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  • 特開-炭化装置 図1
  • 特開-炭化装置 図2
  • 特開-炭化装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148089
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】炭化装置
(51)【国際特許分類】
   C10B 49/02 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
C10B49/02
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061009
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】514032773
【氏名又は名称】CYC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】田口 幸示
(57)【要約】
【課題】炭化処理の初期段階における上記逆火現象の発生を有効に阻止し、ひいては安全性の高い新規な炭化装置を提供する。
【解決手段】
加熱バーナー16により内部が加熱される加熱室5内に配置された乾留ボックス6と、この乾留ボックス6内に収容され内部には炭化処理される有機物が収容された処理物収容容器12と、上記乾留ボックス6内で発生した乾留ガスを乾留バーナー14に供給する乾留ガス流路21と、この乾留ガス流路21の中途部には、該乾留バーナー14側に向けて水蒸気発生装置27からの水蒸気を噴射する水蒸気噴射ノズル26が配置されてなる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱バーナーにより内部が加熱される加熱室内に配置された乾留ボックスと、この乾留ボックス内に収容され内部には炭化処理される有機物が収容された処理物収容容器と、上記乾留ボックス内で発生した乾留ガスを乾留バーナーに供給する乾留ガス流路と、この乾留ガス流路の中途部には、該乾留バーナー側に向けて水蒸気発生装置からの水蒸気を噴射する水蒸気噴射ノズルが配置されてなることを特徴とする炭化装置。
【請求項2】
前記乾留ボックス内には、前記処理物収容容器に向けて前記水蒸気発生装置からの水蒸気を噴射するボックス側水蒸気噴射ノズルが配置されてなることを特徴とする請求項1記載の炭化装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を加熱して炭化し炭化物を得る際に使用する炭化装置に関し、特に、加熱の初期段階における安全性の確保を目的とした炭化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化装置は、炭化物を得ることを目的に使用されるものであるが、近年は廃棄物としての有機物を原料として炭化物を得る炭化装置は、これまで多用されてきた焼却装置に比べて二酸化炭素の排出やダイオキシンの発生を大きく抑制することができ、また、該炭化装置により得られた炭化物を燃料,土壌改良剤或いは調湿材等としてリサイクルが可能となる等のメリットから、各種の炭化装置(炭化炉)が提案され実施されている。
【0003】
ところで、これまでの炭化装置の中には、炭化処理する有機物が内部に収容される収容容器と、この収容容器を囲む乾留ボックスと、この乾留ボックスの下方に形成され該乾留ボックスと連通してなる燃焼室と、この燃焼室内を加熱する加熱バーナーと、この加熱バーナーにより上記有機物が加熱されることにより発生する乾留ガスを上記乾留ボックスから上記燃焼室内に送る管路とを備えたものが開示されている(特許文献1参照)。この特許文献1に開示された炭化装置では、炭化処理の初期段階では、上記加熱バーナーにより上記燃焼室が加熱されるとともに、上記収容容器内に収容された有機物も加熱され、こうした初期段階が経過すると、上記加熱された有機物から発生した乾留ガスが上記管路を介して上記燃焼室内に還流される。この管路であって、上記燃焼室に近接した部位には乾留バーナーが配置され、この乾留バーナーにより乾留ガスを燃焼させることにより上記有機物は炭化処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-82252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された炭化装置では、以下に記載する課題を有する。すなわち、この炭化装置全体は内部が密閉されているものの、上述した初期段階においては、該炭化装置内には空気が存在し、上記加熱バーナーにより加熱温度が上昇して有機物の炭化処理が進んで上記乾留ガスが上記管路を介して上記燃焼室内に流入する過程においては、上記密閉された炭化装置内の気体が膨張するばかりではなく、上記乾留ガスが上記空気と混合されて上記加熱バーナーの火炎が上記管路内において逆火現象が発生し、場合によっては該炭化装置内において爆発する。
【0006】
なお、こうした加熱バーナーの火炎が上記管路内において逆火することを防止する(防爆する)手段としては、上記炭化処理の初期段階において、上記乾留ボックス内に窒素ガスを噴射する方法があり、或いは、上記特許文献1にも開示されているように、水蒸気を噴射する方法もあるが、未だ十分ではない。
【0007】
そこで、本発明は、上述した従来の炭化装置が有する課題を解決するために提案されたものであって、炭化処理の初期段階における上記逆火現象の発生を有効に阻止し、ひいては安全性の高い新規な炭化装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、加熱バーナーにより内部が加熱される加熱室内に配置された乾留ボックスと、この乾留ボックス内に収容され内部には炭化処理される有機物が収容された処理物収容容器と、上記乾留ボックス内で発生した乾留ガスを乾留バーナーに供給する乾留ガス流路と、この乾留ガス流路の中途部には、該乾留バーナー側に向けて水蒸気発生装置からの水蒸気を噴射する水蒸気噴射ノズルが配置されてなることを特徴とするものである。
【0009】
この第1の発明に係る炭化装置による炭化処理の初期段階において、上記加熱バーナーにより加熱室の温度が上昇するとともに、上記乾留ボックス内に収容された収容容器内の有機物が加熱され、やがて該加熱された有機物の炭化が進むと、該有機物からは乾留ガスが発生する。また、この段階では上記乾留ボックス内の空気が混入された乾留ガスは膨張する。そして、上記乾留ボックス内の空気が混入した乾留ガスは、上記乾留ガス流路を通って乾留バーナーに流れる。このとき、上記乾留ガス流路内に配置された水蒸気噴射ノズルからは、下流側である乾留バーナー方向に向かって水蒸気が噴射される。したがって、こうした水蒸気噴射ノズルによる水蒸気の噴射により、該乾留バーナーの火炎が逆火することを有効に防止することができる。
【0010】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記乾留ボックス内には、前記処理物収容容器に向けて前記水蒸気発生装置からの水蒸気を噴射するボックス側水蒸気噴射ノズルが配置されてなることを特徴とするものである。
【0011】
この第2の発明に係る炭化装置では、上記水蒸気発生装置からの水蒸気が、上記乾留ガス流路内に噴射されるかりではなく、乾留ボックス内にも噴射されることから、乾留バーナーの火炎が逆火するだけではなく、仮に該逆火が発生した場合であってもこの炭化装置の爆発を防止することができるとともに上記乾留ボックス内を高温化することができ高い品質の炭化物を得ることができる。なお、上記ボックス側水蒸気噴射ノズルからの水蒸気の噴射は、上記水蒸気噴射ノズルからの水蒸気の噴射と同じタイミングで噴射される場合の他、該水蒸気噴射ノズルからの水蒸気の噴射を終了させた後に噴射されるものであっても良い。
【発明の効果】
【0012】
上記発明によれば、炭化処理の初期段階における上記逆火現象の発生を有効に阻止し、ひいては安全性の高い新規な炭化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】炭化装置を模式的に示す側面図である。
図2図1に示す炭化装置を構成する乾留ガス流路等を示す断面図である。
図3】ボイラから噴射ノズル及び撹拌ノズルまでの配管構成を模式的に示す配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態に係る炭化装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態に係る炭化装置1は、図1又は図2に示すように、全体形状が箱状に成形され、H型鋼等のベース部材2上に載置され固定されてなるものであり、正面には後述する処理物収容容器を出し入れする開口((符号は省略する。)及びこの開口を閉塞及び開放する開閉扉3が配置されている。なお、上記炭化装置1の天井部分、4つの側壁部分及び床部分の内側のそれぞれには断熱材(符号は省略する。)が固定され、また、上記開閉扉3の内側にも断熱材(符号は省略する。)が固定され、この炭化装置1内の熱損失が防止されている。
【0015】
そして、上記炭化装置1の内部には、後述する加熱バーナー16や乾留バーナー14により加熱される燃焼室11や該燃焼室11の外側に形成された加熱室5を備え、この加熱室5内には、乾留ボックス6が配置されている。この乾留ボックス6は、上記炭化装置1に形成された上記開口近傍に配置された図示しない複数の支持部材により支持されてなるものであり、天板8と、底板9と、背面側の側板10を含めた3つの側板とを備え、正面は開放されているとともに、この開放された部位は上記開閉扉3により開閉される部位である。なお、上記乾留ボックス6の背面側の側板10の上端側には、後述する乾留ガス流路の一端が取り付けられ、該乾留ボックス6内で発生した乾留ガスがこの乾留ガス流路内に流入するように構成されている。
【0016】
また、上記乾留ボックス6内は、処理物収容容器12が配置される部位とされている。すなわち、この処理物収容容器12は、上記開閉扉3を開放することにより、上記乾留ボックス6内に配置され、その後該開閉扉3を閉塞し、さらに所定の炭化処理が終了した場合には、該開閉扉3を開放してこの炭化装置1から取り出されるものである。そして、この処理物収容容器12は、炭化処理される有機物が収容される容器であり、金網その他内部と外部とが連通する多数の開口が形成された箱状に成形されたものである。なお、上記乾留ボックス6内であって、上記処理物収容容器12の上方には、後述するように、上記該処理物収容容器12内に収容された有機物に水蒸気を噴射するとともに乾留ボックス6内の気体を撹拌する撹拌ノズル28が配置されている。この撹拌ノズル28は、本発明を構成するボックス側水蒸気噴射ノズルである。
【0017】
そして、この炭化装置1の背面側の側板10の中途部には、図2に示すように、後述する乾留ガス流路21の中途部が挿通された管路挿通用開口(符号は省略する。)が形成され、また、該乾留ガス流路21の中途部が挿通された部位よりも下方には、乾留バーナー用開口10bが形成され、さらにこの乾留バーナー用開口10bの下方には加熱バーナー用開口10cが形成されている。そして、上記乾留バーナー用開口10bには乾留バーナー支持部材13が固定されている。この乾留バーナー支持部材13は、円筒状に成形され乾留バーナー14の先端側から中途部が挿入され固定された円筒部13aと、この円筒部13aの基端であって上記炭化装置1の背面側の側板10の外側に露出されたフランジ部13bとから構成されている。上記乾留バーナー14は、後述するように乾留ガスを燃焼させるバーナーであり、該乾留バーナー14の中途部には上記フランジ部13bに当接しボルト等の図示しない締結具を介して該フランジ部13bに固定されるバーナー側フランジ部14aが形成されている。また、加熱バーナー用開口10cには加熱バーナー支持部材15が固定されている。この加熱バーナー支持部材15は、円筒状に成形され加熱バーナー16の先端側から中途部が挿入され固定された円筒部15aと、この円筒部15aの基端であって上記炭化装置1の背面側の側板10の外側に露出されたフランジ部15bとから構成されている。上記加熱バーナー16は、この炭化装置1による炭化処理の初期段階で燃料の燃焼により該炭化装置1内を加熱するバーナーであり、該加熱バーナー16の中途部には上記フランジ部15bに当接しボルト等の図示しない締結具を介して該フランジ部15bに固定されるバーナー側フランジ部16aが形成されている。なお、上記炭化装置1の背面側の側板10の内側であって、上記乾留バーナー支持部材13や加熱バーナー支持部材15の周囲は断熱材(符号は省略する。)により囲まれている。また、この炭化装置1の上記加熱室5内には、該加熱室5内の気体を外部に排出するガス取込口18(図1参照)が形成され、このガス取込口18は、図示しない排気塔を介して外部に排出(排気)されるように構成されている。
【0018】
そして、上述したように、この炭化装置1は、上記乾留ボックス6の背面側の側板10の上端側に以下の乾留ガス流路21の一端が取り付けられ、該乾留ボックス6内で発生した乾留ガスがこの乾留ガス流路21内に流入するように構成されている。この乾留ガス流路21は、図1又は図2に示すように、第1ないし第8の金属製の管体21a・・・21hからなり、上記第1の管体21aは、その先端が上記乾留ボックス6に固定され該乾留ボックス6内と連通され、該乾留ボックス6内の乾留ガスが流入するものであり、上記第8の管体21hの中途部は上記管路挿通用開口に挿通され、該第8の管体21hの先端側は、この炭化装置1の外部に露出してなり、その先端は図2に示す第1の4方管継手22に接続されている。この第1の4方管継手22は、金属製の継手であり、上記第8の管体21hの先端が接続された部位の延長側は閉塞され、該第8の管体22hの中心から下方に形成された部位は、金属製の接続管23を介して第2の4方管継手25に接続されている。この第2の4方管継手25の下方(上記加熱バーナー16側)と上記乾留バーナー14側とは反対側は何れも閉塞され、該乾留バーナー14側が開放されている。したがって、上記乾留ガス流路21内に流入した乾留ガスは、上記第1の4方管継手22と上記接続管23と上記第2の4方管継手25内を通過して上記乾留バーナー14に供給され、該乾留バーナー14による火炎が上記燃焼室11内に供給される。
【0019】
そして、本発明を構成する乾留ガス流路21を構成する上記接続管23内には、上記乾留バーナー14側である上記第2の4方管継手25方向に水蒸気を噴射する噴射ノズル26が配置されている。この噴射ノズル26は、図3に示すように、本発明を構成する水蒸気発生装置としてのボイラ27に接続され、このボイラ27は上記乾留ボックス6内に配置された撹拌ノズル28に接続されている。以下、上記ボイラ27から上記噴射ノズル26迄の流路の配管構成及び該ボイラ27から上記撹拌ノズル28迄の流路の配管構成を説明する。
【0020】
上記ボイラ27は、図3に示すように、水蒸気用管路31を介して上記噴射ノズル26に接続されている。この水蒸気用管路31の途中には、減圧弁32が配置され該減圧弁32を挟んだ上流側と下流側とには、第1の手動バルブ33と第2の手動バルブ34が配置されている。また、上記第1のバイパス管路35よりも上流側には、上記ボイラ27側から上記減圧弁32方向に流れる上記水蒸気用管路31内の圧力を計測する第1の圧力計37が配置され、該水蒸気用管路31からこの第1の圧力計37の途中には、第3の手動バルブ38が配置されている。また、上記第2の手動バルブ34の下流側には、上記減圧弁32によって減圧された圧力を計測し手前に第4の手動バルブ39が配置された第2の圧力計40が配置されている。そして、この第2の圧力計40の下流側には、その上流側に配置された第5の手動バルブ41と下流側に配置された第6の手動バルブ42とにより挟まれた流量計43が配置されている。なお、上記第2の圧力計40と上記第5の手動バルブ41との間には、流量計調整バルブ44が配置されている。
【0021】
また、上記流量計調整バルブ44の下流側であって上記第5の手動バルブ41の上流側から上記第6の手動バルブ42の下流側までの間には、第2のバイパス管路45が配置されており、この第2のバイパス管路45の途中には、第7の手動バルブ46が配置されている。また、上記第6の手動バルブ42の下流側には、下流側に配置された第8の手動バルブ47と上流側に配置された第9の手動バルブ48とにより挟まれた第1の電磁弁49が配置されている。そして、上記第9の手動バルブ48の下流側には、途中に第10の手動バルブ50が配置され、該第10の手動バルブ50の下流側に上記噴射ノズル26が配置されている。なお、上記第7の手動バルブ46の下流側と第9の手動バルブ48の上流側との間には、第3のバイパス管路51が設けられおり、この第3のバイパス管路51の途中には第11の手動バルブ52が配置されている。また、上記第10の手動バルブ50と上記噴射ノズル26との間には、第3の圧力計53が配置されている。
【0022】
そして、上記第9の手動バルブ48の下流側には、分岐管路55が設けられ、この分岐管路55の下流側には、先に説明した多数の撹拌ノズル28が設けられている。なお、上記水蒸気用管路31の途中であって、上記第1の圧力計37の上流側、上記流量計調整バルブ44と上記第7の手動バルブ46との間、上記第9の手動バルブ48と上記第10の手動バルブ50との間には、第1ないし第3のドレン管57,58,59が下方(地上側)に向いて配置され、これら第1ないし第3のドレン管57,58,59の下端側には、それぞれドレンのみを排出するスチームトラップ60,61,62が配置されている。
【0023】
したがって、上述した炭化装置1によれば、本発明を構成する乾留ガス流路21を構成する上記接続管23内には、上記乾留バーナー14側に向けて水蒸気発生装置であるボイラ27からの水蒸気を噴射する噴射ノズル26が配置されてなることから、該乾留バーナー14の火炎が逆火することを有効に防止することができる。また、上記炭化装置1では、上記乾留ボックス6内には、上記処理物収容容器12に向けて上記ボイラ27からの水蒸気を噴射するボックス側水蒸気噴射ノズルとしての撹拌ノズル28が配置されてなることから、上述した乾留バーナー14の火炎が逆火することが防止できるばかりではなく、仮に該逆火が発生した場合であってもこの炭化装置1の爆発を防止することができるとともに上記乾留ボックス6内を高温化することができ高い品質の炭化物を得ることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 炭化装置
5 加熱室
6 乾留ボックス
12 処理物収容容器
14 乾留バーナー
16 加熱バーナー
21 乾留ガス流路
26 噴射ノズル
27 ボイラ(水蒸気発生装置)
28 撹拌ノズル(ボックス側水蒸気噴射ノズル)
図1
図2
図3