(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148090
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】端子送り機構
(51)【国際特許分類】
H01R 43/055 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
H01R43/055
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061010
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今泉 博之
(72)【発明者】
【氏名】山中 和之
【テーマコード(参考)】
5E063
【Fターム(参考)】
5E063CA09
5E063CB13
5E063CC05
5E063XA01
(57)【要約】
【課題】端子へのバリの残留を抑制することが可能な端子送り機構を提供することを目的とする。
【解決手段】端子送り機構1は、複数の端子本体T1と、複数の端子本体T1を連結する長尺のキャリア部T2とを有する連鎖端子Tを搬送方向D11に送る端子送り機構である。端子送り機構1は、回転方向R1に回転する回転部材3と、回転部材3に回転方向R1への回転駆動力を付与する駆動部2とを備えている。回転部材3は、駆動部2の回転駆動力によって回転方向R1に回転するときに、連鎖端子Tを搬送方向D11に移動させることができ、回転部材3が回転していないときに、連鎖端子Tを所定の位置に保持できるように、連鎖端子Tと係合する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子本体と、前記複数の端子本体を連結する長尺のキャリア部とを有する連鎖端子を、前記キャリア部の延在方向の一方となる搬送方向に送る端子送り機構であって、
前記端子送り機構は、
前記搬送方向に垂直な回転軸周りの一方の方向である回転方向に回転する回転部材と、
前記回転部材に前記回転方向への回転駆動力を付与する駆動部と
を備え、
前記回転部材は、前記駆動部の回転駆動力によって前記回転方向に回転するときに、前記連鎖端子を前記搬送方向に移動させることができ、前記回転部材が回転していないときに、前記連鎖端子を所定の位置に保持できるように、前記連鎖端子と係合する、
端子送り機構。
【請求項2】
キャリア部は、延在方向に沿って所定のピッチで設けられた複数の係合孔を有し、
前記回転部材は、前記係合孔に係合する係合部を有している、
請求項1記載の端子送り機構。
【請求項3】
前記駆動部は、
前記回転部材に前記回転駆動力を伝達できるように、前記回転部材に連結された駆動回転体を備え、
前記回転部材は、前記駆動回転体の回転に連動して回転するように構成されている、請求項2記載の端子送り機構。
【請求項4】
前記回転部材および前記駆動回転体は、前記回転部材の回転軸方向において、互いに離間している、
請求項3記載の端子送り機構。
【請求項5】
前記回転部材は、前記連鎖端子の一度の搬送における前記搬送方向への移動ピッチに対応した所定の間隔で、前記回転部材の周方向に離間して配置された複数の被係合部を有し、
前記端子送り機構は、前記回転部材を所定の回転位置で保持するように、前記回転部材の前記被係合部に係合する保持係合体をさらに備えている、
請求項1記載の端子送り機構。
【請求項6】
前記駆動回転体は、外周にラチェット歯を有し、
前記駆動部は、
前記駆動回転体のラチェット歯と係合するラチェット爪と、
前記ラチェット爪を、前記駆動回転体を回転軸周りで一方向に回転させるように前記ラチェット歯と係合する駆動方向と、前記駆動方向の反対方向との間で移動させる移動機構と、
前記ラチェット爪を、前記駆動方向に向かって弾性力によって移動させる弾性部材と
を備えている、請求項3に記載の端子送り機構。
【請求項7】
前記端子送り機構は、前記連鎖端子を前記搬送方向の所定の位置で位置決めする位置決め部をさらに備え、
前記位置決め部は、前記連鎖端子を所定の移動ピッチで前記搬送方向に送るごとに、前記キャリア部の係合孔と順次嵌合することで、前記連鎖端子の前記搬送方向に沿う位置を位置決めする、
請求項2に記載の端子送り機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子送り機構に関する。
【背景技術】
【0002】
圧着端子は、たとえば、複数の端子本体と、端子本体を前後方向で連結するキャリア部とを有する連鎖端子を用いて製造される。端子本体を電線に圧着する圧着機構に、連鎖端子の端子本体を搬送方向に次々に送るために、端子送り機構が用いられる。端子送り機構は、たとえば、搬送方向に沿ってキャリア部に複数設けられた係合孔と係合する爪部と、連鎖端子のキャリア部を押圧する押圧部とを有している。この種の端子送り機構は、爪部を搬送方向および後退方向に往復移動させながら、キャリア部の係合孔に次々と係合させることで、連鎖端子を搬送方向に送り、押圧部によってキャリア部を押圧することで、爪部の後退方向への移動に伴って、連鎖端子が、後退方向に移動しないようにしている。上記端子送り機構では、連鎖端子のキャリア部を押圧しながら、連鎖端子を搬送方向に送っているため、キャリア部と押圧部との摺動により、連鎖端子に髭バリなどのバリを生じ易く、ひいては、完成品である圧着端子にバリが残存し易くなる。この残存したバリが、コネクタなどに組み込まれた圧着端子間での短絡不良を生じさせることがある。
【0003】
このような圧着端子の製造時のバリの発生を抑制するために、特許文献1の端子送り機構は、押圧部に代えて、ローラを用いている。特許文献1の端子送り機構では、爪部の後退方向への移動時に、ローラの回転を停止させるように制御することで、連鎖端子のキャリア部とローラとの摺動の度合いを低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の端子送り機構では、ローラを用いることで、摺動の度合いを低減させているものの、ローラを連鎖端子のキャリア部に押圧することで、爪部の後退方向への移動時に、連鎖端子が、後退方向に移動しないようにしている。そのため、依然として、ローラとキャリア部との間に比較的大きな摺動が生じてしまう。
【0006】
そこで、本発明はかかる問題点に鑑みて、端子へのバリの残留を抑制することが可能な端子送り機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る端子送り機構は、複数の端子本体と、前記複数の端子本体を連結する長尺のキャリア部とを有する連鎖端子を、前記キャリア部の延在方向の一方となる搬送方向に送る端子送り機構であって、前記端子送り機構は、前記搬送方向に垂直な回転軸周りの一方の方向である回転方向に回転する回転部材と、前記回転部材に前記回転方向への回転駆動力を付与する駆動部とを備え、前記回転部材は、前記駆動部の回転駆動力によって前記回転方向に回転するときに、前記連鎖端子を前記搬送方向に移動させることができ、前記回転部材が回転していないときに、前記連鎖端子を所定の位置に保持できるように、前記連鎖端子と係合する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態に係る端子送り機構によれば、端子へのバリの残留を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る端子送り機構によって送られる連鎖端子の一例を示す、正面斜視図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係る端子送り機構を含む圧着装置の一例を示す、正面斜視図である。
【
図2B】本発明の一実施形態に係る端子送り機構を含む圧着装置の一例を示す、背面斜視図である。
【
図3A】圧着装置が待機位置に位置するときの端子送り機構の一例を示す背面図である。
【
図3B】圧着装置が圧着位置に位置するときの端子送り機構の一例を示す背面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る端子送り機構の搬送部を示す断面図である。
【
図5A】圧着装置が待機位置に位置するときの端子送り機構の駆動伝達体および駆動回転体の一例を示す側面図である。
【
図5B】圧着装置が圧着位置に位置するときの端子送り機構の駆動伝達体および駆動回転体の一例を示す側面図である。
【
図6A】本発明の一実施形態に係る端子送り機構の回転部材の一例を示す正面斜視図である。
【
図6B】本発明の一実施形態に係る端子送り機構の回転部材の一例を示す背面斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る端子送り機構の第1回転体の一例を示す正面斜視図である。
【
図8A】圧着装置が待機位置に位置するときの第1回転体の状態の一例を示す断面図)である。
【
図8B】
図8Aの状態から回転が進んだ状態を示す断面図である。
【
図8C】
図8Bの状態から回転が進んだ状態を示す断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る端子送り機構の第2回転体と保持係合体との係合状態および係合解除状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の端子送り機構を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで例示であり、本発明の端子送り機構は、以下の実施形態に限定されない。なお、本明細書において、「Aに垂直」およびこれに類する表現は、Aに対して完全に垂直な方向のみを指すのではなく、Aに対して略垂直であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「Bに平行」およびこれに類する表現は、Bに対して完全に平行な方向のみを指すのではなく、Bに対して略平行であることを含んで指すものとする。また、本明細書において、「C形状」およびこれに類する表現は、完全なC形状のみを指すのではなく、C形状の角部が面取りされた形状など、見た目にC形状を連想させる形状(略C形状)を含んで指すものとする。添付図面において、同じ機能を有する部分には、同一の符号が付されている。
【0011】
[連鎖端子]
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る端子送り機構1(
図2Aおよび
図2B参照)の搬送対象となる連鎖端子Tの一例について説明する。
図1の例の連鎖端子Tは、複数の端子本体T1と、複数の端子本体T1を連結する長尺のキャリア部T2とを有している。なお、キャリア部T2の長手方向となる、キャリア部T2が延びる方向を延在方向D1と呼ぶ。
図1の例の連鎖端子Tは、電線Wに圧着される前の圧着端子の前駆体である。しかし、連鎖端子Tは、複数の端子本体T1およびキャリア部T2を有していれば、特に限定されることはなく、はんだによって電線Wに接続されるはんだ付け端子であってもよい。
【0012】
端子本体T1は、電線Wに圧着された後に、圧着端子となる部位である。
図1の例では、端子本体T1はそれぞれ、キャリア部T2から延在方向D1に垂直な一方向に延びる長尺形状を有している。本実施形態では、端子本体T1はそれぞれ、電線W(導線W1および絶縁被覆W2)が圧着される圧着部T11と、圧着端子の接続相手となる相手方端子(図示せず)と電気的に接続されるコネクタ部T12とを備えている。しかし、端子本体T1の構造は、圧着端子としての機能を有していれば、特に限定されることはない。たとえば、端子本体T1は、圧着部T11がコネクタ部T12としても機能する構造など、その他の構造を有していてもよい。
【0013】
圧着部T11の形状は、電線Wの導線W1に圧着可能であれば、特に限定されることはないが、
図1の例では、圧着部T11は、延在方向D1に垂直から見て、U字形状に有している。圧着端子の製造時には、たとえば、圧着部T11のU字形状の内部に電線Wの導線W1を挿入した後に、U字形状の開口を閉じるように、圧着部T11を機械的に変形させて、圧着部T11を電線Wの導線W1に圧着する。また、コネクタ部T12は、相手方端子(図示せず)の形状に応じて、適宜変更され得るが、
図1の例では、四角筒状の形状を有している。
【0014】
キャリア部T2は、延在方向D1に沿う所定のピッチPmで、複数の端子本体T1を並列に連結する部位である。具体的には、端子本体T1間のピッチPmは、端子送り機構1が連鎖端子Tを搬送方向D11に一回で送る距離(以下、移動ピッチPmとも呼ばれる)である。キャリア部T2の形状は、複数の端子本体T1を延在方向D1で連結することができれば、特に限定されることはないが、
図1の例では、キャリア部T2は、板状の形状であって、延在方向D1に延びる帯状の形状を有している。
【0015】
キャリア部T2は、後述する端子送り機構1の回転部材3の係合部310と係合する複数の係合孔TH1を有している。キャリア部T2が係合孔TH1を有することで、端子送り機構1は、回転部材3の係合部310と係合孔TH1との係合によって、連鎖端子Tを搬送方向D11に送ることができる。具体的には、係合孔TH1は、延在方向D1に沿って、所定のピッチ(具体的には、移動ピッチPm)で設けられている。
図1の例では、係合孔TH1は、キャリア部T2を厚さ方向から見て、円形形状を有している。なお、係合孔TH1の形状および数は、回転部材3との係合によって連鎖端子Tを移動ピッチPmで搬送方向D11に送ることができれば、特に限定されることはない。本実施形態では、キャリア部T2は、係合孔TH1に加えて、キャリア部T2を厚さ方向から見て、矩形形状を有する孔TH2を有しており、この孔TH2を係合孔としてもよい。
【0016】
図2Aおよび
図2Bに示されるように、本実施形態の端子送り機構1は、キャリア部T2の延在方向D1の一方に連鎖端子Tを送るための送り機構である。以下では、端子送り機構1が連鎖端子Tを送る方向を搬送方向D11と呼び、搬送方向D11と反対方向を後退方向D12と呼ぶ。本実施形態では、端子送り機構1は、連鎖端子Tを用いて圧着端子(図示せず)を製造するための圧着装置Eに組み込まれている。しかし、端子送り機構1の用途は、連鎖端子Tを搬送方向D11に送るように構成されていれば、特に限定されない。たとえば、端子送り機構1は、連鎖端子Tを搬送方向D11に送ることで、連鎖端子Tの外観検査を行う外観検査装置に組み込まれるなど、その他の用途に用いられてもよい。端子送り機構1の詳細については後述される。
【0017】
[端子送り機構を含む圧着装置]
図2Aおよび
図2Bの例では、圧着装置Eは、連鎖端子Tを電線Wに圧着する圧着機構ECと、上述の端子送り機構1とを備えている。
【0018】
圧着機構ECは、端子送り機構1から送られる連鎖端子Tの端子本体T1に電線Wを圧着する。たとえば、圧着機構ECは、電線Wが端子本体T1に挿入された状態となるまで待機する待機位置(
図3A参照)と、電線Wを端子本体T1に圧着する圧着位置(
図3B参照)との間で移動可能に構成されている。以下では、待機位置から圧着位置への移動方向を「圧着方向D21」と呼び、圧着位置から待機位置への移動方向を「待機方向D22」と呼ぶ。
図1Aおよび
図1Bの例では、圧着方向D21および待機方向D22は、板状の形状を有する連鎖端子Tのキャリア部T2の表面と交差する方向であり、具体的には、キャリア部T2の表面に垂直な方向である。
【0019】
図2Aおよび
図2Bの例では、圧着機構ECは、圧着方向D21の端部に、電線Wに端子本体T1を圧着する圧着具EC1を備えている。具体的には、圧着具EC1は、圧着機構ECが待機位置から圧着位置に移動したときに、圧着部T11のU字形状の開口を閉じるように、端子本体T1を押圧して変形させることで、電線Wに端子本体T1を圧着する。
【0020】
[端子送り機構]
次に、
図3A~
図9を参照して、本実施形態の端子送り機構1について説明する。
図3Aおよび
図3Bに示される一例において、連鎖端子Tは、端子送り機構1の搬送部10において、搬送方向D11に沿って送られる。端子送り機構1は、搬送方向D11に垂直な回転軸R周りの一方の方向R1(
図3B参照)への回転駆動力を発生させる駆動部2と、駆動部2の回転駆動力によって、回転軸R周りの一方の方向R1に回転する回転部材3とを備えている。以下では、回転軸R周りの一方の方向を「回転方向R1」と呼び、回転軸R周りの他方の方向を「反回転方向R2」と呼ぶ。本実施形態では、端子送り機構1は、回転部材3を所定の回転位置で保持するように、回転部材3に係合する保持係合体4(
図6Aおよび
図6B参照)をさらに備えている。また、本実施形態では、端子送り機構1は、連鎖端子Tを搬送方向D11の所定の位置で位置決めする位置決め部5をさらに備えている。
【0021】
本実施形態において、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、搬送部10は、連鎖端子Tを載置する基台11と、待機方向D22において、基台11と向き合うように設けられるカバー12とを備えている。
図4に示されるように、基台11とカバー12との間には、連鎖端子Tを搬送するため、連鎖端子Tより一回り大きいサイズを有する収容空間10Sが形成されている。具体的には、収容空間10Sの一部は、端子本体T1が通る搬送路101Sと、収容空間10Sの他の一部は、キャリア部T2が通る搬送路102Sとを有している。本実施形態では、キャリア部T2が通る搬送路102Sは、キャリア部T2よりも一回り大きいサイズを有し、搬送部10は、キャリア部T2を押圧することなく搬送するように構成されている。したがって、キャリア部T2は、搬送部10の内面から押圧されることがなく、キャリア部T2が搬送部10の内面に押圧されながら擦れ合うことで生じ得る髭バリなどのバリを生じ難くなる。同様に、本実施形態では、端子本体T1が通る搬送路101Sが端子本体T1よりも一回り大きいサイズを有するので、端子本体T1は、搬送部10の内面から押圧されることがなく、端子本体T1にもバリを生じ難くなる。
図3Aおよび
図3Bに示されるように、搬送部10は、連鎖端子Tの搬送部10への挿入を案内するように、後退方向D12の端部に、搬送方向D11に向かって、基台11とカバー12との対向面の間隔が狭くなる案内部10Aを備えていてもよい。
【0022】
駆動部2は、回転部材3に回転方向R1への回転駆動力を付与する。本実施形態では、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、駆動部2は、駆動方向DA(
図3Aおよび
図3Bの例では、後退方向D12と平行)と、駆動方向DAの反対方向である反駆動方向DB(
図3Aおよび
図3Bの例では、搬送方向D11と平行)との間で往復移動する移動機構21と、移動機構21の駆動方向DAと反駆動方向DBとの間で往復移動によって、弾性変形する弾性部材22と、移動機構21の駆動方向DAと反駆動方向DBとの間で往復移動によって、回転方向R1への回転駆動力を発生させる回転機構23とを備えている。
【0023】
移動機構21の構成は、駆動方向DAと反駆動方向DBとの間の往復移動が可能であれば、特に限定されることはない。移動機構21は、モータとリンク機構の組み合わせなどによって、自ら往復移動の駆動力を発生させてもよく、端子送り機構1の外部からの外力によって、往復移動の駆動力を伝達されてもよい。本実施形態では、移動機構21は、圧着機構ECの圧着方向D21および待機方向D22への往復移動による駆動力が伝達されることで、往復移動する。移動機構21の往復移動の方向は、回転部材3に回転方向R1への回転駆動力を付与することができれば、特に限定されることはない。
図3Aおよび
図3Bの例では、移動機構21の従動端21A(後述する移動機構21の第2揺動アーム214の圧着方向D21側の端部)が、駆動方向DAと反駆動方向DBとの間で往復移動することで、回転部材3に回転方向R1への回転駆動力を付与する。
【0024】
本実施形態では、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、移動機構21は、圧着方向D21および待機方向D22に移動可能に設けられた第1移動体211と、第1移動体211の移動に伴って所定の方向に移動する第2移動体212と、第2移動体212の移動に伴って第1揺動軸A1周りに揺動する第1揺動アーム213と、第2揺動軸A2を介して第1揺動アーム213に接続された第2揺動アーム214とを備えている。本実施形態では、第1移動体211は、待機方向D22へ向かうにつれて、搬送方向D11側へと近付くように傾斜した傾斜面P1を有している。また、第2移動体212は、搬送方向D11および後退方向D12に移動するように案内され、傾斜面P1に当接可能なローラP2を有している。第1移動体211が圧着方向D21に移動したときに、ローラP2が傾斜面P1に案内されることで、第2移動体212が、後退方向D12に移動する。第1揺動アーム213は、第2移動体212に対して交差するように、かつ、第2移動体212に対して第1揺動軸A1を介して揺動可能に接続されている。第1揺動アーム213は、第1揺動アーム213の延在方向で、第1揺動軸A1に対して一方側において、第1固定軸B1によって固定されており、第1揺動アーム213の延在方向で、第1揺動軸A1に対して他方側において、第2揺動軸A2によって、第2揺動アーム214に対して揺動可能に接続されている。また、第2揺動アーム214は、第2揺動アーム214の延在方向で一方側において、弾性部材22に接続され、第2揺動アーム214の延在方向で他方側において、第2揺動軸A2によって、第1揺動アーム213に対して揺動可能に接続され、第2揺動アーム214の延在方向で一方側と他方側との間(具体的には、一方側と他方側との間であって、一方側寄りの位置)において、第2固定軸B2によって固定されている。
【0025】
弾性部材22は、移動機構21の往復移動によって弾性変形可能であれば、特に限定されることはない。本実施形態では、弾性部材22の一端は、第2揺動アーム214の圧着方向D21側の端部に設けられる第1固定部F1に固定され、他端は、端子送り機構1の支持体(図示せず)に設けられた第2固定部F2に固定されている。弾性部材22は、本実施形態では、回転部材3が回転方向R1に回転するように、駆動回転体232を付勢する。より具体的には、弾性部材22は、後述するラチェット爪Mが駆動方向DAに向かって移動するように、ラチェット爪Mを付勢している。弾性部材22として、任意の弾性体が採用され得るが、本実施形態では、弾性部材22は、コイルばねである。
【0026】
図示される例において、圧着機構ECが待機位置(
図3A参照)から圧着位置(
図3B参照)に移動すると、第2移動体212のローラP2が第1移動体211の傾斜面P1によって後退方向D12に押圧される。これにより、第2移動体212は全体として後退方向D12に移動する。第2移動体212が後退方向D12へ移動すると、第1揺動軸A1を介して第2移動体212に接続された第1揺動アーム213は、第1固定軸B1を回転軸として、回転方向R1に回転する(
図3B参照)。第1揺動アーム213の回転方向R1への回転に伴い、第2揺動軸A2の位置が後退方向D12に変位すると、第2揺動アーム214は、第2固定軸B2を回転軸として、回転方向R1に回転することで、第2揺動アーム214の圧着方向D21側の端部(移動機構21の従動端21A)は、反駆動方向DB(
図3Aおよび
図3Bにおける左方向)に移動する。第2揺動アーム214の圧着方向D21側の端部(移動機構21の従動端21A)の反駆動方向DBへの移動に伴い、待機位置(
図3A参照)において、弾性部材22が反駆動方向DBに伸長するように弾性変形する。なお、本実施形態では、圧着機構ECが圧着位置(
図3B参照)に位置している際には、ローラP2が平坦部(傾斜面P1の上の平坦な部分)に当接することで、移動機構2(212、213、214)は、弾性部材22によって駆動方向DAへと付勢された状態で保持される。
【0027】
また、図示される例において、圧着機構ECが圧着位置(
図3B参照)から待機位置(
図3A参照)に移動すると、弾性部材22の付勢力によって、第2移動体212は、搬送方向D11に移動する。具体的には、傾斜面P1を有する第1移動体211が、待機方向D22に移動することで、第2移動体212が、搬送方向D11に移動可能となると、弾性部材22の付勢力によって、第2移動体212のローラP2は、第1移動体211の傾斜面P1に沿って転動しながら搬送方向D11に移動する。この際、第2揺動アーム214は、
図3Bに示される状態から
図3Aに示される状態へと、第2固定軸B2を回転軸として回転する。これにより、詳細は後述するが、移動機構21(移動機構21の従動端21A)は、圧着機構ECの圧着方向D21への移動と連動して、従動端21Aに連結された駆動伝達体231が、駆動回転体232を回転させずに反駆動方向DBに移動し、圧着機構ECの待機方向D22への移動と連動して、従動端21Aに連結された駆動伝達体231が、駆動回転体232を回転方向R1に回転させながら駆動方向DAに移動することで、回転部材3に回転方向R1への回転駆動力を付与する。
【0028】
図示される例において、移動機構21は、第1揺動アーム213および第2揺動アーム214を備えなくてもよい。たとえば、移動機構21は、第2揺動アーム214を備えない場合、第1揺動アーム213の第1揺動アーム213の端部が、移動機構21の従動端21Aとして機能してもよく、たとえば、第1揺動アーム213および第2揺動アーム214を備えない場合、第2移動体212の後退方向D12側の端部が、移動機構21の従動端21Aとして機能してもよい。
【0029】
回転機構23は、本実施形態では、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、移動機構21(移動機構21の従動端21A)の駆動方向DAと反駆動方向DBへの往復運動と連動して移動する駆動伝達体231と、駆動伝達体231の往復運動による駆動力を回転運動による回転駆動力に変換する駆動回転体232とを備えている。駆動伝達体231の形状は、移動機構21および回転部材3との連結形態に応じて適宜変更され得るが、
図3Aおよび
図3Bの例では、駆動伝達体231は、ブロック形状を有し、駆動回転体232は、円板形状を有している。
【0030】
駆動伝達体231は、本実施形態では、移動機構21の駆動力を伝達できるように、移動機構21(移動機構21の従動端21A)に連結されている。具体的には、駆動伝達体231は、移動機構21の従動端21Aに取り付けられている。本実施形態では、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、駆動伝達体231は、後退方向D12の端部に、圧着方向D21を向くラチェット爪Mを有している。なお、駆動伝達体231は、移動機構21の従動端21Aに対して(第2揺動アーム214)に対して、首振り可能に取り付けられている。
【0031】
駆動回転体232は、本実施形態では、回転部材3に回転駆動力を伝達できるように、回転部材3に連結されている。具体的には、駆動回転体232は、回転部材3と回転軸が同軸となるように、回転部材3の回転軸Rに固定されている。本実施形態では、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、駆動回転体232は、ラチェット爪Mと係合するラチェット歯Nを外周に有している。
【0032】
このように、本実施形態では、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、駆動伝達体231および駆動回転体232は、ラチェット機構を構成している。圧着機構ECが待機位置(
図3A参照)から圧着位置(
図3B参照)に移動すると、弾性部材22が弾性変形するとともに、駆動伝達体231は、移動機構21の従動端21Aに連動して反駆動方向DBに移動する(
図5B参照)。駆動伝達体231のラチェット爪Mは、ラチェット歯Nの回転方向R1側の面NAを乗り越えるように、反駆動方向DBに移動し、ラチェット歯Nの反回転方向R2側の面NBと当接する(
図5B参照)。また、図示される例において、圧着機構ECが圧着位置(
図3B参照)から待機位置(
図3A参照)からに移動すると、弾性部材22が変形した状態から復元するとともに、駆動伝達体231は、移動機構21の従動端21Aと連動して駆動方向DAに移動し(
図5A参照)、駆動伝達体231のラチェット爪Mは、当接しているラチェット歯Nの反回転方向R2側の面NBを回転方向R1に押圧しながら、駆動方向DAに移動する。
【0033】
本実施形態では、上述のように、ラチェット爪Mの反駆動方向DBへの移動の駆動力は、圧着機構ECの圧着動作に起因する駆動力であり、たとえば、モータなどの電動機による駆動力であるのに対し、ラチェット爪Mの駆動方向DAへの移動の駆動力は、弾性変形した弾性部材22の付勢力に起因する駆動力である。つまり、ラチェット爪Mは、モータなどの電動機による駆動力ではなく、弾性部材22の弾性力によって駆動方向DAに移動する。そのため、回転部材3の回転方向R1への回転駆動力は、弾性部材22の付勢力を超えるようには作用しない。これにより、回転部材3に無理な回転駆動力が作用することで、回転部材3、ひいては回転部材3により搬送方向D11に送られる連鎖端子Tに許容量以上の無理な搬送力が作用することが抑制される。
【0034】
ラチェット爪Mおよびラチェット歯Nの形状は、駆動伝達体231に伝達される往復移動による駆動力を駆動回転体232に回転駆動力として伝達可能であれば、特に限定されることはないが、
図5Aおよび
図5Bの例では、ラチェット爪Mは、駆動伝達体231の駆動回転体232との対向面から三角形状に突出する係合凸部であり、ラチェット歯Nは、駆動回転体232の外周面から台形形状に窪む係合凹部である。ラチェット爪Mの駆動方向DA側の面MAおよび反駆動方向DB側の面MB、ならびに、ラチェット歯Nの駆動方向DA側の面NAおよび反駆動方向DB側の面NBは、平面状であってもよく、湾曲していてもよい。
【0035】
ラチェット歯Nの数は、駆動方向DAと反駆動方向DBとの間での駆動伝達体231の1回の往復移動ごとに駆動回転体232をどれくらい回転させるかによって、適宜変更され得る。本実施形態では、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、ラチェット歯Nは、駆動伝達体231押圧部32の1回の往復移動ごとの回転ピッチPrが30°となるように、外周面に等間隔で12個設けられている。
【0036】
回転部材3は、駆動部2の回転駆動力によって回転方向R1に回転するときに、連鎖端子Tを搬送方向D11に移動させることができ、回転部材3が回転していないときに、連鎖端子Tを所定の位置に保持できるように、連鎖端子Tと係合する。本実施形態では、
図6Aおよび
図6Bに示されるように、回転部材3は、全体として、円板形状(具体的には、後述するように、2つの円板を有する形状)を有している。本実施形態では、回転部材3は、駆動回転体232の回転に連動して回転するように構成されている。具体的には、回転部材3は、駆動回転体232の回転軸と回転軸Rが平行になるように構成されている。より具体的には、回転部材3は、駆動回転体232の回転軸と回転軸Rと同軸に設けられ、駆動回転体232と一体的に回転する。
【0037】
本実施形態では、
図6Aおよび
図6Bに示されるように、回転部材3および駆動回転体232は、回転軸方向DRにおいて、互いに離間するように配置されている。そうすることで、駆動回転体232が回転部材3に回転駆動力を伝達するときに、ラチェット爪Mとラチェット歯Nとの当接によって生じ得るラチェット爪Mやラチェット歯Nの擦り屑などが、連鎖端子Tに付着することが抑制される。なお、本実施形態では、駆動回転体232が、回転部材3に対して、端子本体T1の長さ(キャリア部T2の延在方向D1に対して垂直な方向の長さ)よりも長い距離で離間するように配置されている。また、本実施形態では、回転部材3および駆動回転体232は、別体として設けられ、回転軸Rによって連結されている。そうすることで、回転部材3または駆動回転体232に損傷を生じたときに、回転部材3または駆動回転体232を別個に交換することができる。
【0038】
回転部材3の構造は、連鎖端子Tの搬送方向D11への移動および連鎖端子Tの所定の位置での保持が可能であれば、特に限定されることはない。本実施形態では、
図6Aおよび
図6Bに示されるように、回転部材3は、連鎖端子Tのキャリア部T2の係合孔TH1に係合する係合部310を有している。係合部310が係合孔TH1に係合することで、回転部材3の回転方向R1への回転中には、連鎖端子Tは、係合部310からの回転方向R1への押圧によって、搬送方向D11に移動する。一方、回転部材3の回転停止中には、係合部310と係合孔TH1との係合によって、連鎖端子Tは搬送方向D11および後退方向D12への移動が規制され、延在方向D1における所定の位置で保持される。また、本実施形態では、回転部材3は、連鎖端子Tの一度の搬送における搬送方向D11の移動ピッチPmに対応した所定の間隔で、回転部材3の周方向に離間して配置される複数の被係合部320(
図6A参照)を有しており、被係合部320と保持係合体4との係合によって、所定の回転位置で保持される。回転部材3が被係合部320を有することで、連鎖端子Tは、回転部材3によって正確な移動ピッチPmで搬送方向D11に送られる。被係合部320の詳細については後述する。
【0039】
回転部材3の構造は、連鎖端子Tの搬送方向D11への移動および連鎖端子Tの所定の位置での保持が可能であれば、特に限定されることはない。本実施形態では、
図6Aおよび
図6Bに示されるように、回転部材3は、係合部310を有する第1回転体31と、被係合部320(
図6B参照)を有する第2回転体32とを備えている。図示される例において、第1回転体31および第2回転体32はそれぞれ、円板形状を有している。
【0040】
第1回転体31は、
図6A~
図8Cに示されるように、回転方向R1への回転によって、係合部310と係合する連鎖端子Tを所定の移動ピッチPmで搬送方向D11に送る。具体的には、
図8A~
図8Cに示されるように、第1回転体31は、回転方向R1への回転によって、係合部310の係合歯Sが連鎖端子Tのキャリア部T2の係合孔TH1と次々と係合および係合解除することで、連鎖端子Tを所定の移動ピッチPmで搬送方向D11に送る(
図8A、
図8B、
図8Cの順に参照)。
【0041】
第1回転体31の構造は、連鎖端子Tを所定の移動ピッチPmで搬送方向D11に送ることが可能であれば、特に限定されることはないが、
図6A~
図8Cの例では、第1回転体31は、スプロケットであり、係合部310は、スプロケットの歯(以下では、「係合歯S」と呼ぶ)である。係合歯Sの形状は、連鎖端子Tを搬送方向D11に移動させ、所定の位置で保持することができれば、特に限定されることはないが、第1回転体31の径方向の外側に三角形状に突出する係合凸部である。
【0042】
本実施形態では、
図6Aおよび
図6Bに示されるように、第1回転体31は、駆動回転体232と同軸状に設けられ、連動して回転する。したがって、第1回転体31は、駆動回転体232の回転角度(本実施形態では一度の回転毎に30°)に対応した回転ピッチPr1(
図6B参照)で回転し、連鎖端子Tを回転ピッチPr1に対応した移動ピッチPmで搬送方向D11に送る。係合歯Sの数は、連鎖端子Tとの係合によって、連鎖端子Tを所定の移動ピッチPmで搬送方向D11に送ることができれば、特に限定されることはない。本実施形態では、
図7に示されるように、係合歯Sは、ラチェット歯Nと同様に、第1回転体31の外周面に等間隔で12個設けられている。
【0043】
第2回転体32は、被係合部320と保持係合体4との係合によって、連鎖端子Tの移動ピッチPmに対応する所定の間隔で回転するように、第1回転体31の回転を制御する。本実施形態では、
図6Aに示されるように、第2回転体32は、駆動回転体232を向く面(
図6B参照。以下、「非係合面32B」と呼ぶ)と反対側の面(以下、「係合面32A」と呼ぶ)に保持係合体4と向き合うように、被係合部320を有している。
【0044】
本実施形態では、
図9に示されるように、被係合部320は、係合面32Aに設けられた凹部Dであり、保持係合体4は、ボールプランジャである。
図9の例では、第2回転体32は、駆動回転体232(
図6Aおよび
図6B参照)が回転しないときに、保持係合体4のボール40が、ばねなどの弾性体(図示せず)によって係合面32Aに垂直な方向で付勢されて凹部Dと係合する(
図9の実線参照)。一方、駆動回転体232が回転するときは、弾性体の弾性力に抗して凹部Dとの係合を解除して係合面32Aに乗り上げる(
図9の二点鎖線参照)。このように、被係合部320が保持係合体4と係合することで、第2回転体32の回転を規制するとともに、第1回転体31の回転を規制するので、連鎖端子Tを所定の位置に保持することができる。なお、被係合部320は、係合面32Aと非係合面32Bとの間を貫通する貫通孔であってもよく、保持係合体4は、駆動回転体232の回転と連動して、回転部材3が回転方向R1に回転したときに、被係合部320と係合するように、係合面32Aに対して垂直な方向に往復移動する位置決めピンであってもよい。また、被係合部320は、係合凸部であってもよく、保持係合体4は、係合凹部であってもよい。また、保持係合体4が係合する部位は、第2回転体32の係合面32Aに限定されない。たとえば、保持係合体4は、第1回転体31の外周の係合歯Sと係合するように構成されていてもよい。
【0045】
本実施形態では、
図6Aおよび
図6Bに示されるように、第2回転体32は、駆動回転体232と同軸状に設けられ、駆動回転体232(および第1回転体31)と連動して回転する。したがって、第2回転体32は、駆動回転体232の回転角度(本実施形態では一度の回転毎に30°)に対応した回転ピッチPr2(
図6A参照)で回転する。被係合部320の数は、駆動回転体232のラチェット歯Nの数に応じて適宜変更され得るが、本実施形態では、被係合部320は、ラチェット歯Nと同様に、係合面32Aの周縁部に等間隔で12個設けられている。
【0046】
本実施形態では、
図6Aおよび
図6Bに示されるように、第1回転体31および第2回転体32は、回転軸方向DRにおいて、互いに離間するように配置されている。そうすることで、第2回転体32の被係合部320と保持係合体4との係合によって生じ得る被係合部320や保持係合体4の擦り屑などが、連鎖端子Tに付着することが抑制される。本実施形態では、第2回転体32は、回転軸Rの延在方向で、キャリア部T2と重ならない位置となるように、第1回転体31に対して離間している。また、本実施形態では、第2回転体32の係合面32Aは、第1回転体31と向き合わないように配置されている。そうすることで、被係合部320や保持係合体4の擦り屑などが、連鎖端子Tに付着することがさらに抑制される。また、本実施形態では、第1回転体31および第2回転体32は、別体として設けられ、回転軸Rで連結されている。そうすることで、第1回転体31または第2回転体32に損傷を生じたときに、第1回転体31または第2回転体32を別個に交換することができる。しかし、第2回転体32は、第1回転体31と一体的に設けられてもよい。この場合、第1回転体31が、被係合部320を有することになる。
【0047】
位置決め部5は、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、連鎖端子Tを所定の移動ピッチPmで搬送方向D11に送るごとに、キャリア部T2の係合孔TH1と順次嵌合することで、連鎖端子Tの搬送方向D11に沿う位置を位置決めする。端子送り機構1が位置決め部5を有することで、搬送方向D11への搬送前後での搬送方向D11での位置精度が向上する。本実施形態では、位置決め部5は、ピン形状を有しており、圧着機構ECの圧着方向D21と待機方向D22との間の往復移動に連動するように、圧着機構ECに取り付けられている。具体的には、位置決め部5は、圧着機構ECが待機位置(
図3A参照)にあるときに、連鎖端子Tのキャリア部T2から離間し、圧着機構ECが圧着位置(
図3B参照)にあるときに、連鎖端子Tのキャリア部T2の係合孔TH1と嵌合するように構成されている。そうすることで、電線W(
図2Aおよび
図2B参照)への連鎖端子Tの圧着時の搬送方向D11での連鎖端子Tの位置ズレが低減されるので、連鎖端子Tを電線Wに安定して圧着することができる。
【0048】
[端子送り機構を含む圧着装置の動作]
次に、
図3A~
図9を参照して、本実施形態の端子送り機構1を含む圧着装置Eの動作について説明する。まず、
図3Aに示されるように、搬送部10の案内部10Aから連鎖端子Tを所定の位置まで挿入する。次に、電線W(
図2Aおよび
図2B参照)を連鎖端子Tの搬送方向D11側の1番目の端子本体T1に圧着する。圧着に際して、圧着機構ECが待機位置(
図3A参照)から圧着位置(
図3B参照)に移動すると、第2移動体212は、弾性部材22の付勢力に抗して、第2移動体212のローラP2が第1移動体211の傾斜面P1に沿って移動するとともに、後退方向D12に移動する。この際、移動機構21の従動端21Aは、反駆動方向DBに移動するとともに、ローラP2が平坦部(傾斜面P1の上の平坦な部分)に当接することで、弾性部材22は、
図3Aに示される状態に対して弾性変形した状態で保持される(
図3B参照)。同時に、駆動伝達体231のラチェット爪Mは、移動機構21の従動端21Aが反駆動方向DBに移動する際に、第2揺動アーム214に対して首振り動作することで、ラチェット歯Nの回転方向R1側の面NAを乗り越える。ラチェット爪Mが反駆動方向DBに移動して、1つのラチェット歯Nを乗り越えると、ラチェット爪Mは、ラチェット歯Nの反回転方向R2側の面と当接する(
図5B参照)。圧着機構ECの待機位置から圧着位置への移動の過程において、駆動伝達体231は、駆動回転体232に回転駆動力を発生させないので、駆動回転体232は、回転方向R1にも反回転方向R2にも回転しない。また、第2回転体32の被係合部320は、保持係合体4と係合しているので(
図9の実線参照)、回転部材3は、所望の回転位置で保持されている。さらに、第1回転体31は、係合部310の係合歯Sが連鎖端子Tのキャリア部T2の係合孔TH1と係合しているので(
図8A参照)、連鎖端子Tは、圧着機構ECが待機位置(
図3B参照)にあったときの位置で保持されている。
【0049】
その後、搬送方向D11側の1番目の端子本体T1への電線Wの圧着が完了する。1つの端子本体T1への電線Wの圧着が完了すると、圧着機構ECが圧着位置(
図3B参照)から待機位置(
図3A参照)に移動する。この際、位置決め部5は、キャリア部T2の係合孔TH1との嵌合を解除するように、圧着機構ECと連動して、待機方向D22に移動し、弾性部材22の付勢力によって、第2移動体212は、搬送方向D11に移動し、弾性部材22の付勢力によって、第2移動体212は、搬送方向D11に移動する(
図3A参照)。具体的には、傾斜面P1を有する第1移動体211が、待機方向D22に移動することで、第2移動体212が、搬送方向D11に移動可能となると、弾性部材22の付勢力によって、第2移動体212のローラP2は、第1移動体211の傾斜面P1に沿って転動しながら搬送方向D11に移動する。この際、第2揺動アーム214は、
図3Bに示される状態から
図3Aに示される状態へと、第2固定軸B2を回転軸として回転する。これにより、移動機構21(移動機構21の従動端21A)は、圧着機構ECの待機方向D22への移動と連動して、駆動方向DAに移動する(
図3A参照)。これに伴い、駆動伝達体231のラチェット爪Mがラチェット歯Nの反回転方向R2側の面NAを駆動方向DAに押圧する(
図5B参照)。したがって、駆動回転体232が所定の回転ピッチPr(図示される例では、30°)で回転方向R1に回転する。
【0050】
同時に、駆動回転体232の回転と連動するように構成された第1回転体31および第2回転体32もまた、所定の回転ピッチPr1、Pr2(
図6Aおよび
図6B参照。図示される例では、それぞれ30°)でそれぞれ回転方向R1に回転する。第1回転体31は、回転方向R1への回転によって、係合部310の係合歯Sが連鎖端子Tのキャリア部T2の係合孔TH1と次々と係合および係合解除することで、連鎖端子Tを所定の移動ピッチPmで搬送方向D11に送る(
図8A、
図8B、
図8Cの順に参照)。第2回転体32は、被係合部320と保持係合体4との係合が解除され、回転方向R1の次の被係合部320が保持係合体4と係合することで、所定の回転ピッチPr2(
図6A参照)で回転する(
図6A参照)。このような圧着機構ECと端子送り機構1との連動動作によって、圧着機構ECの圧着位置(
図3B参照)から待機位置(
図3A参照)への移動の過程において、連鎖端子Tが所定の移動ピッチPmで搬送方向D11に送られることで、搬送方向D11側の2番目の端子本体T1が、圧着機構ECの所定の圧着位置に位置付けられる。その後、上述のような、圧着過程および搬送過程が繰り返されることで、連鎖端子Tのすべての端子本体T1に電線Wが圧着される。
【0051】
このように、本実施形態の端子送り機構1では、
図8A~
図8Cに示されるように、回転部材3(第1回転体31)は、回転方向R1に回転することで、連鎖端子Tを搬送方向D11に搬送する機能と、連鎖端子Tのキャリア部T2と係合して搬送方向D11の所定の位置に保持する保持機能とを有している。連鎖端子Tは、回転部材3(第1回転体31)の回転方向R1の回転に連動して搬送方向D11に移動するので、連鎖端子Tの移動時に、連鎖端子Tと回転部材3との間で摺動を生じにくい。そのため、キャリア部T2と回転部材3との摺動によって生じ得る髭バリなどのバリの発生が抑制されるので、連鎖端子Tの端子本体T1へのバリの残留もまた抑制される。
【0052】
さらに、
図8A~
図8Cに示されるように、連鎖端子Tは、回転方向R1にのみ回転しながら保持されるので、連鎖端子Tのキャリア部T2との間において、搬送方向D11と後退方向D12との間の往復移動による摺動も生じ難い。そのため、キャリア部T2と回転部材3との摺動によって生じ得る髭バリなどのバリの発生がさらに抑制されるので、連鎖端子Tの端子本体T1へのバリの残留もさらに抑制される。キャリア部T2が係合孔TH1を有し、回転部材3が係合孔TH1と係合する係合部310を有する場合には、連鎖端子Tは、回転部材3の回転方向R1への回転中には、係合部310からの回転方向R1への押圧によって、搬送方向D11に移動し易くなり、回転部材3の回転停止中には、係合部310と係合孔TH1との係合による移動規制によって、係合部310と所定の位置で保持され易くなる。
【0053】
図6Aおよび
図6Bに示されるように、回転部材3が駆動回転体232に連結されて、駆動回転体232の回転に連動して回転するように構成されている場合には、シンプルな構造で回転部材3を回転させることができる。回転部材3および駆動回転体232が、回転軸方向DRにおいて、互いに離間するように配置されている場合には、駆動回転体232が回転部材3に回転駆動力を伝達するときに、ラチェット爪Mとラチェット歯Nとの当接によって生じ得るラチェット爪Mやラチェット歯Nの擦り屑などが、連鎖端子Tに付着することが抑制される。
【0054】
図6Aに示されるように、回転部材3が、連鎖端子Tの一度の搬送における搬送方向D11の移動ピッチPmに対応した所定の間隔で、回転部材3の周方向に離間して配置される複数の被係合部320を有しており、被係合部320と保持係合体4との係合によって、所定の回転位置で保持される場合には、連鎖端子Tは、回転部材3によって正確な移動ピッチPmで搬送方向D11に送られる。
【0055】
図5Aおよび
図5Bに示されるように、駆動部2がラチェット機構で駆動回転体232に回転駆動力を付与する場合には、移動機構21の往復運動による駆動力を回転運動による回転駆動力に変換し易い。駆動部2がラチェット爪Mを駆動方向DAに向かって弾性力によって移動させる弾性部材22を備える場合には、ラチェット爪Mは、モータなどの電動機による駆動力ではなく、弾性部材22の弾性力によって駆動方向DAに移動する。そのため、回転部材3の回転方向R1への回転駆動力は、弾性部材22の付勢力を超えるようには作用しない。これにより、回転部材3に無理な回転駆動力が作用することで、回転部材3、ひいては回転部材3により搬送方向D11に送られる連鎖端子Tに許容量以上の無理な搬送力が作用することが抑制される。
【0056】
図3Aおよび
図3Bに示されるように、端子送り機構1が、連鎖端子Tを所定の移動ピッチPmで搬送方向D11に送るごとに、キャリア部T2の係合孔TH1と順次嵌合することで、連鎖端子Tの搬送方向D11に沿う位置を位置決めする位置決め部5を備える場合には、連鎖端子Tの搬送方向D11への搬送前後における搬送方向D11での位置精度が向上する。
【符号の説明】
【0057】
1 端子送り機構
10 搬送部
10A 案内部
10S 収容空間
11 基台
12 カバー
2 駆動部
21 移動機構
211 第1移動体
212 第2移動体
213 第1揺動アーム
214 第2揺動アーム
21A 従動端
22 弾性部材
23 回転機構
231 駆動伝達体
232 駆動回転体
3 回転部材
31 第1回転体
310 係合部
32 第2回転体
320 被係合部
32A 係合面
32B 非係合面
4 保持係合体
40 ボール
5 位置決め部
A1 第1揺動軸
A2 第2揺動軸
B1 第1固定軸
B2 第2固定軸
F1 第1固定部
F2 第2固定部
D 凹部
D1 延在方向
D11 搬送方向
D12 後退方向
D21 圧着方向
D22 待機方向
DA 駆動方向
DB 反駆動方向
DR 回転軸方向
E 圧着装置
EC 圧着機構
EC1 圧着具
M ラチェット爪
MA ラチェット爪の駆動方向側の面
MB ラチェット爪の反駆動方向側の面
N ラチェット歯
NA ラチェット歯の回転方向側の面
NB ラチェット歯の反回転方向側の面
P1 傾斜面
P2 ローラ
Pm 移動ピッチ
Pr 駆動回転体の回転ピッチ
Pr1 第1回転体の回転ピッチ
Pr2 第2回転体の回転ピッチ
R 回転軸
R1 回転方向
R2 反回転方向
S 係合歯
T 連鎖端子
T1 端子本体
T11 圧着部
T12 コネクタ部
T2 キャリア部
TH1、TH2 係合孔
W 電線
W1 導線
W2 絶縁被覆