(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024148128
(43)【公開日】2024-10-17
(54)【発明の名称】測量装置
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
G01C15/00 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106283
(22)【出願日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2023060955
(32)【優先日】2023-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 太一
(57)【要約】 (修正有)
【課題】測定点に色付けが可能な測量装置を提供する。
【解決手段】測定対象物に測距光35を射出する発光素子28を有する測距光射出部23と、前記測定対象物からの反射測距光45を受光する受光素子39を有する測距光受光部24と、所定の画角で画像を取得する広角カメラ21と、前記測距光射出部と前記広角カメラとを制御し、前記受光素子に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算する演算制御部とを収納する測量装置本体3を有し、前記広角カメラは、前記測距光の光軸27から離反する方向に傾斜する撮像光軸53と、入射した背景光61の光軸を前記測距光の光軸から離反する方向に偏向させる偏向光学部材とを有し、前記撮像光軸は略延長線上に前記測量装置本体の機械中心30が位置する様に構成された。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に測距光を射出する発光素子を有する測距光射出部と、前記測定対象物からの反射測距光を受光する受光素子を有する測距光受光部と、所定の画角で画像を取得する広角カメラと、前記測距光射出部と前記広角カメラとを制御し、前記受光素子に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算する演算制御部とを収納する測量装置本体を有し、前記広角カメラは、前記測距光の光軸から離反する方向に傾斜する撮像光軸と、入射した背景光の光軸を前記測距光の光軸から離反する方向に偏向させる偏向光学部材とを有し、前記撮像光軸は略延長線上に前記測量装置本体の機械中心が位置する様に構成された測量装置。
【請求項2】
前記広角カメラは、前記偏向光学部材が前記測量装置本体の内壁に隣接して配置される様構成された請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記広角カメラは、前記背景光を集光する撮像レンズ群を更に有し、該撮像レンズ群は撮像レンズ前群と前記偏向光学部材とを有し、前記撮像レンズ前群は前記偏向光学部材よりも前記測定対象物側に配置された請求項2に記載の測量装置。
【請求項4】
前記広角カメラは、前記背景光を集光する撮像レンズ群を更に有し、該撮像レンズ群は撮像レンズ前群と前記偏向光学部材とを有し、該偏向光学部材は前記撮像レンズ前群よりも前記測定対象物側に配置された請求項2に記載の測量装置。
【請求項5】
前記広角カメラは、前記測距光の最も外側の光の光軸である軸外光線光軸が前記測距光の光軸と所定位置で交差する様に配置された請求項3又は請求項4に記載の測量装置。
【請求項6】
前記広角カメラは、隣接する広角カメラの画角が所定の範囲オーバラップする様に複数設けられ、各広角カメラの各撮像光軸の略延長線の交点が前記機械中心の位置と略合致する様に構成された請求項2に記載の測量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の3次元座標を取得可能な測量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザスキャナやトータルステーション等の測量装置は、測定対象物として再帰反射性を有するプリズムを用いたプリズム測距、反射プリズムを用いないノンプリズム測距により測定対象物迄の距離を検出する光波距離測定装置を有している。
【0003】
又、測量装置、特にレーザスキャナには、測定点に色を付ける為、或は測定対象物の視準の為、カメラを有するものがある。然し乍ら、従来の測量装置の場合、光波距離測定装置の光軸とカメラの光軸との視差が大きい為、カメラで得られた画像のうちの半分程度しか測定点の色付けに用いることができなかった。
【0004】
この為、全周の点群データの色付けの為に大量の画像を取得する必要があり、処理時間の増加や処理負担の増大を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2017/042402号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0211367号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、測定点に色付けが可能な測量装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、測定対象物に測距光を射出する発光素子を有する測距光射出部と、前記測定対象物からの反射測距光を受光する受光素子を有する測距光受光部と、所定の画角で画像を取得する広角カメラと、前記測距光射出部と前記広角カメラとを制御し、前記受光素子に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算する演算制御部とを収納する測量装置本体を有し、前記広角カメラは、前記測距光の光軸から離反する方向に傾斜する撮像光軸と、入射した背景光の光軸を前記測距光の光軸から離反する方向に偏向させる偏向光学部材とを有し、前記撮像光軸は略延長線上に前記測量装置本体の機械中心が位置する様に構成された測量装置に係るものである。
【0008】
又本発明は、前記広角カメラは、前記偏向光学部材が前記測量装置本体の内壁に隣接して配置される様構成された測量装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記広角カメラは、前記背景光を集光する撮像レンズ群を更に有し、該撮像レンズ群は撮像レンズ前群と前記偏向光学部材とを有し、前記撮像レンズ前群は前記偏向光学部材よりも前記測定対象物側に配置された測量装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記広角カメラは、前記背景光を集光する撮像レンズ群を更に有し、該撮像レンズ群は撮像レンズ前群と前記偏向光学部材とを有し、該偏向光学部材は前記撮像レンズ前群よりも前記測定対象物側に配置された測量装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記広角カメラは、前記測距光の最も外側の光の光軸である軸外光線光軸が前記測距光の光軸と所定位置で交差する様に配置された測量装置に係るものである。
【0012】
更に又本発明は、前記広角カメラは、隣接する広角カメラの画角が所定の範囲オーバラップする様に複数設けられ、各広角カメラの各撮像光軸の略延長線の交点が前記機械中心の位置と略合致する様に構成された測量装置に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、測定対象物に測距光を射出する発光素子を有する測距光射出部と、前記測定対象物からの反射測距光を受光する受光素子を有する測距光受光部と、所定の画角で画像を取得する広角カメラと、前記測距光射出部と前記広角カメラとを制御し、前記受光素子に対する前記反射測距光の受光結果に基づき前記測定対象物迄の距離を演算する演算制御部とを収納する測量装置本体を有し、前記広角カメラは、前記測距光の光軸から離反する方向に傾斜する撮像光軸と、入射した背景光の光軸を前記測距光の光軸から離反する方向に偏向させる偏向光学部材とを有し、前記撮像光軸は略延長線上に前記測量装置本体の機械中心が位置する様に構成されたので、前記測距光と前記広角カメラとの視差を小さくし、前記画像中で測定点の色付けの為に使用可能な範囲を拡大可能とすることで、測定点の色付けの為に必要な画像枚数を低減でき、処理時間及び処理負担の低減を図ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施例に係る測量装置を示す正断面図である。
【
図2】第1の実施例に係る測量装置を示す平断面図である。
【
図3】(A)は第1の実施例に係る測量装置の斜視図であり、(B)は複数の広角カメラの配置を説明する説明図である。
【
図4】第1の実施例に係る光学カメラの光学系を説明する構成図である。
【
図5】第1の実施例の変形例に係る光学カメラの光学系を説明する構成図である。
【
図6】第2の実施例に係る測量装置を示す平断面図である。
【
図7】第2の実施例に係る光学カメラの光学系を説明する構成図である。
【
図8】第3の実施例に係る測量装置を示す平断面図である。
【
図9】第4の実施例に係る測量装置を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0016】
先ず、
図1~
図3に於いて、本発明の第1の実施例に係る測量装置について説明する。
【0017】
測量装置1は、例えばレーザスキャナであり、三脚(図示せず)に取付けられる整準部2と、該整準部2に取付けられた測量装置本体3とから構成される。
【0018】
前記整準部2は整準ネジ10を有し、該整準ネジ10により前記測量装置本体3の整準を行う。
【0019】
該測量装置本体3は、固定部4と、托架部5と、水平回転軸6と、水平回転軸受7と、水平回転駆動部としての水平回転モータ8と、水平角検出部としての水平角エンコーダ9と、鉛直回転軸11と、鉛直回転軸受12と、鉛直回転駆動部としての鉛直回転モータ13と、鉛直角検出部としての鉛直角エンコーダ14と、鉛直回転部である走査ミラー15と、操作部と表示部とを兼用する操作パネル16と、演算制御部17と、記憶部18と、距離測定部19と、複数の広角カメラ21等を具備(収納)している。尚、前記演算制御部17としては、本装置に特化したCPU、或は汎用CPUが用いられる。
【0020】
前記水平回転軸受7は前記固定部4に固定される。前記水平回転軸6は鉛直な軸心6aを有し、前記水平回転軸6は前記水平回転軸受7に回転自在に支持される。又、前記托架部5は前記水平回転軸6に支持され、前記托架部5は水平方向に前記水平回転軸6と一体に回転する様になっている。
【0021】
前記水平回転軸受7と前記托架部5との間には前記水平回転モータ8が設けられ、該水平回転モータ8は前記演算制御部17により制御される。該演算制御部17は、前記水平回転モータ8により、前記托架部5を前記軸心6aを中心に回転させる。
【0022】
前記托架部5の前記固定部4に対する相対回転角は、前記水平角エンコーダ9によって検出される。該水平角エンコーダ9からの検出信号は前記演算制御部17に入力され、該演算制御部17により水平角データが演算される。該演算制御部17は、前記水平角データに基づき、前記水平回転モータ8に対するフィードバック制御を行う。
【0023】
又、前記托架部5には、水平な軸心11aを有する前記鉛直回転軸11が設けられている。該鉛直回転軸11は、前記鉛直回転軸受12を介して回転自在となっている。尚、前記軸心6aと前記軸心11aの交点が、測距光の射出位置であり、前記測量装置本体3の座標系の原点となっている。
【0024】
前記托架部5には、凹部22が形成されている。前記鉛直回転軸11は、一端部が前記凹部22内に延出し、前記一端部に前記走査ミラー15が固着され、該走査ミラー15は前記凹部22に収納されている。又、前記鉛直回転軸11の他端部には、前記鉛直角エンコーダ14が設けられている。
【0025】
前記鉛直回転軸11に前記鉛直回転モータ13が設けられ、該鉛直回転モータ13は前記演算制御部17に制御される。該演算制御部17は、前記鉛直回転モータ13により前記鉛直回転軸11を回転させ、前記走査ミラー15は前記軸心11aを中心に回転される。
【0026】
前記走査ミラー15の回転角は、前記鉛直角エンコーダ14によって検出され、検出信号は前記演算制御部17に入力される。該演算制御部17は、検出信号に基づき前記走査ミラー15の鉛直角データを演算し、該鉛直角データに基づき前記鉛直回転モータ13に対するフィードバック制御を行う。
【0027】
又、前記演算制御部17で演算された水平角データ、鉛直角データや測定結果は、前記記憶部18に保存される。該記憶部18としては、磁気記憶装置としてのHDD、光記憶装置としてのCD、DVD、半導体記憶装置としてのメモリカード、USBメモリ等種々の記憶手段が用いられる。該記憶部18は、前記托架部5に対して着脱可能であってもよく、或は図示しない通信手段を介して外部記憶装置や外部データ処理装置にデータを送出可能としてもよい。
【0028】
前記記憶部18には、測距作動を制御するシーケンスプログラム、測距作動により距離を演算する演算プログラム、水平角データ及び鉛直角データに基づき角度を演算する演算プログラム、距離と角度に基づき所望の測定点の3次元座標を演算するプログラム、複数の前記広角カメラ21を制御する為の制御プログラム、複数の該広角カメラ21で撮影された画像を合成する為の合成プログラム、演算された3次元座標と画像に基づき3次元座標付きの画像を作成する為の画像作成プログラム等の各種プログラムが格納される。又、前記演算制御部17により各種プログラムが実行されることで、各種処理が実行される。
【0029】
前記操作パネル16は、例えばタッチパネルであり、測距の指示や測定条件、例えば測定点間隔の変更等を行う操作部と、測距結果や画像等を表示する表示部とを兼用している。
【0030】
次に、
図2を参照して、前記距離測定部19について説明する。尚、
図2中では、前記距離測定部19を便宜上正面図として図示している。
【0031】
該距離測定部19は、測距光射出部23と測距光受光部24と追尾光射出部25と追尾光受光部26とを有している。尚、前記測距光射出部23と前記測距光受光部24とにより測距部が構成され、前記追尾光射出部25と前記追尾光受光部26とにより追尾部が構成される。
【0032】
前記測距光射出部23は、測距光軸27を有している。又、前記測距光射出部23は、発光側から順に、前記測距光軸27上に設けられた発光素子28、例えばレーザダイオード(LD)と、投光レンズ29と、ダイクロイックミラー31と、該ダイクロイックミラー13の透過光軸上に設けられたミラー32とを有している。又、該ミラー32の反射光軸上に反射プリズム33が設けられ、該反射プリズム33の反射光軸上に前記走査ミラー15が設けられている。更に、該走査ミラー15の反射光軸上には、透明材料で形成され、該走査ミラー15と一体に回転する窓部34が設けられている。
【0033】
尚、前記投光レンズ29、前記ダイクロイックミラー31、前記ミラー32、前記反射プリズム33等は投光光学系を構成する。又、本実施例では、前記測距光軸27と、前記ミラー32で反射された前記測距光軸27と、前記反射プリズム33で反射された前記測距光軸27とを総称して、該測距光軸27としている。
【0034】
前記発光素子28は、所定の波長の可視光又は近赤外光を測距光35として射出する。又、前記投光レンズ29は、前記発光素子28から所定の広がり角で発せられた前記測距光35を平行光束とする様構成されている。
【0035】
前記ダイクロイックミラー31は、前記測距光35を透過し、追尾光36(後述)を反射する光学特性を有している。又、前記ダイクロイックミラー31は、前記測距光35と前記追尾光36の共通光路上(前記測距光軸27と追尾光軸37(後述)の交差位置)に設けられ、前記追尾光軸37が前記測距光軸27と合致する様に前記追尾光軸37を偏向(反射)する。従って、前記測距光35と前記追尾光36とは同軸で測定対象物に向って照射される。
【0036】
前記反射プリズム33は、2つの台形状のプリズムを接合させて形成される。2つのプリズムが接合された状態では、前記反射プリズム33は直方体形状となる。前記測距光35の入射面は前記測距光軸27に対して直交し、前記反射プリズム33の接合面38は前記測距光軸27に対して所定角度傾斜している。更に、前記反射プリズム33の射出面は、前記接合面38で反射された前記測距光軸27が僅かに、例えば2.5°程度傾斜して入射する様構成されている。従って、前記反射プリズム33の射出面で内部反射された前記測距光35が受光素子39(後述)に受光されるのを防止している。尚、前記接合面38の傾斜角は、前記測距光軸27が受光光軸41(後述)及び前記軸心11aと合致する様、前記測距光軸27を偏向(反射)させる角度となっている。又、前記受光素子39としては、例えばアバランシェフォトダイオード(APD)、或は同等の光電変換素子が用いられる。
【0037】
前記測距光受光部24は、前記受光光軸41を有している。又、前記測距光受光部24は、受光側から順に、前記受光光軸41上に設けられた前記受光素子39と、受光プリズム42を有すると共に、該受光プリズム42で反射された前記受光光軸41上に設けられた所定のNA(Numerical Aperture)を有する受光レンズ43を有している。
【0038】
前記受光プリズム42は、分離面としてのダイクロイック膜44を有している。前記受光プリズム42は、測定対象物で反射された前記測距光35(反射測距光45)と、該反射測距光45と同軸で入射した前記追尾光36(反射追尾光46)とを同一平面内で少なくとも1回内部反射させる様構成されている。又、前記ダイクロイック膜44は、前記反射測距光45を反射し、前記反射追尾光46を透過する光学特性を有している。
【0039】
尚、前記受光プリズム42、前記受光レンズ43、前記反射プリズム33等で受光光学系が構成される。又、本実施例では、前記受光光軸41と、前記受光プリズム42及び前記ダイクロイック膜44で反射された前記受光光軸41とを総称して、該受光光軸41としている。
【0040】
前記追尾光射出部25は、前記追尾光軸37を有している。又、前記追尾光射出部25は、発光側から順に、前記追尾光軸37上に設けられた追尾発光素子48、追尾投光レンズ49、前記ダイクロイックミラー31を有すると共に、該ダイクロイックミラー31の反射光軸上に設けられた前記ミラー32と、該ミラー32の反射光軸上に設けられた前記反射プリズム33とを有している。
【0041】
前記追尾発光素子48は、例えばレーザダイオード(LD)であり、前記測距光35とは波長の異なる可視又は近赤外波長の前記追尾光36を射出する様構成されている。又、前記追尾投光レンズ49は、前記追尾発光素子48から発せられた前記追尾光36を僅かに発散させる様構成される。
【0042】
前記追尾光受光部26は、追尾受光光軸51を有している。又、前記追尾光受光部26は、受光側から順に、前記追尾受光光軸51上に設けられた追尾受光素子52、受光プリズム42及び該受光プリズム42の反射光軸上に設けられた前記受光レンズ43を有している。尚、本実施例では、前記追尾受光光軸51と前記受光プリズム42で反射された前記追尾受光光軸51とを総称して、該追尾受光光軸51としている。
【0043】
前記追尾受光素子52は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は前記追尾受光素子52上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記追尾受光素子52の中心を原点とした画素座標を有し、該画素座標によって前記追尾受光素子52上での位置が特定される。
【0044】
前記距離測定部19は、前記演算制御部17により制御される。前記発光素子28から前記測距光軸27上にパルス状の前記測距光35が射出されると、該測距光35は前記投光レンズ29に入射する。該投光レンズ29は、前記測距光35を平行光束とする。
【0045】
前記投光レンズ29、前記ダイクロイックミラー31を透過し、前記ミラー32で反射された前記測距光35は、前記反射プリズム33の入射面に対して直角に入射し、該反射プリズム33内部を透過して前記接合面38で前記受光光軸41及び前記軸心11aと同軸になる様反射される。前記反射プリズム33から射出される前記測距光35は、前記走査ミラー15によって直角に偏向され、前記窓部34を介して測定対象物に照射される。前記走査ミラー15が前記軸心11aを中心に回転することで、前記測距光35は前記軸心11aと直交し、且つ前記軸心6aを含む平面内で回転(走査)される。
【0046】
尚、前記窓部34は、該窓部34で反射された前記測距光35が前記受光素子39に入射しない様、前記測距光軸27の光軸に対して所定角度傾斜して設けられている。又、前記走査ミラー15の前記測距光35の反射位置、即ち該測距光35の反射位置は、前記測量装置1の機械中心30となる。
【0047】
測定対象物で反射された前記反射測距光45は、前記走査ミラー15で直角に反射され、前記受光レンズ43及び前記受光プリズム42を通過する過程で前記ダイクロイック膜44に反射され、前記受光素子39で受光される。
【0048】
前記演算制御部17は、前記発光素子28の発光タイミングと、前記受光素子39の受光タイミングの時間差(即ち、パルス光の往復時間)と光速に基づき、前記測距光35の1パルス毎に測距を実行し(Time Of Flight)、測定対象物迄の距離を演算する。尚、前記発光素子28の発光のタイミング、即ちパルス間隔は、前記操作パネル16を介して変更可能となっている。又、測距結果と前記水平角エンコーダ9及び前記鉛直角エンコーダ14で得られた水平角データ及び鉛直角データに基づき、測定対象物の3次元座標を演算できる。
【0049】
又、前記測距光35を所定のパルス間隔で射出しつつ、前記托架部5と前記走査ミラー15とをそれぞれ定速で回転させることで、該走査ミラー15の鉛直方向の回転と、前記托架部5の水平方向の回転との協動により、前記測距光35が2次元に走査される。又、各パルス光毎に前記鉛直角エンコーダ14、前記水平角エンコーダ9により鉛直角、水平角を検出することで、鉛直角データ、水平角データが取得できる。鉛直角データ、水平角データ、測距データとにより、測定対象物の3次元座標及び測定対象物に対応する3次元の点群データが取得できる。
【0050】
又、測距作動と並行して、追尾発光素子48から前記測距光35とは異なる波長の前記追尾光36が射出されると、前記追尾投光レンズ49で僅かに発散された後、前記ダイクロイックミラー31により前記測距光35と同軸となる様に偏向される。
【0051】
前記測距光35と同軸で測定対象物に照射され、測定対象物で反射された前記反射追尾光46は、前記受光レンズ43及び前記受光プリズム42を通過する過程で、前記ダイクロイック膜44で前記反射測距光45と分離され、前記ダイクロイック膜44を透過して前記追尾受光素子52で受光される。又、該追尾受光素子52への前記反射追尾光46の受光により、追尾像(図示せず)を得ることができる。
【0052】
前記演算制御部17は、前記追尾受光素子52の中心と、該追尾受光素子52に対する前記反射追尾光46の受光位置との位置偏差を演算し、該位置偏差に基づき、前記水平回転モータ8と前記鉛直回転モータ13を駆動させ、測定対象物を追尾する様に構成される。
【0053】
次に、
図2~
図4に於いて、前記広角カメラ21について説明する。該広角カメラ21の撮像処理は前記演算制御部17により制御される。
【0054】
図2に示される様に、前記広角カメラ21の撮像光軸53は、前記測距光軸27から離反する方向に延出している。一方で、前記広角カメラ21が受光可能な最も外側の光を示す軸外光線光軸54は、前記測距光軸27に近接する様に傾斜しており、所定の位置で前記測距光軸27と交差する様になっている。従って、前記広角カメラ21は、撮像範囲に前記測距光軸27を含むこととなり、測定対象物に対する前記測距光35の照射点を撮像可能となっている。即ち、前記広角カメラ21を介して測定対象物の視準が可能に構成される。
【0055】
尚、前記広角カメラ21の撮像範囲と前記測距光軸27とは、前記機械中心30から所定距離、例えば該機械中心30から1m程度離れた位置で交差する。即ち、前記広角カメラ21は、前記機械中心30から所定距離離れた位置よりも遠くに位置する測定対象物(前記測距光35の照射点)を撮影可能となっている。
【0056】
又、
図3(A)に示される様に、前記広角カメラ21は、前記測量装置本体3の外面に上下方向(前記軸心11aと直交する方向)に複数設けられている。尚、
図3(A)中では、3つの広角カメラ21a,21b,21cが設けられているが、前記広角カメラ21は前記測量装置本体3の上下方向全周に亘って設けられている。
【0057】
前記撮像光軸53の略延長線上には、前記機械中心30が位置している。又、
図3(B)に示される様に、該機械中心30は、それぞれ各広角カメラ21a~21cの各撮像光軸53a~53cの略延長線上に位置し、且つ前記機械中心30の位置は各撮像光軸53a~53cの交点と略合致している。
【0058】
ここで、略延長線上とは、前記撮像光軸53と前記機械中心30との最短距離が0(延長線上)から許容誤差の範囲内であることを意味する。略延長線上の定義については、以下の説明に於いても同様である。又、略合致とは、前記交点と前記機械中心30との距離が0(合致)から許容誤差の範囲内であることを意味する。尚、前記許容誤差は、前記窓部34の外径サイズの概ね1/3程度、例えば、前記窓部34がφ45mmであれば15mm程度となっている。
【0059】
又、前記広角カメラ21は、上下方向に隣接する該広角カメラ21と所定の画角だけオーバラップする様に配設されており、上下方向全周に亘って画像が取得可能となっている。又、各広角カメラ21の画像を合成することで、全周画像が取得可能となっている。従って、前記広角カメラ21は、前記測距光35の走査範囲全域の画像を取得することができる。
【0060】
尚、前記走査ミラー15の回転位置、即ち前記測距光35の照射方向と前記広角カメラ21が対応付けられており、前記測距光35の照射方向に対応した前記広角カメラ21の画像が使用される様に構成されている。
【0061】
次に、
図4を参照して、前記広角カメラ21の光学系について説明する。該広角カメラ21は、測定対象物側から順に、前記撮像光軸53上に設けられた保護ガラス55、撮像レンズ前群56、偏向光学部材としての三角プリズム57、該三角プリズム57の反射光軸上に設けられた撮像レンズ後群58、撮像素子59を有している。尚、前記撮像レンズ前群56、前記三角プリズム57、前記撮像レンズ後群58で撮像レンズ群が構成される。
【0062】
前記撮像レンズ前群56は広角レンズであり、所定の広画角、例えば対角で80°の範囲の背景光(外光)61を集光する様に構成されている。又、前記三角プリズム57は、前記背景光61を前記測距光軸27から離反する方向に90°偏向する様に構成されている。更に、前記撮像レンズ後群58は、前記三角プリズム57に偏向された前記背景光61を前記撮像素子59に結像させ、画像が取得される。
【0063】
尚、前記三角プリズム57の反射面が前記凹部22の内壁に隣接する様に、即ち前記測量装置本体3の内壁に隣接する様に、前記広角カメラ21が配置される。又、前記撮像レンズ群の入射瞳位置62が、前記広角カメラ21の視野の基準となる位置となる。前記入射瞳位置62と前記機械中心30との位置関係(距離及び方向)は既知となっている。
【0064】
該撮像素子59は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記撮像光軸53を原点とした画素座標を有し、該画素座標によって前記撮像素子59上での位置が特定される。又、前記撮像光軸53と前記入射瞳位置62との位置関係(距離と方向)が既知であるので、前記距離測定部19よる測距位置と前記撮像素子59上での位置(画素)との相互関連付けが可能である。前記撮像素子59からの画像信号と画素に関連付けられた座標情報は前記演算制御部17を介して前記記憶部18へと格納される。
【0065】
前記演算制御部17は、前記走査ミラー15の鉛直回転を介して前記測距光35を回転照射させると共に、前記測量装置本体を水平回転させ測定対象物の3次元点群データを取得する。又、3次元点群データの取得と平行して、各広角カメラ21により画像を取得する。
【0066】
前記演算制御部17は、各広角カメラ21の取得した画像と、前記機械中心30と前記入射瞳位置62との既知の位置関係に基づき、前記測距光35の各照射位置に色情報を付与し、色情報付きの点群データが作成することができる。或は、各広角カメラ21が取得した画像と点群データとを合成し、画素毎に位置情報が付与された画像を作成することができる。作成された点群データ又は画像は、前記記憶部18に格納される。
【0067】
上述の様に、第1の実施例では、前記広角カメラ21の前記撮像光軸53の略延長線上に前記機械中心30が位置する様、前記広角カメラ21を配置しているので、前記距離測定部19による測距と前記広角カメラ21による撮像との視差を低減することができる。
【0068】
従って、前記広角カメラ21で撮像される画像中で、前記測量装置1で取得された点群の色付けの為に使用できる範囲を増加させることができるので、全周の点群データの色付けの為に必要な画像枚数を低減でき、処理時間及び処理負担の低減を図ることができる。
【0069】
又、前記広角カメラ21が前記三角プリズム57を有し、入射した前記背景光61を前記三角プリズム57により前記測距光軸27から離反する方向に90°偏向し、前記撮像素子59に受光させる様構成されている。
【0070】
従って、前記三角プリズム57により偏向された光路長だけ、即ち該三角プリズム57の反射面から前記撮像レンズ前群56の焦点位置迄の光路長だけ前記入射瞳位置62を前記機械中心30に近づけることができるので、前記距離測定部19と前記広角カメラ21との視差を更に小さくすることができる。
【0071】
又、前記広角カメラ21の前記軸外光線光軸54が前記測距光軸27と交差する様に、前記広角カメラ21が配置されている。従って、該広角カメラ21を前記測量装置1の視準部として使用できるので、視準部を別途設ける必要がなく、部品点数の低減及び製造コストの低減を図ることができる。
【0072】
図5は、第1の実施例の変形例を示している。該変形例では、偏向光学部材として、前記三角プリズム57に代えて板状のミラー63を用いている。又、前記広角カメラ21は、前記凹部22の内壁、即ち前記測量装置本体3の内壁に隣接して配置される。
【0073】
該ミラー63を用いた場合も、前記撮像光軸53の略延長線上に前記機械中心30を位置させることができる。又、前記ミラー63により背景光61を測距光軸27から離反する方向に90°偏向(反射)させる様構成されているので、前記ミラー63の反射面から前記撮像レンズ前群56の焦点位置迄の光路長だけ前記入射瞳位置62を前記機械中心30に近づけることができ、前記距離測定部19と前記広角カメラ21との視差を小さくすることができる。
【0074】
次に、
図6、
図7に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、
図6、
図7中、
図2、
図4中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
第2の実施例に於いては、偏向光学部材として、五角形のペンタプリズム64を用いている。その他の構成については、第1の実施例と同様である。
【0076】
前記ペンタプリズム64は、入射角0°で背景光61を入射させる入射面64aと、前記背景光61を前記ペンタプリズム64内で測距光軸27から離反する方向に60°反射(偏向)させる反射面64bと、該反射面64bで反射された前記背景光61を入射角0°で入射させ、射出する射出面64cとを有している。
【0077】
又、前記ペンタプリズム64は、前記入射面64aと前記反射面64bとの間に形成される隣接面64dを有し、広角カメラ21は、前記隣接面64dが凹部22の内壁、即ち測量装置本体3の内壁と隣接する様に、又撮像光軸53の略延長線上に機械中心30が位置する様に配置される。
【0078】
撮像レンズ前群56を介して前記入射面64aに入射した前記背景光61は、前記反射面64bで60°反射され、前記射出面64cから撮像レンズ後群58に向って射出される様構成される。
【0079】
第2の実施例に於いては、偏向光学部材として前記ペンタプリズム64を用いており、前記隣接面64dを前記凹部22の内壁に隣接させた状態で前記広角カメラ21を配置することができるので、前記撮像光軸53の略延長線上に前記機械中心30を位置させつつ、入射瞳位置62を第1の実施例よりも更に前記機械中心30に近づけることができる。
【0080】
従って、距離測定部19と前記広角カメラ21との視差をより低減することができ、点群の色付けに使用可能な画像の範囲を更に増加させることができるので、全周の点群データの色付けの為に必要な画像枚数を更に低減でき、処理時間及び処理負担の低減を図ることができる。
【0081】
次に、
図8に於いて、本発明の第3の実施例について説明する。尚、
図8中、
図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
第3の実施例では、広角カメラ21は、測定対象物側から順に、撮像光軸53上に設けられた偏向光学部材としての三角プリズム65、撮像レンズ前群56、撮像レンズ後群58、撮像素子59を有しており、前記撮像光軸53の略延長線上に機械中心30が位置している。即ち、第3の実施例では、前記三角プリズム65と前記撮像レンズ前群56の位置が第1の実施例と逆になっている。その他の構成は第1の実施例と同様である。又、前記広角カメラ21は、前記三角プリズム65が凹部22の内壁に隣接する様に、即ち測量装置本体3の内壁に隣接する様に配置される。
【0083】
第3の実施例では、前記三角プリズム65が背景光61を測距光軸27から離反する方向に偏向する様構成されていると共に、前記三角プリズム65の反射面より後方に前記撮像レンズ後群58が配置されている為、第1の実施例より入射瞳位置62を前記機械中心30に更に近づけることができ、距離測定部19と前記広角カメラとの視差を更に小さくすることができる。
【0084】
従って、点群の色付けに使用可能な前記広角カメラ21の画像の範囲を更に増加させることができるので、全周の点群データの色付けの為に必要な画像枚数を更に低減でき、処理時間及び処理負担の低減を図ることができる。
【0085】
次に、
図9に於いて、本発明の第4の実施例について説明する。尚、
図9中、
図2中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
第4の実施例では、広角カメラ21は、測定対象物側から順に、撮像光軸53上に設けられた保護ガラス66、偏向光学部材としてのミラー67、撮像レンズ前群56、撮像レンズ後群58、撮像素子59を有しており、前記撮像光軸53の略延長線上に機械中心30が位置している。
【0087】
第4の実施例では、前記広角カメラ21は、前記保護ガラス66が測量装置本体3から突出しない様に、又前記ミラー67が凹部22の内壁即ち測量装置本体3の内壁と隣接する様に、更に撮像光軸53の略延長線上に機械中心30が位置する様に配置されている。従って、前記撮像光軸53は測距光軸27に対して大きく離反する方向に傾斜し、軸外光線光軸54は前記測距光軸27とは交差しない。
【0088】
一方で、前記ミラー67が背景光61を測距光軸27から離反する方向に反射させると共に、前記ミラー67の反射面より後方に前記撮像レンズ後群58が配置されている為、の焦点位置迄の距離が長くなるので、前記入射瞳位置62を前記機械中心30により近づけることができる。従って、距離測定部19と前記広角カメラ21との視差を小さくすることができ、全周の点群データの色付けの為に必要な前記広角カメラ21の画像枚数を低減し、処理時間及び処理負担の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 測量装置
3 測量装置本体
17 演算制御部
21 広角カメラ
23 測距光射出部
24 測距光受光部
27 測距光軸
35 測距光
45 反射測距光
53 撮像光軸
54 軸外光線光軸
56 撮像レンズ前群
57 三角プリズム
61 背景光
62 入射瞳位置
63 ミラー
64 ペンタプリズム
65 三角プリズム
67 ミラー