得し、前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報を取得した前記第2異常情報に更新することを特徴とする請求項2に記載の画像記録システム。
【請求項4】
前記所定タイミングは、前記第1送信処理および第2送信処理の少なくともいずれかの後のタイミングであることを特徴とする請求項3に記載の画像記録システム。
【請求項5】
前記所定タイミングは、前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が最後に更新されてから所定時間以上経過した後の、前記第1送信処理および前記第2送信処理の少なくともいずれかの後のタイミングであることを特徴とする請求項4に記載の画像記録システム。
【請求項6】
前記第1制御部は、
前記外部装置から前記第2送信処理により前記画像データを受信したときに、
前記第1記憶部に記憶されている前記第1異常情報が、前記異常ノズルの数が前記所定数以上であることを示している場合に、前記画像データと前記第1異常情報とに基づいて、前記別のデータとして、前記異常ノズルからの液体の吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからの液体の吐出で補完する補完吐出データを生成し、前記補完吐出データに基づいて前記複数のノズルから液体を吐出させて被記録媒体に画像を記録させ、
前記第1記憶部に記憶されている前記第1異常情報が、前記異常ノズルの数が前記所定数未満であることを示している場合に、前記画像データに基づいて、前記別のデータとして、前記異常ノズルからの液体の吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからの液体の吐出で補完しない非補完吐出データを生成し、前記非補完吐出データに基づいて前記複数のノズルから液体を吐出させて被記録媒体に画像を記録させることを特徴とする請求項2に記載の画像記録システム。
【請求項7】
前記第2制御部は、
前記画像記録装置に前記異常ノズルの数が所定数以上であるか否かを問い合わせる問い合わせ信号を送信し、
前記問い合わせ信号に応じて前記画像記録装置から受信した応答信号に基づいて、前記第2異常情報として、前記異常ノズルの数が所定数以上であるか否かについての情報を取得し、
前記第2異常情報が、前記異常ノズルの数が所定数未満であることを示している場合に、前記第1送信処理を実行し、
前記第2異常情報が、前記異常ノズルの数が前記所定数以上であることを示している場合に、前記第2送信処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像記録システム。
【請求項8】
前記第1制御部は、
前記外部装置から受信した前記画像データに基づいて前記別のデータを生成するときに、前記画像データと前記第1異常情報とに基づいて、前記別のデータとして、前記異常ノズルからの液体の吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからの液体の吐出で補完する補完吐出データを生成し、
前記第2制御部は、
前記第2記憶部に記憶された前記画像データに基づいて前記別のデータを生成するときに、前記画像データに基づいて、前記別のデータとして、前記異常ノズルからの液体の吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからの液体の吐出で補完しない非補完吐出データを生成することを特徴とする請求項2または7に記載の画像記録システム。
【請求項9】
前記第2記憶部は、前記第2異常情報として、前記複数のノズルの各々についての前記異常ノズルであるか否かについての情報を記憶し、
前記第2制御部は、
前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が、所定時間前の時点よりも後に記憶された前記第2異常情報である場合に、前記第1送信処理を実行し、
前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が、前記所定時間前の時点またはこれよりも前に記憶された前記第2異常情報である場合に、前記第2送信処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像記録システム。
【請求項10】
前記第2制御部は、
前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が、所定時間前の時点よりも後に記憶された前記第2異常情報であり、且つ、前記異常ノズルの数が前記所定数以上であることを示している場合に、前記画像データと前記第2異常情報とに基づいて、前記別のデータとして、前記異常ノズルからの液体の吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからの液体の吐出で補完する補完吐出データを生成し、
前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が、所定時間前の時点よりも後に記憶された前記異常情報であり、且つ、前記異常ノズルの数が前記所定数未満であることを示している場合に、前記画像データに基づいて、前記別のデータとして、前記異常ノズルからの液体の吐出を前記異常ノズルでない他のノズルからの液体の吐出で補完しない非補完吐出データを生成することを特徴とする請求項9に記載の画像記録システム。
【請求項11】
前記第2記憶部は、前記第2異常情報として、前記複数のノズルの各々についての前記異常ノズルであるか否かについての情報を記憶し、
前記第2制御部は、
前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が最新の前記第2異常情報である場合に、前記第1送信処理を実行し、
前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が最新の前記第2異常情報でない場合に、前記第2送信処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像記録システム。
【請求項12】
前記第2制御部は、
前記外部装置が前記画像記録装置と通信可能となったときに、前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が最新の前記第2異常情報であるか否かを問い合わせるための問い合わせ信号を前記画像記録装置に送信することを特徴とする請求項11に記載の画像記録システム。
【請求項13】
前記第2制御部は、
前記問い合わせ信号に応じて前記画像記録装置から受信した応答信号が、前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が最新の前記異常情報でないことを示している場合に、前記第1記憶部に記憶されている前記第1異常情報に基づいて前記第2異常情報を取得して前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報を更新し、
前記第2異常情報の取得が完了した後である場合に、前記第1送信処理を実行し、
前記第2異常情報の取得が完了する前である場合に、前記第2送信処理を実行することを特徴とする請求項12に記載の画像記録システム。
【請求項14】
前記第2制御部は、
前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が、所定時間前の時点よりも後に記憶された前記第2異常情報である場合に、前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が最新の前記第2異常情報であるとして、前記第1送信処理を実行し、
前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が、前記所定時間前の時点またはこれよりも前に記憶された前記第2異常情報である場合に、前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が最新の前記第2異常情報でないとして、前記第2送信処理を実行することを特徴とする請求項11に記載の画像記録システム。
【請求項15】
前記第2制御部は、
前記第2記憶部に記憶されている前記第2異常情報が、前記所定時間前の時点またはこれよりも前に記憶された前記第2異常情報である場合に、前記第1記憶部に記憶されている前記第1異常情報に基づいて前記第2異常情報を取得して前記第2記憶部に記憶されている前記第2情報を更新し、
前記第2異常情報の取得が完了した後である場合に、前記第1送信処理を実行し、
前記異常情報の取得が完了する前である場合に、前記第2送信処理を実行することを特徴とする請求項14に記載の画像記録システム。
【請求項16】
複数のノズルを有し前記複数のノズルから液体を吐出するヘッドと、
前記複数のノズルの各々について液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを示す異常情報を記憶する第1記憶部と、
画像データ、および、前記第1記憶部から取得した前記異常情報を記憶する第2記憶部を有する外部装置と通信するための通信部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第2記憶部に記憶されている前記異常情報が最新の前記異常情報であるか否かを問い合わせる問い合わせ信号を前記外部装置から受信したときに、前記第2記憶部に記憶されている前記異常情報が最新の前記異常情報であるか否かを示す応答信号を前記外部装置に送信し、
前記第2記憶部に記憶されている前記異常情報が最新の前記異常情報であることを示す前記応答信号を前記外部装置に送信したときには、その後に、前記外部装置において前記画像データから生成された、前記複数のノズルから液体を吐出させるための別のデータを受信したときに、当該別のデータに基づいて前記ヘッドに前記複数のノズルから液体を吐出させることによって被記録媒体に画像を記録させ、
前記第2記憶部に記憶されている前記異常情報が最新の前記異常情報でないことを示す前記応答信号を前記外部装置に送信したときには、その後に、前記外部装置から前記画像データを受信したときに、前記画像データから前記別のデータを生成し当該吐出データに基づいて前記ヘッドに前記複数のノズルから液体を吐出させることによって被記録媒体に画像を記録させることを特徴とする画像記録装置。
【請求項17】
複数のノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像を記録するヘッドと、前記複数のノズルの各々について液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを示す第1異常情報を記憶する第1記憶部と、を有する画像記録装置と、
画像データを記憶する第2記憶部を有し、前記画像記録装置と通信可能に構成された外部装置と、を備えた画像記録システムにおいて被記録媒体に画像を記録する画像記録方法であって、
前記第1記憶部に記憶されている前記第1異常情報に基づいて取得した前記ノズルの異常状態を示す第2異常情報に応じて、前記外部装置において、前記第2記憶部に記憶されている前記画像データから前記複数のノズルから液体を吐出させるための別のデータを生成し当該別のデータを前記画像記録装置に送信するか、前記第2記憶部に記憶されている前記画像データから前記吐出データを生成せず前記画像データを画像記録装置に送信するか、を切り換えることを特徴とする画像記録方法。
【請求項18】
複数のノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像を記録するヘッドと、前記複数のノズルの各々について液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを示す第1異常情報を記憶する第1記憶部と、を有する画像記録装置と、
画像データを記憶する第2記憶部、を有し、前記画像記録装置と通信可能に構成された外部装置と、を備えた画像記録システムにおいて、
前記外部装置を制御するコンピュータに、
前記第2記憶部に記憶されている前記画像データから前記複数のノズルから液体を吐出させるための吐出データを生成し当該吐出データを前記画像記録装置に送信する第1送信処理と、
前記第2記憶部に記憶されている前記画像データから前記別のデータを生成せず、前記画像データを画像記録装置に送信する第2送信処理と、を実行させることが可能であり、
前記第1記憶部に記憶されている前記第1異常情報に基づいて取得した前記ノズルの異常状態を示す第2異常情報に応じて、前記第1送信処理を実行させるか前記第2送信処理を実行させるかを切り換えることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像を記録する画像記録システム、画像記録装置、画像記録方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像を記録する画像記録システムの一例として、特許文献1には、複数のノズルからインクを吐出して記録用紙に画像を記録するプリンタと、プリンタと通信可能に接続されたホストコンピュータとを備えたシステムが記載されている。特許文献1に記載のシステムでは、ホストコンピュータのプリンタドライバが、記録する画像の画像データを、画像処理するなどしてプリンタが解釈可能なコマンドに変換し、プリンタに送信する。プリンタでは、コマンド解釈部が、ホストコンピュータから受信したコマンドを解釈し、コマンドにしたがった処理をプリンタの各部に実行させることによって記録用紙に画像を記録させる。また、特許文献1に記載のシステムでは、プリンタが、目詰まりのある目詰まりノズルを特定し、目詰まりノズルを示す情報をホストコンピュータに送信することにより、目詰まりのあるノズルからのインクの吐出を目詰まりのないノズルからのインクの吐出で補完して画像を記録することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-343035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載のシステムでは、上記の通り、ホストコンピュータのプリンタドライバが、画像データを変換したコマンドをプリンタに送信し、プリンタはホストコンピュータからのコマンドに応じてノズルからインクを吐出して記録用紙に画像を記録する。そのため、特許文献1に記載のシステムにおいて、目詰まりのあるノズルからのインクの吐出を目詰まりのないノズルからのインクの吐出で補完して画像を記録するときには、ホストコンピュータは、プリンタから受信した目詰まりノズルを示す情報に基づいて画像データを上記コマンドに変換することになる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムでは、例えば、ホストコンピュータとプリンタとの通信がされていない状態がある程度長く続いた後に、ホストコンピュータとプリンタとの通信が再開され、その後すぐに画像を記録する場合、ホストコンピュータに記憶されている目詰まりノズルを示す情報が古く、実際に目詰まりのあるノズルを正確に示していないことがある。そのため、この古い情報に基づいて画像データを上記コマンドに変換してプリンタに画像を記録させると、記録される画像の画質が低下してしまう虞がある。一方、一般にプリンタにおけるノズルの数は多いため、目詰まりノズルを示す情報のデータ量はある程度大きい。そのため、ホストコンピュータとプリンタとの通信が再開されたときに、プリンタからホストコンピュータに目詰まりノズルを示す情報を送信すると、ホストコンピュータにおいて目詰まりノズルを示す情報の受信が完了するまでの時間が長くなる。その結果、ホストコンピュータにおいて目詰まりノズルを示す情報の受信が完了してから、情報に基づいて画像データを上記コマンドに変換してプリンタに画像を記録させると、記録の開始が遅れてしまう。
【0006】
本発明の目的は、画像の記録の開始が遅れるのを抑えつつ、ノズルの異常状態に応じて適切に画像を記録することが可能な画像記録システム、画像記録装置、画像記録方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像記録システムは、複数のノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像を記録するヘッドと、前記複数のノズルの各々について液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを示す第1異常情報を記憶する第1記憶部と、第1制御部と、を有する画像記録装置と、画像データを記憶する第2記憶部と、第2制御部と、を有し、前記画像記録装置と通信可能に構成された外部装置と、を備え、前記第2制御部は、前記第2記憶部に記憶されている前記画像データから前記複数のノズルから液体を吐出させるための別のデータを生成し当該別のデータを前記画像記録装置に送信する第1送信処理と、前記第2記憶部に記憶されている前記画像データから前記別のデータを生成せず、前記画像データを画像記録装置に送信する第2送信処理と、を実行可能であり、前記第1記憶部に記憶されている前記第1異常情報に基づいて取得した前記複数のノズルの異常状態を示す第2異常情報に応じて、前記第1送信処理を実行するか前記第2送信処理を実行するかを切り換える。
【0008】
本発明の画像記録装置は、複数のノズルを有し前記複数のノズルから液体を吐出するヘッドと、前記複数のノズルの各々について液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを示す異常情報を記憶する第1記憶部と、画像データ、および、前記第1記憶部から取得した前記異常情報を記憶する第2記憶部を有する外部装置と通信するための通信部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2記憶部に記憶されている前記異常情報が最新の前記異常情報であるか否かを問い合わせる問い合わせ信号を前記外部装置から受信したときに、前記第2記憶部に記憶されている前記異常情報が最新の前記異常情報であるか否かを示す応答信号を前記外部装置に送信し、前記第2記憶部に記憶されている前記異常情報が最新の前記異常情報であることを示す前記応答信号を前記外部装置に送信したときには、その後に、前記外部装置において前記画像データに基づいて生成された、前記複数のノズルから液体を吐出させるための別のデータを受信したときに、当該別のデータに基づいて前記ヘッドに前記複数のノズルから液体を吐出させることによって被記録媒体に画像を記録させ、前記第2記憶部に記憶されている前記異常情報が最新の前記異常情報でないことを示す前記応答信号を前記外部装置に送信したときには、その後に、前記外部装置から前記画像データを受信したときに、前記画像データから前記別のデータを生成し当該吐出データに基づいて前記ヘッドに前記複数のノズルから液体を吐出させることによって被記録媒体に画像を記録させる。
【0009】
本発明の画像記録方法は、複数のノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像を記録するヘッドと、前記複数のノズルの各々について液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを示す第1異常情報を記憶する第1記憶部と、を有する画像記録装置と、画像データを記憶する第2記憶部を有し、前記画像記録装置と通信可能に構成された外部装置と、を備えた画像記録システムにおいて被記録媒体に画像を記録する画像記録方法であって、前記第1記憶部に記憶されている前記第1異常情報に基づいて取得した前記ノズルの異常状態を示す第2異常情報に応じて、前記外部装置において、前記第2記憶部に記憶されている前記画像データから前記複数のノズルから液体を吐出させるための別のデータを生成し当該別のデータを前記画像記録装置に送信するか、前記第2記憶部に記憶されている前記画像データから前記吐出データを生成せず前記画像データを画像記録装置に送信するか、を切り換える。
【0010】
本発明のプログラムは、複数のノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像を記録するヘッドと、前記複数のノズルの各々について液体の吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを示す第1異常情報を記憶する第1記憶部と、を有する画像記録装置と、画像データを記憶する第2記憶部、を有し、前記画像記録装置と通信可能に構成された外部装置と、を備えた画像記録システムにおいて、前記外部装置を制御するコンピュータに、前記第2記憶部に記憶されている前記画像データから前記複数のノズルから液体を吐出させるための吐出データを生成し当該吐出データを前記画像記録装置に送信する第1送信処理と、前記第2記憶部に記憶されている前記画像データから前記別のデータを生成せず、前記画像データを画像記録装置に送信する第2送信処理と、を実行させることが可能であり、前記第1記憶部に記憶されている前記第1異常情報に基づいて取得した前記ノズルの異常状態を示す第2異常情報に応じて、前記第1送信処理を実行させるか前記第2送信処理を実行させるかを切り換える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、外部装置が取得した第2異常情報に応じて、第1送信処理を実行するか第2送信処理を実行するかを切り換える。これにより、外部装置において、画像データに基づいて、画像記録装置におけるノズルの異常状態に応じて適切な吐出データを生成できる場合には、一般に画像記録装置よりも処理能力の高い外部装置において吐出データを生成して画像記録装置に送信し、画像記録装置において、この吐出データに基づいて画像を記録することができる。その結果、画像記録装置において画像データに基づいて吐出データを生成する場合と比較して、画像記録装置において記録が開始されるのを早くすることができる。
【0012】
一方、外部装置において、画像データに基づいて、画像記録装置におけるノズルの異常状態に応じて適切な吐出データを生成できない場合には、外部装置から画像記録装置に画像データを送信することにより、画像記録装置において吐出データを生成して画像を記録することができる。その結果、画像記録装置から外部装置に第1異常情報を送信してから、外部装置において画像データに基づいて吐出データを生成して吐出データを画像記録装置に送信する場合と比較して、画像記録装置において記録が開始されるのを早くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の画像記録システムの概略構成図である。
図2】プリンタのキャップ内に配置された電極およびこの電極に電圧を印加するための構成を説明するための図である。
図3】(a)はノズルから正常にインクが吐出された場合に信号処理回路から出力される信号を説明するための図であり、(b)はノズルからのインクの吐出量が少ない場合に信号処理回路から出力される信号を説明するための図である。
図4】画像記録システムの電気的構成を示すブロック図である。
図5】外部装置の制御部の、記録指示を受信したときの処理の流れを示すフローチャートである。
図6】プリンタの制御部の、吐出データおよび画像データのいずれかを受信したとき処理の流れを示すフローチャートである。
図7】(a)が非補完記録を説明するための図であり、(b)が補完記録を説明するための図である。
図8】プリンタの制御部の、画像データを受信したときに補完吐出データを生成するか非補完吐出データを生成するかを切り換える例における処理の流れを示すフローチャートである。
図9】外部装置の制御部の、異常ノズルの数が所定数未満であるか否かを問い合わせる問い合わせ信号に対するプリンタからの応答信号に基づいて異常ノズルの数が所定数未満であるか否かを判断する例における処理の流れを示すフローチャートである。
図10】外部装置の制御部の、第2異常情報が最新のものであるか否かを問い合わせる問い合わせ信号に対するプリンタからの応答信号に基づいて第2異常情報が最新であるか否かを判断する例における処理の流れを示すフローチャートである。
図11】プリンタの制御部の、外部装置からの第2異常情報が最新のものであるか否かを問い合わせる問い合わせ信号に対して応答信号を外部装置に送信する例における処理の流れを示すフローチャートである。
図12】外部装置の制御部の、第2異常情報が所定時間前の時点よりも後に記憶されたものであるか否かに応じて、外部装置に吐出データを送信するか画像データを送信するかを切り換える例における処理の流れを示すフローチャートである。
図13】外部装置の制御部の、第2異常情報が最新のものでない場合にすぐに第2異常情報を更新する例における処理の流れを示すフローチャートである。
図14】外部装置の制御部の、第2異常情報が最新のものでない場合にすぐには第2異常情報を更新しない例における処理の流れを示すフローチャートである。
図15】(a)は解像度を変更する補完記録を説明するための図であり、(b)は異常ノズルに隣接するノズルからのインクの吐出量を多くする補完記録を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0015】
<プリンタの全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係る画像記録システム1は、プリンタ2と、外部装置3とを備えている。プリンタ2は後述する複数のノズル10からインクを吐出させて画像の記録を行うインクジェットプリンタである。外部装置3は、例えばPC、スマートフォン等のプリンタ2と通信可能な装置である。なお、本実施形態では、プリンタ2が本発明の「画像記録装置」に相当する。
【0016】
プリンタ2は、キャリッジ11、インクジェットヘッド12、プラテン13、搬送ローラ14,15、メンテナンスユニット16などを備えている。なお、本実施形態では、インクジェットヘッド12が、本発明の「ヘッド」に相当する。
【0017】
キャリッジ11は、走査方向に延びた2本のガイドレール21,22に支持されている。なお、以下では、図1に示すように、走査方向の右側および左側を定義して説明を行う。キャリッジ11は、図示しないベルトなどを介して、図4に示すキャリッジモータ86に接続されている。キャリッジモータ86を駆動させると、キャリッジ11がガイドレール21,22に沿って走査方向に移動する。
【0018】
インクジェットヘッド12は、キャリッジ11に搭載されている。インクジェットヘッド12には、図示しないインクカートリッジからブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のインクが供給される。また、インクジェットヘッド12は、その下面であるノズル面12aに形成された複数のノズル10からインクを吐出する。より詳細に説明すると、複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列9を形成しており、ノズル面12aにおいて、4列のノズル列9が走査方向に並んでいる。複数のノズル10からは、走査方向の右側のノズル列9を構成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
【0019】
プラテン13は、インクジェットヘッド12の下方に配置され、複数のノズル10と対向している。プラテン13は、走査方向に記録用紙Sの全長にわたって延び、記録用紙Sを下方から支持する。搬送ローラ14は、インクジェットヘッド12およびプラテン13よりも搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ15は、インクジェットヘッド12およびプラテン13よりも搬送方向の下流側に配置されている。搬送ローラ14,15は、図示しないギヤなどを介して図4に示す搬送モータ87に接続されている。搬送モータ87を駆動させると、搬送ローラ14,15が回転し、記録用紙Sが搬送方向に搬送される。なお、本実施形態では、記録用紙Sが、本発明の「被記録媒体」に相当する。
【0020】
メンテナンスユニット16は、キャップ71と、吸引ポンプ72と、廃液タンク73とを備えている。キャップ71は、プラテン13よりも走査方向の右側に配置されている。そして、キャリッジ11を、プラテン13よりも走査方向の右側のメンテナンス位置に位置させると、複数のノズル10がキャップ71と対向する。
【0021】
また、キャップ71は、図4に示すキャップ昇降機構88に接続されている。キャップ昇降機構88を駆動させると、キャップ71が昇降する。キャリッジ11を上記メンテナンス位置に位置させることによって複数のノズル10とキャップ71とを対向させた状態で、キャップ昇降機構88によりキャップ71を上昇させると、キャップ71の上端部がノズル面12aに密着し、複数のノズル10がキャップ71に覆われるキャップ状態となる。キャップ71を降下させた状態では、複数のノズル10がキャップ71に覆われない。なお、キャップ71はノズル面12aに密着することで複数のノズル10を覆うものであることには限られない。キャップ71は、例えば、インクジェットヘッド12のノズル面12aの周囲に配置される図示しないフレーム等に密着することで、複数のノズル10を覆うものであってもよい。
【0022】
吸引ポンプ72はチューブポンプなどであり、キャップ71および廃液タンク73と接続されている。そして、メンテナンスユニット16では、上記キャップ状態で吸引ポンプ72を駆動させると、複数のノズル10からインクジェットヘッド12内のインクを排出させる、いわゆる吸引パージを行うことができる。吸引パージによって排出されたインクは廃液タンク73に貯留される。
【0023】
なお、ここでは、便宜上、キャップ71が全てのノズル10をまとめて覆い、吸引パージにおいて、全てのノズル10からインクジェットヘッド12内のインクを排出させるものとして説明を行ったが、これには限られない。例えば、キャップ71が、ブラックインクを吐出する最も右側のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分と、カラーインクを吐出する左側3列のノズル列9を構成する複数のノズル10を覆う部分とを別々に備えており、吸引パージにおいて、インクジェットヘッド12内のブラックインクおよびカラーインクのいずれかを選択的に排出させることができるようになっていてもよい。あるいは、例えば、キャップ71が、ノズル列9毎に個別に設けられ、吸引パージにおいて、ノズル列9毎に個別に、ノズル10からインクを排出させることができるようになっていてもよい。
【0024】
また、図2に示すように、キャップ71内には、矩形の平面形状を有する電極76が配置されている。電極76は、抵抗79を介して高電圧電源回路77に接続されている。そして、高電圧電源回路77は、電極76に例えば600V程度の所定電圧を印加する。一方で、インクジェットヘッド12は、グランド電位に保持されている。これにより、インクジェットヘッド12と電極76との間に電位差が生じる。電極76には、信号処理回路78が接続されている。信号処理回路78は、微分回路などを含み、電極76の電圧に応じた信号を出力する。ただし、信号処理回路78から出力される信号は、電流の信号であってもよい。
【0025】
上記キャップ状態としたうえで、高電圧電源回路77により電極76に所定電圧を印加させ、かつ、後述する検査用駆動を行わせていない状態では、信号処理回路78から出力される信号の電圧は、図3(a)、(b)に示す電圧V0となる。
【0026】
また、本実施形態では、上記キャップ状態としたうえで、高電圧電源回路77により電極76に電圧を印加させた状態で、インクジェットヘッド12に、ノズル10から電極76に向けてインクを吐出させるための吐出駆動を行わせることができる。
【0027】
吐出駆動によってノズル10からインクが吐出された場合、電極76とインクジェットヘッド12との電位差により、吐出されたインクは帯電している。そのため、帯電したインクが電極76に近づき、電極76にインクが着弾するまで、電極76の電位が変化する。そして、帯電したインクが電極76に着弾した後、電極76の電位が減衰しながらインクの吐出前の電位に戻る。
【0028】
これにより、吐出駆動によってノズル10からインクが正常に吐出された場合には、信号処理回路78から出力される信号は、図3(a)に示すように、電圧V0から、電圧V0よりも高い電圧V1まで上昇し、その後、電圧V0よりも低い電圧V2まで低下し、その後、減衰しながら上昇と低下とを繰り返して電圧V0に戻る。
【0029】
一方、ノズル10に異常があり、吐出駆動によってノズル10から吐出されるインク量が正常時よりも少ない場合には、図3(b)に示すように、ノズル10から正常にインクが吐出されたときよりも信号処理回路78から出力される信号の変化が小さい。ここで、ノズル10から正常にインクが吐出されたときよりもインクの吐出量が少ないことは、インクが吐出されないことも含む。吐出駆動によってノズル10からインクが吐出されない場合には信号処理回路78から出力される信号は電圧V0からほとんど変化しない。
【0030】
このように、本実施形態では、吐出駆動を行わせたときにノズル10から正常にインクが吐出されたか否かによって、信号処理回路78から出力される信号が異なる。そして、本実施形態では、このことを利用して、ノズル10が、インクの吐出に異常のある異常ノズルであるか否かを判定することができる。
【0031】
ここで、本実施形態では、電極76に所定電圧を印加し、インクジェットヘッド12をグランド電位に保持し、信号処理回路78が電極76の電圧に応じた信号を出力するように構成したが、これには限られない。電極76をグランド電位に保持し、インクジェットヘッド12に所定電圧を印加することによって、電極76とインクジェットヘッド12との間に電位差を生じさせ、信号処理回路78が、インクジェットヘッド12に接続され、インクジェットヘッド12の電圧に応じた信号を出力するように構成してもよい。
【0032】
<プリンタおよび外部装置の電気的構成>
次に、画像記録装置1を構成するプリンタ2および外部装置3の電気的構成について説明する。図4に示すように、プリンタ2は、制御部80を備えている。制御部80は、CPU81、ROM82、RAM83、フラッシュメモリ84、ASIC85などからなる。制御部80は、キャリッジモータ86、インクジェットヘッド12、搬送モータ87、キャップ昇降機構88、吸引ポンプ72、高電圧電源回路77、信号処理回路78などを制御する。外部装置3は、制御部90を備えている。制御部90は、CPU91、ROM92、RAM93、フラッシュメモリ94などからなる。なお、CPUはCentral Processing Unitの略語である。ROMはRead Only Memoryの略語である。RAMはRandom Access Memoryの略語である。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略語である。また、本実施形態では、プリンタ2の制御部80が本発明の「第1制御部」に相当し、外部装置3の制御部90が本発明の「第2制御部」に相当する。また、本実施形態では、プリンタ2のフラッシュメモリ84が本発明の「第1記憶部」に相当し、外部装置3のフラッシュメモリ94が本発明の「第2記憶部」に相当する。
【0033】
また、プリンタ2は、以上に説明した構成のほかに通信部69を備えている。また、外部装置3は、通信部99を備えている。プリンタ2の通信部69と外部装置3の通信部99とは、有線または無線によって通信可能に接続されている。これにより、プリンタ2と外部装置3とが通信可能となる。また、プリンタ2において制御部80が通信部69を制御し、外部装置3において制御部90が通信部99を制御する。
【0034】
なお、プリンタ2の制御部80は、CPU81のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC85のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU81とASIC85とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御部80は、1つのCPU81が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU81が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部80は、1つのASIC85が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC85が処理を分担して行うものであってもよい。また、外部装置3の制御部90は、1つのCPU91が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU91が処理を分担して行うものであってもよい。
【0035】
<第1異常情報>
本実施形態では、プリンタ2において、制御部80が、キャリッジモータ86、キャップ昇降機構88、吸引ポンプ72等を制御して、上記キャップ状態でインクジェットヘッド12の複数のノズル10の各々について吐出駆動を行わせる。そして、制御部80は、各吐出駆動が行われたときに信号処理回路78から出力される信号に基づいて、インクジェットヘッド12の複数のノズル10の各々について、異常ノズルであるか否かを示す第1異常情報をフラッシュメモリ84に記憶させる。例えば、所定時刻となったときや記録前や記録後、所定枚数記録をしたときなどのノズルの状態確認が必要になったときに、制御部80が上記動作を行わせる。あるいは、例えば、ユーザによりプリンタ2または外部装置3の図示しない操作部においてノズル10の検査を行うことを指示する操作が行われたときに、制御部80が上記動作を行わせる。あるいは、プリンタ2において所定のエラーが発生し、その後そのエラーが解消したときに、制御部80が上記動作を行わせる。
【0036】
<第2異常情報>
本実施形態では、外部装置3のフラッシュメモリ94に、インクジェットヘッド12の複数のノズル10における異常ノズルの数N2が所定数Na以上であるか否かを示す第2異常情報が記憶されている。ここで、所定数Naは1であってもよいし、2以上であってもよい。フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報は、例えば、最初にプリンタ2と通信可能となる前の状態では、インクジェットヘッド12の全てのノズル10が異常ノズルでないことを示しており、後述する更新処理において、プリンタ2のフラッシュメモリ84に記憶されている第1異常情報に基づいて更新される。
【0037】
<画像データ>
また、本実施形態では、外部装置3のフラッシュメモリ94に、プリンタ2で記録するための画像の画像データが記憶されている。
【0038】
<記録時の制御>
次に、画像記録システム1において、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている画像データに対応する画像を、プリンタ2で記録用紙Sに記録するために制御部80,90が行う処理について説明する。外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている画像データに対応する画像を、プリンタ2で記録用紙Sに記録するために、外部装置3の制御部90が、図5のフローチャートに沿って処理を行い、プリンタ2の制御部80が、図6のフローチャートに沿って処理を行う。本実施形態では、外部装置3のフラッシュメモリ94に、制御部90に図5のフローチャートに沿って処理を行わせるためのプログラムが記憶されている。また、プリンタ2のフラッシュメモリ84に、制御部80に図6のフローチャートに沿って処理を行わせるためのプログラムが記憶されている。
【0039】
図5のフローチャートについて詳細に説明する。図5のフローチャートは、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている画像データに対応する画像を、プリンタ2で記録用紙Sに記録することを指示する記録指示を、外部装置3の制御部90が受信したときに開始される。例えば、プリンタ2と外部装置3とが通信可能な状態で、ユーザにより外部装置3の図示しない操作部において、フラッシュメモリ94に記憶されている画像データに対応する画像を記録することを指示する操作が行われたときに、制御部90が、この操作に基づいて記録指示を受信する。
【0040】
記録指示を受信したときに、制御部90は、まず、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報に基づいて、異常ノズルの数N2が所定数Na未満であるか否かを判断する(S101)。異常ノズルの数N2が所定数Na未満である場合(S101:YES)、制御部90は、フラッシュメモリ94に記憶されている画像データから非補完吐出データを生成し(S102)、生成した非補完吐出データをプリンタ2に送信し(S103)、S105に進む。非補完吐出データは、異常ノズルからのインクの吐出を異常ノズルでない別のノズル10からのインクの吐出で補完しないように記録を行うときに、インクジェットヘッド12に複数のノズル10からインクを吐出させるためのデータである。なお、本実施形態では、S102の非補完吐出データを生成する処理と、S103の非補完吐出データをプリンタ2に送信する処理とを合わせたものが、本発明の「第1送信処理」に相当する。
【0041】
異常ノズルの数N2が所定数Na以上である場合(S101:NO)、制御部90は、非補完吐出データを生成せず、フラッシュメモリ94に記憶されている画像データをプリンタ2に送信し(S104)、S105に進む。なお、本実施形態では、S104の非補完吐出データを生成せずに画像データをプリンタ2に送信する処理が、本発明の「第2送信処理」に相当する。
【0042】
S105において、制御部90は、プリンタ2から記録が完了したことを示す記録完了信号を受信したか否かを判断する。そして、制御部90は、記録完了信号を受信するまで待機する(S105:NO)。記録完了信号を受信したときに(S105:YES)、制御部90は、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最後に更新されてから所定時間が経過しているか否かを判断する(S106)。フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最後に更新されてから所定時間が経過していない場合には(S106:NO)、そのまま処理が終了する。
【0043】
フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最後に更新されてから所定時間が経過している場合には(S106:YES)、制御部90が更新処理を実行し(S107)、処理が終了する。S107の更新処理において、制御部90は、プリンタ2のフラッシュメモリ84に記憶されている第1異常情報に基づいて第2異常情報を取得して、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報を、取得した第2異常情報に更新する。
【0044】
図6のフローチャートについて詳細に説明する。図6のフローチャートは、プリンタ2が、上述のS103の処理により外部装置3から送信された非補完吐出データ、および、上述のS104の処理により外部装置3から送信された画像データのいずれかを受信したときに開始される。
【0045】
制御部80は、まず、受信したデータが画像データであるか否かを判断する(S201)。受信したデータが画像データである場合(S201:YES)、制御部80は、受信した画像データに基づいて補完吐出データを生成し(S202)、S203に進む。補完吐出データは、異常ノズルからのインクの吐出を異常ノズルでない別のノズル10からのインクの吐出で補完するように記録を行うときに、インクジェットヘッド12に複数のノズル10からインクを吐出させるためのデータである。なお、本実施形態では、非補完吐出データおよび補完吐出データが、それぞれ、本発明の「別のデータ」に相当する。受信したデータが非補完吐出データである場合(S201:NO)は、処理はそのままS203に進む。
【0046】
S203において、制御部80は、記録処理を実行する。記録処理において、制御部80は、キャリッジモータ86を制御してキャリッジ11を走査方向に移動させつつ、インクジェットヘッド12を制御して複数のノズル10から記録用紙Sに向けてインクを吐出させる記録パスと、搬送モータ87を制御して搬送ローラ14,15に記録用紙Sを搬送させる搬送動作とを繰り返し行わせることによって、記録用紙Sへの画像の記録を行わせる。
【0047】
このとき、外部装置3から非補完吐出データを受信している場合には、制御部80は、記録パスにおいて、非補完吐出データに基づいて複数のノズル10からインクを吐出させる非補完記録を行わせる。一方、外部装置3から画像データを受信し、S302で補完吐出データを生成した場合には、制御部80は、記録パスにおいて、補完吐出データに基づいて複数のノズル10からインクを吐出させる補完記録を行わせる。非補完記録および補完記録については後ほど説明する。
【0048】
S203の記録処理による記録用紙Sへの画像の記録が完了した後、制御部80は、画像の記録が完了したことを示す記録完了信号を外部装置3に送信し(S204)、処理を終了する。
【0049】
<非補完記録および補完記録>
S203の記録処理で行わせる非補完記録および補完記録について説明する。非補完記録を行う場合、制御部80は、記録パスにおいて、図7(a)に示すように、複数の画素が走査方向に並ぶことによって形成される1つのラスタラインRを、1回の記録パスによって形成させる。これにより、非補完記録によって記録された画像において、1つのラスタラインRを形成する複数の画素Gは、すべて1つのノズル10から吐出されたインクによって形成されたものとなる。上述の非補完吐出データは、複数の画素Gがこのように配置されるように複数のノズル10からインクを吐出させるためのデータである。
【0050】
また、非補完記録を行う場合、制御部80は、搬送動作において、記録用紙Sを搬送量B1搬送させる。搬送量B1は、搬送方向におけるノズル列9の長さに対応している。ここで、図7(a)では、Kを1以上の整数として、K番目の記録パスで形成される画素Gと、(K+1)番目の記録パスで形成される画素Gとを示している。
【0051】
なお、図7(a)では、ハッチングを付した画素Gが各記録パスで形成される画素Gを示し、ハッチングを付していない画素Gが、それまでの記録パスで形成された画素Gを示している。後述する図15(a)、(b)においても同様である。
【0052】
異常ノズルがない状態で非補完記録を行った場合、問題なく画像を記録することができるが、異常ノズルがある状態で非補完記録を行うと、異常ノズルに対応する1つのラスタラインRを形成するすべての画素Gが形成されないことになり、記録される画像に、走査方向に延びた白スジWが発生する。白スジWとは、画素Gが形成されないことによって記録用紙Sが露出する走査方向に画像の全長にわたって延びる直線状の領域のことである。異常ノズルの数が多いときほど、白スジWの数が多くなる、あるいは、白スジWの搬送方向の長さが長くなる。その結果、画質の低下が目立ちやすい。
【0053】
なお、図7(a)では、×を付けたノズル10が異常ノズルを示し、破線で示す画素Gが、異常ノズルに対応する形成されない画素Gを示している。後述する図15(a)、(b)においても同様である。
【0054】
補完記録を行わせる場合、制御部80は、図7(b)に示すように、搬送動作での記録用紙Sの搬送量を、搬送量B1の3分の1の搬送量B2とし、各記録パスにおいて、ノズル10からインクを吐出させることによって、ラスタラインRを形成する複数の画素Gのうち約3分の1の画素Gのみを形成させる補完記録を行わせる。これにより、補完記録では、1つのラスタラインRが3回の記録パスで形成され、1つのラスタラインRを形成する複数の画素Gが3つの異なるノズル10から吐出されたインクによって形成される。上述の補完吐出データは、複数の画素Gがこのように配置されるように複数のノズル10からインクを吐出させるためのデータである。
【0055】
そして、この場合には、1つのラスタラインRを形成するのに使用する3つのノズル10のうち1つまたは2つのノズル10が異常ノズルであっても、これら3つのノズル10のうち異常ノズルでない残りのノズル10からインクが吐出されることにより、ラスタラインRを形成する複数の画素Gのうち、異常ノズルでないノズル10に対応する画素Gが形成される。したがって、記録される画像に上述したような記録される画像の走査方向における全長にわたって延びる白スジWが発生しにくく、画質の低下を目立ちにくくすることができる。ただし、補完記録により記録を行う場合には、非補完記録により記録を行う場合より、記録パスの回数が多くなるため、記録時間が長くなる。
【0056】
このように、本実施形態では、補完記録において、非補完記録で記録を行う場合に異常ノズルに対応するラスタラインRを形成する複数の画素Gの一部が、異常ノズルでない他のノズル10から吐出されるインクによって形成される。すなわち、異常ノズルからのインクの吐出が、異常ノズルでない他のノズル10からのインクの吐出によって補完される。
【0057】
<効果>
本実施形態では、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶された第2異常情報が示す異常ノズルの数N2が所定数Na未満であるか否かに応じて、プリンタ2に非補完吐出データを送信するか画像データを送信するかを切り換える。これにより、インクジェットヘッド12における異常ノズルの数が少なく、外部装置3において、画像データに基づいて、インクジェットヘッド12におけるノズル10の異常状態に応じて適切な吐出データを生成できる場合には、一般にプリンタ2の制御部80よりも処理能力の高い外部装置3の制御部90において非補完吐出データを生成することができる。その結果、プリンタ2の制御部80において画像データに基づいて吐出データを生成する場合と比較して、プリンタ2において記録が開始されるのを早くすることができる。また、この場合には、異常ノズルの数が少ないため、非補完吐出データに基づいて記録を行っても、記録される画像の画質が悪くなりにくい。
【0058】
一方、インクジェットヘッド12における異常ノズルの数が多く、外部装置3において、画像データに基づいて、インクジェットヘッド12におけるノズル10の異常状態に応じて適切な吐出データを生成できない場合には、外部装置3からプリンタ2に画像データを送信し、プリンタ2の制御部80において吐出データを生成する。これにより、プリンタ2から外部装置3に第1異常情報を送信し、外部装置3の制御部90において画像データと第1異常情報とに基づいて吐出データを生成して、吐出データをプリンタ2に送信する場合と比較して、プリンタ2において記録が開始されるのを早くすることができる。また、この場合、プリンタ2において画像データと第1異常情報とに基づいて吐出データを生成するため、記録される画像の画質を確保することができる。
【0059】
また、本実施形態では、外部装置3からプリンタ2へ吐出データまたは画像データを送信した後の、プリンタ2において記録用紙Sへの画像の記録が完了した後に、プリンタ2のフラッシュメモリ84に記憶されている第1異常情報に基づき外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報を更新する。これにより、プリンタ2と外部装置3とが通信可能であり、且つ、記録用紙Sへの記録のためのプリンタ2と外部装置3との通信がされていないタイミングに、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報を更新することができる。そして、上記タイミングに更新される第2異常情報に基づいて、外部装置3において吐出データを生成するか、プリンタ2において吐出データを生成するかを切り換えることができる。
【0060】
ただし、外部装置3からプリンタ2へ吐出データまたは画像データを送信した後に毎回、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報を更新すると、プリンタ2において記録用紙Sへの画像の記録が頻繁に行われる場合に、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報を更新するためのプリンタ2と外部装置3との間の通信量が多くなる。そこで、本実施形態では、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最後に更新されてから所定時間以上経過した後において、外部装置3からプリンタ2へ吐出データまたは画像データを送信した後の、プリンタ2において記録用紙Sへの画像の記録が完了した直後に、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報を更新する。これにより、プリンタ2と外部装置3との通信量を抑えることができる。
【0061】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0062】
上述の実施形態では、外部装置3の制御部90が、非補完吐出データおよび画像データのいずれかをプリンタ2に送信した後、プリンタ2から記録完了信号を受信したときに、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最後に更新されてから所定時間が経過している場合にのみ、更新処理を実行したが、これには限られない。例えば、外部装置3の制御部90が、非補完吐出データおよび画像データのいずれかをプリンタ2に送信した後、プリンタ2から記録完了信号を受信したときに毎回、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報を更新してもよい。
【0063】
また、プリンタ2から記録完了信号を受信してから更新処理を実行することにも限られない。例えば、上述の実施形態において、S103およびS104のいずれかの処理によってプリンタ2にデータを送信した後、プリンタ2での画像の記録の完了を待つことなく、S106,S107の処理を実行してもよい。あるいは、S103およびS104のいずれかの処理によってプリンタ2にデータを送信した後、プリンタ2での画像の記録の完了を待つことなく、S107の処理を実行してもよい。
【0064】
また、プリンタ2へのデータの送信の後に更新処理を実行することにも限られない。S103およびS104のいずれかの処理によってプリンタ2にデータを送信した後とは別の所定タイミングで更新処理を実行してもよい。例えば、プリンタ2が所定のタイミングで第1異常情報を更新するとともに、第1情報を更新したことを示す更新信号を外部装置3に送信してもよい。そして、外部装置3においてプリンタ2からの更新信号が取得できた場合に、このタイミングで更新処理を実行してもよい。あるいは、例えば、外部装置3が吐出データおよび画像データの送信とは関連しないプリンタ2との通信を行っているタイミングで更新処理を実行してもよい。
【0065】
上述の実施形態では、プリンタ2の制御部80は、外部装置3から画像データを受信した場合に、一律に画像データに基づいて補完吐出データを生成したが、これには限られない。
【0066】
変形例1では、プリンタ2の制御部80が、外部装置3から非補完吐出データおよび画像データのいずれかを受信したときに、図8のフローチャートに沿って処理を行う。
【0067】
図8のフローチャートについて説明すると、制御部80は、まず、上述の実施形態のS201と同様、受信したデータが画像データであるか否かを判断する(S301)。受信したデータが非補完吐出データである場合には(S301:NO)、制御部80は、上述の実施形態のS203,S204と同様のS305,S306の処理を実行する。
【0068】
受信したデータが画像データである場合(S301:YES)、制御部80は、フラッシュメモリ84に記憶されている第1異常情報に基づいて、異常ノズルの数N1が所定数Na以上であるか否かを判断する(S302)。ここで、画像記録システム1においては、上述の実施形態で説明したように、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報は、プリンタ2と外部装置3とが通信可能な状態で、プリンタ2のフラッシュメモリ84に記憶されている第1異常情報に基づいて取得されたものである。したがって、例えば、プリンタ2と外部装置3との通信がされていない期間があり、この期間に第1異常情報が更新された場合等には、第1異常情報が示す異常ノズルの数N1と、第2異常情報が示す異常ノズルの数N2が異なることがある。
【0069】
異常ノズルの数N1が所定数Na以上の場合(S302:YES)、制御部80は、上述の実施形態のS202と同様に、画像データに基づいて補完吐出データを生成し(S303)、続いて、S305,S306の処理を実行し、処理が終了する。
【0070】
異常ノズルの数N1が所定数Na未満の場合(S302:NO)、制御部80は、画像データに基づいて非補完吐出データを生成し(S304)、続いて、S305,S306の処理を実行し、処理が終了する。S304で画像データに基づいて非補完吐出データを生成する処理は、S102と同様の処理である。
【0071】
第2異常情報が最新の第1異常情報を反映したものでない場合、第2異常情報が示す異常ノズルの数N2が所定数Na以上であり、外部装置3からプリンタ2に画像データが送信された場合でも、第1異常情報が示す異常ノズルの数N1が所定数Na未満であることがある。
【0072】
そこで、変形例1では、プリンタ2において、外部装置3から画像データを受信したときに、第1異常情報が示す異常ノズルの数N1が所定数Na以上であることを示している場合には、補完吐出データを生成し、補完吐出データに基づいて複数のノズル10からインクを吐出させて記録用紙Sに画像を記録させる。これにより、異常ノズルの数が多い場合に、記録される画像の画質を確保することができる。
【0073】
一方、プリンタ2において、外部装置3から画像データを受信したときに、第1異常情報が示す異常ノズルの数N1が所定数Na未満であることを示している場合に、非補完吐出データを生成し、非補完吐出データに基づいて複数のノズル10からインクを吐出させて記録用紙Sに画像を記録させる。これにより、記録に必要な時間を短くすることができる。
【0074】
上述の実施形態では、図5のフローチャートの処理が開始される直前の状態で外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報に基づいて、異常ノズルの数N2が所定数Na以上であるか否かを判断したが、これには限られない。
【0075】
変形例2では、外部装置3の制御部90は、記録指示を受信したときに図9のフローチャートに沿って処理を行う。
【0076】
図9のフローチャートについて詳細に説明すると、制御部90は、プリンタ2に異常ノズルの数が所定数以上であるか否かを問い合わせるための問い合わせ信号を送信する(S401)。図示は省略するが、プリンタ2の制御部80は、外部装置3から問い合わせ信号を受信したときに、フラッシュメモリ84に記憶されている第1異常情報に基づいて、異常ノズルの数が所定数以上であるか否かを示す応答信号を外部装置3に送信する。
【0077】
S401の問い合わせ信号の送信後、制御部90は、応答信号を受信するまで待機する(S402:NO)。応答信号を受信したときに(S402:YES)、制御部90は、応答信号に基づいて第2異常情報を取得し、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報を更新する(S403)。続いて、制御部90は、上述の実施形態のS101~S104と同様のS404~S407の処理を実行し、S406の処理の完了後およびS407の処理の完了後に、処理が終了する。
【0078】
変形例2では、問い合わせ信号に対する応答信号に基づいて取得した第2異常情報が示す異常ノズルの数N2が所定数Na未満のときに、プリンタ2の制御部80よりも処理能力の高い外部装置3の制御部90において、画像データに基づいて吐出データを生成する。これにより、プリンタ2の制御部80において吐出データを生成する場合と比較して、プリンタ2において記録が開始されるのを早くすることができる。また、変形例3の場合には、異常ノズルの数が少ないため、非補完吐出データに基づいて記録を行っても、記録される画像の画質が悪くなりにくい。
【0079】
一方、問い合わせ信号に対する応答信号に基づいて取得した第2異常情報が示す異常ノズルの数N2が所定数Na以上のときに、プリンタ2の制御部80において吐出データを生成することによって、プリンタ2から外部装置に第1異常情報を送信し、外部装置3の制御部90において吐出データを生成して、吐出データをプリンタ2に送信する場合と比較して、プリンタ2において記録が開始されるのを早くすることができる。また、この場合、プリンタ2の制御部80において画像データと第1異常情報とに基づいて吐出データを生成するため、記録される画像の画質を確保することができる。
【0080】
上述の実施形態では、第2異常情報が異常ノズルの数N2が所定数Na以上であるか否かを示す情報であり、異常ノズルの数N2が所定数Na以上であるか否かに応じて、画像データに基づいて非補完吐出データを生成してプリンタ2に送信するか、非補完吐出データを生成せずに画像データをプリンタ2に送信するかを切り換えたが、これには限られない。
【0081】
変形例3では、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が、インクジェットヘッド12の複数のノズル10の各々についての異常ノズルであるか否かを示す情報である。変形例3でも、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報は、プリンタ2のフラッシュメモリ84に記憶されている第1異常情報に基づいて取得されたものである。
【0082】
そして、変形例3では、外部装置3の制御部90は、記録指示を受信したときに、図10のフローチャートに沿って処理を行う。
【0083】
図10のフローチャートについて詳細に説明すると、制御部90は、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最新のものであるか否かを問い合わせるための問い合わせ信号を送信する(S501)。制御部90は、プリンタ2から第2異常情報が最新のものであるか否かを示す応答信号を受信するまで待機する(S502:NO)。プリンタ2による応答信号の送信については後ほど説明する。
【0084】
応答信号を受信したときに(S502:YES)、制御部90は、第2異常情報が最新のものであることを応答信号が示しているか否かを判断する(S503)。第2異常情報が最新のものであることを応答信号が示している場合(S503:YES)、制御部90は、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報に基づいて、異常ノズルの数N2が所定数未満であるか否かを判断する(S504)。
【0085】
異常ノズルの数N2が所定数未満である場合(S504:YES)、制御部80は、上述の実施形態のS102,103と同様に、画像データに基づいて非補完吐出データを生成し(S505)、非補完吐出データをプリンタ2に送信する(S506)。
【0086】
異常ノズルの数N2が所定数以上である場合(S504:NO)、制御部80は、画像データに基づいて補完吐出データを生成し(S507)、上補完吐出データをプリンタ2に送信する(S508)。S507の補完吐出データを生成する処理は、上述の実施形態のS202の処理と同様である。
【0087】
なお、変形例3では、S505の処理とS506の処理とを合わせたもの、および、S507の処理とS508の処理とを合わせたものが、本発明の「第1送信処理」に相当する。
【0088】
第2異常情報が最新のものでないことを応答信号が示している場合(S503:NO)、制御部80は、非補完吐出データおよび補完吐出データのいずれの吐出データも生成せず、画像データをプリンタ2に送信する(S509)。
【0089】
S506,S508,S509のいずれかの処理によるデータの送信後、制御部90は、上述の実施形態のS105~S107と同様の、S510~S512の処理を実行する。
【0090】
一方、変形例3において、プリンタ2の制御部80は、上記S501の処理により外部装置3から送信された問い合わせ信号を受信したときに、図11のフローチャートに沿って処理を行う。
【0091】
図11のフローチャートについて説明すると、問い合わせ信号を受信したときに、制御部80は、第2異常情報が最新のものであるか否かを示す応答信号を外部装置3に送信する(S601)。
【0092】
例えば、外部装置3の制御部90は、フラッシュメモリ94に第2異常情報を記憶させる際に、第2異常情報を記憶させた時刻の情報を合わせて記憶させる。そして、制御部90は、S501で問い合わせ信号を送信する際に、第2異常情報を記憶させた時刻の情報を合わせてプリンタ2に送信する。また、プリンタ2の制御部80は、フラッシュメモリ84に第1異常情報を記憶させる際に、第1異常情報を記憶させた時刻の情報を合わせて記憶させる。そして、制御部80は、S601において、第1異常情報を記憶させた時刻が、第2異常情報を記憶させた時刻と同じであれば、第2異常情報が最新ものであることを示す応答信号を外部装置3に送信する。一方、制御部80は、S601において、第1異常情報を記憶させた時刻が、第2異常情報を記憶させた時刻よりも後の時刻であれば、第2異常情報が最新ものでないことを示す応答信号を外部装置3に送信する。
【0093】
S601で第2異常情報が最新ものであることを示す応答信号を外部装置3に送信した場合には(S602:YES)、制御部80は、外部装置3から吐出データを受信するまで待機する(S603:NO)。ここで、外部装置3から受信する吐出データとは、S506で外部装置3から送信された非補完吐出データ、および、S508で外部装置3から送信された補完吐出データのいずれかである。外部装置3から吐出データを受信したときに、制御部80は、上述の実施形態のS203,S204と同様のS608、S609の処理を実行する。
【0094】
一方、S601で第2異常情報が最新ものでないことを示す応答信号を外部装置3に送信した場合には(S602:NO)、制御部80は、外部装置3から画像データを受信するまで待機する(S604:NO)。外部装置3から吐出データを受信したときに(S604:YES)、制御部80は、第1異常情報に基づいて異常ノズルの数N1が所定数Na未満であるか否かを判断する(S605)。異常ノズルの数N1が所定数Na未満である場合(S605:YES)、制御部80は、非補完吐出データを生成し(S606)、続いて、S608,S609の処理を実行する。異常ノズルの数N1が所定数Na以上である場合(S605:NO)、制御部80は、補完吐出データを生成し(S607)、続いて、S608,S609の処理を実行する。
【0095】
外部装置3がプリンタ2と通信可能となったときに、外部装置3からプリンタ2に、第2異常情報が最新のものであるか否かを問い合わせる問い合わせ信号を送信する。これにより、外部装置3においては、上記問い合わせ信号に応じて外部装置3がプリンタ2から受信する応答信号に基づいてフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最新のものであるか否かを判断することができる。
【0096】
また、プリンタ2においては、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最新のものであることを示す応答信号を外部装置3に送信した場合には、その後吐出データを受信したときに吐出データに基づいて記録用紙Sへの画像の記録を行うことができる。一方、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最新のものでないことを示す応答信号を外部装置3に送信した場合には、その後画像データを受信したときに、画像データに基づいて吐出データを生成し、吐出データに基づいて記録用紙Sへの画像の記録を行うことができる。
【0097】
変形例4では、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が、インクジェットヘッド12の複数のノズル10の各々についての異常ノズルであるか否かを示す情報である。変形例4でも、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報は、プリンタ2のフラッシュメモリ84に記憶されている第1異常情報に基づいて取得されたものである。
【0098】
そして、変形例4では、外部装置3の制御部90が、記録指示を受信したときに図12のフローチャートに沿って処理を行う。
【0099】
図12のフローチャートについて詳細に説明すると、制御部90は、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が、所定時間前の時点よりも後に記憶されたものであるか否かを判断する(S701)。変形例3では、制御部90は、フラッシュメモリ94に第2異常情報を記憶させる際に、第2異常情報を記憶させた時刻の情報を合わせて記憶させる。そして、制御部90は、フラッシュメモリ94に記憶させたこの時刻と現在の時刻との差に基づいて、S701の判断を行う。
【0100】
フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が、所定時間前の時点よりも後に記憶されたものである場合(S701:YES)、制御部80は、続いて、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報に基づいて、異常ノズルの数N2が所定数Na未満であるか否かを判断する(S702)。
【0101】
異常ノズルの数N2が所定数Na未満である場合(S702:YES)、制御部90は、上述の実施形態のS102,S013と同様に、画像データに基づいて非補完吐出データを生成し(S703)、非補完吐出データをプリンタ2に送信し(S704)、処理が終了する。
【0102】
異常ノズルの数N2が所定数以上である場合(S702:NO)、制御部90は、変形例3のS504~S508と同様のS702~S706の処理を実行し、処理が終了する。
【0103】
フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が、所定時間前の時点またはこれよりも前にフラッシュメモリ94に記憶された第2異常情報である場合(S701:NO)、制御部80は、非補完吐出データおよび補完吐出データのいずれをも生成せず、画像データをプリンタ2に送信する(S707)。
【0104】
続いて、制御部90は、更新処理を開始する(S708)。S708で開始される更新処理は、上述の実施形態のS107と同様の処理である。続いて、制御部90は、更新処理が完了したか否かを判断する(S709)。更新処理が完了していない場合(S709:NO)、次の記録指示を受信していなければ(S710:NO)、S709に戻り、次の記録指示を受信したときには(S710:YES)、画像データをプリンタ2に送信したうえで(S711)、S709に戻る。そして、更新処理が完了したときに(S709:YES)、処理が終了する。
【0105】
なお、変形例4では、制御部90は、更新処理の完了後、所定時間が経過するまでに次の記録指示を受信した場合には、図12のフローチャートが開始され、S701において、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が、所定時間前の時点よりも後にフラッシュメモリ94に記憶された第2異常情報であると判断される。これにより、S703,S704の処理により非補完吐出データがプリンタ2に送信されるか、S705,S706の処理により補完吐出データがプリンタ2に送信される。
【0106】
変形例4では外部装置3のフラッシュメモリ94に最後に第2異常情報が記憶されてから所定時間以上経過していない場合には、外部装置3の制御部90において第2異常情報と画像データとに基づいて吐出データを生成してプリンタ2に送信する。そして、プリンタ2において、この吐出データに基づいて複数のノズル10からインクを吐出させて記録用紙Sに画像を記録させる。この場合には、処理能力の高い外部装置3の制御部90において吐出データを生成することができ、プリンタ2の制御部80において吐出データを生成する場合と比較して、プリンタ2において記録が開始されるのを早くすることができる。
【0107】
また、この場合には、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が、例えば最新の情報である可能性が高く、また最新でなかったとしても比較的変化が少ない状態であると言える。したがって、外部装置3の制御部90において第2異常情報と画像データとに基づいて生成される吐出データは、インクジェットヘッド12におけるノズル10の状態に応じたものとなりやすい。
【0108】
また、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が、所定時間前の時点よりも後に記憶されたものであり、且つ、異常ノズルの数N2が所定数Na以上であることを示している場合には、外部装置3において補完吐出データを生成してプリンタ2に送信する。これにより、プリンタ2においてこの補完吐出データに基づいて複数のノズル10からインクを吐出させて記録用紙Sに画像を記録させることができる。その結果、プリンタ2において吐出データを生成する場合よりもプリンタ2において記録が開始されるのを早くすることができるとともに、異常ノズルの数が多い場合に、記録される画像の画質を確保することができる。
【0109】
これに対して、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が、所定時間前の時点よりも後に記憶されたものであり、且つ、異常ノズルの数が所定数未満であることを示している場合には、外部装置3において非補完吐出データを生成してプリンタ2に送信する。これにより、プリンタ2において非補完吐出データに基づいて複数のノズル10からインクを吐出させて記録用紙Sに画像を記録させることができる。その結果、プリンタ2において吐出データを生成する場合よりもプリンタ2において記録が開始されるのを早くすることができるとともに、記録に必要な時間を短くすることができる。
【0110】
一方、外部装置3のフラッシュメモリ94に最後に第2異常情報が記憶されてから所定時間以上経過している場合には、外部装置3からプリンタ2に画像データを送信する。これにより、プリンタ2において画像データに基づいて吐出データを生成し、この吐出データに基づいて複数のノズル10からインクを吐出させて記録用紙Sに画像を記録させる。これにより、第2異常情報が古く、第2異常情報が示すノズル10の状態がプリンタ2におけるノズル10の状態と異なる可能性が高い場合に、記録される画像の画質を確保することができる。
【0111】
また、変形例4では、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が所定期間前の時点およびこれよりも前に取得されたものである場合に、プリンタ2のフラッシュメモリ84に記憶されている第1異常情報に基づいて第2異常情報を取得し、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報を更新することができる。
【0112】
そして、第2異常情報の取得が完了した後に次の記録指示を受信したときには、外部装置3において画像データに基づいて吐出データを生成してプリンタ2に送信する。これにより、プリンタ2において外部装置3から受信した吐出データに基づいて複数のノズル10からインクを吐出させて記録用紙Sに画像を記録させることができる。その結果、処理能力の高い外部装置3において吐出データを生成することができ、プリンタ2において吐出データを生成する場合と比較して、プリンタ2において記録が開始されるのを早くすることができる。
【0113】
一方、第2異常情報の取得が完了する前に次の記録指示を受信したときには、外部装置3からプリンタ2に画像データを送信する。この場合には、プリンタ2において、画像データに基づいて吐出データが生成され、この吐出データに基づいて複数のノズル10からインクを吐出させて記録用紙Sに画像が記録される。これにより、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が古く、第2異常情報が示すノズル10の状態がプリンタ2におけるノズル10の状態と異なる可能性が高い場合に、記録される画像の画質を確保することができる。外部装置3は画像データ送信した後に、プリンタ2が記憶する第1異常情報に基づき第2異常情報を更新すればよい。
【0114】
変形例4では、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が、所定時間前の時点よりも後にフラッシュメモリ94に記憶された第2異常情報である場合に、制御部90が、異常ノズルの数N2が所定数Na未満であるか否かに応じて、非補完吐出データおよび補完吐出データのいずれかを生成してプリンタ2に送信したが、これには限られない。例えば、このとき、異常ノズルの数N2が所定数Na未満であるか否かによらず、補完吐出データを生成してプリンタ2に送信してもよい。
【0115】
また、変形例4において、S708の画像データの送信後にS708~S711の処理を実行せずに、その代わりに、S704,S706,S707のいずれかの処理によりプリンタ2にデータを送信した後に、上述の実施形態のS105~S107と同様の処理を実行してもよい。
【0116】
変形例5では、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が、インクジェットヘッド12の複数のノズル10の各々についての異常ノズルであるか否かを示す情報である。変形例5でも、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報は、プリンタ2のフラッシュメモリ84に記憶されている第1異常情報に基づいて取得されたものである。
【0117】
そして、変形例5では、外部装置3がプリンタ2と通信可能となったときに、外部装置3の制御部90が、図13のフローチャートに沿った処理を開始し、外部装置3がプリンタ2と通信可能である間、制御部90は、図13のフローチャートに沿った処理を継続する。
【0118】
図13のフローチャートについて詳細に説明すると、制御部90は、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最新のものであるか否かを問い合わせるための問い合わせ信号を送信する(S801)。変形例5においても、変形例3で説明したのと同様に、プリンタ2の制御部80は、外部装置3から受信した問い合わせ信号に対して、第2異常情報が最新のものであるか否かを示す応答信号を外部装置3に送信する。
【0119】
S801の問い合わせ信号の送信後、制御部90は、応答信号を受信するまで待機する(S802:NO)。応答信号を受信したときに(S802:YES)、制御部90は、応答信号が、第2異常情報が最新のものであることを示すものであるか否かを判断する(S803)。第2異常情報が最新のものであることを応答信号が示している場合(S803:YES)、処理がS808に進む。
【0120】
第2異常情報が最新のものでないことを応答信号が示している場合(S803:NO)、制御部90は、更新処理を開始する(S804)。S804で開始される更新処理は、上述の実施形態のS107と同様の処理である。続いて、制御部90は、更新処理が完了したか否かを判断する(S805)。更新処理が完了していない場合(S805:NO)、記録指示を受信していなければ(S806:NO)、S805に戻り、記録指示を受信したときには(S806:YES)、画像データをプリンタ2に送信したうえで(S807)、S805に戻る。そして、更新処理が完了したときに(S509:YES)、処理がS808に進む。
【0121】
S808では、制御部90は、記録指示を受信したか否かを判断する。記録指示を受信していない場合には(S808:NO)、S815に進む。記録指示を受信したときには(S808:YES)、制御部90は、変形例3のS502~S506と同様のS809~S813の処理を実行する。
【0122】
制御部90は、S811およびS813のいずれかでデータを送信した後、記録完了信号を受信するまで待機し(S814:NO)、記録完了信号を受信したときに(S814:YES)、処理がS815に進む。
【0123】
S815において、制御部90は、第2異常情報が最後に更新されてから所定時間が経過したか否かを判断する。第2異常情報が最後に更新されてから所定時間が経過していない場合には(S815:NO)、処理がS808に戻る。第2異常情報が最後に更新されてから所定時間が経過している場合には(S815:YES)、処理がS804に戻る。
【0124】
変形例5では外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最新のものである場合には、外部装置3の制御部90において第2異常情報と画像データとに基づいて吐出データを生成してプリンタ2に送信する。そして、プリンタ2において、この吐出データに基づいて複数のノズル10からインクを吐出させて記録用紙Sに画像を記録させる。この場合には、処理能力の高い外部装置3の制御部90において吐出データを生成することができ、プリンタ2の制御部80において吐出データを生成する場合と比較して、プリンタ2において記録が開始されるのを早くすることができる。また、この場合には、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最新のものであるため、外部装置3の制御部90において第2異常情報と画像データとに基づいて生成される吐出データは、インクジェットヘッド12におけるノズル10の状態に応じたものとなる。
【0125】
一方、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最新のものでない場合には、外部装置3からプリンタ2に画像データを送信する。そして、プリンタ2において画像データに基づいて吐出データを生成し、この吐出データに基づいて複数のノズル10からインクを吐出させて記録用紙Sに画像を記録させる。これにより、第2異常情報が古く、第2異常情報が示すノズル10の状態がプリンタ2におけるノズル10の状態と異なる可能性が高い場合に、記録される画像の画質を確保することができる。
【0126】
また、変形例5では、外部装置3がプリンタ2と通信可能となったときに、外部装置3からプリンタ2に、第2異常情報が最新のものであるかを問い合わせる問い合わせ信号を送信する。これにより、この問い合わせ信号に応じて外部装置3がプリンタ2から受信する応答信号に基づいてフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最新のものであるか否かを判断することができる。
【0127】
また、変形例5では、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最新のものでない場合に、プリンタ2のフラッシュメモリ84に記憶されている第1異常情報に基づいて第2異常情報を取得し、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報を更新することができる。
【0128】
そして、第2異常情報の取得が完了した後に記録指示を受信したときには、外部装置3において画像データに基づいて吐出データを生成してプリンタ2に送信する。これにより、プリンタ2において外部装置3から受信した吐出データに基づいて記録用紙Sに画像を記録させることができる。その結果、処理能力の高い外部装置3において吐出データを生成することができ、プリンタ2において吐出データを生成する場合と比較して、プリンタ2において記録が開始されるのを早くすることができる。
【0129】
一方、第2異常情報の取得が完了する前に記録指示を受信したときには、外部装置3からプリンタ2に画像データを送信する。これにより、プリンタ2において、画像データに基づいて吐出データを生成させ、この吐出データに基づいて記録用紙Sに画像が記録させることができる。その結果、外部装置3のフラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が古く、第2異常情報が示すノズル10の状態がプリンタ2におけるノズル10の状態と異なる可能性が高い場合に、記録される画像の画質を確保することができる。
【0130】
変形例5では、応答信号が、第2異常情報が最新のものでないことを示すものである場合に、その直後に制御部90が更新処理を実行したが、これには限られない。変形例6では、外部装置3がプリンタ2と通信可能となったときに、外部装置3の制御部90が、図14のフローチャートに沿った処理を開始し、外部装置3がプリンタ2と通信可能である間、制御部90は、図14のフローチャートに沿った処理を継続する。
【0131】
図14のフローチャートについて詳細に説明すると、制御部90は、変形例5のS801~S803と同様のS901~S903の処理を実行する。S903において、第2異常情報が最新のものでないことを応答信号が示していると判断した場合(S903:NO)、制御部90は、続いて、記録指示を受信したか否かを判断する(S904)。記録指示を受信していない場合(S904:NO)、処理がS907に進む。記録指示を受信したときに(S904:YES)、制御部90は、画像データをプリンタ2に送信する(S905)。その後、制御部90は、プリンタ2から記録完了信号を受信するまで待機し(S906:NO)、記録完了信号を受信したときに(S906:YES)、処理がS907に進む。
【0132】
S907において、制御部90は、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最後に更新されてから所定時間が経過しているか否かを判断する。フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最後に更新されてから所定時間が経過していない場合には(S907:NO)、処理がS904に戻る。フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最後に更新されてから所定時間が経過している場合には(S907:YES)、制御部90は更新処理を実行する(S916)。
【0133】
S903において、第2異常情報が最新のものであることを応答信号が示していると判断した場合(S903:YES)、制御部90は、続いて、変形例5のS808~S815と同様のS908~S915の処理を実行する。そして、S915において、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最後に更新されてから所定時間が経過していないと判断した場合には(S915:NO)、処理がS908に戻る。また、S915において、フラッシュメモリ94に記憶されている第2異常情報が最後に更新されてから所定時間が経過していると判断した場合には(S915:YES)、制御部90は更新処理を実行する(S916)。
【0134】
S916の更新処理は、上述の実施形態のS512と同様の処理である。そして、S916の更新処理の完了後、処理がS908に戻る。
【0135】
上述の実施形態では、補完記録において、1つのラスタラインRを形成する複数の画素Gを3回の記録パスで記録することによって、異常ノズル10からのインクの吐出を、異常ノズルでない他のノズル10からのインクの吐出によって補完したが、これには限られない。
【0136】
例えば、補完記録において、1つのラスタラインRを形成する複数の画素Gを2回または4回以上の記録パスで記録することによって、異常ノズル10からのインクの吐出を、異常ノズルでない他のノズル10からのインクの吐出によって補完してもよい。
【0137】
さらには、補完記録において、1つのラスタラインRを形成する複数の画素Gを複数回の記録パスで記録することによって、異常ノズル10からのインクの吐出を、異常ノズルでない他のノズル10からのインクの吐出によって補完することにも限られない。
【0138】
変形例7では、制御部80が、上述の実施形態で説明したのと同様にして非補完記録を行う。すなわち、変形例7において生成される非補完吐出データは、上述の実施形態で説明したのと同様のデータである。一方で、変形例7では、上述の実施形態とは異なり、制御部80が、補完記録において、非補完記録のときよりも、走査方向および搬送方向における解像度が高い画像を記録する。すなわち、変形例7で生成される補完吐出データは、非補完吐出データよりも走査方向および搬送方向の解像度が高い画像が記録されるように複数のノズル10からインクを吐出させるための吐出データである。そして、図15(a)に示すように、各記録パスにおいて、走査方向におけるインクの着弾位置の間隔を非補完記録のときよりも短くするとともに、ノズル10からのインクの吐出量を非補完記録よりも少なくする。記録パスでの走査方向におけるインクの着弾位置の間隔を非補完記録よりも短くするには、例えば、記録パスでのノズル10からインクを吐出させる時間間隔を非補完記録のときよりも短くする、あるいは、記録パスでのキャリッジ11の移動速度を非補完記録のときよりも遅くする。
【0139】
また、変形例7では、補完記録において、Mを1以上の奇数として、搬送動作における記録用紙Sの搬送量B3を、ノズル列9におけるノズル10同士の間隔Aの(M/2)倍の長さとする。なお、図15(a)では、M=3の場合を示している。
【0140】
これにより、変形例7では、補完記録において、非補完記録よりも走査方向および搬送方向の解像度が高い画像が記録される。そして、この場合には、異常ノズルがある場合に、記録用紙Sの非補完記録で記録した場合に異常ノズルに対応する画素Gが形成されない領域の一部に、異常ノズルでない他のノズル10から吐出されたインクによって形成される画素Gが配置されることになる。すなわち、異常ノズルからのインクの吐出を、異常ノズルでない他のノズル10からのインクの吐出によって補完することができる。これにより、図7(a)と図15(a)とを比較すればわかるように、補完記録で記録を行うと、非補完記録で記録を行うよりも白スジWの搬送方向の長さが短くなり、白スジWが目立ちにくくなる。ここで、変形例7でも、補完記録により記録用紙Sに記録を行う場合には、非補完記録により記録用紙Sに記録を行う場合より、記録パスの回数が多くなるため、記録時間が長くなる。
【0141】
なお、変形例7では、補完記録において、非補完記録のときよりも、走査方向および搬送方向の両方の解像度を高くしたが、これには限られない。変形例7の補完記録において、非補完記録のときよりも、走査方向および搬送方向のうち搬送方向の解像度のみを高くしてもよい。
【0142】
変形例8では、制御部80は、上述の実施形態で説明したのと同様にして非補完記録を行う。すなわち、変形例8において生成される非補完吐出データは、上述の実施形態で説明したのと同様のデータである。一方で、変形例8では、上述の実施形態とは異なり、補完記録において、図15(b)に示すように、記録パスでの異常ノズルと搬送方向の上流側および下流側に隣接するノズル10からのインクの吐出量を非補完記録のときよりも多くすることによって、当該ノズル10から吐出されるインクによって形成される画素Gの大きさを大きくする。すなわち、変形例8で生成される補完吐出データは、異常ノズルと搬送方向の上流側および下流側に隣接するノズル10からのインクの吐出量が非補完吐出のときよりも多くなるように複数のノズル10からインクを吐出させるための吐出データである。これにより、異常ノズルと搬送方向に隣接するノズル10から吐出されたインクによって形成された画素Gの一部が、記録用紙Sの、異常ノズルに対応する画素Gが形成されなかった領域にはみ出す。すなわち、異常ノズルからのインクの吐出が、異常ノズルでないノズル10からのインクの吐出によって補完される。その結果、図7(a)と図15(b)とを比較すればわかるように、白スジWの搬送方向の長さが短くなり、白スジWが目立ちにくくなる。
【0143】
また、変形例8では、補完記録において、異常ノズルと搬送方向の上流側および下流側に隣接するノズル10からのインクの吐出量を、非補完記録のときよりも多くしたがこれには限られない。補完記録において、異常ノズルと搬送方向の上流側および下流側に隣接するノズル10のうち片方のノズル10からのインクの吐出量のみを、非補完記録のときよりも多くしてもよい。
【0144】
また、変形例8では、搬送方向の最も上流のノズル10が異常ノズルである場合に、搬送方向の最も下流のノズル10を、搬送方向の最も上流のノズル10と隣接するノズル10とみなして、非補完記録のときよりもインクの吐出量を多くしてもよい。また、変形例8では、搬送方向の最も下流のノズル10が異常ノズルである場合に、搬送方向の最も上流のノズル10を、搬送方向の最も下流のノズル10と隣接するノズル10とみなして、非補完記録のときよりもインクの吐出量を多くしてもよい。
【0145】
また、補完記録において、以上の説明したのと異なる方法で、異常ノズルからのインクの吐出を、異常ノズルでない他のノズル10からのインクの吐出で補完してもよい。
【0146】
また、以上の例では、外部装置3の制御部90において、画像データに基づいて吐出データを生成してプリンタ2に送信したが、これには限られない。例えば、画像データに基づいて吐出データを生成するために、画像データに基づいて中間データを生成し、中間データに基づいて吐出データを生成する処理が必要なことがある。このような場合に、外部装置3の制御部90において、画像データに基づいて中間データを生成してプリンタ2に送信してもよい。そして、プリンタ2の制御部80において、中間データに基づいて吐出データを生成してもよい。なお、この場合には、中間データが本発明の「別のデータ」に相当する。
【0147】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド12に吐出駆動を行わせたときの、ノズル10からキャップ71内に配置された電極76における電圧の変化に応じて信号処理回路78から出力される信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定したが、これには限られない。
【0148】
例えば、電極76の代わりに、鉛直方向に延びており、キャリッジ11がメンテナンス位置に位置している状態でノズル10の下方の空間と対向する電極を設けてもよい。そして、信号処理回路78から、キャリッジ11をメンテナンス位置に位置させた状態で吐出駆動を行ったときの上記電極の電圧の変化に応じた信号を出力するようにし、この信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定しもよい。
【0149】
あるいは、例えば、キャリッジ11がメンテナンス位置等の所定位置に位置している状態で、ノズル10から吐出されたインクを直接検出し、検出結果に応じた信号を出力する光センサを設けてもよい。そして、この光センサから出力される信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0150】
あるいは、例えば、特許第4929699号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドのノズルが形成されたプレートに、ノズルからインクが吐出されたときの電圧の変化を検出する電圧検出回路を接続し、キャリッジを検査位置に移動させた状態でノズルからインクを吐出させるための動作を行わせたときに電圧検出回路から出力された信号に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0151】
あるいは、例えば、特許第6231759号公報に記載されているのと同様に、インクジェットヘッドの基板を、温度検知素子を備えたものとしてもよい。そして、インクの吐出のために第1印加電圧を印加してヒータを駆動した後に、インクが吐出されないように第2印加電圧を印加してヒータを駆動し、第2印加電圧を印加してから、その後、所定時間が経過するまでの間の、温度検知素子で検知された温度の変化に基づいて、異常ノズルであるか否かを判定してもよい。
【0152】
また、プリンタ2において各ノズル10が異常ノズルであるかを確認するためのテストパターンを記録させ、このテストパターンの記録結果に基づいて異常ノズルであるか否かを判定してもよい。この場合、例えば、ユーザにテストパターンの記録結果に基づいてプリンタの図示しない操作部を操作させることによって、制御部80にテストパターンの記録結果の信号を入力させてもよい。あるいは、プリンタ2が記録用紙Sに記録された画像を読み取るスキャナを備えている場合に、記録したテストパターンをスキャナに読み取らせることによって、テストパターンの記録結果の信号を入力させてもよい。
【0153】
また、上述の実施形態では、インクジェットヘッド12の全てのノズル10について、検査用駆動を行わせて、異常ノズルであるか否かを判定したが、これには限られない。例えば、各ノズル列9における1つおきのノズル10等、インクジェットヘッド12の一部のノズル10についてのみ、検査用駆動を行わせて異常ノズルであるか否かを判定してもよい。そして、それ以外のノズル10については、上記一部のノズル10についての判定結果に基づいて異常ノズルであるか否かを推定してもよい。
【0154】
また、以上の例では、状態信号が、インクの吐出量が不足しているか否かを示す信号であったが、これには限られない。状態信号は、インクの吐出状態が悪いか否かを示すものであってもよい。例えば、状態信号は、ノズル内の粘度が高い状態か否か、インクが曲がって吐出される状態か否か、インクの吐出量が所定量未満か否か、などの正常な記録が難しい状態であるか否かを示す信号であってもよい。
【0155】
また、以上では、キャリッジとともに走査方向に移動しつつ複数のノズルからインクを吐出する、いわゆるシリアルヘッドを備えたプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、走査方向に記録用紙の全長にわたって延びたいわゆるラインヘッドを備えたプリンタに本発明を適用することも可能である。
【0156】
また、以上では、ノズルからインクを吐出して記録用紙Sに記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。Tシャツ、屋外広告用のシート、スマートフォン等の携帯端末のケース、段ボール、樹脂部材など、記録用紙以外の被記録媒体に画像を記録する記録装置にも適用され得る。
【符号の説明】
【0157】
1:画像記録システム
2:プリンタ
3:外部装置
80:制御部
84:フラッシュメモリ
90:第2制御部
94:フラッシュメモリ
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