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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148085
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】水処理方法及び水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/04 20230101AFI20241009BHJP
   C02F 3/12 20230101ALI20241009BHJP
【FI】
C02F3/04
C02F3/12 Q
C02F3/12 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061001
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 將貴
【テーマコード(参考)】
4D003
4D028
【Fターム(参考)】
4D003AA02
4D003CA07
4D003DA22
4D003EA14
4D003EA18
4D003EA23
4D028BB01
4D028BB06
4D028BC17
4D028BD02
4D028BD16
4D028BE00
(57)【要約】
【課題】半回分式処理装置を用いた水処理において、エネルギー消費量を削減して、処理水の水質悪化を抑制することが可能な水処理方法を提供する。
【解決手段】反応槽26内に有機物を含む被処理水を流入させる流入工程と、反応槽26内の前記被処理水を生物汚泥により生物処理する生物処理工程と、反応槽26内の前記生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記生物処理された処理水を反応槽26から排出させる排出工程とを有する半回分式処理工程と、前記半回分式処理工程で得られた前記処理水を、微生物を保持したろ材を有するろ材層34の上部に散布して、ろ材層34内に前記処理水を流下させてろ過する散水ろ床処理工程と、を有することを特徴とする水処理方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽内に有機物を含む被処理水を流入させる流入工程と、前記反応槽内の前記被処理水を生物汚泥により生物処理する生物処理工程と、前記反応槽内の前記生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記生物処理された処理水を前記反応槽から排出させる排出工程とを有する半回分式処理工程と、
前記半回分式処理工程で得られた前記処理水を、微生物を保持したろ材を有するろ材層の上部に散布して、前記ろ材層内に前記処理水を流下させてろ過する散水ろ床処理工程と、を有することを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
前記反応槽の排出口を流入口よりも上方に設け、前記被処理水を前記流入口から前記反応槽内に流入させることにより、前記処理水を前記排出口から排出することを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記ろ材層を逆洗する逆洗工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
反応槽を有し、前記反応槽内に有機物を含む被処理水を流入させる流入工程と、前記反応槽内の前記被処理水を生物汚泥により生物処理する生物処理工程と、前記反応槽内の前記生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記生物処理された処理水を前記反応槽から排出させる排出工程とを行う半回分式処理装置と、
微生物を保持したろ材を有するろ材層を収容したろ過槽を備え、半回分式処理装置で得られた前記処理水を、前記ろ材層の上部に散布して、前記ろ材層内に前記処理水を流下させてろ過する散水ろ床処理装置と、を有することを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
前記反応槽の排出口は流入口よりも上方に設けられており、前記被処理水が前記流入口から前記反応槽内に流入されることにより、前記処理水が前記排出口から排出されることを特徴とする請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記ろ材層を逆洗する逆洗装置を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水処理方法及び水処理装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生物学的排水処理には、フロックと呼ばれる微生物の集合体(好気性生物汚泥)を活用した活性汚泥法が用いられている。しかし、活性汚泥法では、沈殿池でフロック(好気性生物汚泥)と処理水とを分離する際、フロックの沈降速度が遅いために沈殿池の表面積を非常に大きくしなければならない場合がある。また、活性汚泥法の処理速度は、生物処理槽内の汚泥濃度に依存しており、汚泥濃度を高めることで処理速度を増加させることができるが、バルキング等の固液分離障害が発生するなどにより、処理を維持することができなくなる場合がある。
【0003】
一方、嫌気性生物処理では、グラニュールと呼ばれる微生物が緻密に集合し粒状となった集合体を活用することが一般的である。グラニュールは非常に沈降速度が速く、微生物が緻密に集合しているため、生物処理槽内の汚泥濃度を高くすることができ、排水の高速処理を実現することが可能である。しかし、嫌気性生物処理は、好気性処理(活性汚泥法)に比べて処理対象の排水種が限られていることや、処理水温を30~35℃程度に維持する必要がある等の問題点を有する場合がある。また、嫌気性生物処理単独では、処理水の水質が悪く、河川等へ放流する場合には、別途、活性汚泥法等の好気性処理を実施することが必要となる場合もある。
【0004】
近年、排水を間欠的に反応槽に流入させる半回分式処理装置を用いることで、嫌気性生物汚泥に限られず、好気性生物汚泥でも沈降性の良いグラニュール化した生物汚泥を形成できることが明らかとなってきた(例えば、特許文献1~4参照)。グラニュール化さした生物汚泥は、例えば、平均粒径が0.2mm以上となり、沈降速度が5m/h以上となる。なお、半回分式の生物処理では、1つの反応槽で(1)排水の流入、(2)生物汚泥による排水の生物処理、(3)生物汚泥の沈降、(4)処理水の排出といった工程を繰り返し行うものが一般的である。
【0005】
また、特許文献5には、(1)排水の流入及び処理水の排出、(2)生物汚泥による排水の生物処理、(3)生物汚泥の沈降といった工程を繰り返し行う生物処理方法が開示されている。これにより、グラニュール化した生物汚泥のように沈降性の高い生物汚泥を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/024638号
【特許文献2】特開2008-212878号公報
【特許文献3】特許第4975541号公報
【特許文献4】特許第4804888号公報
【特許文献5】特開2016-77931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
グラニュールを用いた半回分式処理装置では、効率的に排水中の有機物や栄養塩類の除去が可能となる一方で、反応槽内の汚泥中に含まれる比較的沈降速度の遅い汚泥が処理水中に流出して処理水質が悪化することがあった。また、半回分式処理装置でより効率的にグラニュールを形成するために、反応槽の排出口を流入口よりも上方に設けて、排水を流入口から反応槽に流入させると同時に、反応槽内の処理水を排出口から排出する方式が採用されることがあるが、このような場合、処理水中に排水がわずかに混入してしまい、処理水質が悪化することがあった。
【0008】
半回分式処理装置から排出される処理水の水質をより清澄なものにするには、半回分式処理装置の後段に活性汚泥法等の異なる生物処理装置を設けることが望ましい。しかし、後段の生物処理装置には、前段の半回分式処理装置から間欠的に排出される処理水が供給されるため、負荷変動が生じて、安定した処理が困難となる場合がある。そして、後段の生物処理装置で安定した処理を行うためには、過大な曝気動力が必要となるため、エネルギー消費量が増大してしまうという課題がある。
【0009】
本開示の目的は、半回分式処理装置を用いた水処理において、エネルギー消費量を削減して、処理水の水質悪化を抑制することが可能な水処理方法及び水処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、反応槽内に有機物を含む被処理水を流入させる流入工程と、前記反応槽内の前記被処理水を生物汚泥により生物処理する生物処理工程と、前記反応槽内の前記生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記生物処理された処理水を前記反応槽から排出させる排出工程とを有する半回分式処理工程と、前記半回分式処理工程で得られた前記処理水を、微生物を保持したろ材を有するろ材層の上部に散布して、前記ろ材層内に前記処理水を流下させてろ過する散水ろ床処理工程と、を有することを特徴とする水処理方法である。
【0011】
また、前記水処理方法において、前記反応槽の排出口を流入口よりも上方に設け、前記被処理水を前記流入口から前記反応槽内に流入させることにより、前記処理水を前記排出口から排出することが好ましい。
【0012】
また、前記水処理方法において、前記ろ材層を逆洗する逆洗工程を有することが好ましい。
【0013】
また、本開示の一態様は、反応槽を有し、前記反応槽内に有機物を含む被処理水を流入させる流入工程と、前記反応槽内の前記被処理水を生物汚泥により生物処理する生物処理工程と、前記反応槽内の前記生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記生物処理された処理水を前記反応槽から排出させる排出工程とを行う半回分式処理装置と、微生物を保持したろ材を有するろ材層を収容したろ過槽を備え、半回分式処理装置で得られた前記処理水を、前記ろ材層の上部に散布して、前記ろ材層内に前記処理水を流下させてろ過する散水ろ床処理装置と、を有することを特徴とする水処理装置である。
【0014】
また、前記水処理装置において、前記反応槽の排出口は流入口よりも上方に設けられており、前記被処理水が前記流入口から前記反応槽内に流入されることにより、前記処理水が前記排出口から排出されることが好ましい。
【0015】
また、前記水処理装置において、前記ろ材層を逆洗する逆洗装置を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、半回分式処理装置を用いた水処理において、エネルギー消費量を削減して、処理水の水質悪化を抑制することが可能な水処理方法及び水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る水処理装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係る水処理装置の他の一例を示す概略構成図である。
図3】本実施形態の水処理装置の動力計算に使用した装置構成図である。
図4】参考例の装置の動力計算に使用した装置構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の実施形態について以下説明する。本実施形態は本開示を実施する一例であって、本開示は本実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る水処理装置の一例を示す概略構成図である。水処理装置1は、半回分式処理装置10、散水ろ床処理装置12、排水調整槽14、処理水調整槽16、処理水槽18、ポンプ(20a,20b)、流入ライン(22a,22b,22c,22d,22e)、処理水排出ライン24を備える。
【0020】
半回分式処理装置10は、反応槽26、曝気用ブロア28及び曝気装置30を備えている。曝気装置30は、曝気用ブロア28に接続され、反応槽26内の下部に設置されている。また、反応槽26には、汚泥排出ライン32が接続されている。
【0021】
散水ろ床処理装置12は、微生物を保持したろ材を有するろ材層34、ろ材層34を収容したろ過槽36、散水装置を備えている。散水装置は、分配ライン38と、分配ライン38に接続された複数の散水ノズル40とを備えている。ろ過槽36は、ろ材層34と、ろ材層34より上の上層42と、ろ材層34より下の下層44とに区分けされる。散水装置は、上層42側に配置されている。ろ材層34には、上層42側から下層44側に向けて処理水が自然流下できる程度の空隙を形成するように、複数のろ材が充填される。なお、ろ材層34の底部には、ろ材の流出を防止するために、ろ材流出防止用のネットを設置することが望ましい。ろ材に付着する微生物は、例えば、有機物を分解するBOD(Biochemical oxygen demand)酸化菌や、アンモニア性窒素を分解する硝化菌等が挙げられるが、処理水に含まれる有機物等の汚濁物質を生物処理するものであれば、これに限られない。
【0022】
流入ライン22aは排水調整槽14に接続されている。流入ライン22bの一端が、排水調整槽14内に設置されたポンプ20aに接続され、流入ライン22bの他端が反応槽26に接続されている。流入ライン22cの一端が反応槽26に接続され、流入ライン22cの他端が処理水調整槽16に接続されている。流入ライン22dの一端が、処理水調整槽16内に設置されたポンプ20bに接続され、流入ライン22dの他端が分配ライン38に接続されている。流入ライン22eの一端が下層44側のろ過槽36に接続され、流入ライン22eの他端が処理水槽18に接続されている。処理水槽18には処理水排出ライン24が接続されている。
【0023】
図1に示す水処理装置1は逆洗装置を備えている。図1に示す逆洗装置は、逆洗用ポンプ46、逆洗排水ライン(48a,48b,48c)から構成されている。逆洗用ポンプ46は処理水槽18内に設置されている。逆洗排水ライン48aの一端は逆洗用ポンプ46に接続され、逆洗排水ライン48aの他端は下層44側のろ過槽36に接続されている。逆洗排水ライン48bの一端は上層42側のろ過槽36に接続され、逆洗排水ライン48bの他端は処理水調整槽16に接続されている。逆洗排水ライン48cの一端は流入ライン22dに接続され、逆洗排水ライン48cの他端は排水調整槽14に接続されている。
【0024】
以下に、水処理装置1の動作例を説明する。
【0025】
有機物を含有する被処理水(以下、被処理水)は、流入ライン22aを通り排水調整槽14に貯留される。ポンプ20aを稼働させ、排水調整槽14内の被処理水を流入ライン22bから反応槽26内に所定量流入させる(流入工程)。ポンプ20を停止した後、曝気用ブロア28を稼働させ、曝気用ブロア28から供給される空気等の酸素含有気体を、曝気装置30を通して反応槽26に供給する。これにより、反応槽26内では、被処理水が生物汚泥により生物処理される(生物処理工程)。生物反応は好気反応に限らず、空気等の供給は行わず、撹拌を行うことで無酸素反応を行うことも可能であるし、好気反応および無酸素反応を組み合わせてもよい。無酸素状態とは、溶存酸素は存在しないが、亜硝酸や硝酸由来の酸素等は存在している状態をいう。生物処理工程を実施した後、曝気用ブロア28の稼働を停止して、所定の時間、静置状態にして、反応槽26内の生物汚泥を沈降させる(沈降工程)。沈降工程終了後、流入ライン22cに設けたバルブを開放し、沈降工程で得られた上澄み水を処理水として、反応槽26から排出させる(排出工程)。反応槽26から排出した処理水は流入ライン22cから処理水調整槽16に供給される。なお、反応槽26の底部に沈降した生物汚泥は、例えば、定期的に汚泥排出ライン32から排出される。
【0026】
半回分式処理装置10では、流入工程、生物処理工程、沈降工程、排出工程の順で行う処理を1サイクルとして、これを繰り返し行い、被処理水の処理を行う(半回分式処理工程)。但し、半回分式処理装置10による半回分式処理工程は、流入工程と排出工程を別々に行う形態に限定されず、流入工程を行いながら、排出工程を行う形態でもよい。すなわち、流入工程/排出工程、生物処理工程、沈降工程の順で行う処理を1サイクルとして、これを繰り返し行い、被処理水の処理を行ってもよい。図1の水処理装置1を例に説明すると、ポンプ20aを稼働させると共に流入ライン22cに設けたバルブを開放して、被処理水を流入ライン22bから反応槽26に流入させながら、反応槽26内の処理水を流入ライン22cへ排出させる((1)流入工程/排出工程)。所定時間経過後、バルブを閉じて、曝気用ブロア28を稼働させる。曝気用ブロア28から供給される空気等の酸素含有気体が、曝気装置30を通じて反応槽26に供給されることで、反応槽26内で、被処理水が生物汚泥により生物処理される((2)生物処理工程)。次に、曝気用ブロア28の稼働を停止して、所定の時間、静置状態にして、反応槽26内の生物汚泥を沈降させる((3)沈降工程)。
【0027】
次に、ポンプ20bを稼働させ、流入ライン22dに設けたバルブを開放し、処理水調整槽16内の処理水を、流入ライン22dから分配ライン38に流入させる。そして、分配ライン38を通る処理水を各散水ノズル40からろ材層34の上部に散布して、ろ材層34内を流下させてろ過する(散水ろ床処理工程)。この際、ろ材層34内を流下する処理水中の有機物等は、ろ材表面の微生物により生物処理される。ろ材層34によりろ過(ろ過にはろ材表面の微生物による生物処理も含む)された処理水を下層44から流入ライン22eに排出して、処理水槽18に供給する。なお、処理水槽18内の処理水は、処理水排出ライン24から系外へ排出されるか、又は後述する逆洗水に利用される。
【0028】
生物汚泥がろ材に過剰に付着すると処理水の水質悪化に繋がるため、定期的に逆洗をすることが好ましい。以下、逆洗工程の一例を説明する。まず、逆洗用ポンプ46を稼働させ、流入ライン22dのバルブを閉じ、逆洗排水ライン48cのバルブを開放して、処理水槽18内の処理水(逆洗水)を逆洗排水ライン48aからろ過槽36の下層44に供給し、ろ材層34を上向流で通水して、ろ材層34を逆洗する。ろ材層34を通過した処理水(逆洗排水)は逆洗排水ライン48bから処理水調整槽16に排出される。また、処理水調整槽16内に溜められた逆洗排水は、ポンプ20bを稼働させ、逆洗排水ライン48cから排水調整槽14に排出される。
【0029】
図2は、本実施形態に係る水処理装置の他の一例を示す概略構成図である。図2の水処理装置2において、図1に示す水処理装置1の構成と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図2に示す水処理装置2では、半回分式処理装置10を構成する反応槽26において、反応槽26内の処理水を排出する排出口52が、反応槽26内に被処理水を流入させる流入口50よりも上方に設置されている。このような反応槽26を使用して前述の半回分式処理工程を行う場合には、流入工程と排出工程を別々に行う形態より、流入工程を行いながら、排出工程を行う形態の方が好ましい。すなわち、被処理水を流入口50から反応槽26内に流入させながら、反応槽26内の処理水を排出口52から排出させる流入工程/排出工程を行うことが好ましい。これにより、例えば、反応槽26内の生物汚泥のグラニュール化をより進行させることや排水の流入割合(反応槽26有効容積に対して)を高く運転することが可能となる。
【0030】
図2に示す水処理装置2には、処理水調整槽16を設けていない。したがって、反応槽26から排出される処理水はそのまま流入ライン22cから散水装置の分配ライン38に供給される。また、逆洗工程によりろ材層34を通過した逆洗排水は、逆洗排水ライン48bから排水調整槽14に直接排出される。
【0031】
本実施形態の水処理装置のように、半回分式処理装置10の後段に散水ろ床処理装置12を設けて、半回分式処理後の処理水を散水ろ床処理することで、半回分式処理後の処理水と共に流出した生物汚泥や有機物等の懸濁物質がろ過(生物処理も含む)されるため、最終的に得られる処理水の水質悪化を抑制できる。また、散水ろ床処理は、活性汚泥法による生物処理と比べて、過大な曝気動力が不要であるため、エネルギー消費量の削減を図ることができる。なお、散水ろ床処理装置12のろ過槽36にも曝気装置を設置して、槽内を曝気してもよい。但し、散水ろ床処理装置12の場合には、過大な曝気動力を投入しなくても、処理水の水質悪化を抑制できる。以下、本実施形態の水処理装置のエネルギー消費量についての具体的な計算結果を示す。
【0032】
図3は、本実施形態の水処理装置の動力計算に使用した装置構成図であり、図4は、参考例の装置の動力計算に使用した装置構成図である。図3に示す本実施形態の水処理装置の動力は、半回分式処理装置の反応槽を曝気するブロア、ろ材層を逆洗する際に使用する逆洗用ポンプの動力の総和である。参考例の装置は、活性汚泥法により連続的に排水を処理する活性汚泥反応槽と、当該反応槽で処理された処理水から清澄な最終処理水を得るための最終沈殿池とから構成されている。そして、参考例の装置の動力は、活性汚泥反応槽を曝気するブロアと、最終沈殿池に堆積した汚泥を活性汚泥反応槽に返送するポンプの動力の和である。なお、本実施形態の反応槽に被処理水を供給するポンプの動力及び参考例の活性汚泥反応槽に被処理水を供給するポンプの動力は同程度であるため、本実施形態及び参考例の動力計算から省いている。
【0033】
図3の本実施形態の水処理装置及び図4の参考例の装置のいずれも、最終的に得られる処理水の水質は同じ(BOD除去率=100%、アンモニア除去率=80%)と仮定し、それぞれの装置の動力を以下のようにして計算した。
【0034】
流入水質条件は、表1の通りであり、処理水量は1000m/日とした。また、実施例はSBR槽と散水ろ床法を直列に配列したものであり、散水ろ床にはろ床の洗浄用に使用する処理水を貯める処理水槽を設置した。比較例では、活性汚泥法による処理であり、反応槽と沈殿池で構成した。各反応槽の運転条件は表2の通りである。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
また、SBRと活性汚泥反応槽における必要空気量は下水道施設計画・設計指針と解説に記載されている方法を参考として下記の通り実施した。各種パラメーターは表3に記載の通りとした。また、各処理方式の装置条件は表4-1、4-2、4―3に記載の通りであり、動力計算用の電力原単位は表5に記載した。
【0038】
【数1】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
装置の動力を算出する計算式は以下の通りである。
【数2】
【0043】
装置の動力を計算した結果、図3の本実施形態の水処理装置の動力は、図4の比較例の装置の動力に対して36%程度削減することが可能であった。また、図3の本実施形態の水処理装置に使用したブロワの動力は、図4の比較例の装置のブロワの動力に対して20%削減することが可能であった。さらに、図3の本実施形態の水処理装置に使用したポンプの動力は、図4の比較例の装置のポンプの動力に対して90%削減することが可能であった。このように、本実施形態の水処理装置によれば、少ないエネルギー消費量で、良好な水質(例えば、BOD除去率=100%、アンモニア除去率=80%)の処理水を得ることが可能となる。
【0044】
また、図3の本実施形態の水処理装置及び図4の参考例の装置のいずれも、最終的に得られる処理水の水質は同じ(BOD除去率=100%、アンモニア除去率=80%)と仮定し、それぞれの装置のフットプリント(設置面積)を以下の計算式により算出した。
【数3】
【0045】
装置のフットプリントを計算した結果、図3の本実施形態の水処理装置のフットプリントは、図4の参考例の装置のフットプリントに対して36%削減することが可能であった。
【0046】
以下、本実施形態の水処理装置の各構成や処理条件等の詳細について説明する。
【0047】
処理対象となる有機物を含有する被処理水は、例えば、有機物等を含む排水等が挙げられ、具体的には、食品加工工場排水、化学工場排水、半導体工場排水、機械工場排水、下水、し尿等の生物分解性有機物を含有する有機性排水等が挙げられる。これらの中では、特に清澄な処理水質が求められる下水が好ましい。また、半回分式処理装置10における曝気風量の削減という観点では、受け入れる下水は、一次処理(沈殿やスクリーンによる固形物除去処理)がされ、SS濃度として200mg/L以下にまで低減されていることが好ましい。但し、半回分式処理装置10においてグラニュールを形成する上では固形成分が多く含まれていても大きな懸案とはならないことから、一次処理を実施する設備の設置面積の確保が困難である場合等においては、一次処理が行われていない生下水(排水中SS濃度として、~1000mg/L)を適用することも可能である。
【0048】
反応槽26の容積負荷は、0.15kgBOD/m/日~1.00kgBOD/m/日の範囲であることが好ましく、0.30kgBOD/m/日~0.60kgBOD/m/日の範囲がより好ましい。反応槽26の容積負荷を上記範囲とすることにより、より良好なグラニュールを形成することが可能となる。
【0049】
反応槽26の汚泥負荷は、0.05kgBOD/kgMLSS/日~0.30kgBOD/kgMLSS/日の範囲であることが好ましく、0.10kgBOD/kgMLSS/日~0.20kgBOD/kgMLSS/日の範囲がより好ましい。反応槽26の汚泥負荷を上記範囲とすることにより、より良好なグラニュールを形成することが可能となる。
【0050】
反応槽26内の溶存酸素(DO)は、好気条件では、0.5mg/L以上、特に1mg/L以上とすることが好ましい。
【0051】
生物汚泥のグラニュール化を促進させる点で、反応槽26内の被処理水または反応槽26に導入される前の被処理水に、Fe2+、Fe3+、Ca2+、Mg2+等を含む、水酸化物が形成されるようなイオンを添加してもよい。上記イオンの添加により、グラニュールの核形成を促進させることが可能となる。
【0052】
半回分式処理装置10による半回分式処理工程を実施することで、反応槽26内には、自己造粒が進んだ生物汚泥(所謂グラニュール汚泥)を形成することが可能である。なお、グラニュール汚泥とは、例えば、平均粒径が0.2mm以上、もしくは沈降性指標であるSVI5が80mL/g以下の汚泥である。SVIとは、生物汚泥の沈降性指標であり、以下の方法により求められる。まず、1Lのメスシリンダに1Lの汚泥を投入し、汚泥濃度ができるだけ均一となるように緩やかに撹拌した後、5分間静置したときの汚泥界面を測定する。そして、メスシリンダにおける汚泥の占める体積率(%)を計算する。次に、汚泥のMLSS(mg/L)を測定する。これらを下記式に当てはめて、SVI5を算出する。SVI30を算出する場合は、上記5分間静置を30分静置に変更すればよい。
SVI5(mL/g)=汚泥の占める体積率×10,000/MLSS
【0053】
散水ろ床処理装置12に使用されるろ材は、特に限定されないが、例えば、砕石、ポリウレタン製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製のものが挙げられる。ろ材は、例えば、微生物が付着する表面積が大きいものが好ましい。ろ材の形状は、特に限定されず、立方体状等の四角体状、粒状、球状、ペレット状、円筒状、繊維状、フィルム状等が挙げられる。ろ材の投入量は、例えば、ろ過槽36の容積に対して40~80%の範囲が好ましい。
【符号の説明】
【0054】
1,2 水処理装置、10 半回分式処理装置、12 散水ろ床処理装置、14 排水調整槽、16処理水調整槽、18 処理水槽、20a,20b ポンプ、22a~22e 流入ライン、24 処理水排出ライン、26 反応槽、28 曝気用ブロア、30 曝気装置、32 汚泥排出ライン、34 ろ材層、36 ろ過槽、38 分配ライン、40 散水ノズル、42 上層、44 下層、46 逆洗用ポンプ、48a~48c 逆洗排水ライン、50 流入口、52 排出口。
図1
図2
図3
図4