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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148105
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】会話プログラム及び会話装置
(51)【国際特許分類】
   G10L 15/22 20060101AFI20241009BHJP
   G10L 13/00 20060101ALI20241009BHJP
   G10L 15/10 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
G10L15/22 300Z
G10L13/00 100M
G10L15/10 500T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023061036
(22)【出願日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】509111744
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター
(71)【出願人】
【識別番号】517216855
【氏名又は名称】株式会社マインドシフト
(71)【出願人】
【識別番号】510108858
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
(71)【出願人】
【識別番号】304024865
【氏名又は名称】学校法人杏林学園
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 研二
(72)【発明者】
【氏名】柏木 宗利
(72)【発明者】
【氏名】荒井 秀典
(72)【発明者】
【氏名】神崎 恒一
(57)【要約】
【課題】高齢者が気兼ねなく、進んで話をするような工夫をされた会話プログラム及び会話装置を提供すること。
【解決手段】以下の各ステップをコンピュータに実行させるための会話プログラム。
利用者に所定の会話用語をもって声をかける声掛けステップ、利用者の音声に反応して会話を進める会話ステップであって、少なくとも日本の地域情報、季節情報、健康に関する情報及び仕事/趣味に関する情報の各カテゴリーを含む郷愁話題データベースから、利用者の発する言葉と紐付いた文言を抽出して、いずれのカテゴリーに属するかを判定し、かかるカテゴリーに関する応答文を作成して、コンピュータの音声デバイスを用いて当該応答文を発音させることにより会話を進める会話開始ステップを含むステップ及び利用者の所定の会話音声に反応して会話を終了する終了ステップ。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の各ステップをコンピュータに実行させるための会話プログラム。
利用者の音声に反応して会話を進める会話ステップであって、
少なくとも日本の地域情報、季節情報、健康に関する情報及び仕事/趣味に関する情報の各カテゴリーを含む郷愁話題データベースから、利用者の発する言葉と紐付いた文言を抽出して、いずれのカテゴリーに属するかを判定し、かかるカテゴリーに関する応答文を作成して、コンピュータの音声デバイスを用いて当該応答文を発音させることにより会話を進める会話開始ステップを含むステップ
及び
利用者の所定の会話音声に反応して会話を終了する終了ステップ。
【請求項2】
上記会話ステップは、更に会話継続ステップを具備し、
上記会話開始ステップは、利用者の音声の認識を行った後、言語分析を行い、言語分析結果に基づいて利用者の発言の意図を理解し、利用者の発言が郷愁話題データベースの文言又は当該文言のコーパスとして当該文言と同時に使用されることが常法である文言に該当するかを判定し、判定結果がYESであれば会話開始行動をとり、会話を進めるための応答文を作成し、一方NOであれば話題提供行動をとり、声がけのための応答文を作成するステップであり、
上記会話継続ステップは、出力された音声に対しての利用者の発言について音声の認識を行った後、言語分析を行い、言語分析結果に基づいて上記会話開始ステップにおいて判定されたカテゴリーにおいて、利用者の過去の経験に基づく話を促すように応答文を作成するステップである、
ことを特徴とする請求項1記載の会話プログラム。
【請求項3】
請求項1記載の会話プログラムが格納されたコンピュータを具備する会話装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非侵襲的で、安価で簡単に、しかも正確に認知症判定等の疾患該当性判定ができる疾患該当性判定装置及び疾患該当性判定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者は、年齢を重ねるごとに会話相手が少なくなることが多い。これは家族と離れて暮らす高齢者が多く、配偶者と死別するなどして身近に話し相手が少ないという状況が生じ、身近に話し相手がいない状態となることが主たる原因である。
この点を解消するために高齢者と会話するためのシステムが種々開発されている。
例えば、特許文献1には、話題が広がりやすく、ユーザとの間で会話を継続しやすい対話処理装置が提案されている。具体的には、事象と、該事象に対する連想知識と、該事象と該連想知識との連想関係の種別とを対応付けて記憶する連想知識データベースと、連想関係の種別毎に、少なくとも1つの応答の種別及び該応答の種別に対応したテンプレートを連想関係の種別に対応付けて記憶する応答知識データベースと、発話文から事象を抽出する事象抽出部と、抽出された事象に対応する連想知識及び連想関係の種別を特定する知識照合部と、特定された連想関係の種別に対応する応答の種別のうち、いずれか1つを選択する応答分類決定部と、特定された連想知識を、応答分類決定部により選択された応答の種別に対応したテンプレートに適用することにより、応答文を生成する応答テンプレート結合部とを有する、対話処理装置が提案されている、
特許文献2には、高齢者であっても、会話を楽しんだり、有益な情報を得たり、慰めとなったりするような会話装置が提案されている。具体的には、記憶部と、複数の回答ボタンと、スピーカと、マイクと、ユーザが発話した音声を認識し、認識した音声に応じて、日常生活に関する質問、身体に関する質問、メンタルに関する質問及び調子に関する質問のいずれかを、スピーカから出力し、質問に対する回答を複数の回答ボタンの押下によって受け付けて、押下された回答ボタンの種類に応じて、次の質問又は返答をスピーカから出力する制御部と、を備える。制御部は、調子に関する質問を出力する際、調子の良し悪しを切り分ける質問を行う。調子が悪い場合は、制御部は、身体に関する調子の悪さであるのか、メンタルに関する調子の悪さであるのかを切り分ける質問を行う。会話装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-207663号公報
【特許文献2】特開2023-27543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来提案されている会話装置は、製作者から見て伝えたい情報を高齢者に一方的に提供することで会話を進めようとするものであった。また、利用者において画面操作などの煩雑な操作が必要であり、画面操作の上手ではない高齢者にとって利用意欲の低減を招くという問題もあった。
【0005】
要するに、従来提案されている会話装置では、高齢者があたかも仲のいい友達と一緒にいて会話をするような工夫がされているとは言えず、高齢者が気兼ねなく、進んで話をするような工夫をされた会話装置、及び会話プログラムの開発が要望されている。
したがって、本発明の目的は、高齢者が気兼ねなく、進んで話をするような工夫をされた会話プログラム及び会話装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、高齢者になればなるほど懐かしさを感じる言葉への反応が良くなり、高齢者自ら進んで話しをすることを知見し、かかる知見に基づいて更に検討した結果、このような懐かしさを感じる言葉をデータベース化して活用することで上述の問題を解消しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.以下の各ステップをコンピュータに実行させるための会話プログラム。
利用者の音声に反応して会話を進める会話ステップであって、
少なくとも日本の地域情報、季節情報、健康に関する情報及び仕事/趣味に関する情報の各カテゴリーを含む郷愁話題データベースから、利用者の発する言葉と紐付いた文言を抽出して、いずれのカテゴリーに属するかを判定し、かかるカテゴリーに関する応答文を作成して、コンピュータの音声デバイスを用いて当該応答文を発音させることにより会話を進める会話開始ステップを含むステップ
及び
利用者の所定の会話音声に反応して会話を終了する終了ステップ。
2.上記会話ステップは、更に会話継続ステップを具備し、
上記会話開始ステップは、利用者の音声の認識を行った後、言語分析を行い、言語分析結果に基づいて利用者の発言の意図を理解し、利用者の発言が郷愁話題データベースの文言又は当該文言のコーパスとして当該文言と同時に使用されることが常法である文言に該当するかを判定し、判定結果がYESであれば会話開始行動をとり、会話を進めるための応答文を作成し、一方NOであれば話題提供行動をとり、声がけのための応答文を作成するステップであり、
上記会話継続ステップは、出力された音声に対しての利用者の発言について音声の認識を行った後、言語分析を行い、言語分析結果に基づいて上記会話開始ステップにおいて判定されたカテゴリーにおいて、利用者の過去の経験に基づく話を促すように応答文を作成するステップである、
ことを特徴とする1記載の会話プログラム。
3.1記載の会話プログラムが格納されたコンピュータを具備する会話装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の会話プログラム及び会話装置は、高齢者が気兼ねなく、進んで話をするような工夫をされたものである。
したがって、本発明の会話プログラム及び会話装置を用いることで、高齢者が進んで会話をするようになり、人と会話しないことにより生じる精神的肉体的な健康上の問題を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の会話装置の一実施形態を模式的に示す説明図である。
図2図2は、本発明の会話プログラムの情報伝達フローを模式的に示す説明図である。
図3図3は、本発明の会話プログラムのフローシートである。
図4図4は、本発明の会話プログラムにおける会話ステップのフローを示すフローシートである。
図5図5は、本発明の会話装置を用いた使用態様を模式的に示す模式図である。
【符号の説明】
【0009】
1 会話装置、10 コンピュータ、11 メモリ、13 CPU、15 記憶媒体
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の会話装置1は、図1及び2に示すように、コンピュータ10の記憶媒体15に本実施形態の会話プログラムを格納してなる。ここで本発明の会話装置は、1台のコンピュータにより構成されていてもよいが、図2に示すようにインターフェイスの役割を示す端末1A(図2参照)と、データベースが構築されたサーバー1B(図2参照)とにより、すなわち2台のコンピュータにより構成されていてもよい。以下の説明においてはこの2台のコンピュータにより構成された例をもって説明する。
【0011】
〔コンピュータ〕
本実施形態において用いられるコンピュータ10は、具体的には、図1に示すように、中央演算処理装置(CPU)13、一時記憶領域としてのメモリ11、及びハードディスクやソリッドステートデバイス等の不揮発性の記憶媒体15を含む。本発明において、「コンピュータ」としては、通常のパーソナルコンピュータの他、サーバー、いわゆるスマートフォン又はタブレット端末のような携帯端末も用いることができる。また、これらの構成を有していれば、いわゆるコンピュータの形態でなく、人型又は各種動物型等のいわゆるロボットの形態であってもよい。端末1Aとしては、パーソナルコンピュータ、スマートフォン又はタブレット端末のような携帯端末、又は人型又は各種動物型等のいわゆるロボットを好ましく用いることができる。サーバー1Bの記録媒体にはデータベースが構築されており、このデータベースにアクセスすることにより後述する会話ステップを実行することができる。すなわち、端末1A及びサーバー1Bの記憶媒体15には、後述する本発明の会話プログラムが格納されており、本実施形態においては、サーバー1Bの記憶媒体にはデータベースが格納されて、本発明の会話装置として機能する。このデータベースについては後述する。なお、データベースは、記憶媒体15に格納せずに、他のコンピュータやサーバーにおける他の記憶媒体に格納し、通信によりかかる他の記憶媒体に接続してアクセスする形態としてもよい。
また、本実施形態におけるコンピュータ(端末1A及びサーバー1B)は、それぞれ特に図示しないが、通信デバイスを有し、ネットワークを介しての通信が可能である。通信を行うことで端末1Aとサーバー1Bとが通信を介して連結されて、相互にデータ及び指示信号等各種信号の授受が可能となっている。これにより、後述する会話プログラムを実行することが可能となっている。また、端末1A及びサーバー1Bは、ネットワーク上に置かれた他のデータベースを有するサーバーに接続し、他のデータベースから随時更新されたデータを入手するように設定することもできる。
〔入力手段〕
入力手段20としては、特に図示しないが、キーボード、マウス、カメラなどの画像入力装置、マイクなどの音声入力装置、ブルートゥース(登録商標)等の通信機器による通信入力装置等が用いられる。これらにより適宜必要なデータ及び情報をコンピュータに入力する(会話装置がこれらのデータや情報を得る)ことができる。
本実施形態においては、特に音声入力装置が重要な入力手段であり、かかる音声入力装置により入力された音声データに基づいて会話を進め又は会話を終了する。
〔出力手段〕
出力手段30としては、映像を表示するディスプレイ、音声出力を行うスピーカー等の音声デバイスが用いられ、本実施形態においては、端末のディスプレイ及びスピーカーが出力手段である。かかる出力手段により、会話を進め又は会話を終了する。
〔他の機能の付与〕
本実施形態の会話装置1は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の機能を有しても良い。
<他の部材(デバイス)>
本実施形態の装置は、上述した各デバイス以外に必要に応じて種々デバイスを含むことができる。
【0012】
〔プログラム〕
本実施形態の会話プログラムは、コンピュータ1の記憶媒体15に格納されて、コンピュータ1に以下の各ステップを実行させて、利用者(主として高齢者)とコンピュータに会話を行わせるプログラムである。
上記の各ステップは、図2~4に示すように、
利用者の音声に反応して会話を進める会話ステップS2であって、
少なくとも日本の地域情報、季節情報、健康に関する情報及び仕事/趣味に関する情報の各カテゴリーを含む郷愁話題データベースから、利用者の発する言葉と紐付いた文言を抽出して、いずれのカテゴリーに属するかを判定し、かかるカテゴリーに関する応答文を作成して、コンピュータの音声デバイスを用いて当該応答文を発音させることにより会話を進める会話開始ステップS21を含むステップ
及び
利用者の所定の会話音声に反応して会話を終了する終了ステップS3である。
また、本実施形態においては、更に、利用者に所定の会話用語をもって声をかける声掛けステップS1が設けられている。
このプログラムは、端末1Aとサーバー1Bとのいずれにも格納されている。
【0013】
〔データベース構築ステップ(S01)〕
本実施形態においては、事前の準備としてデータベースの構築を行う。説明の便宜上図2に示す。
ここで、本実施形態のデータベースには、利用者情報のデータベース、会話内容情報のデータベース、会話ログのデータベースがある。このうち、会話内容情報のデータベースには、少なくとも日本の地域情報、季節情報、健康に関する情報及び仕事/趣味に関する情報の各カテゴリーを含む郷愁話題データベースが含まれている。
本発明の会話装置及び会話プログラムの主たる対象となる利用者は高齢者である。高齢者は、老化により又は認知機能の低下により、少し前の記憶、又は季節感が失われやすいことが知られている。また、個人の人生情報を思い出す回想法、及び季節感を高める見当識(時間見当識、場所見当識などあります)療法は、記名力の維持や、満足度を高めることが知られている。本発明においては、これらの知見を活かし、上記郷愁話題データベースを構築し、季節のキーワードで会話できるコーパス、子供時代の趣味に紐付けされた言葉(コーパス化)、出生地の行事及び名物の情報に紐付けされた言葉(コーパス化)、仕事に紐付けされた言葉(コーパス化)のデータベースを作成し、上記の対象となる利用者において会話を円滑に持続するようにしている。
ここで、日本の地域情報としては、日本の各都道府県、市区町村郡に関する地名、名産品、地域のイベント情報等が挙げられ、これらの言葉に関連付けられる名詞及び動詞が含まれる。
季節情報としては、季節を表す言葉、季節にちなんだイベント、食、風景及び被服等を表す言葉等が挙げられ、これらの言葉に関連付けられる名詞及び動詞が含まれる。
健康に関する情報としては、心身の健康を表す言葉、心身の病気を表す言葉、心身の不調を表す言葉等が挙げられ、これらの言葉に関連付けられる名詞及び動詞が含まれる。
仕事/趣味に関する情報としては、仕事を表す言葉、趣味を表す言葉、仕事道具を表す言葉、趣味の道具を表す言葉、資格に関する言葉等が挙げられ、これらの言葉に関連付けられる名詞及び動詞が含まれる。
上記利用者情報には、利用者の氏名、性別、年齢、住所等の個人情報の他、過去の経歴、家族及び友人の情報等が含まれ、図2に示すように外部の管理コンピュータに格納される利用者初期登録ツールに格納された利用者情報を参照してデータベースの一部として活用することもできる。
上記会話内容情報には、上記郷愁話題データベースとして格納される情報の他、利用者の現在の趣味趣向及び健康に関する情報等が含まれ、利用者との会話を通じて適宜更新される。
上記会話ログには、利用者との会話の記録が格納される。
本実施形態のデータベースにおいては、応答文を作成するにあたり、上記各カテゴリーに属する文言のコーパス(当該文言と同時に使用されることが常法である文言)として分類される文言も参照する。また、利用者との会話を通じて、あらたにコーパスとして分類される文言を認識した場合には、この新たに認識される文言もコーパスとしてデータベースに格納される。
【0014】
〔声掛けステップ(S1)〕
声掛けステップS1は、必要に応じて組み込まれるステップであるが、図3に示すように、利用者に所定の会話用語をもって声をかけるステップである。本実施形態においてはデフォルトとして組み込まれている。ここで「声掛け」とは、会話装置が最初に利用者に対して言葉(「こんにちは」「今日はいい天気ですね」等の挨拶言葉等)を発することにとどまらず、利用者の発する言葉に反応して会話のきっかけとなる言葉(利用者の「おはよう」に対して「おはよう、今日は何の日だか知っていますか?」等の会話につながる言葉)を利用者に対して発すること、及び利用者の話しかけに対する応答の言葉(会話の流れに応じて以下の会話ステップにつなげる言葉)を発することを含む意味である。
具体的には、上記郷愁話題データベースの会話内容情報の文言コーパスを引用できる言葉につなげることが可能な言葉、例えば、「今日は何の日?」「今日は暖かい」「今日は雨」等の気候及び暦の情報に関する言葉を利用者に話しかけて、利用者からの言葉を元に郷愁話題の文言へと結びつける。
すなわち、この声掛けステップにより、単なる挨拶文の応答ではなく、会話を進めるための言葉を会話装置から利用者へ話しけることができる。これにより、後述する会話ステップを実行するための会話へとつなげるための利用者からの音声を受け取ることができる。
【0015】
〔会話ステップ(S2)〕
会話ステップS2は、利用者の音声に反応して会話を進めるステップであり、会話を開始する段階の会話開始ステップと、会話を継続させるための会話継続ステップとにより構成される。
この会話ステップは、図2及び図4に示す流れで実行されるように構成されている。
特に図4にフローを示してあるので、図4を参照して全体の流れを説明する。
会話ステップS2のうち会話開始ステップS21は、利用者の音声をマイクで受領し音声の分析を行う。音声の分析は、音声の認識、すなわち音の把握を行い、何という音を利用者が発しているのかをコンピュータ(図2の端末1A)に分析認識させる。ついで、利用者の発している音声が言語としてどのような語句を用いた如何なる構文となっているのかを分析(言語分析)する。
分析結果はサーバー(図2のサーバー1B)に送信され、サーバーにおいてかかる分析結果に基づいて利用者の意図を理解する。すなわち、利用者の発している言葉は、問いかけ、返答、又は情報の教示のいずれに該当するのかを把握すると共に、キーワードとなる名詞及び述語を構成する動詞を抽出して、データベースに照会する。これらの言葉が、データベースにおける郷愁話題データベースの文言又はこれらの文言のコーパスに該当する文言である場合には、会話を開始するための行動(会話開始行動)を選択する。しかし、該当しない場合には、再度会話を開始するための言葉が得られるように行動(話題提供行動)を選択する(図2の行動選択)。この行動選択を行う際には、当該サーバーのデータベースのみではなく、外部のインターネットに通信を介して連結されて、外部のネット情報を適宜取得して行動選択を行うこともできる(図2参照)。
会話開始行動は、郷愁話題データベースのうちいずれのカテゴリーに属する言葉であるかを把握し、かかるカテゴリーの言葉を抽出して、話題を提供するための文を作成する。例えば、言語分析により「そろそろ梅雨だね」との分析結果が得られた場合には、季節に関する文言が入っているので季節のカテゴリーと判断して応答文を作成する。また、「今頃故郷では雪が……」との分析結果であれば、日本の地域情報のカテゴリーと判断して応答文を作成する。また、「祭りの季節だね」との分析結果が得られた場合には季節のカテゴリー及び地域情報のカテゴリーのいずれにも該当すると判定する。その場合、いずれを優先するように設定する事もでき、任意に応答文の設定が可能である。
話題提供行動は、会話開始行動を採れるまで声がけを行う。通常は、単なる挨拶文のやり取り以外では、何から郷愁話題データベースの文言につながる言葉をヒットするので、話題提供行動を行うことは少ないが、挨拶文ではなく、郷愁話題データベースのコーパスにもヒットしない場合には、話題提供行動により、カテゴリーが選択された際に、利用者の言葉を新たにデータベースに取り込む更新を行う。更新は郷愁話題データベースにおけるいずれかのカテゴリーの言葉のコーパスとして保存することにより行う。
これらの選択された行動により作成された応答文は、サーバーから端末へと送られ、端末において、音声出力及び必要に応じて画面上に文字として出力される。
また、端末に映像表示できる場合には、端末の画面上で実際に会話をしているように、所定のキャラクターを動かす映像を表示することができる。これも行動選択で選択した行動にて応答文の作成と共に応答画像の作成(少なくとも指示命令文の作成)を行い、その情報を端末に移送する。移送された端末で出力を生成して画面表示する。端末がロボットであっても同様であり、ロボットの動作を会話プログラムの行動選択及び選択した各行動により作成して、端末であるロボットにおいて実演させることができる。
そして、音声出力により利用者との会話をスタートさせ、その後は会話スタート時のカテゴリーにおける会話を進める。具体的には、上述のフローを繰り返して(音声認識、言語分析、意図の理解、郷愁話題データベースにおける文言の抽出、応答文の作成)、作成した応答文を端末に送信して、端末において出力することで会話を継続する。
この一連の流れを元に各ステップについて詳述する。
【0016】
(会話開始ステップ(S21))
会話開始ステップS21は、郷愁話題データベースから、利用者の発する言葉と紐付いた文言を抽出して、いずれのカテゴリーに属するかを判定し、かかるカテゴリーに関する応答文を作成して、コンピュータの音声デバイスを用いて当該応答文を発音させることにより会話を進めるステップである。
具体的には、図4に示すように、端末において、音声の認識を行った後、言語分析を行い、分析結果をサーバーに送信する。
サーバーで、言語分析結果に基づいて利用者の発言の意図を理解し、利用者の発言が郷愁話題データベースの文言又は当該文言のコーパスとして当該文言と同時に使用されることが常法である文言に該当するかを判定する。これがYESであれば上記の会話開始行動をとり、会話を進めるための応答文を作成する。一方NOであれば上記の話題提供行動をとり、再度声がけのための応答文を作成する。この話題提供行動のときには、端末へ再度の声がけのための応答文の送信と共にデータベースの更新のためにデータベースへ文言情報を送信し、表のリニューアルを行う。会話開始行動の場合には、端末に応答文が送信され、端末上に音声として、また必要に応じて文字などとして表示される。
(会話継続ステップ(S22))
そして、会話開始ステップS21において、出力された音声に対して利用者が応答した場合、会話継続ステップS22が実行される。すなわち、図4に示すように、端末において、音声の認識を行った後、言語分析を行い、分析結果をサーバーに送信する。
サーバーで、会話開始ステップS21において判定されたカテゴリーにおいて、利用者の過去の経験に基づく話を促すように応答文を作成する。この際、当該カテゴリーの文言のみならず、他のカテゴリーの文言も活用して利用者が過去の経験に基づく話をしやすい応答分を作成する。具体的には、会話開始ステップにおいて、季節のカテゴリーに(季節のイベント「夏祭り」)に該当すると判定された場合、会話継続に際しては、利用者の仕事、趣味、出身地(日本の地域情報)に基づいて、夏祭りと関連する文言と紐付けられている文言(コーパスとして分類される文言及び初期情報若しくは利用に応じて関連付けられた文言)を活用して応答文を作成する。作成された文言は端末において音声等として表示される。
【0017】
〔会話終了ステップS3〕
会話終了ステップS3は、利用者の所定の会話音声に反応して会話を終了するステップである。すなわち、利用者が会話を終了したいと考えていることがわかる文言をデータベースに整理格納しておき、これらの文言が音声認識及び言語分析において確認された場合には、会話を終了するための応答分を作成し、端末から表示させる。
ここで、「利用者が会話を終了したいと考えていることがわかる文言」としては、ありがとう等の感謝を伝える文言、疲れた等の終了を促す文言、おしまい等の終了を伝える文言等が挙げられる。
なお、会話終了ステップS3は、一定時間の会話を継続させた後に進むべきステップであるので、会話開始から3分以上経過していること等時間の制約を設けることができる。
〔他のステップ〕
本発明においては、発明の趣旨を逸脱しない範囲で他のステップを加入することができる。
【0018】
〔実施方法・効果〕
本発明の会話プログラム及び会話装置は、図5に示すようにして使用することができる。
すなわち、図5に示すように、スマートフォンを端末として使用した場合、利用者が「今日は暑いね」と話しかけると、言語分析結果を図示しないサーバーに送信し、サーバーにおいて「暑い」という文言とカレンダー情報から「夏」という季節を示す文言を抽出し、夏の風物詩として「祭り」という文言を抽出し、かかる文言に基づいて「祭りの思い出」を問う応答文を作成する。そしてその応答文を端末にて表示させる。
さらに、利用者が「屋台が楽しかった」と発言すると、「屋台」という文言に基づいた会話を更に継続するための応答文を作成し、端末にて表示させる。
そして、ひとしきり会話が進み、利用者が終了を伝える意思を示す感謝を伝える文言である「ありがとう」と発したところで、会話を終了させる。
なお、本発明においては、音声の認識及び抽出した文言を使用しての応答文の作成は既存のアプリを利用して構成することもできる。また、上記行動選択やデータベースの更新に際しては、AIアプリを用いて機械学習させ、機械学習結果を用いて選択や更新を行うこともできる。
【0019】
なお、本発明は上述の実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の会話プログラム及び会話装置は、専用の人形型又はペット型ロボットとして、又はスマートフォンやタブレットとして提供することが可能であるため、各家庭に導入することができる他、高齢者施設、病院、リハビリセンター等で利用することができる。
さらには、本発明の会話プログラム及び会話装置を介護ロボットや医療分野のロボットに導入することにより、高齢者への介護及び治療に際して、高齢者が会話に気を取られた状態で介護及び医療行為を進めることができるので、介護行為及び医療行為を従来よりもスムーズに行うことができる。


図1
図2
図3
図4
図5